平家物語 巻第一  総かな版(元和九年本)
「ぎをんしやうじや」(『ぎをんしやうじや』)S0101 P51¥ぎをん−しやうじや/の¥かね/の¥こゑ、¥しよぎやう−むじやう/の¥ひびき¥あり。¥しやら−さうじゆ/の¥はな/の¥いろ、¥じやうしや−ひつすゐ/の¥ことわり/を¥あらはす。¥おごれ/る¥もの¥ひさしから/ず、¥ただ¥はる/の¥よ/の¥ゆめ/の/ごとし。¥たけき¥ひと/も¥つひに/は¥ほろび/ぬ。¥ひとへに¥かぜ/の¥まへ/の¥ちり/に¥おなじ。¥とほく¥いてう/を¥とぶらふ/に、¥しん/の¥てうかう、¥かん/の¥わうまう、¥りやう/の¥しゆい、¥たう/の¥ろくさん、¥これ=ら/は¥みな¥きうしゆ¥せんくわう/の¥まつりごと/に/も¥したがは/ず、¥たのしみ/を¥きはめ、¥いさめ/を/も¥おもひ−いれ/ず、¥てんが/の¥みだれ/ん¥こと/を/も¥さとら/ず/して、¥みんかん/の¥うれふる¥ところ/を¥しら/ざり/しか/ば、¥ひさしから/ず/して、¥ばうじ/に/し¥もの=ども/なり。¥ちかく¥ほんてう/を¥うかがふ/に、¥しようへい/の¥まさかど、¥てんぎやう/の¥すみとも、¥かうわ/の¥ぎしん、¥へいぢ/の¥しんらい、¥これ=ら/は¥おごれ/る¥こと/も¥たけき¥こころ/も、¥みな¥とりどり/なり/しか/ども、¥まぢかく/は¥ろくはら/の−にふだう−さきの−だいじやうだいじん−たひらの−あそん−きよもり=こう/と¥まうし/し¥ひと/の¥ありさま、¥つたへ−うけたまはる/こそ、¥こころ/も¥ことば/も¥およば/れ/ね。¥その¥せんぞ/を¥たづぬれ/ば、¥くわんむ−てんわう¥だいご/の¥わうじ、¥いつぽんしきぶきやう−かづらはらの−しんわう¥くだい/のP52¥こういん、¥さぬきの−かみ−まさもり/が¥そん、¥ぎやうぶきやう−ただもりの−あそん/の¥ちやくなん/なり。¥かの¥しんわう/の¥みこ¥たかみの−わう¥むくわん¥むゐ/に/して¥うせ¥たまひ/ぬ。¥その¥おん=こ¥たかもちの−わう/の¥とき、¥はじめて¥たひら/の¥しやう/を¥たまはつ/て、¥かづさの−すけ/に¥なり¥たまひ/し/より¥この−かた、¥たちまちに¥わうし/を¥いで/て¥じんしん/に¥つらなる。¥その¥こ¥ちんじゆふ/の−しやうぐん−よしもち、¥のち/に/は¥くにか/と¥あらたむ。¥くにか/より¥まさもり/に¥いたる/まで¥ろくだい/は、¥しよ−こく/の¥じゆりやう/たり/しか/ども、¥てんじやう/の¥せんせき/を/ば¥いまだ¥ゆるさ/れ/ず。
「てんじやうのやみうち」(『てんじやうのやみうち』)S0102¥しかる/に¥ただもり、¥いまだ¥びぜんの−かみ/たり/し¥とき、¥とばのゐん/の¥ご=ぐわん、¥とくぢやうじゆ−ゐん/を¥ざうしん−し/て、¥さんじふさんげん/の¥み=だう/を¥たて、¥いつせんいつたい/の¥おん=ほとけ/を¥すゑ¥たてまつら/る。¥くやう/は¥てんじよう−ぐわんねん−さんぐわつ−じふさんにち/なり。¥けんじやう/に/は¥けつこく/を¥たまふ/べき¥よし¥おほせ−くださ/れ/ける。¥をりふし¥たじまの−くに/の¥あき/たり/ける/を/ぞ¥くださ/れ/ける。¥しやうくわう¥なほ¥ぎよ=かん/の¥あまり/に、¥うち/の¥しようでん/を¥ゆるさ/る。¥ただもり¥さんじふろく/にて¥はじめて¥しようでん−す。¥くものうへびと¥これ/を¥そねみ¥いきどほり、¥おなじき−とし/の−じふいちぐわつ−にじふさんにち、¥ごせつ−とよのあかり/の−せちゑ/の¥よ、¥ただもり/を¥やみうち/に¥せ/ん/と/ぞ¥ぎ−せ/られ/ける。¥ただもり、¥この¥よし/を¥つたへ−きい/て、「¥われ¥いうひつ/の¥み/に¥あら/ず、¥ぶよう/の¥いへ/に¥むまれ/て、¥いま¥ふりよ/の¥はぢ/に¥あは/ん¥こと、P53¥いへ/の¥ため、¥み/の¥ため¥こころ−うかる/べし。¥せんずる−ところ、¥み/を¥まつたう−し/て¥きみ/に¥つかへ¥たてまつれ/と¥いふ¥ほんもん¥あり」/とて、¥かねて¥ようい/を¥いたす。¥さんだい/の¥はじめ/より、¥おほき/なる¥さやまき/を¥ようい−し、¥そくたい/の¥した/に¥しどけな=げ/に¥さし−ほらし、¥ひ/の¥ほの−ぐらき¥かた/に¥むかつ/て、¥やはら¥この¥かたな/を¥ぬき−いだい/て、¥びん/に¥ひき−あて/られ/たり/ける/が、¥よそ/より/は、¥こほり/など/の¥やう/に/ぞ¥みえ/ける。¥しよにん¥め/を¥すまし/けり。¥また¥ただもり/の¥らうどう、¥もとは¥いちもん/たり/し¥たひらの−むくの−すけ−さだみつ/が¥まご、¥しんの−さぶらう−だいふ−いへふさ/が¥こ/に、¥さひやうゑ/の−じよう−いへさだ/と¥いふ¥もの¥あり。¥うすあを/の¥かりぎぬ/の¥した/に、¥もよぎ−をどし/の−はらまき/を¥き、¥つるぶくろ¥つけ/たる¥たち¥わき−ばさん/で、¥てんじやう/の¥こには/に¥かしこまつ/て/ぞ¥さぶらひ/ける。¥くわんじゆ¥いげ、¥あやしみ/を¥なし/て、「¥うつほばしら/より¥うち、¥すず/の¥つな/の¥へん/に、¥ほうい/の¥もの/の¥さぶらふ/は¥なにもの/ぞ。¥らうぜき/なり。¥とうとう¥まかり−いでよ」/と、¥ろくゐ/を¥もつて¥いは/せ/られ/たり/けれ/ば、¥いへさだ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥さうでん/の¥しゆ¥びぜんの−かう/の=との/の¥こんや¥やみうち/に¥せ/られ¥たまふ/べき¥よし¥うけたまはつ/て、¥その¥なら/ん¥やう/を¥み/ん/とて、¥かくて¥さぶらふ/なり。¥え/こそ¥いづ/まじ」/とて、¥また¥かしこまつ/て/ぞ¥さぶらひ/ける。¥これ=ら/を¥よし−なし/と/や¥おもは/れ/けん、¥その¥よ/の¥やみうち¥なかり/けり。¥
ただもり¥また¥ごぜん/の¥めし/に¥まは/れ/ける/に、¥ひとびと¥ひやうし/を¥かへ/て、「¥いせ−へいじ/は¥すがめ/なり/けり」/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく、¥この¥ひとびと/は¥かしはばらの−てんわう/の¥おん=すゑ/と/は¥まうし/ながら、¥なかごろ/は¥みやこ/の¥すまひ/も¥うとうとしく、¥ぢげ/に/のみ¥ふるまひ¥なつ/て、P54¥いせの−くに/に¥ぢうこく¥ふかかり/しか/ば、¥その¥くに/の¥うつはもの/に¥こと−よせ/て、¥いせ−へいじ/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。¥その−うへ¥ただもり/の¥め/の¥すがま/れ/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥かやう/に/は¥はやさ/れ/ける/なれ。¥ただもり¥いか/に−す/べき¥やう/も¥なく/して、¥ぎよ=いう/も¥いまだ¥をはら/ざる¥さき/に、¥ごぜん/を¥まかり−いで/らるる/とて、¥ししんでん/の¥ごご/に/して、¥ひとびと/の¥み/られ/ける¥ところ/にて、¥よこだへ¥ささ/れ/たり/ける¥こし/の¥かたな/を/ば、¥とのもづかさ/に¥あづけ−おき/て/ぞ¥いで/られ/ける。¥いへさだ、¥まち−うけ¥たてまつ/て、「¥さて¥いかが¥さふらひ/つる/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥かう/と/も¥いは/まほしう/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥まさしう¥いひ/つる/ほど/なら/ば、¥やがて¥てんじやう/まで/も¥きり−のぼら/んずる¥もの/の¥つらだましひ/にて¥ある¥あひだ、「¥べつ/の¥こと¥なし」/と/ぞ¥こたへ/られ/ける。¥ごせつ/に/は、「¥しろうすやう、¥こぜんじ/の¥かみ、¥まきあげ/の¥ふで、¥ともゑ¥かい/たる¥ふで/の¥ぢく」/なんど、¥いふ、¥さまざま¥かやう/に¥おもしろき¥こと/を/のみ/こそ¥うたひ¥まは/るる/に、¥なかごろ¥ださい/の−ごん/の−そつ−すゑなかの−きやう/と¥いふ¥ひと¥あり/けり。¥あまり/に¥いろ/の¥くろかり/けれ/ば、¥とき/の−ひと、¥こくそつ/と/ぞ¥まうし/ける。¥この¥ひと¥いまだ¥くらんど/の−とう/なり/し¥とき、¥ごぜん/の¥めし/に¥まは/れ/ける/に、¥ひとびと¥ひやうし/を¥かへ/て、「¥あな¥くろくろ、¥くろき¥とう/かな。¥いか/なる¥ひと/の¥うるし¥ぬり/けん」/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。¥また¥くわざんのゐん/の−さきの−だいじやうだいじん−ただまさ=こう、¥いまだ¥じつさい/なり/し¥とき、¥ちち¥ちうなごん−ただむねの−きやう/に¥おくれ¥たまひ/て、¥みなしご/にて¥おはし/ける/を、¥こ=なかのみかど/の−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥はりまの−かみ/にて¥おはし/ける/が、¥むこ/に¥とつ/て、¥はなやか/に¥もてなさ/れ/しか/ば、¥これ/も¥ごせつ/に/は、「¥はりまよね/は¥とくさ/か、¥むく/の−は/か、¥ひと/の¥きら/をP55¥みがく/は」/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。「¥しやうこ/に/は¥かやう/の¥こと=ども¥おほかり/しか/ども、¥こと¥いで−こ/ず。¥まつだい¥いかが¥あら/んず/らん、¥おぼつかなし/と/ぞ¥ひとびと¥まうし−あは/れ/ける。¥
あん/の/ごとく¥ごせつ¥はて/に/しか/ば、¥ゐん−ぢう/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥いちどう/に¥うつたへ¥まうさ/れ/ける/は、「¥それ¥ゆうけん/を¥たいし/て¥くえん/に¥れつし、¥ひやうぢやう/を¥たまはつ/て¥きうちう/を¥しゆつにふ−する/は、¥みな¥これ¥きやくしき/の¥れい/を¥まもる、¥りんめい¥よし−ある¥せんぎ/なり。¥しかる/を¥ただもりの−あそん、¥あるひは¥ねんらい/の¥らうじう/と¥かうし/て、¥ほうい/の¥つはもの/を¥てんじやう/の¥こには/に¥めし−おき、¥あるひは¥こし/の¥かたな/を¥よこだへ¥さい/て、¥せちゑ/の¥ざ/に¥つらなる。¥りやうでう¥きたい¥いまだ¥きか/ざる¥らうぜき/なり。¥こと¥すでに¥ちようでふ−せ/り。¥ざいくわ¥もつとも¥のがれ−がたし。¥はやく¥てんじやう/の¥みふだ/を¥けづつ/て、¥けつくわん¥ちやうにん¥おこなは/る/べき/か」/と、¥しよきやう¥いちどう/に¥うつたへ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥しやうくわう¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、¥ただもり/を¥ごぜん/へ¥めし/て¥おん=たづね¥あり。¥ちんじ¥まうさ/れ/ける/は、「¥まづ¥らうじう¥こには/に¥しこう/の¥よし、¥まつたく¥かくご¥つかまつら/ず。¥ただし¥きんじつ¥ひとびと¥あひ−たくま/るる¥むね、¥しさい¥ある/か/の¥あひだ、¥ねんらい/の¥けにん、¥こと/を¥つたへ−きく/か/に¥よつ/て、¥その¥はぢ/を¥たすけ/ん/が¥ため/に、¥ただもり/に/は¥しらせ/ず/して,¥ひそか/に¥さんこう/の¥でう、¥ちから¥およば/ざる¥しだい/なり。¥もし¥とが¥ある/べく/は、¥かの¥み/を¥めし−しんず/べき/か。¥つぎに¥かたな/の¥こと/は、¥とのもづかさ/に¥あづけ−おき¥さふらひ−をはん/ぬ。¥これ/を¥めし−いださ/れ、¥かたな/の¥じつぷ/に¥よつ/て、¥とが/の¥さう¥おこなは/る/べき/か」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし/とて、¥いそぎ¥かの¥かたな/を¥めし−いだい/て¥えいらん¥ある/に、¥うへ/は¥さやまき/の¥くろう¥ぬつ/たり/ける/が、¥なか/は¥き−がたな/に¥ぎんぱく/を/ぞ¥おい/たり/ける。「¥たうざ/の¥ちじよく/を¥のがれ/ん/がP56¥ため/に、¥かたな/を¥たいする¥よし¥あらはす/と¥いへ/ども、¥ごにち/の¥そしよう/を¥ぞんぢ−し/て、¥き−がたな/を¥たいし/ける¥ようい/の¥ほど/こそ¥しんべう/なれ。¥きうせん/に¥たづさはら/ん/ほど/の¥もの/の¥はかりごと/に/は、¥もつとも¥かう/こそ¥あら/まほしけれ。¥かねては¥また¥らうじう¥こには/に¥しこう/の¥こと、¥かつうは¥ぶし/の¥らうどう/の¥ならひ/なり。¥ただもり/が¥とが/に/は¥あら/ず」/とて、¥かへつて¥えいかん/に¥あづかつ/し¥うへ/は、¥あへて¥ざいくわ/の¥さた/は¥なかり/けり。

「すずき」(『すずき』)S0103¥その¥こども/は¥みな¥しよゑ/の−すけ/に¥なる。¥しようでん−せ/し/に、¥てんじやう/の¥まじはり/を¥ひと¥きらふ/に¥およば/ず。¥ある−とき¥ただもり、¥びぜんの−くに/より¥のぼら/れ/たり/ける/に、¥とばのゐん「¥あかし/の−うら/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば¥ただもり¥かしこまつ/て、¥
ありあけ/の−つき/も¥あかし/の¥うらかぜ/に¥なみ/ばかり/こそ¥よる/と¥みえ/しか W001
/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゐん¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥やがて¥この¥うた/を/ば、¥きんえふしふ/に/ぞ¥いれ/られ/ける。¥ただもり、¥また¥せんとう/に¥さいあい/の¥にようばう/を¥もつ/て¥よなよな¥かよは/れ/ける/が、¥ある¥よ¥おはし/たり/ける/に、¥かの¥にようばう/の¥つぼね/に、¥つま/に¥つき¥いだし/たる¥あふぎ/を¥とり−わすれ/て、¥いで/られ/たり/けれ/ば、P57¥かたへ/の¥にようばう=たち、「¥これ/は¥いづく/より/の¥つきかげ/ぞ/や、¥いでどころ¥おぼつかなし」/など、¥わらひ−あは/れ/けれ/ば、¥かの¥にようばう、¥
くもゐ/より¥ただ¥もり−き/たる¥つき/なれ/ば¥おぼろ=げ/にて/は¥いは/じ/と/ぞ¥おもふ W002
/と¥よみ/たり/けれ/ば、¥いとど¥あさから/ず/ぞ¥おもは/れ/ける。¥さつまの−かみ−ただのり/の¥はは¥これ/なり。¥にる/を¥とも/とかや/の¥ふぜい/にて、¥ただもり/の¥すい/たり/けれ/ば、¥かの¥にようばう/も¥いう/なり/けり。¥
かくて¥ただもり、¥ぎやうぶきやう/に¥なつ/て、¥にんぺい−さんねん−しやうぐわつ−じふごにち、¥とし¥ごじふはち/にて¥うせ¥たまひ/しか/ば、¥きよもり¥ちやくなん/たる/に¥よつ/て、¥その¥あと/を¥つぎ、¥はうげん−ぐわんねん−しちぐわつ/に、¥うぢの−さふ、¥よ/を¥みだり¥たまひ/し¥とき、¥み=かた/にて¥さき/を¥かけ/たり/けれ/ば、¥けんじやう¥おこなは/れ/けり。¥もと/は¥あきの−かみ/たり/し/が、¥はりまの−かみ/に¥うつつ/て、¥おなじき−さんねん/に¥だざい/の−だいに/に¥なる。¥また¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥のぶより¥よしとも/が¥むほん/の¥とき/も、¥み=かた/にて¥ぞくと/を¥うち−たひらげ/たり/しか/ば、¥くんこう¥ひとつ/に¥あら/ず、¥おんしやう¥これ¥おもかる/べし/とて、¥つぎ/の¥とし¥じやう−ざんみ/に¥じよ−せ/られ、¥うち−つづき¥さいしやう、¥ゑふ/の−かみ、¥けんびゐし/の−べつたう、¥ちうなごん、¥だいなごん/に¥へ−あがつ/て、¥あまつさへ¥しようじやう/の¥くらゐ/に¥いたる。¥さう/を¥へ/ず/して、¥ないだいじん/より¥だいじやうだいじん−じゆ−いちゐ/に¥いたり、¥だいしやう/に/は¥あら/ね/ども、¥ひやうぢやう/を¥たまはつ/て¥ずゐじん/を¥めし−ぐす。¥ぎつしや¥れんじや/の¥せんじ/を¥かうぶつ/て、¥のり/ながら¥きうちう/を¥しゆつにふ−す。¥ひとへに¥しつせい/の¥しん/の/ごとし。「¥だいじやうだいじん/は¥いちじん/に¥しはん/と/して、¥しかい/に¥ぎけい−せ/り。¥くに/を¥をさめ¥みち/を¥ろんじ、¥いんやう/を¥やはらげ−をさむ。¥その¥ひと/に¥あら/ず/は、¥すなはち¥かけよ/と¥いへ/り。¥そくけつ/の−くわん/と/も¥なづけ/られ/たり。P58¥その¥ひと/なら/で/は¥けがす/べき¥くわん/なら/ね/ども、¥この¥にふだう−しやうこく/は¥いつてん−しかい/を¥たなごころ/の¥うち/に¥にぎり¥たまふ¥うへ/は、¥しさい/に¥およば/ず。¥そもそも¥へいけ¥かやう/に¥はんじやう−せ/られ/ける¥こと/は、¥ひとへに¥くまの−ごんげん/の¥ご=りしやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥その¥ゆゑ/は、¥きよもり¥いまだ¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥いせの−くに¥あの/の−つ/より、¥ふね/にて¥くまの/へ¥まゐら/れ/ける/に、¥おほき/なる¥すずき/の¥ふね/へ¥をどり−いつ/たり/けれ/ば、¥せんだち¥まうし/ける/は、「¥むかし、¥しう/の¥ぶわう/の¥ふね/に/こそ、¥はくぎよ/は¥をどり−いつ/たる/なれ。¥いかさま/に/も¥これ/は¥ごんげん/の¥ご=りしやう/と¥おぼえ¥さふらふ。¥まゐる/べし」/と¥まうし/けれ/ば、¥さ/しも¥じつかい/を¥たもつ/て、¥しやうじん−けつさい/の¥みち/なれ/ども、¥みづから¥てうび−し/て¥わが−み¥くひ、¥いへのこ−らうどう=ども/に/も¥くはせ/らる。¥その¥ゆゑ/に/や¥きちじ/のみ¥うち−つづい/て、¥わが−み¥だいじやうだいじん/に¥いたり、¥しそん/の¥くわんど/も、¥りよう/の¥くも/に¥のぼる/より/は¥なほ¥すみやか/なり。¥くだい/の¥せんじよう/を¥こえ¥たまふ/こそ¥めでたけれ。
「かぶろ」(『かぶろ』)S0104¥かくて¥きよもり=こう、¥にんあん−さんねん−じふいちぐわつ−じふいちにち、¥とし¥ごじふいち/にて¥やまひ/に¥をかさ/れ、¥ぞんめい/の¥ため/に/とて、¥すなはち¥しゆつけにふだう−す。¥ほふみやう/を/ば¥じやうかい/と/こそ¥つき¥たまへ。¥その¥ゆゑ/に/や、¥しゆくびやうP59¥たちどころ/に¥いえ/て¥てんめい/を¥まつたう−す。¥しゆつけ/の¥のち/も、¥えいえう/は¥なほ¥つき/ず/と/ぞ¥みえ/し。¥おのづから¥ひと/の¥したがひ−つき¥たてまつる¥こと/は、¥ふく¥かぜ/の¥くさき/を¥なびかす/ごとく、¥よ/の¥あふげる¥こと/も、¥ふる¥あめ/の¥こくど/を¥うるほす/に¥おなじ。¥ろくはら=どの/の¥ご=いつけ/の¥きんだち/と/だに¥いへ/ば、¥くわそく/も¥えいゆう/も、¥たれ¥かた/を¥ならべ、¥おもて/を¥むかふ¥もの¥なし。¥また¥にふだう−しやうこく/の¥こじうと、¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/の¥のたまひ/ける/は、「¥この¥いちもん/に¥あら/ざら/ん¥もの/は、¥みな¥にんぴにん/たる/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥され/ば¥いか/なる¥ひと/も、¥この¥いちもん/に¥むすぼれ/ん/と/ぞ¥し/ける。¥ゑぼし/の¥ため−やう/より¥はじめ/て、¥えもん/の¥かき−やう/に¥いたる/まで、¥なにごと/も¥ろくはら−やう/と/だに¥いひ/て/しか/ば、¥いつてん−しかい/の¥ひと¥みな¥これ/を¥まなぶ。¥いか/なる¥けんわう¥けんしゆ/の¥おん=まつりごと、¥せつしやう¥くわんばく/の¥ご=せいばい/に/も、¥よ/に¥あまさ/れ/たる/ほど/の¥いたづらもの/など/の、¥かたはら/に¥より−あひ/て、¥なにと−なう¥そしり−かたぶけ¥まうす¥こと/は¥つね/の¥ならひ/なれ/ども、¥この¥ぜんもん¥よざかり/の¥ほど/は、¥いささか¥ゆるがせ/に¥まうす¥もの¥なし。¥その¥ゆゑ/は¥にふだう−しやうこく/の¥はかりごと/に、¥じふしごろく/の¥わらべ/を¥さんびやくにん¥すぐつ/て、¥かみ/を¥かぶろ/に¥きり−まはし、¥あかき¥ひたたれ/を¥きせ/て、¥めし−つかは/れ/ける/が、¥きやう−ぢう/に¥みちみち/て¥わうばん−し/けり。¥おのづから¥へいけ/の¥おん=こと、¥あしざま/に¥まうす¥もの¥あれ/ば、¥いち−にん¥きき−いださ/ぬ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥よたう/に¥ふれ−まはし、¥かの¥いへ/に¥らんにふ−し、¥しざい−ざふぐ/を¥つゐふく−し、¥その¥やつ/を¥からめ/て、¥ろくはら=どの/へ¥ゐ/て¥まゐる。¥され/ば¥め/に¥み、¥こころ/に¥しる/と¥いへ/ども、¥ことば/に¥あらはし/て¥まうす¥もの¥なし。¥ろくはら=どの/の¥かぶろ/と/だに¥いへ/ば、¥みち/を¥すぐる¥むま¥くるま/も、¥みな¥よぎ/て/ぞP60¥とほし/ける。¥きんもん/を¥しゆつにふ−す/と¥いへ/ども、¥しやうみやう/を¥たづね/らるる/に¥およば/ず。¥けいし/の¥ちやうり、¥これ/が¥ため/に¥め/を¥そばむ/と¥みえ/たり。
「わがみのえいぐわ」(『わがみのえいぐわ』)S0105¥わが−み/の¥えいぐわ/を¥きはむる/のみ/なら/ず、¥いちもん¥ともに¥はんじやう−し/て、¥ちやくし¥しげもり、¥ないだいじん/の−さだいしやう、¥じなん¥むねもり、¥ちうなごん/の−うだいしやう、¥さんなん¥とももり、¥さんみ/の−ちうじやう、¥ちやくそん¥これもり、¥しゐ/の−せうしやう、¥すべて¥いちもん/の¥くぎやう¥じふろく−にん、¥てんじやうびと¥さんじふ−よ−にん、¥しよ−こく/の¥じゆりやう、¥ゑふ、¥しよし、¥つがふ¥ろくじふ−よ−にん/なり。¥よ/に/は¥また¥ひと¥なく/ぞ¥みえ/られ/ける。¥むかし¥ならの−みかど/の¥おん=とき、¥じんき−ごねん、¥てうか/に¥ちうゑ/の¥だいしやう/を¥はじめ−おか/る。¥だいどう−しねん/に¥ちうゑ/を¥こんゑ/と¥あらため/られ/し/より¥この−かた、¥きやうだい¥さう/に¥あひ−ならぶ¥こと、¥わづか/に¥さんしかど/なり。¥もんどく−てんわう/の¥おん=とき/は、¥ひだん/に¥よしふさ、¥うだいじん/の−さだいしやう、¥みぎ/に¥よしあふ、¥だいなごん/の−うだいしやう、¥これ/は¥かんゐん/の−さだいじん−ふゆつぎ/の¥おん=こ/なり。¥しゆしやくゐん/の¥ぎよ=う/に/は、¥ひだり/に¥さねより、¥をののみや=どの、¥みぎ/に¥もろすけ、¥くでう=どの、¥ていじん=こう/の¥おん=こ/なり。¥ごれんぜいゐん/の¥おん=とき/は、¥ひだり/に¥のりみち、¥おほにでう=どの、¥みぎ/に¥よりむね、¥ほりかは=どの、¥み=だう/の−くわんばく/の¥おん=こ/なり。¥にでうのゐん/の¥ぎよ=う/に/は、¥ひだり/に¥もとふさ、¥まつ=どの、¥みぎ/に¥かねざね、¥つきのわ=どの、¥ほつしやうじ=どの/の¥おん=こ/なり。¥これ¥みな¥せふろく/のP61¥しん/の¥ご=しそく、¥はんじん/に¥とつ/て/は¥その¥れい¥なし。¥てんじやう/の¥まじはり/を/だに¥きらは/れ/し¥ひと/の¥しそん/にて、¥きんじき、¥ざつぱう/を¥ゆり、¥りようら¥きんしう/を¥み/に¥まとひ、¥だいじん/の−だいしやう/に¥なつ/て¥きやうだい¥さう/に¥あひ−ならぶ¥こと、¥まつだい/と/は¥いひ/ながら、¥ふしぎ/なり/し¥こと=ども/なり。¥その−ほか、¥おん=むすめ¥はち−にん¥おはし/き。¥みな¥とりどり/に¥さいはひ¥たまへ/り。¥いち−にん/は¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう/の¥きたのかた/にて¥おはす/べかり/し/が、¥はつさい/の¥とし¥おん=やくそく/ばかり/にて、¥へいぢ/の¥みだれ¥いご、¥ひき−ちがへ/られ/て、¥くわざんのゐん/の−さだいじん=どの/の¥み=だいばんどころ/に¥なら/せ¥たまひ/て、¥きんだち¥あまた¥ましまし/けり。¥そもそも¥この¥しげのりの−きやう/を¥さくらまちの−ちうなごん/と¥まうし/ける¥こと/は、¥すぐれ/て¥こころ¥すき¥たまへ/る¥ひと/にて、¥つね/は¥よしの/の−やま/を¥こひ/つつ、¥ちやう/に¥さくら/を¥うゑ¥ならべ、¥その¥うち/に¥や/を¥たて/て¥すみ¥たまひ/しか/ば、¥くる¥とし/の¥はる−ごと/に、¥みる¥ひと、¥さくらまち/と/ぞ¥まうし/ける。¥さくら/は¥さい/て¥しちかにち/に¥ちる/を、¥なごり/を¥をしみ、¥あまてるおんがみ/に¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ば/に/や、¥さんしち−にち/まで¥なごり¥あり/けり。¥きみ/も¥けんわう/にて¥ましませ/ば、¥しん/も¥しんとく/を¥かかやかし、¥はな/も¥こころ−あり/けれ/ば、¥はつか/の¥よはひ/を¥たもち/けり。¥
いち−にん/は¥きさき/に¥たた/せ¥たまふ。¥にじふに/にて¥わうじ¥ご=たんじやう¥あつ/て、¥くわうたいし/に¥たち、¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/しか/ば、¥ゐんがう¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥けんれいもんゐん/と/ぞ¥まうし/ける。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ/なる¥うへ、¥てんが/の¥こくも/にて¥ましませ/ば、¥とかう¥まうす/に¥およば/れ/ず。¥いち−にん/は¥ろくでう/の−せつしやう=どの/の¥きたのまんどころ/に¥なら/せ¥たまふ。¥これ/は¥たかくらのゐん¥ございゐ/の¥おん=とき、¥おん=ははしろ/とて、¥じゆんさんごう/の¥せんじ/を¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥しらかは=どの/とて、¥おもき¥ひと/にて/ぞ¥ましまし/ける。P62¥いち−にん/は¥ふげんじ=どの/の¥きたのまんどころ/に¥なら/せ¥たまふ。¥いち−にん/は¥れんぜいの−だいなごん−りうばうの−きやう/の¥きたのかた、¥いち−にん/は¥しちでうの−しゆり/の−だいぶ−のぶたかの−きやう/に¥あひ−ぐし¥たまへ/り。¥また¥あきの−くに¥いつくしま/の−ないし/が¥はら/に¥いち−にん、¥これ/は¥ごしらかはの−ほふわう/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥ひとへに¥にようご/の¥やう/で/ぞ¥ましまし/ける。¥その−ほか¥くでうのゐん/の¥ざふし¥ときは/が¥はら/に¥いち−にん、¥これ/は¥くわざんのゐん=どの/の¥じやうらふ−にようばう/にて、¥らふ/の−おん=かた/と/ぞ¥まうし/ける。¥につぽん¥あきつしま/は¥わづかに¥ろくじふろく−か−こく、¥へいけ¥ちぎやう/の¥くに¥さんじふ−よ−か−こく、¥すでに¥はんごく/に¥こえ/たり。¥その−ほか¥しやうえん、¥でんばく、¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず。¥きら¥じうまん−し/て、¥たうしやう¥はな/の/ごとし。¥けんき¥くんじゆ−し/て、¥もんぜん¥いち/を¥なす。¥やうしう/の¥こがね、¥けいしう/の¥たま、¥ごきん/の¥あや、¥しよつかう/の¥にしき、¥しつちん−まんぽう、¥ひとつ/と/して¥かけ/たる¥こと¥なし。¥かたう−ぶかく/の¥もとゐ、¥ぎよりよう−しやくば/の¥もてあそびもの、¥おそらく/は、¥ていけつ/も¥せんとう/も、¥これ/に/は¥すぎじ/と/ぞ¥みえ/し。¥
「ぎわう」(『ぎわう』)S0106¥だいじやう/の−にふだう/は、¥かやう/に¥てんが/を¥たなごころ/の¥うち/に¥にぎり¥たまひ/し¥うへ/は、¥よ/の¥そしり/を/も¥はばから/ず、¥ひと/の¥あざけり/を/も¥かへりみ/ず、¥ふしぎ/の¥こと/を/のみ¥し¥たまへ/り。¥たとへば、¥その−ころ¥きやう−ぢう/に¥きこえ/たる¥しらびやうし/の¥じやうず、¥ぎわう、¥ぎによ/とて¥おととひ¥あり。¥とぢ/と¥いふP63¥しらびやうし/が¥むすめ/なり。¥しかる/に¥あね/の¥ぎわう/を、¥にふだう−しやうこく¥ちようあい−し¥たまふ¥うへ、¥いもと/の¥ぎによ/を/も、¥よ/の¥ひと¥もてなす¥こと¥なのめ/なら/ず。¥はは¥とぢ/に/も¥よき¥や¥つくつ/て¥とら/せ、¥まい−ぐわつ/に¥ひやく−こく¥ひやく−くわん/を¥おくら/れ/たり/けれ/ば、¥けない¥ふつき−し/て¥たのしい¥こと¥なのめ/なら/ず。¥そもそも¥わが¥てう/に¥しらびやうし/の¥はじまり/ける¥こと/は、¥むかし¥とばのゐん/の¥ぎよ=う/に、¥しまのせんざい、¥わかのまへ、¥かれ=ら¥ににん/が¥まひ−いだし/たり/ける/なり。¥はじめ/は¥すゐかん/に¥たて−ゑぼし、¥しろざやまき/を¥さい/て¥まひ/けれ/ば¥をとこまひ/と/ぞ¥まうし/ける。¥しかる/を¥なかごろ/より¥ゑぼし¥かたな/を¥のけ/られ/て、¥すゐかん/ばかり¥もちひ/たり。¥さて/こそ¥しらびやうし/と/は¥なづけ/けれ。¥きやう−ぢう/の¥しらびやうし=ども、¥ぎわう/が¥さいはひ/の¥めでたき¥やう/を¥きい/て、¥うらやむ¥もの/も¥あり、¥そねむ¥もの/も¥あり。¥うらやむ¥もの=ども/は、「¥あな¥めでた/の¥ぎわう−ごぜん/の¥さいはひ/や。¥おなじ¥あそびめ/と/なら/ば、¥たれ/も¥みな¥あの¥やう/で/こそ¥あり/たけれ。¥いかさま/に/も¥ぎ/と¥いふ¥もじ/を¥な/に¥つい/て、¥かく/は¥めでたき/やらん。¥いざ/や¥われ=ら/も¥つい/て¥み/ん」/とて、¥あるひは¥ぎいち、¥ぎに/と¥つき、¥あるひは¥ぎふく、¥ぎとく/など¥つく¥もの/も¥あり/けり。¥そねむ¥もの=ども/は、「¥なんでふ¥な/に¥より、¥もじ/に/は¥よる/べき。¥さいはひ/は¥ただ¥ぜんぜ/の¥むまれつき/で/こそ¥あん/なれ」/とて、¥つか/ぬ¥もの/も¥おほかり/けり。¥かくて¥さんねん/と¥いふ/に、¥また¥しらびやうし/の¥じやうず、¥いち−にん¥いで−き/たり。¥かがの−くに/の¥もの/なり。¥な/を/ば¥ほとけ/と/ぞ¥まうし/ける。¥とし¥じふろく/と/ぞ¥きこえ/し。¥きやう−ぢう/の¥じやうげ¥これ/を¥み/て、¥むかし/より¥おほく/の¥しらびやうし/は¥み/しか/ども、¥かかる¥まひ/の¥じやうず/は¥いまだ¥み/ず/とて、¥よ/の¥ひと¥もてなすP64¥こと¥なのめ/なら/ず。¥
ある−とき¥ほとけ−ごぜん¥まうし/ける/は、「¥われ¥てんが/に¥もてあそば/るる/と¥いへ/ども、¥たうじ¥めでたう¥さかえ/させ¥たまふ¥へいけ−だいじやう/の−にふだう=どの/へ、¥めさ/れ/ぬ¥こと/こそ¥ほい−なけれ。¥あそびもの/の¥ならひ、¥なに/か¥くるしかる/べき。¥すゐさん−し/て¥み/ん」/とて、¥ある−とき¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥ひと¥ごぜん/に¥まゐつ/て、「¥たうじ¥みやこ/に¥きこえ¥さふらふ¥ほとけ−ごぜん/が¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥おほき/に¥いかつ/て、「¥なんでふ、¥さやう/の¥あそびもの/は、¥ひと/の¥めし/にて/こそ¥まゐる¥もの/なれ、¥さう−なう¥すゐさん−する¥やう/や¥ある。¥その−うへ、¥かみ/と/も¥いへ、¥ほとけ/と/も¥いへ、¥ぎわう/が¥あら/んずる¥ところ/へ/は¥かなふ/まじき/ぞ。¥とうとう¥まかり−いでよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ほとけ−ごぜん/は、¥すげなう¥いは/れ¥たてまつ/て、¥すでに¥いで/ん/と¥し/ける/を、¥ぎわう¥にふだう=どの/に¥まうし/ける/は、「¥あそびもの/の¥すゐさん/は、¥つね/の¥ならひ/で/こそ¥さぶらへ。¥その−うへ¥とし/も¥いまだ¥をさなう¥さぶらふ/なる/が、¥たまたま¥おもひ−たつ/て¥まゐつ/て¥さぶらふ/を、¥すげなう¥おほせ/られ/て、¥かへさ/せ¥たまは/ん/こそ¥ふびん/なれ。¥いか/ばかり¥はづかしう、¥かたはらいたく/も¥さぶらふ/らん。¥わが¥たて/し¥みち/なれ/ば、¥ひと/の¥うへ/と/も¥おぼえ/ず。¥たとひ¥まひ/を¥ごらんじ、¥うた/を/こそ¥きこしめさ/ず/とも、¥ただ¥り/を¥まげ/て、¥めし−かへい/て¥ご=たいめん/ばかり¥さぶらひ/て、¥かへさ/せ¥たまは/ば、¥あり−がたき¥おん=なさけ/で/こそ¥さぶらは/んずれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥いでいで¥さら/ば、¥わ−ごぜ/が¥あまり/に¥いふ¥こと/なる/に、¥たいめん−し/て¥かへさ/ん」/とて、¥お=つかひ/を¥たて/て、¥めさ/れ/けり。¥ほとけ−ごぜん/は、¥すげなう¥いは/れ¥たてまつ/て、¥くるま/に¥のつ/て¥すでに¥いで/ん/とP65¥し/ける/が、¥めさ/れ/て¥かへり−まゐり/たり。¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん−し¥たまひ/て、「¥いか/に¥ほとけ、¥けふ/の¥げんざん/は¥ある/まじかり/つれ/ども、¥ぎわう/が¥なに/と¥おもふ/やらん、¥あまり/に¥まうし−すすむる¥あひだ、¥かやう/に¥げんざん/は¥し/つ。¥げんざん−する¥うへ/で/は¥いかで/か¥こゑ/を/も¥きか/で¥ある/べき。¥まづ¥いまやう¥ひとつ¥うたへ/かし」/と¥のたまへ/ば、¥ほとけ−ごぜん、「¥うけたまはり¥さぶらふ」/とて、¥いまやう¥ひとつ/ぞ¥うたう/たる。¥
きみ/を¥はじめて¥みる¥とき/は¥ちよ/も¥へ/ぬ/べし¥ひめこまつ¥
お=まへ/の¥いけ/なる¥かめをか/に¥つる/こそ¥むれ−ゐ/て¥あそぶ/めれ
/と、¥おし−かへし−おし−かへし、¥さんべん¥うたひ−すまし/たり/けれ/ば、¥けんもん/の¥ひとびと、¥みな¥じぼく/を¥おどろか/す。¥にふだう/も¥おもしろき¥こと/に¥おもひ¥たまひ/て、「¥さて¥わ−ごぜ/は、¥いまやう/は¥じやうず/にて¥あり/ける/や。¥この¥ぢやう/で/は¥まひ/も¥さだめて¥よから/ん。¥いちばん¥み/ばや、¥つづみ¥うち−めせ」/とて¥めさ/れ/けり。¥うた/せ/て¥いちばん¥まう/たり/けり。¥ほとけ−ごぜん/は、¥かみ¥すがた/より¥はじめ/て、¥みめ−かたち¥よ/に¥すぐれ、¥こゑ¥よく¥ふし/も¥じやうず/なり/けれ/ば、¥なじか/は¥まひ/は¥そんず/べき。¥こころ/も¥およば/ず¥まひ−すまし/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥まひ/に¥めで¥たまひ/て、¥ほとけ/に¥こころ/を¥うつさ/れ/けり。¥ほとけ−ごぜん、「¥こ/は¥なにごと/にて¥さぶらふ/ぞ/や。¥もと/より¥わらは/は¥すゐさん/の¥もの/にて、¥すでに¥いださ/れ¥まゐらせ/し/を、¥ぎわう−ごぜん/の¥まうしじやう/に¥よつ/て/こそ、¥めし−かへさ/れ/て/も¥さぶらふ。¥はやはや¥いとま¥たまはつ/て、¥いださ/せ¥おはしませ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥すべて¥その¥ぎ¥かなふ/まじ。¥ただし¥ぎわう/が¥ある/にP66¥よつ/て、¥さやう/に¥はばかる/か。¥その¥ぎ/なら/ば¥ぎわう/を/こそ¥いださ/め」/と¥のたまへ/ば、¥ほとけ−ごぜん、「¥これ¥また¥いかで¥さる−おん=こと¥さぶらふ/べき。¥とも/に¥めし−おか/れ/ん/だに、¥はづかしう¥さぶらふ/べき/に、¥ぎわう−ごぜん/を¥いださ/せ¥たまひ/て、¥わらは/を¥いち−にん¥めし−おか/れ/な/ば、¥ぎわう−ごぜん/の¥おもひ¥たまは/ん¥こころ/の¥うち、¥いか/ばかり¥はづかしう、¥かたはらいたく/も¥さぶらふ/べき。¥おのづから¥のち/まで/も¥わすれ¥たまは/ぬ¥おん=こと/なら/ば、¥めさ/れ/て¥また/は¥まゐる/とも、¥けふ/は¥いとま/を¥たまはら/ん」/と/ぞ¥まうし/ける。¥にふだう、「¥その¥ぎ/なら/ば、¥ぎわう¥とうとう¥まかり−いで/よ」/と、¥お=つかひ¥かさね/て¥さんど/まで/こそ¥たて/られ/けれ。¥ぎわう/は¥もと/より¥おもひ−まうけ/たる¥みち/なれ/ども、¥さすが¥きのふ¥けふ/と/は¥おもひ/も¥よら/ず。¥にふだう−しやうこく、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし、¥しきり/に¥のたまふ¥あひだ、¥はき−のごひ、¥ちり¥ひろは/せ、¥いづ/べき/に/こそ¥さだめ/けれ。¥いちじゆ/の¥かげ/に¥やどり−あひ、¥おなじ¥ながれ/を¥むすぶ/だに、¥わかれ/は¥かなしき¥ならひ/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は¥みとせ/が¥あひだ¥すみ−なれ/し¥ところ/なれ/ば、¥なごり/も¥をしく¥かなしく/て、¥かひ−なき¥なみだ/ぞ¥すすみ/ける。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥ぎわう¥いま/は¥かう/とて¥いで/ける/が、¥なから/ん¥あと/の¥わすれ−がたみ/に/も/と/や¥おもひ/けん、¥しやうじ/に¥なくなく¥いつしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/ける。¥
もえ−いづる/も¥かるる/も¥おなじ¥のべ/の¥くさ¥いづれ/か¥あき/に¥あは/で¥はつ/べき W003
¥さて¥くるま/に¥のつ/て¥しゆくしよ/へ¥かへり、¥しやうじ/の¥うち/に¥たふれ−ふし、¥ただ¥なく/より¥ほか/の¥こと/ぞ¥なき。¥はは/や¥いもと¥これ/を¥み/て、¥いか/に/や−いか/に/と¥とひ/けれ/ども、¥ぎわう¥とかう/の¥へんじ/に/もP67¥およば/ず、¥ぐし/たる¥をんな/に¥たづね/て/こそ、¥さる−こと¥あり/と/も¥しつ/てげれ。¥さる−ほど/に¥まい−ぐわつ¥おくら/れ/ける¥ひやく−こく¥ひやく−くわん/を/も¥おし−とめ/られ/て、¥いま/は¥ほとけ−ごぜん/の¥ゆかり/の¥もの=ども/ぞ、¥はじめて¥たのしみ−さかえ/ける。¥きやう−ぢう/の¥じやうげ、¥この¥よし/を¥つたへ−きい/て、「¥まこと/や¥ぎわう/こそ、¥にしはちでう=どの/より¥いとま¥たまはつ/て¥いださ/れ/たん/なれ。¥いざや¥げんざん−し/て¥あそば/ん」/とて、¥あるひは¥ふみ/を¥つかはす¥もの/も¥あり、¥あるひは¥ししや/を¥たつる¥ひと/も¥あり/けれ/ども、¥ぎわう、¥いまさら¥また¥ひと/に¥たいめん−し/て、¥あそび−たはむる/べき/に/も¥あら/ね/ば/とて、¥ふみ/を/だに¥とり−いるる¥こと/も¥なく、¥まして¥つかひ/を¥あひ−しらふ/まで/も¥なかり/けり。¥ぎわう¥これ/に¥つけ/て/も、¥いとど¥かなしく/て、¥かひ−なき¥なみだ/ぞ¥こぼれ/ける。¥かくて¥ことし/も¥くれ/ぬ。¥あくる¥はる/に/も¥なり/しか/ば、¥にふだう−しやうこく、¥ぎわう/が¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥いか/に¥ぎわう、¥その−のち/は¥なにごと/か¥ある。¥ほとけ−ごぜん/が¥あまり/に¥つれづれ=げ/に¥みゆる/に、¥まゐつ/て¥いまやう/を/も¥うたひ、¥まひ/など/を/も¥まう/て、¥ほとけ¥なぐさめよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぎわう¥とかう/の¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥ふし/に/けり。¥にふだう¥かさね/て、「¥なに/とて¥ぎわう/は、¥と/も−かう/も¥へんじ/を/ば¥まうさ/ぬ/ぞ。¥まゐる/まじき/か。¥まゐる/まじく/は、¥その¥やう/を¥まうせ。¥じやうかい/も¥はからふ¥むね¥あり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥はは¥とぢ¥これ/を¥きく/に¥かなしく/て、¥なくなく¥けうくん−し/ける/は、「¥なに/とて¥ぎわう/は¥と/も−かう/も¥おん=ぺんじ/を/ば¥まうさ/で、¥かやう/に¥しから/れ¥まゐらせ/ん/より/は」/と¥いへ/ば、¥ぎわう¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥まゐら/ん/と¥おもふ¥みち/なら/ば/こそ、¥やがて¥まゐる/べし/と/も¥まうす/べけれ。P68¥なかなか¥まゐら/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥なに/と¥おん=ぺんじ/を/ば¥まうす/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥この−たび¥めさ/ん/に¥まゐら/ず/は、¥はからふ¥むね¥あり/と¥おほせ/らるる/は、¥さだめて¥みやこ/の¥ほか/へ¥いださ/るる/か、¥さら/ず/は¥いのち/を¥めさ/るる/か、¥これ¥ふたつ/に/は¥よも¥すぎ/じ。¥たとひ¥みやこ/を¥いださ/るる/とも、¥なげく/べき¥みち/に¥あら/ず。¥また¥いのち/を¥めさ/るる/とも¥をしかる/べき¥わが−み/かは。¥いちど¥うき¥もの/に¥おもは/れ¥まゐらせ/て、¥ふたたび¥おもて/を¥むかふ/べし/と/も¥おぼえ/ず」/とて、¥なほ¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ざり/しか/ば、¥はは¥とぢ¥なくなく¥また¥けうくん−し/ける/は、「¥あめ/が¥した/に¥すま/ん/に/は、¥と/も−かう/も¥にふだう=どの/の¥おほせ/を/ば、¥そむく/まじき¥こと/にて¥ある/ぞ。¥その−うへ¥わ−ごぜ/は、¥をとこ¥をんな/の¥えん、¥しゆくせ、¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/ぞ/かし。¥せんねん¥まんねん/と/は¥ちぎれ/ども、¥やがて¥わかるる¥なか/も¥あり。¥あからさま/と/は¥おもへ/ども、¥ながらへ−はつる¥こと/も¥あり。¥よ/に¥さだめ¥なき¥もの/は、¥をとこ¥をんな/の¥ならひ/なり。¥いはんや¥わ−ごぜ/は、¥この¥みとせ/が¥あひだ¥おもは/れ¥まゐらせ/たれ/ば、¥あり−がたき¥おん=なさけ/で/こそ¥さぶらへ。¥この−たび¥めさ/ん/に¥まゐら/ね/ば/とて、¥いのち/を¥めさ/るる/まで/は¥よも¥あら/じ。¥さだめて¥みやこ/の¥ほか/へ/ぞ¥いださ/れ/んず/らん。¥たとひ¥みやこ/を¥いださ/るる/とも、¥わ−ごぜ=たち/は¥とし¥いまだ¥わかけれ/ば、¥いか/なら/ん¥いはき/の¥はざま/にて/も、¥すごさ/ん¥こと¥やすかる/べし。¥わが−み/は¥としおい¥よはひ¥おとろへ/たれ/ば、¥ならは/ぬ¥ひな/の¥すまひ/を、¥かねて¥おもふ/こそ¥かなしけれ。¥ただ¥われ/を/ば¥みやこ/の¥うち/にて¥すみ−はて/させよ。¥それ/ぞ¥こんじやう¥ごしやう/の¥けうやう/にて¥あら/んずる/ぞ」/と¥いへ/ば、¥ぎわう¥まゐら/じ/と¥おもひ−さだめ/し¥みち/なれ/ども、¥はは/の¥めい/を¥そむか/じ/とて、¥なくなく¥また¥いで−たち/ける、P69¥こころ/の¥うち/こそ¥むざん/なれ。¥
ぎわう¥ひとり¥まゐら/ん¥こと/の、¥あまり/に¥こころ−うし/とて、¥いもと/の¥ぎによ/を/も¥あひ−ぐし/けり。¥その−ほか¥しらびやうし¥ににん、¥そうじて¥しにん、¥ひとつ¥くるま/に¥とり−のつ/て、¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥ひごろ¥めさ/れ/つる¥ところ/へ/は¥いれ/られ/ず/して、¥はるか/に¥さがり/たる¥ところ/に、¥ざしき¥しつらう/て/ぞ¥おか/れ/ける。¥ぎわう、「¥こ/は¥され/ば¥なにごと/ぞ/や。¥わが−み/に¥あやまつ¥こと/は¥なけれ/ども、¥いださ/れ¥まゐらする/だに¥ある/に、¥あまつさへ¥ざしき/を/だに¥さげ/らるる¥こと/の¥くちをし−さ/よ。¥いか/に−せ/ん」/と¥おもふ/を、¥ひと/に¥しらせ/じ/と、¥おさふる¥そで/の¥ひま/より/も、¥あまり/て¥なみだ/ぞ¥こぼれ/ける。¥ほとけ−ごぜん¥これ/を¥み/て、¥あまり/に¥あはれ/に¥おぼえ/けれ/ば、¥にふだう=どの/に¥まうし/ける/は、「¥あれ/は¥いか/に、¥ぎわう/と/こそ¥み¥まゐらせ¥さぶらへ。¥ひごろ¥めさ/れ/ぬ¥ところ/にて/も¥さぶらは/ば/こそ。¥これ/へ¥めさ/れ¥さぶらへ/かし。¥さら/ず/は¥わらは/に¥いとま/を¥たべ。¥いで¥まゐらせ/ん」/と¥まうし/けれ/ども、¥にふだう¥いか/に/も¥かなふ/まじき/と¥のたまふ¥あひだ、¥ちから¥およば/で¥いで/ざり/けり。¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん−し¥たまひ/て、「¥いか/に¥ぎわう、¥その−のち/は¥なにごと/か¥ある。¥ほとけ−ごぜん/が¥あまり/に¥つれづれ=げ/に¥みゆる/に、¥いまやう/を/も¥うたひ、¥まひ/なんど/を/も¥まう/て、¥ほとけ¥なぐさめ/よ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぎわう、¥まゐる/ほど/で/は、¥と/も−かく/も¥にふだう=どの/の¥おほせ/を/ば、¥そむく/まじき/ものを/と¥おもひ、¥ながるる¥なみだ/を¥おさへ/つつ、¥いまやう¥ひとつ/ぞ¥うたう/たる。P70¥
ほとけ/も¥むかし/は¥ぼんぶ/なり¥われ=ら/も¥つひ/に/は¥ほとけ/なり¥
いづれ/も¥ぶつしやう¥ぐせ/る¥み/を¥へだつる/のみ/こそ¥かなしけれ
/と、¥なくなく¥にへん¥うたう/たり/けれ/ば、¥その¥ざ/に¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥へいけ¥いちもん/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥しよだいぶ、¥さぶらひ/に¥いたる/まで、¥みな¥かんるゐ/を/ぞ¥もよほさ/れ/ける。¥にふだう/も¥げに/も/と¥おもひ¥たまひ/て、「¥とき/に¥とつ/て/は¥しんべう/に/も¥まうし/たり。¥さて/は¥まひ/も¥み/たけれ/ども、¥けふ/は¥まぎるる¥こと¥いで−き/たり。¥この−のち/は¥めさ/ず/とも¥つねに¥まゐり/て、¥いまやう/を/も¥うたひ、¥まひ/など/を/も¥まう/て、¥ほとけ¥なぐさめよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぎわう¥とかう/の¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥いで/に/けり。¥ぎわう、「¥まゐら/じ/と¥おもひ−さだめ/し¥みち/なれ/ども、¥はは/の¥めい/を¥そむか/じ/と、¥つらき¥みち/に¥おもむい/て、¥ふたたび¥うき¥はぢ/を¥み/つる¥こと/の¥くちをし−さ/よ。¥かくて¥この−よ/に¥ある/なら/ば、¥また/も¥うき−め/に¥あは/んず/らん。¥いま/は¥ただ¥み/を¥なげ/ん/と¥おもふ/なり」/と¥いへ/ば、¥いもうと/の¥ぎによ¥これ/を¥きい/て、「¥あね¥み/を¥なげ/ば、¥われ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/ん」/と¥いふ。¥はは¥とぢ¥これ/を¥きく/に¥かなしく/て、¥なくなく¥また¥かさねて¥けうくん−し/ける/は、「¥さやう/の¥こと¥ある/べし/と/も¥しら/ず/して、¥けうくん−し/て¥まゐらせ/つる¥こと/の¥うらめし−さ/よ。¥まことに¥わ−ごぜ/の¥うらむる/も¥ことわり/なり。¥ただし¥わ−ごぜ/が¥み/を¥なげ/ば、¥いもうと/の¥ぎによ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/ん/と¥いふ。¥わかき¥むすめ=ども/を¥さき−だて/て、¥としおい¥よはひ¥おとろへ/たる¥はは、¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/なれ/ば、¥われ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/んずる/なり。¥いまだ¥しご/も¥き/たら/ぬ¥はは/に、¥み/を¥なげ/させ/んずる¥こと/は、¥ごぎやくざい/にて/やP71¥あら/んず/らん。¥この−よ/は¥かり/の¥やどり/なれ/ば、¥はぢ/て/も−はぢ/て/も¥なに/なら/ず。¥ただ¥ながき¥よ/の¥やみ/こそ¥こころ−うけれ。¥こんじやう/で¥もの/を¥おもは/する/だに¥ある/に、¥ごしやう/で/さへ¥あくだう/へ¥おもむか/んずる¥こと/の¥かなし−さ/よ」/と、¥さめざめ/と¥かき−くどき/けれ/ば、¥ぎわう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥げに/も¥さやう/に¥さぶらは/ば、¥ごぎやくざい¥うたがひ¥なし。¥いつたん¥うき¥はぢ/を¥み/つる¥こと/の¥くちをし−さ/に/こそ、¥み/を¥なげ/ん/と/は¥まうし/たれ。¥さ¥さぶらは/ば¥じがい/を/ば¥おもひ−とどまり¥さぶらひ/ぬ。¥かくて¥みやこ/に¥ある/なら/ば、¥また/も¥うき−め/を¥み/んず/らん。¥いま/は¥ただ¥みやこ/の¥ほか/へ¥いで/ん」/とて、¥ぎわう¥にじふいち/にて¥あま/に¥なり、¥さが/の¥おく/なる¥やまざと/に、¥しば/の¥いほり/を¥ひき−むすび、¥ねんぶつ−し/て/ぞ¥ゐ/たり/ける。¥いもうと/の¥ぎによ¥これ/を¥きい/て、「¥あね¥み/を¥なげ/ば、¥われ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/ん/と/こそ¥ちぎり/しか。¥まして¥さやう/に¥よ/を¥いとは/ん/に、¥たれ/か¥おとる/べき」/とて、¥じふく/にて¥さま/を¥かへ、¥あね/と¥いつしよ/に¥こもり−ゐ/て、¥ひとへに¥ごせ/を/ぞ¥ねがひ/ける。¥はは¥とぢ¥これ/を¥きい/て、「¥わかき¥むすめ=ども/だに、¥さま/を¥かふる¥よ/の−なか/に、¥としおい¥よはひ¥おとろへ/たる¥はは、¥しらが/を¥つけ/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん」/とて、¥しじふご/にて¥かみ/を¥そり、¥ふたり/の¥むすめ¥もろとも/に、¥いつかう¥せんじゆ/に¥ねんぶつ−し/て、¥ごせ/を¥ねがふ/ぞ¥あはれ/なる。¥かくて¥はる¥すぎ¥なつ¥たけ/ぬ。¥あき/の¥はつかぜ¥ふき/ぬれ/ば、¥ほしあひ/の¥そら/を¥ながめ/つつ、¥あま/の−と¥わたる¥かぢ/の¥は/に、¥おもふ¥こと¥かく¥ころ/なれ/や。¥ゆふひ/の¥かげ/の¥にし/の¥やま/の¥は/に¥かくるる/を¥み/て/も、¥ひ/の¥いり¥たまふ¥ところ/は、¥さいはう−じやうど/にて/こそ¥あん/なれ。¥いつか¥われ=ら/も¥かしこ/にP72¥むまれ/て、¥もの/も¥おもは/で¥すごさ/んず/らん/と、¥すぎ/に/し¥かた/の¥うき¥こと=ども¥おもひ−つづけ/て、¥ただ¥つきせ/ぬ¥もの/は¥なみだ/なり。¥
たそかれどき/も¥すぎ/ぬれ/ば、¥たけ/の¥あみど/を¥とぢ−ふさぎ、¥ともしび¥かすか/に¥かき−たて/て、¥おやこ¥さん−にん¥もろとも/に¥ねんぶつ−し/て¥ゐ/たる¥ところ/に、¥たけ/の¥あみど/を、¥ほとほと/と¥うち−たたく¥もの¥いで−き/たり。¥その−とき¥あまども¥きも/を¥けし、「¥あはれ、¥これ/は、¥いふ¥かひ−なき¥われ=ら/が¥ねんぶつ−し/て¥ゐ/たる/を¥さまたげ/ん/とて、¥まえん/の¥き/たる/にて/ぞ¥ある/らん。¥ひる/だに/も¥ひと/も¥とひ−こ/ぬ¥やまざと/の、¥しば/の¥いほり/の¥うち/なれ/ば、¥よ¥ふけ/て¥たれ/か/は¥たづぬ/べき。¥わづか/に¥たけ/の¥あみど/なれ/ば、¥あけ/ず/とも¥おし−やぶら/ん¥こと¥やすかる/べし。¥いま/は¥ただ¥なかなか¥あけ/て¥いれ/ん/と¥おもふ/なり。¥それ/に¥なさけ/を¥かけ/ず/して、¥いのち/を¥うしなふ¥もの/なら/ば、¥としごろ¥たのみ¥たてまつる¥みだ/の¥ほんぐわん/を¥つよく¥しんじ/て、¥ひま¥なく¥みやうがう/を¥となへ¥たてまつる/べし。¥こゑ/を¥たづね/て¥むかへ¥たまふ/なる¥しやうじゆ/の¥らいかう/にて¥ましませ/ば、¥など/か¥いんぜふ¥なかる/べき。¥あひ−かまへ/て¥ねんぶつ¥おこたり¥たまふ/な」/と¥たがひ/に¥こころ/を¥いましめ/て、¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥たけ/の¥あみど/を¥あけ/たれ/ば、¥まえん/にて/は¥なかり/けり。¥ほとけ−ごぜん/ぞ¥いで−きたる。¥ぎわう、「¥あれ/は¥いか/に、¥ほとけ−ごぜん/と¥み¥まゐらする/は。¥ゆめ/か/や¥うつつ/か」/と¥いひ/けれ/ば、¥ほとけ−ごぜん¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥かやう/の¥こと¥まうせ/ば、¥すべて¥こと−あたらしう/は¥さぶらへ/ども、¥まうさ/ず/は¥また¥おもひ−しら/ぬ¥み/と/も¥なり/ぬ/べけれ/ば、¥はじめ/より/して、¥こまごま/と¥あり/の−まま/に¥まうす/なり。¥もと/より¥わらは/は¥すゐさん/の¥もの/にて、¥すでに¥いださ/れ¥まゐらせ/し/を、P73¥わ−ごぜ/の¥まうしじやう/に¥よつ/て/こそ、¥めし−かへされ/て/も¥さぶらふ/に、¥をんな/の¥み/の¥いふ¥かひ−なき¥こと、¥わが−み/を¥こころ/に¥まかせ/ず/して、¥わ−ごぜ/を¥いださ/せ¥まゐらせ/て、¥わらは/が¥おし−とどめ/られ/ぬる¥こと、¥いま/に¥はづかしう¥かたはらいたく/こそ¥さぶらへ。¥わ−ごぜ/の¥いで/られ¥たまひ/し/を¥み/し/に¥つけ/て/も、¥いつか¥また¥わが¥み/の−うへ/なら/ん/と¥おもひ−ゐ/たれ/ば、¥うれし/と/は¥さらに¥おもは/ず。¥しやうじ/に¥また、『¥いづれ/か¥あき/に¥あは/で¥はつ/べき』/と¥かき−おき¥たまひ/し¥ふで/の¥あと、¥げに/も/と¥おもひ¥さぶらひ/し/ぞ/や。¥いつ/ぞ/や¥また¥わ−ごぜ/の¥めさ/れ¥まゐらせ/て、¥いまやう/を¥うたひ¥たまひ/し/に/も、¥おもひ−しら/れ/て/こそ¥さぶらへ。¥その−のち/は¥ざいしよ/を¥いづく/と/も¥しら/ざり/し/に、¥この−ほど¥きけ/ば、¥かやう/に¥さま/を¥かへ、¥ひとつ−ところ/に¥ねんぶつ−し/て¥おはし/つる¥よし、¥あまり/に¥うらやましく/て、¥つね/は¥いとま/を¥まうし/しか/ども、¥にふだう=どの¥さらに¥おん=もちひ¥ましまさ/ず。¥つくづく¥もの/を¥あんずる/に、¥しやば/の¥えいぐわ/は¥ゆめ/の¥ゆめ、¥たのしみ−さかえ/て¥なにか¥せ/ん。¥にんじん/は¥うけ−がたく、¥ぶつけう/に/は¥あひ−がたし。¥この−たび¥ないり/に¥しづみ/な/ば、¥たしやう¥くわうごふ/を/ば¥へだつ/とも、¥うかび−あがら/ん¥こと¥かたかる/べし。¥らうせう¥ふぢやう/の¥さかひ/なれ/ば、¥とし/の¥わかき/を¥たのむ/べき/に¥あら/ず。¥いづる¥いき/の¥いる/を/も¥まつ/べから/ず。¥かげろふ¥いなづま/より/も¥なほ¥はかなし。¥いつたん/の¥えいぐわ/に¥ほこつ/て、¥ごせ/を¥しら/ざら/ん¥こと/の¥かなし−さ/に、¥けさ¥まぎれ−いで/て、¥かく¥なつ/て/こそ¥まゐり/たれ」/とて、¥かづい/たる¥きぬ/を¥うち−のけ/たる/を¥みれ/ば、¥あま/に¥なつ/て/ぞ¥いで−きたる。「¥かやう/に¥さま/を¥かへ/て¥まゐり/たる¥うへ/は、¥ひごろ/の¥とが/を/ば¥ゆるし¥たまへ。¥ゆるさ/ん/と/だに¥のたまは/ば、¥もろとも/に¥ねんぶつ−し/て、¥ひとつ−はちす/のP74¥み/と¥なら/ん。¥それ/に/も¥なほ¥こころ−ゆか/ず/は、¥これ/より¥いづち/へ/も¥まよひ−ゆき、¥いか/なら/ん¥こけ/の¥むしろ、¥まつ/が¥ね/に/も¥たふれ−ふし、¥いのち/の¥あら/ん¥かぎり/は¥ねんぶつ−し/て、¥わうじやう/の¥そくわい/を¥とげ/ん/と¥おもふ/なり」/とて、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と¥かき−くどき/けれ/ば、¥ぎわう¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥わ−ごぜ/の¥それ−ほど/まで¥おもひ¥たまは/ん/と/は¥ゆめ/に/も¥しら/ず、¥うき¥よ/の−なか/の¥さが/なれ/ば、¥み/の¥うき/と/こそ¥おもひ/し/に、¥と/も−すれ/ば¥わ−ごぜ/の¥こと/のみ¥うらめしく/て、¥こんじやう/も¥ごしやう/も、¥なまじひ/に¥し−そんじ/たる¥ここち/にて¥あり/つる/に、¥かやう/に¥さま/を¥かへ/て¥おはし/つる¥うへ/は、¥ひごろ/の¥とが/は、¥つゆ¥ちり/ほど/も¥のこら/ず、¥いま/は¥わうじやう¥うたがひ¥なし。¥この−たび¥そくわい/を¥とげ/ん/こそ、¥なに/より/も¥また¥うれしけれ。¥わらは/が¥あま/に¥なり/し/を/だに、¥よ/に¥あり−がたき¥こと/の¥やう/に、¥ひと/も¥いひ、¥わが−み/も¥おもひ¥さぶらひ/し/ぞ/や。¥それ/は¥よ/を¥うらみ、¥み/を¥なげい/たれ/ば、¥さま/を¥かふる/も¥ことわり/なり。¥わ−ごぜ/は¥うらみ/も¥なく¥なげき/も¥なし。¥ことし/は¥わづか¥じふしち/に/こそ¥なり/し¥ひと/の、¥それ−ほど/まで¥ゑど/を¥いとひ、¥じやうど/を¥ねがは/ん/と、¥ふかく¥おもひ−いり¥たまふ/こそ、¥まこと/の¥だいだうしん/と/は¥おぼえ¥さぶらひ/しか。¥うれしかり/ける¥ぜんぢしき/かな。¥いざ¥もろとも/に¥ねがは/ん」/とて、¥しにん¥いつしよ/に¥こもり−ゐ/て、¥あさゆふ¥ぶつぜん/に¥むかひ、¥はな¥かう/を¥そなへ/て、¥たねん¥なく¥ねがひ/ける/が、¥ちそく/こそ¥あり/けれ、¥みな¥わうじやう/の¥そくわい/を¥とげ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥され/ば¥かの¥ごしらかはの−ほふわう/の¥ちやうがうだう/の¥くわこちやう/に/も、¥ぎわう、¥ぎによ、¥ほとけ、¥とぢ=ら/が¥そんりやう/と、¥しにん¥いつしよ/に¥いれ/られ/たり。¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。P75¥「にだいのきさき」(『にだいのきさき』)S0107¥むかし/より¥いま/に¥いたる/まで、¥げんぺい−りやうし¥てうか/に¥めし−つかは/れ/て、¥わうくわ/に¥したがは/ず、¥おのづから¥てうけん/を¥かろんずる¥もの/に/は、¥たがひ/に¥いましめ/を¥くはへ/しか/ば、¥よ/の¥みだれ/は¥なかり/し/に、¥ほうげん/に¥ためよし¥きら/れ、¥へいぢ/に¥よしとも¥ちう−せ/られ/て¥のち/は、¥すゑずゑ/の¥げんじ=ども¥あるひは¥ながさ/れ、¥あるひは¥うしなは/れ/て、¥いま/は¥へいけ/の¥いちるゐ/のみ¥はんじやう−し/て、¥かしら/を¥さし−いだす¥もの¥なし。¥いか/なら/ん¥すゑ/の¥よ/まで/も、¥なにごと/か¥あら/ん/と/ぞ¥みえ/し。¥され/ども¥とばのゐん¥ごあんが/の¥のち/は、¥ひやうがく¥うち−つづい/て、¥しざい、¥るけい、¥けつくわん、¥ちやうにん、¥つねに¥おこなは/れ/て、¥かいだい/も¥しづか/なら/ず、¥せけん/も¥いまだ¥らくきよ−せ/ず。¥なかんづく¥えいりやく、¥おうほう/の¥ころ/より/して、¥ゐん/の¥きんじゆしや/を/ば、¥うち/より¥おん=いましめ¥あり、¥うち/の¥きんじゆしや/を/ば¥ゐん/より¥いましめ/らるる¥あひだ、¥じやうげ¥おそれ−をののい/て、¥やすい¥こころ/も¥せ/ず、¥ただ¥しんえん/に¥のぞん/で、¥はくひよう/を¥ふむ/に¥おなじ。¥しゆしやう¥しやうくわう¥ふし/の¥おん=あひだ/に、¥なにごと/の¥おん=へだて/か¥ある/なれ/ども、¥おもひ/の−ほか/の¥こと=ども¥おほかり/けり。¥これ/も¥よ¥げうき/に¥およん/で、¥ひと¥けうあく/を¥さき/と¥する¥ゆゑ/なり。¥しゆしやう、¥ゐん/の¥おほせ/を¥つね/は¥まうし−かへさ/せ¥おはしまし/ける¥なか/に、¥ひと¥じぼく/を¥おどろかし、¥よ¥もつて¥おほき/に¥かたぶけ¥まうす¥こと¥あり/けり。¥こ=こんゑのゐん/の¥きさき、¥たいくわうたいこうぐう/と¥まうし/し/は、P76¥おほひのみかど/の−うだいじん−きんよし=こう/の¥おん=むすめ/なり。¥せんてい/に¥おくれ¥たてまつら/せ¥たまひ/て¥のち/は、¥ここのへ/の¥ほか、¥このゑかはら/の¥ごしよ/に/ぞ¥うつり−すま/せ¥たまひ/ける。¥さきの−きさいのみや/にて、¥かすか/なる¥おん=ありさま/にて¥わたら/せ¥たまひ/し/が、¥えいりやく/の¥ころほひ/は、¥おん=とし¥にじふにさん/に/も/や¥なら/せ¥ましまし/けん、¥おん=さかり/も¥すこし¥すぎ/させ¥おはします/ほど/なり。¥され/ども、¥てんが¥だいいち/の¥びじん/の¥きこえ¥ましまし/けれ/ば、¥しゆしやう¥いろ/に/のみ¥そめる¥おん=こころ/にて、¥ひそか/に¥かうりよくし/に¥ぜうじ/て、¥ぐわいきう/に¥ひき−もとめ/しむる/に¥およん/で、¥この¥おほみや/の¥ごしよ/へ、¥ひそか/に¥ご=えんしよ¥あり。¥おほみや¥あへて¥きこしめし/も¥いれ/ず。¥され/ば¥ひたすら¥はやほ/に¥あらはれ/て、¥きさき¥ご=じゆだい¥ある/べき¥よし、¥うだいじんげ/に¥せんじ/を¥くださ/る。¥この¥こと¥てんが/に¥おい/て¥こと/なる¥しようじ/なれ/ば、¥くぎやう−せんぎ¥あつ/て、¥おのおの¥いけん/を¥いふ。「¥まづ¥いてう/の¥せんじよう/を¥とぶらふ/に、¥しんだん/の¥そくてんくわうごう/は、¥たう/の¥たいそう/の¥きさき、¥かうそう−くわうてい/の¥けいぼ/なり。¥たいそう¥ほうぎよ/の¥のち、¥かうそう/の¥きさき/に¥たち¥たまふ¥こと¥あり。¥それ/は¥いてう/の¥せんぎ/たる¥うへ、¥べつだん/の¥こと/なり。¥しかれ/ども¥わが¥てう/に/は、¥じんむ−てんわう/より¥この−かた¥にんわう¥しちじふ−よ−だい/に¥いたる/まで、¥いまだ¥に−だい/の¥きさき/に¥たた/せ¥たまふ¥れい/を¥きか/ず」/と¥しよきやう¥いちどう/に¥うつたへ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥しやうくわう/も¥しかる/べから/ざる¥よし、¥こしらへ¥まうさ/せ¥たまへ/ども、¥しゆしやう¥おほせ/なり/ける/は、「¥てんし/に¥ぶも¥なし。¥われ¥じふぜん/の¥かいこう/に¥よつ/て、¥いま¥ばんじよう/の−ほうゐ/を¥たもつ。¥これ−ほど/の¥こと¥など/か¥えいりよ/に¥まかせ/ざる/べき」/とて、¥やがて¥ご=じゆだい/の¥ひ、¥せんげ−せ/られ/ける¥うへ/は、¥しやうくわう/も¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず。P77¥
おほみや¥かく/と¥きこしめさ/れ/ける/より、¥おん=なみだ/に¥しづま/せ¥おはします。¥せんてい/に¥おくれ¥まゐらせ/に/し¥きうじゆ/の¥あき/の¥はじめ、¥おなじ¥のばら/の¥つゆ/と/も¥きえ、¥いへ/を/も¥いで¥よ/を/も¥のがれ/たり/せ/ば、¥いま¥かかる¥うき¥みみ/を/ば¥きか/ざら/まし/と/ぞ、¥おん=なげき¥あり/ける。¥ちち/の¥おとど¥こしらへ¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥よ/に¥したがは/ざる/を¥もつて¥きやうじん/と¥す/と¥みえ/たり。¥すでに¥ぜうめい/を¥くださ/る。¥しさい/を¥まうす/に¥ところ¥なし。¥ただ¥すみやか/に¥まゐらせ¥たまふ/べき/なり。¥もし¥わうじ¥ご=たんじやう¥あり/て、¥きみ/も¥こくも/と¥いは/れ、¥ぐらう/も¥ぐわいそ/と¥あふが/る/べき¥ずゐさう/にて/も/や¥さふらふ/らん。¥これ¥ひとへに¥ぐらう/を¥たすけ/させ¥まします¥ご=かうかう/の¥おん=いたり/なる/べし」/と、¥やうやう/に¥こしらへ¥まうさ/せ¥たまへ/ども、¥おん=ぺんじ/も¥なかり/けり。¥おほみや¥その−ころ¥なに/と−なき¥おん=てならひ/の¥ついで/に、¥
うき−ふし/に¥しづみ/も¥やら/で¥かはたけ/の¥よ/に¥ためし¥なき¥な/を/や¥ながさ/む W004¥
よ/に/は¥いか/に/して¥もれ/ける/や/らん、¥あはれ/に¥やさしき¥ためし/に/ぞ¥ひとびと¥まうし−あは/れ/ける。¥すでに¥ご=じゆだい/の¥ひ/に/も¥なり/しか/ば、¥ちち/の¥おとど、¥ぐぶ/の¥かんだちめ、¥しゆつしや/の¥ぎしき/など、¥こころ¥こと/に¥だし−たて¥まゐらつ/させ¥たまひ/けり。¥おほみや¥もの=うき¥おん=いでたち/なれ/ば、¥とみ/に/も¥たてまつら/ず、¥はるか/に¥よ¥ふけ、¥さ−よ/も¥なかば/に¥なり/て¥のち、¥おん=くるま/に¥たすけ−のせ/られ/させ¥たまひ/けり。¥ご=じゆだい/の¥のち/は、¥れいけいでん/に/ぞ¥ましまし/ける。¥され/ば¥ひたすら¥あさまつりごと/を¥すすめ¥まうさ/せ¥たまふ¥おん=さま/なり。¥かの¥ししんでん/の¥くわうきよ/に/は、¥げんじやう/の¥しやうじ/を¥たて/られ/たり。P78¥いいん、¥ていごりん、¥ぐせいなん、¥たいこうばう、¥ろくりせんせい、¥りせき、¥しば、¥てなが、−あしなが、¥むまがた/の¥しやうじ、¥おに/の−ま、¥りしやうぐん/が¥すがた/を¥さながら¥うつせ/る¥しやうじ/も¥あり。¥をはりの−かみ−をのの−たうふう/が、¥しつくわい−げんじやう/の¥しやうじ/と¥かける/も、¥ことわり/と/ぞ¥みえ/し。¥かの¥せいりやうでん/の¥ぐわと/の¥みしやうじ/に/は、¥むかし¥かなをか/が¥かき/たり/し¥ゑんざん/の¥ありあけ/の−つき/も¥あり/とかや。¥こ=ゐん/の¥いまだ¥えうしゆ/にて¥ましませ/し¥その−かみ、¥なに/と−なき¥おん=て¥まさぐり/の¥ついで/に、¥かき−くもらかさ/せ¥たまひ/たり/し/が、¥あり/し/ながら/に¥すこし/も¥たがは/せ¥たまは/ぬ/を¥ごらんじ/て、¥せんてい/の¥むかし/も/や¥おん=こひしう¥おぼしめさ/れ/けん、¥
おもひ/き/や¥うきみ/ながら/に¥めぐり−き/て¥おなじ¥くもゐ/の¥つき/を¥み/む/と/は W005¥
その¥あひだ/の¥おん=なからひ、¥いひ−しら/ず¥あはれ/に¥やさしき¥おん=こと/なり。
「がくうちろん」(『がくうちろん』)S0108¥さる−ほど/に、¥えいまん−ぐわんねん/の¥はる/の¥ころ/より、¥しゆしやう¥ごふよ/の¥おん=こと/と¥きこえ/させ¥たまひ/し/が、おなじき¥なつ/の¥はじめ/に/も¥なり/しか/ば、¥こと/の−ほか/に¥おもらせ¥たまふ。¥これ/に¥よつ/て、¥おほくら/の−たいふ−いきの−かねもり/が¥むすめ/の¥はら/に、¥こんじやう¥いちのみや/の¥に−さい/に¥なら/せ¥たまふ/が¥ましまし/ける/を、¥たいし/に¥たて¥まゐら/させ¥たまふ/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥おなじき−ろくぐわつ−にじふごにち、¥にはか/にP79¥しんわう/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまふ。¥やがて¥その¥よ¥じゆぜん¥あり/しか/ば、¥てんが¥なに/と−なう¥あわて/たる¥さま/なり/けり。¥その−とき/の¥いうしよく/の¥ひとびと¥まうし−あは/れ/ける/は、¥まづ¥ほんてう/に、¥とうたい/の¥れい/を¥たづぬる/に、¥せいわ−てんわう¥く−さい/に/して、¥もんどく−てんわう/の¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまふ。¥それ/は¥かの¥しうくたん/の¥せいわう/に¥かはり、¥なんめん/に/して、¥いちじつ−ばんき/の¥まつりごと/を¥をさめ¥たまひ/し/に¥なぞらへ/て、¥ぐわいそ¥ちうじん=こう、¥えうしゆ/を¥ふち−し¥たまへ/り。¥これ/ぞ¥せつしやう/の¥はじめ/なる。¥とばのゐん¥ご−さい、¥こんゑのゐん¥さん−ざい/にて¥せんそ¥あり。¥かれ/を/こそ、¥いつしか/なれ/と¥まうし/し/に、¥これ/は¥に−さい/に¥なら/せ¥たまふ。¥せんれい¥なし。¥もの−さわがし/とも¥おろか/なり。¥さる−ほど/に、¥おなじき−しちぐわつ−にじふしちにち、¥しやうくわう¥つひに¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥おん=とし¥にじふさん。¥つぼめる¥はな/の¥ちれ/る/が/ごとし。¥たま/の−すだれ、¥にしき/の−ちやう/の¥うち、¥みな¥おん=なみだ/に¥むせば/せ¥おはします。¥やがて¥その¥よ、¥かうりうじ/の¥うしとら、¥れんだいの/の¥おく、¥ふなをかやま/に¥をさめ¥たてまつる。¥ご=さうそう/の¥よ、¥えんりやく¥こうぶく¥りやうじ/の¥だいしゆ、¥がくうちろん/と¥いふ¥こと/を¥し−いだし/て、¥たがひ/に¥らうぜき/に¥およぶ。¥
いつてん/の−きみ¥ほうぎよ¥なつ/て¥のち、¥ご=むしよ/へ¥わたし¥たてまつる¥とき/の¥さほふ/は、¥なんぼく¥にきやう/の¥だいしゆ、¥ことごとく¥ぐぶ−し/て、¥ご=むしよ/の¥めぐり/に、¥わが¥てらでら/の¥がく/を¥うつ¥こと¥あり/けり。¥まづ¥しやうむ−てんわう/の¥ご=ぐわん、¥あらそふ/べき¥てら¥なけれ/ば、¥とうだいじ/の¥がく/を¥うつ。¥つぎ/に¥たんかいこう/の¥ご=ぐわん/とて¥こうぶくじ/の¥がく/を¥うつ。¥ほくきやう/に/は、¥こうぶくじ/に¥むかへ/て、¥えんりやくじ/の¥がく/を¥うつ。¥つぎ/に¥てんむ−てんわう/の¥ご=ぐわん、¥けうだい−くわしやう、¥ちしよう−だいし/の¥さうさう/とて¥をんじやうじ/の¥がく/を¥うつ。¥しかる/を、¥さんもん/の¥だいしゆ、¥いかが¥おもひ/けん、¥せんれい/を¥そむい/て、¥とうだいじ/の¥つぎ、¥こうぶくじ/のP80¥うへ/に、¥えんりやくじ/の¥がく/を¥うつ¥あひだ、¥なんと/の¥だいしゆ、¥とやせまし、¥かうやせまし/と、¥せんぎ−する¥ところ/に、¥ここに¥こうぶくじ/の¥さいこんだうじゆ、¥くわんおん−ばう、¥せいしばう/とて、¥きこえ/たる¥だいあくそう¥に−にん¥あり/けり。¥くわんおん−ばう/は¥くろいと−をどし/の−はらまき/に、¥しらえ/の−なぎなた、¥くき−みじか/に¥とり、¥せいしばう/は¥もよぎ−をどし/の−よろひ¥き、¥こくしつ/の−おほ−だち¥もつ/て、¥に−にん¥つと¥はしり−いで、¥えんりやくじ/の¥がく/を¥きつ/て¥おとし、¥さんざん/に¥うち−わり、「¥うれし/や¥みづ、¥なる/は¥たき/の¥みづ、¥ひ/は¥てる/とも、¥たえ/ず/と¥うたへ」/と¥はやし/つつ、¥なんと/の¥しゆと/の¥なか/へ/ぞ¥いり/に/ける。「きよみづえんしやう」(『きよみづでらえんしやう』)S0109¥さんもん/の¥だいしゆ、¥らうぜき/を¥いたさ/ば¥てむかひ¥す/べき¥ところ/に、¥こころ−ぶかう¥ねらふ¥かた/も/や¥あり/けん、¥ひとことば/も¥いださ/ず。¥みかど¥かくれ/させ¥たまひ/て¥のち/は、¥こころ−なき¥さうもく/まで/も、¥みな¥うれへ/たる¥いろ/に/こそ¥ある/べき/に、¥この¥さうどう/の¥あさまし−さ/に¥たかき/も¥いやしき/も、¥きも−たましひ/を¥うしなつ/て、¥しはう/へ¥みな¥たいさん−す。¥おなじき−にじふくにち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥さんもん/の¥だいしゆ¥おびたたしう¥げらく−す/と¥きこえ/しか/ば、¥ぶし、¥けんびゐし、¥にしざかもと/に¥ゆき−むかつ/て¥ふせぎ/けれ/ども、¥こと/と/も¥せ/ず、¥おし−やぶつ/て¥らんにふ−す。¥また¥なにもの/の¥まうし−いだし/たり/ける/やらん、「¥いちゐん、¥さんもん/の¥だいしゆ/に¥おほせ/て、¥へいけ−つゐたう−せ/らる/べし」/と¥きこえ/しか/ば、¥ぐんびやう¥だいり/にP81¥さんじ/て¥しはう/の¥ぢんどう/を¥かため/て¥けいご−す。¥へいじ/の¥いちるゐ¥みな¥ろくはら/に¥はせ−あつまる。¥いちゐん/も¥いそぎ¥ろくはら/へ¥ご=かう¥なる。¥きよもり=こう¥そのーとき/は¥いまだ¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥おはし/ける/が、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥こまつ=どの、「¥なに/に¥よつ/て、¥ただいま¥さる−おん=こと¥さふらふ/べき」/と¥しづめ¥まうさ/れ/けれ/ども、¥つはもの=ども¥さわぎ−ののしる¥こと¥おびたたし。¥され/ども¥さんもん/の¥だいしゆ¥ろくはら/へ/は¥よせ/ず/して、¥そぞろ/なる¥せいすゐじ/に¥おし−よせ/て、¥ぶつかく¥そうばう¥いち−う/も¥のこさ/ず¥みな¥やき−はらふ。¥これ/は¥さんぬる¥ご=さうそう/の¥よ/の¥くわいけい/の−はぢ/を¥きよめ/ん/が¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥せいすゐじ/は¥こうぶくじ/の¥まつじ/たる/に¥よつ/て/なり。¥せいすゐじ¥やけ/たり/ける¥あした、「¥くわんおんくわけう−へんじやうち/は¥いか/に」/と、¥ふだ/に¥かい/て、¥だいもん/の¥まへ/に/ぞ¥たて/たり/ける。¥つぎ/の−ひ¥また、「¥りやくこふ−ふしぎ¥ちから¥およば/ず」/と、¥かへし/の¥ふだ/を/ぞ¥うつ/たり/ける。¥しゆと¥かへり−のぼり/けれ/ば、¥いちゐん/も¥いそぎ¥ろくはら/より¥くわんぎよ¥なる。¥しげもりの−きやう/ばかり/ぞ、¥おん=おくり/に/は¥まゐら/れ/ける。¥ちち/の¥きやう/は¥まゐら/れ/ず。¥なほ¥ようじん/の¥ため/か/と/ぞ¥みえ/し。¥
しげもりの−きやう、¥おん=おくり/より¥かへら/れ/たり/けれ/ば、¥ちち/の¥だいなごん¥のたまひ/ける/は、「¥さて/も¥いちゐん/の¥ご=かう/こそ¥おほき/に¥おそれ¥おぼゆれ。¥かねても¥おぼしめし−より、¥おほせ/らるる¥むね/の¥あれ/ば/こそ、¥かう/は¥きこゆ/らめ。¥それ/に/も¥なほ¥うち−とけ¥たまふ/まじ」/と¥のたまへ/ば、¥しげもりの−きやう¥まうさ/れ/ける/は、「¥この¥こと¥ゆめゆめ¥おん=けしき/に/も、¥おん=ことば/に/も¥いださ/せ¥たまふ/べから/ず。¥ひと/に¥こころつけがほ/に、¥なかなか¥あしき¥おん=こと/なり。¥これ/に¥つけ/て/も、¥よくよく¥えいりよ/に¥そむか/せ¥たまは/で、¥ひと/の¥ため/に¥おん=なさけ/を¥ほどこさ/せ¥ましまさ/ば、¥しんめい¥さんぽう¥かごP82¥ある/べし。¥さら/ん/に¥とつ/て/は、¥おん=み/の¥おそれ¥さふらふ/まじ」/とて¥たた/れ/けれ/ば、「¥しげもりの−きやう/は¥ゆゆしう¥おほやう/なる/ものかな」/と/ぞ、¥ちち/の¥きやう/も¥のたまひ/ける。¥いちゐん¥くわんぎよ/の¥のち、¥ごぜん/に¥うとから/ぬ¥きんじゆしや=たち、¥あまた¥さぶらは/れ/ける/に、「¥さて/も¥ふしぎ/の¥こと/を¥まうし−いだし/たる/ものかな。¥つゆ/も¥おぼしめし−よら/ぬ/ものを」/と¥おほせ/けれ/ば、¥ゐん−ぢう/の¥きりもの/に¥さいくわう−ほふし/と¥いふ¥もの¥あり。¥をりふし¥ごぜん¥ちかう¥さぶらひ/ける/が、¥すすみ−いで/て、「¥てん/に¥くち¥なし、¥にん/を¥もつて¥いは/せよ/と¥まうす。¥へいけ¥もつて/の−ほか/に¥くわぶん/に¥さふらふ¥あひだ、¥てん/の¥おん=ぱからひ/に/や」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ひとびと、「¥この¥こと¥よし−なし。¥かべ/に¥みみ¥あり。¥おそろし−おそろし」/と/ぞ、¥おのおの¥ささやき−あは/れ/ける。
(『とうぐうだち』)S0110¥さる−ほど/に、¥その¥とし/は¥りやうあん/なり/けれ/ば、¥ご=けい¥だいじやうゑ/も¥おこなは/れ/ず。¥けんしゆんもんゐん、¥そのーとき/は¥いまだ¥ひがしのおんかた/と¥まうし/ける。¥その¥おん=はら/に、¥いちゐん/の¥みや/の¥ご−さい/に¥なら/せ¥たまふ/の¥ましまし/ける/を、¥たいし/に¥たて¥まゐら/させ¥たまふ/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥おなじき−じふにんぐわつ−にじふしにち、¥にはか/に¥しんわう/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまふ。¥あくれ/ば¥かいげん¥あり/て、¥にんあん/と¥かうす。¥おなじき−とし/の−じふぐわつ−やうかのひ、¥きよねん¥しんわう/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまひ/し¥わうじ、¥とうさんでう/にて¥とうぐう/に¥たた/せ¥たまふ。¥とうぐう/は¥おん=をぢ¥ろく−さい、¥しゆしやう/は¥おん=をひ¥さん−ざい、¥いづれ/も¥ぜうもく/に¥あひ−かなは/ず。¥ただし¥くわんわ−にねん/に、¥いちでうのゐん¥しち−さい/にて¥ご=そくゐ¥あり。¥さんでうのゐん¥じふいつ−さい/にて¥とうぐう/に¥たた/せ¥たまふ。¥せんれい¥なき/に/しも¥あら/ず。¥しゆしやう/は¥に−さい/にて¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥わづか¥ご−さい/と¥まうし/し¥にんぐわつ−じふくにち/に、¥おん=くらゐ/を¥すべり/て、¥しんゐん/と/ぞ¥まうし/ける。P83¥いまだ¥おん=げんぶく/も¥なく/して、¥だいじやう−てんわう/の¥そんがう¥あり。¥かんか¥ほんてう、¥これ/や¥はじめ/なら/ん。¥にんあん−さんねん−さんぐわつ−はつかのひ、¥しんてい¥だいこくでん/に/して¥ご=そくゐ¥あり。¥この¥きみ/の¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/ぬる/は、¥いよいよ¥へいけ/の¥えいぐわ/と/ぞ¥みえ/し。¥こくも¥けんしゆんもんゐん/と¥まうす/は、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた、¥はちでう/の−にゐ=どの/の¥おん=いもうと/なり。¥また¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/と¥まうす/も、¥この¥にようゐん/の¥おん=せうと/なる¥うへ、¥うち/の¥ご=ぐわいせき/なり。¥ないげ/に¥つけ/て¥しつけん/の−しん/と/ぞ¥みえ/し。¥その−ころ/の¥じよゐ¥じもく/と¥まうす/も、¥ひとへに¥この¥ときただの−きやう/の¥まま/なり/けり。¥やうきひ/が¥さいはひ/し¥とき、¥やうこくちう/が¥さかえ/し/が/ごとし。¥よ/の¥おぼえ、¥とき/の¥きら¥めでたかり/き。¥にふだう−しやうこく¥てんが/の¥だいせうじ/を¥のたまひ¥あはせ/られ/けれ/ば、¥とき/の−ひと、¥へいくわんばく/と/ぞ¥まうし/ける。
「てんがののりあひ」(『てんがののりあひ』)S0111¥さる−ほど/に¥かおう−ぐわんねん−しちぐわつ−じふろくにち、¥いちゐん¥ご=しゆつけ¥あり。¥ご=しゆつけ/の¥のち/も、¥ばんき/の¥まつりごと/を¥しろしめさ/れ/けれ/ば、¥ゐん、¥うち、¥わく¥かた¥なし。¥ゐん−ぢう/に¥ちかう¥めし−つかは/れ/ける¥くぎやう−てんじやうびと、¥じやうげ/の¥ほくめん/に¥いたる/まで、¥くわんゐ¥ほうろく、¥みな¥み/に¥あまる/ばかり/なり。¥され/ども¥ひと/の¥こころ/の¥ならひ/にて、¥なほ¥あき−たら/で、「¥あつぱれ、¥その¥ひと/の¥うせ/たら/ば、P84¥その¥くに/は¥あき/な/ん。¥その¥ひと/の¥ほろび/たら/ば、¥その¥くわん/に/は¥なり/な/ん」/など、¥うとから/ぬ¥どち/は、¥より−あひ−より−あひ、¥ささやき/けり。¥いちゐん/も¥ないない¥おほせ/なり/ける/は、「¥むかし/より¥だいだい/の¥てうてき/を¥たひらげ/たる¥もの¥おほし/と¥いへ/ども、¥いまだ¥かやう/の¥こと/は¥なし。¥さだもり¥ひでさと/が¥まさかど/を¥うち、¥らいぎ/が¥さだたふ¥むねたふ/を¥ほろぼし、¥ぎか/が¥たけひら¥いへひら/を¥せめ/たり/し/に/も、¥けんじやう¥おこなは/れ/し¥こと、¥わづか¥じゆりやう/に/は¥すぎ/ざり/き。¥いま¥きよもり/が、¥かく¥こころ/の¥まま/に¥ふるまふ¥こと/こそ¥しかる/べから/ね。¥これ/も¥よ¥すゑ/に¥なつ/て、¥わうぼふ/の¥つき/ぬる¥ゆゑ/なり」/と/は¥おほせ/なり/けれ/ども、¥ついで¥なけれ/ば¥おん=いましめ/も¥なし。¥へいけ/も¥また¥べつ−し/て¥てうか/を¥うらみ¥たてまつら/るる¥こと/も¥なかり/し/に、¥よ/の¥みだれ−そめ/ける¥こんぼん/は、¥いんじ¥かおう−にねん−じふぐわつ−じふろくにち/に、¥こまつ=どの/の¥じなん、¥しんーざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥その−とき/は¥いまだ¥ゑちぜんの−かみ/とて、¥しやうねん¥じふさん/に¥なら/れ/ける/が、¥ゆき/は¥はだれ/に¥ふつ/たり/けり。¥かれの/の¥けしき、¥まこと/に¥おもしろかり/けれ/ば、¥わかき¥さぶらひ=ども¥さんじつ−き/ばかり¥めし−ぐし/て、¥れんだいの/や、¥むらさきの、¥うこんのばば/に¥うち−いで/て¥たか=ども¥あまた¥すゑ/させ、¥うづら¥ひばり/を¥おつ−たて−おつ−たて、¥ひねもす/に¥かり−くらし、¥はくぼ/に¥およん/で¥ろくはら/へ/こそ¥かへら/れ/けれ。¥
その−とき/の¥ごせつろく/は¥まつ=どの/にて/ぞ¥ましまし/ける。¥ひがし/の−とうゐん/の¥ごしよ/より、¥ご=さんだい¥あり/けり。¥いうはうもん/より¥じゆぎよ¥ある/べき/にて、¥ひがし/の−とうゐん/を¥みなみ/へ、¥おほひのみかど/を¥にし/へ¥ぎよ=しゆつ¥なる/に、¥すけもり−あそん、¥おほひのみかど¥ゐのくま/にて、¥てんが/の¥ぎよ=しゆつ/に¥はなつき/に¥まゐり−あふ。¥おん=とも/の¥ひと=ども、「¥なにもの/ぞ、¥らうぜき/なり。¥ぎよ=しゆつ¥なる/に、¥のりもの/より¥おり¥さふらへ¥おりP85¥さふらへ」/と¥いら/で/けれ/ども、¥あまり/に¥ほこり−いさみ、¥よ/を¥よ/と/も¥せ/ざり/ける¥うへ、¥めし−ぐし/たる¥さぶらひ=ども/も、¥みな¥にじふ/より¥うち/の¥わかもの=ども/なれ/ば、¥れいぎ¥こつぽふ¥わきまへ/たる¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥てんが/の¥ぎよ=しゆつ/と/も¥いは/ず、¥いつせつ¥げば/の¥れいぎ/に/も¥およば/ず、¥ただ¥かけ−やぶつ/て¥とほら/ん/と¥する¥あひだ、¥くら−さ/は¥くらし、¥つやつや¥だいじやう/の−にふだう/の¥まご/と/も¥しら/ず、¥また¥せうせう/は¥しつ/たれ/ども、¥そら−しら/ず/して、¥すけもりの−あそん/を¥はじめ/と/して、¥さぶらひ=ども¥みな¥むま/より¥とつ/て¥ひき−おろし、¥すこぶる¥ちじよく/に¥および/けり。¥すけもり−あそん、¥はふはふ¥ろくはら/へ¥かへり¥おはし/て、¥おほぢ/の¥しやうこく−ぜんもん/に¥この¥よし¥うつたへ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう¥おほき/に¥いかつ/て、「¥たとひ¥てんが/なり/とも、¥じやうかい/が¥あたり/を/ば¥はばかり¥たまふ/べき/に、¥さう−なう¥あの¥おさなき¥もの/に¥ちじよく/を¥あたへ/られ/ける/こそ¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥かかる¥こと/より/して、¥ひと/に/は¥あざむか/るる/ぞ。¥この¥こと¥てんが/に¥おもひ−しらせ¥たてまつら/で/は、¥え/こそ¥ある/まじけれ。¥いか/に/も−し/て¥うらみ¥たてまつら/ばや」/と¥のたまへ/ば、¥しげもりの−きやう¥まうさ/れ/ける/は、「¥これ/は¥すこし/も¥くるしう¥さふらふ/まじ。¥よりまさ、¥みつもと/など¥まうす¥げんじ=ども/に¥あざけら/れ/て/も¥さふらは/ん/は、¥まこと/に¥いちもん/の¥ちじよく/にて/も¥さふらふ/べし。¥しげもり/が¥こども/とて¥さうらは/んずる¥もの/が、¥との/の¥ぎよ=しゆつ/に¥まゐり−あう/て、¥のりもの/より¥おり¥さふらは/ぬ¥こと/こそ¥かへすがへす/も¥びろう/に¥さふらへ」/とて、¥その−とき¥こと/に¥あう/たる¥さぶらひ=ども、¥みな¥めし−よせ/て、「¥じこん¥いご¥なんぢ=ら¥よくよく¥こころ−う/べし。¥あやまつ/て¥てんが/へ¥ぶれい/の¥よし/を¥まうさ/ばや/と¥おもへ」/とて/こそ¥かへさ/れ/けれ。P86¥
その−のち¥にふだう、¥こまつ=どの/に/は¥かう/と/も¥のたまひ/も¥あはせ/ず/して、¥かたゐなか/の¥さぶらひ/の、¥きはめて¥こはらか/なる/が¥にふだう/の¥おほせ/より¥ほか、¥よ/に¥また¥おそろしき¥こと¥なし/と¥おもふ¥もの=ども、¥なんば、¥せのを/を¥はじめ/と/して、¥つがふ¥ろくじふ−よ−にん¥めし−よせ/て、「¥らい¥にじふいちにち、¥てんが¥ぎよ=しゆつ¥ある/べかん/なり。¥いづく/にて/も¥まち−うけ¥たてまつり、¥せんぐ¥みずゐじん=ども/が¥もとどり¥きつ/て、¥すけもり/が¥はぢ¥すすげ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥つはもの=ども¥かしこまり−うけたまはつ/て¥まかり−いづ。¥てんが¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しろしめさ/れ/ず、¥しゆしやう¥みやうねん¥おん=げんぶく、¥ご=かくわん¥はいくわん/の¥おん=さだめ/の¥ため/に、¥しばらく¥ご=ちよくろ/に¥ある/べき/にて、¥つね/の¥ぎよ=しゆつ/より/は¥ひき−つくろは/せ¥たまひ/て、¥こんど/は¥たいけんもん/より¥じゆぎよ¥ある/べき/にて、¥なかのみかど/を¥にし/へ¥ぎよ=しゆつ¥なる/に¥ゐのくまほりかは/の¥へん/にて、¥ろくはら/の¥つはもの=ども、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥まち−うけ¥たてまつり、¥てんが/を¥なか/に¥とり−こめ¥まゐらせ/て、¥ぜんご/より¥いちど/に、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥せんぐ¥みずゐじん=ども/が、¥けふ/を¥はれ/と¥しやうぞ¥い/たる/を、¥あそこ/に¥おつ−かけ、¥ここ/に¥おつ−つめ、¥さんざん/に¥りようりやく−し/て、¥いちいち/に¥みな¥もとどり/を¥きる。¥ずゐじん¥じふ−にん/の¥うち、¥みぎ/の−ふしやう−たけもと/が¥もとどり/を/も¥きら/れ/てげり。¥その¥なか/に¥とう−くらんど/の−たいふ−たかのり/が¥もとどり/を¥きる/とて、「¥これ/は¥なんぢ/が¥もとどり/と¥おもふ/べから/ず、¥しゆ/の¥もとどり/と¥おもふ/べし」/と、¥いひ−ふくめ/て/ぞ¥きつ/てげる。¥その−のち/は¥おん=くるま/の¥うち/へ/も、¥ゆみ/の¥はず¥つき−いれ/など/して、¥すだれ¥かなぐり−おとし、¥お=うし/の¥むながい¥しりがい¥きり−はなち、¥かく¥さんざん/に¥しちらし/て、¥よろこび/の¥とき/を¥つくり、¥ろくはら/へ¥かへり−まゐり/たれ/ば、¥にふだう、「¥しんべう/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。P87¥
され/ども¥おん=くるま¥ぞひ/に/は、¥いなば/の¥さいづかひ、¥とばの−くにひさまる/と¥いふ¥をのこ、¥げらふ/なれ/ども、¥さかざかしき¥もの/にて、¥おん=くるま/を¥しつらひ、¥のせ¥たてまつ/て、¥なかのみかど/の¥ごしよ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつる。¥そくたい/の¥おん=そで/にて¥おん=なみだ/を¥おさへ/させ¥たまひ/つつ、¥くわんぎよ/の¥ぎしき/の¥あさまし−さ、¥まうす/も¥なかなか¥おろか/なり。¥たいしよくくわん、¥たんかいこう/の¥おん=こと/は¥あげ/て¥まうす/に¥およば/ず、¥ちうじん=こう、¥せうぜん=こう/より¥この−かた、¥せつしやう¥くわんばく/の¥かかる¥おん=め/に¥あはせ¥たまふ¥こと、¥いまだ¥うけたまはり¥およば/ず。¥これ/こそ¥へいけ/の¥あくぎやう/の¥はじめ/なれ。¥こまつ=どの¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥そのーとき¥ゆき−むかう/たる¥さぶらひ=ども、¥みな¥かんだう−せ/らる。「¥たとひ¥にふだう¥いか/なる¥ふしぎ/を¥げぢ−し¥たまふ/と¥いふ/とも、¥など¥しげもり/に¥ゆめ/ばかり¥しらせ/ざり/ける/ぞ。¥およそ/は¥すけもり¥きくわい/なり。¥せんだん/は¥ふたば/より¥かうばし/と/こそ¥みえ/たれ。¥すでに¥じふにさん/に¥なら/んずる¥もの/が、¥いま/は¥れいぎ/を¥ぞんぢ−し/て/こそ¥ふるまふ/べき/に、¥かやう/の¥びろう/を¥げんじ/て、¥にふだう/の¥あくみやう/を¥たつ。¥ふけう/の¥いたり、¥なんぢ¥ひとり/に¥あり/けり」/とて、¥しばらく¥いせの−くに/へ¥おひ−くださ/る。¥され/ば、¥この¥だいしやう/を/ば、¥きみ/も¥しん/も¥ぎよ=かん¥あり/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P88¥
「ししのたに」(『ししのたに』)S0112¥これ/に¥よつ/て、¥しゆしやう¥おん=げんぶく/の¥おん=さだめ、¥その−ひ/は¥のび/させ¥たまひ/て、¥おなじき−にじふごにち、¥ゐん/の¥てんじやう/にて/ぞ¥おん=げんぶく/の¥おん=さだめ/は¥あり/ける。¥せつしやう=どの¥さて/も¥わたら/せ¥たまふ/べき/なら/ね/ば、¥おなじき−じふにんぐわつ−ここのかのひ、¥かねせんじ/を¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥おなじき−じふしにち¥だいじやうだいじん/に¥あがら/せ¥たまふ。¥やがて¥おなじき−じふしちにち、¥よろこび−まうし/の¥あり/しか/ども、¥よ/の−なか/は¥なほ¥にがにがしう/ぞ¥みえ/し。¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/ぬ。¥かおう/も¥みとせ/に¥なり/に/けり。¥しやうぐわつ−いつかのひ、¥しゆしやう¥おん=げんぶく¥あつ/て、¥おなじき−じふさんにち、¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/けり。¥ほふわう¥にようゐん¥まち−うけ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥うひかうぶり/の¥おん=よそほひ、¥いか/ばかり¥らうたく¥おぼしめさ/れ/けん。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ、¥にようご/に¥まゐらせ¥たまふ。¥おん=とし¥じふご−さい、¥ほふわう¥おん=いうじ/の¥ぎ/なり。¥めうおんゐん=どの、¥その−ころ/は¥いまだ¥ないだいじん/の−さだいしやう/にて¥ましまし/ける/が、¥だいしやう/を¥じし¥まうさ/せ¥たまふ¥こと¥あり/けり。¥ときに¥とくだいじの−だいなごん−じつていの−きやう、¥その¥じん/に¥あひ−あたり¥たまふ。¥また¥くわざんのゐん/の−ちうなごん−かねまさの−きやう/も¥しよまう¥あり。¥その−ほか¥こ=なかのみかど/の−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう/の¥さんなん、¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/も¥ひら/に¥まうさ/る。¥この¥だいなごん/は¥ゐん/の¥ご=きしよく¥よかり/けれ/ば、P89¥さまざま/の¥いのり/を¥はじめ/らる。¥まづ¥やはた/に¥ひやく−にん/の¥そう/を¥こめ/て、¥しんどく/の¥だいはんにや/を¥しち−にち¥よま/せ/られ/たり/ける¥さいちう/に、¥かはら/の−だい−みやうじん/の¥おん=まへ/なる¥たちばな/の¥き/へ、¥をとこやま/の¥かた/より、¥やまばと¥みつ¥とび−きたつ/て、¥くひ−あひ/て/ぞ¥しに/に/ける。¥はと/は¥はちまん−だい−ぼさつ/の¥だいいち/の¥ししや/なり。¥みやてら/に¥かかる¥ふしぎ¥なし/とて、¥とき/の¥けんぎやう、¥きやうせい−ほふいん¥この¥よし¥だいり/へ¥そうもん−し/たり/けれ/ば、¥これ¥ただごと/に¥あら/ず、¥みうら¥ある/べし/とて、¥じんぎくわん/に/して¥みうら¥あり。¥おもき¥おん=つつしみ/と¥うらなひ¥まうす。¥ただし¥これ/は¥きみ/の¥おん=つつしみ/に/は¥あら/ず、¥しんか/の¥つつしみ/と/ぞ¥まうし/ける。¥それ/に¥だいなごん¥おそれ/を/も¥いたさ/れ/ず、¥ひる/は¥ひとめ/の¥しげ/けれ/ば、¥よなよな¥ほかう/にて、¥なかのみかど−からすまる/の¥しゆくしよ/より、¥かも/の−かみ/の−やしろ/へ、¥ななよ¥つづけ/て¥まゐら/れ/けり。¥ななよ/に¥まんずる¥よ、¥しゆくしよ/に¥げかう−し/て、¥くるし−さ/に¥すこし¥まどろみ/たり/ける¥ゆめ/に、¥かも/の−かみ/の−やしろ/へ¥まゐり/たる/と¥おぼしく/て、¥ご=ほうでん/の¥み=と¥おし−ひらき、¥ゆゆしう¥けだか=げ/なる¥おん=こゑ/にて、¥
さくらばな¥かも/の¥かはかぜ¥うらむ/な/よ¥ちる/を/ば¥え/こそ¥とどめ/ざり/けれ W006¥
だいなごん¥これ/に¥なほ¥おそれ/を/も¥いたさ/れ/ず、¥かも/の−かみ/の−やしろ/に、¥ご=ほうでん/の¥おん=うしろ/なる、¥すぎ/の¥ほら/に¥だん/を¥たて、¥ある¥ひじり/を¥こめ/て、¥だぎに/の¥ほふ/を¥ひやくにち¥おこなは/せ/られ/ける/に、¥ある−とき¥にはか/に¥そら¥かき−くもり、¥いかづち¥おびたたしう¥なつ/て、¥かの¥おほすぎ/に¥おち−かかり、¥らいくわ¥もえ−あがつ/て、¥きうちう¥すでに¥あやふく¥みえ/ける/を、¥みやうど=ども¥わしり¥あつまり/て、¥これ/を¥うち−けす。¥さて¥かの¥げほふ¥おこなひ/ける¥ひじり/を¥つゐしゆつ−せ/ん/と¥す。「¥われ¥たうしや/に¥ひやくにち¥さんろう/の¥こころざし¥あつ/て、P90¥けふ/は¥しちじふごにち/に¥なる。¥まつたく¥いづ/まじ」/とて¥はたらか/ず。¥この¥よし/を¥しやけ/より¥だいり/へ¥そうもん¥まうし/たり/けれ/ば、¥ただ¥ほふ/に¥まかせよ/と、¥せんじ/を¥くださ/る。¥そのーとき¥じんにん¥しらづゑ/を¥もつ/て¥かの¥ひじり/が¥うなじ/を¥しらげ/て、¥いちでう/の¥おほち/より、¥みなみ/へ¥おつ−こし/てげり。¥しん/は¥ひれい/を¥うけ/ず/と¥まうす/に、¥この¥だいなごん、¥ひぶん/の¥だいしやう/を¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ば/に/や、¥かかる¥ふしぎ/も¥いで−き/に/けり。¥その−ころ/の¥じよゐ−ぢもく/と¥まうす/は、¥ゐん、¥うち/の¥おん=ぱからひ/に/も¥あら/ず、¥せつしやう¥くわんばく/の¥ご=せいばい/に/も¥およば/ず、¥ただ¥いつかう¥へいけ/の¥まま/にて¥あり/けれ/ば、¥とくだいじ、¥くわざんのゐん/も¥なり¥たまは/ず、¥にふだう−しやうこく/の¥ちやくなん¥こまつ=どの、¥そのーとき/は¥いまだ¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥ましまし/ける/が、¥ひだん/に¥うつり/て、¥じなん¥むねもり、¥ちうなごん/にて¥おはせ/し/が、¥すはい/の¥じやうらふ/を¥てうをつ−し/て、¥みぎ/に¥くははら/れ/ける/こそ、¥まうす¥はかり/も¥なかり/しか。¥なか/に/も¥とくだいじ=どの/は、¥いち/の¥だいなごん/にて、¥くわそく¥えいゆう、¥さいかく¥いうちやう、¥けちやく/にて¥ましまし/ける/が、¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/に、¥かかい¥こえ/られ¥たまひ/ぬる/こそ¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥さだめて¥ご=しゆつけ/など/も/や¥あら/んず/らん」/と、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/けれ/ども、¥とくだいじ=どの/は¥しばらく¥よ/の¥なら/ん¥やう/を¥み/ん/とて、¥だいなごん/を¥じし/て¥ろうきよ/と/ぞ¥きこえ/し。¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥のたまひ/ける/は、「¥とくだいじ、¥くわざんのゐん/に¥こえ/られ/たら/ん/は¥いかが−せ/ん。¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/に¥かかい¥こえ/られ/ぬる/こそ、¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥いか/に/も−し/て¥へいけ/を¥ほろぼし、¥ほんまう/を¥とげ/ん」/と¥のたまひ/ける/こそ¥おそろしけれ。¥ちち/の¥きやう/は、¥この¥よはひ/で/は、¥わづかP91¥ちうなごん/まで/こそ¥いたら/れ/しか。¥その¥ばつし/にて、¥くらゐ¥じやう−にゐ、¥くわん¥だいなごん/に¥へ−あがつ/て、、¥たいこく¥あまた¥たまはつ/て、¥しそく、¥しよじう、¥てうおん/に¥ほこれ/り。¥なに/の¥ふそく¥あつ/て/か¥かかる¥こころ¥つか/れ/けん、¥ひとへ/に¥てんま/の¥しよゐ/と/ぞ¥みえ/し。¥へいぢ/に/も¥ゑちごの−ちうじやう/とて、¥のぶよりの−きやう/に¥どうしん/の¥あひだ、¥そのーとき¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、こまつ=どの/の¥やうやう/に¥まうし/て、¥くび/を¥つぎ¥たまへ/り。¥しかる/に¥その¥おん/を¥わすれ/て、¥ぐわいじん/も¥なき¥ところ/に、¥ひやうぐ/を¥ととのへ、¥ぐんびやう/を¥かたらひ−おき、¥あさゆふ/は¥ただ¥いくさ−かつせん/の¥いとなみ/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥なし/と/ぞ¥みえ/たり/ける。¥ひんがしやま¥ししのたに/と¥いふ¥ところ/は、¥うしろ¥みゐでら/に¥つづい/て、¥ゆゆしき¥じやうくわく/にて/ぞ¥あり/ける。¥それ/に¥しゆんくわん−そうづ/の¥さんざう¥あり。¥かれ/に¥つね/は¥より−あひ−より−あひ、¥へいけ¥ほろぼす/べき¥はかりごと/を/ぞ¥めぐらし/ける。¥ある−よ、¥ほふわう/も¥ご=かう¥なる。¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥しそく、¥じやうけん−ほふいん/も¥おん=とも¥つかまつら/る。¥その¥よ/の¥しゆえん/に、¥この¥よし/を¥おほせ−あはせ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふいん、「¥あな¥あさまし。¥ひと¥あまた¥うけたまはり¥さふらひ/ぬ。¥ただいま¥もれ−きこえ/て、¥てんが/の¥おん=だいじ/に¥および¥さふらひ/な/んず」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥だいなごん¥けしき¥かはつ/て、¥さつと¥たた/れ/ける/が、¥ごぜん/に¥たて/られ/たり/ける¥へいじ/を、¥かりぎぬ/の¥そで/に¥かけ/て¥ひき−たふさ/れ/たり/ける/を、¥ほふわう¥えいらん¥あつ/て、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥だいなごん¥たち−かへつ/て、「¥へいじ¥たふれ¥さふらひ/ぬ」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥ほふわう/も¥ゑつぼ/に¥いら/せ¥おはしまし、「¥もの=ども¥まゐつ/て¥さるがく¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥へい−はうぐわん−やすより¥つと¥まゐつ/て、「P92¥ああ¥あまり/に¥へいじ/の¥おほう¥さふらふ/に、¥もて¥ゑひ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥しゆんくわん−そうづ、「¥さて¥それ/を/ば、¥いかが¥つかまつる/べき/やらん」。¥さいくわう−ほふし、「¥ただ¥くび/を¥とる/に/は¥しか/じ」/とて、¥へいじ/の¥くび/を¥とつ/て/ぞ¥いり/に/ける。¥ほふいん、¥あまり/の¥あさまし−さ/に、¥つやつや¥もの/も¥まうさ/れ/ず。¥かへすがへす/も¥おそろしかり/し¥こと=ども/なり。¥さて¥よりき/の¥ともがら¥たれたれ/ぞ。¥あふみの−ちうじやう−にふだう−れんじやう、¥ぞくみやう¥なりまさ、¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ、¥やましろの−かみ−もとかぬ、¥しきぶ/の−たいふ−まさつな、¥へい−はうぐわん−やすより、¥そう−はうぐわん−のぶふさ、¥しん−へい−はうぐわん−すけゆき、¥ぶし/に/は¥ただの−くらんど−ゆきつな/を¥はじめ/と/して、¥ほくめん/の¥もの=ども¥おほく¥よりき−し/てげり。
「うがはかつせん」(『しゆんくわんのさた うがはいくさ』)S0113¥そもそも¥この¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ/と¥まうす/は、¥きやうごく/の¥げん−だいなごん−がしゆんの−きやう/の¥まご、¥きでら/の−ほふいん−くわんが/に/は¥こ/なり/けり。¥そぶ¥だいなごん/は、¥さして¥ゆみ−や¥とる¥いへ/に/は¥あら/ね/ども、¥あまり/に¥はら¥あしき¥ひと/にて、¥さんでうのぼうもん¥きやうごく/の¥しゆくしよ/の¥まへ/を/ば、¥ひと/を/も¥やすく¥とほさ/れ/ず、¥つね/は¥ちうもん/に¥たたずみ、¥は/を¥くひしばり、¥いかつ/て/こそ¥おはし/けれ。¥かかる¥おそろしき¥ひと/の¥まご/なれ/ば/に/や、¥この¥しゆんくわん/も、¥そう/なれ/ども、¥こころ/も¥たけく、¥おごれ/る¥ひと/にて、¥よし−なき¥むほん/に/も¥くみし/てげる/に/こそ。¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう、P93¥ただの−くらんど−ゆきつな/を¥めし/て、「¥こんど¥ご=へん/を/ば、¥いつぱう/の¥たいしやう/に¥たのむ/なり。¥この¥こと¥し−おほせ/つる¥もの/なら/ば、¥くに/を/も¥しやう/を/も¥しよまう/に¥よる/べし。¥まづ¥ゆぶくろ/の¥れう/に」/とて、¥しろぬの¥ごじつ−たん¥おくら/れ/たり。¥あんげん−さんねん−さんぐわつ−いつかのひ、¥めうおんゐん=どの、¥だいじやうだいじん/に¥てんじ¥たまへ/る¥かはり/に、¥こまつ=どの、¥げん−だいなごん−さだふさの−きやう/を¥こえ/て、¥ないだいじん/に¥なり¥たまふ。¥やがて¥だいきやう¥おこなは/る。¥だいじん/の−だいしやう¥めでたかり/き。¥そんじや/に/は¥おほひのみかど/の−うだいじん−つねむね=こう/と/ぞ¥きこえ/し。¥いち/の−かみ/こそ¥せんど/なれ/ども、¥ちち¥うぢの−あく−さふ/の¥ご=れい、¥その¥おそれ¥あり。¥ほくめん/は¥しやうこ/に/は¥なかり/けり。¥しらかはのゐん/の¥おん=とき、¥はじめ−おか/れ/て/より¥この−かた、¥ゑふ=ども¥あまた¥さふらひ/けり。¥ためとし、¥もりしげ、¥わらは/より¥いまいぬまる、¥せんじゆまる/とて、¥これ=ら/は¥さう−なき¥きりもの/にて/ぞ¥あり/ける。¥とばのゐん/の¥おん=とき/も、¥すゑより、¥すゑのり¥ふし¥とも/に、¥てうか/に¥めし−つかは/れ/て¥あり/し/が、¥つね/は¥てんそう−する¥をり/も¥あり/なんど¥きこえ/しか/ども、¥これ=ら/は¥みな¥み/の¥ほど/を¥ふるまう/て/こそ¥あり/し/か。¥この¥とき/の¥ほくめん/の¥ともがら/は、¥もつて/の−ほか/に¥くわぶん/にて、¥くぎやう−てんじやうびと/を/も¥こと/と/も¥せ/ず、¥げほくめん/より¥しやうほくめん/に¥あがり、¥しやうほくめん/より¥てんじやう/の¥まじはり/を¥ゆるさ/るる¥もの/も¥おほかり/けり。¥かく/のみ¥おこなは/るる¥あひだ、¥おごれ/る¥こころ=ども¥つき/て、¥よし−なき¥むほん/に/も¥くみし/てげる/に/こそ。¥
なか/に/も¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥もと/に¥めし−つかは/れ/ける¥もろみつ、¥なりかげ/と¥いふ¥もの¥あり。¥もろみつ/は¥あはの−くに/の¥ざいちやう、¥なりかげ/は¥きやう/の¥もの、¥じゆつこん¥いやしき¥げらふ/なり。¥こんでいわらは、¥もしは¥かくごしや/など/にて/も/やP94¥あり/けん、¥さかざかしかり/し/に¥よつ/て、¥つね/は¥ゐん/へ/も¥めし−つかは/れ/ける/が、¥もろみつ/は¥さゑもん/の−じよう、¥なりかげ/は¥うゑもん/の−じよう/とて、¥に−にん¥いちど/に¥ゆきへ/の−じよう/に¥なり/ぬ。¥ひととせ¥しんせい¥こと/に¥あひ/し¥とき、¥に−にん¥とも/に¥しゆつけ−し/て、¥さゑもん−にふだう¥さいくわう、¥うゑもん−にふだう¥さいけい/とて、¥これ=ら/は¥しゆつけ/の¥のち/も、¥ゐん/の¥みくら¥あづかり/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥かの¥さいくわう/が¥こ/に¥もろたか/と¥いふ¥もの¥あり。¥これ/も¥さう−なき¥きりもの/にて、¥けんびゐし、¥ごゐ/の−じやう/まで¥へ−あがり/て、¥あまつさへ¥あんげん−ぐわんねん−じふにんぐわつ−にじふくにち、¥つゐな/の−ぢもく/に、¥かがの−かみ/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥こくむ/を¥おこなふ¥あひだ、¥ひほふ¥ひれい/を¥ちやうぎやう−し、¥じんじや¥ぶつじ、¥けんもん¥せいけ/の¥しやうりやう/を¥もつたう−し/て、¥さんざん/の¥こと=ども/にて/ぞ¥あり/ける。¥たとひ¥せうこう/が¥あと/を¥へだつ/と¥いふ/とも、¥をんびん/の¥まつりごと/を¥おこなふ/べかり/し/に、¥かく¥こころ/の¥まま/に¥ふるまふ¥あひだ、¥おなじき−にねん/の¥なつ/の¥ころ、¥こくし−もろたか/が¥おとと、¥こんどう−はんぐわん−もろつね/を¥かが/の¥もくだい/に¥ふせ/らる。¥もくだい¥げちやく/の¥はじめ、¥こくふ/の¥へん/に¥うがは/と¥いふ¥やまでら¥あり。¥をりふし¥じそう=ども/が¥ゆ/を¥わかい/て¥あび/ける/を、¥らんにふ−し/て¥おひ−あげ、¥わが−み¥あび、¥ざふにん=ばら¥おろし、¥むま¥あらは/せ/など¥し/けり。¥じそう¥いかり/を¥なし/て、「¥むかし/より¥この¥ところ/は、¥くにがた/の¥もの/の¥にふぶ−する¥こと¥なし。¥せんれい/に¥まかせ/て、¥すみやか/に¥にふぶ/の¥あふばう¥とどめよ/や」/と/ぞ¥まうし/ける。「¥もくだい¥おほき/に¥いかつ/て、「¥せんせん/の¥もくだい/は、¥ふかく/で/こそ¥いやしま/れ/たれ。¥たう−もくだい/に¥おいて/は、¥すべて¥その¥ぎ¥ある/まじ。¥ただ¥ほふ/に¥まかせよ」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥じそう=ども/は¥くにがた/の¥もの/を¥つゐしゆつ−せ/ん/と¥す。¥くにがた/の¥もの=ども/は、¥ついで/を¥もつて¥らんにふ−せ/ん/と、¥うち−あひ、P95¥はり−あひ−し/ける/ほど/に、¥もくだい−もろつね/が¥ひざう−し/ける¥むま/の¥あし/を/ぞ¥うち−をり/ける。¥その−のち/は¥たがひ/に¥きうせん¥ひやうぢやう/を¥たいし/て、¥い−あひ、¥きり−あひ、¥すこく¥たたかふ。¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥もくだい¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん¥ひき−しりぞく。¥その−のち¥たう−ごく/の¥ざいちやう=ら¥いつせん−よ−にん、¥もよほし−あつめ/て、¥うがは/に¥おし−よせ、¥ばうじや¥いち−う/も¥のこさ/ず¥みな¥やき−はらふ。¥うがは/と¥いふ/は、¥はくさん/の¥まつじ/なり。¥この¥こと¥うつたへ/ん/とて、¥すすむ¥らうそう¥たれたれ/ぞ。¥ちしやく、¥がくみやう、¥ほうだいばう、¥しやうち、¥がくおん、¥とさの−あざり/ぞ¥すすみ/ける。¥しらやま¥さんじや¥はちゐん/の¥だいしゆ、¥ことごとく¥おこり−あひ、¥つがふ¥その¥せい¥にせん−よ−にん、¥おなじき−しちぐわつ−ここのかのひ/の¥くれがた/に、¥もくだい−もろつね/が¥たち¥ちかう/こそ¥おし−よせ/たれ。¥けふ/は¥ひ¥くれ/ぬ。¥あす/の¥いくさ/と¥さだめ/て、¥その−ひ/は¥よせ/で¥ゆらへ/たり。¥つゆ¥ふき−むすぶ¥あきかぜ/は、¥いむけ/の¥そで/を¥ひるがへし、¥くもゐ/を¥てらす¥いなづま/は、¥かぶと/の¥ほし/を¥かがやかす。¥もくだい¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥よにげ/に/して¥きやう/へ¥のぼる。¥あくる¥う/の−こく/に¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥じやう/の¥うち/に/は¥おと/も¥せ/ず。¥ひと/を¥いれ/て¥みせ/けれ/ば、「¥みな¥おち/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥だいしゆ¥ちから¥およば/で¥ひき−しりぞく。¥さら/ば¥さんもん/へ¥うつたへ/ん/とて、¥はくさん−ちうぐう/の¥しんよ、¥かざり¥たてまつ/て、¥ひえいさん/へ¥ふり−あげ¥たてまつる。¥おなじき−はちぐわつ−じふににち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥はくさん−ちうぐう/の¥しんよ、¥すでに¥ひえいさん¥ひがしざかもと/に¥つか/せ¥たまふ/と¥まうす/ほど/こそ¥あり/けれ、¥ほくこく/の¥かた/より、¥いかづち¥おびたたしく¥なつ/て、¥みやこ/を¥さし/て¥なり−のぼり、¥はくせつ¥くだつ/て¥ち/を¥うづみ、¥さんじやう¥らくちう¥おしなべて、¥ときは/の¥やま/の¥こずゑ/まで、¥みな¥しろたへ/に/ぞ¥なり/に/ける。
(『ぐわんだて』)S0114¥だいしゆ¥しんよ/を/ば、¥まらうと/の−みや/へ¥いれP96¥たてまつる。¥まらうと/と¥まうす/は、¥はくさん−めうり−ごんげん/にて¥おはします。¥まうせ/ば¥ふし/の¥おん=なか/なり。¥まづ¥さた/の¥じやうふ/は¥しら/ず、¥しやうぜん/の¥おん=よろこび、¥ただ¥この¥こと/に¥あり。¥うらしま/が¥こ/の¥しつせ/の¥まご/に¥あへ/り/し/に/も¥すぎ、¥たいない/の¥もの/の¥りやうぜん/の¥ちち/を¥み/し/に/も¥こえ/たり。¥さんぜん/の¥しゆと¥くびす/を¥つぎ、¥しちしや/の¥じんにん¥そで/を¥つらね/て、¥じじこくこく/の¥ほつせ¥きねん、¥ごんご−だうだん/の¥こと=ども/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥さる−ほど/に¥さんもん/の¥だいしゆ、¥こくし−かがの−かみ−もろたか/を¥るざい/に¥しよせ/られ、¥もくだい−こんどう−はんぐわん−もろつね/を¥きんごく−せ/らる/べき¥よし、¥そうもん¥どど/に¥およぶ/と¥いへ/ども、¥ご=さいきよ¥なかり/けれ/ば、¥しかる/べき¥くぎやう−てんじやうびと/は、「¥あはれ¥とく/して¥ご=さいだん¥ある/べき/ものを。¥むかし/より¥さんもん/の¥そしよう/は¥た/に¥こと/なり。¥おほくら/の−きやう−ためふさ、¥ださい/の−ごん/の−そつ−すゑなかの−きやう/は、¥さ/しも¥てうか/に¥ちようしん/たり/しか/ども、¥さんもん/の¥そしよう/に¥よつ/て¥るざい−せ/られ¥たまひ/に/き。¥いはんや¥もろたか/など/は¥こと/の−かず/にて/や/は¥ある/べき、¥しさい/に/や¥およぶ/べき」/と¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥たいしん/は¥ろく/を¥おもんじ/て¥いさめ/ず、¥せうしん/は¥つみ/に¥おそれ/て¥まうさ/ず」/と¥いふ¥こと/なれ/ば、¥おのおの¥くち/を¥とぢ¥たまへ/り。P97
「ぐわんだて」¥かもがは/の¥みづ、¥すごろく/の¥さい、¥やまぼふし、¥これ/ぞ¥わが¥おん=こころ/に¥かなは/ぬ¥もの」/と、¥しらかはのゐん/も¥おほせ/なり/ける/とかや。¥とばのゐん/の¥おん=とき/も、¥ゑちぜん/の¥へいせんじ/を¥さんもん/へ¥よせ/られ/ける¥こと/は、¥たうざん/を¥ご=きゑ¥あさから/ざる/に¥よつ/て/なり。「¥ひ/を¥もつて¥り/と¥す」/と¥せんげ−せ/られ/て/こそ、¥ゐんぜん/を/ば¥くださ/れ/けれ。¥され/ば¥がうぞつ−きやうばうの−きやう/の¥まうさ/れ/し/は、「¥さんもん/の¥だいしゆ、¥ひよし/の¥しんよ/を¥ぢんどう/へ¥ふり¥たてまつ/て、¥そしよう/を¥いたさ/ば、¥きみ/は¥いかが¥おん=ぱからひ¥さうらふ/べき」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥ほふわう、「¥げに/も¥さんもん/の¥そしよう/は¥もだし−がたし」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥いんじ¥かほう−にねん−さんぐわつ−ふつかのひ、¥みのの−かみ−みなもとの−よしつなの−あそん、¥たう−ごく¥しんりふ/の¥しやう/を¥たふす¥あひだ、¥やま/の¥くぢうしや¥ゑんおう/を¥せつがい−す。¥これ/に¥よつ/て¥ひよし/の¥しやし、¥えんりやくじ/の¥じくわん、¥つがふ¥さんじふ−よ−にん、¥まうしぶみ/を¥ささげ/て¥ぢんどう/へ¥さんじ/たる/を、¥ごにでう/の−くわんばく=どの、¥やまとげんじ−なかづかさの−ごん/の−せふ−よりはる/に¥おほせ/て、¥これ/を¥ふせが/せ/らるる/に¥よりはる/が¥らうどう、¥や/を¥はなつ。¥やには/に¥ゐ−ころさ/るる¥もの¥はち−にん、¥きず/を¥かうぶる¥もの¥じふ−よ−にん、¥しやし、¥しよし、¥しはう/へ¥みな¥にげ−さり/ぬ。¥これ/に¥よつ/て¥さんもん/の¥じやうかう=ら、¥しさい/を¥そうもん/の¥ため/に、¥おびたたしう¥げらく−す/とP98¥きこえ/しか/ば、¥ぶし、¥けんびゐし、¥にしざかもと/に¥ゆき−むかつ/て、¥みな¥おつ−かへす。¥
さる−ほど/に¥さんもん/に/は、¥ご=さいだん¥ちち/の¥あひだ、¥ひよし/の¥しんよ/を¥こんぽんちうだう/へ¥ふり−あげ¥たてまつり、¥その¥おん=まへ/にて¥しんどく/の¥だいはんにや/を¥しち−にち¥よみ/て、¥ごにでう/の−くわんばく=どの/を¥じゆそ−し¥たてまつる。¥けちぐわん/の¥だうし/に/は、¥ちういん−ほふいん、¥そのーとき/は¥いまだ¥ちういん−ぐぶ/と¥まうし/し/が、¥かうざ/に¥のぼり¥かね¥うち−ならし、¥けいびやく/の¥ことば/に¥いはく、「¥われ=ら/が¥なたね/の¥ふたば/より¥おほし−たて¥たまひ/し¥かみ=たち、¥ごにでう/の−くわんばく=どの/に、¥かぶらや¥ひとつ¥はなち−あて¥たまへ。¥だいはちわうじ−ごんげん」/と¥たからか/に/こそ¥きせい−し/たり/けれ。¥その¥よ¥やがて¥ふしぎ/の¥こと¥あり/けり。¥はちわうじ/の¥ご=てん/より、¥かぶらや/の¥こゑ¥いで/て、¥わうじやう/を¥さし/て¥なり/て¥ゆく/と/ぞ、¥ひと/の¥ゆめ/に/は¥みえ/たり/ける。¥その¥あした¥くわんばく=どの/の¥ごしよ/の¥み=かうし/を¥あげ/ける/に、¥ただいま¥やま/より¥とつ/て¥き/たる¥やう/に、¥つゆ/に¥ぬれ/たる¥しきみ¥ひとえだ、¥たつ/たり/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥やがて¥その¥よ/より、¥ごにでう/の−くわんばく=どの、¥さんわう/の¥おん=とがめ/とて、¥おもき¥おん=やまふ/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/しか/ば、¥ははうへ¥おほ=との/の¥きたのまんどころ、¥おほき/に¥おん=なげき¥あつ/て、¥おん=さま/を¥やつし、¥いやしき¥げらふ/の¥まね/を¥し/て、¥ひよし/の−やしろ/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥しち−にち−しち−や/が¥あひだ¥いのり¥まうさ/せ¥おはします。¥まづ¥あらはれ/て/の¥ご=りふぐわん/に/は、¥しばでんがく¥ひやく−ばん、¥ひやく−ばん/の¥ひとつもの、¥けいば、¥やぶさめ、¥すまふ、¥おのおの¥ひやく−ばん、¥ひやく−ざ/の¥にんわうかう、¥ひやく−ざ/の¥やくしかう、¥いつ−ちやくしゆ−はん/の¥やくし¥ひやく−たい、¥とうじん/の¥やくし¥いつたい、¥ならびに¥しやか、¥あみだ/の¥ぞう、¥おのおの¥ざうりふ¥くやう−せ/られ/けり。¥また¥ご=しんぢう/に¥みつ/の¥ご=りふぐわん¥あり。¥おん=こころ/の¥うち/の¥おん=こと/なれ/ば、P99¥ひと¥これ/を/ば、¥いかで/か¥しり¥たてまつる/べき/に、¥それに¥なに/より/も¥また¥ふしぎ/なり/ける¥こと/に/は、¥しち−や/に¥まんずる¥よ、¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/に¥いくら/も¥あり/ける¥まゐりうど=ども/の¥なか/に、¥みちのく/より、¥はるばる/と¥のぼつ/たり/ける¥わらは−みこ、¥やはん/ばかり/に¥にはか/に¥たえ−いり/けり。¥はるか/に¥かき−いだし/て¥いのり/けれ/ば、¥やがて¥たつ/て¥まひ−かなづ。¥ひと¥きどく/の¥おもひ/を¥なし/て¥これ/を¥みる。¥はんじ/ばかり¥まう/て¥のち、¥さんわう¥おり/させ¥たまひ/て、¥やうやう/の¥ご=たくせん/こそ¥おそろしけれ。「¥しゆじやう=ら¥たしか/に¥うけたまはれ。¥おほ=との/の¥きたのまんどころ、¥けふ¥しち−にち、¥わが¥おん=まへ/に¥こもら/せ¥たまひ/たり。¥ご=りふぐわん¥みつ¥あり。¥まづ¥ひとつ/に/は、¥こんど¥てんが/の¥じゆみやう/を¥たすけ/させ¥おはしませ。¥さ/も¥さふらは/ば、¥おほみや/の¥した=どの/に¥さぶらふ¥もろもろ/の¥かたはうど/に¥まじはつ/て、¥いつせんにち/が¥あひだ、¥てうせき¥みやづかひ¥まうさ/ん/と/なり。¥おほ=との/の¥きたのまんどころ/にて、¥よ/を¥よ/と/も¥おぼしめさ/で、¥すごさ/せ¥たまふ¥おん=こころ/に/も、¥こ/を¥おもふ¥みち/に¥まよひ/ぬれ/ば、¥いぶせき¥こと/を/も¥わすら/れ/て、¥あさまし=げ/なる¥かたはうど/に¥まじはつ/て、¥いつせんにち/が¥あひだ、¥あさゆふ¥みやづかひ¥まうさ/ん/と¥おほせ/らるる/こそ、¥まことに¥あはれ/に¥おぼしめせ。¥ふたつ/に/は¥おほみや/の¥はしどの/より、¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/まで、¥くわいらう¥つくつ/て¥まゐらせ/ん/と/なり。¥さんぜん−にん/の¥だいしゆ、¥ふる/に/も¥てる/に/も、¥しやさん/の¥とき、¥いたはしう¥おぼゆる/に、¥くわいらう¥つくら/れ/たら/ん/は、¥いか/に¥めでたから/ん。¥みつ/に/は¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/にて、¥ほつけ−もんだふかう¥まいにち¥たいてん¥なく¥おこなは/す/べし/と/なり。¥この¥ご=りふぐわん=ども/は、¥いづれ/も¥おろか/なら/ね/ども、¥せめて/は¥かみ¥ふたつ/は、¥さ¥なく/と/も¥あり/な/ん。¥ほつけ−もんだふかう/こそ、¥いちぢやう¥あら/まほしう/は¥おぼしめせ。P100¥ただし、¥こんど/の¥そしよう/は、¥むげ/に¥やすかり/ぬ/べき¥こと/にて¥あり/つる/を、¥ご=さいきよ¥なく/して、¥じんにん、¥みやじ¥い−ころさ/れ、¥しゆと¥おほく¥きず/を¥かうぶつ/て、¥なくなく¥まゐり/て¥うつたへ¥まうす/が、¥あまり/に¥こころ−うけれ/ば、¥いか/なら/ん¥よ/に¥わする/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥その−うへ¥かれ=ら/に¥あたる¥ところ/の¥や/は、¥すなはち¥わくわう−すゐじやく/の¥おん=はだへ/に¥たつ/たる/なり。¥まこと¥そらごと/は¥これ/を¥みよ」/とて、¥かた¥ぬぎ/たる/を¥みれ/ば、¥ひだり/の¥わき/の¥した、¥おほき/なる¥かはらけ/の¥くち/ほど、¥うげのい/て/ぞ¥あり/ける。「¥これ/が¥あまり/に¥こころ−うけれ/ば、¥いか/に¥まうす/と/も¥しぢう/の¥こと/は¥かなふ/まじ。¥ほつけ−もんだふかう¥いちぢやう¥ある/べく/は、¥みとせ/が¥いのち/を¥のべ/て¥たてまつら/ん。¥それ/を¥ふそく/に¥おぼしめさ/ば¥ちから¥およば/ず」/とて、¥さんわう¥あがら/せ¥たまひ/けり。¥ははうへ¥この¥ご=りふぐわん/の¥おん=こと、¥ひと/に/も¥かたら/せ¥たまは/ね/ば、¥たれ¥もらし/ぬ/らん/と、¥すこし/も¥うたがふ¥かた/も¥ましまさ/ず。¥おん=こころ/の¥うち/の¥こと=ども/を、¥あり/の−まま/に¥ご=たくせん¥あり/けれ/ば、¥いよいよ¥しんかん/に¥そう/て、¥こと/に¥たつとく¥おぼしめし、「¥たとひ¥いちにち¥へんし/と¥さぶらふ/とも、¥あり−がたう/こそ¥さぶらふ/べき/に、¥まして¥みとせ/が¥いのち/を¥のべ/て¥たまはら/ん/と¥おほせ/らるる/こそ、¥まことに¥あり−がたう/は¥さぶらへ」/とて、¥おん=なみだ/を¥おさへ/て¥おん=げかう¥あり/けり。¥その−のち¥きの−くに/に¥てんが/の¥りやう、¥たなか/の−しやう/と¥いふ¥ところ/を、¥えいたい¥はちわうじ/へ¥きしん−せ/らる。¥され/ば¥いま/の¥よ/に¥いたる/まで、¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/にて、¥ほつけ−もんだふかう、¥まいにち¥たいてん¥なし/と/ぞ¥うけたまはる。¥かかり/し−ほど/に、¥ごにでう/の−くわんばく=どの¥おん=やまふ¥かるま/せ¥たまひ/て、¥もと/の/ごとく/に¥なら/せ¥たまふ。¥じやうげ¥よろこび¥あは/れ/し/ほど/に、¥みとせ/の¥すぐる/は¥ゆめ/なれ/や、¥えいちやう−にねん/に¥なり/に/けり。P101¥ろくぐわつ−にじふいちにち、¥また¥ごにでう/の−くわんばく=どの、¥おん=ぐし/の¥きは/に¥あしき¥おん=かさ¥いで/させ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/し/が、¥おなじき−にじふしちにち、¥おん=とし¥さんじふはち/にて、¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥おん=こころ/の¥たけさ、¥り/の¥つよさ、¥さ/しも¥ゆゆしう¥おはせ/しか/ども、¥まめやか/に¥こと/の¥きふ/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥おん=いのち/を¥をしま/せ¥たまひ/けり。¥まことに¥をしかる/べし。¥しじふ/に/だに¥みたせ¥たまは/で、¥おほ=との/に¥さきだた/せ¥たまふ/こそ¥かなしけれ。¥かならず¥ちち/を¥さきだつ/べし/と¥いふ¥こと/は¥なけれ/ども、¥しやうじ/の¥おきて/に¥したがふ¥ならひ、¥まんどく−ゑんまん/の¥せそん、¥じふぢ−くきやう/の¥だいじ=たち/も、¥ちから¥およば/せ¥たまは/ぬ¥しだい/なり。¥じひ¥ぐそく/の¥さんわう、¥りもつ/の¥はうべん/にて¥ましませ/ば、¥おん=とがめ¥なかる/べし/と/も¥おぼえ/ず。「みこしぶり」(『みこしぶり』)S0115¥さる−ほど/に¥さんもん/に/は、¥こくし−かがの−かみ−もろたか/を¥るざい/に¥しよ−せ/られ、¥もくだい−こんどう−はんぐわん−もろつね/を¥きんごく−せ/らる/べき¥よし、¥そうもん¥どど/に¥およぶ/と¥いへ/ども、¥ご=さいきよ¥なかり/けれ/ば、¥ひよし/の¥さいれい/を¥うち−とどめ/て、¥あんげん−さんねん−しんぐわつ−じふさんにち/の¥たつ/の¥いつてん/に、¥じふぜんじ−ごんげん、¥まらうど、¥はちわうじ、¥さんじや/の¥しんよ/を¥かざり¥たてまつ/て、¥ぢんどう/へ¥ふり−あげ¥たてまつる。¥さがりまつ、¥きれづつみ、¥かも/の¥かはら、¥ただす、¥うめただ、¥やなぎはら、¥とうぼくゐん/の¥へん/に、¥じんにん、¥みやじ、¥しらだいしゆ、P102¥せんだう¥みちみち/て、¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず。¥しんよ/は¥いちでう/を¥にし/へ¥いら/せ¥たまふ/に、¥ご=じんぼう¥てん/に¥かかやい/て、¥にちぐわつ¥ち/に¥おち¥たまふ/か/と¥おどろか/る。¥これ/に¥よつ/て¥げんぺい−りやうけ/の¥たいしやうぐん/に¥おほせ/て、¥しはう/の¥ぢんどう/を¥かため/て、¥だいしゆ¥ふせぐ/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥へいけ/に/は¥こまつの−ないだいじん/の−さだいしやう−しげもり=こう、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/にて、¥おほみやおもて/の¥やうめい、¥たいけん、¥いうはう、¥みつ/の¥もん/を¥かため¥たまふ。¥おとと¥むねもり、¥とももり、¥しげひら、¥をぢ¥よりもり、¥のりもり、¥つねもり/など/は、¥にしみなみ/の¥もん/を¥かため¥たまふ。¥げんじ/に/は¥たいだい−しゆご/の¥げん−ざんみ−よりまさ、¥らうどう/に/は¥わたなべの−はぶく、¥さづく/を¥さき/と/して、¥その¥せい¥わづか/に¥さんびやく−よ−き、¥きた/の¥もん、¥ぬひどの/の−ぢん/を¥かため¥たまふ。¥ところ/は¥ひろし、¥せい/は¥すくなし、¥まばら/に/こそ¥みえ/たり/けれ。¥だいしゆ¥ぶせい/たる/に¥よつ/て、¥きた/の¥もん、¥ぬひどの/の−ぢん/より¥しんよ/を¥いれ¥たてまつら/ん/と¥する/に、¥よりまさの−きやう¥さる−ひと/にて、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥かぶと/を¥ぬぎ、¥てうづ−うがひ−し/て、¥しんよ/を¥はいし¥たてまつら/る。¥つはもの=ども/も¥みな¥かく/の/ごとし。¥よりまさの−きやう/より、¥だいしゆ/の¥なか/へ¥ししや/を¥たて/て、¥いひ¥おくら/るる¥むね¥あり。¥その¥つかひ/は¥わたなべの−ちやうじつ−となふ/と/ぞ¥きこえ/し。¥となふ¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥きちん/の−ひたたれ/に、¥こざくら/を¥き/に¥かへし/たる¥よろひ¥き/て、¥しやくどう−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥しらは/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で、¥たかひも/に¥かけ、¥しんよ/の¥おん=まへ/に¥かしこまつ/て、「¥しばらく¥しづまら/れ¥さふらへ。¥げん−ざんみ=どの/より、¥しゆと/の¥おん=なか/へ¥げん−ざんみ=どの/の¥まうせ/と¥ざふらふ」/とて、「¥こんど¥さんもん/の¥ご=そしよう、¥りうん/の¥でう¥もちろん/に¥さふらふ。¥ご=さいだん¥ちち/こそ、¥よそ/にて/も¥ゐこん/に¥おぼえ¥さうらへ。¥しんよ¥いれ¥たてまつら/んP103¥こと、¥しさい/に¥および¥さふらは/ず。¥ただし¥よりまさ¥ぶせい/に¥さふらふ。¥あけ/て¥いれ¥たてまつる¥ぢん/より¥いら/せ¥たまひ/な/ば、¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥めだりがほ−し/けり/など、¥きやう−わらんべ/の¥まうさ/ん¥こと、¥ごにち/の¥なん/に/や¥さふらは/んず/らん。¥あけ/て¥いれ¥たてまつれ/ば、¥せんじ/を¥そむく/に¥に/たり。¥また¥ふせぎ¥たてまつら/ん/と¥すれ/ば、¥ねんらい¥いわう、¥さんわう/に¥かうべ/を¥かたぶけ/て¥さふらふ¥み/が、¥けふ/より¥のち、¥ながく¥ゆみ−や/の¥みち/に¥わかれ¥さふらひ/な/んず。¥かれ/と¥いひ、¥これ/と¥いひ、¥かたがた¥なんぢ/の¥やう/に¥おぼえ¥さふらふ。¥ひんがし/の¥ぢんどう/を/ば¥こまつ=どの/の¥おほぜい/にて¥かため/られ/て¥さふらふ。¥その¥ぢん/より¥いら/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と、¥いひ¥おくり/たり/けれ/ば、¥となふ/が¥かく¥いふ/に¥ふせが/れ/て、¥じんにん、¥みやじ、¥しばらく¥ゆらへ/たり。¥わかだいしゆ、¥あくそう=ども/は、「¥なんでふ¥その¥ぎ¥ある/べき。¥ただ¥この¥ぢん/より¥しんよ/を¥いれ¥たてまつれ/や」/と¥いふ¥やから¥おほかり/けれ/ども、¥ここ/に¥らうそう/の¥なか/に、¥さんたふ−いち/の¥せんぎしや/と¥きこえ/し¥つの−りつしや−がううん、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥この¥ぎ¥もつとも¥さ¥いは/れ/たり。¥われ=ら¥しんよ/を¥さき−だて¥まゐらせ/て、¥そしよう/を¥いたさ/ば、¥おほぜい/の¥なか/を¥うち−やぶり/て/こそ、¥こうたい/の¥きこえ/も¥あら/んずれ。¥なかんづく¥この¥よりまさの−きやう/は、¥ろくそんわう/より¥この−かた、¥げんじ¥ちやくちやく/の¥しやうとう、¥ゆみ−や/を¥とつ/て/も、¥いまだ¥その¥ふかく/を¥きか/ず。¥およそ/は¥ぶげい/に/も¥かぎら/ず、¥かだう/に/も¥また¥すぐれ/たる¥をのこ/なり。¥ひととせ¥こんゑのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥たうざ/の¥ご=くわい/の¥あり/し/に、『¥しんざん/の¥はな』/と¥いふ¥だい/を¥いださ/れ/たり/ける/に、¥ひとびと¥みな¥よみ¥わづらは/れ/たり/し/を、¥この¥よりまさの−きやう、P104¥
み−やま−ぎ/の¥その¥こずゑ/と/も¥みえ/ざり/し¥さくら/は¥はな/に¥あらはれ/に/けり W007
/と¥いふ¥めいか¥つかまつ/て¥ぎよ=かん/に¥あづかる/ほど/の¥やさおのこ/に、¥いかんが¥とき/に¥のぞん/で¥なさけ−なう¥ちじよく/を/ば¥あたふ/べき。¥ただ¥しんよ¥かき−かへし¥たてまつれ/や」/と、¥せんぎ−し/たり/けれ/ば、¥すせん−にん/の¥だいしゆ、¥せんぢん/より¥ごぢん/まで、¥みな¥もつとも−もつとも/と/ぞ¥どうじ/ける。¥さて¥しんよ¥かき−かへし¥たてまつり、¥ひんがし/の¥ぢんどう、¥たいけんもん/より¥いれ¥たてまつら/ん/と¥し/ける/に、¥らうぜき¥たちまち/に¥いで−き/て、¥ぶし=ども¥さんざん/に¥い¥たてまつる。¥じふぜんじ/の¥み=こし/に/も、¥や=ども¥あまた¥い−たて/けり。¥じんにん、¥みやじ¥い−ころさ/れ、¥しゆと¥おほく¥きず/を¥かうぶつ/て、¥をめき−さけぶ¥こゑ/は¥ぼんでん/まで/も¥きこえ、¥けんらう¥ぢじん/も¥おどろき¥たまふ/らん/と/ぞ¥おぼえ/ける。¥だいしゆ¥しんよ/を/ば¥ぢんどう/に¥ふり−すて¥たてまつり、¥なくなく¥ほんざん/へ/ぞ¥かへり−のぼり/ける。「だいりえんしやう」(『だいりえんしやう』)S0116¥ゆふべ/に¥およん/で¥くらんど/の−させうべん−かねみつ/に¥おほせ/て、¥ゐん/の¥てんじやう/にて、¥にはか/に¥くぎやう−せんぎ¥あり/けり。¥さんぬる¥ほうあん−しねん−しんぐわつ/に¥しんよ¥じゆらく/の¥とき/は、¥ざす/に¥おほせ/て、¥せきさん/の−やしろ/へ¥いれ¥たてまつら/る。¥また¥ほうえん−しねん−しちぐわつ/に¥しんよ¥じゆらく/の¥とき/は、¥ぎをん/の−べつたう/に¥おほせ/て、¥ぎをん/の−やしろ/へ¥いれ¥たてまつら/る。¥こんど/も¥ほうえん/の¥れい/たる/べし/とて、¥ぎをん/の−べつたう−ごん/の−だいそうづ−ちようけん/にP105¥おほせ、¥へいしよく/に¥およん/で¥ぎをん/の−やしろ/へ¥いれ¥たてまつら/る。¥しんよ/に¥たつ¥ところ/の¥や/を/ば、¥じんにん/して¥これ/を¥ぬか/せ/らる。¥むかし/より¥さんもん/の¥だいしゆ、¥しんよ/を¥ぢんどう/へ¥ふり¥たてまつる¥こと/は、¥さんぬる¥えいきう/より¥この−かた、¥ぢしよう/まで/は¥ろく−か−ど/なり。¥され/ども¥まいど/に¥ぶし/に¥おほせ/て¥ふせが/せ/らるる/に、¥しんよ¥い¥たてまつる¥こと/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。「¥れいしん¥いかり/を¥なせ/ば、¥さいがい¥ちまた/に¥みつ/と¥いへ/り。¥おそろし−おそろし」/と/ぞ¥おのおの¥のたまひ−あは/れ/ける。¥おなじき−じふしにち/の¥やはん/ばかり、¥さんもん/の¥だいしゆ、¥また¥おびたたしう¥げらく−する/と¥きこえ/しか/ば、¥しゆしやう/は¥やちう/に¥えうよ/に¥めし/て、¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/へ¥ぎやうがう¥なる。¥ちうぐう、¥みやみや/は、¥おん=くるま/に¥たてまつり/て、¥たしよ/へ¥ぎやうげい¥あり/けり。¥くわんばく=どの/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥われ/も¥われ/も/と¥ぐぶ−せ/らる。¥こまつの−おとど/は、¥なほし/に¥や¥おう/て¥ぐぶ−せ/らる。¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり/は、¥そくたい/に¥ひらやなぐひ¥おう/て/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥およそ¥きんちう/の¥じやうげ、¥きやう−ぢう/の¥きせん、¥さわぎ−ののしる¥こと¥おびたたし。¥され/ども¥さんもん/に/は、¥しんよ/に¥や¥たち、¥じんにん¥みやじ¥い−ころさ/れ、¥しゆと¥おほく¥きず/を¥かうぶり/たり/しか/ば、¥おほみや¥に/の−みや¥いげ、¥かうだう、¥ちうだう、¥すべて¥しよだう、¥いち−う/も¥のこさ/ず¥みな¥やき−はらつ/て、¥さんや/に¥まじはる/べき¥よし、¥さんぜん¥いちどう/に¥せんぎ−す。¥これ/に¥よつ/て¥だいしゆ/の¥まうす¥ところ、¥ほふわう¥おん=ぱからひ¥ある/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥さんもん/の¥じやうかう=ら、¥しさい/を¥しゆと/に¥ふれ/ん/とて、¥とうざん−す/と¥きこえ/しか/ば、¥だいしゆ¥にしざかもと/に¥おり−くだつ/て、¥みな¥おつ−かへす。¥へい−だいなごん−ときただの−きやう、P106¥その−とき/は¥いまだ¥さゑもん/の−かみ/にて¥おはし/ける/が、¥しやうけい/に¥たつ。¥だい−かうだう/の¥には/に¥さんたふ¥くわいがふ−し/て、「¥しやうけい/を¥とつ/て¥ひつぱり、¥しや¥かぶり/を¥うち−おとし、¥その¥み/を¥からめ/て、¥みづうみ/に¥しづめよ」/など/ぞ¥まうし/ける。¥すでに¥かう/と¥みえ/し¥とき、¥ときただの−きやう、¥だいしゆ/の¥なか/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥しばらく¥しづまら/れ¥さふらへ。¥しゆと/の¥おん=なか/へ¥まうす/べき¥こと/の¥さふらふ」/とて、¥ふところ/より¥こすずり¥たたうがみ¥とり−いだし、¥ひとふで¥かい/て¥だいしゆ/の¥なか/へ¥おくら/る。¥これ/を¥ひらい/て¥みる/に、「¥しゆと/の¥らんあく/を¥いたす/は、¥まえん/の¥しよぎやう/なり。¥めいわう/の¥せいし/を¥くはふる/は、¥ぜんぜい/の¥かご/なり」/と/こそ¥かか/れ/たれ。¥これ/を¥み/て、¥だいしゆ¥ひつぱる/に/も¥およば/ず、¥みな¥もつとも−もつとも/と¥どうじ/て、¥たにだに/に¥おり、¥ばうばう/へ/ぞ¥いり/に/ける。¥いつし¥いつく/を¥もつて、¥さんたふ¥さんぜん/の¥いきどほり/を¥やすめ、¥こうし/の¥はぢ/を/も¥のがれ¥たまひ/けん¥ときただの−きやう/こそ¥ゆゆしけれ。¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥はつかう/の¥みだりがはしき/ばかり/か/と¥おもひ/ぬれ/ば、¥ことわり/を/も¥ぞんぢ−し/けり/と/ぞ、¥ひとびと¥かんじ−あは/れ/ける。¥おなじき−はつかのひ、¥くわざんのゐん−ごん−ぢうなごん−ただちかの−きやう/を¥しやうけい/にて、¥こくし−かがの−かみ−もろたか/を¥けつくわん−せ/られ/て、¥おはり/の¥ゐどた/へ¥ながさ/る。¥おとと¥こんどう−はんぐわん−もろつね/を/ば¥きんごく−せ/らる。¥また¥さんぬる¥じふさんにち¥しんよ¥い¥たてまつ/し¥ぶし¥ろくにん¥ごくぢやう−せ/らる。¥これ=ら/は¥みな¥こまつ=どの/の¥さぶらひ/なり。¥おなじき−にじふはちにち/の¥よ/の¥いぬ/の−こく/ばかり、¥ひぐちとみのこうぢ/より¥ひ¥いで−きたつ/て、¥きやう−ぢう¥おほく¥やけ/に/けり。¥をりふし¥たつみ/の¥かぜ¥はげしく¥ふき/けれ/ば、¥おほき/なる¥しやりん/の/ごとく/なるP107¥ほのほ/が、¥さんぢやう¥ごちやう/を¥へだて/て、¥いぬゐ/の¥かたへ¥すぢかへ/に¥とび−こえ−とび−こえ¥やけ−ゆけ/ば、¥おそろし/など/も¥おろか/なり。¥あるひは¥ぐへいしんわう/の¥ちぐさ=どの、¥あるひは¥きたの/の−てんじん/の¥こうばい=どの、¥きつ−いつせい/の¥はひまつ=どの、¥おに=どの、¥たかまつ=どの、¥かもゐ=どの、¥とうさんでう、¥ふゆつぎ/の−おとど/の¥かんゐん=どの、¥せうぜん=こう/の¥ほりかは=どの、¥これ/を¥はじめ/て、¥むかし−いま/の¥めいしよ¥さんじふ−よ−か−しよ、¥くぎやう/の¥いへ/だに/も¥じふろく−か−しよ/まで¥やけ/に/けり。¥その−ほか¥てんじやうびと、¥しよだいぶ/の¥いへいへ/は¥しるす/に¥およば/ず。¥はて/は¥たいだい/に¥ふき−つけ/て、¥しゆしやくもん/より¥はじめ/て、¥おうでんもん、¥くわいしやうもん、¥だいこくでん、¥ぶらくゐん、¥しよし¥はつしやう、¥あいたんどころ、¥いちじ/が¥うち/に、¥みな¥くわいじん/の¥ち/と/ぞ¥なり/に/ける。¥いへいへ/の¥につき、¥だいだい/の¥もんじよ、¥しつちん−まんぽう¥さながら¥ちり−はひ/と¥なり/ぬ。¥その¥あひだ/の¥つひえ¥いか/ばかり/ぞ。¥ひと/の¥やけ−しぬる¥こと¥すひやく−にん、¥ぎうば/の¥たぐひ¥かず/を¥しら/ず。¥これ¥ただごと/に¥あら/ず。¥さんわう/の¥おん=とがめ/とて、¥ひえいさん/より、¥おほき/なる¥さる=ども/が、¥にさんぜん¥おり−くだり、¥てんで/に¥まつび/を¥ともい/て、¥きやう−ぢう/を¥やく/と/ぞ、¥ひと/の¥ゆめ/に/は¥みえ/たり/ける。¥だいこくでん/は¥せいわ−てんわう/の¥ぎよ=う、¥ぢやうくわん−じふはちねん/に¥はじめて¥やけ/たり/けれ/ば、¥おなじき−じふくねん−しやうぐわつ−みつかのひ、¥やうぜいのゐん/の¥ご=そくゐ/は¥ぶらくゐん/にて/ぞ¥あり/ける。¥ぐわんきやう−ぐわんねん−しんぐわつ−ここのかのひ、¥ことはじめ¥あつ/て、¥おなじき−にねん−じふぐわつ−やうかのひ/ぞ¥つくり−いださ/れ/たり/ける。¥ごれんぜいのゐん/の¥ぎよ=う、¥てんき−ごねん−にんぐわつ−にじふろくにち、¥また¥やけ/に/けり。¥ぢりやく−しねん−はちぐわつ−じふしにち/に、¥ことはじめ¥あり/しか/ども、¥いまだ¥つくり/も¥いださ/れ/ず/して、¥ごれんぜいのゐん¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥ごさんでうのゐん/の¥ぎよ=う、¥えんきう−しねん−しんぐわつ−じふごにち/に¥つくり−いださ/れ/て、¥ぶんじん¥し/を¥たてまつり、P108¥れいじん¥がく/を¥そうし/て、¥せんかう¥なし¥たてまつる。¥いま/は¥よ¥すゑ/に¥なつ/て、¥くに/の¥ちから/も¥みな¥おとろへ/たれ/ば、¥その−のち/は¥つひに¥つくら/れ/ず。P109¥

平家物語 巻第二  総かな版(元和九年本)
「ざすながし」(『ざすながし』)S0201¥ぢしよう−ぐわんねん−ごぐわつ−いつかのひ、¥てんだい−ざす−めいうん−だいそうじやう、¥くじやう/を¥ちやうじ−せ/らるる¥うへ、¥くらんど/を¥お=つかひ/にて、¥によいりん/の¥ご=ほんぞん/を¥めし−かへい/て、¥ごぢそう/を¥かいえき−せ/らる。¥すなはち¥しちやう/の¥つかひ/を¥つけ/て、¥こんど¥しんよ¥だいり/へ¥ふり¥たてまつ/し¥しゆと/の¥ちやうぼん/を¥めさ/れ/けり。¥かがの−くに/に¥ざす/の¥ご=ばうりやう¥あり。¥こくし−もろたか¥これ/を¥ちやうはい/の¥あひだ、¥その¥しゆくい/に¥よつ/て、¥だいしゆ/を¥かたらひ¥そしよう/を¥いたさ/る。¥すでに¥てうか/の¥おん=だいじ/に¥およぶ/べき¥よし、¥さいくわう−ほふし−ふし/が¥ざんそう/に¥よつ/て、¥ほふわう¥おほき/に¥げきりん¥あり/けり。¥こと/に¥ぢうくわ/に¥おこなは/る/べし/と¥きこゆ。¥めいうん/は¥ゐん/の¥ご=きしよく¥あしかり/けれ/ば、¥いんやく/を¥かへし¥たてまつ/て、¥ざす/を¥じし¥まうさ/れ/けり。¥おなじき−じふいちにち、¥とばのゐん/の¥しちのみや¥かくくわい−ほつしんわう、¥てんだい−ざす/に¥なら/せ¥たまふ。¥これ/は¥しやうれんゐん/の¥だいそうじやう−ぎやうげん/の¥おん=でし/なり。¥あくる¥じふににち、¥せん−ざす¥しよしよく/を¥もつしゆ−せ/らるるP110¥うへ、¥けんびゐし¥ににん/を¥つけ/て、¥ゐ/に¥ふた/を¥し、¥ひ/に¥みづ/を¥かけ/て、¥すゐくわ/の¥せめ/に¥おこなは/る/べき¥よし¥きこゆ。¥これ/に¥よつ/て、¥だいしゆ¥なほ¥さんらく−す/と¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥また¥さわぎ−あへ/り。¥
おなじき−じふはちにち¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥くぎやう¥じふさん−にん¥さんだい−し/て、¥ぢん/の¥ざ/に¥つき、¥さきの−ざす¥ざいくわ/の¥こと¥ぎぢやう¥あり。¥はちでうの−ちうなごん−ながかたの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥さだいべん/の−さいしやう/にて、¥ばつざ/に¥さぶらは/れ/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥ほつけ/の¥かんじやう/に¥まかせ/て、¥しざい¥いつとう/を¥げん−じ/て、¥をんる−せ/らる/べし/と/は¥みえ/て¥さふらへ/ども、¥せん−ざす−めいうん−だいそうじやう/は¥けんみつ¥けんがく−し/て、¥じやうぎやう−ぢりつ/の¥うへ、¥だいじようめうきやう/を¥くげ/に¥さづけ¥たてまつり、¥ぼさつじやうかい/を¥ほふわう/に¥たもた/せ¥たてまつる。¥おんきやう/の¥し、¥おん=かい/の−し、¥ぢうくわ/に¥おこなは/れ/ん¥こと/は、¥みやう/の¥せうらん¥はかり−がたし。¥げんぞく−をんる/を¥なだめ/らる/べき/か」/と、¥はばかる¥ところ/も¥なう¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥たうざ/の¥くぎやう、¥みな¥ながかた/の¥ぎ/に¥どう−ず/と¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥ほふわう¥おん=いきどほり¥ふかかり/けれ/ば、¥なほ¥をんる/に¥さだめ/らる。¥だいじやう/の−にふだう/も¥この¥こと¥まうさ/ん/とて、¥ゐんざん−せ/られ/たり/けれ/ども、¥ほふわう¥おん=かぜ/の¥け/とて、¥ごぜん/へ/も¥めさ/れ¥たまは/ね/ば、¥ほい−な=げ/にて¥たいしゆつ−せ/らる。¥そう/を¥つみ−する¥ならひ/とて、¥どえん/を¥めし−かへし、¥げんぞく−せ/させ¥たてまつり、¥だいなごん/の−たいふ−ふじゐの−まつえだ/と¥いふ¥ぞくみやう/を/こそ¥つけ/られ/けれ。¥この¥めいうん/と¥まうす/は、¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく、¥むらかみの−てんわう¥だいしち/の¥わうじ、¥ぐへい−しんわう/より¥ろくだい/の¥おん=すゑ、¥こがの−だいなごん−あきみちの−きやう/の¥おん=こ/なり。¥まことに¥ぶさう/の¥せきとく、¥てんがP111¥だいいち/の¥かうそう/にて¥おはし/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥たつとみ¥たまひ/て、¥てんわうじ、¥ろくしようじ/の¥べつたう/を/も¥かけ¥たまへ/り。¥され/ども¥をんやう/の−かみ−あべの−やすちか/が¥まうし/ける/は、「¥さ/ばかり/の¥ちしや/の、¥めいうん/と¥なのり¥たまふ/こそ¥こころ−え/ね。¥うへ/に/は¥じつげつ/の¥ひかり/を¥ならべ、¥した/に¥くも¥あり」/と/ぞ¥なんじ/ける。¥にんあん−ぐわんねん−にんぐわつ−はつかのひ、¥てんだい−ざす/に¥なら/せ¥たまふ。¥おなじき−さんぐわつ−じふごにち¥ご=はいだう¥あり。¥ちうだう/の¥ほうざう/を¥ひらか/れ/ける/に、¥しゆじゆ/の¥ちようほう=ども/の¥なか/に、¥はう¥いつしやく/の¥はこ¥あり。¥しろい¥ぬの/にて¥つつま/れ/たり。¥いつしやう−ふぼん/の¥ざす、¥かの¥はこ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、¥わうし/に¥かけ/る¥ふみ¥いつくわん¥あり。¥でんげう−だいし、¥みらい/の¥ざす/の¥みやうじ/を、¥かね/て¥しるし−おか/れ/たり。¥わが¥な/の¥ある¥ところ/まで/は¥み/て、¥それ/より¥おく/を/ば¥み¥たまは/ず、¥もと/の/ごとく¥まき−かへし/て¥おか/るる¥ならひ/なり。¥され/ば¥この¥そうじやう/も、¥さ/こそ/は¥おはし/けめ。¥かかる¥たつとき¥ひと/なれ/ども、¥ぜんぜ/の¥しゆくごふ/を/ば¥まぬかれ¥たまは/ず、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥おなじき−にじふいちにち、¥はいしよ¥いづの−くに/と¥さだめ/らる。¥ひとびと¥やうやう/に¥まうさ/れ/けれ/ども、¥さいくわう−ほふし−ふし/が¥ざんそう/に¥よつ/て、¥かやう/に/は¥おこなは/れ/ける/なり。¥けふ¥やがて¥みやこ/の¥うち/を¥おひ−いださ/る/べし/とて、¥おつたて/の−くわんにん、¥しらかは/の¥ごばう/に¥ゆき−むかつ/て¥おひ¥たてまつる。¥そうじやう¥なくなく¥ごばう/を¥いで/つつ、¥あはたぐち/の¥ほとり、¥いつさいきやう/の−べつしよ/へ¥いら/せ¥おはします。¥さんもん/に/は、¥せんずる−ところ、¥われ=ら/が¥かたき/は、¥さいくわう−ほふし−ふし/に¥すぎ/たる¥もの¥なし/とて、¥かれ=ら−ふし/が¥みやうじ/を¥かい/て、¥こんぽん−ちうだう/に¥おはします¥じふに−じんじやう/の¥うち、¥こんぴらだいじやう/のP112¥ひだん/の¥み=あし/の¥した/に¥ふま/せ¥たてまつり、「¥じふに−じんじやう、¥しちせん−やしや、¥じこく/を¥めぐらさ/ず、¥さいくわう−ほふし−ふし/が¥いのち/を¥めし−とり¥たまへ/や」/と、¥をめき−さけん/で¥しゆそ−し/ける/こそ、¥きく/も¥おそろしけれ。¥
おなじき−にじふさんにち¥いつさいきやう/の−べつしよ/より、¥はいしよ/へ¥おもむき¥たまひ/けり。¥さ/ばかり/の¥ほふむ/の¥だいそうじやう/ほど/の¥ひと/の¥おつたて/の−うつし/が¥さき/に¥け−たて/られ/て、¥けふ/を¥かぎり/に¥みやこ/を¥いで/て、¥せき/の¥ひがし/へ¥おもむか/れ/けん¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥おほつ/の¥うちで/の−はま/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥もんじゆろう/の¥のきば/の¥しろじろ/と/して¥みえ/ける/を、¥ふため/と/も¥み¥たまは/ず、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て¥なみだ/に¥むせび¥たまひ/けり。¥さんもん/に/は¥しゆくらう−せきとく¥おほし/と¥いへ/ども、¥ちようけん−ほふいん、¥その−とき/は¥いまだ¥そうづ/にて¥おはし/ける/が、¥あまり/に¥なごり/を¥をしみ¥たてまつり、¥あはづ/まで¥おくり¥まゐらせ/て、¥それ/より¥いとま¥こう/て¥かへら/れ/ける/に、¥そうじやう¥こころざし/の¥せつ/なる¥こと/を¥かんじ/て、¥ねんらい¥こしんぢう/に¥ひ−せ/られ/たり/し、¥いつしん−さんぐわん/の¥けつみやく−さうじよう/を¥さづけ/らる。¥この¥ほう/は¥しやくそん/の¥ふぞく、¥はらないこく/の¥めみやうびく、¥なんてんぢく/の¥りうじゆぼさつ/より¥しだい/に¥さうでん−し¥きたれ/る/を、¥けふ/の¥なさけ/に¥さづけ/らる。¥さすが¥わが¥てう/は¥そくさん−へんぢ/の¥さかひ、¥じよくせ¥まつだい/と/は¥いひ/ながら、¥ちようけん¥これ/を¥ふぞく−し/て、¥ほふえ/の¥たもと/を¥しぼり/つつ、¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/けん、¥こころ/の¥うち/こそ¥たつとけれ。¥
さる−ほど/に¥さんもん/に/は¥だいしゆ¥おこつ/て¥せんぎ−す。「¥そもそも¥ぎしん−くわしやう/より¥この−かた、¥てんだい−ざす¥はじまつ/て、¥ごじふご−だい/に¥いたる/まで、¥いまだ¥るざい/の¥れい/を¥きか/ず。¥つらつら¥こと/の¥こころ/を¥あんずる/に、P113¥えんりやく/の¥ころほひ、¥くわうてい/は¥ていと/を¥たて、¥だいし/は¥たうざん/に¥よぢ−のぼり/て、¥しめい/の¥けうぼふ/を¥この¥ところ/に¥ひろめ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥ごしやう/の¥によにん¥あと¥たえ/て、¥さんぜん/の¥じやうりよ¥きよ/を¥しめ/たり。¥みね/に/は¥いちじよう−どくじゆ¥とし¥ふり/て、¥ふもと/に/は¥しちしや/の¥れいげん¥ひ¥あらた/なり。¥かの¥ぐわつし/の¥りやうぜん/は、¥わうじやう/の¥とうぼく、¥だいしやう/の¥いうくつ/なり。¥この¥じちゐき/の¥えいがく/も¥ていと/の¥きもん/に¥そばだち/て¥ごこく/の¥れいち/なり。¥だいだい/の¥けんわう¥ちしん、¥この¥ところ/に¥だんぢやう/を¥しむ。¥まつだい/なら/ん/がらん/に、¥いかで/か¥たうざん/に¥きず/を/ば¥つく/べき。¥こ/は¥こころ−うし」/とて、¥をめき−さけぶ/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥まんざん/の¥だいしゆ、¥のこり−とどま/る¥もの/も¥なく、¥みな¥ひがしざかもと/へ¥おり−くだる。¥(『いちぎやうあじやりのさた』)S0202¥じふぜんじ−ごんげん/の¥おん=まへ/にて、¥だいしゆ¥また¥せんぎ−す。「¥そもそも¥われ=ら¥あはづ/へ¥ゆき−むかつ/て、¥くわんじゆ/を/ば¥うばひ−とどめ¥たてまつる/べし。¥ただし¥おつたて/の−うつし、¥りやうそうし¥ある/なれ/ば、¥さう−なう¥とり−え¥たてまつら/ん¥こと¥あり−がたし。¥いま/は¥さんわう−だいし/の¥おん=ちから/の¥ほか、¥また¥たのみ¥たてまつる¥かた¥なし。¥まことに¥べつ/の¥しさい¥なく、¥とり−え¥たてまつる/べく/は、¥ここ/にて¥まづ¥ひとつ/の¥ずゐさう/を¥みせ/しめ¥たまへ」/と、¥らうそう=ども¥かんたん/を¥くだい/て¥きねん−し/けり。¥ここに¥むどうじ−ぼふし¥じようゑん−りつし/が¥めし−つかひ/ける¥つるまる/と¥いふ¥わらは¥あり。¥しやうねん¥じふはつさい/に¥なり/ける/が、¥しんじん/を¥くるしめ、¥ごたい/に¥あせ/を¥ながい/て、¥にはか/に¥くるひ−いで/たり。「¥われ¥じふぜんじ−ごんげん¥のり−ゐ/させ¥たまへ/り。¥まつだい/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥わが−やま/の¥くわんじゆ/を/ば、¥たこく/へ/は¥うつさ/る/べき。¥しやうじやう−せせ/に¥こころ−うし。¥さら/ん/に¥とつ/て/は、¥われ¥この¥ふもと/に¥あと/を¥とどめ/て/も¥なに/に/かは¥せん」/とて、¥さう/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と¥なき/けれ/ば、P114¥だいしゆ¥これ/を¥あやしみ/て、「¥まことに¥じふぜんじ−ごんげん/の¥ご=たくせん/にて¥おはしまさ/ば、¥われ=ら¥しるし/を¥まゐらせ/ん。¥
いちいち/に¥もと/の¥ぬし/に¥かへし¥たまへ」/とて、¥らうそう=ども¥しごひやく−にん、¥てんで/に¥もつ/たる¥じゆず=ども/を、¥じふぜんじ−ごんげん/の¥おほ−ゆか/の¥うへ/へ/ぞ¥なげ−あげ/たる。¥かの¥ものぐるひ¥はしり=まはり、¥ひろひ−あつめ/て¥すこし/も¥たがへ/ず、¥いちいち/に¥みな¥もと/の¥ぬし/に/ぞ¥くばり/ける。¥だいしゆ¥しんめい/の¥れいげん¥あらた/なる¥こと/の¥たつとさ/に、¥みな¥たなごころ/を¥あはせ/て¥ずゐき/の¥かんるゐ/を/ぞ¥もよほし/ける。「¥その¥ぎ/なら/ば、¥ゆき−むかつ/て¥うばひ−とどめ¥たてまつれ/や」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥うんか/の/ごとく/に¥はつかう−す。¥あるひは¥しが¥からさき/の¥はまぢ/に¥あゆみ−つづけ/る¥だいしゆ/も¥あり。¥あるひは¥やまだやばせ/の¥こしやう/に¥ふね¥おし−いだす¥しゆと/も¥あり。¥これ/を¥み/て¥さ/しも¥きびし=げ/なり/つる¥おつたて/の−うつし、¥りやうそうし、¥ちりぢり/に¥みな¥にげ−さり/ぬ。¥だいしゆ¥こくぶんじ/へ¥まゐり−むかふ。¥せん−ざす¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、「¥およそ¥ちよくかん/の¥もの/は、¥つきひ/の¥ひかり/に/だに¥あたら/ず/と/こそ¥うけたまはれ。¥いか/に−いはんや、¥じこく/を¥めぐらさ/ず、¥いそぎ¥おひ−くださ/る/べし/と、¥ゐんぜん¥せんじ/の¥なり/たる/に、¥すこし/も¥やすらふ/べから/ず。¥しゆと¥とうとう¥かへり−のぼり¥たまふ/べし」/と、¥はし¥ちかく¥ゐ−いで/て¥のたまひ/ける/は、「¥さんだい−くわいもん/の¥いへ/を¥いで/て、¥しめい−いうけい/の¥まど/に¥いつ/し/より¥この−かた、¥ひろく¥ゑんじう/の¥けうぼふ/を¥がく−し/て、¥けん−みつ¥りやう−しう/を¥まなび/き。¥ただ¥わが−やま/の¥こうりう/を/のみ¥おもへ/り。¥また¥こくか/を¥いのり¥たてまつる¥こと/も¥おろそか/なら/ず。¥しゆと/を¥はぐくむ¥こころざし/も¥ふかかり/き。¥りやうじよ¥さんしやう¥さだめ/て¥せうらん−し¥たまふ/らん。¥み/に¥あやまつ¥こと¥なし。¥むじつ/の¥つみ/に¥よつ/て、¥をんる/の¥ぢうくわ/を¥かうむれ/ば、¥よ/を/も¥ひと/を/も¥かみ/を/も¥ほとけ/を/も、P115¥うらみ¥たてまつる¥かた¥なし。¥まことに¥はるばる/と¥これ/まで¥とぶらひ−きたり¥たまふ¥しゆと/の¥はうし/こそ、¥しやうじやう−せせ/に/も¥ほうじ¥つくし−がたけれ」/とて、¥かうぞめ/の¥おん=ころも/の¥そで/を¥しぼり/も¥あへ/させ¥たまは/ね/ば、¥だいしゆ/も¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥すでに¥おん=こし¥さし−よせ/て、「¥とうとう¥めさ/る/べう¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥せん−ざす¥のたまひ/ける/は、「¥むかし/こそ¥さんぜん/の¥しゆと/の¥くわんじゆ/たり/しか。¥いま/は¥かかる¥るにん/の¥み/と¥なつ/て、¥いかで/か¥やんごとなき¥しゆがくしや、¥ちゑ¥ふかき¥だいしゆ=たち/に¥かき−ささげ/られ/て/は¥のぼる/べき。¥たとひ¥のぼる/べき/なり/とも、¥わらんづ/など¥いふ¥もの/を¥しばり−はい/て、¥おなじ¥やう/に¥あゆみ−つづい/て/こそ¥のぼら/め」/とて、¥のり¥たまは/ず。¥
ここ/に¥さいたふ/の¥ぢうりよ、¥かいじやう−ばう/の−あじやり−いうけい/と¥いふ¥あくそう¥あり。¥たけ¥しちしやく/ばかり¥あり/ける/が、¥くろかは−をどし/の−よろひ/の、¥おほ−あらめ/に¥かね¥まぜ/たる/を、¥くさずりなが/に¥き−なし、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で、¥ほふし=ばら/に¥もた/せ/つつ、¥しらえ/の−なぎなた¥つゑ/に¥つき、¥だいしゆ/の¥なか/を¥おし−わけ−おし−わけ、¥せん=ざす/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥だい/の¥まなこ/を¥み−いからかし、¥せん−ざす/を¥しばし¥にらまへ¥たてまつ/て、「¥その¥おん=こころ/で/こそ、¥かかる¥おん=め/に/も¥あはせ¥たまひ¥さふらへ。¥とうとう¥めさ/る/べう¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥せん−ざす¥おそろし−さ/に、¥いそぎ¥のり¥たまふ。¥だいしゆ¥とり−え¥たてまつる¥こと/の¥うれし−さ/に、¥いやしき¥ほふし=ばら/に/は¥あら/ず、¥やんごとなき¥しゆがくしや=ども/が¥かき−ささげ¥たてまつ/て¥のぼる/ほど/に、¥ひと/は¥かはれ/ども¥いうけい/は¥かはら/ず、¥さきごし¥かい/て、¥こし/の¥ながえ/も、¥なぎなた/の¥え/も、¥くだけよ/と¥とる¥まま/に、¥さ/しも¥さがしき¥ひがしざか、¥へいぢ/を¥ゆく/が/ごとく/なり。P116¥
だい−かうだう/の¥には/に、¥おん=こし¥かき−すゑ/て、¥だいしゆ¥また¥せんぎ−す。「¥そもそも¥われ=ら¥あはづ/に¥ゆき−むかつ/て、¥くわんじゆ/を/ば¥うばひ−とどめ¥たてまつり/ぬ。¥ただし¥ちよくかん/を¥かうむり/て¥をんる−せ/られ¥たまふ¥ひと/を、¥くわんじゆ/に¥もちひ¥まうさ/ん¥こと、¥いかが¥ある/べかる/らん」/と¥ひやうぢやう−す。¥かいじやう−ばう/の−あじやり−いうけい、¥また¥さき/の/ごとく¥すすみ−いで/て¥せんぎ−し/ける/は、「¥それ¥わが−やま/は¥につぽん¥ぶさう/の¥れいち、¥ちんご−こくか/の¥だうぢやう、¥さんわう/の¥ご=ゐくわう¥さかん/に/して、¥ぶつぽふ¥わうぼふ¥ごかく/なり。¥され/ば¥しゆと/の¥いしゆ/に¥いたる/まで¥ならび−なく、¥いやしき¥ほふし=ばら/まで/も、¥よ¥もつて¥かろしめ/ず。¥いはんや¥ちゑ¥かうき/に/して、¥さんぜん/の¥しゆと/の¥くわんじゆ/たり。¥とくぎやう¥おもう/して¥いつさん/の¥わじやう/たり。¥つみ¥なく/して¥つみ/を¥かうむり¥たまふ¥こと、¥さんじやう¥らくちう/の¥いきどほり、¥こうぶく¥をんじやう/の¥あざけり/に¥あら/ず/や。¥この−とき¥われ=ら¥けんみつ/の¥あるじ/を¥うしなつ/て、¥すはい/の¥がくりよ、¥ながく¥けいせつ/の¥つとめ¥おこたら/ん¥こと、¥こころ−うかる/べし。¥せんずる−ところ、¥いうけい¥ちやうぼん/に¥しよう−ぜ/られ、¥きんごく¥るざい/に/も¥および、¥かうべ/の¥はね/られ/ん¥こと、¥こんじやう/の¥めんぼく、¥めいど/の¥おもひで¥なる/べし」/とて、¥さうがん/より¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながし/けれ/ば、¥すせん−にん/の¥だいしゆ/も、¥みな¥もつとも−もつとも/と/ぞ¥どうじ/ける。¥それ/より/して/こそ、¥いうけい/を/ば¥いかめ−ばう/と/は¥いは/れ/けれ。¥その¥でし¥ゑけい−りつし/を/ば、¥とき/の−ひと¥こいかめ−ばう/と/ぞ¥まうし/ける。P117¥
「いちぎやうあじやり」¥だいしゆ¥せん−ざす/を/ば、¥とうだふ/の¥みなみだに、¥めうくわうばう/に¥いれ¥たてまつる。¥とき/の¥わうざい/を/ば、¥ごんげ/の¥ひと/も¥まぬかれ¥たまは/ざり/ける/に/や。¥むかし¥たう/の¥いちぎやう−あじやり/は、¥げんそう−くわうてい/の¥ごぢそう/にて¥おはし/ける/が、¥げんそう/の¥きさき¥やうきひ/に¥な/を¥たち¥たまへ/り。¥むかし/も¥いま/も、¥だいこく/も¥せうこく/も、¥ひと/の¥くち/の¥さがな−さ/は、¥あとかた/も¥なき¥こと/なり/しか/ども、¥その¥うたがひ/に¥よつ/て、¥くわらこく/へ¥ながさ/れ/させ¥たまふ。¥くだん/の¥くに/へ/は¥みつ/の¥みち¥あり。¥りんちだう/とて¥ごかうみち、¥いうちだう/とて¥ざふにん/の¥かよふ¥みち、¥あんけつだう/とて¥ぢうくわ/の¥もの/を¥つかはす¥みち/なり。¥され/ば、¥かの¥いちぎやう−あじやり/は¥だいぼん/の¥ひと/なれ/ば/とて、¥あんけつだう/へ/ぞ¥つかはさ/れ/ける。¥しち−にち−しち−や/が¥あひだ、¥つきひ/の¥ひかり/も¥み/ず/して¥ゆく¥ところ/なり。¥みやうみやう/と/して¥ひと/も¥なく、¥かうほ/に¥せんど¥まよひ、¥しんしん/と/して¥やま¥ふかし。¥ただ¥かんこく/に¥とり/の¥ひとこゑ/ばかり/にて、¥こけ/の¥ぬれぎぬ¥ほし−あへ/ず、¥むじつ/の¥つみ/に¥よつ/て、¥をんる/の¥ぢうくわ/を¥かうむり¥たまふ¥こと/を、¥てんだう¥あはれみ¥たまひ/て、¥くえう/の¥かたち/を¥げんじ/つつ、¥いちぎやう−あじやり/を¥まもり¥たまふ。¥とき/に¥いちぎやう¥みぎ/の¥ゆび/を¥くひ−きり、¥ひだん/の¥たもと/に¥くえう/の¥かたち/を¥うつさ/れ/けり。¥わかん¥りやうてう/に、¥しんごん/の¥ほんぞん/たる¥くえう/の¥まんだら¥これ/なり。P118¥
「さいくわうがきられ」(『さいくわうがきられ』)S0203¥さる−ほど/に¥さんもん/の¥だいしゆ、¥せん−ざす¥とり−とどめ¥たてまつ/たる¥こと、¥ほふわう¥きこしめし/て、¥いとど¥やすから/ず¥おぼしめし/ける¥ところ/に、¥さいくわう−ほふし¥まうし/ける/は、「¥むかし/より¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥はつかう/の¥みだりがはしき¥うつたへ¥つかまつる¥こと、¥いま/に¥はじめ/ず/と/は¥まうし/ながら、¥こんど/は¥もつて/の−ほか/に¥くわぶん/に¥さふらふ。¥よくよく¥おん=ぱからひ¥さふらふ/べし。¥これ=ら/を¥おん=いましめ¥さふらは/ず/は、¥この−のち/は¥よ/が¥よ/で/も¥さふらふ/まじ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ただいま¥わが−み/の¥ほろび−うせ/んずる¥こと/を/も¥かへりみ/ず、¥さんわう−だいし/の¥しんりよに/も¥はばから/ず、¥かやう/に¥まうし/て¥しんきん/を¥なやまし¥たてまつる。¥ざんしん/は¥くに/を¥みだる/と¥いへ/り。¥まこと/なる/かな。¥さうらん¥しげから/ん/と¥すれ/ども、¥あき/の¥かぜ¥これ/を¥やぶり、¥わうじや¥あきらか/なら/ん/と¥すれ/ども、¥ざんしん¥これ/を¥くらう−す/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ¥きんじゆ/の¥ひとびと/に¥おほせ/て、¥ほふわう¥やま¥せめ/らる/べし/と¥きこえ/しか/ば、¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥さ/のみ¥わうぢ/に¥はらま/れ/て、¥ぜうめい/を¥たいかん−せ/ん/も¥おそれ/なり/とて、¥ないない¥ゐんぜん/に¥したがひ¥たてまつる¥しゆと/も¥あり/など¥きこえ/しか/ば、¥せん−ざす/は¥とうだふ/の¥みなみだに、¥めうくわうばう/に¥おはし/ける/が、¥だいしゆ¥ふたごころ¥あり/と¥きき¥たまひ/て、「¥また¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あふ/べき/やらん」/と、¥こころ−ぼそ=げ/に/ぞ¥のたまひ/ける。¥され/どもP119¥るざい/の¥さた/は¥なかり/けり。¥さる−ほど/に¥しん−だいなごん/は、¥さんもん/の¥さうどう/に¥よつ/て、¥わたくし/の¥しゆくい/を/ば¥しばらく¥おさへ/られ/けり。¥そも¥ないぎ¥したく/は¥さまざま/なり/しか/ども、¥ぎせい/ばかり/で、¥この¥むほん¥かなふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けれ/ば、¥さ/しも¥たのま/れ/たり/つる¥ただの−くらんど−ゆきつな、¥この¥こと¥むやく/なり/と¥おもふ¥こころ/や¥つき/に/けん、¥ゆぶくろ/の¥れう/に/とて¥おくら/れ/たり/ける¥ぬの=ども/を/ば、¥ひたたれ、¥かたびら/に¥たち−ぬは/せ、¥いへのこ、¥らうどう=ども/に¥きせ/つつ、¥め¥うち−しばだたい/て¥ゐ/たり/ける/が、¥つらつら¥へいけ/の¥はんじやう−する¥ありさま/を¥みる/に、¥たうじ¥たやすう¥かたぶけ−がたし。¥もし¥この¥こと¥もれ/ぬる/ほど/なら/ば、¥ゆきつな¥まづ¥うしなは/れ/な/んず。¥たにん/の¥くち/より¥もれ/ぬ¥さき/に¥かへりちう−し/て、¥いのち¥いか/う/ど¥おもふ¥こころ/ぞ¥つき/に/ける。¥
おなじき−にじふくにち/の¥さ−よ−ふけがた/に、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/に¥まゐつ/て、「¥ゆきつな/こそ¥まうす/べき¥こと¥あつ/て、¥これ/まで¥まゐつ/て¥さふらへ」/と、¥あんない/を¥いひ−いれ/たり/けれ/ば、¥にふだう、「¥つね/に/も¥まゐら/ぬ¥もの/の¥さんじ/たる/は¥なにごと/ぞ、¥あれ¥きけ」/とて、¥しゆめ/の−はんぐわん−もりくに/を¥いださ/れ/たり。「¥まつたく¥ひとづて/に/は¥まうす/まじき¥こと/なり」/と¥いふ¥あひだ、¥にふだう、¥さら/ば/とて、¥みづから¥ちうもん/の¥らう/に/ぞ¥いで/られ/たる。「¥よ/は¥はるか/に¥ふけ/ぬ/らん/に、¥いか/に¥ただいま¥なにごと/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥ひる/は¥ひとめ/の¥しげう¥さふらふ¥あひだ、¥よ/に¥まぎれ/て¥まゐつ/て¥さふらふ。¥この−ほど¥ゐん−ぢう/の¥ひとびと/の¥ひやうぐ/を¥ととのへ、¥ぐんびやう¥もよほさ/れ/し¥こと/を/ば、¥なに/と/か¥きこしめさ/れ/て¥さふらふ/やらん」。¥にふだう、「¥いさ/とよ、¥それ/は¥ほふわう/の¥やま¥せめ/らる/べきP120¥ご=けつこう/と/こそ¥きけ」/と、¥いと¥こと/も−な=げ/に/ぞ¥のたまひ/ける。¥ゆきつな¥ちかう¥より¥こごゑ/に¥なつ/て、「¥その¥ぎ/で/は¥さふらは/ず。¥いつかう¥たうけ/の¥おん=うへ/と/こそ¥うけたまはり¥さふらへ」。¥にふだう、「¥さて¥それ/を/ば¥ほふわう/も¥しろしめさ/れ/たる/か」。「¥しさい/に/や¥および¥さふらふ。¥しつじ/の−べつたう−なりちかの−きやう/の¥ぐんびやう¥もよほさ/れ¥さふらひ/し/に/も、¥ゐんぜん/とて/こそ¥めさ/れ/しか。¥やすより/が/と¥まうし/て、¥しゆんくわん/が¥かく¥まうし/て、¥さいくわう/が/と¥ふるまう/て」/など、¥あり/の−まま/に/は¥さし−すぎ/て¥いひ−ちらし、¥わが−み/は¥いとま¥まうす/とて¥いで/けれ/ば、¥その−とき¥にふだう¥おほ−ごゑ/を¥もつて¥さぶらひ=ども¥よび−ののしり¥たまふ¥こと¥おびたたし。¥ゆきつな¥なまじひ/なる¥こと¥まうし−いで/て、¥しようにん/に/や¥ひかれ/んず/らん/と¥おそろし−さ/に、¥ひと/も¥おは/ぬ/に¥とりばかま−し、¥おほの/に¥ひ/を¥はなち/たる¥ここち−し/て、¥いそぎ¥もんぐわい/へ/ぞ¥にげ−いで/ける。¥その−のち¥にふだう、¥ちくごの−かみ−さだよし/を¥めし/て、「¥たうけ¥かたぶけ/う/ど¥する¥むほん/の¥ともがら/こそ、¥きやう−ぢう/に¥みちみち/たん/なれ。¥いそぎ¥いちもん/の¥ひとびと/に/も¥ふれ¥まうせ。¥さぶらひ=ども¥もよほせ」/と¥のたまへ/ば、¥はせ−まはつ/て¥ひろう−す。¥うだいしやう−むねもり、¥さんみ/の−ちうじやう−とももり、¥とう/の−ちうじやう−しげひら、¥さま/の−かみ−ゆきもり¥いげ/の¥いちもん/の¥ひとびと、¥かつちう¥きうせん/を¥たいし/て¥さし−つどふ。¥その−ほか¥さぶらひ=ども/も¥うんか/の/ごとく/に¥はせ−あつまつ/て、¥その¥よ/の¥うち/に¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/に/は、¥つはもの¥ろくしちせんき/も¥ある/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥
あくれ/ば¥ろくぐわつ−ひとひのひ/なり。¥いまだ¥くらかり/ける/に、¥にふだう−しやうこく¥あべの−すけなり/を¥めし/て、「¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐり、¥だいぜん/の−だいぶ−のぶなり/を¥よび−いだい/て、¥きつと¥まうさ/んずる¥こと/は/よな、P121¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ、¥きんじゆ/の¥ひとびと、¥この¥いちもん¥ほろぼし/て¥てんが¥みだら/ん/と¥する¥むほん/の¥くはだて¥あり。¥いちいち/に¥からめ−とつ/て、¥たづね¥さた¥つかまつり¥さふらふ/べし。¥それ/を/ば¥きみ/も¥しろしめさ/る/まじう¥さふらふ/と¥まうす/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥すけなり¥いそぎ¥ゐん/の−ごしよ/に¥はせ−まゐり、¥のぶなり/を¥まねい/て¥この¥こと¥まうす/に、¥いろ/を¥うしなふ。¥やがて¥おん=まへ/へ¥まゐり/て¥この¥よし¥かく/と¥そうもん¥まうし/けれ/ば、¥ほふわう「¥ああ¥はや、¥これ=ら/が¥ないない¥はかり/し¥こと/の¥もれ−きこえ/ける/に/こそ。¥さる/にて/も、¥こ/は¥なにごと/ぞ」/と/ばかり¥おほせ/られ/て、¥ふんみやう/の¥おん=ぺんじ/も¥なかり/けり。¥すけなり¥いそぎ¥はしり−かへつ/て、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、「¥され/ば/こそ¥ゆきつな/は¥まこと/を¥まうし/たれ。¥ゆきつな¥この¥こと¥つげ−しらせ/ず/は、¥じやうかい¥あんをん/にて/やは¥ある/べき」/とて、¥ちくごの−かみ−さだよし、¥ひだの−かみ−かげいへ/を¥めし/て、¥たうけ¥かたむけ/う/ど¥する¥むほん/の¥ともがら、¥いちいち/に¥からめ−とる/べき¥よし¥げぢ−せ/らる。¥よつて¥にひやく−よ−き、¥さんびやく−よ−き、¥あそこ−ここ/に¥おし−よせ−おし−よせ¥からめ−とる。¥にふだう−しやうこく¥まづ¥ざつしき/を¥もつて、¥なかのみかど−からすまる/の¥しん−だいなごん/の¥しゆくしよ/へ、「¥きつと¥たち−より¥たまへ。¥まうし−あはす/べき¥こと/の¥さふらふ¥」/と、¥のたまひ−つかはさ/れ/けれ/ば、¥だいなごん¥わが¥み/の−うへ/と/は¥つゆ−しら/ず、¥あはれ、¥これ/は¥ほふわう/の¥やま¥せめ/らる/べき¥ご=けつこう/の¥ある/を、¥まうし−なだめ/られ/んずる/に/こそ。¥おん=いきどほり¥ふか=げ/なり。¥いか/に/も¥かなふ/まじき/ものを」/とて、¥ないきよ=げ/なる¥ほうい¥たをやか/に¥きなし、¥あざやか/なる¥くるま/に¥のり、¥さぶらひ¥さんしにん¥めし−ぐし/て、¥ざつしき¥うしかひ/に¥いたる/まで、¥つね/より/も¥なほ¥ひき−つくろは/れ/たり。¥そも¥さいご/と/はP122¥のち/に/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。¥
にしはちでう¥ちかう¥なつ/て¥み¥たまへ/ば、¥しごちやう/に¥ぐんびやう=ども¥みちみち/たり。「¥あな¥おびたたし、¥こ/は¥なにごと/なる/らん/と、¥むね¥うち−さわが/れ/けれ/ども、¥もんぜん/にて¥くるま/より¥おり、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いつ/て¥み¥たまへ/ば、¥うち/に/も¥つはもの=ども¥ひま−はざま/も¥なう/ぞ¥なみ−ゐ/たる。¥ちうもん/の¥くち/に/は¥おそろし=げ/なる¥もの=ども、¥あまた¥まち−うけ¥たてまつり、¥だいなごん/を¥とつ/て¥ひつぱり、「¥いましむ/べう¥さふらふ/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう¥れんちう/より¥み−いだし¥たまひ/て、「¥ある/べう/も−なし」/と¥のたまへ/ば、¥さぶらひ=ども¥じふしごにん、¥ぜんご¥さう/に¥たち−かこみ、¥だいなごん/の¥て/を¥とつ/て、¥えん/の¥うへ/へ¥ひき−あげ¥たてまつり、¥ひとま/なる¥ところ/に¥おし−こめ¥たてまつ/てげり。¥だいなごん/は¥ゆめ/の¥ここち−し/て、¥つやつや¥もの/も¥おぼえ¥たまは/ず。¥とも/に¥あり/つる¥さぶらひ=ども、¥おほぜい/に¥おし−へだて/られ/て、¥ちりぢり/に¥なり/ぬ。¥ざふしき¥うしかひ¥いろ/を¥うしなひ、¥うし¥くるま/を¥すて/て、¥みな¥にげ−さり/ぬ。¥さる−ほど/に、¥あふみ−ちうじやう−にふだう−れんじやう、¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ、¥やましろの−かみ−もとかぬ、¥しきぶ/の−たいふ−まさつな、¥へい−はうぐわん−やすより、¥そう−はうぐわん−のぶふさ、¥しん−へい−はうぐわん−すけゆき/も、¥とらはれ/て/こそ¥いで−き/たれ。¥さいくわう−ほふし¥この¥よし/を¥きい/て、¥わが¥み/の−うへ/と/や¥おもひ/けん、¥むち/を¥うつ/て¥いそぎ¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐる。¥ろくはら/の¥つはもの=ども、¥みち/にて¥ゆき−あひ、「¥にしはちでう=どの/より¥めさ/るる/ぞ。¥きつと¥まゐれ」/と¥いひ/けれ/ば、「¥これ/は¥そうす/べき¥こと¥あつ/て、¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐる。¥やがて/こそ¥かへり−まゐら/め」/と¥いひ/けれ/ば、「¥につくい¥にふだう=め/が、¥なにごと/を/かP123¥そうす/べかん/なる/ぞ」/とて、¥しや¥むま/より¥とつ/て¥ひき−おとし、¥ちう/に¥くくつ/て¥にしはちでう=どの/へ¥さげ/て¥まゐる。¥ひ/の¥はじめ/より¥ごんげん¥よりき/の¥もの/なり/けれ/ば、¥こと/に¥つよう¥いましめ/て、¥おん=つぼ/の−うち/に/ぞ¥ひつ−すゑ/たる。¥にふだう−しやうこく¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、¥しばし¥にらまへ、「¥あな¥にく/や、¥たうけ¥かたぶけ/う/ど¥する¥むほん/の¥やつ/が¥なれ/る¥すがた/よ。¥しやつ¥ここ/へ¥ひき−よせよ」/とて、¥えん/の¥きは/へ¥ひき−よせ/させ、¥もの¥はき/ながら、¥しや¥つら/を¥むずむず/と/ぞ¥ふま/れ/ける。「¥もと/より¥おのれ=ら/が¥やう/なる¥げらふ/の¥はて/を、¥きみ/の¥めし−つかはせ¥たまひ/て、¥なさ/る/まじき¥くわんしよく/を¥なし¥たび、¥ふし¥とも/に¥くわぶん/の¥ふるまひ/を¥する/と¥み/し/に¥あはせ/て、¥あやまた/ぬ¥てんだい−ざす¥るざい/に¥まうし−おこなひ、¥あまつさへ¥たうけ¥かたぶけ/う/ど¥する¥むほん/の¥ともがら/に¥くみ−し/てげる/なり。¥あり/の−まま/に¥まうせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥
さいくわう¥もと/より¥すぐれ/たる¥だい−かう/の−もの/なり/けれ/ば、¥ちと/も¥いろ/も¥へん−ぜ/ず、¥わろびれ/たる¥けしき/も¥なく、¥ゐ−なほり、¥あざ−わらつ/て¥まうし/ける/は、「¥ゐん−ぢう/に¥ちかう¥めし−つかは/るる¥み/なれ/ば、¥しつじ/の−べつたう−なりちかの−きやう/の¥ぐんびやう¥もよほさ/れ¥さふらふ¥こと/に/も、¥くみ−せ/ず/と/は¥まうす/べき¥やう¥なし。¥それ/は¥くみ−し/たり。¥ただし、¥みみ/に¥あたる¥こと/を/も¥のたまふ/ものかな。¥たにん/の¥まへ/は¥しら/ず、¥さいくわう/が¥きか/んずる¥ところ/にて/は、¥さやう/の¥こと/を/ば、¥え/こそ¥のたまふ/まじけれ。¥そもそも¥ご=へん/は、¥こ=ぎやうぶきやう−ただもり/の¥ちやくし/にて¥おはせ/し/が、¥じふしご/まで/は¥しゆつし/も¥し¥たまは/ず。¥こ=なかのみかど/の−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう/の¥へん/に¥たち−いり¥たまひ/し/を/ば、¥きやう−わらんべ/は¥れい/の¥たかへいだ/と/こそ¥いひ/しか。¥しかる/を¥ほうえん/の¥ころ、¥かいぞく/の¥ちやうぼん¥さんじふ−よ−にん¥からめ−しん−ぜ/られ/たり/しP124¥けんじやう/に¥し−ほん−し/て¥しゐ/の−ひやうゑ/の−すけ/と¥まうし/し/を/だに、¥ひと¥みな¥くわぶん/と/こそ¥まうし−あは/れ/しか。¥てんじやう/の¥まじはり/を/だに¥きらは/れ/し¥ひと/の¥しそん/にて、¥いま¥だいじやうだいじん/まで¥なり−あがつ/たる/や¥くわぶん/なる/らん。¥もと/より¥さぶらひ/ほど/の¥もの/の、¥じゆりやう¥けんびゐし/に¥いたる¥こと、¥せんれい、¥ほうれい¥なき/に/しも¥あら/ず。¥なじか/は¥くわぶん/なる/べき」/と、¥はばかる¥ところ/も¥なう¥いひ−ちらし/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥あまり/に¥はら/を¥すゑ−かね/て、¥しばし/は¥もの/を/も¥のたまは/ず。¥やや¥あつ/て¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥しやつ/が¥くび¥さう−なう¥きる/な。¥よくよく¥きうもん−し/て¥こと/の¥しさい/を¥たづね−とひ、¥その−のち¥かはら/へ¥ひき−いだい/て、¥かうべ/を¥はねよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥まつうらの−たらう−しげとし¥うけたまはつ/て、¥てあし/を¥はさみ、¥さまざま/に/して¥いため−とふ。¥さいくわう¥もと/より¥あらそは/ざり/ける¥うへ、¥がうもん/は¥きびしかり/けり。¥はくじやう¥しごまい/に¥きせ/られ/て、¥その−のち¥くち/を¥さけ/とて、¥くち/を¥さか/れ、¥ごでう−にしのしゆしやか/に/して、¥つひに¥きら/れ/に/けり。¥ちやくし¥かがの−かみ−もろたか/は¥けつくわん−ぜ/られ/て、¥をはり/の¥ゐどた/へ¥ながさ/れ/たり/し/を、¥おなじき−くに/の¥ぢうにん¥をぐまの−ぐんじ−これすゑ/に¥おほせ/て¥うた/せ/らる。¥じなん¥こんどう−はんぐわん−もろつね/を/ば、¥ごく/より¥ひき−いだい/て、¥ちうせ/らる。¥その¥おとと¥さゑもん/の−じよう−もろひら、¥らうどう¥さん−にん/を/も¥おなじう¥かうべ/を¥はね/られ/けり。¥これ=ら/は¥みな¥いふ−かひ−なき¥もの/の¥ひいで/て、¥いろふ/まじき¥こと/を/のみ¥いろひ、¥あやまた/ぬ¥てんだい−ざす¥るざい/に¥まうし−おこなひ、¥くわはう/や¥つき/に/けん、¥さんわう−だいし/の¥しんばつ¥みやうばつ/を¥たちどころ/に¥かうむつ/て、¥かかる¥うき−め/に¥あへ/り/けり。P125
「こげうくん」(『こげうくん』)S0204¥しん−だいなごん/は¥ひとま/なる¥ところ/に¥おし−こめ/られ/て、¥あせみづ/に¥なり/つつ、「¥あはれ¥これ/は¥ひごろ/の¥あらましごと/の、¥もれ−きこえ/ける/に/こそ。¥たれ¥もらし/ぬ/らん。¥さだめて¥ほくめん/の¥ともがら/の¥なか/に/ぞ¥ある/らん」/なんど、¥おもは/じ¥こと¥なう¥あんじ−つづけ/て¥おはし/ける¥ところ/に、¥うしろ/より¥あしおと/の¥たからか/に¥し/けれ/ば、¥すは¥ただいま¥わが¥いのち¥うしなは/ん/とて、¥もののふ=ども/の¥まゐる/に/こそ/と¥おもは/れ/けれ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥にふだう¥いたじき¥たからか/に¥ふみ−ならし、¥だいなごん/の¥おはし/ける¥うしろ/の¥しやうじ/を、¥さつと¥ひき−あけ/て¥いで/られ/たり。¥そけん/の¥ころも/の¥みじからか/なる/に、¥しろき¥おほくち¥ふみ−くくみ、¥ひじりづか/の¥かたな¥おし−くつろげ/て¥さす¥まま/に、¥もつて/の−ほか/に¥いかれ/る¥けしき/にて、¥だいなごん/を¥しばし¥にらまへ/て、「¥そもそも¥ご=へん/は、¥へいぢ/に/も¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥だいふ/が¥み/に¥かへ/て¥まうし−うけ、¥くび/を¥つぎ¥たてまつ/し/は¥いか/に。¥しかる/に¥その¥おん/を¥わすれ/て、¥なん/の¥ゐこん¥あつ/て/か、¥たうけ¥かたぶけ/う/ど/は¥し¥たまふ/なる/ぞ。¥おん/を¥しる/を¥もつて¥ひと/と/は¥いふ/ぞ。¥おん/を¥しら/ざる/を/ば¥ちくしやう/と/こそ¥いへ。¥され/ども¥たうけ/の¥うんめい¥いまだ¥つき/ざる/に¥よつ/て、¥これ/まで/は¥むかへ/たん/なり。¥ひごろ/の¥あらまし/の¥しだい、¥ぢき/に¥うけたまはら/ん」/と¥のたまへ/ば、¥だいなごん、「¥まつたく¥さる−こと¥さふらは/ず。¥いかさま/に/もP126¥ひと/の¥ざんげん/にて/ぞ¥さふらふ/らん。¥よくよく¥おん=たづね¥さふらふ/べし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう¥いは/せ/も¥はて/ず、「¥ひと/や¥ある、¥ひと/や¥ある」/と¥めさ/れ/けれ/ば、¥さだよし¥つと¥まゐり/たり。「¥
さいくわう=め/が¥はくじやう¥とつ/て¥まゐれ」/と¥のたまへ/ば、¥もつて¥まゐり/たり。¥にふだう¥これ/を¥とつ/て、¥おし−かへし−おし−かへし¥にさんべん¥たからか/に¥よみ−きか/せ、「¥あな¥にくや、¥この¥うへ/を/ば¥なに/と/か¥ちん−ず/べかん/なる/ぞ」/とて、¥だいなごん/の¥かほ/に¥さつと¥なげ−かけ、¥しやうじ/を¥ちやうど¥ひき−たて/て¥いで/られ/ける/が、¥なほ¥はら/を¥すゑ−かね/て、¥つねとほ¥かねやす/と¥めす。¥なんばの−じらう、¥せのをの−たらう¥まゐり/たり。「¥あの¥をのこ¥とつ/て、¥には/へ¥ひき−おとせ」/と¥のたまへ/ども、¥これ=ら¥さう−なう/も¥し¥たてまつら/ず、「¥こまつ=どの/の¥ご=きしよく、¥いかが¥さふらは/んずる/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、「¥よしよし、¥おのれ=ら/は、¥だいふ/が¥めい/を¥おもんじ/て、¥にふだう/が¥おほせ/を/ば¥かるう¥し/ける¥ござんなれ。¥このうへ/は¥ちから¥およば/ず」/と¥のたまへ/ば、¥これ=ら¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、¥たち−あがり、¥だいなごん/の¥さう/の¥て/を¥とつ/て、¥には/へ¥ひき−おとし¥たてまつる。¥その−とき¥にふだう¥ここち−よ=げ/にて、「¥とつ/て¥ふせ/て¥をめか/せよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ににん/の¥もの=ども、¥だいなごん/の¥さう/の¥みみ/に¥くち/を¥あて/て、「¥いかさま/に/も¥おん=こゑ/の¥いづ/べう¥さふらふ」/と、¥ささやい/て¥ひき−ふせ¥たてまつれ/ば、¥ふたこゑ¥みこゑ/ぞ¥をめか/れ/ける。¥その¥てい、¥めいど/にて、¥しやば−せかい/の¥ざいにん/を、¥あるひは¥ごふ/の¥はかり/に¥かけ、¥あるひは¥じやうはり/の¥かがみ/に¥ひき−むけ/て、¥つみ/の¥きやう−ぢう/に¥まかせ/つつ、¥あはう−らせつ/が¥かしやく−す/らん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。P127¥せうはん¥とらはれ−とらはれ/て、¥かんはう¥にらぎす−さ/れ/たり。¥てうそ¥りく/を¥うけ、¥しうぎ¥つみ−せ/らる。¥たとへば、¥せうが、¥はんくわい、¥かんしん、¥はうゑつ、¥これ=ら/は¥みな¥かうそ/の¥ちうしん/たり/しか/ども、¥せうじん/の¥ざん/に¥よつ/て、¥くわはい/の¥はぢ/を¥うく/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。¥しん−だいなごん/は、¥わが−み/の¥かく¥なる/に¥つけ/て/も、¥しそく¥たんばの−せうしやう−なりつね¥いげ、¥をさなき¥もの=ども/の¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あふ/らん/と、¥おもひ−やる/に/も¥おぼつかなし。¥さ/ばかり¥あつき¥ろくぐわつ/に、¥しやうぞく/を/だに/も¥くつろげ/られ/ず、¥あつ−さ/も¥たへ−がたけれ/ば、¥むね/も¥せき−あぐる¥ここち−し/て、¥あせ/も¥なみだ/も¥あらそひ/て/ぞ¥ながれ/ける。¥さり/とも¥こまつ=どの/は¥おぼしめし¥はなた/じ/ものを/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥たれ/して¥まうす/べし/と/も¥おぼえ¥たまは/ず。¥
こまつの−おとど/は、¥れい/の¥ぜんあく/に¥さわぎ¥たまは/ぬ¥ひと/にて¥おはし/けれ/ば、¥はるか/に¥ひ¥たけ/て¥のち、¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり/を、¥くるま/の¥しり/に¥のせ/つつ、¥ゑふ¥しごにん、¥ずゐじん¥にさん−にん¥めし−ぐし/て、¥ぐんびやう=ども/を/ば¥いち−にん/も¥ぐせ/られ/ず、¥まこと/に¥おほやう=げ/にて¥おはし/たれ/ば、¥にふだう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥いちもん/の¥ひとびと、¥みな¥おもは/ず=げ/に/ぞ¥み¥たまひ/ける。¥おとど¥ちうもん/の¥くち/にて、¥おん=くるま/より¥おり¥たまふ¥ところ/へ、¥さだよし¥つと¥まゐつ/て、「¥など¥これ−ほど/の¥おん=だいじ/に、¥ぐんびやう/を/ば¥いち−にん/も¥めし−ぐせ/られ¥さふらは/ぬ/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど、「¥だいじ/と/は¥てんが/の¥こと/を/こそ¥いへ。¥かやう/の¥わたくしごと/を、¥だいじ/と¥いふ¥やう/や¥ある」/と¥のたまへ/ば、¥ひやうぢやう/を¥たい−し/たり/ける¥つはもの=ども、¥みな¥そぞろい/て/ぞ¥みえ/たり/ける。¥その−のち¥おとど、¥だいなごん/を/ば¥いづく/に¥おき¥たてまつ/たる/やらん/と、¥ここ−かしこ/を¥ひき−あけ−ひき−あけP128¥み¥たまふ/に、¥ある¥しやうじ/の¥うへ/に、¥くもで¥ゆう/たる¥ところ¥あり。¥ここ/やらん/とて¥あけ/られ/たれ/ば、¥だいなごん¥おはし/けり。¥なみだ/に¥むせび¥うつぶし/て、¥め/も¥み−あげ¥たまは/ず。「¥いか/に/や」/と¥のたまへ/ば、¥その−とき¥み−つけ¥たてまつ/て、¥うれし=げ/に¥おもは/れ/たる¥けしき、¥ぢごく/にて¥ざいにん=ども/が、¥ぢざう−ぼさつ/を¥み¥たてまつる/らん/も、¥かく/や/と¥おぼえ/て¥あはれ/なり。「¥なにごと/にて¥さふらふ/やらん。¥けさ/より¥かかる¥うき−め/に¥あひ¥さふらふ。¥さて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥さり/とも/と/こそ¥ふかう¥たのみ¥たてまつ/て¥さふらへ。¥へいぢ/に/も¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥ご=おん/を¥もつて¥くび/を¥つが/れ¥まゐらせ、¥あまつさへ¥じやう−にゐ/の−だいなごん/まで¥へ−あがつ/て、¥とし¥すでに¥しじふ/に¥あまり¥さふらふ¥ご=おん/こそ、¥しやうじやう−せせ/に/も¥はうじ¥つくし−がたう¥さふらへ/ども、¥こんど/も¥また¥かひ−なき¥いのち/を¥たすけ/させ¥おはしませ。¥さ/だに/も¥さふらは/ば、¥しゆつけ−にふだう¥つかまつり、¥いか/なら/ん¥かた−やまざと/に/も¥こもり−ゐ/て、¥ひとすぢ/に¥ごせ−ぼだい/の¥つとめ/を¥いとなみ¥さふらは/ん」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥
おとど、「¥さ¥さふらへ/ば/とて、¥おん=いのち¥うしなひ¥たてまつる/まで/の¥こと/は¥よも¥さふらは/じ。¥たとひ¥さ¥さふらふ/とも、¥しげもり¥かう/て¥さふらへ/ば、¥おん=いのち/に/は¥かはり¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/とて、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、「¥あの¥だいなごん¥うしなは/れ/ん¥こと/は、¥よくよく¥ご=しゆゐ¥さふらふ/べし。¥その¥ゆゑ/は¥せんぞ¥しゆり/の−だいぶ−あきすゑ、¥しらかはのゐん/に¥めし−つかは/れ¥まゐらせ/し/より¥この−かた、¥いへ/に¥その¥れい¥なき¥じやう−にゐ/の−だいなごん/に¥へ−あがつ/て、¥あまつさへ¥たうじ、¥きみ¥ぶさう/の¥おん=いとほしみ、¥かうべ/を¥はね/られ/ん¥こと¥しかる/べう/も¥さふらは/ず(す)。¥ただ¥みやこ/の¥ほか/へ¥いださ/れ/たら/ん/に、P129¥こと¥たり¥さふらひ/な/んず。¥
きたのの−てんじん/は、¥しへいの−おとど/の¥ざんそう/にて、¥うき−な/を¥さいかい/の¥なみ/に¥ながし、¥にしのみやの−だいじん/は、¥ただの−まんぢう/の¥ざんげん/に¥よつ/て、¥うらみ/を¥せんやう/の¥くも/に¥よす。¥おのおの¥むじつ/なり/しか/ども、¥るざい−せ/られ¥たまひ/に/き。¥これ¥みな¥えんぎの−せいだい、¥あんわの−みかど/の¥おん=ひがこと/と/ぞ¥まうし−つたへ/たる。¥しやうこ¥なほ¥かく/の/ごとし。¥いはんや¥まつだい/に¥おい/て/を/や。¥けんわう¥なほ¥おん=あやまり¥あり、¥いはんや¥ぼんにん/に¥おい/て/を/や。¥すでに¥めし−おか/れ/ぬる¥うへ/は、¥いそぎ¥うしなは/れ/ず/とも、¥なに/の¥おそれ/か¥さふらふ/べき。¥けい/の¥うたがはしき/を/ば¥かろんぜよ、¥こう/の¥うたがはしき/を/ば¥おもんぜよ/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥こと−あたらしき¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥しげもり¥かの¥だいなごん/が¥いもうと/に¥あひ−ぐし/て¥さふらふ。¥これもり¥また¥むこ/なり。¥かやう/に¥したしう¥まかり−なつ/て¥さふらへ/ば、¥まうす/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らん。¥いつかう¥その¥ぎ/で/は¥さふらは/ず。¥ただ¥きみ/の¥ため、¥くに/の¥ため、¥よ/の¥ため、¥いへ/の¥ため/の¥こと/を¥おもつ/て¥まうし¥さふらふ。¥ひととせ¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/が¥しつけん/の¥とき/に¥あひ−あたつ/て、¥わが¥てう/に/は¥さがの−くわうてい/の¥おん=とき、¥うひやうゑ/の−かみ−ふぢはらの−なかなり/を¥ちうせ/られ/て/より¥この−かた、¥ほうげん/まで/は、¥きみ¥にじふごだい/の¥あひだ、¥おこなは/れ/ざり/し¥しざい/を、¥はじめて¥とり−おこなひ、¥うぢの−あく−さふ/の¥しがい/を¥ほり−おこい/て、¥じつけん−せ/られ/たり/し¥こと/なんど/まで/は、¥あまり/なる¥おん=まつりごと/と/こそ¥ぞんじ¥さふらへ。¥され/ば¥いにしへ/の¥ひと/も、¥しざい/を¥おこなへ/ば、¥かいだい/に¥むほん/の¥ともがら¥たえ/ず/と/こそ¥まうし−つたへ/て¥さふらへ。¥この¥ことば/に¥つい/て、¥なか¥にねん¥あつ/て、¥へいぢ/に¥また¥よ¥みだれ/て、¥しんせい/が¥うづま/れ/たり/し/を¥ほり−おこし、¥かうべ/を¥はね/て¥おほぢ/を¥わたさ/れ¥さふらひ/き。¥ほうげん/に¥まうし−おこなひ/し¥こと/の、¥いく−ほど/も¥なく/て、¥はやP130¥み/の−うへ/に¥むくは/れ/に/き/と¥おもへ/ば、¥おそろしう/こそ¥さふらへ。¥これ/は¥させる¥てうてき/にて/も¥さふらは/ず、¥かたがた¥おそれ¥ある/べし。¥ご=えいぐわ¥のこる¥ところ¥なけれ/ば、¥おぼしめさ/るる¥こと/は¥ある/まじけれ/ども、¥しし−そんぞん/まで、¥はんじやう/こそ¥あら/まほしう/は¥さふらへ。¥され/ば¥ふそ/の¥ぜんあく/は、¥かならず¥しそん/に¥およぶ/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥しやくぜん/の¥いへ/に/は¥よけい¥あり、¥せきあく/の¥かど/に/は¥よあう¥とどまる/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥いかさま/に/も¥こんや¥かうべ/を¥はね/られ/ん¥こと/は、¥しかる/べう/も¥さふらは/ず」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にふだう¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥しざい/を/ば¥おもひ−とどまり¥たまひ/けり。¥その−のち¥おとど¥ちうもん/に¥いで/て、¥さぶらひ=ども/に¥のたまひ/ける/は、「¥おほせ/なれ/ば/とて、¥あの¥だいなごん¥うしなは/ん¥こと、¥さう−なう¥ある/べから/ず。¥にふだう¥はら/の¥たち/の¥まま/に、¥もの−さわがしき¥こと¥し¥たまひ/て、¥のち/に/は¥かならず¥くやみ¥たまふ/べし。¥ひがごと−し/て¥われ¥うらむ/な」/と¥のたまへ/ば、¥ひやうぢやう/を¥たい−し/たり/ける¥つはもの=ども、¥みな¥した/を¥ふるつ/て¥おそれ−をののく。「¥さて/も¥けさ¥つねとほ¥かねやす/が、¥あの¥だいなごん/に¥なさけ−なう¥あたり¥たてまつ/たる¥こと/こそ、¥かへすがへす/も¥きくわい/なれ。¥など¥しげもり/が¥かへり−きか/んずる¥ところ/を/ば、¥はばから/ざり/ける/ぞ。¥かたゐなか/の¥さぶらひ/は、¥みな¥かかる/ぞ/とよ」/と¥のたまへ/ば、¥なんば/も¥せのを/も、¥とも/に¥おそれ−いつ/たり/けり。¥おとど/は¥かやう/に¥のたまひ/て、¥こまつ=どの/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥
さる−ほど/に¥だいなごん/の¥さむらひ=ども、¥いそぎ¥なかのみかど−からすまる/の¥しゆくしよ/に¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた¥いげ/の¥にようばう=たち、¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。「¥せうしやう=どの/をP131¥はじめ¥まゐらせ/て、¥をさなき¥ひとびと/も、¥みな¥とら/れ/させ¥たまふ/べき¥よし¥うけたまはり/て¥さふらへ。¥いそぎ¥いづかた/へ/も¥しのば/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた、「¥いま/は¥これ−ほど/に¥なつ/て、¥のこり−とどまる¥み/とて/も、¥あんをん/にて¥なに/に/かは¥せ/ん/なれ/ば、¥ただ¥おなじ¥ひとよ/の¥つゆ/と/も¥きえ/ん¥こと/こそ¥ほい/なれ。¥さて/も¥けさ/を¥かぎり/と¥しら/ざり/つる¥こと/の¥かなし−さ/よ」/とて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥すでに¥ぶし=ども/の¥ちかづく¥よし¥きこえ/しか/ば、¥かくて¥はぢがましう、¥うたてき¥め/を¥み/ん/も、¥さすが/なれ/ば/とて、¥とを/に¥なり¥たまふ¥によし、¥はつさい/の¥なんし、¥ひとつ¥くるま/に¥とり−のつ/て、¥いづち/を¥さす/と/も¥なく¥やり−いだす。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥おほみや/を¥のぼり/に、¥きたやま/の¥へん¥うんりんゐん/へ/ぞ¥おはし/ける。¥その¥へん/なる¥そうばう/に¥おろし−おき¥たてまつり、¥おくり/の¥もの=ども/は、¥みみ/の¥すて−がた−さ/に、¥みな¥いとま¥まうし/て¥かへり/に/けり。¥いま/は¥いとけなき¥ひとびと/ばかり¥のこり−ゐ/て、¥また¥こと−とふ¥ひと/も¥なく/して¥おはし/ける¥きたのかた/の¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥くれ−ゆく¥かげ/を¥み¥たまふ/に¥つけ/て/も、¥だいなごん/の¥つゆ/の−いのち、¥この¥ゆふべ/を¥かぎり/なり/と、¥おもひ−やる/に/も¥きえぬ/べし。¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥おほかり/けれ/ども、¥もの/を/だに¥とり−したため/ず、¥かど/を/だに¥おし/も¥たて/ず。¥むまや/に/は¥むま=ども¥おほく¥なみ−たち/たれ/ども、¥くさ−かふ¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥よ¥あくれ/ば¥むま¥くるま¥かど/に¥たち−なみ、¥ひんかく¥ざ/に¥つらなつ/て、¥あそび−たはぶれ¥まひ−をどり、¥よ/を¥よ/と/も¥し¥たまは/ず。¥ちかき¥あたり/の¥もの=ども/は、¥もの/を/だに¥たかく¥いは/ず、¥おぢ−おそれ/て/こそ¥きのふ/まで/も¥あり/し/に、¥よ/の¥ま/に¥かはる¥ありさま、¥じやうしや−ひつすゐ/のP132¥ことわり/は¥め/の¥まへ/に/こそ¥あらはれ/たれ。「¥たのしみ¥つき/て¥かなしみ¥きたる」/と¥かか/れ/たる、¥かうしやうこう/の¥ふで/の¥あと、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。¥
「せうしやうこひうけ」(『せうしやうこひうけ』)S0205¥たんばの−せうしやう−なりつね/は、¥その¥よ/しも¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/に¥うへぶし−し/て、¥いまだ¥いで/られ/ざり/ける/に、¥だいなごん/の¥さぶらひ=ども、¥いそぎ¥ゐん/の−ごしよ/に¥はせ−まゐり、¥せうしやう=どの/を¥よび−いだし¥たてまつり、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥せうしやう、「¥これ−ほど/の¥こと、¥など/や¥さいしやう/の¥もと/より、¥いま/まで¥つげ−しらせ/ざる/らん」/と¥のたまひ/も¥はて/ぬ/に、¥さいしやう=どの/より/とて¥お=つかひ¥あり。¥この¥さいしやう/と¥まうす/は、¥にふだう−しやうこく/の¥おん=おとと、¥しゆくしよ/は¥ろくはら/の¥そうもん/の¥わき/に¥おはし/けれ/ば、¥かどわきの−さいしやう/と/ぞ¥まうし/ける。¥たんばの−せうしやう/に/は¥しうと/なり。「¥なにごと/にて¥さふらふ/やらん。けさ¥にしはちでう/の−てい/より、¥きつと¥ぐし¥たてまつれ/と¥さふらふ」/と、¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥せうしやう¥この¥こと¥こころ−え/て、¥きんじゆ/の¥にようばう=たち/を¥よび−いだし¥まゐらせ/て、「¥ゆふべ¥なに/と−なう¥ものさわがしう¥さふらひ/し/を、¥れい/の¥やまぼふし/の¥くだる/か/なんど、¥よそ/に¥おもひ/て¥さふらへ/ば、¥はや¥なりつね/が¥み/の−うへ/に¥まかり−なつ/て¥さふらひ/ける/ぞ/や。¥ゆふさり¥だいなごん¥きら/る/べう¥さふらふ/なれ/ば、¥なりつね/とて/も¥どうざい/にて/ぞ¥さふらは/んず/らん。¥いま−いちど¥ごぜん/へ¥さん−じ/て、P133¥きみ/を/も¥み¥まゐらせ/たく¥さふらへ/ども、¥かかる¥み/に¥まかり−なつ/て¥さふらへ/ば、¥はばかり−ぞんじ¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようばう=たち¥いそぎ¥ごぜん/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥けさ/の¥ぜんもん/の¥つかひ/に¥はや¥おん=こころえ¥あつ/て、「¥これ=ら/が¥ないない¥はかり/し¥こと/の¥もれ−きこえ/ける/に/こそ。¥さる/にて/も¥いま−いちど¥これ/へ」/と¥ご=きしよく¥あり/けれ/ば、¥せうしやう¥ごぜん/へ¥まゐら/れ/たり。¥ほふわう¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまひ/て、¥おほせ−くださ/るる¥むね/も¥なく、¥せうしやう/も¥また¥なみだ/に¥むせん/で、¥まうし−あげ/らるる¥こと/も¥なし。¥やや¥あつ/て¥せうしやう¥ごぜん/を¥まかり−いで/られ/ける/に、¥ほふわう¥うしろ/を¥はるか/に¥ごらんじ−おくつ/て、「¥ただ¥まつだい/こそ¥こころ−うけれ。¥これ/が¥かぎり/にて¥また/も¥ごらんぜ/ぬ¥こと/も/や¥あら/んず/らん」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥せうしやう¥ごぜん/を¥まかり−いで/られ/ける/に、¥ゐん−ぢう/の¥ひとびと、¥つぼね/の¥にようばう=たち/に¥いたる/まで、¥なごり/を¥をしみ、¥たもと/に¥すがり、¥なみだ/を¥ながし、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥
しうと/の¥さいしやう/の¥もと/へ¥いで/られ/たれ/ば、¥きたのかた/は¥ちかう¥さん−す/べき¥ひと/にて¥おはし/ける/が、¥けさ/より¥この¥なげき/を¥うち−そへ/て、¥すでに¥いのち/も¥きえ−いる¥ここち/ぞ¥せ/られ/ける。¥せうしやう¥ごしよ/を¥まかり−いで/られ/ける/より、¥ながるる¥なみだ¥つきせ/ぬ/に、¥いま¥きたのかた/の¥ありさま/を¥み¥たまひ/て、¥いとど¥せんかた−な=げ/に/ぞ¥みえ/られ/ける。¥せうしやう/の¥めのと/に¥ろくでう/と¥いふ¥をんな¥あり。「¥われ¥おん=ち/に¥まゐり−はじめ¥さぶらひ/て、¥きみ/を¥ち/の¥なか/より¥いだき−あげ¥たてまつり、¥おほし−たて¥まゐらせ/し/より¥この−かた、¥つきひ/の¥かさなる/に¥したがつ/て、¥わが−み/の¥とし/の¥ゆく/を/ば¥なげか/ず/して、P134¥ひとへに¥きみ/の¥おとなしう¥なら/せ¥たまふ¥こと/を/のみ¥よろこび、¥あからさま/と/は¥おもへ/ども、¥ことし/は¥にじふいちねん、¥かたとき/も¥はなれ¥まゐらせ¥さぶらは/ず。¥ゐん−うち/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥おそう¥いで/させ¥たまふ/だに、¥こころ−ぐるしう¥おもひ¥まゐらせ¥さぶらひ/つる/に、¥つひに¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あはせ¥たまふ/べき/やらん」/とて¥なく。¥せうしやう、「¥いたう¥な¥なげい/そ。¥さて¥さいしやう¥おはすれ/ば、¥さり/とも¥いのち/ばかり/を/ば、¥こひ−うけ¥たまは/んずる/ものを」/と、¥やうやう/に¥なぐさめ−のたまへ/ども、¥ろくでう¥ひとめ/も¥はぢ/ず、¥なき−もだえ/けり。¥さる−ほど/に¥にしはちでう=どの/より¥つかひ¥しきなみ/に¥あり/しか/ば、¥さいしやう、「¥いま/は¥ただ¥いで−むかつ/て/こそ、¥と/も−かう/も¥なら/め」/とて¥いで/られ/けれ/ば、¥せうしやう/も¥さいしやう/の¥くるま/の¥しり/に¥のつ/て/ぞ¥いで/られ/ける¥。¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥へいけ/の¥ひとびと/は、¥たのしみ−さかえ/のみ¥あつ/て、¥うれへ¥なげき/は¥なかり/し/に、¥この¥さいしやう/ばかり/こそ、¥よし−なき¥むこ¥ゆゑ/に、¥かかる¥なげき/を/ば¥せ/られ/けれ。¥にしはちでう¥ちかう¥なつ/て、¥まづ¥あんない/を¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥せうしやう/を/ば¥もん/の¥うち/へ/は¥いれ/らる/べから/ず/と¥のたまふ¥あひだ、¥その¥へん/なる¥さぶらひ/の¥もと/に¥おろし−おき、¥さいしやう/ばかり/ぞ、¥もん/の¥うち/へ/は¥まゐら/れ/ける。¥いつしか¥せうしやう/を/ば、¥ぶし=ども¥しはう/を¥うち−かこん/で、¥きびしう¥しゆご−し¥たてまつる。¥せうしやう/の¥さ/しも¥たのもしう¥おもは/れ/つる¥さいしやう=どの/に/は¥はなれ¥たまひ/ぬ。¥せうしやう/の¥こころ/の¥うち、¥さ/こそ/は¥たより−なかり/けめ。¥
さいしやう¥ちうもん/に¥ゐ¥たまひ/たれ/ども、¥にふだう¥いで/も¥あは/れ/ず。¥やや¥あつ/て¥さいしやう、¥げん−だいふ/の−はんぐわん−すゑさだ/を¥もつて¥まうさ/れ/ける/は、「¥のりもり/こそ¥よし−なき¥もの/に¥したしう¥なつ/て、¥かへすがへすP135¥くやしみ¥さふらへ/ども、¥かひ/も¥さふらは/ず。¥あひ−ぐせ/させ/て¥さふらふ¥もの/の、¥この−ほど¥なやむ¥こと/の¥さふらふ/なる/が、¥けさ/より¥この¥なげき/を¥うち−そへ/て、¥すでに¥いのち/も¥たえ¥さふらひ/な/んず。¥のりもり¥かう/て¥さふらへ/ば、¥なじか/は¥ひがごと−せ/させ¥さふらふ/べき。¥せうしやう/を/ば¥しばらく¥のりもり/に¥あづけ/させ¥おはしませ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥すゑさだ¥まゐつ/て¥この¥よし/を¥まうす。¥にふだう、「¥あはれ¥れい/の¥さいしやう/が¥もの/に¥こころ−え/ぬ/よ」/とて、¥とみ/に¥へんじ/も¥し¥たまは/ず。¥やや¥あつ/て¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ¥きんじゆ/の¥ひとびと、¥この¥いちもん¥ほろぼし/て¥てんが¥みだら/ん/と¥する¥くはだて¥あり。¥すでに¥この¥せうしやう/は¥かの¥だいなごん/が¥ちやくし/なり。¥うとう/も¥なれ、¥したしう/も¥なれ、¥え/こそ¥まうし−ゆるす/まじけれ。¥もし¥この¥むほん¥とげ/な/ましか/ば、¥ご=へん/とて/も¥おだしう/て/やは¥おはす/べき/と¥いふ/べし」/と¥のたまへ/ば、¥すゑさだ¥かへり−まゐつ/て、¥さいしやう=どの/に¥この¥よし/を¥まうす。¥さいしやう¥よに/も¥ほい−な=げ/にて、¥かさね/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥かつせん/に/も、¥おん=いのち/に/は¥かはり¥まゐらせ/ん/と/こそ¥ぞんじ¥さふらひ/しか。¥この−のち/も¥あらき¥かぜ/を/ば、¥まづ¥ふせぎ¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥たとひ¥のりもり/こそ¥とし¥おい/て¥さふらふ/とも、¥わかき¥こども¥あまた¥さふらへ/ば、¥いつぱう/の¥おん=かため/に/も、¥など/か¥なら/で/は¥さふらふ/べき。¥それ/に¥しばらく¥せうしやう/を¥あづから/う/ど¥まうす/に、¥おん=ゆるされ¥なき/は、¥いつかう¥のりもり/を¥ふたごころ¥ある¥もの/と¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/に/こそ。¥それ−ほど/まで¥うしろめたう¥おもは/れ¥まゐらせ/て/は、¥よ/に¥あつ/て/も¥なに/に/かは¥し¥さふらふ/べき/なれ/ば、¥み/の¥いとま/を¥たまはつ/て、¥しゆつけ−にふだう¥つかまつり、¥かうや、¥こがは/に/も¥こもり−ゐ/て、¥ひとすぢ/に¥ごせ−ぼだい/の¥つとめ/を¥いとなみ¥さふらは/ん。P136¥
よし−なき¥うき−よ/の¥まじはり/なり。¥よ/に¥あれ/ば/こそ¥のぞみ/も¥あれ、¥のぞみ/の¥かなは/ね/ば/こそ¥うらみ/も¥あれ。¥しか/じ¥うき−よ/を¥いとひ、¥まこと/の−みち/に¥いり/な/ん/に/は」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥すゑさだ¥まゐり/て、「¥さいしやう=どの/は¥はや¥おぼしめし¥きつ/て¥さふらふ/ぞ。¥と/も−かく/も¥よき¥やう/に¥おん=ぱからひ¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、「¥いやいや¥しゆつけ−にふだう/まで/は¥あまり/に¥けしから/ず。¥その¥ぎ/なら/ば、¥せうしやう/を/ば¥しばらく¥のりもり/に¥あづくる/と¥いふ/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥すゑさだ¥かへり−まゐつ/て、¥さいしやう=どの/に¥この¥よし/を¥まうす。¥さいしやう、「¥あはれ¥ひと/の¥こ/を/ば¥もつ/まじかり/ける/ものかな。¥わが¥こ/の¥えん/に¥むすぼほれ/ざら/ん/に/は、¥これ−ほど/まで¥こころ/を/ば¥くだか/じ/ものを」/とて¥いで/られ/けり。¥せうしやう¥まち−うけ¥たてまつ/て、「¥さて¥いかが¥さふらひ/つる/やらん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥にふだう¥あまり/に¥いかつ/て、¥のりもり/に/は¥つひに¥たいめん/も¥し¥たまは/ず、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を¥しきり/に¥のたまふ¥あひだ、¥しゆつけ−にふだう/まで¥まうし/たれ/ば/に/やらん、¥その¥ぎ/なら/ば、¥ご=へん/を/ば¥しばらく¥のりもり/に¥あづくる/と¥のたまひ/つれ/ども、¥それ/も¥しじう/は¥よかる/べし/と/も¥おぼえ/ず」/と¥のたまへ/ば、¥せうしやう、「¥さて/は¥なりつね/は¥ご=おん/を¥もつて¥しばし/の¥いのち/の¥のび¥さふらは/んずる/に/こそ。¥それ/に¥つき¥さふらう/て/は、¥ちち/で¥さふらふ¥だいなごん/が¥こと/を/ば、¥なに/と/か¥きこしめさ/れ/て¥さふらふ/やらん」。¥さいしやう、「¥いさ/とよ、¥ご=へん/の¥こと/を/こそ、¥やうやう/に¥まうし/たれ。¥それ/まで/の¥こと/は¥おもひ/も¥よら/ざり/つれ」/と¥のたまへ/ば、¥その−とき¥せうしやう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥いのち/の¥をしう¥さふらふ/も、¥ちち/を¥いま−いちど¥み/ばや/と¥おもふ¥ため/なり。¥ゆふさり¥だいなごん¥きら/れP137¥さふらは/ん/に¥おい/て/は、¥なりつね¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥し¥さふらふ/べき/なれ/ば、¥ただ¥いつしよ/で¥いか/に/も−なる¥やう/に¥まうし/て¥たば/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さいしやう¥よに/も¥くるし=げ/にて、「¥いさ/とよ、¥ご=へん/の¥こと/を/こそ¥やうやう/に¥まうし/たれ。それ/まで/の¥こと/は¥おもひ/も¥よら/ざり/つれ/ども、けさ¥うち/の−おとど/の¥やうやう/に¥まうさ/せ¥たまひ/つれ/ば、それ/も¥しばし/は¥よき¥やう/に/こそ¥きけ」/と¥のたまへ/ば、¥せうしやう¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥なくなく¥て/を¥あはせ/て/ぞ¥よろこば/れ/ける。¥こ/なら/ざら/ん¥もの/が、¥たれ/か¥ただいま¥わが−み/の−うへ/を¥さし−おい/て、¥これ−ほど/まで/は¥よろこぶ/べき。¥まこと/の¥ちぎり/は¥おやこ/の¥なか/に/ぞ¥あり/ける。¥こ/を/ば¥ひと/の¥もつ/べかり/ける/ものかな/と、¥やがて¥おもひ/ぞ¥かへさ/れ/ける。¥さて¥けさ/の/ごとく、¥どうじや−し/て¥かへら/れ/たれ/ば、¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥さし−つどひ/て、¥しに/たる¥ひと/の¥いき−かへり/たる¥ここち−し/て、¥みな¥よろこびなき/を/ぞ¥せ/られ/ける。¥
「けうくん」(『けうくんじやう』)S0206¥だいじやう/の−にふだう/は、¥かやう/に¥ひとびと¥あまた¥いましめ−おい/て/も、¥なほ¥こころ−ゆか/ず/や¥おもは/れ/けん、¥すでに¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−はらまき/の¥しろかなもの¥うつ/たる¥むないた¥せめ、¥せんねん¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥じんばい/の¥ついで/に¥れいむ/を¥かうむつ/て、¥いつくしまの−だい−みやうじん/より¥うつつ/に¥たまはら/れ/たり/ける、P138¥しろかね/の¥ひるまき−し/たる¥こなぎなた、¥つね/の¥まくら/を¥はなた/ず¥たて/られ/たり/し/を¥わき/に¥はさみ、¥ちうもん/の¥らう/に/ぞ¥いで/られ/たる。¥おほかた¥その¥きしよく¥ゆゆしう/ぞ¥みえ/し。「¥さだよし」/と¥めす。¥ちくごの−かみ−さだよし/は、¥むくらんぢ/の−ひたたれ/に、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て¥おん=まへ/に¥かしこまつ/て/ぞ¥さふらひ/ける。¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥いか/に¥さだよし、¥この¥こと¥いかが¥おもふ/ぞ。¥ほうげん/に¥へい−うま/の−すけ/を¥はじめ/と/して、¥いちもん¥なかば¥すぎ/て、¥しんゐん/の¥み=かた/に¥まゐり/に/き。¥いちのみや/の¥おん=こと/は、¥こ=ぎやうぶきやう/の=との/の¥やうくん/にて¥ましまし/しか/ば、¥かたがた¥み−はなち¥まゐらせ−がたかり/しか/ども、¥こ=ゐん/の¥ご=ゆゐかい/に¥まかせ/て、¥み=かた/にて¥さき/を¥かけ/たり/き。¥これ¥ひとつ/の¥ほうこう。¥つぎ/に¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥のぶより¥よしとも/が¥むほん/の¥とき、¥ゐん−うち/を¥とり¥たてまつ/て、¥たいだい/に¥たてごもり、¥てんが¥くらやみ/と¥なつ/たり/し/に/も、¥にふだう¥ずゐぶん¥み/を¥すて/て、¥きようと/を¥おひ−おとし、¥つねむね¥これかた/を¥めし−いましめ/し/に¥いたる/まで、¥きみ/の¥おん=ため/に、¥すでに¥いのち/を¥うしなは/ん/と¥する¥こと¥どど/に¥およぶ。¥され/ば¥ひと¥なに/と¥まうす/とも、¥いかで/か¥この¥いちもん/を/ば、¥しち−だい/まで/は¥おぼしめし−すて/させ¥たまふ/べき。¥それ/に¥なりちか/と¥いふ¥むよう/の¥いたづらもの、¥さいくわう/と¥まうす¥げせん/の¥ふたうじん/が¥まうす¥こと/に、¥きみ/の¥つか/せ¥たまひ/て、¥やや/も¥すれ/ば、¥この¥いちもん¥ほろぼさ/る/べき¥よし/の¥ご=けつこう/こそ¥しかる/べから/ね。¥この−のち/も¥ざんそう−する¥もの¥あら/ば、¥たうけ¥つゐたう/の¥ゐんぜん/を¥くださ/れ/つ/と¥おぼゆる/ぞ。¥てうてき/と¥なつ/て¥のち/は、¥いか/に¥くゆ/とも¥えき¥ある/まじ。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/へ¥うつし¥まゐらする/か、¥しから/ず/は¥これ/へ¥まれ、¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせ/ん/と¥おもふ/は¥いか/に。¥その¥ぎ/なら/ば、¥さだめ/てP139¥ほくめん/の¥もの=ども/が¥なか/より、¥や/を/も¥ひとつ¥い/んず/らん。¥その¥ようい−せよ/と¥さぶらひ=ども/に¥ふる/べし。¥おほかた/は¥にふだう¥ゐんがた/の¥ほうこう¥おもひ−きつ/たり。¥むま/に¥くら¥おか/せよ。¥きせなが¥とり−いだせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥
しゆめ/の−はんぐわん−もりくに、¥いそぎ¥こまつ=どの/へ¥はせ−まゐつ/て、「¥よ/は¥はや¥かう¥ざふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、「¥ああ¥はや¥なりちかの−きやう/の¥かうべ/の¥はね/られ/たん/な」/と¥のたまへ/ば、「¥その¥ぎ/にて/は¥さふらは/ね/ども、¥にふだう=どの/の¥おん=きせなが/を¥めさ/れ¥さふらふ¥うへ/は、¥さぶらひ=ども/も¥みな¥うつ−たつ/て、¥ただいま¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/へ¥よせ/ん/と/こそ¥いで−たち¥さふらひ/つれ。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/へ¥うつし¥まゐらする/か、¥しから/ず/は¥これ/へ¥まれ、¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせ/う/ど/は¥さふらへ/ども、¥ないない/は¥ちんぜい/の¥かた/へ¥ながし¥まゐらせ/ん/と/こそ¥ぎせ/られ¥さふらひ/つれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど、¥なに/に¥よつ/て、¥ただいま¥さる−おん=こと/の¥おはす/べき/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥けさ/の¥ぜんもん/の¥きしよく、¥さる¥もの−ぐるはしき¥こと/も/や¥おはす/らん/とて、¥いそぎ¥くるま/を¥とばせ/て、¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥おはし/たる。¥もんぜん/にて¥くるま/より¥おり、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いつ/て¥み¥たまふ/に、¥にふだう¥はらまき/を¥き¥たまふ¥うへ、¥いちもん/の¥けいしやう−うんかく¥すじふにん、¥おのおの¥いろいろ/の¥ひたたれ/に、¥おもひおもひ/の¥よろひ¥き/て、¥ちうもん/の¥らう/に¥にぎやう/に¥ちやくせ/られ/たり。¥その−ほか¥しよ−こく/の¥じゆりやう、¥ゑふ、¥しよし/など/は¥えん/に¥ゐ−こぼれ、¥には/に/も¥ひし/と¥なみ−ゐ/たり。¥はたざを=ども¥ひき−そばめ−ひき−そばめ、¥むま/の¥はるび/を¥かため、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥ただいま¥みな¥うつーたた/んずる¥けしき=ども/なる/に、¥こまつ=どの¥ゑぼし¥なほし/に、P140¥だいもん/の¥さしぬき/の¥そば¥とつ/て、¥ざやめき−いり¥たまへ/ば、¥こと/の−ほか/に/ぞ¥みえ/られ/ける。¥
にふだう¥ふしめ/に¥なつ/て、¥あはれ¥れい/の¥だいふ/が、¥よ/を¥へう−する¥やう/に¥ふるまふ/ものかな。¥おほき/に¥いさめ/ばや/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥さすが¥こ/ながら/も、¥うち/に/は¥ごかい/を¥たもつ/て、¥じひ/を¥さき/と¥し、¥ほか/に/は¥ごじやう/を¥みだら/ず、¥れいぎ/を¥ただしう¥し¥たまふ¥ひと/なれ/ば、¥あの¥すがた/に¥はらまき/を¥き/て¥むかは/ん¥こと、¥さすが¥おもばゆう、¥はづかしう/や¥おもは/れ/けん、¥しやうじ/を¥すこし¥ひき−たて/て、¥はらまき/の¥うへ/に、¥そけん/の¥ころも/を¥あわてぎ/に¥き¥たまひ/たり/ける/が、¥むないた/の¥かなもの/の、¥すこし¥はづれ/て¥みえ/ける/を、¥かくさ/う/ど、¥しきり/に¥ころも/の¥むね/を¥ひき−ちがへ−ひき−ちがへ/ぞ¥し¥たまひ/ける。¥おとど/は¥しやてい¥むねもりの−きやう/の¥ざしやう/に¥つき¥たまふ。¥にふだう¥のたまひ−いださ/るる¥こと/も¥なく、¥おとど/も¥また¥まうし−あげ/らるる¥むね/も¥なし。¥やや¥あつ/て¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥あの¥なりちかの−きやう/が¥むほん/は、¥こと/の−かず/に/も¥さふらは/ず、¥いつかう¥ほふわう/の¥ご=けつこう/にて¥さふらひ/ける/ぞ/や。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/へ¥うつし¥まゐらする/か、¥しから/ず/は¥これ/へ¥まれ、¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせ/ん/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥おとど¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥はらはら/と/ぞ¥なか/れ/ける。¥にふだう、「¥さて¥いか/に/や−いか/に」/と¥あきれ¥たまへ/ば、¥やや¥あつ/て¥おとど¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥この¥おほせ¥うけたまはり¥さふらふ/に、¥ご=うん/は¥はや¥すゑ/に¥なり/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ。¥ひと/の¥うんめい/の¥かたぶか/ん/とて/は、¥かならず¥あくじ/を¥おもひ−たち¥さふらふ/なり。¥また¥おん=ありさま/を¥み¥まゐらせ¥さふらふ/に、¥さらに¥うつつ/と/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥さすが¥わが¥てう/は、¥へんぢ−そくさん/の¥さかひ/と/は¥まうし/ながら、¥てんせうだいじん/の¥ご=しそん、P141¥くに/の¥あるじ/と/して、¥あまのこやねのみこと/の¥おん=すゑ、¥てう/の¥まつりごと/を¥つかさどら/せ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥だいじやうだいじん/の¥くわん/に¥いたる¥ひと/の¥かつちう/を¥よろふ¥こと、¥れいぎ/を¥そむく/に¥あら/ず/や。¥なかんずく¥ご=しゆつけ/の¥おん=み/なり。¥それ¥さんぜ/の¥しよぶつ、¥げだつ¥どうさう/の¥ほふえ/を¥ぬぎ−すて/て、¥たちまちに¥かつちう/を¥よろひ、¥きうせん/を¥たいし¥ましまさ/ん¥こと、¥うち/に/は¥はかい¥むざん/の¥つみ/を¥まねく/のみ/なら/ず、¥ほか/に/は¥じん−ぎ−れい−ち−しん/の¥ほふ/に/も¥そむき¥さふらひ/な/んず。¥かたがた¥おそれ¥ある¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥こころ/の¥そこ/に¥しいしゆ/を¥のこす/べき/に/も¥さふらは/ず。¥
まづ¥よ/に¥しおん¥さふらふ。¥てんち/の¥おん、¥こくわう/の¥おん、¥ぶも/の¥おん、¥しゆじやう/の¥おん¥これ/なり。¥その¥なか/に¥もつとも¥おもき/は¥てうおん/なり。¥ふてん/の¥した、¥わうぢ/に¥あら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥され/ば¥かの¥えいせん/の¥みづ/に¥みみ/を¥あらひ、¥しゆやうざん/に¥わらび/を¥をり/し¥けんじん/も、¥ちよくめい¥そむき−がたき¥れいぎ/を/ば¥ぞんぢ−す/と/こそ¥うけたまはれ。¥いか/に−いはんや、¥せんぞ/に/も¥いまだ¥きか/ざつ/し¥だいじやうだいじん/を¥きはめ/させ¥たまふ。¥いはゆる¥しげもり/が¥むざい¥ぐあん/の¥み/を¥もつて、¥れんぷ¥くわいもん/の¥くらゐ/に¥いたる。¥しか/のみ/なら/ず¥こくぐん¥なかば/は¥いちもん/の¥しよりやう/と¥なつ/て、¥でんをん¥ことごとく¥いつけ/の¥しんじ/たり。¥これ¥きたい/の¥てうおん/に¥あら/ず/や。¥いま¥これ=ら/の¥ばくたい/の¥ご=おん/を¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまひ/て、¥みだりがはしく¥ほふわう/を¥かたぶけ¥まゐら/させ¥たまは/ん¥こと、¥てんせうだいじん、¥しやう−はちまんぐう/の¥しんりよに/も¥そむか/せ¥たまひ¥さふらひ/な/んず。¥それ¥につぽん/は¥しんこく/なり。¥しん/は¥ひれい/を¥うけ¥たまふ/べから/ず¥しかれ/ば¥きみ/の¥おぼしめし−たた/せ¥たまふ¥ところ、¥だうり¥なかば¥なき/に¥あら/ず。¥なか/に/も¥この¥いちもん/は¥だいだい/の¥てうてき/を¥たひらげ/て、¥しかい/の¥げきらう/を¥しづむる¥こと/は、¥ぶさう/の¥ちう/なれ/ども、¥その¥しやう/に¥ほこる¥こと/は、P142¥ばうじやくぶじん/と/も¥まうし/つ/べし。¥しやうとくたいし¥じふしちかでう/の¥ご=けんぼふ/に、『¥ひと¥みな¥こころ−あり。¥こころ¥おのおの¥しふ¥あり。¥かれ/を¥ぜし、¥われ/を¥ひし、¥われ/を¥ぜし、¥かれ/を¥ひす。¥ぜひ/の¥ことわり、¥たれ/か¥よく¥さだむ/べき。¥あひ−とも/に¥けんぐ/なり。¥たまき/の/ごとく/して¥はし¥なし。¥ここ/を¥もつて、¥たとひ¥ひと¥いかる/と¥いふ/とも、¥かへつて¥わが¥とが/を¥おそれよ』/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥しかれ/ども¥たうけ/の¥うんめい¥いまだ¥つき/ざる/に¥よつ/て、¥ご=むほん¥すでに¥あらはれ/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥その−うへ¥おほせ−あはせ/らるる¥なりちかの−きやう/を、¥めし−おか/れ/ぬる¥うへ/は、¥たとひ¥きみ¥いか/なる¥ふしぎ/を¥おぼしめし−たた/せ¥たまふ/とも、¥なん/の¥おそれ/か¥さふらふ/べき。¥しよたう/の¥ざいくわ¥おこなは/れ/ぬる¥うへ/は、¥しりぞい/て¥こと/の¥よし/を¥ちんじ¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥きみ/の¥おん=ため/に/は、¥いよいよ¥ほうこう/の¥ちうきん/を¥つくし、¥たみ/の¥ため/に/は、¥ますます¥ぶいく/の¥あいれん/を¥いたさ/せ¥たまは/ば、¥しんめい/の¥かご/に¥あづかつ/て、¥ぶつだ/の¥みやうりよ/に¥そむく/べから/ず。¥しんめい−ぶつだ¥かんおう¥あら/ば、¥きみ/も¥おぼしめし−なほす¥こと、¥など/か¥さふらは/ざる/べき。¥きみ/と¥しん/と/を¥くらぶる/に、¥しんそ¥わく¥かた¥なし。¥だうり/と¥ひがごと/を¥ならべ/ん/に、¥いかで/か¥だうり/に¥つか/ざる/べき」。¥
「ほうくわ」(『ほうくわのさた』)S0207¥「¥これ/は¥もつとも¥きみ/の¥おん=ことわり/にて¥さふらへ/ば、¥かなは/ざら/ん/まで/も、¥ゐん−ぢう/を¥しゆご−し¥まゐらせP143¥さふらふ/べし。¥その¥ゆゑ/は、¥しげもり¥はじめ¥じよしやく/より、¥いま¥だいじん/の¥だいしやう/に¥いたる/まで、¥しかしながら¥きみ/の¥ご=おん/なら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥この¥おん/の¥おもき¥こと/を¥おもへ/ば、¥せんくわ¥ばんくわ/の¥たま/に/も¥こえ、¥その¥おん/の¥ふかき¥いろ/を¥あんずる/に、¥いちじふ−さいじふ/の¥くれなゐ/に/も¥なほ¥すぎ/たら/ん。¥しから/ば¥ゐん−ぢう/へ¥まゐり−こもり¥さふらふ/べし。¥その¥ぎ/にて¥さふらは/ば、¥しげもり/が¥み/に¥かはり、¥いのち/に¥かはら/ん/と¥ちぎり/たる¥さぶらひ=ども¥せうせう¥さふらふ/らん。¥これ=ら/を¥めし−ぐし/て¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/を¥しゆご−し¥まゐらせ¥さふらは/ば、¥さすが¥もつて/の−ほか/の¥おん=だいじ/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥かなしき/かな、¥きみ/の¥おん=ため/に¥ほうこう/の¥ちう/を¥いたさ/ん/と¥すれ/ば、¥めいろ¥はちまん/の¥いただき/より/も¥なほ¥たかき¥ちち/の¥おん¥たちまちに¥わすれ/ん/と¥す。¥いたましき/かな、¥ふけう/の¥つみ/を¥のがれ/ん/と¥すれ/ば、¥きみ/の¥おん=ため/に/は¥すでに¥ふちう/の¥ぎやくしん/と/も¥なり/ぬ/べし。¥しんだい¥これ¥きはまれ/り。¥ぜひ¥いか/に/も¥わきまへ−がたし。¥まうし−うくる¥しよせん/は、¥ただ¥しげもり/が¥くび/を¥めさ/れ¥さふらへ。¥その¥ゆゑ/は、¥ゐんざん/の¥おん=とも/を/も¥つかまつる/べから/ず。¥また¥ゐん−ぢう/を/も¥しゆご−し¥まゐらす/べから/ず。¥され/ば¥かの¥せうが/は¥たいこう¥かたへ/に¥こえ/たる/に¥よつ/て、¥くわん¥たいしやうこく/に¥いたり、¥けん/を¥たいし¥くつ/を¥はき/ながら、¥てんじやう/へ¥のぼる¥こと/を¥ゆるさ/れ/しか/ども、¥えいりよ/に¥そむく¥こと¥あり/しか/ば、¥かうそ¥おもう¥いましめ/て、¥ふかう¥つみ−せ/られ/に/き。¥かやう/の¥せんじよう/を¥おもへ/ば、¥ふつき/と¥いひ、¥えいぐわ/と¥いひ、¥てうおん/と¥まうし、¥ちようじよく/と¥いひ、¥かたがた¥きはめ/させ¥たまひ/ぬれ/ば、¥ご=うん/の¥つき/ん¥こと¥かたかる/べき/に¥あら/ず。¥ふつき/の¥いへ/に/は¥ろくゐ¥ちようでふ−せ/り。¥ふたたび¥み¥なる¥き/は、¥その¥ね¥かならず¥いたむ/と¥みえ/て¥さふらふ。¥こころ−ぼそう/こそ¥さふらへ。¥いつ/まで/かP144¥いのち¥いき/て、¥みだれ/ん¥よ/を/も¥み¥さふらふ/べき。¥ただ¥まつだい/に¥しやう/を¥うけ/て、¥かかる¥うき−め/に¥あひ¥さふらふ¥しげもり/が¥くわはう/の/ほど/こそ¥つたなう¥さふらへ。¥ただいま/も¥さぶらひ¥いち−にん/に¥おほせ−つけ/られ、¥おん=つぼ/の−うち/へ¥ひき−いださ/れ/て、¥しげもり/が¥かうべ/の¥はね/られ/んずる¥こと/は、¥いと¥やすい/ほど/の¥おん=こと/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥これ/を¥おのおの¥きき¥たまへ」/とて、¥なほし/の¥そで/も¥しぼる/ばかり/に、¥かき−くどき、¥さめざめ/と¥なき¥たまへ/ば、¥その¥ざ/に¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥へいけ¥いちもん/の¥ひとびと、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥
にふだう、¥たのみ−きつ/たる¥だいふ/は、¥かやう/に¥のたまふ。¥よに/も¥ちから¥な=げ/にて、「¥いやいや¥それ/まで/の¥こと/は¥おもひ/も¥より¥さう/ず。¥あくたう=ども/の¥まうす¥こと/に、¥きみ/の¥つか/せ¥たまひ/て、¥いか/なる¥ひがごと/など/も/や、¥いで−こ/んず/らん/と¥おもふ/ばかり/で/こそ¥さふらへ」。¥おとど、「¥たとひ¥いか/なる¥ひがごと¥いで−き¥さふらへ/ば/とて、¥きみ/を/ば¥なに/と/か¥し¥まゐら/させ¥たまふ/べき」/とて、¥つい−たつ/て¥ちうもん/に¥いで、¥さぶらひ=ども/に¥のたまひ/ける/は、「¥ただいま¥これ/にて¥まうし/つる¥こと=ども/を/ば、¥なんぢ=ら/は¥よく¥うけたまはら/ず/や。¥けさ/より¥これ/に¥さふらう/て、¥かやう/の¥こと=ども/を/も¥まうし−しづめ/ん/と/は¥ぞんじ/つれ/ども、¥あまり/に¥ひた−さわぎ/に¥みえ/つる¥あひだ、¥まづ¥かへり/つる/なり。¥ゐんざん/の¥おん=とも/に¥おい/て/は、¥しげもり/が¥かうべ/の¥はね/られ/たら/ん/を¥み/て¥つかまつれ。¥さら/ば¥ひと¥まゐれ」/とて、¥こまつ=どの/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥その−のち¥おとど¥しゆめ/の−はんぐわん−もりくに/を¥めし/て、「¥しげもり/こそ¥けさ¥べつし/て¥てんが/の¥だいじ/を¥きき−いだし/たん/なれ。¥われ/を¥われ/と¥おもは/んずる¥もの=ども/は、¥もののぐ−し/て¥いそぎ¥まゐれ/と¥もよほせ」/とP145¥のたまへ/ば、¥はせ−まはつ/て¥ひろう−す。¥おぼろ=げ/にて/は¥さわぎ¥たまは/ぬ¥ひと/の、¥かやう/の¥ひろう/の¥ある/は、¥まことに¥べち/の¥しさい/の¥ある/に/こそ/とて、¥われ/も−われ/も/と¥はせ−まゐる。¥よど、¥はつかし、¥うぢ、¥をかのや、¥ひの、¥くわんじゆじ、¥だいご、¥をぐるす、¥むめづ、¥かつら、¥おはら、¥しづはら、¥せれふ/の¥さと/に¥あぶれ−ゐ/たる¥つはもの=ども、¥あるひは¥よろひ¥き/て、¥いまだ¥かぶと/を¥き/ぬ/も¥あり、¥あるひは¥や¥おう/て¥いまだ¥ゆみ/を¥もた/ぬ/も¥あり。¥かた−あぶみ¥ふむ/や¥ふま/ず/にて、¥あわて−さわい/で¥はせ−まゐる。¥
こまつ=どの/に¥さわぐ¥こと¥あり/と¥きこえ/しか/ば、¥にしはちでう/に¥すせんき¥あり/ける¥つはもの=ども、¥にふだう/に/は¥かう/とも¥まうし/も¥いれ/ず、¥ざやめき−つれ/て、¥みな¥こまつ=どの/へ/ぞ¥はせ/たり/ける。¥きうせん/に¥たづさはる/ほど/の¥もの/は、¥いち−にん/も¥のこら/ず。¥ちくごの−かみ−さだよし/が¥ただ¥いち−にん¥さふらひ/ける/を¥ごぜん/へ¥めし/て、「¥だいふ/は¥なに/と¥おもひ/て、¥これ=ら/を/ば¥みな¥かやう/に¥よび−とる/やらん。¥けさ¥これ/にて¥いひ/つる¥やう/に、¥じやうかい/が¥もと/へ¥うつて/など/も/や¥むけ/んず/らん」/と¥のたまへ/ば、¥さだよし¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥ひと/も¥ひと/に/こそ¥よら/せ¥たまひ¥さふらへ。¥いかで/か¥ただいま¥さる−おん=こと¥さふらふ/べき。¥けさ¥これ/にて¥まうさ/せ¥たまひ/つる¥おん=こと=ども/を/ば、¥はや¥みな¥ご=こうくわい/ぞ¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、¥いやいや¥だいふ/に¥なか¥たがう/て/は、¥あしかり/な/ん/と/や¥おもは/れ/けん、¥ほふわう¥むかへ¥まゐらせ/ん/と¥おもは/れ/ける¥こころ/も¥やはらぎ、¥いそぎ¥はらまき¥ぬぎ−おき、¥そけん/の¥ころも/に¥けさ¥うち−かけ/て、¥いと¥こころ/に/も¥おこら/ぬ¥ねんじゆ−し/て/こそ¥おはし/けれ。¥その−のち¥こまつ=どの/に/は、¥もりくに¥うけたまはつ/て、¥ちやくたう¥つけ/けり。¥はせ−さんじ/たる¥さぶらひ=ども、P146¥いちまん−よ−き/と/ぞ¥しるし/ける。¥ちやくたう¥ひけん/の¥のち、¥おとど¥ちうもん/に¥いで/て、¥さぶらひ=ども/に¥のたまひ/ける/は、「¥ひごろ/の¥けいやく/を¥たがへ/ず/して、¥みな¥かやう/に¥まゐり/たる/こそ¥しんべう/なれ。¥いこく/に¥さる¥ためし¥あり。¥しう/の¥いうわう、¥はうじ/と¥いへ/る¥さいあい/の¥きさき/を¥もち¥たまへ/り。¥てんが¥だいいち/の¥びじん/なり。¥され/ども¥いうわう/の¥おん=こころ/に¥かなは/ざり/ける¥こと/に/は、¥はうじ¥ゑみ/を¥ふくま/ず/とて、¥すべて¥わらふ¥こと¥し¥たまは/ず、¥いこく/の¥ならひ/に、¥てんが/に¥ひやうらん/の¥おこる¥とき/は、¥しよしよ/に¥ひ/を¥あげ、¥たいこ/を¥うつ/て、¥つはもの/を¥めす¥はかりごと¥あり。¥これ/を¥ほうくわ/と¥なづく。¥ある−とき¥てんが/に¥ひやうがく¥おこつ/て、¥しよしよ/に¥ほうくわ/を¥あげ/たり/けれ/ば、¥きさき¥これ/を¥ごらんじ/て、『¥あな¥おびたたし、¥ひ/も¥あれ−ほど/まで¥おほかり/けり/な』/とて、¥その−とき¥はじめて¥わらひ¥たまへ/り。¥ひとたび¥ゑめ/ば¥もも/の¥こび¥あり/けり。¥いうわう¥これ/を¥うれしき¥こと/に¥し¥たまひ/て、¥その¥こと/と¥なく、¥つね/は¥ほうくわ/を¥あげ¥たまふ。¥しよこう¥き/たる/に¥あた¥なし、¥あた¥なけれ/ば¥すなはち¥かへり−さん/ぬ。¥かやう/に¥する¥こと¥どど/に¥およべ/ば、¥つはもの/も¥まゐら/ず。¥ある−とき¥りんごく/より¥きようぞく¥おこつ/て、¥いうわう/の¥みやこ/を¥せめ/ける/に、¥ほうくわ/を¥あぐれ/ども、¥れい/の¥きさき/の¥ひ/に¥ならつ/て、¥つはもの/も¥まゐら/ず。¥その−とき¥みやこ¥かたぶい/て、¥いうわう¥つひに¥ほろび/に/けり。¥さて¥かの¥きさき、¥やかん/と¥なつ/て¥はしり−うせ/ける/ぞ¥おそろしき。¥かやう/の¥こと/の¥ある¥とき/は、¥じこん¥いご、¥これ/より¥めさ/ん/に/は、¥みな¥かく/の/ごとく¥まゐる/べし。¥しげもり¥けさ¥べつし/て¥てんが/の¥だいじ/を¥きき−いだし/て¥めし/つる/なり。¥され/ども¥この¥こと¥きき−なほし/つつ、¥ひがごと/にて¥あり/けり。¥さら/ば¥とう¥かへれ」/とて、¥さぶらひ=ども¥みな¥かへさ/れ/けり。¥まことに¥させる¥こと/を/も¥きき−いださ/れ/ざり/けれ/ども、P147¥けさ¥ちち/を¥いさめ¥まうさ/れ/ける¥ことば/に¥したがつ/て、¥わが−み/に¥せい/の¥つく/か、¥つか/ぬ/か/の/ほど/を/も¥しり、¥また¥ふし¥いくさ/を¥せん/と/に/は¥あら/ね/ども、¥かう¥し/て¥にふだう−たいしやうこく/の¥むほん/の¥こころ/も、¥やはらぎ¥たまふ/か/と/の¥はかりごと/と/ぞ¥きこえ/し。¥きみ¥きみ/たら/ず/と¥いへ/ども、¥しん¥もつて¥しん/たら/ずん/ば¥ある/べから/ず。¥ちち¥ちち/たら/ず/と¥いへ/ども、¥こ¥もつて¥こ/たら/ずん/ば¥ある/べから/ず。¥きみ/の¥ため/に/は¥ちう¥あつ/て、¥ちち/の¥ため/に/は¥かう¥あれ/と、¥ぶんせんわう/の¥のたまひ/ける/に¥たがは/ず。¥きみ/も¥この¥よし¥きこしめし/て、「¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/なれ/ども、¥だいふ/が¥こころ/の¥うち/こそ¥はづかしけれ。¥あた/を/ば¥おん/を¥もつて¥はうぜ/られ/たり」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥くわはう/こそ¥めでたう/て、¥いま¥だいじん/の−だいしやう/に¥いたら/め。¥ようぎ−たいはい¥ひと/に¥すぐれ、¥さいち¥さいかく/さへ¥よ/に¥こえ/たる/べき/やは」/と/ぞ、¥とき/の−ひとびと¥かんじ−あは/れ/ける。¥くに/に¥いさむる¥しん¥あれ/ば、¥その¥くに¥かならず¥やすく、¥いへ/に¥いさむる¥こ¥あれ/ば、¥その¥いへ¥かならず¥ただし/と¥いへ/り。¥しやうだい/に/も¥まつだい/に/も、¥あり−がたかり/し¥だいじん/なり。¥
「しんだいなごんのながされ」(『だいなごんるざい』)S0208¥さる−ほど/に¥ろくぐわつ−ふつかのひ、¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/を/ば、¥くぎやう/の¥ざ/に¥いだし¥たてまつ/て、¥おん=もの¥まゐらせ/けれ/ども¥むね¥せき−ふさがつ/て、¥お=はし/を/だに/も¥たて/られ/ず。¥あづかり/の−ぶしP148¥なんばの−じらう−つねとほ、¥おん=くるま/を¥よせ/て、「¥とうとう」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいなごん¥こころ/なら/ず/ぞ¥のり¥たまふ。¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥いま−いちど¥こまつ=どの/に¥みえ¥たてまつら/ばや/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥それ/も¥かなは/ず。¥み−まはせ/ば、¥ぐんびやう=ども、¥ぜんご¥さう/に¥うち−かこん/で、¥わが¥かたさま/の¥もの/は¥いち−にん/も¥なし。¥たとひ¥ぢうくわ/を¥かうぶつ/て、¥ゑんごく/へ¥ゆく¥もの/も、¥ひと¥いち−にん¥み/に¥そへ/ざる/べき¥こと/や¥ある/と、¥くるま/の¥うち/にて¥かき−くどか/れ/けれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥にし/の−しゆしやか/を¥みなみ/へ¥ゆけ/ば、¥おほうちやま/を/も¥いま/は¥よそ/に/ぞ¥み¥たまひ/ける。¥としごろ¥み−なれ¥たてまつり/し¥ざふしき¥うしかひ/に¥いたる/まで、¥みな¥なみだ/を¥ながし¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥まして¥みやこ/に¥のこり−とどまり¥たまふ¥きたのかた、¥をさなき¥ひとびと/の¥こころ/のうち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥とば=どの/を¥すぎ¥たまふ/に/も、¥この¥ごしよ/へ¥ご=かう¥なり/し/に/は、¥いちど/も¥おん=とも/に/は¥はづれ/ざり/し/ものを/とて、¥わが¥さんざう、¥すはま=どの/とて¥あり/し/を/も、¥よそ/に¥み/て/こそ¥とほら/れ/けれ。¥とば/の¥みなみ/の¥もん¥いで/て、¥ふね¥おそし/と/ぞ¥いそが/せ/ける。¥だいなごん、「¥おなじく¥うしなは/る/べく/は、¥みやこ¥ちかき¥この¥へん/にて/も¥あれ/かし」/と¥のたまひ/ける/こそ、¥せめて/の¥こと/なれ。¥ちかう¥そひ¥たてまつ/たる¥ぶし/を、「¥た/そ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥あづかり/の−ぶし¥なんばの−じらう−つねとほ」/と¥なのり¥まうす。「¥もし¥この¥へん/に¥わが¥かたさま/の¥もの/や¥ある、¥いち−にん¥たづね/て¥まゐらせよ。¥ふね/に¥のら/ぬ¥さき/に¥いひ−おく/べき¥こと¥あり」/と¥のたまへ/ば、¥つねとほ¥その¥へん/を¥はしり−まはつ/て¥たづね/けれ/ども、¥われ/こそ¥だいなごん=どの/の¥おん=かた/とP149¥まうす¥もの、¥いち−にん/も¥なし。¥
その−とき¥だいなごん¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥さり/とも¥わが¥よ/に¥あり/し¥とき/は、¥したがひ−つき/たり/し¥もの=ども、¥いちにせん−にん/も¥あり/つ/らん/に、¥いま/は¥よそ/にて/だに¥この¥ありさま/を¥み−おくる¥もの/の¥なかり/ける¥かなし−さ/よ」/とて、¥なか/れ/けれ/ば、¥たけき¥もののふ=ども/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥ただ¥み/に¥そふ¥もの/とて/は、¥つきせ/ぬ¥なみだ/ばかり/なり。¥くまの−まうで、¥てんわうじ−まうで/など/に/は、¥ふたつ−がはら/の¥みつ−むね/に¥つくつ/たる¥ふね/に¥のり、¥つぎ/の¥ふね¥にさんじつ−そう¥こぎ−つづけ/て/こそ¥あり/し/に、¥いま/は¥けしかる¥かきすゑ−やかた−ぶね/に¥おおまく¥ひか/せ、¥み/も¥なれ/ぬ¥つはもの=ども/に¥ぐせ/られ/て、¥けふ/を¥かぎり/に¥みやこ/を¥いで/て、¥なみぢ¥はるか/に¥おもむか/れ/けん、¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥しん−だいなごん/は、¥しざい/に¥おこなは/る/べかり/し¥ひと/の、¥るざい/に¥なだめ/られ/ける¥こと/は、¥ひとへに¥こまつ=どの/の¥やうやう/に¥まうさ/れ/ける/に¥よつ/て/なり。¥その−ひ/は¥つの−くに¥だいもつ/の−うら/に/ぞ¥つき¥たまふ。¥あくる¥みつかのひ、¥だいもつ/の−うら/へ/は¥きやう/より¥お=つかひ¥あり/とて、¥ひしめき/けり。¥だいなごん¥そこ/にて¥うしなへ/と/に/や/と¥きき¥たまへ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥びぜん/の−こじま/へ¥ながす/べし/と/の¥お=つかひ/なり。¥また¥こまつ=どの/より¥おん=ふみ¥あり。「¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥みやこ¥ちかき¥かた−やまざと/に/も¥おき¥たてまつら/ばや/と、¥さ/しも¥まうし/つる¥こと/の¥かなは/ざり/ける¥こと/こそ¥よ/に¥ある¥かひ/も¥さふらは/ね。¥さり/ながら/も¥おん=いのち/ばかり/を/ば、¥こひ−うけ¥たてまつ/て¥さふらふ/ぞ。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/とて、¥なんば/が¥もと/へ/も、「¥よくよく¥みやづかへP150¥たてまつれ。¥あひ−かまへ/て、¥おん=こころ/に/ばし¥たがふ/な」/など¥のたまひ−つかはし、¥たび/の¥よそほひ、¥こまごま/と¥さた−し、¥おくら/れ/たり。¥しん−だいなごん/は¥さ/しも¥かたじけなう¥おぼしめさ/れ/つる¥きみ/に/も、¥はなれ¥まゐらせ、¥つか/の−ま/も¥さり−がたう¥おもは/れ/ける¥きたのかた、¥をさなき¥ひとびと/に/も、¥みな¥わかれ−はて/て、¥こ/は¥いづち/へ/とて¥ゆく/らん。¥ふたたび¥こきやう/に¥かへつ/て、¥さいし/を¥あひ−み/ん¥こと/も¥あり−がたし。¥ひととせ¥さんもん/の¥そしよう/に¥よつ/て、¥すでに¥ながさ/れ/し/を/も、¥きみ¥をしま/せ¥たまひ/て、¥にし/の−しちでう/より¥めし−かへさ/れ/ぬ。¥され/ば¥これ/は¥きみ/の¥おん=いましめ/に/も¥あら/ず、¥こ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や」/と、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし/て、¥なき−かなしめ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥あけ/けれ/ば、¥ふね¥おし−いだい/て¥くだり¥たまふ/に¥みち−すがら¥ただ¥なみだ/に/のみ¥むせん/で、¥ながらふ/べし/と/は¥おぼえ/ね/ども、¥さすが¥つゆ/の−いのち/は¥きえ−やら/ず、¥あと/の¥しらなみ¥へだつれ/ば、¥みやこ/は¥しだいに¥とほざかり、¥ひかず¥やうやう¥かさなれ/ば、¥ゑんごく/は¥すでに¥ちかづき/ぬ。¥びぜん/の−こじま/に¥こぎ−よせ/て、¥たみ/の¥いへ/の¥あさまし=げ/なる¥しば/の¥いほり/に¥いれ¥たてまつる。¥しま/の¥ならひ、¥うしろ/は¥やま、¥まえ/は¥うみ、¥いそ/の¥まつかぜ¥なみ/の¥おと、¥いづれ/も¥あはれ/は¥つきせ/ず。¥
「あこやのまつ」(『あこやのまつ』)S0209¥およそ¥しん−だいなごん¥いち−にん/に/も¥かぎら/ず、¥いましめ/を¥かうむる¥ともがら¥おほかり/き。¥あふみの−ちうじやう−にふだう−れんじやうP151¥さどの−くに、¥やましろの−かみ−もとかぬ¥はうきの−くに、¥しきぶ/の−たいふ−まさつな¥はりまの−くに、¥そう−はうぐわん−のぶふさ¥あはの−くに、¥しん−へい−はうぐわん−すけゆき/は¥みまさかの−くに/と/ぞ¥きこえ/し。¥をりふし¥にふだう−しやうこく/は、¥ふくはら/の¥べつげふ/に¥おはし/ける/が、¥おなじき−はつかのひ、¥つの−さゑもん−もりずみ/を¥ししや/にて、¥かどわき=どの/の¥もと/へ、「¥それ/に¥あづけ−おき¥たてまつ/たる¥たんばの−せうしやう/を、¥いそぎ¥これ/へ¥たべ。¥ぞんずる¥むね¥あり」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥さいしやう、「¥さら/ば¥ただ¥あり/し¥とき、¥と/も−かう/も¥なり/たり/せ/ば、¥いか/に/か¥せ/ん。¥ふたたび¥もの/を¥おもは/せ/んずる¥こと/の¥かなし−さ/よ」/とて、¥いそぎ¥ふくはら/へ¥くだり¥たまふ/べき¥よし¥のたまへ/ば、¥せうしやう¥なくなく¥いで−たた/れ/けり。¥きたのかた¥いげ/の¥にようばう=たち/は、「¥かなは/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥なほ/も¥さいしやう/の¥よき¥やう/に¥まうさ/せ¥たまへ/かし」/と¥なげか/れ/けれ/ば、¥さいしやう、「¥ぞんずる/ほど/の¥こと/を/ば¥まうし/つ。¥いま/は¥よ/を¥すて/ん/より¥ほか、¥また¥なにごと/を/か¥まうす/べき。¥たとひ¥いづく/の¥うら/に/も¥おはせよ、¥わが¥いのち/の¥あら/ん¥かぎり/は、¥とぶらひ¥たてまつる/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥せうしやう/は¥ことし¥みつ/に¥なり¥たまふ¥をさなき¥ひと/の¥おはし/けれ/ども、¥ひごろ/は¥わかき¥ひと/にて、¥きんだち/など/の¥こと/を/ば¥さ/しも¥こまやか/に/も¥おはせ/ざり/しか/ども、¥いまは/の−とき/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥さすが¥なつかしう/や¥おもは/れ/けん、「¥をさなき¥もの/を¥いま−いちど¥み/ばや」/と¥のたまへ/ば、¥めのと¥いだい/て¥まゐり/たり。¥せうしやう¥ひざ/の¥うへ/に¥おき、¥かみ¥かき−なで、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥あはれ¥なんぢ¥しちさい/に¥なら/ば、¥をとこ/に¥なし/て、¥きみ/へ¥まゐらせ/ん/と/こそ¥おもひ/し/に、¥され/ども¥いま/は¥いふ¥かひ−なし。P152¥もし¥ふしぎ/に¥いのち¥いき/て、¥おひ−たち/たら/ば、¥ほふし/に¥なつ/て、¥わが¥のち/の−よ/を¥よく¥とぶらへよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥いまだ¥いとけなき¥おんこころ/に、¥なにごと/を/か¥きき−わき¥たまふ/べき/なれ/ども、¥うち−うなづき¥たまへ/ば、¥せうしやう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥ははうへ¥めのと/の−にようばう、¥その¥ざ/に¥いくら/も¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥ひとびと、¥こころ−ある/も¥こころ−なき/も、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥
ふくはら/の¥お=つかひ、¥こんや¥とば/まで¥いで/させ¥たまふ/べき¥よし/を¥まうす。¥せうしやう、「¥いく−ほど/も¥のび/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥こよひ/ばかり/は¥みやこ/の¥うち/にて¥あかさ/ばや」/と¥のたまへ/ども、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を、¥しきり/に¥まうし/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず、¥その¥よ¥とば/へ/ぞ¥いで/られ/ける。¥さいしやう¥あまり/の¥もの−う−さ/に、¥こんど/は¥のり/も¥ぐし¥たまは/ず、¥せうしやう/ばかり/ぞ¥のり¥たまふ。¥おなじき−にじふににち¥せうしやう¥ふくはら/へ¥くだり−つき¥たまふ。¥にふだう−しやうこく、¥びつちうの−くに/の¥ぢうにん¥せのをの−たらう−かねやす/に¥おほせ/て、¥びつちうの−くに/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥かねやす/は¥さいしやう/の¥かへり−きき¥たまは/んずる¥ところ/を¥おそれ/て、¥いたう¥きびしう/も¥あたり¥たてまつら/ず、¥みち−すがら/も¥やうやう/に¥いたはり¥まゐらせ/けれ/ども、¥せうしやう¥すこし/も¥なぐさみ¥たまふ¥こと/も¥なく、¥よる−ひる¥ただ¥ほとけ/の¥み=な/を/のみ¥となへ/て、¥ひとへに¥ちち/の¥こと/を/ぞ¥いのら/れ/ける。¥さる−ほど/に¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/は、¥びぜん/の−こじま/に¥おはし/ける/を、¥これ/は¥なほ¥ふなつき¥ちかう/て、¥あしかり/な/ん/とて、¥ぢ/へ¥わたし¥たてまつり、¥びぜん¥びつちう/の¥さかひ、¥にはせ/の−がう、¥きび/の−なかやま、¥ありき/の−べつしよ/と¥いふ¥やまでら/に¥おき¥たてまつる。¥それ/より¥せうしやう/の¥おはし/ける¥びつちう/の¥せのを/と、¥ありき/の−べつしよ/の¥あひだ/は、¥わづか¥ごじつちやう/に¥たら/ぬ¥ところ/なれ/ば、¥せうしやう¥さすがP153¥そなた/の¥かぜ/も¥なつかしう/や¥おもは/れ/けん、¥ある−とき¥かねやす/を¥めし/て、「¥これ/より¥ちち¥だいなごん=どの/の¥おん=わたり¥あん/なる¥ありき/の−べつしよ/とかや/へ/は¥いか/ほど¥ある/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、¥かねやす¥すぐ/に¥しらせ¥たてまつ/て/は、¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、「¥かたみち¥じふにさんにち¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥その−とき¥せうしやう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥につぽん/は¥むかし¥さんじふさん−か−こく/にて¥あり/し/を、¥なかごろ¥ろくじふろく−か−こく/に/は¥わけ/られ/たん/なり。¥さいふ¥びぜん¥びつちう¥びんご/も、¥もと/は¥いつ−こく/にて¥あり/ける/なり。¥また¥あづま/に¥きこゆる¥では¥みちの−くに/も、¥むかし/は¥ろくじふろく−ぐん/が¥いつ−こく/なり/し/を、¥じふにぐん¥さき−わかつ/て¥のち、¥ではの−くに/と/は¥たて/られ/たん/なり。¥され/ば¥さねかたの−ちうじやう¥あうしう/へ¥ながさ/れ/し¥とき、¥たう−ごく/の¥めいしよ、¥あこや/の−まつ/を¥み/ん/とて、¥くに/の¥うち/を¥たづね−まはる/に、¥もとめ−かね/て¥すでに¥むなしう¥かへら/ん/と¥し/ける/が、¥みち/にて¥ある¥らうをう/に¥ゆき−あひ/たり。¥ちうじやう、『¥やや¥ご=へん/は¥ふるい¥ひと/と/こそ¥みれ。¥たう−ごく/の¥めいしよ、¥あこや/の−まつ/と¥いふ¥ところ/や¥しつ/たる』/と¥とふ/に、『¥まつたく¥くに/の¥うち/に/は¥さふらは/ず、¥ではの−くに/に/ぞ¥さふらふ/らん』/と¥まうし/けれ/ば、『¥さて/は¥なんぢ/も¥しら/ざり/けり。¥いま/は¥よ¥すゑ/に¥なつ/て、¥くに/の¥めいしよ/を/も、¥はや¥みな¥よび¥うしなひ/ける/に/こそ』/とて、¥すでに¥すぎ/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥らうをう¥ちうじやう/の¥そで/を¥ひかへ/て、『¥あはれ¥きみ/は、¥
みちのく/の¥あこや/の−まつ/に¥こ−がくれ/て¥いづ/べき¥つき/の¥いで/も¥やら/ぬ/か W008
/と¥いふ¥うた/の¥こころ/を¥もつて、¥たう−ごく/の¥めいしよ、¥あこや/の−まつ/と/は¥おん=たづね¥さふらふ/か。¥それ/は¥むかし¥りやうこく/が¥いつこく/なり/し¥とき、¥よみ¥はんべり/し¥うた/なり。¥じふに−ぐん¥さき−わかつ/て¥のち/は、¥ではの−くに/に/ぞP154¥さふらふ/らん』/と¥まうし/けれ/ば、¥さら/ば/とて¥さねかたの−ちうじやう/も、¥ではの−くに/に¥こえ/て/こそ、¥あこや/の−まつ/を/ば¥み/てげれ。¥つくし/の¥ださいふ/より¥みやこ/へ、¥はらか/の¥つかひ/の¥のぼる/こそ、¥かちぢ¥じふごにち/と/は¥さだめ/た/なれ。¥すでに¥じふにさんにち/と¥まうす/は、¥これ/より¥ほとんど¥ちんぜい/へ¥げかう¥ござんなれ。¥とほし/と¥いふ/とも、¥びぜん¥びつちう¥びんご/の¥あひだ/は、¥りやうさんにち/に/は¥よも¥すぎ/じ。¥ちかい/を¥とほう¥まうす/は、¥ちち¥だいなごん=どの/の¥おん=わたり¥あん/なる¥ところ/を、¥なりつね/に¥しらせ/じ/とて/こそ¥まうす/らめ」/とて、¥その−のち/は¥こひしけれ/ども¥とひ¥たまは/ず。¥
「しんだいなごんのしきよ」(『だいなごんのしきよ』)S0210¥さる−ほど/に¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ、¥たんばの−せうしやう−なりつね、¥へい−はうぐわん−やすより、¥これ¥さん−にん/を/ば、¥さつまがた¥きかいがしま/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥かの¥しま/へ/は¥みやこ/を¥いで/て、¥はるばる/と¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのい/で¥ゆく¥ところ/なり。¥おぼろ=げ/にて/は¥ふね/も¥かよは/ず、¥しま/に/は¥ひと¥まれ/なり/けり。¥おのづから¥ひと/は¥あれ/ども、¥いしやう¥なけれ/ば、¥この¥ど/の¥ひと/に/も¥に/ず、¥いふ¥ことば/を/も¥きき−しら/ず。¥み/に/は¥しきり/に¥け¥おひ/つつ、¥いろ¥くろう/して¥うし/の/ごとし。¥をとこ/は¥ゑぼし/も¥き/ず、¥をんな/は¥かみ/も¥さげ/ざり/けり。¥しよく−する¥もの/も¥なけれ/ば、¥つねに¥ただ¥せつしやう/を/のみ¥さき/と¥す。¥しづがやまだ/を¥かへさ/ね/ば、¥べいこく/の¥るゐ/も¥なく、¥その/の¥くは/を¥とら/ざれ/ば、P155¥けんばく/の¥たぐひ/も¥なかり/けり。¥しま/の¥うち/に/は¥たかき¥やま¥あり。¥とこしなへ/に¥ひ¥もゆ。¥いわう/と¥いふ¥もの¥みち−みて/り。¥かるがゆゑ/に/こそ¥いわう/が−しま/と/は¥なづけ/たれ。¥いかづち¥つね/に、¥なり−あがり、¥なり−くだり、¥ふもと/に/は¥あめ¥しげし。¥いち−にち¥へんし¥ひと/の¥いのち/の¥たえ/て¥ある/べき¥やう/も¥なし。¥しん−だいなごん/は¥すこし¥くつろぐ¥こと/も/や/と¥おもは/れ/ける/が、¥しそく¥たんばの−せうしやう−なりつね¥いげ¥さん−にん、¥さつまがた¥きかいがしま/へ¥ながさ/れ/ぬ/と¥きい/て、¥いま/は¥なに/を/か¥ごす/べき/とて、¥しゆつけ/の¥こころざし/の¥さふらふ¥よし/を、¥たより/に¥つけ/て、¥こまつ=どの/へ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/へ¥うかがひ¥まうし/て、¥ごめん¥あり/けり。¥えいぐわ/の¥たもと/を¥ひき−かへ/て、¥うき−よ/を¥よそ/に¥すみぞめ/の¥そで/に/ぞ¥やつれ¥たまひ/ける。¥さる−ほど/に¥だいなごん/の¥きたのかた/は、¥みやこ/の¥きたやま¥うんりんゐん/の¥へん/に¥しのう/で¥おはし/ける/が、¥さら/ぬ/だに、¥すみ−なれ/ぬ¥ところ/は¥もの−うき/に、¥いとど¥しのば/れ/けれ/ば、¥すぎ−ゆく¥つきひ/を¥あかし−かね、¥くらし−わづらふ¥さま/なり/けり。¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥おほかり/けれ/ども、¥あるひは¥よ/を¥おそれ、¥あるひは¥ひとめ/を¥つつむ/ほど/に、¥とひ−とぶらふ¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥され/ども¥その¥なか/に¥げん−ざゑもん/の−じよう−のぶとし/と¥いふ¥さぶらひ¥いち−にん、¥なさけ−ある¥もの/にて、¥つね/は¥とぶらひ¥たてまつる。¥ある−とき¥きたのかた、¥のぶとし/を¥めし/て、「¥まことや¥これ/に/は、¥びぜん/の−こじま/に¥おはし/ける/が、¥この−ほど¥きけ/ば、¥ありき/の−べつしよ/とかや/に¥おはす/なり。¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥はかなき¥ふで/の¥あと/を/も¥たてまつり、¥おん=かへりごと/を/も¥いま−いちど¥み/ばや/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥のぶとし¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥われ¥えうせう/の¥とき/より、¥おん=あはれみ/を¥かうぶつ/て¥めし−つかは/れ、P156¥かたとき/も¥はなれ¥まゐらせ¥さふらは/ず。¥
めさ/れ¥まゐらせ/し¥おん=こゑ/の¥みみ/に¥とどまり、¥いさめ/られ¥まゐらせ/し¥おん=ことば/の¥きも/に¥めいじ/て、¥わするる¥こと/も¥さふらは/ず。¥さいこく/へ¥おん=くだり¥さふらひ/し¥とき/も、¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらひ/しか/ども、¥ろくはら/より¥ゆるされ¥なけれ/ば、¥ちから¥および¥さふらは/ず。¥たとひ¥こんど/は¥いか/なる¥うき−め/に/も¥あひ¥さふらへ、¥おん=ふみ¥たまはつ/て¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥やがて¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も¥めんめん/に¥おん=ふみ¥あり。¥のぶとし¥この¥おん=ふみ=ども/を¥たまはつ/て、¥はるばる/と¥びぜんの−くに¥ありき/の−べつしよ/へ¥たづね−くだり、¥まづ¥あづかり/の−ぶし¥なんばの−じらう−つねとほ/に、¥あんない/を¥いひ−いれ/たり/けれ/ば、¥つねとほ¥こころざし/の/ほど/を¥かんじ/て、¥やがて¥おん=げんざん/に¥いれ/てげり。¥だいなごん−にふだう=どの/は、¥ただいま/しも¥みやこ/の¥こと/を/のみ¥のたまひ−いだし/て、¥なげき−しづん/で¥おはし/ける¥ところ/に、「¥きやう/より¥のぶとし/が¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいなごん¥おき−あがつ/て、「¥いか/に/や−いか/に、¥ゆめ/か/や¥うつつ/か、¥これ/へ¥これ/へ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥のぶとし¥おん=そば¥ちかう¥まゐつ/て、¥おん=ありさま/を¥み¥たてまつる/に、¥まづ¥おん=すまひどころ/の¥もの−う−さ/は、¥さる−こと/なり。¥すみぞめ/の¥おん=そで/を¥み¥たてまつる/に、¥め/も¥くれ¥こころ/も¥きえ−はて/て、¥なみだ/も¥さら/に¥とどまら/ず。¥やや¥あつ/て¥なみだ/を¥おさへ/て、¥きたのかた/の¥おほせ¥かうぶつ/し¥しだい、¥こまごま/と¥かたり¥まうす。¥その−のち¥おん=ふみ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、¥みづぐき/の¥あと/は¥なみだ/に¥かき−くれ/て、¥そこはか/と/は¥みえ/ね/ども、¥をさなき¥ひとびと/の¥あまり/に¥こひ−かなしみ¥たまふ¥ありさま、¥わが−み/も¥つきせ/ぬ¥もの−おもひ/に、¥たへ−しのぶ/べう/も¥なし/など¥かか/れ/たれ/ば、¥ひごろ/の¥こひし−さ/は¥こと/の−かず/なら/ず/と/ぞ¥かなしみ¥たまひ/ける。P157¥
かくて¥しごにち/も¥すぎ/しか/ば、¥のぶとし、「¥これ/に¥さふらひ/て、¥ご=さいご/の¥おん=ありさま/を/も¥み¥まゐらせ/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥あづかり/の−ぶし、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を¥まうす¥あひだ、¥だいなごん、「¥いく−ほど/も¥のび/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に¥ただ¥とう¥かへれ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。「¥われ/は¥ちかう¥うしなは/れ/ん/と¥おぼゆる/ぞ。¥この−よ/に¥なき¥もの/と¥きか/ば、¥わが¥のち/の−よ/を¥よく¥とぶらへ/よ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥おん=ぺんじ¥かい/て¥たう/だり/けれ/ば、¥のぶとし¥これ/を¥たまはつ/て、「¥また/こそ¥まゐり¥さふらは/め」/とて、¥いとま¥まうし/て¥いで/けれ/ば、「¥なんぢ/が¥また¥こ/ん¥たび/を¥まち−つく/べし/と/も¥おぼえ/ぬ/ぞ。¥あまり/に¥なごり−をしう¥おぼゆる/に、¥しばし−しばし」/と¥のたまひ/て、¥たびたび¥よび/ぞ¥かへさ/れ/ける。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥のぶとし¥なみだ/を¥おさへ/つつ、¥みやこ/へ¥かへり−のぼり/けり。¥きたのかた/に、¥おん=ぺんじ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまへ/ば、¥はや¥おん=さま¥かへ/させ¥たまひ/たり/と¥おぼしく/て、¥おん=ふみ/の¥おく/に¥おん=ぐし/の¥ひとふさ¥あり/ける/を、¥ふため/と/も¥み¥たまは/ず、¥かたみ/こそ¥いま/は¥なかなか¥あだ/なれ/とて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も、¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。¥さる−ほど/に¥おなじき−はちぐわつ−じふくにち、¥だいなごん−にふだう=どの/を/ば、¥びぜん¥びつちう/の¥さかひ、¥にはせ/の−がう、¥きび/の−なかやま、¥ありき/の−べつしよ/にて/ぞ¥つひに¥うしなひ¥たてまつる。¥その¥さいご/の¥ありさま¥やうやう/に/ぞ¥きこえ/ける。¥はじめ/は¥さけ/に¥どく/を¥いれ/て¥まゐらせ/けれ/ども、¥かなは/ざり/けれ/ば、¥にぢやう/ばかり¥あり/ける¥きし/の¥した/に¥ひし/を¥うゑ/て、¥つき−おとし¥たてまつれ/ば、¥ひし/に¥つらぬかつ/て/ぞ¥うせ/られ/ける。¥むげ/に¥うたてき¥こと=ども/なり。¥ためし¥すくなう/ぞ¥きこえ/し。P158¥
きたのかた¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥かはら/ぬ¥すがた/を、¥いま−いちど¥み/も¥し、¥みえ/ばや/と¥おもひ/て/こそ、¥けふ/まで¥さま/を/ば¥かへ/ざり/つれ。¥いま/は¥なに/に/かは¥せ/ん」/とて、¥ぼだいゐん/と¥いふ¥てら/に¥おはし/て、¥おん=さま/を¥かへ、¥かた/の/ごとく/の¥ぶつじ¥いとなみ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥この¥きたのかた/と¥まうす/は、¥やましろの−かみ−あつかた/の¥むすめ、¥ごしらかはの−ほふわう/の¥おん=おもひびと、¥ならび−なき¥びじん/にて¥おはし/ける/を、¥この¥だいなごん¥あり−がたき¥ご=ちようあい/の¥ひと/にて、¥くだし¥たまはら/れ/たり/ける/とかや。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も、¥めんめん/に¥はな/を¥たをり、¥あか/の−みづ/を¥むすん/で、¥ちち/の¥ごせ/を¥とぶらひ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥かくて¥とき¥うつり¥こと¥さつ/て、¥よ/の¥かはり−ゆく¥ありまさ/は、¥ただ¥てんにん/の¥ごすゐ/に¥こと/なら/ず。¥
「とくだいじのいつくしままうで」(『とくだいじのさた』)S0211¥ここ/に¥とくだいじの−だいなごん−じつていの−きやう/は、¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/に¥だいしやう/を¥こえ/られ/て、¥しばらく¥よ/の¥なら/ん¥やう/を¥み/ん/とて、¥だいなごん/を¥じし/て¥ろうきよ−し/て¥おはし/ける/が、¥しゆつけ−せ/ん/と¥のたまへ/ば、¥み=うち/の¥じやうげ¥みな¥なげき−かなしび−あへ/り/けり。¥その¥なか/に¥とう−くらんど/の−たいふ−しげかぬ/と¥いふ¥しよだいぶ¥あり。¥しよじ/に¥こころ−え/たる¥ひと/にて¥あり/ける/が、¥ある¥つき/の¥よ、¥とくだいじ=どの¥ただ¥いち−にん、¥なんめん/の¥み=かうし¥あげ/させ、¥つき/に¥うそぶい/て¥おはし/ける¥ところ/へ、¥とう−くらんど¥まゐり/たり。P159「¥た/そ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥しげかぬ¥ざふらふ」。「¥よ/は¥はるか/に¥ふけ/ぬ/らん/に、¥いか/に¥ただいま¥なにごと/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥こんや/は¥つき¥さえ、¥よろづ¥こころ/の¥すむ¥まま/に¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥とくだいじ=どの、「¥しんべう/に/も¥まゐり/たり。¥まことに¥こよひ/は¥なに/と/やらん¥こころ−ぼそう/て、¥よ/に¥とぜん/なる/に」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥さて¥むかし−いま/の¥ものがたり=ども¥し¥たまひ/て¥のち、¥だいなごん¥のたまひ/ける/は、「¥つらつら¥へいけ/の¥はんじやう−する¥ありさま/を¥みる/に、¥ちやくし¥しげもり、¥じなん¥むねもり、¥さう/の−だいしやう/なり。¥やがて¥さんなん¥とももり、¥ちやくそん¥これもり/も¥ある/ぞ/かし。¥かれ/も¥これ/も¥しだい/に/なら/ば、¥たけ/の¥ひとびと/は、¥いつ¥だいしやう/に¥あたり−つく/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥され/ば¥つひ/の¥こと/なり、¥しゆつけ−せ/ん」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥とう−くらんど¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥きみ/の¥ご=しゆつけ¥さふらは/ば、¥み=うち/の¥じやうげ¥みな¥まどひもの/と¥なり¥さふらひ/な/んず。¥しげかぬ/こそ、¥このごろ¥めづらしき¥こと/を¥あんじ−いだし/て¥さふらへ。¥たとへば¥あきの−いつくしま/を/ば、¥へいけ¥なのめ/なら/ず¥あがめ−うやまは/れ¥さふらふ。¥これ/へ¥おん=まゐり¥さふらへ/かし。¥かの¥やしろ/に/は¥ないし/とて、¥いう/なる¥まひひめ¥あまた¥さふらふ/なれ/ば、¥めづらしく¥おもひ¥まゐらせ/て、¥もてなし¥まゐらせ¥さふらは/んず/らん。¥なにごと/の¥ごきせい/やらん/と¥たづね¥まうし¥さふらは/ば、¥あり/の−まま/に¥おほせ¥さふらふ/べし。¥さて¥おん=げかう/の¥とき、¥むねと/の¥ないし¥いちりやう−にん、¥みやこ/まで¥めし−ぐせ/させ¥たまひ/て¥さふらは/ば、¥さだめて¥にしはちでう/の−てい/へ/ぞ¥まゐり¥さふらは/んず/らん。¥にふだう¥なにごと/ぞ/と¥たづね¥まうさ/れ¥さふらは/ば、¥あり/の−まま/に/ぞ¥まうし¥さふらは/んず/らん。¥にふだう/は¥きはめて¥もの−めで−し¥たまふ¥ひと/なれ/ば、¥しかる/べき¥はからひ/も¥あん/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥とくだいじ=どの、「P160¥
これ/こそ¥おもひ−よら/ざり/つれ。¥さら/ば¥やがて¥まゐら/ん」/とて¥にはか/に¥しやうじん¥はじめ/つつ、¥いつくしま/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥げに/も¥いう/なる¥まひひめ=ども¥おほかり/けり。「¥
そもそも¥たうしや/へ/は、¥われ=ら/が¥しう/の、¥へいけ/の¥きんだち=たち/こそ、¥おん=まゐり¥さぶらふ/に、¥これ/こそ¥めづらしき¥おん=まゐり/にて¥さぶらへ」/とて、¥むねと/の¥ないし¥じふ−よ−にん、¥よる¥ひる¥つきそひ¥まゐらせ/て、¥やうやう/に¥もてなし¥たてまつる。¥さて¥ないし=ども、「¥なにごと/の¥ご=きせい/やらん」/と¥たづね¥さふらへ/ば、「¥だいしやう/を¥ひと/に¥こえ/られ/て、¥その¥いのり/の¥ため/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥いちしち−にち¥ご=さんろう¥あつ/て、¥かぐら/を¥そうし、¥ふうぞく、¥さいばら¥うたは/る。¥その¥あひだ/に¥ぶがく/も¥さん−か−ど/まで¥あり/けり。¥さて¥おん=げかう/の¥とき、¥むねと/の¥ないし¥じふ−よ−にん、¥ふね¥おし−たて/て、¥ひとひぢ¥おくり¥たてまつる。¥とくだいじ=どの、「¥あまり/に¥なごり−をしき/に、¥いま¥ひとひぢ、¥いま¥ふつかぢ」/と¥のたまひ/て、¥みやこ/まで¥めし−ぐせ/させ¥たまひ、¥とくだいじ/の¥てい/へ¥いれ/させ¥おはしまし、¥やうやう/に¥もてなし、¥さまざま/の¥ひきでもの¥たう/で¥かへさ/れ/けり。¥ないし=ども、「¥はるばる¥これ/まで¥のぼり/たら/んずる/に、¥いかで/か¥われ=ら/が¥しう/の、¥へいけ/へ¥まゐら/で¥ある/べき/か」/とて、¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん−し¥たまひ/て、「¥いか/に¥ないし=ども/は、¥ただいま¥なにごと/の¥れつさん/ぞ/や」/と¥のたまへ/ば、「¥とくだいじ=どの/の¥いつくしま/へ¥おん=まゐり¥さぶらふ/ほど/に、¥われ=ら/が¥ふね/を¥したて/て、¥ひとひぢ¥おくり¥まゐらせ/て、¥それ/より¥いとま¥まうし/けれ/ば、¥とくだいじ=どの、¥さり/とて/は¥なごり−をしき/に、¥いま¥ひとひぢ、¥いま¥ふつかぢ/と¥おほせ/られ/て、¥これ/まで¥めし−ぐせ/られ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥にふだう、「¥とくだいじ/はP161¥なにごと/の¥きせい/に、¥いつくしま/へ/は¥まゐら/れ/ける/やらん」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥だいしやう/を¥ひと/に¥こえ/られ/て、¥その¥いのり/の¥ため/と/こそ¥おほせ¥はんべり/つれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥その−とき¥にふだう¥おほき/に¥うち−うなづい/て、「¥わうじやう/に¥さ/しも¥あらた/なる¥れいぶつ−れいしや/の¥いくら/も¥まします/を¥さし−おい/て、¥じやうかい/が¥あがめ¥たてまつる¥いつくしま/へ¥はるばる/と¥まゐら/れ/ける/こそ¥いとほしけれ。¥それ−ほど/まで¥せつ/なら/ん¥うへ/は」/とて、¥ちやくし¥しげもり¥ないだいじん/の−さだいしやう/にて¥おはし/ける/を¥じせ/させ¥たてまつり、¥じなん¥むねもり¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥おはし/ける/を¥こえ/させ/て、¥とくだいじ/を¥さだいしやう/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥あはれ¥かしこき¥はからひ/かな。¥しん−だいなごん/も、¥かやう/の¥はかりごと/を/ば¥し¥たまは/で、¥よし−なき¥むほん¥おこし/て、¥わが−み/も¥しそん/も、¥ほろび/ぬる/こそ¥うたてけれ。¥
「さんもんめつばう」(『さんもんめつばう だうじゆかつせん』)S0212¥さる−ほど/に、¥ほふわう/は¥みゐでら/の¥こうけん−そうじやう/を¥ご=しはん/と/して、¥しんごん/の¥ひほふ/を¥でんじゆ−せ/させ¥おはします。¥だいにちきやう、¥こんがうちやうきやう、¥そしつぢきやう、¥この¥さんぶ/の¥ひきやう/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥くぐわつ−よつかのひ、¥みゐでら/にて¥ご=くわんぢやう¥ある/べき¥よし¥きこゆ。¥さんもん/の¥だいしゆ¥いきどほり¥まうし/ける/は、「¥むかし/より¥ご=くわんぢやう¥おん=じゆかい、¥みな¥たうざん/に/して¥とげ/させ¥たまふ¥こと¥せんぎ/なり。P162¥なかんづく¥さんわう/の¥けだう/は、¥じゆかい¥くわんぢやう/の¥ため/なり。¥しかる/を¥いま¥みゐでら/にて¥とげ/させ¥おはしまさ/ば、¥てら/を¥いつかう¥やき−はらふ/べし」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ほふわう、「¥これ¥むやく/なり」/とて、¥おん=けぎやう/ばかり¥ご=けつぐわん¥あつ/て、¥ご=くわんぢやう/を/ば¥おぼしめし¥とどまら/せ¥たまひ/けり。¥され/ども¥ご=ほんい/なれ/ば/とて、¥こうけん−そうじやう/を¥めし−ぐし/つつ、¥てんわうじ/へ¥ご=かう¥なつ/て、¥ごちくわうゐん/を¥たて、¥かめゐ/の¥みづ/を¥ごびやう/の¥ちすゐ/と¥さだめ、¥ぶつぽふ¥さいしよ/の¥れいち/にて/ぞ、¥でんぽふ−くわんぢやう/を/ば¥とげ/させ¥おはします。¥さんもん/の¥さうどう/を¥しづめ/られ/ん/が¥ため/に、¥みゐでら/にて¥ご=くわんぢやう/は¥なかり/しか/ども、¥さんもん/に/は¥だうじゆ¥がくしやう、¥ふくわい/の¥こと¥いで−き/て、¥かつせん¥どど/に¥およぶ。¥まいど/に¥がくりよ¥うち−おとさ/る。¥さんもん/の¥めつばう、¥てうか/の¥おん=だいじ/と/ぞ¥みえ/し。¥だうじゆ/と¥いふ/は、¥がくしやう/の¥しよじう/なり/ける¥わらんべ/の、¥ほふし/に¥なり/たる/や、¥もしは¥ちうげん−ぼふし=ばら/にて/も/や¥あり/けん。¥ひととせ¥こんがうじゆゐん/の¥ざす、¥かくじん−ごん−そうじやう¥ぢさん/の¥とき、¥さんたふ/に¥けつばん−し/て、¥げしゆ/と¥かうし/て¥ほとけ/に¥はな¥まゐらせ/し¥もの=ども/なり。¥しかる/を¥きんねん¥ぎやうにん/とて、¥だいしゆ/を/も¥こと/と/も¥せ/ず、¥かく¥どど/の¥いくさ/に¥うち−かち/ぬ。¥だうじゆ=ら¥ししゆ/の¥めい/を¥そむい/て、¥すでに¥むほん/を¥くはだつ、¥すみやか/に¥ちうばつ−せ/らる/べき¥よし、¥だいしゆ¥くげ/へ¥そうもん−し、¥ぶけ/に¥ふれ−うつたふ。¥これ/に¥よつ/て¥にふだう−しやうこく¥ゐんぜん/を¥うけたまはつ/て、¥きの−くに/の¥ぢうにん、¥ゆあさの−ごん/の−かみ−むねしげ¥いげ、¥きない/の¥つはもの¥にせん−よ−にん、¥だいしゆ/に¥さし−そへ/て、¥だうじゆ/を¥せめ/らる。¥だうじゆ¥ひごろ/は¥とうやう−ばう/に¥あり/ける/が、¥これ/を¥きい/て、¥あふみの−くに¥さんが/の−しやう/に¥げかう−し/て、¥すた/の¥せい/を¥そつし/て¥また¥とうざん−し、¥さういざか/にP163¥じやうくわく/を¥かまへ/て¥たて−こもる。¥おなじき−くぐわつ−はつかのひ/の¥たつ/の−いつてん/に、¥だいしゆ¥さんぜんにん、¥くわんぐん¥にせん−よ−にん、¥つがふ¥その¥せい¥ごせん−よ−にん、¥さういざか/に¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥じやう/の¥うち/より¥いしゆみ¥はづし−かけ/たり/けれ/ば、¥だいしゆ¥くわんぐん¥かず/を¥つくし/て¥うた/れ/に/けり。¥だいしゆ/は¥くわんぐん/を¥さきだて/ん/と¥す、¥くわんぐん/は¥また¥だいしゆ/を¥さきだて/ん/と¥あらそふ/ほど/に、¥こころごころ/に¥なつ/て、¥はかばかしう/も¥たたかは/ず。¥だうじゆ/に¥かたらふ¥あくたう/と¥いふ/は、¥しよ−こく/の¥せつたう¥がうたう¥さんぞく¥かいぞく=ら/なり。¥よくしん¥しじやう/に/して、¥ししやう¥ふち/の¥やつ=ばら/なり/けれ/ば、¥われ¥いち−にん/と¥おもひ−きつ/て¥たたかふ/ほど/に、¥こんど/も¥また¥がくしやう¥いくさ/に¥まけ/に/けり。¥
(『さんもんめつばう』)S0213¥その−のち/は¥さんもん¥いよいよ¥あれ−はて/て、¥じふに−ぜんじゆ/の¥ほか/は、¥しぢう/の¥そうりよ¥まれ/なり。¥たにだに/の¥かうえん¥まめつ−し/て、¥だうだう/の¥ぎやうぼふ/も¥たいてん−す。¥しゆがく/の¥まど/を¥とぢ、¥ざぜん/の¥ゆか/を¥むなしう¥せ/り。¥しけう−ごじ/の¥はる/の¥はな/も¥にほは/ず、¥さんだい−そくぜ/の¥あき/の¥つき/も¥くもれ/り。¥さんびやく−よ−さい/の¥ほふとう/を¥かかぐる¥ひと/も¥なく、¥ろくじ−ふだん/の¥かう/の¥けぶり/も¥たえ/や¥し/に/けん。¥だうじや¥たかく¥そびえ/て、¥さんぢう/の¥かまへ/を¥せいかん/の¥うち/に¥さし−はさみ、¥とうりやう¥はるか/に¥ひいで/て、¥しめん/の¥たるき/を¥はくぶ/の¥あひだ/に¥かけ/たり/き。¥され/ども¥いま/は¥くぶつ/を¥みね/の¥あらし/に¥まかせ、¥きんよう/を¥こうれき/に¥うるほし、¥よる/の¥つき¥ともしび/を¥かかげ/て、¥のき/の¥ひま/より¥もり、¥あかつき/の¥つゆ¥たま/を¥たれ/て、¥れんざ/の¥よそほひ/を¥そふ/とかや。¥それ¥まつだい/の¥ぞく/に¥いたつ/て/は、¥さんごく/の¥ぶつぽふ/も¥しだいに¥すゐび−せ/り。¥とほく¥てんぢく/に¥ぶつせき/を¥とぶらふ/に、¥むかし¥ほとけ/の¥のり/を¥とき¥たまひ/し¥ちくりん−しやうじや、¥ぎつこどくをん/も、¥このごろ/は¥こらう−やかん/のP164¥すみか/と¥なつ/て、¥いしずゑ/のみ/や¥のこる/らん。¥はくろち/に/は¥みづ¥たえ/て、¥くさ/のみ¥ふかく¥しげれ/り。¥たいぼん¥げじよう/の¥そとば/も¥こけ/のみ¥むし/て¥かたぶき/ぬ。¥しんだん/に/も¥てんだいさん、¥ごだいさん、¥はくばじ、¥ぎよくせんじ/も、¥いま/は¥ぢうりよ¥なき¥さま/に¥あれ−はて/て、¥だいせうじよう/の¥ほふもん/も、¥はこ/の¥そこ/に/や¥くち/ぬ/らん。¥わが¥てう/に/も¥なんと/の¥しちだいじ¥あれ−はて/て、¥はつしう¥くしう/も¥あと¥たえ、¥あたご¥たかを/も、¥むかし/は¥だうたふ¥のき/を¥ならべ/たり/しか/ども、¥いち−や/の¥うち/に¥あれ−はて/て、¥てんぐ/の¥すみか/と¥なり−はて/ぬ。¥され/ば/に/や、¥さ/しも¥やんごとなかり/つる¥てんだい/の¥ぶつぽふ/も、¥ぢしよう/の¥いま/に¥およん/で、¥ほろび−はて/ぬる/に/や。¥こころ−ある¥ひと/の¥なげき−かなしま/ぬ/は¥なかり/けり。¥なにもの/の¥しわざ/にて/や¥あり/けん、¥りさん−し/ける¥そう/の¥ばう/の¥はしら/に、¥いつしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/たる。¥
いのり−こ/し¥わが¥たつ¥そま/の¥ひき−かへ/て¥ひと¥なき¥みね/と¥あれ/や¥はて/な/む W009¥
これ/は¥むかし¥でんげう−だいし、¥たうざん¥さうさう/の¥はじめ、¥あのくたらさんみやくさんぼだい/の¥ほとけ=たち/に¥いのり¥まうさ/せ¥たまひ/し¥こと/を、¥いま¥おもひ−いで/て¥よみ/たり/ける/に/や。¥いと¥やさしう/ぞ¥きこえ/し。¥やうか/は¥やくし/の¥ひ/なれ/ども、¥なむ/と¥となふる¥こゑ/も¥せ/ず、¥うづき/は¥すゐじやく/の¥つき/なれ/ども、¥へいはく/を¥ささぐる¥ひと/も¥なく、¥あけ/の−たまがき¥かみ−さび/て、¥しめなは/のみ/や¥のこる/らん。P165
「ぜんくわうじえんしやう」(『ぜんくわうじえんしやう』)S0214¥その−ころ¥しなのの−くに¥ぜんくわうじ¥えんしやう/の¥こと¥あり/けり。¥かの¥によらい/は、¥むかし¥ちうてんぢく¥しやゑこく/に、¥ごしゆ/の¥あくびやう¥おこつ/て、¥じんそう¥おほく¥ほろび/し¥とき、¥ぐわつかいちやうじや/が¥ちせい/に¥よつ/て、¥りゆうぐうじやう/より¥えんぶだごん/を¥え/て、¥ほとけ、¥もくれんちやうじや、¥こころ/を¥ひとつ/に¥し/て、¥い−あらはし¥たまへ/る¥いつ−ちやくしゆ−はん/の¥みだ/の¥さんぞん、¥さんごく¥ぶさう/の¥れいざう/なり。¥ぶつめつど/の¥のち、¥てんぢく/に¥とどまら/せ¥たまふ¥こと¥ごひやく−よ−さい、¥され/ども¥ぶつぽふ¥とうぜん/の¥ことわり/にて、¥はくさいこく/に¥うつら/せ¥たまひ/て、¥いつせんざい/の¥のち、¥はくさい/の¥みかど¥せいめいわう、¥わが¥てう/の¥みかど¥きんめい−てんわう/の¥ぎよ=う/に¥および/て、¥かの¥くに/より¥この¥くに/へ¥うつら/せ¥たまひ/て、¥つの−くに¥なんば/の−うら/に/して、¥せいざう/を¥おくら/せ¥おはします。¥つねに¥こんじき/の¥ひかり/を¥はなた/せ¥たまふ。¥これ/に¥よつ/て¥ねんがう/を/ば¥こんくわう/と¥かうす。¥おなじき−さんねん−さんぐわつ−じやうじゆん/に、¥しなのの−くに/の¥ぢうにん¥おほみ/の¥ほんだ−よしみつ、¥みやこ/へ¥のぼり、¥によらい/に¥あひ¥たてまつり、¥やがて¥いざなひ¥まゐらせ/て¥くだり/ける/が、¥ひる/は¥よしみつ¥によらい/を¥おひ¥たてまつり、¥よる/は¥よしみつ¥によらい/に¥おは/れ¥たてまつ/て、¥しなのの−くに/へ¥くだり、¥みのち/の−こほり/に¥あんぢ−し¥たてまつ/し/より¥この−かた、¥せいざう/は¥ごひやくはちじふ−よ−さい、¥され/ども¥えんしやう/は¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥わうぼふ¥つきん/とて/は、¥ぶつぽふ¥まづ¥ばうず/と¥いへ/り。¥され/ば/に/や、¥さ/しも¥やんごとなかり/つる¥れいじP166¥れいさん/の¥おほく¥ほろび−うせ/ぬる¥こと/は、¥わうぼふ/の¥すゑ/に¥なり/ぬる¥ぜんべう/やらん/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥
「やすよりのつと」(『やすよりのつと』)S0215¥さる−ほど/に¥きかいがしま/の¥るにん=ども、¥つゆ/の−いのち¥くさば/の¥すゑ/に¥かかつ/て、¥をしむ/べし/と/に/は¥あら/ね/ども、¥たんばの−せうしやう/の¥しうと¥へい−さいしやう−のりもり/の¥りやう、¥ひぜんの−くに¥かせ/の−しやう/より、¥いしよく/を¥つねに¥おくら/れ/たり/けれ/ば、¥それ/にて/ぞ¥しゆんくわん/も¥やすより/も¥いのち¥いき/て/は¥すごし/ける。¥なか/に/も¥やすより/は¥ながさ/れ/し¥とき、¥すはう/の¥むろづみ/にて¥しゆつけ−し/てげり。¥ほふみやう/を/ば¥しやうせう/と/こそ¥つい/たり/けれ。¥しゆつけ/は¥もと/より¥のぞみ/なり/けれ/ば、¥
つひに¥かく¥そむき−はて/ける¥よ/の−なか/を¥とく¥すて/ざり/し¥こと/ぞ¥くやしき W010¥
たんばの−せうしやう/と¥やすより−にふだう/は、¥もと/より¥くまの−しんじん/の¥ひとびと/にて¥おはし/けれ/ば、「¥いか/に/も−し/て¥この¥しま/の¥うち/に、¥さん−じよ−ごんげん/を¥くわんじやう−し¥たてまつ/て、¥きらく/の¥こと/を¥いのら/ばや」/と¥いふ/に、¥てんぜい¥この¥しゆんくわん/は、¥ふしん¥だいいち/の¥ひと/にて、¥これ/を¥もちひ/ず、¥ににん/は¥おなじ¥こころ/にて、¥もし¥くまの/に¥に/たる¥ところ/も/や¥ある/と、¥しま/の¥うち/を¥たづね−まはる/に、¥あるひは¥りんたう/の¥たへ/なる¥あり、¥こうきんしう/の¥よそほひ¥しなじな/に、¥あるひは¥うんれい/の¥あやしき¥あり、¥へきらりよう/の¥いろ¥ひとつ/にP167¥あら/ず。¥
やま/の¥けしき、¥き/の¥こだち/に¥いたる/まで、¥ほか/より/も¥なほ¥すぐれ/たり。¥みなみ/を¥のぞめ/ば、¥かい¥まんまん/と/して、¥くも/の¥なみ¥けむり/の¥なみ¥ふかく、¥きた/を¥かへりみれ/ば、¥また¥さんがく/の¥がが/たる/より、¥はくせき/の¥りうすゐ¥みなぎり−おち/たり。¥たき/の¥おと¥こと/に¥すさまじく、¥まつかぜ¥かみ−さび/たる¥すまひ、¥ひれう−ごんげん/の¥おはします¥なち/の−お=やま/に¥さ/も¥に/たり/けり。¥さて/こそ¥やがて、¥そこ/を/ば¥なち/の−お=やま/と/は¥なづけ/けれ。¥この¥みね/は¥しんぐう、¥かれ/は¥ほんぐう、¥これ/は¥そんじやう¥その¥わうじ、¥かの¥わうじ/など、¥わうじ−わうじ/の¥な/を¥まうし/て、¥やすより−にふだう¥せんだち/にて、¥たんばの−せうしやう¥あひ−ぐし/つつ、¥ひ−ごと/に¥くまの−まうで/の¥まね/を¥し/て、¥きらく/の¥こと/を/ぞ¥いのり/ける。「¥なむ−ごんげん−こんがうどうじ、¥ねがは−く/は¥あはれみ/を¥たれ/させ¥おはしまし、¥われ=ら/を¥いま−いちど¥こきやう/へ¥かへし−いれ/させ¥たまひ/て、¥さいし/を/も¥みせ/しめ¥たまへ」/と/ぞ¥いのり/ける。¥ひかず¥つもつ/て、¥たち−かふ/べき¥じやうえ/も¥なけれ/ば、¥あさ/の¥ころも/を¥み/に¥まとひ、¥さはべ/の¥みづ/を¥こり/に¥かい/て/は、¥いはだがは/の¥きよき¥ながれ/と¥おもひ−やり、¥たかき¥ところ/に¥あがつ/て/は、¥ほつしんもん/と/ぞ¥くわんじ/ける。¥
やすより−にふだう/は、¥まゐる¥たび−ごと/に、¥さん−じよ−ごんげん/の¥おん=まへ/にて¥のつと/を¥まうす/に、¥ごへいがみ/も¥なけれ/ば、¥はな/を¥たをつ/て¥ささげ/つつ、「¥ゐ¥あたれ/る¥さいし、¥ぢしよう−ぐわんねん¥ひのとのとり、¥つき/の¥ならび/は¥とつき¥ふたつき、¥ひ/の¥かず¥さんびやくごじふ−よかにち、¥きちにち¥りやうしん/を¥えらん/で、¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく¥につぽん¥だいいち¥だいりやうげん、¥ゆや−さん−じよ−ごんげん、¥ひれう−だい−さつた/の¥けうりやう、¥うづ/の¥ひろまへ/に/して、¥しんじん/の¥だいせしゆ、¥うりん−ふぢはらの−なりつね、¥ならびに¥しやみ−しやうせう、¥いつしん¥しやうじやう/の¥まこと/を¥いたし、¥さん−ごふP168¥さうおう/の¥こころざし/を¥ぬきんで/て、¥つつしん/で¥もつて¥うやまつ/て¥まうす。¥それ¥しようじやう−だい−ぼさつ/は、¥さいど−くかい/の¥けうしゆ、¥さんじん−ゑんまん/の¥かくわう/なり。¥あるひは¥とうばう−じやうるりいわう/の¥しゆ、¥しゆびやう−しつぢよ/の¥によらい/なり。¥あるひは¥なんぱう−ふだらく−のうげ/の¥しゆ、¥にふぢう−げんもん/の¥だいじ、¥にやくわうじ/は¥しやば−せかい/の¥ほんじゆ、¥せむいしや/の¥だいじ、¥ちやうじやう/の¥ぶつめん/を¥げんじ/て、¥しゆじやう/の¥しよぐわん/を¥み/て/しめ¥たまへ/り。¥これ/に¥よつ/て、¥かみ¥いちじん/より¥しも¥ばんみん/に¥いたる/まで、¥あるひは¥げんぜ¥あんをん/の¥ため、¥あるひは¥ごしやう−ぜんしよ/の¥ため/に、¥あした/に/は¥じやうすゐ/を¥むすん/で¥ぼんなう/の¥あか/を¥すすぎ、¥ゆふべ/に/は¥しんざん/に¥むかつ/て¥ほうがう/を¥となふる/に、¥かんおう¥おこたる¥こと¥なし。¥がが/たる¥みね/の¥たかき/を/ば、¥しんとく/の¥たかき/に¥たとへ、¥けんけん/たる¥たに/の¥ふかき/を/ば、¥ぐぜい/の¥ふかき/に¥なぞらへ/て、¥くも/を¥わき/て¥のぼり、¥つゆ/を¥しのい/で¥くだる。¥ここ/に¥りやく/の¥ち/を¥たのま/ずん/ば、¥いかで/か¥あゆみ/を¥けんなん/の¥みち/に¥はこば/ん。¥ごんげん/の¥とく/を¥あふが/ずん/ば、¥なんぞ¥かならず/しも¥いうゑん/の¥さかひ/に¥ましまさ/ん/や。¥よつて¥しようじやう−ごんげん、¥ひれう−だい−さつた、¥おのおの¥しやうれん−じひ/の¥まなじり/を¥あひ−ならべ、¥さ−をしか/の¥おん=みみ/を¥ふり−たて/て、¥われ=ら/が¥むに/の¥たんぜい/を¥ちけん−し/て、¥いちいち/の¥こんし/を¥なふじゆ−し¥たまへ。¥しかれ/ば−すなはち、¥むすぶ¥はやたま/の¥りやう−じよ−ごんげん、¥き/に¥したがつ/て、¥あるひは¥うえん/の¥しゆじやう/を¥みちびき、¥あるひは¥むえん/の¥ぐんるゐ/を¥すくは/ん/が¥ため/に、¥しつぽう−しやうごん/の¥すみか/を¥すて/て、¥はちまんしせん/の¥ひかり/を¥やはらげ、¥ろくだう−さんう/の¥ちり/に¥どうじ¥たまへ/り。¥かるがゆゑに¥ぢやうごふ−やくのうてん、¥ぐぢやうじゆ、¥とくぢやうじゆ/の¥らいはい¥そで/を¥つらね、¥へいはく¥れいてん/を¥ささぐる¥こと¥ひま¥なし。¥にんにく/の¥ころも/を¥かさね、¥かくだう/の¥はな/を¥ささげ/て、¥じんでん/の¥ゆか/を¥うごかし、¥しんじん/の¥みづ/を¥すまし/て、¥りしやう/の¥いけ/を¥たたへ/たり。¥しんめい¥なふじゆ−し¥たまは/ば、P169¥しよぐわん¥なんぞ¥じやうじゆ−せ/ざら/ん。¥あふぎ−ねがは−く/は、¥じふに−しよ−ごんげん、¥おのおの¥りしやう/の¥つばさ/を¥ならべ、¥はるか/に¥くかい/の¥そら/に¥かけ/り、¥させん/の¥うれへ/を¥やすめ/て、¥すみやか/に¥きらく/の¥ほんくわい/を¥とげ/しめ¥たまへ。¥さいはい」/と/ぞ¥やすより¥のつと/を/ば¥まうし/ける。¥
「そとばながし」(『そとばながし』)S0216¥さる−ほど/に¥ににん/の¥ひとびと、¥つね/は¥さん−じよ−ごんげん/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥つや−する¥をり/も¥あり/けり。¥ある¥よ¥ににん¥まゐつ/て、¥よ/も−すがら¥いまやう¥うたひ、¥まひ/なんど¥まひ/て、¥あかつき−がた¥くるし−さ/に、¥ちつと¥うち−まどろみ/たり/つる¥ゆめ/に、¥おき/より¥しろい¥ほ¥かけ/たる¥こ−ぶね/を¥いつそう、¥みぎは/へ¥こぎ−よせ、¥ふね/の¥うち/より¥くれなゐ/の¥はかま¥き/たり/ける¥にようばう=たち、¥にさんじふにん¥なぎさ/に¥あがり、¥つづみ/を¥うち、¥こゑ/を¥ととのへ/て、¥
よろづ/の¥ほとけ/の¥ぐわん/より/も¥せんじゆ/の¥ちかひ/ぞ¥たのもしき¥
かれ/たる¥くさき/も¥たちまち/に¥はな¥さき¥み¥なる/と/こそ¥きけ
/と¥おし−かへし−おし−かへし¥さんべん¥うたひ−すまし/て、¥かき−けす¥やう/に/ぞ¥うせ/に/ける。¥やすより−にふだう¥ゆめ¥さめ/て¥のち、¥きい/の¥おもひ/を¥なし/つつ、「¥いかさま/に/も¥これ/は¥りうじん/の¥けげん/と¥おぼえ¥さふらふ。¥くまの−さん−じよ−ごんげん/の¥うち/に、¥にしのごぜん/と¥まうし¥たてまつる/は、¥ほんぢ¥せんじゆ−くわんおん/にて¥おはします。P170¥りうじん/は¥すなはち¥せんじゆ/の¥にじふはち−ぶ−しゆ/の¥その¥ひとつ/にて¥おはしませ/ば、¥もつて¥ご=なふじゆ/こそ¥たのもしけれ」。¥ある¥よ¥また¥ににん¥まゐつ/て¥つや−し/たり/ける¥ゆめ/に、¥おき/より/も¥ふき−くる¥かぜ/に、¥こ/の−は/を¥ふたつ、¥ににん/が¥たもと/に¥ふき−かけ/たり。¥なんと−なう¥これ/を¥とつ/て¥み/けれ/ば、¥み=くまの/の¥なぎのは/にて/ぞ¥あり/ける。¥かの¥ふたつ/の¥なぎのは/に、¥いつしゆ/の¥うた/を¥むしぐひ/に/こそ¥し/たり/けれ。¥
ちはやぶる¥かみ/に¥いのり/の¥しげ/けれ/ば¥など/か¥みやこ/へ¥かへら/ざる/べき W011¥
やすより−にふだう/は、¥あまり/に¥こきやう/の¥こひしき¥まま/に、¥せめて/の¥はかりごと/に/や、¥せんぼん/の¥そとば/を¥つくり、¥あじ/の¥ぼんじ、¥ねんがう¥つきひ、¥けみやう¥じつみやう、¥にしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/ける。¥
さつまがた¥おき/の¥こじま/に¥われ¥あり/と¥おや/に/は¥つげ/よ¥やへ/の¥しほかぜW012¥
おもひ−やれ¥しばし/と¥おもふ¥たび/だに/も¥なほ¥ふるさと/は¥こひしき/ものを W013¥
これ/を¥うら/に¥もつ/て¥いで/て、「¥なむ−きみやう−ちやうらい、¥ぼんでん¥たいしやく、¥し−だい−てんわう、¥けんらうぢじん、¥わうじやう/の¥ちんじゆ¥しよ=だい−みやうじん、¥べつして/は¥くまのの−ごんげん、¥あきの−いつくしまの−だい−みやうじん、¥せめて/は¥いつぽん/なり/とも、¥みやこ/へ¥つたへ/て¥たべ」/とて、¥おき/つ¥しらなみ/の、¥よせ/て/は¥かへす¥たび−ごと/に、¥そとば/を¥うみ/に/ぞ¥うかべ/ける。¥そとば/は¥つくり−いだす/に¥したがつ/て、¥うみ/に¥いれ/けれ/ば、¥ひかず¥つもれ/ば、¥そとば/の¥かず/も¥つもり/けり。¥その¥もの¥おもふ¥こころ/や¥たより/の¥かぜ/と/も¥なり/たり/けん、¥また¥しんめい−ぶつだ/も/や¥おくら/せ¥たまひ/たり/けん、¥せんぼん/の¥そとば/の¥なか/に、¥いつぽん¥あきの−くに¥いつくしまの−だい−みやうじん/の¥お=まへ/の¥なぎさ/に¥うち−あげ/たり。P171¥
ここに¥やすより−にふだう/が¥ゆかり¥あり/ける¥そう/の、¥もし¥しかる/べき¥たより/も¥あら/ば、¥かの¥しま/へ¥わたつ/て、¥その¥ゆくへ/を/も¥たづね/ん/とて、¥さいこく−しゆぎやう/に¥いで/たり/ける/が、¥まづ¥いつくしま/へ/ぞ¥まゐり/ける。¥ここに¥みやうど/と¥おぼしく/て、¥かりぎぬ−しやうぞく/なる¥ぞく¥いち−にん¥いで−き/たり。¥この¥そう¥なんと−なう¥ものがたり/を¥し/ける/ほど/に、「¥それ¥しんめい/は、¥わくわう−どうぢん/の¥りしやう、¥さまざま/なり/と/は¥まうせ/ども、¥なか/に/も¥この¥おんかみ/は、¥いか/なる¥いんえん/を¥もつて、¥かいまん/の¥うろくづ/に¥えん/を/ば¥むすば/せ¥たまふ/らん」/と¥とひ¥たてまつれ/ば、¥みやうど¥こたへ/て¥いはく、「¥それ/は/よな、¥しやかつらりうわう/の¥だいさん/の¥ひめみや、¥たいざうかい/の¥すゐじやく/なり」。¥この¥しま/へ¥ごやうがう¥あり/し¥はじめ/より、¥さいど−りしやう/の¥いま/に¥いたる/まで、¥じんじん¥きどく/の¥こと=ども/を/ぞ¥かたり/ける。¥され/ば/に/や、¥はつしや/の¥ご=てん¥いらか/を¥ならべ、¥やしろ/は¥わだづみ/の¥ほとり/なれ/ば、¥しほ/の¥みちひ/に¥つき/ぞ¥すむ。¥しほ¥みち−くれ/ば、¥おほどりゐ、¥あけ/の−たまがき、¥るり/の/ごとし。¥しほ¥ひき/ぬれ/ば、¥なつ/の¥よ/なれ/ども、¥お=まへ/の¥しらす/に¥しも/ぞ¥おく。¥この¥そう¥いよいよ¥たつとく¥おもひ、¥しづか/に¥ほつせ¥まゐらせ/て¥ゐ/たり/ける/が、¥やうやう¥ひ¥くれ¥つき¥さし−いで/て、¥しほ/の¥みち−くる/に、¥おき/より¥そこはかと−なく¥ゆら/れ¥より/ける¥もくづ=ども/の¥なか/に、¥そとば/の¥かた/の¥みえ/ける/を、¥なんと−なう¥これ/を¥とつ/て¥み/けれ/ば、「¥さつまがた¥おき/の¥こじま/に¥われ¥あり」/と、¥かき−ながせ/る¥こと/の−は/なり。¥もじ/を/ば¥ゑり−いれ¥きざみ−つけ/たり/けれ/ば、¥なみ/に/も¥あらは/れ/ず、¥あざあざ/と/して/こそ¥みえ/たり/けれ。¥
この¥そう¥ふしぎ/の¥おもひ/を¥なし、¥おひ/の¥かた/に¥さし/て、¥みやこ/へ¥かへり−のぼり、¥やすより−にふだう/がP172¥らうぼ/の¥にこう、¥さいし=ども/の、¥いちでう/の¥きた、¥むらさきの/と¥いふ¥ところ/に¥しのび/つつ¥かくれ−ゐ/たり/ける/に、¥これ/を¥みせ/たり/けれ/ば、「¥さら/ば、¥この¥そとば/が、¥もろこし/の¥かた/へ/も¥ゆら/れ¥ゆか/ず/して、¥なに¥し/に¥これ/まで¥つたへ−き/て、¥いまさら¥もの/を¥おもは/す/らん」/と/ぞ¥かなしみ/ける。¥はるか/の¥えいぶん/に¥およん/で、¥ほふわう¥これ/を¥えいらん¥あつ/て、「¥あな¥むざん、¥この¥もの=ども/が¥いのち/の¥いまだ¥いき/て¥ある/に/こそ」/とて、¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ/ぞ¥かたじけなき。¥これ/を¥こまつの−おとど/の¥もと/へ¥つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥ちち/の¥ぜんもん/に¥みせ¥たてまつら/る。¥かきのもとの−ひとまる/は、¥しまがくれ−ゆく¥ふね/を¥おもひ、¥やまべの−あかひと/は、¥あしべ/の¥たづ/を¥ながめ¥たまふ。¥すみよしの−みやうじん/は、¥かた−そぎ/の¥おもひ/を¥なし、¥みわの−みやうじん/は、¥すぎ−たて/る¥かど/を¥さす。¥むかし¥すさのをのみこと、¥さんじふいちじ/の¥やまとうた/を¥よみ−はじめ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥もろもろ/の¥しんめい−ぶつだ/も、¥かの¥えいぎん/を¥もつて、¥はくせん−ばんたん/の¥おもひ/を¥のべ¥たまふ。¥
「そぶ」¥にふだう/も¥いはき/なら/ね/ば、¥さすが¥あはれ=げ/に/こそ¥のたまひ/けれ。¥(『そぶ』)S0217¥にふだう¥かく¥あはれみ¥たまふ¥うへ/は、¥きやう−ぢう/の¥じやうげ、¥おい/たる/も¥わかき/も、¥きかいがしま/の¥るにん/の¥うた/とて、¥くちずさま/ぬ/は¥なかり/けり。¥せんぼん/まで¥つくり−いだせ/る¥そとば/なれ/ば、¥さ/こそ/は¥ちひさう/も¥あり/けめ、P173¥さつまがた/より¥はるばると¥みやこ/まで¥つたはり/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥あまり/に¥おもふ¥こと/に/は、¥むかし/も¥かく¥しるし¥あり/ける/に/や。¥いにしへ¥かんわう、¥ここく/を¥せめ¥たまひ/し¥とき、¥はじめ/は¥りせうけい/を¥たいしやうぐん/にて、¥さんじふまんぎ/を¥むけ/らる。¥かん/の¥たたかひ¥よわく/して、¥ここく/の¥いくさ¥かち/に/けり。¥あまつさへ¥たいしやうぐん−りせうけい、¥こわう/の¥ため/に¥いけどら/る。¥つぎに¥そぶ/を¥たいしやうぐん/にて、¥ごじふまんぎ/を¥むけ/らる。¥こんど/も¥また¥かん/の¥たたかひ¥よわく/して、¥ここく/の¥いくさ¥かち/に/けり。¥つはもの¥ろくせん−よ−にん¥いけどり/に¥せ/らる。¥その¥なか/に¥そぶ/を¥はじめ/と/して、¥むねと/の¥つはもの¥ろつぴやくさんじふ−よ−にん、¥すぐり−いだい/て、¥いちいち/に¥かたあし/を¥きつ/て¥おつ−ぱな/たる。¥すなはち¥しぬる¥もの/も¥あり、¥ほど¥へ/て¥しする¥もの/も¥あり。¥その¥なか/に¥そぶ/は¥いち−にん¥しな/ざり/けり。¥かたあし/を/ば¥きら/れ/ながら、¥やま/に¥のぼつ/て/は¥このみ/を¥ひろひ、¥さと/に¥いで/て/は¥ねぜり/を¥つみ、¥あき/は¥たづら/の¥おちぼ−ひろひ/なんど¥し/て/ぞ、¥つゆ/の−いのち/を/ば¥すごし/ける。¥た/に¥いくら/も¥あり/ける¥かり=ども、¥そぶ/に¥み−なれ/て¥おそれ/ざり/けれ/ば、¥これ=ら/は¥みな¥わが¥こきやう/へ¥かよふ¥もの/ぞ/かし/と¥なつかしく/て、¥おもふ¥こと¥ひとふで¥かい/て、「¥あひ−かまへ/て¥これ¥かんわう/に¥え/させよ」/と¥いひ−ふくめ/て、¥かり/の¥つばさ/に¥むすび−つけ/て/ぞ¥はなち/ける。¥
かひがひしく/も¥たのも/の¥かり、¥あき/は¥かならず¥こしぢ/より¥みやこ/へ¥かよふ¥もの/なる/に、¥かん/の¥せうてい¥しやうりんゑん/に¥ぎよ=いう¥あり/し/に、¥ゆうざれ/の¥そら¥うす−くもり、¥なにと−なく¥もの−あはれ/なり/ける¥をりふし、¥ひとつら/の¥かり¥とび−わたる。¥その¥なか/より¥がん¥ひとつ¥とび−さがつ/て、¥おの/が¥つばさ/に¥むすび−つけ/たるP174¥たまづさ/を、¥くひ−きつ/て/ぞ¥おとし/ける。¥くわんにん¥これ/を¥とつ/て、¥みかど/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥ひらい/て¥えいらん¥ある/に、「¥むかし/は¥がんくつ/の¥ほら/に¥こめ/られ/て¥さんしゆん/の¥しうたん/を¥おくり、¥いま/は¥くわうでん/の¥うね/に¥すて/られ/て、¥こてき/の¥いつそく/と¥なれ/り。¥たとひ¥かばね/は¥こ/の¥ち/に¥ちらす/と¥いふ/とも、¥たましひ/は¥ふたたび¥くんべん/に¥つかへ/ん」/と/ぞ¥かい/たり/ける。¥それ/より/して/こそ、¥ふみ/を/ば¥がんしよ/と/も¥いひ、¥がんさつ/と/も¥また¥なづけ/けれ。「¥あな¥むざん、¥そぶ/が¥ほまれ/の¥あと/なり/けり。¥この¥もの=ども/が¥いのち/の¥いまだ¥いき/て¥ある/に/こそ」/とて、¥りくわう/と¥いふ¥しやうぐん/に¥おほせ/て、¥ひやくまんぎ/を¥むけ/らる。¥こんど/は¥かん/の¥たたかひ¥つよく/して、¥ここく/の¥いくさ¥やぶれ/に/けり。¥み=かた¥たたかひ¥かち/ぬ/と¥きこえ/しか/ば、¥そぶ/は¥くわうや/の¥なか/より¥はひ−いで/て、「¥これ/こそ¥いにしへ/の¥そぶ/よ」/と¥なのる。¥かたあし/は¥きら/れ/ながら、¥じふくねん/の¥せいざう/を¥おくり−むかへ、¥こし/に¥かか/れ/て¥きうり/へ/ぞ¥かへり/ける。¥そぶ/は¥じふろく/の¥とし、¥ここく/へ¥むけ/られ/し¥とき、¥みかど/より¥くだし¥たまはつ/たり/ける¥はた/を/ば、¥まい/て¥み/を¥はなた/ず¥もち/たり/し/を、¥いま¥とり−いだい/て、¥みかど/の¥ご=げんざん/に¥いれ/たり/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥かんたん¥なのめ/なら/ず。¥そぶ/は¥きみ/の¥おん=ため/に¥たいこう¥ならび−なかり/しか/ば、¥だいこく¥あまた¥たまはつ/て、¥その−うへ、¥てんしよくこく/と¥いふ¥つかさ/を/ぞ¥くださ/れ/ける。¥あまつさへ¥りせうけい/は、¥ここく/に¥とどまつ/て¥つひに¥かへら/ず。¥いか/に/も−し/て¥かんてう/へ¥かへら/ん/と/のみ¥なげき/けれ/ども、¥こわう¥ゆるさ/ね/ば¥ちから¥およば/ず。¥かんわう¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しり¥たまは/ず、¥りせうけい/は¥きみ/の¥おん=ため/に、¥すでに¥ふちう/なる¥もの/なり/とて、¥むなしく¥なれ/る¥にしん/が¥かばね/を¥ほり−おこし/て¥うた/せ/らる。P175¥その−ほか¥ろくしん/を¥みな¥つみ−せ/らる。¥りせうけい¥この¥よし/を¥つたへ−きい/て、¥うらみ¥ふかう/ぞ¥なり/に/ける。¥さり/ながら/も¥なほ¥こきやう/を¥こひ/つつ、¥まつたく¥ふちう¥なき¥よし/を、¥いつくわん/の¥しよ/に¥つくつ/て、¥みかど/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥かんわう¥これ/を¥えいらん¥あつ/て、「¥さて/は¥ふちう¥なかり/けり。¥ふびん/なる¥こと¥ござんなれ」/とて、¥ふぼ/が¥かばね/を¥ほり−おこし/て¥うた/せ/られ/たり/ける¥こと/を/ぞ、¥かへつて¥くやしみ¥たまひ/ける。¥かんか/の¥そぶは、¥しよ/を¥かり/の¥つばさ/に¥つけ/て¥きうり/へ¥おくり、¥ほんてう/の¥やすより/は、¥なみ/の¥たより/に¥うた/を¥こきやう/へ¥つたふ。¥かれ/は¥いつぴつ/の¥すさみ、¥これ/は¥にしゆ/の¥うた、¥かれ/は¥じやうだい、¥これ/は¥まつだい、¥ここく¥きかいがしま、¥さかひ/を¥へだて/て、¥よよ/は¥かはれ/ども、¥ふぜい/は¥おなじ¥ふぜい、¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。P176¥

平家物語 巻第三  総かな版(元和九年本)
「ゆるしぶみ」(『ゆるしぶみ』)S0301¥ぢしよう−にねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥ゐん/の−ごしよ/に/は¥はいらい¥おこなは/れ/て、¥よつかのひ¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/けり。¥なにごと/も¥れい/に¥かはり/たる¥こと/は¥なけれ/ども、¥こぞ/の¥なつ¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ、¥きんじゆ/の¥ひとびと¥おほく¥ながし¥うしなは/れ/し¥こと、¥ほふわう¥おん=いきどほり¥いまだ¥やま/ざれ/ば、¥よ/の¥まつりごと/を/も¥よろづ¥もの−うく¥おぼしめし/て、¥おん=こころ−よから/ぬ¥こと=ども/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥だいじやう/の−にふだう/も、¥ただの−くらんど−ゆきつな/が¥つげ−しらせ¥たてまつ/て¥のち/は、¥きみ/を/も¥おん=うしろめたき¥こと/に¥おもひ¥たてまつり、¥うへ/に/は¥こと−なき¥やう/なれ/ども、¥した/に/は¥ようじん−し/て、¥にがわらひ/て/のみ/ぞ¥さふらは/れ/ける。¥なぬかのひ、¥せいせい¥とうばう/に¥いづ。¥しいうき/と/も¥まうす。¥また¥せきき/と/も¥まうす。¥じふはちにち¥ひかり/を¥ます。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ、¥けんれいもんゐん、¥その−とき/は¥いまだ¥ちうぐう/と¥きこえ/させ¥たまひ/し/が、¥ご=なう/とて、¥くも/の¥うへ、¥あめ/が¥した/の¥なげき/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥しよじ/に¥み=どきやう¥はじまり、¥しよしや/へ¥くわんぺいし/をP177¥たて/らる。¥おんやうじゆつ/を¥きはめ、¥いけ¥くすり/を¥つくし、¥だいほふ−ひほふ¥ひとつ/と/して¥のこる¥ところ¥なう¥しゆせ/られ/けり。¥され/ども¥ご=なう¥ただ/に/も¥わたら/せ¥たまは/ず、¥ご=くわいにん/と/ぞ¥きこえ/し。¥しゆしやう/は¥こんねん¥じふはち、¥ちうぐう/は¥にじふに/に¥なら/せ¥たまふ。¥しかれ/ども¥いまだ¥わうじ/も¥ひめみや/も¥いで−き/させ¥たまは/ず。¥もし¥わうじ/にて¥ましまさ/ば、¥いか/に¥めでたから/ん/と、¥へいけ/の¥ひとびと、¥ただいま¥わうじ¥たんじやう¥ある¥やう/に¥まうし/て、¥いさみ−よろこび−あは/れ/けり。¥たけ/の¥ひとびと/も、「¥へいじ/の¥はんじやう¥をり/を¥え/たり。¥わうじ¥ご=たんじやう¥うたがひ¥なし」/と/ぞ¥まうし−あは/れ/ける。¥ご=くわいにん¥さだまら/せ¥たまひ/しか/ば、¥にふだう−しやうこく、¥うげん/の¥かうそう¥きそう/に¥おほせ/て、¥だいほふ−ひほふ/を¥しゆし、¥しやうしゆく−ぶつ−ぼさつ/に¥つけ/て、¥わうじ¥ご=たんじやう/と/のみ¥きせい−せ/らる。¥ろくぐわつ−ひとひのひ、¥ちうぐう¥ご=ちやくたい¥あり/けり。¥にんわじ/の−お=むろ−しゆかく−ほつしんわう、¥いそぎ¥ご=さんだい¥あつ/て、¥くじやくきやう/の−ほふ/を¥もつて¥おん=かじ¥あり。¥てんだい−ざす−かくくわい−ほつしんわう、¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/も¥おなじく¥まゐらせ¥たまひ/て、¥へんじやう−なんし/の−ほふ/を¥しゆせ/られ/けり。¥
かかり/し/ほど/に、¥ちうぐう/は¥つき/の¥かさなる/に¥したがつ/て、¥おん=み/を¥くるしう¥せ/させ¥たまふ。¥ひとたび¥ゑめ/ば¥もも/の¥こび¥あり/けん¥かん/の¥りふじん、¥せうやうでん/の¥やまふ/の¥ゆか/も¥かく/や/と¥おぼえ、¥たう/の¥やうきひ、¥りくわ¥いつし¥はる/の¥あめ/を¥おび、¥ふよう/の¥かぜ/に¥しをれ/つつ、¥ぢよらうくわ/の¥つゆ¥おも=げ/なる/より、¥なほ¥いたはしき¥おん=さま/なり。¥かかる¥ご=なう/の¥をりふし/に¥あはせ/て、¥こはき¥おん=もののけ=ども、¥あまた¥とり−いり¥たてまつる。¥よりまし、¥みやうわう/の¥ばく/に¥かけ/て、¥れい¥あらはれ/たり。¥こと/に/は¥さぬきのゐん/の¥ご=れい、¥うぢの−あく−さふ/の¥ご=おくねん、¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥しりやう、¥さいくわう−ほふし/が¥あくりやう、P178¥きかいがしま/の¥るにん=ども/の¥しやうりやう/なんど/ぞ¥まうし/ける。¥これ/に¥よつ/て、¥しやうりやう/を/も、¥しりやう/を/も、¥なだめ/らる/べし/とて、¥まづ¥さぬきのゐん¥ご=つゐがう¥あつ/て¥しゆとく−てんわう/と¥かうし、¥うぢの−あく−さふ、¥ぞうくわん¥ぞうゐ¥おこなは/れ/て、¥だいじやうだいじん−じやういちゐ/を¥おくら/る。¥ちよくし/は¥せうないき−これもと/と/ぞ¥きこえ/し。¥くだん/の¥むしよ/は、¥やまとの−くに¥そふのかん/の−こほり¥かはかみ/の−むら、¥はんにやの/の¥ごさんまい/なり。¥ほうげん/の¥あき¥ほり−おこい/て¥すて/られ/し¥のち/は、¥しがいみち/の¥ほとり/の¥つち/と¥なつ/て、¥としどし/に¥ただ¥はる/の¥くさ/のみ¥しげれ/り。¥いま¥ちよくし¥たづね−き/て¥せんみやう/を¥よみ/けれ/ば、¥ばうこん¥そんりやう¥いか/に¥うれし/と¥おぼし/けん。¥され/ば¥さはらの−はいたいし/を/ば、¥しゆだう−てんわう/と¥かうし、¥ゐがみの−ないしんわう/を/ば、¥くわうこう/の¥しきゐ/に¥ふくす。¥これ¥みな¥をんりやう/を¥なだめ/られ/し¥はかりごと/と/ぞ¥きこえ/し。¥をんりやう/は、¥むかし/も¥かく¥おそろしかり/し¥こと=ども/なり。¥れんぜいゐん/の¥おん=もの−ぐるはしう¥ましまし、¥くわざんの−ほふわう/の、¥じふぜん/の−ていゐ/を¥すべら/せ¥たまひ/し/は、¥もとかたの−みんぶきやう/が¥れい/なり。¥また¥さんでうのゐん/の¥おん=め/も¥ごらんぜ/られ/ざり/し/は、¥くわんざん−くぶ/が¥れい/とかや。¥かどわきの−さいしやう、¥かやう/の¥こと=ども/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、¥こまつ=どの/に¥まうさ/れ/ける/は、「¥こんど¥ちうぐう¥ご=さん/の¥おん=いのり、¥さまざま/に¥さふらふ/なり。¥なに/と¥まうす/と/も、¥ひじやう/の¥しや/に¥すぎ/たる/ほど/の¥こと¥ある/べし/と/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥なか/に/も¥きかいがしま/の¥るにん=ども/を、¥めし−かへさ/れ/たら/ん/ほど/の¥くどく¥ぜんこん、¥なにごと/か¥さふらふ/べき」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、「¥あの¥たんばの−せうしやう/が¥こと/を、¥かどわきの−さいしやう¥あまり/に¥なげき¥まうす/が¥ふびん/に¥さふらふ。¥ことさら¥ちうぐう¥ご=なう/の¥おん=こと、¥うけたまはり¥およぶ/ごとくん/ば、¥なりちかの−きやう/が¥しりやう/など¥きこえ/てP179¥さふらふ。¥だいなごん/が¥しりやう/を¥なだめ/ん/と¥おぼしめさ/ん/に¥つけ/て/は、¥いき/て¥さふらふ¥せうしやう/を、¥めし/こそ¥かへさ/れ¥さふらは/め。¥ひと/の¥おもひ/を¥やめ/させ¥たまは/ば、¥おぼしめす¥こと/も¥かなひ、¥ひと/の¥ねがひ/を¥かなへ/させ¥ましまさ/ば、¥ご=ぐわん/も¥すなはち¥じやうじゆ−し/て、¥ご=さん¥へいあん¥わうじ¥ご=たんじやう¥あつ/て、¥かもん/の¥えいぐわ¥いよいよ¥さかん/に¥さふらふ/べし」/など¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、¥ひごろ/より¥こと/の−ほか/に¥やはらい/で、「¥さて¥しゆんくわん/や¥やすより−ぼふし/が¥こと/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、「¥それ/も¥おなじう/は¥めし/こそ¥かへさ/れ¥さふらは/め。¥もし¥いち−にん/も¥のこさ/れ/たら/ん/は、¥なかなか¥ざいごふ/たる/べう¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥やすより−ぼふし/が¥こと/は¥さる−こと/なれ/ども、¥しゆんくわん/は¥ずゐぶん¥にふだう/が¥こうじゆ/を¥もつて、¥ひと/と¥なつ/たる¥もの/ぞ/かし。¥それ/に¥ところ/しも/こそ¥おほけれ、¥ひがしやま¥ししのたに、¥わが¥さんざう/に¥より−あひ/て、¥きくわい/の¥ふるまひ=ども/が¥あり/けん/なれ/ば、¥しゆんくわん/が¥こと/は¥おもひ/も¥よら/ず」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥おとど¥かへつ/て¥をぢ/の¥さいしやう/を¥よび¥たてまつ/て、「¥せうしやう/は¥すでに¥しやめん¥ある/べき/で¥さふらふ/ぞ。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥さいしやう¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥なくなく¥て/を¥あはせ/て/ぞ¥よろこば/れ/ける。「¥くだり¥さふらひ/し¥とき/も、¥これ−ほど/の¥こと、¥など/や¥まうし−うけ/ざら/ん/と¥おもひ/たり=げ/にて、¥のりもの/を¥み¥さふらふ¥たび−ごと/に¥なみだ/を¥ながし¥さふらひ/し/が、¥ふびん/に¥さふらふ」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥こまつ=どの、「¥まことに¥さ/こそ/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らめ。¥こ/は¥たれ/とて/も¥かなしけれ/ば、¥よくよく¥まうし¥さふらは/ん」/とて¥いり¥たまひ/ぬ。¥さる−ほど/に¥きかいがしま/の¥るにん=ども/の、¥めし−かへさ/る/べき¥こと¥さだまり/しか/ば、¥にふだう−しやうこく/のP180¥ゆるしぶみ¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。¥お=つかひ¥すでに¥みやこ/を¥たつ。¥さいしやう¥あまり/の¥うれし−さ/に、¥お=つかひ/に¥わたくし/の¥つかひ/を¥そへ/て¥くださ/れ/ける。¥よる/を¥ひる/に¥し¥いそぎ¥くだれ/と¥あり/しか/ども、¥こころ/に¥まかせ/ぬ¥かいろ/なれ/ば、¥なみかぜ/を¥しのい/で¥ゆく/ほど/に、¥みやこ/を/ば(は)¥しちぐわつ−げじゆん/に¥いで/たれ/ども、¥ながつき−はつか−ごろ/に/ぞ、¥きかいがしま/に/は¥つき/に/ける。
「あしずり」(『あしずり』)S0302¥お=つかひ/は¥たんざゑもん/の−じよう−もとやす/と¥いふ¥もの/なり。¥いそぎ¥ふね/より¥あがり、「¥これ/に¥みやこ/より¥ながさ/れ¥たまひ/たり/し¥へい−はんぐわん−やすより−にふだう、¥たんばの−せうしやう=どの/や¥おはす」/と、¥こゑごゑ/に/ぞ¥たづね/ける。¥ににん/の¥ひとびと/は、¥れい/の¥くまのまうで−し/て¥なかり/けり。¥しゆんくわん¥いち−にん¥あり/ける/が、¥これ/を¥きい/て、¥あまり/に¥おもへ/ば¥ゆめ/やらん、¥また¥てんま−はじゆん/の、¥わが¥こころ/を¥たぶらかさ/ん/とて¥いふ/やらん、¥うつつ/と/も¥さらに¥おぼえ/ぬ/ものかな/とて、¥あわて−ふためき、¥はしる/と/も¥なく、¥たふるる/と/も¥なく、¥いそぎ¥お=つかひ/の¥まへ/に¥ゆき−むかつ/て、「¥これ/こそ¥ながさ/れ/たる¥しゆんくわん/よ」/と¥なのり¥たまへ/ば、¥ざつしき/が¥くび/に¥かけ/させ/たる¥ふぶくろ/より、¥にふだう−しやうこく/の¥ゆるしぶみ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、「¥ぢうくわ/は¥をんる/に¥めんず。¥はやく¥きらく/のP181¥おもひ/を¥なす/べし。¥こんど¥ちうぐう¥ご=さん/の¥おん=いのり/に¥よつ/て、¥ひじやう/の¥しや¥おこなは/る。¥しかる−あひだ¥きかいがしま/の¥るにん、¥せうしやう−なりつね、¥やすより−ぼふし¥しやめん」/と/ばかり¥かか/れ/て、¥しゆんくわん/と¥いふ¥もじ/は¥なし。¥らいし/に/ぞ¥ある/らん/とて、¥らいし/を¥みる/に/も¥みえ/ず。¥おく/より¥はし/へ¥よみ、¥はし/より¥おく/へ¥よみ/けれ/ども、¥ににん/と/ばかり¥かか/れ/て、¥さん−にん/と/は¥かか/れ/ず。¥さる−ほど/に¥せうしやう/や¥やすより−ぼふし/も¥いで−き/たり、¥せうしやう/の¥とつ/て¥みる/に/も、¥やすより−ぼふし/が¥よみ/ける/に/も、¥ににん/と/ばかり¥かか/れ/て、¥さん−にん/と/は¥かか/れ/ざり/けり。¥ゆめ/に/こそ¥かかる¥こと/は¥あれ、¥ゆめ/か/と¥おもひ−なさ/ん/と¥すれ/ば¥うつつ/なり、¥うつつ/か/と¥おもへ/ば¥また¥ゆめ/の/ごとし。¥その−うへ¥ににん/の¥ひとびと/の¥もと/へ/は、¥みやこ/より¥ことづて/たる¥ふみ=ども¥いくら/も¥あり/けれ/ども、¥しゆんくわん−そうづ/の¥もと/へ/は、¥こと−とふ¥ふみ¥ひとつ/も¥なし。¥され/ば¥わが¥ゆかり/の¥もの=ども/は、¥みな¥みやこ/の¥うち/に¥あと/を¥とどめ/ず¥なり/に/ける/よ/と、¥おもひ−やる/に/も¥おぼつかなし。「¥そもそも¥われ=ら¥さん−にん/は¥おなじ¥つみ、¥はいしよ/も¥おなじ¥ところ/なり。¥いか/なれ/ば¥しやめん/の¥とき、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て、¥いち−にん¥ここ/に¥のこす/べき。¥へいけ/の¥おもひわすれ/か/や、¥しゆひつ/の¥あやまり/か、¥こ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や」/と、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし/て、¥なき−かなしめ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥そうづ¥せうしやう/の¥たもと/に¥すがり、「¥しゆんくわん/が¥かやう/に¥なる/と¥いふ/も、¥ご=へん/の¥ちち、¥こ=だいなごん=どの/の、¥よし−なき¥むほん/の¥ゆゑ/なり。¥され/ば¥よそ/の¥こと/と¥おもひ¥たまふ/べから/ず。¥ゆるされ¥なけれ/ば、¥みやこ/まで/こそ¥かなは/ず/とも、¥せめて/は¥この¥ふね/に¥のせ/て¥くこく/の¥ぢ/まで¥つけ/て¥たべ。¥おのおの/の¥これ/に¥おはし/つる/ほど/こそ、¥はる/は¥つばくらめ、¥あき/は¥たのも/の¥かり/のP182¥おとづるる¥やう/に、¥おのづから¥こきやう/の¥こと/を/も¥つたへ−きき/つれ。¥いま/より¥のち/は、¥なに/と/して/か¥きく/べき」/とて、¥もだえ−こがれ¥たまひ/けり。¥せうしやう、「¥まことに¥さ/こそ/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らめ。¥われ=ら/が¥めし−かへさ/るる¥うれし−さ/も、¥さる−こと/にて/は¥さふらへ/ども、¥おん=ありさま/を¥み¥たてまつる/に、¥さらに¥ゆく/べき¥そら/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥この¥ふね/に¥うち−のせ¥たてまつ/て、¥のぼり/たう/は¥さふらへ/ども、¥みやこ/の¥お=つかひ、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を¥しきり/に¥まうす。¥その−うへ¥ゆるされ/も¥なき/に、¥さん−にん/ながら¥しま/の¥うち/を¥いで/たり/など¥きこえ¥さふらは/ば、¥なかなか¥あしう¥さふらひ/な/んず。¥なりつね¥まづ¥まかり−のぼつ/て、¥ひとびと/に/も¥よくよく¥まうし−あはせ、¥にふだう−しやうこく/の¥きしよく/を/も¥うかがひ、¥むかひ/に¥ひと/を¥たてまつら/ん。¥その−ほど/は¥ひごろ¥おはし/つる¥やう/に¥おもひ−なし/て¥まち¥たまへ。¥いのち/は¥いか/に/も¥たいせつ/の¥こと/なれ/ば、¥たとひ¥この¥せ/に/こそ¥もれ/させ¥たまふ/とも、¥つひに/は¥など/か¥しやめん¥なく/て¥さふらふ/べき」/と、¥やうやう/に¥なぐさめ−のたまへ/ども、¥そうづ¥たへ−しのぶ/べう/も¥みえ¥たまは/ず。¥さる−ほど/に¥ふね¥いださ/ん/と¥し/けれ/ば、¥そうづ¥ふね/に¥のつ/て/は¥おり/つ、¥おり/て/は¥のつ/つ、¥あらましごと/を/ぞ¥し¥たまひ/ける。¥せうしやう/の¥かたみ/に/は¥よる/の¥ふすま、¥やすより−にふだう/が¥かたみ/に/は、¥いちぶ/の¥ほけきやう/を/ぞ¥とどめ/ける。¥すでに¥ともづな¥とい/て、¥ふね¥おし−いだせ/ば、¥そうづ¥つな/に¥とり−つき、¥こし/に¥なり、¥わき/に¥なり、¥たけ/の¥たつ/まで/は、¥ひか/れ/て¥いづ。¥たけ/も¥およば/ず¥なり/けれ/ば、¥そうづ¥ふね/に¥とり−つき、「¥さて¥いか/に¥おのおの¥しゆんくわん/を/ば¥つひに¥すて−はて¥たまふ/か。¥ひごろ/の¥なさけ/も¥いま/は¥なに¥なら/ず。¥ゆるされ¥なけれ/ば¥みやこ/まで/こそ¥かなは/ず/とも、P183¥せめて/は¥この¥ふね/に¥のせ/て¥くこく/の¥ち/まで」/と、¥くどか/れ/けれ/ども、¥みやこ/の¥お=つかひ、「¥いか/に/も¥かなひ¥さふらふ/まじ」/とて、¥とり−つき¥たまひ/つる¥て/を¥ひき−のけ/て、¥ふね/を/ば¥つひに¥こぎ−いだす。¥そうづ¥せんかた−なさ/に、¥なぎさ/に¥あがり¥たふれ−ふし、¥をさなき¥もの/の¥めのと/や¥はは/など/を¥したふ¥やう/に、¥あしずり/を¥し/て、「¥これ¥のせ/て¥ゆけ、¥ぐし/て¥ゆけ」/と¥のたまひ/て、¥をめき−さけび¥たまへ/ども、¥こぎ−ゆく¥ふね/の¥ならひ/にて、¥あと/は¥しらなみ/ばかり/なり。¥いまだ¥とほから/ぬ¥ふね/なれ/ども、¥なみだ/に¥くれ/て¥みえ/ざり/けれ/ば、¥そうづ¥たかき¥ところ/に¥はしり−あがり、¥おき/の¥かた/を/ぞ¥まねき/ける。¥かの¥まつらさよひめ/が¥もろこし−ぶね/を¥したひ/つつ¥ひれ¥ふり/けん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥さる−ほど/に¥ふね/も¥こぎ−かくれ、¥ひ/も¥くるれ/ども、¥そうづ¥あやし/の¥ふしど/へ/も¥かへら/ず、¥なみ/に¥あし¥うち−あらは/せ、¥つゆ/に¥しをれ/て、¥その¥よ/は¥そこ/に/ぞ¥あかし/ける。¥さり/とも¥せうしやう/は¥なさけ−ふかき¥ひと/なれ/ば、¥よき¥やう/に¥まうす¥こと/も/や/と、¥たのみ/を¥かけ/て、¥その¥せ/に¥み/を/も¥なげ/ざり/し¥こころ/の¥うち/こそ¥はかなけれ。¥むかし¥さうり¥そくり/が、¥かいがんさん/へ¥はなた/れ/たり/けん¥かなしみ/も、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。P184
「ごさんのまき」(『ごさん』)S0303¥さる−ほど/に¥ににん/の¥ひとびと/は、¥きかいがしま/を¥いで/て、¥ひぜんの−くに¥かせ/の−しやう/に/ぞ¥つき¥たまふ。¥さいしやう¥きやう/より¥ひと/を¥くだし/て、「¥とし/の¥うち/は¥なみかぜ/も¥はげしう、¥みち/の¥あひだ/も¥おぼつかなう¥さふらへ/ば、¥はる/に¥なつ/て¥のぼら/れ¥さふらへ」/と¥あり/しか/ば、¥せうしやう¥かせ/の−しやう/にて¥とし/を¥くらす。¥さる−ほど/に¥おなじき−じふいちぐわつ−じふににち/の¥とら/の−こく/より、¥ちうぐう¥ご=さん/の¥け¥まします/とて、¥きやう−ぢう¥ろくはら¥ひしめき−あへ/り。¥ご=さんじよ/は¥ろくはら¥いけ=どの/にて¥あり/けれ/ば、¥ほふわう/も¥ご=かう¥なる。¥くわんばく=どの/を¥はじめ¥たてまつ/て¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥すべて¥よ/に¥ひと/と¥かぞへ/られ、¥くわん−かかい/に¥のぞみ/を¥かけ、¥しよたい¥しよしよく/を¥たい−する/ほど/の¥ひと/の、¥いち−にん/も¥もるる/は¥なかり/けり。¥せんれい/も¥にようご¥きさき¥ご=さん/の¥とき/に¥のぞん/で¥だいしや¥あり/き。¥だいぢ−にねん−くぐわつ−ひとひのひ、¥たいけんもんゐん¥ご=さん/の¥とき、¥だいしや¥おこなは/るる¥こと¥あり/けり。¥こんど/も¥その¥れい/とて、¥ひじやう/の¥だいしや¥おこなは/れ/て、¥ぢうくわ/の¥ともがら¥おほく¥ゆるさ/れ/ける¥なか/に、¥この¥しゆんくわん−そうづ¥いち−にん、¥しやめん¥なかり/ける¥こと/こそ¥うたてけれ。¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥ましまさ/ば、¥やはた¥ひらの、¥おほはらの/なんど/へ¥ぎやうげい¥ある/べき¥よし、¥ご=りふぐわん¥あり。¥せんげん−ほふいん¥うけたまはつ/て、¥これ/を¥けいびやく−すP185。¥しんじや/は¥だい−じんぐう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥にじふ−よ−か−しよ、¥ぶつじ/は¥とうだいじ¥こうぶくじ¥いげ¥じふろく−か−しよ/へ¥み=じゆきやう¥あり。¥み=じゆきやう/の¥お=つかひ/は、¥みや/の¥さぶらひ/の¥なか/に、¥うくわん/の¥ともがら¥これ/を¥つとむ。¥ひやうもん/の¥かりぎぬ/に¥たいけん−し/たる¥もの=ども/が、¥いろいろ/の¥み=じゆぎやうもつ、¥ぎよ=けん¥ぎよ=い/を¥もち−つづい/て、¥ひがし/の¥たい/より¥なんてい/を¥わたつ/て、¥にし/の¥ちうもん/に¥いづ。¥めでたかり/し¥けんぶつ/なり。¥
こまつの−おとど/は、¥れい/の¥ぜんあく/に¥つき/て¥さわぎ¥たまは/ぬ¥ひと/にて¥おはし/けれ/ば、¥はるか/に¥ほど¥へ/て¥のち、¥ちやくし¥ごん/の−すけ−せうしやう−これもり¥いげ/の¥きんだち/の¥くるま=ども¥やり−つづけ/させ、¥いろいろ/の¥ぎよ=い¥しじふりやう、¥ぎんけん¥ななつ、¥ひろぶた/に¥おか/せ、¥お=むま¥じふにひき¥ひか/せ/て¥まゐらせ/らる。¥これ/は、¥くわんこう/に¥じやうとうもんゐん¥ご=さん/の¥とき、¥み=だう=どの/の¥お=むま¥まゐらせ/られ/し¥その¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥おとど/は¥ちうぐう/の¥おん=せうと/にて¥おはし/ける¥うへ、¥とりわき¥ふし/の¥おん=ちぎり/なれ/ば、¥お=むま¥まゐらせ¥たまふ/も¥ことわり/なり。¥また¥ごでうの−だいなごん−くにつなの−きやう/も、¥お=むま¥にひき¥まゐらせ/らる。「¥こころざし/の¥いたり/か、¥とく/の¥あまり/か」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥なほ¥いせ/より¥はじめ¥たてまつ/て、¥あきの−いつくしま/に¥いたる/まで、¥しちじふ−よ−か−しよ/へ¥じんめ/を¥たて/らる。¥だいり/に/も¥れう/の−お=むま/に¥しで¥つけ/て、¥すうじつぴき¥ひつ−たて/たり。¥にんわじ/の−お=むろ−しゆかく−ほつしんわう/は¥くじやくきやう/の−ほふ、¥てんだい−ざす−かくくわい−ほつしんわう/は¥しちぶつやくし/の−ほふ、¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/は¥こんがうどうじ/の−ほふ、¥その−ほか¥ごだいこくうざう、¥ろくくわんおん、¥いちじきんりん、¥ごだん/の−ほふ、¥ろくじかりん、¥はちじもんじゆ、¥ふげんえんめい/に¥いたる/まで、¥のこる¥ところ¥なう¥しゆせ/られ/けり。¥ごま/の¥けぶり¥ごしよ−ぢう/に¥みち/て、¥れい/の¥こゑP186¥くも/を¥ひびか/し、¥しゆほふ/の¥こゑ¥み/の−け¥よだつ/て、¥いか/なる¥おん=もののけ/なり/とも、¥なに¥おもて/を¥むかふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。¥なほ¥ぶつしよ/の¥ほふいん/に¥おほせ/て、¥ごしん−とうじん/の¥やくし¥ならび/に¥ごだいそん/の¥ざう/を¥つくり−はじめ/らる。¥かかり/しか/ども、¥ちうぐう/は¥ひま−なく¥しきら/せ¥たまふ/ばかり/にて、¥ご=さん/も¥とみ/に¥なり−やら/ず。¥にふだう−しやうこく、¥にゐ=どの、¥むね/に¥て/を¥おい/て、「¥こ/は¥いかが−せ/ん、¥いか/に−せ/ん」/と/ぞ¥あきれ¥たまふ。¥ひと/の¥もの¥まうし/けれ/ども、「¥ただ¥と/も−かう/も、¥よき¥やう/に¥よき¥やう/に」/と/ばかり/ぞ¥のたまひ/ける。「¥あはれ¥じやうかい、¥いくさ/の¥ぢん/なら/ば、¥さり/とも¥これ−ほど/まで/は¥おくせ/じ/ものを」/と/ぞ、¥のち/に/は¥のたまひ/ける。¥
おん=げんじや/に/は、¥ばうかく¥しやううん¥りやう−そうじやう、¥しゆんげう−ほふいん、¥がうぜん¥じつせん¥りやう−そうづ、¥おのおの¥そうが/の¥く=ども¥あげ、¥ほんじ¥ほんざん/の¥さんぽう、¥ねんらい¥しよぢ/の¥ほんぞん=たち、¥せめ−ふせ−せめ−ふせ¥もま/れ/けれ/ば、¥まことに¥さ/こそ/は/と¥おぼえ/て¥たつとかり/ける¥なか/に、¥をりふし¥ほふわう/は、¥いまぐまの/へ、¥ご=かう¥なる/べき/にて、¥おん=しやうじん/の¥ついで/なり/ける/が、¥きんちやう¥ちかく¥ござ¥あつ/て、¥せんじゆきやう/を¥うち−あげ−うち−あげ¥あそばさ/れ/ける/に/ぞ、¥いま¥ひときは¥こと¥かはつ/て、¥さ/しも¥をどり−くるひ/ける¥おん=よりまし=ども/が¥ばく/も、¥しばらく¥うち−しづめ/けり。¥ほふわう¥おほせ/なり/ける/は、「¥たとひ¥いか/なる¥おん=もののけ/なり/とも、¥この¥おい−ぼふし/が¥かくて¥さふらは/ん/に/は、¥いかで/か¥ちかづき¥たてまつる/べき。¥なかんずく¥いま¥あらはるる¥ところ/の¥をんりやう/は¥みな¥わが¥てうおん/を¥もつて¥ひと/と¥なり/たる¥もの/ぞ/かし。¥たとひ¥はうしや/の¥こころ/を/こそ¥ぞんぜ/ず/とも、¥いかで/か¥あに¥しやうげ/を¥なす/べき/やP187。¥すみやか/に¥まかり−しりぞき¥さふらへ」/とて、「¥によにん¥しやうさん−し−がたから/ん¥とき/に¥のぞん/で、¥じやま−しやしやう−し、¥く¥しのび−がたから/ん/に/も、¥こころ/を¥いたし/て¥だいひじゆ/を¥しようじゆ−せ/ば、¥きしん¥たいさん−し/て、¥あんらく/に¥しやうぜ/ん」/と¥あそばい/て、¥みな¥ずゐしやう/の¥おん=ずず/を¥おし−もま/せ¥たまへ/ば、¥ご=さん¥へいあん/のみ/なら/ず、¥わうじ/にて/こそ¥ましまし/けれ。¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥ちうぐう/の−すけ/にて¥おはし/ける/が、¥ぎよれん/の¥うち/より¥つと¥いで/て、「¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥さふらふ/ぞ」/と¥たからか/に¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥くわんばく−まつ=どの、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥おのおの/の¥じよじゆ、¥おんやう/の−かみ、¥てんやく/の−かみ、¥すはい/の¥おん=げんじや、¥すべて¥たうしやう−たうか、¥いちどう/に¥あつ/と¥よろこび−あは/れ/ける¥こゑ/は、¥もんぐわい/まで/も¥どよみ/て、¥しばし/は¥しづまり/も¥やら/ざり/けり。¥にふだう−しやうこく¥うれし−さ/の¥あまり/に、¥こゑ/を¥あげ/て/ぞ¥なか/れ/ける。¥よろこびなき/と/は、¥これ/を¥いふ/べき/に/や。¥こまつの−おとど/は、¥いそぎ¥ちうぐう/の¥おん=かた/へ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥きんせん¥くじふく−もん、¥わうじ/の¥おん=まくら/に¥おい/て、「¥てん/を¥もつて/は¥ちち/と¥し、¥ち/を¥もつて/は¥はは/と¥さだめ¥たまふ/べし。¥おん=いのち/は¥はうし¥とうばうさく/が¥よはひ/を¥たもち、¥おん=こころ/に/は¥てんせうだいじん¥いり−かはら/せ¥たまへ」/とて¥くは/の−ゆみ¥よもぎ/の−や/を¥もつて、¥てんち¥しはう/を¥い/させ/らる。P188¥
「くぎやうそろへ」(『くぎやうぞろへ』)S0304¥おん=ち/に/は¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥きたのかた/と¥さだめ/られ/たり/しか/ども、¥さんぬる¥しちぐわつ/に¥なんざん/を¥し/て¥うせ¥たまひ/しか/ば、¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/の¥きたのかた/ぞ、¥おん=ち/に/は¥まゐらせ¥たまふ。¥のち/に/は¥そつのすけ=どの/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥ほふわう¥やがて¥くわんぎよ¥あり。¥もんぜん/に¥おん=くるま/を¥たて/られ/たり。¥にふだう−しやうこく¥うれし−さ/の¥あまり/に、¥こがね¥いつせんりやう、¥ふじ/の¥わた¥にせんりやう、¥ほふわう/へ¥しんじやう−せ/らる。「¥これ¥また¥しかる/べから/ず」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥こんど/の¥ご=さん/に¥しようし¥あまた¥あり。¥まづ¥ほふわう/の¥おん=げんじや、¥つぎ/に¥きさき¥ご=さん/の¥とき、¥ご=てん/の¥むね/より¥こしき/を¥まろばかす¥こと¥あり/けり。¥わうじ¥ご=たんじやう/に/は¥みなみ/へ¥おとし、¥くわうによ¥たんじやう/に/は¥きた/へ¥おとす/を、¥これ/は¥きた/へ¥おとさ/れ/たり/けれ/ば、¥いか/に/と¥さわぎ、¥とり−あげ、¥おとし−なほさ/れ/たり/けれ/ども、¥なほ¥あしき¥こと/に/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥をかしかり/し/は、¥にふだう−しやうこく/の¥あきれざま、¥めでたかり/し/は¥こまつの−おとど/の¥ふるまひ、¥ほい−なかり/し/は、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の、¥さいあい/の¥きたのかた/に¥おくれ¥たまひ/て、¥だいなごん¥だいしやう¥りやう−しよく/を¥じし/て、¥ろうきよ−せ/られ/し¥こと、¥きやうだい¥とも/に¥しゆつし¥あら/ば、¥いか/に¥めでたから/ん。P189¥つぎ/に¥しちにん/の¥おんやうじ¥まゐつ/て、¥せんど/の¥お=はらひ¥つかまつる。¥その¥なか/に¥かもん/の−かみ−ときはる/と¥いふ¥らうしや¥あり。¥しよじう/など/も¥ぼくせう/なり/ける/が、¥あまり/に¥ひと¥おほく¥まゐり−つどひ、¥たかんな/を¥こみ、¥たうま¥ちくゐ/の/ごとし。「¥やくにん/ぞ、¥あけ/られ¥さふらへ」/とて、¥おほぜい/の¥なか/を¥おし−わけ−おし−わけ¥まゐる/ほど/に、¥いかが/は¥し/たり/けん、¥みぎ/の¥くつ/を¥ふみ−ぬか/れ/て、¥そこ/にて¥ちつ/と¥たち−やすらふ/が、¥あまつさへ¥かぶり/を/さへ¥つき−おとさ/れ/て、¥さ/ばかり/の¥みぎり/に、¥そくたい¥ただしき¥らうしや/が、¥もとどり¥はなし/て¥ねり−いで/たり/けれ/ば、¥わかき¥くぎやう−てんじやうびと/は¥こらへ/ず/して、¥いちど/に¥どつと/ぞ¥わらは/れ/ける。¥おんやうじ/など¥いふ/は、¥へんばい/とて¥あし/を/も¥あだ/に¥ふま/ず/と/こそ¥うけたまはれ。¥その−ほか¥ふしぎ=ども/の¥あり/ける/を、¥その−とき/は¥なに/と/も¥おぼえ/ざり/けれ/ども、¥のち/に/は¥おもひ−あは/する¥こと=ども/は¥おほかり/けり。¥
ご=さん/に¥よつ/て¥ろくはら/へ¥まゐらせ¥たまふ¥ひとびと、¥くわんばく−まつ=どの、¥だいじやうだいじん−めうおんゐん、¥さだいじん−おほひのみかど、¥うだいじん−つきのわ=どの、¥ないだいじん−こまつ=どの、¥さだいしやう−じつてい、¥げん−だいなごん−さだふさ、¥さんでうの−だいなごん−さねふさ、¥ごでうの−だいなごん−くにつな、¥とう−だいなごん−さねくに、¥あぜつし−すけかた、¥なかのみかどの−ちうなごん−むねいへ、¥くわざんのゐん/の−ちうなごん−かねまさ、¥げん−ぢうなごん−がらい、¥ごん−ぢうなごん−さねつな、¥とう−ちうなごん−すけなが、¥いけの−ちうなごん−よりもり、¥さゑもん/の−かみ−ときただ、¥べつたう−ただちか、¥ひだん/の−さいしやう/の−ちうじやう−さねいへ、¥みぎ/の−さいしやう/の−ちうじやう−さねむね、¥しん−ざいしやう/の−ちうじやう−みちちか、¥へい−ざいしやう−のりもり、¥ろくかくの−さいしやう−いへみち、¥ほりかはの−さいしやう−よりさだ、¥さだいべん/の−さいしやう−ながかた、¥うだいべん/の−さんみ−としつね、¥さひやうゑ/の−かみ−しげのり、¥うひやうゑ/の−かみ−みつよし、¥くわうだいこうくう/の−だいぶ−ともかた、¥さきやう/の−だいぶ−ながのり、¥だざい/の−だいに−ちかのぶ、¥しん−ざんみ−さねきよ、¥いじやう¥さんじふさん−にん、P190¥うだいべん/の¥ほか/は¥ちよくい/なり。¥ふさん/の¥ひとびと/に/は、¥くわざんのゐん/の¥さきの−だいじやうだいじん−ただまさ=こう、¥おほみやの−だいなごん−たかすゑの−きやう¥いげ¥じふ−よ−にん、¥ごにち/に¥ほうい¥ちやくし/て、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/へ¥まゐり−むかは/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「だいたふこんりふ」(『だいたふこんりふ』)S0305¥み=しほ/の¥けちぐわん/に/は¥けんじやう=ども¥おこなは/る。¥にんわじ/の−お=むろ/は¥とうじ¥しゆざう−せ/らる/べき/なり。¥ごしちにち/の¥み=しほ、¥たいげん/の−ほふ¥ならび/に¥くわんぢやう、¥こうぎやう−せ/らる/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥おん=でし¥ゑんりやう−ほふげん、¥ほふいん/に¥なさ/る。¥ざすのみや/は、¥にほん¥ならび/に¥ぎつしや/の¥せんじ/を¥まうさ/せ¥たまふ/を、¥お=むろ¥ささへ¥まうさ/せ¥たまふ/に¥よつ/て、¥おん=でし¥かくせい−そうづ、¥ほふいん/に¥なさ/る。¥その−ほか/の¥けんじやう=ども¥まうきよ/に¥いとま¥あら/ず/と/ぞ¥きこえ/し。¥ひかず¥へ/に/けれ/ば、¥ちうぐう/は¥ろくはら/より¥だいり/へ¥かへり−まゐらせ¥たまふ。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ、¥きさき/に¥たた/せ¥たまふ¥うへ/は、¥あはれ¥とく/して、¥この¥おん=はら/に¥わうじ¥ご=たんじやう¥あれ/かし、¥くらゐ/に¥つけ¥たてまつ/て、¥ふうふ¥とも/に¥ぐわいそぶ、¥ぐわいそぼ/と¥あふが/れ/ん/と¥ねがは/れ/ける/が、¥あがめ¥たてまつる¥いつくしま/へ¥まうさ/ん/とて、¥つき−まうで/を¥はじめ/て、¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ば/に/や、¥ちうぐう¥やがて¥ご=くわいにん¥あり/て、¥ご=さん¥へいあん¥わうじ¥ご=たんじやう¥ましまし/ける/こそ¥めでたけれ。P191¥そもそも¥へいけ¥あきの−いつくしま/を、¥しんじ−はじめ/られ/ける¥こと/を¥いか/に/と¥いふ/に、¥きよもり=こう¥いまだ¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥あきの−くに/を¥もつて、¥かうや/の¥だいたふ¥しゆり−せ/られ/ける/に、¥わたなべの−ゑんどう−ろくらう−よりかた/を¥ざつしやう/に¥つけ/られ/て、¥ろくねん/に¥しゆり¥をはり/ぬ。¥しゆり¥をはつ/て¥のち、¥きよもり¥かうや/へ¥のぼり、¥だいたふ¥をがみ、¥おく/の¥ゐん/へ¥まゐら/れ/ける/に、¥いづく/より¥きたる/と/も¥なく、¥らうそう/の¥はくはつ/なる/が、¥まゆ/に/は¥しも/を¥たれ、¥ひたひ/に¥なみ/を¥たたみ、¥かせづゑ/の¥ふたまた/なる/に¥すがつ/て、¥いで−き¥たまへ/り。¥この¥そう¥なに/と−なう¥ものがたり/を¥し/ける/ほど/に、「¥それ¥わが−やま/は、¥むかし/より¥みつしう/を¥ひかへ/て¥たいてん¥なし。¥てんが/に¥また/も¥さふらは/ず。¥だいたふ¥すでに¥しゆり¥をはり¥さふらひ/たり。¥それ/に¥つき¥さふらう/て/は、¥ゑちぜんの−けひのみや/と¥あきの−いつくしま/は、¥りやうがい/の¥すゐじやく/にて¥さふらふ/が、¥けひのみや/は¥さかえ/たれ/ども、¥いつくしま/は¥なき/が/ごとく/に¥あれ−はて/て¥さふらふ。¥あはれ¥おなじう/は、¥この¥ついで/に¥そうもん−し/て、¥しゆり−せ/させ¥たまへ/かし。¥さ/だに/も¥さふらは/ば、¥くわん−かかい/は¥かた/を¥ならぶる¥ひと、¥てんが/に¥また/も¥ある/まじき/ぞ」/とて¥たた/れ/けり。¥
この¥らうそう/の¥ゐ¥たまへ/る¥ところ/に、¥いきやう¥すなはち¥くん−じ/たり。¥ひと/を¥つけ/て¥みせ/らるる/に、¥さんぢやう/ばかり/は¥みえ¥たまひ/て、¥その−のち/は¥かき−けす¥やう/に¥うせ¥たまひ/ぬ。¥これ¥ただびと/に¥あら/ず、¥だいし/にて¥ましまし/けり/と、¥いよいよ¥たつとく¥おぼえ/て、¥しやば−せかい/の¥おもひで/に/とて、¥かうや/の¥こんだう/に¥まんだら/を¥かか/れ/ける/が、¥さいまんだら/を/ば、¥じやうみやう−ほふいん/と¥いふ¥ゑし/に¥かか/せ/らる。¥とうまんだら/を/ば、¥きよもり¥かか/ん/とて、¥じひつ/に¥かか/れ/ける/が、¥はちえふ/の¥ちうぞん/の¥ほうくわん/を/ば、¥いかが¥おもは/れ/けん、¥わが¥かうべ/の¥ち/を¥いだい/て¥かか/れ/ける/と/ぞP192¥きこえ/し。¥その−のち¥みやこ/へ¥のぼり¥ゐんざん−し/て、¥この¥よし/を¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥ぎよ=かん¥あり/けり。¥なほ¥にん/を¥のべ/られ/て、¥いつくしま/を/も¥しゆり−せ/らる。¥とりゐ/を¥たて−かへ、¥やしろやしろ/を¥つくり−かへ、¥ひやくはちじつ−けん/の¥くわいらう/を/ぞ¥つくら/れ/ける。¥しゆり¥をはつ/て¥のち、¥きよもり¥いつくしま/へ¥まゐり、¥つや−せ/られ/たり/ける¥ゆめ/に、¥ご=ほうでん/の¥み=と¥おし−ひらき、¥びんづら¥ゆう/たる¥てんどう/の¥いで/て、「¥われ/は¥これ¥だい−みやうじん/の¥お=つかひ/なり。¥なんぢ¥この¥けん/を¥もつて、¥てうか/の¥おん=かため/たる/べし」/とて、¥しろがね/の¥ひるまき−し/たる¥こなぎなた/を¥たまはる/と¥いふ¥ゆめ/を¥み/て、¥さめ/て¥のち¥み¥たまへ/ば、¥うつつ/に¥まくらがみ/に/ぞ¥たつ/たり/ける。¥さて¥だい−みやうじん¥ご=たくせん¥あり/けり。「¥なんぢ¥しれ/り/や¥わすれ/り/や。¥ある¥ひじり/を¥もつて¥いは/せ/し¥こと/は¥いか/に。¥ただし¥あくぎやう¥あら/ば、¥しそん/まで/は¥かなふ/まじき/ぞ」/とて、¥だい−みやうじん¥あがら/せ¥たまひ/けり。¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。¥
「らいがう」(『らいがう』)S0306¥しらかはのゐん¥ご=ざいゐ/の¥とき、¥きやうごくの−おほ=との/の¥おん=むすめ、¥きさき/に¥たち¥たまふ¥こと¥あり/けり。¥けんしの−ちうぐう/とて、¥ご=さいあい¥あり/しか/ば、¥しゆじやう¥この¥きさき/の¥おん=はら/に、¥わうじ¥たんじやう¥あら/まほしう¥おぼしめし/て、¥その−ころ¥みゐでら/に、¥うげん/の¥そう/と¥きこゆる、¥らいがう−あじやり/を¥めし/て、「¥なんぢ、P193¥この¥きさき/の¥おん=はら/に、¥わうじ¥たんじやう¥いのり¥まうせ。¥ぐわん¥じやうじゆ−せ/ば、¥しよまう/は¥こふ/に¥よる/べし」/と¥おほせ−くださ/る。¥らいがう¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥みゐでら/に¥かへり、¥かんたん/を¥くだい/て¥いのり/けれ/ば、¥ちうぐう¥やがて¥ご=くわいにん¥あつ/て、¥しようほう−ぐわんねん−じふにんぐわつ−じふろくにち、¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥あり/けり。¥しゆじやう¥なのめ/なら/ず¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥らいがう−あじやり/を¥だいり/へ¥めし/て、「¥さて¥なんぢ/が¥しよまう/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥みゐでら/に¥かいだん¥こんりふ/の¥よし/を¥そうもん−す。「¥いつかい−そうじやう/など/の¥こと/を/も¥まうさ/んずる/か/と/こそ¥おぼしめし/つる/に¥これ/こそ¥ぞんじ/の¥ほか/の¥しよまう/なれ。¥およそ¥わうじ¥たんじやう¥あつ/て、¥そ/を¥つが/しめ/ん/も、¥かいだい¥ぶじ/を¥おぼしめす¥おん=ゆゑ/なり。¥いま¥なんぢ/が¥しよまう/を¥たつせ/ば、¥さんもん¥いきどほつ/て、¥せじやう/も¥しづか/なる/べから/ず。¥りやうもん¥とも/に¥かつせん−せ/ば、¥てんだい/の¥ぶつぽふ¥ほろび/な/んず」/とて、¥きこしめし/も¥いれ/ざり/けり。¥らいがう、「¥こ/は¥くちをしき¥こと/に/こそ¥あん/なれ」/とて、¥いそぎ¥みゐでら/に¥はしり−かへつ/て、¥ひじに/に¥せ/ん/と¥す。¥しゆじやう、¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、¥がうそつ−きやうばうの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥みまさかの−かみ/と¥きこえ/し/を¥めし/て、「¥なんじ/は¥らいがう/に¥しだん/の¥ちぎり¥あん/なれ/ば、¥ゆい/て¥こしらへ/て¥みよ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥いそぎ¥みゐでら/に¥ゆき−むかひ、¥らいがう−あじやり/が¥しゆくばう/に¥ゆい/て、¥ちよくぢやう/の¥おもむき¥おほせ−ふくめ/ん/と¥すれ/ば、¥もつて/の−ほか/に¥ふすぼつ/たる¥ぢぶつだう/に¥たてこもり、¥おそろし=げ/なる¥こゑ−し/て、「¥てんし/に/は¥たはぶれ/の¥ことば¥なし。¥りんげん¥あせ/の/ごとし/と/こそ¥うけたまはつ/て¥さふらへ。¥これ−ほど/の¥しよまう¥かなは/ざら/ん/に¥おいて/は、¥わが¥いのり−いだし¥たてまつ/たるP194¥わうじ/なれ/ば、¥とり¥たてまつ/て¥まだう/へ/こそ¥ゆか/んず/らめ」/とて、¥つひに¥たいめん/も¥せ/ざり/けり。¥みまさかの−かみ¥かへり−まゐり/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥しゆしやう¥おん=なげき¥なのめ/なら/ず。¥らいがう¥つひに¥ひじに/に¥しに/に/けり。¥さる−ほど/に¥わうじ¥ご=なう¥つか/せ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/しか/ば、¥さまざま¥おん=いのり=ども¥あり/けれ/ども、¥かなふ/べし/と/も¥みえ/させ¥たまは/ず。¥はくはつ/なる¥らうそう/の、¥しやくぢやう/を¥もつて、¥つね/は¥わうじ/の¥おん=まくら/に¥たたずむ/と、¥ひと/の¥ゆめ/に/も¥みえ、¥うつつ/に/も¥また¥たち/けり。¥おそろし/など/も¥おろか/なり。¥
しようりやく−ぐわんねん−はちぐわつ−むゆかのひ、¥わうじ¥おん=とし¥しさい/にて¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥あつぶんの−しんわう¥これ/なり。¥しゆしやう¥なのめ/なら/ず¥おん=なげき¥あつ/て、¥その−ころ¥また¥さんもん/に¥うげん/の¥そう/と¥きこえ/し¥さいきやう/の¥ざす¥りやうしん−だいそうじやう、¥その−とき/は¥いまだ¥ゑんゆうばう/の−そうづ/と¥きこえ/し/を、¥だいり/へ¥めし/て、「¥こ/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、「¥いつも¥かやう/の¥ご=ぐわん/は、¥わが−やま/の¥ちから/で/こそ¥じやうじゆ−する¥こと/で/は¥さふらへ。¥され/ば¥くでうの−うしようじやう−もろすけ=こう/も、¥じゑ−だいそうじやう/に¥おん=ちぎり¥まうさ/せ¥たまひ/て/こそ、¥れんぜいゐん/の¥わうじ、¥ご=たんじやう/は¥さふらひ/しか。¥やすい/ほど/の¥おん=こと¥ざふらふ」/とて、¥さんもん/に¥かへつ/て、¥ひやく−にち¥かんたん/を¥くだい/て¥いのら/れ/けれ/ば、¥ちうぐう¥やがて¥ひやく−にち/の¥うち/に¥ご=くわいにん¥あつ/て、¥しようりやく−さんねん−しちぐわつ−ここのかのひ、¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥あり/けり。¥ほりかはの−てんわう¥これ/なり。¥をんりやう/は¥かく¥むかし/も¥おそろしかり/し¥こと=ども/なり。¥こんど¥さ/しも¥めでたき¥ご=さん/に、¥ひじやう/の¥たいしや¥おこなは/れ/たり/と¥いへ/ども、¥この¥しゆんくわん−そうづ¥いち−にん、¥しやめん¥なかり/ける/こそ¥うたてけれ。P195¥おなじき−じふにんぐわつ−やうかのひ、¥わうじ¥とうぐう/に¥たた/せ¥たまふ。¥ふ/に/は¥こまつの−ないだいじん、¥だいぶ/に/は¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/て、¥ぢしよう/も¥みとせ/に¥なり/に/けり。
「せうしやうみやこがへり」(『せうしやうみやこがへり』)S0307¥しやうぐわつ−げじゆん/に¥たんばの−せうしやう−なりつね、¥へい−はんぐわん−やすより−にふだう¥ににん/の¥ひとびと/は、¥ひぜんの−くに¥かせ/の−しやう/を¥たつ/て、¥みやこ/へ/と/は¥いそが/れ/けれ/ども、¥よかん/も¥いまだ¥はげしう、¥かいじやう/も¥いたく¥あれ/けれ/ば、¥うら−づたひ¥しま−づたひ−し/て、¥きさらぎ−とをか−ごろ/に/ぞ、¥びぜん/の−こじま/に/は¥つき¥たまふ。¥それ/より¥ちち¥だいなごん/の¥おん=わたり¥あん/なる¥ありき/の−べつしよ/とかや/に¥たづね−いつ/て¥み¥たまへ/ば、¥たけ/の¥はしら、¥ふり/たる¥しやうじ/など/に、¥かき−おき¥たまひ/つる¥ふで/の¥すさび/を¥み¥たまひ/て、「¥あはれ¥ひと/の¥かたみ/に/は、¥しゆせき/に¥すぎ/たる¥もの/ぞ¥なき。¥かき−おき¥たまは/ず/は、¥いかで/か¥これ/を¥みる/べき」/とて、¥やすより−にふだう/と¥ににん、¥よみ/て/は¥なき、¥なき/て/は¥よむ。「¥あんげん−さんねん−しちぐわつ−はつか¥しゆつけ、¥おなじき−にじふろくにち¥のぶとし¥げかう」/と/も¥かか/れ/たり。¥さて/こそ¥げんざゑもん/の−じよう−のぶとし/が¥まゐり/たる/を/も¥しら/れ/けれ。¥そば/なる¥かべ/に/は、「¥さんぞん¥らいかう¥たより¥あり、¥く−ほん¥わうじやう¥うたがひ¥なし」/と/も¥かか/れ/たり。¥この¥かたみ/をP196¥み¥たまひ/て/こそ、¥さすが¥ごんぐ−じやうど/の¥のぞみ/も¥おはし/けり/と、¥かぎり−なき¥なげき/の¥なか/に/も、¥いささか¥たのもし=げ/に/は¥のたまひ/けれ。¥
その¥はか/を¥たづね/て¥み¥たまへ/ば、¥まつ/の¥ひとむら¥ある¥なか/に、¥かひがひしう¥だん/を¥つい/たる¥こと/も¥なく、¥つち/の¥すこし¥たかき¥ところ/に¥むかひ、¥せうしやう¥そで¥かき−あはせ、¥いき/たる¥ひと/に¥もの/を¥まうす¥やう/に、¥なくなく¥かき−くどい/て¥まうさ/れ/ける/は「¥とほき¥おん=まもり/と¥なら/せ¥おはしまし/たる¥こと/を/ば、¥しま/にて/も¥かすか/に¥つたへ¥うけたまはつ/て¥さふらひ/しか/ども、¥こころ/に¥まかせ/ぬ¥うき−み/なれ/ば、¥いそぎ¥まゐる¥こと/も¥さふらは/ず。¥なりつね¥かの¥しま/へ¥ながさ/れ/て¥のち/の¥たより−な−さ、¥いち−にち−へんし/の¥いのち/も¥あり−がたう/こそ¥さふらひ/しか/ども、¥さすが¥つゆ/の−いのち/は¥きえ−やら/で、¥この¥ふたとせ/を¥おくつ/て、¥いま¥めし−かへさ/るる¥うれし−さ/も、¥さる−こと/にて/は¥さふらへ/ども、¥ちち¥だいなごん=どの/の¥まさしう¥この−よ/に¥わたら/せ¥たまは/ん/を、¥み¥まゐらせ/て/も¥さふらは/ば/こそ、¥さすが¥いのち/の¥ながき¥かひ/も¥さふらは/め。¥これ/まで/は¥いそが/れ/つれ/ども、¥けふ/より¥のち/は¥いそぐ/べし/と/も¥おぼえ/ず」/とて、¥かき−くどい/て/ぞ¥なか/れ/ける。¥まこと/に¥ぞんじやう/の¥とき/なら/ば、¥だいなごん−にふだう=どの/こそ、¥いか/に/と/も¥のたまふ/べき/に、¥しやう/を¥へだて/たる¥ならひ/ほど、¥うらめしかり/ける¥こと/は¥なし。¥こけ/の¥した/に/は¥たれ/か¥こたふ/べき、¥ただ¥あらし/に¥さわぐ¥まつ/の¥ひびき/ばかり/なり。¥
その¥よ/は¥やすより−にふだう/と¥ににん、¥はか/の¥めぐり/を¥ぎやうだう−し、¥あけ/けれ/ば¥あたらしう¥だん¥つき、¥くぎぬき−せ/させ、¥まへ/に¥かりや¥つくり、¥しち−にち−しち−や/が¥あひだ¥ねんぶつ¥まうし、¥きやう¥かい/て、¥けちぐわん/に/は¥おほき/なる¥そとば/を¥たて、「¥くわこ−しやうりやう、¥しゆつり−しやうじ、¥しようだいぼだい」/と¥かい/て、P197¥ねんがう¥つきひ/の¥した/に/は、「¥かうし¥なりつね」/と¥かか/れ/たれ/ば、¥しづ−やまがつ/の¥こころ−なき/も、¥こ/に¥すぎ/たる¥たから¥なし/とて、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥とし¥さり¥とし¥き/たれ/ども、¥わすれ−がたき/は¥ぶいく/の¥むかし/の¥おん、¥ゆめ/の/ごとく¥まぼろし/の/ごとし。¥つき−がたき/は¥れんぼ/の¥いま/の¥なみだ/なり。¥さん−ぜ−じつ−ぱう/の¥ぶつだ/の¥しやうじゆ/も¥あはれみ¥たまひ、¥ばうこん¥そんりやう/も、¥いか/に¥うれし/と¥おぼし/けん。「¥いま¥しばらく¥さふらひ/て、¥ねんぶつ/の¥こう/を/も¥つむ/べう¥さふらへ/ども、¥みやこ/に¥まつ¥ひと=ども/の¥こころ−もとなう¥さふらふ/らん。¥また/こそ¥まゐり¥さふらは/め」/とて、¥まうじや/に¥いとま¥まうし/つつ、¥なくなく¥そこ/を/ぞ¥たた/れ/ける。¥くさ/の¥かげ/にて/も¥なごり−をしう/や¥おもは/れ/けん。¥
おなじき−さんぐわつ−じふろくにち、¥せうしやう¥とば/へ¥あかう/ぞ¥つき¥たまふ。¥こ=だいなごん=どの/の¥さんざう、¥すはま=どの/とて¥とば/に¥あり。¥それ/に¥たち−より¥み¥たまへ/ば、¥すみ−あらし/て¥とし¥へ/に/けれ/ば、¥ついぢ/は¥あれ/ども¥おほひ/も¥なく、¥もん/は¥あれ/ども¥とびら/も¥なし。¥には/に¥たち−いり¥み¥たまへ/ば、¥じんせき¥たえ/て¥こけ¥ふかし。¥いけ/の¥ほとり/を¥み−まはせ/ば、¥あき/の¥やま/の¥はるかぜ/に、¥しらなみ¥しきり/に¥をり−かけ/て、¥しゑん¥はくおう¥せうえう−す。¥きようぜ/し¥ひと/の¥こひし−さ/に、¥ただ¥つきせ/ぬ¥もの/は¥なみだ/なり。¥いへ/は¥あれ/ども、¥らんもん¥やぶれ/て、¥しとみ、¥やりど/も¥たえ/て¥なし。「¥ここ/に/は¥だいなごん=どの/の、/と/こそ¥おはせ/しか。¥この¥つまど/を/ば、¥かう/こそ¥いで−いり¥たまひ/しか。¥あの¥き/を/ば、¥みづから/こそ¥うゑ¥たまひ/しか」/なんど¥いう/て、¥こと/の−は/に¥つけ/て/も、¥ただ¥ちち/の¥こと/を/のみ¥こひし=げ/に/こそ¥のたまひ/けれ。¥やよひ−なか/の−むゆか/なれ/ば、¥はな/は¥いまだ¥なごり¥あり。¥やうばい¥たうり/の¥こずゑ/こそ、¥をりしり−がほ/に¥いろいろ/なれ。¥むかし/の¥あるじ/は¥なけれ/ども、¥はる/を¥わすれ/ぬ¥はな/なれ/や。P198¥せうしやう¥はな/の¥もと/に¥たち−より/て、¥
たうり¥もの¥いは/ず¥はる¥いくばく/か¥くれ/ぬる¥えんか¥あと¥なし¥むかし¥たれ/か¥すんじ¥
ふるさと/の¥はな/の¥もの¥いふ¥よ/なり/せ/ば¥いか/に¥むかし/の¥こと/を¥とは/まし W014¥
この¥ふるき¥しいか/を¥くちずさみ¥たまへ/ば、¥やすより−にふだう/も、¥をりふし¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥すみぞめ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥くるる/ほど/と/は¥また/れ/けれ/ども、¥あまり/に¥なごり−をしく/て、¥よ¥ふくる/まで/こそ¥おはし/けれ。¥ふけ−ゆく¥まま/に/は、¥あれ/たる¥やど/の¥ならひ/とて、¥ふるき¥のき/の¥いたま/より、¥もる¥つきかげ/ぞ¥くま/も¥なき。¥けいろう/の¥やま¥あけ/な/ん/と¥すれ/ども、¥いへぢ/は¥さら/に¥いそが/れ/ず。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥むかひ/に¥のりもの=ども¥つかはし/て¥まつ/らん/も¥こころ−なし/とて、¥せうしやう¥なくなく¥すはま=どの/を¥いで/つつ、¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/ける。¥ひとびと/の¥こころ/の¥うち、¥さ/こそ/は¥うれしう/も、¥また¥あはれ/に/も¥あり/けめ。¥やすより−にふだう/が¥むかひ/に/も、¥のりもの/は¥あり/けれ/ども、¥いまさら¥なごり/の¥をしき/に/とて、¥それ/に/は¥のら/ず、¥せうしやう/の¥くるま/の¥しり/に¥のつ/て、¥しちでうかはら/まで/は¥ゆく。¥それ/より¥ゆき−わかれ/ける/が、¥なほ¥ゆき/も¥やら/ざり/けり。¥はな/の¥もと/の¥はんじつ/の¥かく、¥つき/の¥まへ/の¥いち−や/の¥とも、¥りよじん/が¥ひとむらさめ/の¥すぎ−ゆく/に、¥いちじゆ/の¥かげ/に¥たち−より/て、¥わかるる¥なごり/も¥をしき/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は、¥うかり/し¥しま/の¥すまひ、¥ふね/の¥うち、¥なみ/の¥うへ、¥いちごふ−しよかん/の¥み/なれ/ば、¥ぜんぜ/の¥はうえん/も¥あさから/ず/や¥おもは/れ/けん。P199¥
せうしやう/の¥ははうへ、¥りやうぜん/に¥おはし/ける/が、¥きのふ/より¥さいしやう/の¥しゆくしよ/に¥おはし/て¥また/れ/けり。¥せうしやう/の¥たち−いり¥たまふ¥すがた/を、¥ただ¥ひとめ¥み¥たまひ/て、「¥いのち¥あれ/ば」/と/ばかり/にて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥きたのかた/は、¥さ/しも¥うつくしう¥はなやか/に¥おはせ/しか/ども、¥つきせ/ぬ¥もの−おもひ/に¥やせ−くろみ/て、¥その¥ひと/と/も¥みえ¥たまは/ず。¥ろくでう/が¥くろかり/し¥かみ/も¥しろく¥なり/たり。¥せうしやう/の¥ながさ/れ/し¥とき、¥さんざい/で¥わかれ¥たまひ/し¥をさなき¥ひと/も、¥いま/は¥おとなしう¥なつ/て、¥かみ¥ゆふ/ほど/なり。¥その¥そば/に¥みつ/ばかん/なる¥をさなき¥ひと/の¥おはし/ける/を、¥せうしやう、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥ろくでう、「¥これ/こそ」/と/ばかり¥まうし/て、¥なみだ/を¥ながし/ける/に/こそ、¥さて/は¥わが¥ながさ/れ/し¥とき、¥こころ−ぐるし=げ/なる¥ありさま=ども/を¥み−おき/し/が、¥ことゆゑ−なう¥そだち/ける/よ/と、¥おもひ−いで/て/も¥かなしかり/けり。¥せうしやう/は¥もと/の/ごとく¥ゐん/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥さいしやう/の−ちうじやう/まで¥あがり¥たまふ。¥やすより−にふだう/は、¥ひがしやま¥さうりんじ/に、¥わが¥さんざう/の¥あり/けれ/ば、¥それ/に¥おち−つい/て、¥まづ¥かう/ぞ¥おもひ−つづけ/ける。¥
ふるさと/の¥のき/の¥いたま/に¥こけ¥むし/て¥おもひ/し/ほど/は¥もら/ぬ¥つき/かな W015¥
やがて¥そこ/に¥ろうきよ−し/て、¥うかり/し¥むかし/を¥おもひ−やり、¥ほうぶつしふ/と¥いふ¥ものがたり/を¥かき/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P200¥
「ありわうがしまくだり」(『ありわう』)S0308¥さる−ほど/に¥きかいがしま/の¥るにん=ども、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て¥みやこ/へ¥のぼり/ぬ。¥いま¥いち−にん¥のこさ/れ/て、¥うかり/し¥しま/の¥しまもり/と¥なり/に/ける/こそ¥うたてけれ。¥そうづ/の¥をさなう/より¥ふびん/に/して、¥めし−つかは/れ/ける¥わらは¥あり。¥な/を/ば¥ありわう/と/ぞ¥まうし/ける。¥きかいがしま/の¥るにん=ども、¥けふ¥すでに¥みやこ/へ¥いる/と¥きこえ/しか/ば、¥ありわう¥とば/まで¥ゆき−むかつ/て¥み/けれ/ども、¥わが¥しゆ/は¥みえ¥たまは/ず。「¥いか/に」/と¥とへ/ば、「¥それ/は¥なほ¥つみ¥ふかし/とて、¥いち−にん¥しま/に¥のこさ/れ/ぬ」/と¥きい/て、¥こころ−うし/など/も¥おろか/なり。¥つね/は¥ろくはら−へん/に¥ただずみ/て¥きき/けれ/ども、¥いつ¥しやめん¥ある/べし/と/も、¥きき−いださ/ざり/けれ/ば、¥そうづ/の¥おん=むすめ/の¥しのう/で¥おはし/ける¥ところ/へ¥まゐつ/て、「¥この¥せ/に/も¥もれ/させ¥たまひ/て、¥おん=のぼり/も¥さふらは/ず。¥いま/は¥いか/に/も−し/て¥かの¥しま/へ¥わたつ/て、¥おん=ゆくへ/を/も¥たづね¥まゐらせ/ばや/と¥ぞんじ¥さふらふ。¥おん=ふみ¥たまはつ/て¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥ひめ−ごぜん、¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥やがて¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。¥いとま/を¥こふ/とも、¥よも¥ゆるさ/じ/とて、¥ちち/に/も¥はは/に/も¥しらせ/ず、¥もろこし−ぶね/の¥ともづな/は、¥うづき¥さつき/に¥とく/なれ/ば、¥なつごろも¥たつ/を¥おそく/や¥おもひ/けん、¥やよひ/の¥すゑ/に¥みやこ/を¥たつ/て、¥おほく/の¥なみじ/を¥しのぎ/つつ、¥さつまがた/へ/ぞ¥くだり/ける。P201¥
さつま/より¥かの¥しま/へ¥わたる¥ふなつ/にて、¥ありわう/を¥ひと¥あやしめ、¥き/たる¥もの/を¥はぎ−とり/など¥し/けれ/ども、¥すこし/も¥こうくわい−せ/ず、¥ひめ−ごぜん/の¥おん=ふみ/ばかり/ぞ、¥ひと/に¥みせ/じ/と、¥もとゆひ/の¥なか/に/は¥かくし/ける。¥さて¥あきんど−ぶね/に¥のつ/て、¥くだん/の¥しま/へ¥わたつ/て¥みる/に、¥みやこ/にて¥かすか/に¥つたへ−きき/し/は、¥こと/の−かず/なら/ず。¥た/も¥なし。¥はたけ/も¥なし。¥さと/も¥なし。¥むら/も¥なし。¥おのづから¥ひと/は¥あれ/ども、¥いふ¥ことば/を/も¥きき−しら/ず。¥ありわう¥しま/の¥もの/に¥ゆき−むかつ/て、「¥もの¥まうさ/う」/と¥いへ/ば、「¥なにごと」/と¥こたふ。「¥これ/に¥みやこ/より¥ながさ/れ/させ¥たまひ/たる¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ/と¥まうす¥ひと/の、¥おん=ゆく−すゑ/や¥しつ/たる」/と¥とふ/に、¥ほつしようじ/と/も、¥しゆぎやう/と/も、¥しつ/たら/ば/こそ¥へんじ/は¥せ/め、¥ただ¥かしら/を¥ふつ/て¥しら/ぬ/と¥いふ。¥その¥なか/に¥ある¥もの/が¥こころ−え/て、「¥いさ/とよ、¥さやう/の¥ひと/は、¥さん−にん¥これ/に¥あり/し/が、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て¥みやこ/へ¥のぼり/ぬ。¥いま¥いち−にん¥のこさ/れ/て、¥あそこ−ここ/よ/と¥まよひ−ありき/し/が、¥その−のち/は¥ゆくへ/を/も¥しら/ず」/と/ぞ¥いひ/ける。¥やま/の¥かた/の¥おぼつかな−さ/に、¥はるか/に¥わき−いり、¥みね/に¥よぢ、¥たに/に¥くだれ/ども、¥はくうん¥あと/を¥うづん/で、¥ゆきき/の¥みち/も¥さだか/なら/ず。¥せいらん¥ゆめ/を¥やぶつ/て/は、¥その¥おもかげ/も¥みえ/ざり/けり。¥やま/にて/は¥つひ/に¥たづね/も¥あは/ず。¥うみ/の¥ほとり/に¥つい/て¥たづぬる/に、¥さとう/に¥いん/を¥きざむ¥かもめ、¥おき/の¥しらす/に¥すだく¥はまちどり/の¥ほか/は、¥あと¥とふ¥もの/も¥なかり/けり。¥
ある¥あした¥いそ/の¥かた/より、¥かげろふ/なんど/の/ごとく/に¥やせ−おとろへ/たる/もの、¥よろぼひ¥いで−き/たり。P202¥もと/は¥ほふし/にて¥あり/けり/と¥おぼえ/て、¥かみ/は¥そらさま/に¥おひ−あがり、¥よろづ/の¥もくづ¥とり−つけ/て、¥おどろ/を¥いただい/たる/が/ごとし。¥つぎめ¥あらはれ/て¥かは¥ゆたひ、¥み/に¥き/たる¥もの/は、¥きぬ、¥ぬの/の¥わき/も¥みえ/ず。¥かたて/に/は¥あらめ/を¥もち、¥かたて/に/は¥うを/を¥もらう/て¥もち、¥あゆむ¥やう/に/は¥し/けれ/ども、¥はか/も¥ゆか/ず、¥よろよろ/と/して/ぞ¥いで−き/たる。¥みやこ/にて¥おほく/の¥こつがいにん/は¥み/しか/ども、¥かかる¥もの/は¥いまだ¥み/ず。「¥しよ−あしゆら−とう、¥こざい−だいかいへん」/とて、¥しゆら/の¥さん−あく¥し−しゆ/は、¥しんざん¥だいかい/の¥ほとり/に¥あり/と、¥ほとけ/の¥とき−おき¥たまひ/たれ/ば、¥しら/ず、¥われ¥がきだう/など/へ¥まよひ−き/たる/か/と/ぞ¥おぼえ/たる。¥はや¥かれ/も¥これ/も¥しだい/に¥あゆみ−ちかづく。¥もし¥かやう/の¥もの/にて/も、¥わが¥しゆ/の¥おん=ゆくへ/や¥しつ/たる/と、「¥もの¥まうさ/う」/と¥いへ/ば、「¥なにごと」/と¥こたふ。「¥これ/に¥みやこ/より¥ながさ/れ¥たまひ/たり/し¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−、しゆんくわん−そうづ/と¥まうす¥ひと/や¥まします」/と¥とふ/に、¥わらは/こそ¥み−わすれ/たれ/ども、¥そうづ/は¥いかで/か¥わすれ¥たまふ/べき/なれ/ば、「¥これ/こそ¥そ/よ」/と¥のたまひ/も¥あへ/ず、¥て/に¥もて/る¥もの/を¥なげ−すて/て、¥すなご/の¥うへ/に/ぞ¥たふれ−ふす。¥さて/こそ¥わが¥しゆ/の¥おん=ゆくへ/と/は¥しり/てげれ。¥そうづ¥やがて¥きえ−いり¥たまふ/を、¥ありわう¥ひざ/の¥うへ/に¥かき−のせ¥たてまつり、「¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのぎ/つつ、¥はるばる/と¥これ/まで¥たづね−まゐつ/たる¥かひ/も¥なく、¥いか/に¥やがて¥うき−め/を/ば¥みせ/ん/と/は、¥せ/させ¥たまひ¥さふらふ/ぞ」/と、¥さめざめと¥かき−くどき/けれ/ば、¥そうづ¥すこし¥ひとごこち¥いで−き、¥たすけ−おこさ/れ、「¥まこと/に¥なんじ¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのぎ/つつ、¥はるばる/とP203¥これ/まで¥まゐつ/たる/こそ¥しんべう/なれ。¥ただ¥あけ/て/も¥くれ/て/も、¥みやこ/の¥こと/を/のみ¥おもひ−ゐ/たれ/ば、¥こひしき¥もの=ども/の¥おもかげ/を、¥ゆめ/に¥みる¥をり/も¥あり、¥また¥まぼろし/に¥たつ¥とき/も¥あり。¥み/も¥いたう¥つかれ−よわつ/て¥のち/は、¥ゆめ/も¥うつつ/も¥おもひ−わか/ず。¥いま¥なんぢ/が¥きたれ/る/を/も、¥ただ¥ゆめ/と/のみ/こそ¥おぼゆれ。¥もし¥この¥こと/の¥ゆめ/なり/せ/ば、¥さめ/て/の¥のち/は¥いかが−せ/ん」。¥ありわう、「¥こ/は¥うつつ/にて¥さふらふ/なり。¥さて/も¥この¥おん=ありさま/にて、¥いま/まで¥おん=いのち/の¥のび/させ¥たまひ/たる/こそ、¥ふしぎ/に/は¥おぼえ¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、「¥いさ/とよ、¥これ/は¥こぞ¥せうしやう/や¥はんぐわん−にふだう/が¥むかひ/の¥とき、¥その¥せ/に¥み/を/も¥なぐ/べかり/し/を、¥よし−なき¥せうしやう/の、『¥いま−いちど、¥みやこ/の¥おとづれ/を/も¥まて/かし』/など¥なぐさめ−おき/し/を、¥おろか/に¥もしや/と¥たのみ/つつ、¥ながらへ/ん/と/は¥せ/しか/ども、¥この¥しま/に/は、¥ひと/の¥くひもの/も¥たえ/て¥なき¥ところ/なれ/ば、¥み/に¥ちから/の¥あり/し/ほど/は、¥やま/に¥のぼつ/て¥いわう/と¥いふ¥もの/を¥とり、¥くこく/より¥かよふ¥あきんど/に¥あひ、¥くひもの/に¥かへ/など¥せ/しか/ども、¥ひ/に¥そひ/て¥よわり−ゆけ/ば、¥いま/は¥さやう/の¥わざ/も¥せ/ず。¥かやう/に¥ひ/の¥のどか/なる¥とき/は、¥いそ/に¥いで/て、¥あみうど¥つりうど/に¥て/を¥すり、¥ひざ/を¥かがめ/て、¥うを/を¥もらひ、¥しほひ/の¥とき/は¥かひ/を¥ひろひ、¥あらめ/を¥とり、¥いそ/の¥こけ/に¥つゆ/の−いのち/を¥かけ/て/こそ、¥うき/ながら¥けふ/まで/は¥ながらへ/たれ。¥さら/で/は¥うき−よ/を¥わたる¥よすが/を/ば、¥いか/に−し/つ/らん/と/か¥おもふ/らん」。¥そうづ、「¥これ/にて¥なにごと/を/も¥いは/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥いざ¥わが¥いへ/へ」/と¥のたまへ/ば、¥ありわう、¥あの¥おん=ありさま/にて/も、¥いへ/を¥もち¥たまへ/る¥ふしぎ−さ/よ/と¥おもひ、¥そうづ/を¥かた/にP204¥ひつ−かけ¥まゐらせ、¥をしへ/に¥したがつ/て¥ゆく/ほど/に、¥まつ/の¥ひとむら¥ある¥なか/に、¥よりたけ/を¥はしら/と¥し、¥あし/を¥ゆひ、¥けたはり/に¥わたし、¥うへ/に/も¥した/に/も、¥まつ/の−は/を¥ひし/と¥とり−かけ/たれ/ば、¥あめかぜ¥たまる/べう/も¥みえ/ず。¥ありわう、「¥あな¥あさまし。¥もと/は¥ほつしようじ/の¥じむしき/にて、¥はちじふ−よ−か−しよ/の¥しやうむ/を¥つかさどり¥たまひ/しか/ば、¥むねかど¥ひらかど/の¥うち/に、¥しごひやく−にん/の¥しよじうーけんぞく/に¥ゐねう−せ/られ/て¥おはせ/し¥ひと/の、¥まのあたり¥かかる¥うき−め/に¥あはせ¥たまふ¥こと/の¥ふしぎ−さ/よ。¥ごふ/に¥さまざま¥あり、¥じゆんげん、¥じゆんしやう、¥じゆんごごふ/と¥いへ/り。¥そうづ¥いちご/が¥あひだ、¥み/に¥もちふる¥ところ、¥みな¥だい−がらん/の¥じもつ¥ぶつもつ/なら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥され/ば¥かの¥しんぜ−むざん/の¥つみ/に¥よつ/て、¥こんじやう/にて¥はや¥かんぜ/られ/けり/と/ぞ¥みえ/たり/ける」。¥
(『そうづしきよ』)S0309¥そうづ、¥こ/は¥うつつ/にて¥あり/けり/と¥おもひ−さだめ/て、「¥こぞ¥せうしやう/や¥はんぐわん−にふだう¥むかひ/の¥とき/も、¥これ=ら/が¥ふみ/と¥いふ¥こと/も¥なし。¥いま¥また¥なんぢ/が¥たより/に/も、¥かく/と/も¥いは/ざり/けり/な」/と¥のたまへ/ば、¥ありわう¥なみだ/に¥むせび、¥うつぶし/て、¥しばし/は¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず。¥やや¥あつ/て¥おき−あ(お)がり、¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥きみ/の¥にしはちでう/へ¥いで/させ¥たまひ/し¥のち、¥くわんにん¥まゐつ/て、¥しざい−ざふぐ/を¥つゐふく−し、¥み=うち/の¥もの=ども¥からめ−とり、¥ご=むほん/の¥しだい/を¥たづね−とひ、¥みな¥うしなひ−はて¥さふらひ/き。¥きたのかた/は¥をさなき¥ひと/を¥かくし−かね¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥くらま/の¥おく/に¥しのう/で¥おん=わたり¥さふらひ/し/に/も、¥この¥わらは/ばかり/こそ、¥ときどき¥まゐつ/て¥おん=みやづかへ¥つかまつり¥さふらふ/なり。¥いづれ/も¥おん=なげき/の¥おろか/なる¥かた/は¥さふらは/ね/ども、¥なか/に/も¥をさなき¥ひと/は、¥あまり/に¥こひ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥まゐり¥さふらふ¥たび−ごと/に/は、『¥いか/に¥ありわう/よ、¥われ¥きかいがしま/とかや/へP205¥ぐし/て¥まゐれ』/と¥のたまひ/て、¥むつから/せ¥たまひ/し/が、¥すぎ¥さふらひ/し¥きさらぎ/に、¥もがさ/と¥まうす¥こと/に、¥うせ/させ¥おはしまし¥さふらひ/ぬ。¥きたのかた/は¥その¥おん=なげき/と¥まうし、¥また¥これ/の¥おん=こと/と¥まうし、¥ひとかた/なら/ぬ¥おん=もの−おもひ/に¥おぼしめし−しづま/せ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/し/が、¥さんぬる¥さんぐわつ−ふつかのひ、¥つひに¥はかなく¥なら/せ¥たまひ/て¥さふらひ/ぬ。¥いま/は¥ひめ−ごぜん/ばかり/こそ、¥なら/の¥をば−ごぜん/の¥おん=もと/に¥しのう/で¥おはし/ける、¥それ/より¥おん=ふみ¥たまはつ/て¥まゐつ/て¥さふらふ」/とて、¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥そうづ¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまへ/ば、¥ありわう/が¥まうす/に¥たがは/ず¥かか/れ/たり。¥おく/に/は、「¥などや¥さん−にん¥ながさ/れ/て¥まします¥ひと/の、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て¥さぶらふ/に、¥なに/とて¥いち−にん¥のこさ/れ/て、¥いま/まで¥おん=のぼり/も¥さぶらは/ぬ/ぞ。¥あはれ¥たかき/も¥いやしき/も、¥をんな/の¥み/ほど¥いふ−かひ−なき¥こと/は¥さぶらは/ず。¥をとこ/の¥み/にて/も¥さぶらは/ば、¥わたら/せ¥たまふ¥しま/へ/も、¥など/か¥たづね−まゐら/で¥さぶらふ/べき。¥この¥わらは/を¥おん=とも/にて、¥いそぎ¥のぼら/せ¥たまへ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。「¥これ¥みよ、¥ありわう/よ。¥この¥こ/が¥ふみ/の¥かきやう/の¥はかな−さ/よ。¥おのれ/を¥とも/にて、¥いそぎ¥のぼれ/と¥かい/たる¥こと/の¥うらめし−さ/よ。¥しゆんくわん/が¥こころ/に¥まかせ/たる¥うき−み/なら/ば、¥いかで/か¥この¥しま/にて¥みとせ/の¥はるあき/を/ば¥おくる/べき。¥ことし/は¥じふに/に¥なる/と¥おぼゆる/が、¥これ−ほど/に/は¥かなう/て/は、¥いかで/か¥ひと/に/も¥まみえ、¥みやづかへ/を/も¥し/て、¥み/を/も¥たすく/べき/か」/とて¥なか/れ/ける/に/ぞ、¥ひと/の¥おや/の¥こころ/は¥やみ/に¥あら/ね/ども、¥こ/を¥おもふ¥みち/に¥まよふ/と/は、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。P206「¥
この¥しま/へ¥ながさ/れ/て¥のち/は、¥こよみ/も¥なけれ/ば、¥つきひ/の¥たつ/を/も¥しら/ず。¥ただ¥おのづから¥はな/の¥ちり、¥は/の¥おつる/を¥み/て/は、¥みとせ/の¥はるあき/を¥わきまへ、¥せみ/の¥こゑ¥ばくしう/を¥おくれ/ば¥なつ/と¥おもひ、¥ゆき/の¥つもる/を¥ふゆ/と¥しる。¥びやくぐわつ¥こくぐわつ/の¥かはり−ゆく/を¥み/て/は、¥さんじふにち/を¥わきまへ、¥ゆび/を¥をつ/て¥かぞふれ/ば、¥ことし/は¥むつ/に¥なる/と¥おぼゆる¥をさなき¥もの/も、¥はや¥さきだち/ける¥ござんなれ。¥にしはちでう/へ¥いで/し¥とき、¥この¥こ/が¥ゆか/ん/と¥したひ/し/を、¥やがて¥かへら/うずる/ぞ/と¥なぐさめ−おき/し/が、¥ただいま/の¥やう/に¥おぼゆる/ぞ/や。¥それ/を¥かぎり/と/だに/も¥おもは/ましか/ば、¥いま¥しばらく/も¥など/か¥み/ざら/ん。¥おや/と¥なり¥こ/と¥なり、¥ふうふ/の¥えん/を¥むすぶ/も、¥みな¥この−よ¥ひとつ/に¥かぎら/ぬ¥ちぎり/ぞ/かし。¥いま/は¥ひめ/が¥こと/ばかり/こそ¥こころ−ぐるしけれ/ども、¥それ/は¥いきみ/なれ/ば、¥なげき/ながら/も¥すごさ/んず/らん。¥さ/のみ¥ながらへ/て、¥おのれ/に¥うき−め/を¥みせ/ん/も、¥わが−み/ながら¥つれなかる/べし」/とて、¥おのづから¥しよくじ/を¥とどめ、¥ひとへに¥みだ/の¥みやうがう/を¥となへ、¥りんじう−しやうねん/を/ぞ¥いのら/れ/ける。¥ありわう¥わたつ/て¥にじふさんにち/と¥まうす/に、¥そうづ¥いほり/の¥うち/にて、¥つひに¥をはり¥たまひ/ぬ。¥とし¥さんじふしち/と/ぞ¥きこえ/し。¥ありわう¥むなしき¥すがた/に¥とり−つき¥たてまつり、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし、¥こころ/の¥ゆく/ほど¥なき−あき/て、「¥やがて¥ごせ/の¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらへ/ども、¥この−よ/に/は¥ひめ−ごぜん/ばかり/こそ¥わたら/せ¥たまひ¥さふらへ。¥ごせ¥とぶらひ¥まゐらす/べき¥ひと/も¥さふらは/ず。¥しばし¥ながらへ/て¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐらす/べし」/とて、¥ふしど/を¥あらため/ず、¥いほり/を¥きり−かけ、¥まつ/の¥かれえだ、¥あし/の¥かれば/を¥ひし/と¥とり−かけ/て、¥もしほ/の¥けぶり/と¥なし¥たてまつり、¥だびこと¥をへ/ぬれ/ば、¥はくこつ/をP207¥ひろひ¥くび/に¥かけ、¥また¥あきんど−ぶね/の¥たより/にて、¥くこく/の¥ぢ/に/ぞ¥つき/に/ける。¥それ/より¥そうづ/の¥おん=むすめ/の、¥しのう/で¥おはし/ける¥おん=もと/に¥まゐつ/て、¥あり/し¥やう/を¥はじめ/より¥こまごま/と¥かたり¥まうす。「¥なかなか¥ふみ/を¥ごらんじ/て/こそ、¥いとど¥おん=おもひ/は¥まさら/せ¥たまひ/て¥さふらひ/しか。¥くだん/の¥しま/に/は、¥すずり/も¥かみ/も¥なけれ/ば、¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず。¥おぼしめさ/れ/つる¥おん=こと=ども/は、¥さながら¥むなしう/て¥やみ¥さふらひ/ぬ。¥いま/は¥しやうじやう−せせ/を¥おくり、¥たしやう−くわうごふ/を/ば¥へだて¥たまふ/とも、¥いかで/か¥おん=こゑ/を/も¥きき、¥おん=すがた/を/も¥み¥まゐら/させ¥たまふ/べき。¥ただ¥いか/に/も−し/て、¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐら/させ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥ひめ−ごぜん¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥ふし−まろび/て/ぞ¥なか/れ/ける。¥やがて¥じふに/の¥とし¥あま/に¥なり、¥なら/の¥ほつけじ/に¥おこなひ−すまし/て、¥ぶも/の¥ごせ/を¥とぶらひ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥ありわう/は¥しゆんくわん−そうづ/の¥ゆゐこつ/を¥くび/に¥かけ、¥かうや/へ¥のぼり、¥おく/の¥ゐん/に¥をさめ/つつ、¥れんげだに/にて¥ほふし/に¥なり、¥しよ−こく−しちだう¥しゆげふ−し/て、¥しゆ/の¥ごせ/を/ぞ¥とぶらひ/ける。¥かやう/に¥ひとびと/の¥おもひ−なげき/の¥つもり/ぬる、¥へいけ/の¥すゑ/こそ¥おそろしけれ。¥
「つじかぜ」(『つじかぜ』)S0310¥さる−ほど/に¥おなじき−ごぐわつ−じふににち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥きやうちう/に¥つじかぜ¥おびたたしう¥ふい/て、¥じんをくP208¥おほく¥てんだう−す。¥かぜ/は¥なかのみかど−きやうごく/より¥おこつ/て、¥ひつじさる/の¥かた/へ¥ふい/て¥ゆく/に、¥むねかど¥ひらかど¥ふき−ぬい/て、¥しごちやう¥じつちやう/ばかり¥ふき¥もて¥ゆき、¥けた、¥なげし、¥はしら/など/は、¥こくう/に¥さんざい−し、¥ひはだ、¥ふきいた/の¥るゐ、¥ふゆ/の¥こ/の−は/の¥かぜ/に¥みだるる/が/ごとし。¥おびたたしう¥なり−どよむ¥おと/は、¥かの¥じごく/の¥ごふふう/なり/とも、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥ただ¥しやをく/の¥はそんずる/のみ/なら/ず、¥いのち/を¥うしなふ¥もの/も¥おほし。¥ぎうば/の¥たぐひ、¥かず/を¥しら/ず¥うち−ころさ/る。¥これ¥ただごと/に¥あら/ず、¥みうら¥ある/べし/とて、¥じんぎくわん/に/して¥みうら¥あり。「¥いま¥ひやく−にち/の¥うち/に、¥ろく/を¥おもんずる¥だいじん/の¥つつしみ、¥べつし/て/は¥てんが/の¥だいじ、¥ぶつぽふ¥わうぼふ¥とも/に¥かたぶき、¥ならびに¥ひやうがく¥さうぞく−す/べし」/と/ぞ、¥じんぎくわん、¥おんやうりやう¥とも/に¥うらなひ¥たてまつる。¥
「いしもんだふ」(『いしもんだふ』)S0311¥おなじき¥なつ/の¥ころ、¥こまつの−おとど/は、¥かやう/の¥こと=ども/に、¥よろづ¥こころ−ぼそく/や¥おもは/れ/けん、¥その−ころ¥くまの−さんけい/の¥こと¥あり/けり。¥ほんぐう−しようじやうでん/の¥おん=まへ/にて、¥しづか/に¥ほつせ¥まゐらせ/て、¥よ/も−すがら¥けいびやく−せ/られ/ける/は、「¥しんぷ¥にふだう−しやうこく/の¥てい/を¥みる/に、¥あくぎやく−ぶだう/に/して、¥やや/も¥すれ/ば¥きみ/を¥なやまし¥たてまつる。¥その¥ふるまひ/を¥みる/に、¥いちご/の¥えいぐわ¥なほ¥あやふし。¥しげもり¥ちやうし/と/して、¥しきり/に¥いさめ/を¥いたす/と¥いへ/ども、¥み¥ふせう/の¥あひだ、¥かれ¥もつて¥ふくよう−せ/ず。P209¥しえふ¥れんぞく−し/て、¥しん/を¥あらはし¥な/を¥あげ/ん¥こと¥かたし。¥この−とき/に¥あたつ/て、¥しげもり¥いやしう/も¥おもへ/り。¥なまじひ/に¥れつし/て、¥よ/に¥ふちん−せ/ん¥こと、¥あへて¥りやうしん−かうし/の−ほふ/に¥あら/ず。¥しか/じ、¥な/を¥のがれ¥み/を¥しりぞい/て、¥こんじやう/の¥めいばう/を¥なげ−すて/て、¥らいせ/の¥ぼだい/を¥もとめ/ん/に。¥ただし¥ぼんぶ¥はくぢ、¥ぜひ/に¥まどへ/る/が¥ゆゑ/に、¥こころざし/を¥なほ¥ほしいまま/に¥せ/ず、¥なむ−ごんげん−こんがうどうじ。¥ねがは−く/は、¥しそん¥はんえい¥たえ/ず/して、¥つかへ/て¥てうてい/に¥まじはる/べく/ば、¥にふだう/の¥あくしん/を¥やはらげ/て、¥てんが/の¥あんぜん/を¥え/せ/しめ¥たまへ。¥えいえう¥また¥いちご/を¥かぎつ/て、¥こうこん¥はぢ/に¥およぶ/べく/ば、¥しげもり/が¥うんめい/を¥つづめ/て、¥らいせ/の¥くりん/を¥たすけ¥たまへ。¥りやうか/の¥ぐぐわん¥ひとへに¥みやうじよ/を¥あふぐ」/と、¥かんたん/を¥くだい/て¥きねん−せ/られ/けれ/ば、¥とうろう/の¥ひ/の¥やう/なる¥もの/の、¥おとど/の¥おん=み/より¥いで/て、¥ばつ/と¥きゆる/が/ごとく/して¥うせ/に/けり。¥ひと¥あまた¥み¥たてまつり/けれ/ども、¥おそれ/て¥これ/を¥まうさ/ず。¥おとど¥げかう/の¥とき、¥いはだがは/を¥わたら/れ/ける/に、¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり¥いげ/の¥きんだち、¥じやうえ/の¥した/に¥うすいろ/の¥きぬ/を¥き/て、¥なつ/の¥こと/なれ/ば、¥なにと−なう¥みづ/に¥たはぶれ¥たまふ/ほど/に、¥じやうえ/の¥ぬれ/て¥きぬ/に¥うつり/たる/が、¥ひとへに¥いろ/の/ごとく/に¥みえ/ける/を、¥ちくごの−かみ−さだよし¥これ/を¥み−とがめ/て、「¥なに/と/やらん¥あの¥おん=じやうえ/の、¥よ/に¥いまはし=げ/に¥みえ/させ¥ましまし¥さふらふ。¥いそぎ¥めし−かへ/らる/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど、「¥さて/は¥わが¥しよぐわん¥すでに¥じやうじゆ−し/に/けり。¥あへて¥その¥じやうえ¥あらたむ/べから/ず」/とて、¥いはだがは/より¥くまの/へ、¥べつし/て¥よろこび/の¥ほうへい/を/ぞ¥たて/られ/ける。¥ひと¥あやし/と¥おもへ/ども、¥なほ¥その¥こころ/を/ばP210¥え/しめ¥たまは/ず。¥しかる/に¥この¥きんだち、¥ほど−なく¥やがて、¥まこと/の¥いろ/を¥き¥たまひ/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥その−のち¥おとど¥げかう/の¥とき、¥いくばく/の¥ひかず/を¥へ/ず/して、¥やまひ¥つき¥たまひ/ぬ。¥ごんげん¥すでに¥ご=なふじゆ¥ある/に/こそ/とて、¥れうぢ/を/も¥し¥たまは/ず。¥まして¥きたう/を/も¥いたさ/れ/ず。¥
その−ころ¥そうてう/より¥すぐれ/たる¥めいい¥わたつ/て、¥ほんてう/に¥やすらふ¥こと¥あり/けり。¥をりふし¥にふだう−しやうこく/は、¥ふくはら/の¥べつげふ/に¥おはし/ける/が、¥ゑつちうの−ぜんじ−もりとし/を¥ししや/にて、¥こまつ=どの/へ¥のたまひ−つかはさ/れ/ける/は、「¥しよらう¥いよいよ¥だいじ/なる¥よし、¥その¥きこえ¥あり。¥かねては¥また¥そうてう/より¥すぐれ/たる¥めいい¥わたれ/り。¥をりふし¥これ/を¥よろこび/と¥す。¥よつて¥かれ/を¥めし−しやうじ/て、¥いれう/を¥くはへ/しめ¥たまへ」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥おとど¥たすけ−おこさ/れ、¥もりとし/を¥おん=まへ/へ¥めし/て¥たいめん¥あり。「¥まづ¥いれう/の¥こと、¥かしこまつ/て¥うけたまはり¥さふらひ/ぬ/と¥まうす/べし。¥ただし¥なんぢ/も¥よく¥うけたまはれ。¥えんぎの−みかど/は、¥さ/ばかん/の¥けんわう/にて¥わたら/せ¥たまひ/しか/ども、¥いこく/の¥さうにん/を、¥みやこ/の¥うち/へ¥いれ/られ/たり/し¥こと/を/ば、¥まつだい/まで/も¥けんわう/の¥おん=あやまり、¥ほんてう/の¥はぢ/と/こそ¥みえ/たれ。¥いはんや¥しげもり/ほど/の¥ぼんにん/が、¥いこく/の¥いし/を¥わうじやう/へ¥いれ/ん¥こと、¥まつたく¥くに/の¥はぢ/に¥あら/ず/や。¥かん/の¥かうそ/は、¥さんじやく/の¥けん/を¥ひつ−さげ/て、¥てんが/を¥をさめ/し/に、¥わいなん/の¥げいふ/を¥うち/し¥とき、¥りうし/に¥あたつ/て¥きず/を¥かうぶる。¥きさき¥りよたいこう、¥りやうい/を¥むかへ/て¥みせ/しむる/に、¥い/の¥いはく、¥この¥きず¥ぢし/つ/べし。¥ただし¥ごじつこん/の¥きん/を¥あたへ/ば¥ぢせ/ん/と¥いふ。¥かうそ¥のたまはく、¥われ¥まもり¥つよかつ/し/ほど/は、¥おほく/のP211¥たたかひ/に¥あう/て¥きず/を¥かうぶり/しか/ども、¥その¥いたみ¥なし。¥うん¥すでに¥つき/ぬ。¥めい/は¥すなはち¥てん/に¥あり、¥へんじやく/と¥いふ/とも¥なん/の¥えき/か¥あら/ん。¥しかれ/ば¥また¥かね/を¥をしむ/に¥に/たり/とて、¥ごじつこん/の¥きん/を¥いし/に¥あたへ/ながら、¥つひに¥ぢせ/ざり/き。¥せんげん¥みみ/に¥あり、¥いま¥もつて¥かんじん−す。¥しげもり¥いやしくも¥きうけい/に¥れつし¥さんたい/に¥のぼる。¥その¥うんめい/を¥はかる/に、¥もつて¥てんしん/に¥あり。¥なんぞ¥てんしん/を¥さつせ/ず/して、¥おろか/に¥いれう/を¥いたはしう¥せ/ん/や。¥しよらう¥もし¥ぢやうごふ/たら/ば、¥いれう/を¥くはふる/とも¥えき¥なから/ん/か。¥また¥ひごふ/たら/ば、¥れうぢ/を¥くはへ/ず/とも、¥たすかる¥こと/を¥う/べし。¥かの¥ぎば/が¥いじゆつ¥およば/ず/して、¥だいかく−せそん、¥めつど/を¥ばつだいが/の¥ほとり/に¥となふ。¥これ¥すなはち¥ぢやうごふ/の¥やまひ、¥いやさ/ざる¥こと/を¥しめさ/ん/が¥ため/なり。¥ぢする/は¥ぶつたい/なり。¥れうする/は¥ぎば/なり。¥
ぢやうごふ¥もし¥いれう/に¥かかはる/べう¥さふらは/ば、¥あに¥しやくそん¥にふめつ¥あら/ん/や。¥ぢやうごふ¥なほ¥ぢする/に¥たへ/ざる¥むね¥あきらけし。¥しかれ/ば¥しげもり/が¥み、¥ぶつたい/に¥あら/ず、¥めいい¥また¥ぎば/に¥およぶ/べから/ず、¥たとひ¥しぶ/の¥しよ/を¥かんがみ/て、¥ひやく−れう/に¥ちやうず/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥うだい/の¥ゑしん/を¥ぐれう−せ/ん。¥たとひ¥また¥ごきやう/の¥せつ/に¥つまびらか/に/して、¥しゆびやう/を¥いやす/と¥いふ/とも、¥あに¥ぜんぜ/の¥ごふびやう/を¥ぢせ/ん/や。¥もし¥かの¥いじゆつ/に¥よつ/て¥ぞんめい−せ/ば、¥ほんてう/の¥いだう¥なき/に¥に/たり。¥いじゆつ¥かうげん¥なく/ば、¥めんえつ¥しよせん¥なし。¥なかんづく¥ほんてう¥ていしん/の¥げさう/を¥もつて、¥いてう¥ふいう/の¥らいかく/に¥まみえ/ん¥こと、¥かつうは¥くに/の¥はぢ、¥かつうは¥みち/の¥りようち/なり。¥たとひ¥しげもり¥めい/は¥ばうず/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥くに/の¥はぢ/を¥おもふ¥こころ/を¥ぞんぜ/ざら/ん。¥この¥よし/を¥まうせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。P212¥
もりとし¥なくなく¥ふくはら/へ¥はせ−くだり、¥この¥よし/を¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥くに/の¥はぢ/を¥おもふ¥だいじん、¥しやうこ/に¥いまだ¥きか/ず。¥まして¥まつだい/に¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥につぽん/に¥さうおう−せ/ぬ¥だいじん/なれ/ば、¥いかさま/に/も¥こんど¥うせ/られ/な/んず」/とて、¥いそぎ¥みやこ/へ¥のぼら/れ/けり。¥しちぐわつ−にじふはちにち、¥こまつ=どの¥しゆつけ−し¥たまひ/ぬ。¥ほふみやう/は¥じやうれん/と/こそ¥つき¥たまへ。¥やがて¥はちぐわつ−ひとひのひ、¥りんじう−しやうねん/に¥ぢうし/て¥うせ¥たまひ/ぬ。¥おん=とし¥しじふさん。¥よ/は¥さかり/と/こそ¥みえ/つる/に、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥にふだう−しやうこく/の、¥さ/しも¥よこがみ/を¥やら/れ/し/に/も、¥この¥ひと/の¥おはし/て、¥やうやう/に¥なだめ−のたまひ/つれ/ば/こそ、¥よ/は¥けふ/まで/も¥おだしかり/つれ。¥この−のち¥てんが/に¥いか/ばかり/の¥こと/か¥いで−こ/んず/らん/とて、¥じやうげ¥みな¥なげき−あへ/り。¥また¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥かたざま/の¥ひとびと、¥よ/は¥ただいま¥だいしやう=どの/へ¥まゐり/な/んず/とて、¥いさみ−よろこび−あは/れ/けり。¥ひと/の¥おや/の¥こ/を¥おもふ¥ならひ/は、¥おろか/なる/が、¥さきだつ/だに/も¥かなしき/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は¥たうけ/の¥とうりやう、¥たうせい/の¥けんじん/にて¥ましませ/ば、¥おんあい/の¥わかれ、¥いへ/の¥すゐび、¥かなしん/で/も¥なほ¥あまり¥あり。¥され/ば¥よ/に/は¥りやうしん/を¥うしなへ/る¥こと/を¥なげき、¥いへ/に/は¥ぶりやく/の¥すたれ/ぬる¥こと/を¥かなしむ。¥およそ/は¥この¥おとど、¥ぶんしやう¥うるはしう/して、¥こころ/に¥ちう/を¥そんじ、¥さいげい¥すぐれ/て、¥ことば/に¥とく/を¥かね¥たまへ/り。P213¥
「むもんのさた」(『むもん』)S0312¥てんぜい¥この¥おとど/は、¥ふしん¥だいいち/の¥ひと/にて、¥みらい/の¥こと/を/も¥かねて¥さとり¥たまひ/ける/に/や、¥さんぬる¥しんぐわつ−なぬか/の¥よ/の¥ゆめ/に、¥み¥たまひ/たり/ける¥こと/こそ¥ふしぎ/なれ。¥たとへば¥ある¥はまぢ/を、¥はるばる/と¥あゆみ−ゆき¥たまふ/ほど/に、¥かたはら/に¥おほき/なる¥とりゐ/の¥あり/ける/を、¥おとど¥ゆめ/の¥うち/に、「¥あれ/は¥いか/なる¥おん=とりゐ/やらん」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥かすが−だい−みやうじん/の¥おん=とりゐ/なり」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ひと¥くんじゆ−し/たり。¥その¥なか/より¥おほき/なる¥ほふし/の¥かうべ/を、¥たち/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ/たる/を、¥おとど、「¥なにもの/の¥くび/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥へいけ−だいじやう−にふだう=どの/の、¥あくぎやう¥てうくわ−し¥たまへ/る/に¥よつ/て、¥たうしや¥だい−みやうじん/の¥めし−とら/せ¥たまひ/て¥さふらふ」/と¥まうす/と¥おぼえ/て¥ゆめ¥さめ/ぬ。¥たうけ/は¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥てうてき/を¥たひらげ、¥けんじやう¥み/に¥あまり、¥ていそ、¥だいじやうだいじん/に¥いたり、¥いちぞく/の¥しようじん¥ろくじふ−よ−にん、¥にじふ−よ−ねん/の¥この−かた、¥くわん−かかい¥てんが/に¥かた/を¥ならぶる¥ひと/も¥なかり/つる/に、¥さて/は¥にふだう/の¥あくぎやう¥てうくわ−し¥たまへ/る/に¥よつ/て、¥たうけ/の¥うんめい/の¥すゑ/に¥なる/に/こそ/と¥おぼしめし/て、¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ。¥をりふし¥つまど/を¥ほとほとと¥うち−たたく¥もの¥いで−き/たり。¥おとど、「¥なにもの/ぞ、¥あれ¥きけ」/とP214¥のたまへ/ば、「¥せのをの−たらう−かねやす/が、¥こんや¥あまり/に¥ふしぎ/の¥こと/を¥み¥さふらう/て、¥まうし−あげ/ん/が¥ため/に、¥よ/の¥あくる/が¥おそう¥おぼえ/て¥まゐつ/て¥さふらふ。¥おん=まへ/の¥ひと/を¥はるか/に¥のけ/られ¥さふらへ」/とて、¥ひと/を¥のけ/て¥たいめん¥あり/けり。¥おとど/の¥ごらんぜ/られ/ける¥ゆめ/に、¥すこし/も¥たがは/ず、¥つぶさ/に¥かたり¥まうし/たり/けれ/ば、¥さて/こそ¥かねやす/は、¥しん/に/も¥つうじ/たる/ものかな/と/ぞ、¥おとど/も¥かんじ¥たまひ/ける。¥
その¥あした¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり、¥ゐん/へ¥まゐら/ん/とて¥いで−たた/れ/ける/を、¥おとど¥よび¥たてまつ/て、「¥ひと/の¥おや/の¥かやう/の¥こと¥まうす/は、¥をこがましけれ/ども、¥ご=へん/は¥ひと/の¥こ/に/は¥すぐれ/て¥みえ¥たまへ/り。¥あれ¥せうしやう/に¥さけ¥すすめよ」/と¥のたまへ/ば、¥ちくごの−かみ−さだよし¥おん=しやく/に¥まゐる。¥これ/を/ば¥せうしやう/に/こそ¥たぶ/べけれ/ども、¥おや/より¥さき/に/は¥よも¥たまはら/じ/とて、¥おとど¥さんど¥くん/で、¥その−のち¥せうしやう=どの/に/ぞ¥ささ/れ/ける。¥せうしやう¥また¥さんど¥うけ¥たまふ¥とき、「¥あれ¥せうしやう/に¥ひきでもの−せよ」/と¥のたまへ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥あかぢ/の−にしき/の¥ふくろ/に¥いれ/たる¥おん=たち¥もつ/て¥まゐつ/たり。¥せうしやう、¥これ/は¥たうけ/に¥つたはる¥こがらす/と¥いふ¥たち/やらん/と、¥うれし=げ/に¥み¥たまへ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥だいじん¥さう/の¥とき¥もちふる¥むもん/の−たち/なり。¥その−とき¥せうしやう¥もつて/の−ほか/に¥きしよく¥かはつ/て¥みえ¥たまへ/ば、¥おとど¥なみだ/を¥はらはらと¥ながい/て、「¥それ/は¥さだよし/が¥ひがごと/に/は¥あら/ず。¥だいじん¥さう/の¥とき¥はい/て¥とも−する¥むもん/と¥いふ¥たち/なり。¥ひごろ/は¥にふだう=どの¥いか/に/も−なり¥たまは/ば、¥しげもり¥はい/て¥とも−せ/ん/と/こそ¥ぞんぜ/しか。¥いま/は¥しげもり、¥にふだう=どの/に¥さきだち¥たてまつら/んずれ/ば、¥ご=へん/に¥たぶ/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。P215¥せうしやう¥とかう/の¥へんじ/に/も¥および¥たまは/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥しゆくしよ/に¥かへり、¥その−ひ/は¥しゆつし/も¥し¥たまは/ず、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥その−のち¥おとど¥くまの/へ¥まゐり¥げかう−し/て、¥いくばく/の¥ひかず/を¥へ/ず/して、¥やまひ¥つい/て¥うせ¥たまひ/ける/に/こそ、¥げに/も/と¥おもひ−しら/れ/けれ。¥
「とうろう」(『とうろのさた』)S0313¥すべて¥この¥おとど/は、¥めつざい−しやうぜん/の¥こころざし¥ふかう¥おはし/けれ/ば、¥たうらい/の¥ふちん/を¥なげき、¥ろくはち−ぐぜい/の¥ぐわん/に¥なぞらへ/て、¥ひがしやま/の¥ふもと/に、¥しじふはちけん/の¥しやうじや/を¥たて、¥いつけん/に¥ひとつ−づつ、¥しじふはち/の¥とうろう/を¥かけ/られ/たり/けれ/ば、¥くぼん/の¥うてな¥め/の¥まへ/に¥かがやき、¥くわうえう¥らんけい/を¥みがい/て、¥じやうど/の¥みぎり/に¥のぞみ/ぬる/が/ごとし。¥まいげつ¥じふしにち¥じふごにち/を¥てんじ/て、¥だいねんぶつ¥あり/しか/ば、¥たうけ¥たけ/の¥ひとびと/の¥もと/より、¥みめ¥よく¥わかう¥さかん/なつ/し¥にようばう/を¥しやうじ/て、¥いつけん/に¥ろくにん−づつ、¥にひやくはちじふはちにん/の¥じしゆ/と¥さだめ/て、¥かの¥りやうにち/が¥あひだ/は、¥いつしん−ふらん/の¥しようみやう/の¥こゑ¥おこたら/ず。¥まことに¥らいかう−いんぜふ/の¥ひぐわん/も、¥この¥ところ/に¥やうがう/を¥たれ、¥せつしゆ−ふしや/の¥ひかり/も、¥この¥おとど/を¥てらし¥たまふ/か/と/ぞ¥おぼえ/たる。¥じふごにち/の¥につちう/を¥けちぐわん/と/して、¥だいねんぶつ¥あり/けり。¥おとど¥ぎやうだう/の¥なか/に¥まじはつ/て、¥さいはう/に¥むかひ¥て/をP216¥あはせ、「¥なむ¥あんやうせかい/の¥けうしゆ、¥みだぜんぜい、¥さんがい−ろくだう/の¥しゆじやう/を、¥あまねく¥さいど−し¥たまへ」/と、¥ゑかう−ほつぐわん−し¥たまへ/ば、¥みる¥ひと¥じひしん/を¥おこし、¥きく¥もの¥かんるゐ/を/ぞ¥もよほし/ける。¥それ/より/して/こそ、¥この¥おとど/を¥とうろう/の−だいじん/と/は¥まうし/けれ。¥
「かねわたし」(『かねわたし』)S0314¥おとど¥また¥いか/なる¥ぜんごん/を/も¥し/て、¥ごせ¥とぶらは/れ/ばや/と¥おもは/れ/ける/が、¥わが¥てう/に/は¥いか/なる¥だい=ぜんごん/を¥し−おい/たり/とも、¥しそん¥あひ−つづい/て、¥しげもり/が¥ごせ¥とぶらは/ん¥こと¥あり−がたし。¥たこく/に¥いか/なる¥ぜんごん/を/も¥し/て、¥ごせ¥とぶらは/れ/ん/とて、¥あんげん/の¥はる/の¥ころ、¥ちんぜい/より¥めうでん/と¥いふ¥せんどう/を¥めし−のぼせ、¥ひと/を¥はるか/に¥のけ/て¥たいめん¥あり。¥こがね/を¥さんぜんごひやく−りやう¥めし−よせ/て、「¥なんぢ/は¥きこゆる¥だい=しやうじき/の¥もの/なれ/ば」/とて、「¥ごひやく−りやう/を/ば¥なんぢ/に¥え/さす。¥さんぜんりやう/を/ば¥そうてう/へ¥わたし、¥いつせんりやう/を/ば¥いわうさん/の¥そう/に¥ひき、¥にせんりやう/を/ば¥みかど/へ¥まゐらせ/て、¥でんだい/を¥いわうさん/へ¥まうし−よせ/て、¥しげもり/が¥ごせ¥とぶらは/す/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥めうでん¥これ/を¥たまはつ/て、¥ばんり/の¥えんらう/を¥しのぎ/つつ、¥だいそうこく/へ/ぞ¥わたり/ける。¥いわうさん/の¥はうぢやう、¥ぶつせう−ぜんじ¥とくくわう/に¥あひ¥たてまつ/て、¥この¥よし¥まうし/けれ/ば、¥ずゐき¥かんたん−し/て、P217¥やがて¥せんりやう/を/ば、¥いわうさん/の¥そう/に¥ひき、¥にせんりやう/を/ば¥みかど/へ¥まゐらせ/て、¥こまつ=どの/の¥まうさ/れ/つる¥やう/を、¥つぶさ/に¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥みかど¥おほき/に¥かんじ¥おぼしめし/て、¥ごひやくちやう/の¥でんだい/を、¥いわうさん/へ/ぞ¥よせ/られ/ける。¥され/ば¥につぽん/の¥だいじん、¥たひらの−あそん−しげもり=こう/の¥ごしやう−ぜんしよ/と¥いのる¥こと、¥いま/に¥あり/と/ぞ¥うけたまはる。¥(『ほふいんもんだふ』)S0315¥にふだう−しやうこく、¥こまつ=どの/に/は¥おくれ¥たまひ/ぬ。¥よろづ¥こころ−ぼそく/や¥おもは/れ/けん、¥ふくはら/へ¥はせ−くだり、¥へいもん−し/て/こそ¥おはし/けれ。¥
「ほふいんもんだふ」¥おなじき−じふいちぐわつ−なぬか/の¥よ/の¥いぬ/の−こく/ばかり、¥だいぢ¥おびたたしう¥うごい/て¥やや¥ひさし。¥おんやう/の−かみ−あべの−たいしん、¥いそぎ¥だいり/へ¥はせ−まゐり、「¥こんど/の¥ぢしん、¥せんもん/の¥さす¥ところ、¥その¥つつしみ¥かろから/ず¥さふらふ。¥たう−だう¥さんきやう/の¥なか/に、¥こんききやう/の¥せつ/を¥み¥さふらふ/に、¥とし/を¥え/て/は¥とし/を¥いで/ず、¥つき/を¥え/て/は¥つき/を¥いで/ず、¥ひ/を¥え/て/は¥ひ/を¥いで/ず、¥もつて/の−ほか/に¥くわきふ/に¥さふらふ」/とて、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながし/けれ/ば、¥てんそう/の¥ひと/も¥いろ/を¥うしなひ、¥きみ/も¥えいりよ/を¥おどろか/せ¥おはします。¥わかき¥くぎやう−てんじやうびと/は、「¥けしから/ぬ¥やすちか/が¥なきやう/かな。¥ただいま¥なにごと/の¥ある/べき/か」/とて、¥いちど/に¥どつと/ぞ¥わらひ−あは/れ/ける。¥され/ども¥このP218¥やすちか/は、¥せいめい¥ごだい/の¥べうえい/を¥うけ/て、¥てんもん/は¥えんげん/を¥きはめ、¥すゐでう¥たなごころ/を¥さす/が/ごとし。¥いちじ/も¥たがは/ざり/けれ/ば、¥さす/の−みこ/と/ぞ¥まうし/ける。¥いかづち/の¥おち−かかり/たり/しか/ども、¥らいくわ/の¥ため/に¥かりぎぬ/の¥そで/は¥やけ/ながら、¥その¥み/は¥つつが/も¥なかり/けり。¥じやうだい/に/も¥まつだい/に/も¥あり−がたかり/し¥やすちか/なり。¥おなじき−じふしにち、¥にふだう−しやうこく¥いかが/は¥おもひ−なら/れ/たり/けん、¥すせんぎ/の¥ぐんびやう/を¥たなびい/て、¥みやこ/へ¥かへり−いり¥たまふ¥よし¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥なに/と¥きき−わけ/たる¥こと/は¥なけれ/ども、¥じやうげ¥さわぎ−あへ/り。¥また¥なにもの/の¥まうし−いだし/たり/ける/やらん。¥にふだう−しやこく¥てうか/を¥うらみ¥たてまつる/べし/と¥いふ¥ひろう/を¥なす。¥くわんばく=どの/も、¥ないない¥きこしめさ/るる¥むね/も/や¥あり/けん、¥いそぎ¥ご=さんだい¥あつ/て、「¥こんど¥にふだう/の¥じゆらく/は、¥ひとへに¥もとふさ¥ほろぼす/べき¥よし/の¥けつこう/にて¥さふらへ。¥つひに¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あひ¥さふらは/んず/らん」/と、¥そうせ/させ¥たまへ/ば、¥しゆしやう¥きこしめし/て、「¥そこ/に¥いか/なる¥め/に/も¥あは/ん/は、¥ひとへに¥わが¥あふ/にて/こそ¥あら/んず/らめ」/とて、¥りようがん/より¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ/ぞ¥かたじけなき。¥まことに¥てんが/の¥おん=まつりごと/は、¥しゆしやう¥せふろく/の¥おん=ぱからひ/にて/こそ¥ある/に、¥これ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や。¥てんせうだいじん、¥かすが−だい−みやうじん/の¥しんりよ/の/ほど/も¥はかり−がたし。¥
おなじき−じふごにち、¥にふだう−しやうこく¥てうか/を¥うらみ¥たてまつる/べき¥こと、¥ひつぢやう/と¥きこえ/しか/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、¥こ=せうなごん−しんせい/の¥しそく¥じやうけん−ほふいん/を¥お=つかひ/にて、¥にふだう−しやうこく/の¥もと/へ¥つかはさ/る。¥おほせ−くださ/れ/ける/は、「¥きんねん¥てうてい¥しづか/なら/ず/して、¥ひと/の¥こころ/も¥ととのほら/ず。P219¥せけん/も¥いまだ¥らくきよ−せ/ぬ¥さま/に¥なり−ゆく¥こと/を、¥そうべつ/に¥つけ/て¥なげき−おぼしめせ/ども、¥さて¥そこ/に¥あれ/ば、¥ばんじ/は¥たのみ−おぼしめさ/れ/て/こそ¥ある/に、¥たとひ¥てんが/を¥しづむる/まで/こそ¥なから/め、¥あまつさへ¥がうがう/なる¥てい/にて、¥てうか/を¥うらみ¥たてまつる/べし/と¥きこしめす/は¥なにごと/ぞ」/と¥おほせ−くださ/る。¥ほふいん¥ちよくぢやう/を¥うけたまはつ/て、¥にしはちでう/の−てい/に¥ゆき−むかふ。¥にふだう¥たいめん/も¥し¥たまは/ず、¥あした/より¥ゆうべ/に¥およぶ/まで¥また/れ/けれ/ども、¥ぶいん/なり/けれ/ば、¥され/ば/こそ/と¥むやく/に¥おもひ、¥げん−たいふ/の−はんぐわん−すゑさだ/を¥もつて、¥ちよくぢやう/の¥おもむき¥いひ−いれ/させ、「¥いとま¥まうし/て」/とて¥いで/られ/けれ/ば、¥その−とき¥にふだう、「¥ほふいん¥よべ」/とて¥いで/られ/たり。¥よび−かへし/て、「¥やや¥ほふいん/の−おん=ばう、¥じやうかい/が¥まうす¥ところ/は¥ひがごと/か。¥まず¥だいふ/が¥みまかり/ぬる¥こと、¥たうけ/の¥うんめい/を¥はかる/に¥もつて、¥にふだう¥ずゐぶん¥ひるゐ/を¥おさへ/て/こそ¥まかり−すぎ¥さふらひ/しか。¥ご=へん/の¥こころ/に/も¥すゐさつ−し¥たまへ。¥ほうげん¥いご/は、¥らんげき¥うち−つづい/て、¥きみ¥やすい¥こころ/も¥ましまさ/ざり/し/に、¥にふだう/は¥ただ¥おほかた/を¥とり−おこなふ/ばかり/で/こそ¥さふらへ。¥だいふ/こそ¥て/を¥おろし¥み/を¥くだい/て、¥どど/の¥げきりん/を/ば¥しづめ¥まゐらせ¥さふらひ/しか。¥その−ほか¥りんじ/の¥おん=だいじ、¥てうせき/の¥せいむ、¥だいふ/ほど/の¥こうしん/は、¥あり−がたう/こそ¥さふらへ。¥ここ/を¥もつて¥いにしへ/を¥あんずる/に、¥たう/の¥たいそう/は、¥ぎちよう/に¥おくれ/て、¥かなしみ/の¥あまり/に、¥むかし/の¥いんそう/は¥ゆめ/の¥うち/に¥りやうひつ/を¥え、¥いま/の¥ちん/は¥さめ/て/の¥のち¥けんしん/を¥うしなふ/と¥いふ¥ひ/の¥もん/を¥みづから¥かい/て、¥べう/に¥たて/て/だに/こそ¥かなしみ¥たまひ/ける/なれ。¥わが¥てう/に/も、¥まぢかう¥み¥さふらひ/し¥こと/ぞ/かし。¥あきよりの−みんぶきやう/が¥せいきよ−し/たり/し/を/ば、¥こ=ゐん¥こと/に¥おん=なげき¥あつ/て、P220¥やはた/の−ぎやうがう¥えんいん¥あつ/て、¥ぎよ=いう¥なかり/き。¥すべて¥しんか/の¥そつする/を/ば、¥だいだい/の¥みかど、¥みな¥おん=なげき¥ある¥こと/で/こそ¥さふらへ。¥それ/に¥だいふ/が¥ちういん/に、¥やはた/の¥ご=かう¥あつ/て¥ぎよ=いう¥あり/き。¥おん=なげき/の¥いろ、¥いちじ/も¥これ/を¥み/ず。¥たとひ¥だいふ/が¥ちう/を/こそ¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまふ/とも、¥など/か¥にふだう/が¥かなしみ/を/ば、¥おん=あはれみ¥なく/て/は¥さふらふ/べき。¥たとひ¥にふだう/が¥かなしみ/を/こそ¥おん=あはれみ¥なく/とも、¥など/か¥だいふ/が¥ちう/を/ば¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまふ/べき。¥ふし¥とも/に¥えいりよ/に¥そむき¥まうす¥こと、¥いま/に¥おいて¥めんぼく/を¥うしなふ。¥これ¥ひとつ。¥つぎ/に¥ゑちぜんの−くに/を/ば、¥しし−そんぞん/まで¥ご=へんかい¥ある/まじき¥よし¥おん=やくそく¥さふらひ/て、¥くだし¥たまひ/て¥さふらひ/しか/ども、¥だいふ/に¥おくれ/て¥のち、¥やがて¥めし−かへさ/れ¥さふらふ/は、¥なん/の¥くわたい/にて¥さふらふ/やらん。¥これ¥ひとつ。¥つぎに¥ちうなごん¥けつ/の¥さふらひ/し¥とき、¥にゐ/の−ちうじやう¥しきり/に¥しよまう¥さふらひ/し/を、¥にふだう¥ずゐぶん¥とり¥まうし/しか/ども、¥つひに¥ご=しよういん¥なく/して、¥くわんばく/の¥そく/を¥なさ/るる¥こと/は¥いか/に。¥たとひ¥にふだう¥いか/なる¥ひきよ¥まうし−おこなふ/とも、¥いちど/は¥など/か¥きこしめし−いれ/で/は¥さふらふ/べき。¥ゐかい/と¥いひ、¥けちやく/と¥いひ、¥りうん¥さう/に¥およば/ざる¥こと/を、¥ひき−ちがへ/させ¥たまふ¥おん=こと/は、¥あまり/に¥ほい−なき¥おん=ぱからひ/と/こそ¥ぞんじ¥さふらへ。¥これ¥ひとつ。¥つぎに¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ、¥きんじふ/の¥ひとびと、¥ししのたに/に¥より−あひ/て、¥むほん/を¥くはだて/し¥こと/も、¥まつたく¥わたくし/の¥けいりやく/に/は¥あら/ず、¥しかしながら¥きみ¥ご=きよよう¥ある/に¥よつ/て/なり。¥こと−あたらしき¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥この¥いちもん/を/ば¥しちだい/まで/は、¥いかで/か¥おぼしめし−すて/させ¥たまふ/べき/に、¥それ/に¥にふだう¥しちじゆん/に¥およん/で、¥よめい¥いくばく/なら/ぬP221¥いちご/の¥うち/に/だに、¥やや/も¥すれ/ば¥ほろぼさ/る/べき¥よし/の¥ご=けつこう¥ざふらふ。¥まうし¥さふらは/ん/や、¥しそん¥あひ−つづい/て、¥てうか/に¥めし−つかは/れ/ん¥こと/も¥あり−がたう/こそ¥さふらへ。¥およそ¥おい/て¥こ/に¥おくるる/は、¥こぼく/の¥えだ¥なき/に¥こと/なら/ず。¥いま/は¥ほど−なき¥うき−よ/に、¥さ/のみ¥こころ/を¥つひやし/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/なれば、¥いかで/も¥あり/な/ん/と¥おもひ−なつ/て/こそ¥さふらへ」/とて、¥かつうは¥ふくりふ−し、¥かつうは¥らくるゐ−し¥たまへ/ば、¥ほふいん¥おそろしう/も、¥また¥あはれ/に/も¥おぼえ/て、¥あせみづ/に/こそ¥なら/れ/けれ。¥
その−とき/は¥いか/なる¥ひと/も、¥いちごん/の¥へんじ/に/は¥および−がたき¥こと/ぞ/かし。¥その−うへ¥わが−み/も¥きんじゆ/の¥じん/にて、¥ししのたに/に¥より−あひ/し¥こと/を、¥まさしう¥み−きか/れ/しか/ば、¥ただいま/も¥その¥にんじゆ/とて¥めし/や¥こめ/られ/んず/らん/と¥おもは/れ/けれ/ば、¥りよう/の¥ひげ/を¥なで、¥とら/の¥を/を¥ふむ¥ここち/は¥せ/られ/けれ/ども、¥ほふいん/も¥さる¥おそろしき¥ひと/にて、¥ちつと/も¥さわが/ず¥まうさ/れ/ける/は、「¥まことに¥どど/の¥ご=ほうこう¥あさから/ず¥さふらふ。¥いつたん¥うらみ¥まうさ/せ¥まします¥むね、¥その¥いはれ¥さふらふ。¥ただし¥くわんゐ/と¥いひ、¥ほうろく/と¥いひ、¥おん=み/に¥とつ/て/は¥ことごとく¥まんぞく−す。¥され/ば¥こう/の¥ばくたい/なる¥こと/を/も、¥きみ¥つねに¥ぎよ=かん¥ある/で/こそ¥さふらへ。¥しかる/に¥きんしん¥こと/を¥みだり、¥きみ¥ご=きよよう¥あり/など¥まうす¥こと/は、¥ぼうしん/の¥きようがい/にて/ぞ¥さふらは/んず/らん。¥およそ¥みみ/を¥しんじ/て¥め/を¥うたがふ/は、¥ぞく/の¥つね/の¥へい/なり。¥せうじん/の¥ふげん/を¥おもく/して、¥てうおん/の¥た/に¥こと/なる/に、¥いまさら¥また¥きみ/を¥かたぶけ¥まゐら/させ ¥たまは/ん¥こと、¥みやうけん/に¥つけ/て、¥その¥おそれ¥すくなから/ず¥さふらふ。¥およそ¥てんしん/は¥さうさう/と/して¥はかり−がたし。¥えいりよ¥さだめて¥その¥ぎ/で/ぞ¥さふらは/んず/らん。P222¥しも/と/して¥かみ/に¥さかふる¥こと/は、¥あに¥じんしん/の¥れい/たら/ん/や。¥よくよく¥ご=しゆゐ¥さふらふ/べし。¥せんずる−ところ、¥この¥おもむき/を/こそ¥ひろう¥つかまつり¥さふらは/め」/とて¥たた/れ/けれ/ば、¥その¥ざ/に¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥ひとびと、「¥あな¥おそろし。¥にふだう/の¥あれ−ほど¥いかり¥たまふ/に、¥ちつと/も¥さわが/ず、¥へんじ¥うち−し/て¥たた/れ/ける/よ」/とて、¥ほふいん/を¥ほめ/ぬ¥ひと/こそ¥なかり/けれ。
「だいじんるざい」(『だいじんるざい』)S0316¥ほふいん¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥ほふわう/も¥だうり¥しごく−し/て、¥かさねて¥おほせ−くださ/るる¥むね/も¥なし。¥おなじき−じふろくにち、¥にふだう−しやうこく¥この¥ひごろ¥おもひ−たち¥たまへ/る¥こと/なれ/ば、¥くわんばく=どの/を¥はじめ¥たてまつり/て、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく¥しじふさん−にん/が¥くわんしよく/を¥とどめ/て、¥おひ−こめ¥たてまつら/る。¥なか/に/も¥くわんばく=どの/を/ば、¥だざい/の−そつ/に¥うつし/て、¥ちんぜい/へ/と/ぞ¥きこえ/し。「¥かから/ん¥よ/に/は、¥とても−かくても¥あり/な/ん」/とて、¥とば/の¥へん、¥ふるかは/と¥いふ¥ところ/にて¥ご=しゆつけ¥あり。¥おん=とし¥さんじふご。「¥れいぎ¥よく¥しろしめし/て、¥くもり¥なき¥かがみ/にて¥おはし/つる¥ひと/を」/とて、¥よ/の¥をしみ¥たてまつる¥こと¥なのめ/なら/ず。¥をんる/の¥ひと/の、¥みち/にて¥しゆつけ−し/たる/を/ば、¥やくそく/の¥くに/へ/は¥つかはさ/ぬ¥こと/にて¥ある¥あひだ、¥はじめ/は¥ひうがの−くに/とP223¥さだめ/られ/たり/しか/ども、¥これ/は¥ご=しゆつけ/の¥あひだ、¥びぜん/の¥こふ/の¥へん、¥いばさま/と¥いふ¥ところ/に/ぞ¥おき¥たてまつる。¥だいじん¥るざい/の¥れい/は、¥さだいじん−そがの−あかえ、¥うだいじん−とよなり、¥さだいじん−うをな、¥うだいじん−すがはら、¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく¥いま/の¥きたのの−てんじん/の¥おん=こと/なり。¥さだいじん−かうめい=こう、¥ないだいじん−ふぢはらの−いしう=こう/に¥いたる/まで、¥その¥れい¥すでに¥ろくにん、¥され/ども¥せつしやう¥くわんばく¥るざい/の¥れい/は¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥こ=なか=どの/の¥おん=こ、¥にゐ/の−ちうじやう−もとみち/は、¥にふだう/の¥むこ/にて¥おはし/けれ/ば、¥だいじん¥くわんばく/に¥なし¥たてまつら/る。¥さんぬる¥ゑんゆうゐん/の¥ぎよ=う、¥てんろく−さんねん−じふいちぐわつ−ひとひのひ、¥いちでうの−せつしやう−けんとく=こう¥うせ¥たまひ/しか/ば、¥おん=おとと¥ほりかはの−くわんばく−ちうぎこう、¥その−とき/は¥いまだ¥じゆ−にゐ/の−ちうなごん/にて¥おはし/き。¥その¥おん=おとと¥ほふこうゐん/の−おほ−にふだう−かねいへ=こう、¥その−ころ/は¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥ましまし/けれ/ば、¥ちうぎ=こう/は¥おん=おとと/に¥かかい¥こえ/られ/させ¥たまひ/たり/しか/ども、¥いま¥また¥こえ−かへし/て、¥ないだいじん−じやう−にゐ−し/て、¥ないらん/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまひ/し/を/こそ、¥ひと¥みな¥じぼく/を¥おどろかし/たる¥ご=しようじん/と/は¥まうし−あは/れ/しか。¥これ/は¥それ/に/は¥なほ¥てうくわ−せ/り。¥ひさんぎ−にゐ/の−ちうじやう/より、¥だいちうなごん/を¥へ/ず/して、¥だいじん−せつしやう/に¥なる¥こと、¥これ¥はじめ。¥ふげんじ=どの/の¥おん=こと/なり。¥しやうけい−さいしやう、¥だいげき、¥たいふのし/に¥いたる/まで、¥みな¥あきれ/たる¥さま/にて/ぞ¥さふらは/れ/ける。¥
だいじやうだいじん−もろなが/は、¥つかさ/を¥とどめ/て、¥あづま/の¥かた/へ¥ながさ/れ¥たまふ。¥さんぬる¥ほうげん/に/は¥ちちP224¥あく−ひだん/の−おほい=どの/の¥えんざ/に¥よつ/て、¥きやうだい¥しにん¥るざい−せ/られ¥たまひ/に/き。¥おん=あに¥うだいしやう−かねなが、¥おん=おとと¥ひだん/の−ちうじやう−たかなが、¥はんちやう−ぜんじ¥さん−にん/は、¥きらく/を¥また/ず/して、¥はいしよ/にて¥つひに¥うせ¥たまひ/ぬ。¥これ/は¥とさ/の¥はた/にて¥ここのかへり/の¥はるあき/を¥おくり−むかへ、¥ちやうぐわん−にねん−はちぐわつ/に¥めし−かへさ/れ/て、¥ほんゐ/に¥ふくし、¥つぎ/の¥とし¥じやう−にゐ−し/て、¥にんあん−ぐわんねん−じふぐわつ/に、¥さきの−ちうなごん/より¥ごん−だいなごん/に¥あがり¥たまふ。¥をりふし¥だいなごん¥あか/ざり/けれ/ば、¥かず/の¥ほか/に/ぞ¥くはは/られ/ける。¥だいなごん¥ろくにん/に¥なる¥こと、¥これ¥はじめ。¥また¥さきの−ちうなごん/より¥ごん−だいなごん/に¥あがる¥こと/も、¥ごやましなの−だいじん−みもり=こう、¥うぢの−だいなんごん−りうこくの−きやう/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥くわんげん/の¥みち/に¥たつし、¥さいげい¥すぐれ/て¥おはし/けれ/ば、¥しだい/の¥しようじん¥とどこほら/ず、¥だいじやうだいじん/まで¥きはめ/させ¥たまひ/て、¥また¥いか/なる¥つみ/の¥むくい/に/や、¥かさね/て¥ながさ/れ¥たまふ/らん。¥ほうげん/の¥むかし/は、¥なんかい¥とさ/へ¥うつさ/れ、¥ぢしよう/の¥いま/は、¥また¥とうくわん¥をはりの−くに/とかや。¥もと/より¥つみ¥なく/して¥はいしよ/の¥つき/を¥み/ん/と¥いふ¥こと/を/ば、¥こころ−ある¥きは/の¥ひと/の¥ねがふ¥こと/なれ/ば、¥おとど¥あへて¥こと/と/も¥し¥たまは/ず。¥かの¥たう/の¥たいし/の¥ひんかく¥はくらくてん、¥しんやうのえ/の¥ほとり/に¥やすらひ/けん、¥その¥いにしへ/を¥おもひ−やり、¥なるみがた¥しほぢ¥はるか/に¥ゑんけん−し/て、¥つねは¥らうげつ/を¥のぞみ、¥うらかぜ/に¥うそぶき、¥びは/を¥だんじ、¥わか/を¥えいじ/て、¥なほざり−がてら/に、¥つきひ/を¥おくり¥たまひ/けり。¥ある−とき¥たう−ごく¥だいさん/の¥みや¥あつたの−みやうじん/に¥さんけい¥あり/て、¥その¥よ¥しんめい¥ほふらく/の¥ため/に、¥びは¥ひき¥らうえい−し¥たまふ/に、¥ところ¥もと/より¥むち/の¥さかひ/なれ/ば、¥なさけ/を¥しれ/る¥もの¥なし。¥いふらう¥そんぢよ、P225¥ぎよじん¥やそう、¥かうべ/を¥うなだれ、¥みみ/を¥そばだつ/と¥いへ/ども、¥さらに¥せいだく/を¥わかつ/て、¥りよりつ/を¥しる¥こと¥なし。¥され/ども¥こはきん/を¥だんぜ/しか/ば、¥ぎよりん¥をどり−ほとばしり、¥ぐこう¥うた/を¥はつせ/しか/ば、¥りやうぢん¥うごき−うごく。¥もの/の¥めう/を¥きはむる¥とき/に/は、¥しぜん/に¥かん/を¥もよほす¥ことわり/なれ/ば、¥しよにん¥み/の−け¥よだつ/て、¥まんざ¥きい/の¥おもひ/を¥なす。¥やうやう¥しんかう/に¥およん/で、¥ふがうでう/の¥うち/に/は、¥はな¥ふんぷく/の¥き/を¥ふくみ、¥りうせん/の¥きよく/の¥あひだ/に/は、¥つき¥せいめい/の¥ひかり/を¥あらそふ。「¥ねがは−く/は¥こんじやう¥せぞくもんじ/の¥ごふ、¥きやうげん−きぎよ/の¥あやまり/を¥もつて」/と¥いふ¥らうえい/を¥し/て、¥ひきよく/を¥ひき¥たまひ/しか/ば、¥しんめい¥かんおう/に¥たへ/ず/して、¥ほうでん¥おほき/に¥しんどう−す。「¥へいけ/の¥あくぎやう¥なかり/せ/ば、¥いま¥この¥ずゐさう/を/ば¥いかで/か¥をがむ/べき」/とて、¥おとど¥かんるゐ/を/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥あぜつ/の−だいなごん−すけかたの−きやう、¥しそく¥うこんゑ/の−せうしやう−けん−さぬきの−かみ−みなもとの−すけとき、¥ふたつ/の¥くわん/を¥とどめ/らる。¥さんぎ−くわうだいこうぐう/の−ごん/の−だいぶ−けん−うひやうゑ/の−かみ−ふぢはらの−みつよし、¥おほくらきやう−うきやう/の−だいぶ−けん−いよの−かみ−たかしなの−やすつね、¥くらんど/の−させうべん−けん−ちうぐう/の−ごん/の−だいしん−ふぢはらの−もとちか、¥さんくわん¥とも/に¥とどめ/らる。¥なか/に/も¥あぜつ/の−だいなごん−すけかたの−きやう、¥しそく¥うこんゑ/の−せうしやう、¥まご/の¥うせうしやう−まさかた、¥これ¥さん−にん/を/ば、¥けふ¥やがて¥みやこ/の¥うち/を¥おひ−いださ/る/べし/とて、¥しやうけい/に/は¥とう−だいなごん−さねくに、¥はかせ/の−はうぐわん−なかはらの−のりさだ/に¥おほせ/て、¥その−ひ¥やがて¥みやこ/の¥うち/を¥おひ−いださ/る。¥だいなんごん¥のたまひ/ける/は、「¥さんがい¥ひろし/と¥いへ/ども、¥ごしやく/の¥み¥おきどころ¥なし。¥いつしやう¥ほど−なし/と¥いへ/ども、¥いちにち¥くらし−がたし」/とて、¥やちう/に¥ここのへ/の¥うち/を¥まぎれ−いで/て、¥やへ¥たつ¥くも/の¥ほか/へ/ぞP226¥おもむか/れ/ける。¥かの¥おほえやま/や、¥いくの/の¥みち/に¥かかり/つつ、¥はじめ/は¥たんばの−くに¥むらくも/と¥いふ¥ところ/に、¥しばし/は¥やすらひ¥たまひ/し/が、¥それ/より¥つひに/は¥たづね−いださ/れ/て、¥しなのの−くに/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「ゆきたかのさた」(『ゆきたかのさた』)S0317¥さきの−くわんばく−まつ=どの/の¥さぶらひ/に、¥がう−たいふ/の−はうぐわん−とほなり/と¥いふ¥もの¥あり。¥これ/も¥へいけ/に¥こころよから/ざり/ける/が、¥ろくはら/より¥からめ−とら/る/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥しそく¥がう−ざゑもん/の−じよう−いへなり¥あひ−ぐし/て、¥みなみ/を¥さし/て¥おち−ゆき/ける/が、¥いなりやま/に¥うち−あがり、¥むま/より¥おり/て、¥おやこ¥いひ−あはせ/ける/は、「¥これ/より¥とうごく/へ¥おち−くだり、¥るにん¥さきの−うひやうゑ/の−すけ−よりとも/を¥たのま/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥それ/も¥たうじ/は¥ちよくかん/の¥み/にて、¥わが−み¥ひとつ/を/だに¥かなひ−がたう¥おはす/なり。¥その−ほか¥につぽんごく/に、¥へいけ/の¥しやうゑん/なら/ぬ¥ところ/や¥ある。¥とても¥のがれ/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥ねんらい¥すみ−なれ/たる¥ところ/を、¥ひと/に¥みせ/ん/も¥はぢがまし。¥これ/より¥とつ/て¥かへし、¥ろくはら/より¥めしつかひ¥あら/ば、¥たち/に¥ひ¥かけ¥やき−あげ、¥はら¥かき−きつ/て¥しな/ん/に/は¥しか/じ」/とて、¥また¥かはらざか/の¥しゆくしよ/へ¥とつ/て¥かへす。¥あん/の/ごとく¥げん−だいふ/の−はうぐわん−すゑさだ、¥つの−はうぐわん−もりずみ、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥かはらざか/の¥しゆくしよ/へ¥おし−よせ/て、P227¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥がう−たいふ/の−はうぐわん、¥えん/に¥たち−いで¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いか/に¥おのおの¥ろくはら/で/は、¥この¥やう/を¥まうさ/せ¥たまへ」/とて、¥たち/に¥ひ¥かけ、¥やき−あげ、¥ふし¥とも/に¥はら¥かき−きつ/て、¥ほのほ/の¥なか/にて¥やけ−しに/ぬ。¥そもそも¥かやう/に¥ひと/の¥ほろび−そんずる¥こと/を¥いか/に/と¥いふ/に、¥さきの−おほ=との/の¥おん=こ¥さんみ/の−ちうじやう=どの/と、¥たうじ¥くわんばく/に¥なら/せ¥たまふ¥にゐ/の−ちうじやう=どの/と、¥ちうなごん¥ご=さうろん¥ゆゑ/と/ぞ¥きこえ/し。¥さら/ば¥くわんばく=どの¥ご=いつしよ/ばかり/こそ、¥いか/なる¥おん=め/に/も¥あはせ¥たまふ/べき/に、¥しじふさん−にん/の¥ひとびと/の、¥こと/に¥あふ/べき/や/は。¥およそ/は¥これ/に/も¥かぎる/まじか/ん/なれ/ども、¥にふだう−しやうこく/の¥こころ/に¥てんま¥いり−かはつ/て、¥よろづ¥はら/を¥すゑ−かね¥たまふ¥よし¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥また¥さわぎ−あへ/り。¥こぞ¥さぬきのゐん¥ご=つゐがう¥あり/て、¥しゆとく−てんわう/と¥かうし、¥うぢの−あく−さふ、¥ぞうくわん¥ぞうゐ¥おこなは/れ/たり/と¥いへ/ども、¥せけん/は¥なほ/も¥しづか/なら/ず。¥
その−ころ¥さきの−させうべん−ゆきたか/と¥きこえ/し/は、¥こ=なかやまの−ちうなごん−あきときの−きやう/の¥ちやうなん/なり。¥にでうのゐん/の¥おん=とき/は、¥べんくわん/に¥くははつ/て、¥さ/しも¥ゆゆしう¥おはせ/し/が、¥この¥じふ−よ−ねん/は¥くわん/を/も¥とどめ/られ/て、¥なつ¥ふゆ/の¥ころもがへ/に/も¥およば/ず、¥てうぼ/の¥ざん/も¥まれ/なり。¥ある/か¥なき/か/の¥てい/にて¥おはし/ける/を、¥にふだう−しやうこく¥ししや/を¥もつて、「¥きつと¥たち−より¥たまへ。¥まうし−あは/す/べき¥こと¥あり」/と、¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゆきたか、「¥この¥じふ−よ−ねん/は¥くわん/を/も¥とどめ/られ/て、¥よろづ¥なにごと/に/も¥まじはら/ざり/つる/ものを。¥いかさま/に/も¥ざんげん−し/て、¥うしなは/ん/と¥する¥もの/の¥ある/に/こそ」/とて、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥きたのかた¥いげ¥にようばう=たち、P228¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。¥さる−ほど/に¥にしはちでう=どの/より、¥つかひ¥しきなみ/に¥あり/しか/ば、¥ゆきたか、「¥いで−むかつ/て/こそ、¥と/も−かく/も¥なら/め」/とて、¥ひと/に¥くるま¥かつ/て¥いで/られ/たれ/ば、¥おもふ/に/は¥に/ず、¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん¥あり/て、「¥ご=へん/の¥ちち/の¥きやう/は、¥にふだう¥だいせうじ/を¥まうし−あはせ/し¥ひと/なり。¥その¥しそく/にて¥おはすれ/ば、¥ご=へん/とて/も¥まつたく¥おろそか/に¥おもひ¥たてまつら/ず。¥ねんらい¥ろうきよ/の¥こと/も¥いたはしう/は¥おぼゆれ/ども、¥ほふわう/の¥ご=せいむ/の¥うへ/は¥ちから¥およば/ず。¥いま/は¥しゆつし−し¥たまへ。¥くわんど/の¥こと/も、¥まうし¥さた¥つかまつり¥さふらは/ん。¥さら/ば¥とう¥かへら/れよ」/とて¥かへさ/れ/たれ/ば、¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥さし−つどひ/て、¥しに/たる¥ひと/の¥いき−かへり/たる¥ここち−し/て、¥よろこびなき/を/ぞ¥せ/られ/ける。¥その−のち¥げん−たいふ/の−はんぐわん−すゑさだ/を¥もつて、¥ちぎやう−し¥たまふ/べき¥しやうゑんじやう=ども、¥あまた¥なし−つかはし、¥まづ¥さ/こそ¥おはす/らん/とて、¥ひやつ−ぴき¥ひやく−りやう/に、¥よね/を¥つん/で/ぞ¥おくら/れ/ける。¥しゆつし/の¥れう/に/とて、¥ざふしき¥うしかひ¥うし−ぐるま/に¥いたる/まで、¥きよ=げ/に¥さた−し¥おくら/れ/けれ/ば、¥ゆきたか¥て/の¥まひ、¥あし/の¥ふみど/を/も¥おぼえ¥たまは/ず、¥こ/は¥ゆめ/やらん/と/ぞ¥おどろか/れ/ける。¥おなじき−じふしちにち、¥ごゐ/の−じちう/に¥ふせ/られ/て、¥もと/の/ごとく¥させうべん/に¥なし−かへさ/る。¥こんねん¥ごじふいち、¥いまさら¥わかやぎ¥たまひ/けり。¥ただ¥へんし/の¥えいぐわ/と/ぞ¥みえ/し。P229¥
「ほふわうごせんかう」(『ほふわうながされ』)S0318¥おなじき−はつかのひ、¥ほふぢうじ=どの/を/ば、¥ぐんびやう¥しめん/を¥うち−かこん/で、¥へいぢ/に¥のぶよりの−きやう/が¥さんでう=どの/を¥し/たり/し¥やう/に、¥ごしよ/に¥ひ/を¥かけ、¥ひと/を/ば¥みな¥やき−ほろぼす/べき¥よし¥きこえ/しか/ば、¥つぼね/の¥にようぼう、¥あやし/の¥め/の−わらは/に¥いたる/まで、¥もの/を/だに¥うち−かづか/ず/して、¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と/ぞ¥にげ−いで/ける。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥おん=くるま/を¥よせ/て、「¥とうとう」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥えいりよ/を¥おどろか/せ¥おはしまし、「¥なりちか¥しゆんくわん=ら/が¥やう/に、¥とほき¥くに、¥はるか/の¥しま/へ/も¥うつし−やら/れ/んずる/に/こそ。¥さらに¥おん=とが¥ある/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥しゆしやう¥さて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥せいむ/の¥こうじゆ−する/ばかり/なり。¥それ/も¥さら/ず/は、¥じごん¥いご、¥さら/で/も¥あれ/かし」/と¥おほせ/けれ/ば、¥むねもりの−きやう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥いか/に¥ただいま、¥さる−おん=こと¥さふらふ/べき。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥とば/の¥きた=どの/へ¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせよ/と、¥ちち/の¥ぜんもん¥まうし¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、「¥さら/ば¥なんぢ¥やがて¥おん=とも¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ども、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥きしよく/に¥おそれ/を¥なし/て、¥おん=とも/に/は¥まゐら/れ/ず。「¥これ/に¥つけ/て/も、¥あに/の¥だいふ/に/は、¥こと/の−ほか/に¥おとり/たる/ものかな。¥ひととせ/も¥かかる¥おん=め/に¥あふ/べかり/し/を、¥だいふ/が¥み/に¥かへ/てP230¥せいし−とどめ/て/こそ、¥けふ/まで/も¥おん=こころ−やすかり/つれ。¥いま/は¥いさむる¥もの/の¥なき/とて、¥かう/は¥する/やらん。¥ゆく−すゑ/とて/も¥たのもしから/ず¥おぼしめす」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥さて¥おん=くるま/に¥めさ/れ/けり。¥くぎやう−てんじやうびと、¥いち−にん/も¥ぐぶ−せ/られ/ず、¥ほくめん/の¥げらふ/と、¥さて/は¥こんぎやう/と¥いふ¥おん=りきしや/ばかり/ぞ¥まゐり/ける。¥おん=くるま/の¥しり/に/は、¥あまぜ¥いち−にん¥まゐら/れ/けり。¥この¥あまぜ/と¥まうす/は、¥やがて¥ほふわう/の¥おん=ち/の¥ひと、¥きの−にゐ/の¥おん=こと/なり。¥しちでう/を¥にし/へ、¥しゆしやか/を¥みなみ/へ¥ご=かう¥なし¥たてまつる。「¥あはや¥ほふわう/の¥ながさ/れ/させ¥おはします/ぞ/や」/とて、¥こころ−なき¥あやし/の¥しづ/の−を、¥しづ/の−め/に¥いたる/まで、¥みな¥なみだ/を¥ながし、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。「¥さんぬる¥なぬか/の¥よ/の¥おほ−ぢしん/も、¥かかる/べかり/ける¥ぜんべう/にて、¥じふろく−らくしや/の¥そこ/まで/も¥こたへ、¥けんらうぢじん(じしん)/の¥おどろき−さわぎ¥たまふ/らん/も¥ことわり/かな」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥さて¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なつ/て¥のち、¥ごぜん/に¥ひと¥いち−にん/も¥さふらは/ず。¥なに/と/して/か¥まぎれ−いり/たり/けん、¥だいぜん/の−だいぶ−のぶなり/が¥ただ¥いち−にん¥さふらひ/ける/を、¥ごぜん/へ¥めし/て、「¥われ/は¥ちかう¥うしなは/れ/んずる/と¥おぼしめす/ぞ。¥おん=ぎやうずゐ/を¥めさ/ばや/と¥おぼしめす/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥さら/ぬ/だに¥のぶなり/は、¥けさ/より¥きも−たましひ/も¥み/に¥そは/ず、¥あきれ/たる¥さま/にて¥さふらひ/ける/が、¥この¥おほせ¥うけたまはる¥こと/の¥かたじけな−さ/に、¥かりぎぬ/の¥たまだすき¥あげ、¥かま/に¥みづ¥くみ−いれ、¥こしばがき¥こぼち、¥おほ−ゆか/の¥つかばしら¥わり/など¥し/て、¥かた/の/ごとく/の¥おん=ゆ¥し−いだい/て¥たてまつる。P231¥
また¥じやうけん−ほふいん、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/へ¥ゆき−むかつ/て、「¥ゆふべ¥ほふわう/の¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なつ/て¥さふらふ/なる/に、¥ごぜん/に¥ひと¥いち−にん/も¥さふらは/ぬ¥よし¥うけたまはつ/て、¥あまり/に¥あさましく¥おぼえ¥さふらふ。¥なにか¥くるしう¥さふらふ/べき。¥じやうけん/ばかり¥おん=ゆるされ/を¥かうぶつ/て、¥まゐり¥さふらは/ばや」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥いかが¥おもは/れ/けん。「¥おん=ぼう/は¥いつかう¥こと¥あやまつ/まじき¥ひと/なり。¥とうとう」/とて¥ゆるさ/れ/けり。¥ほふいん¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥いそぎ¥とば=どの/へ¥まゐり、¥もんぜん/にて¥くるま/より¥おり、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いり¥たまふ/に、¥をりふし¥ほふわう/は¥おん=きやう¥うち−あげ−うち−あげ¥あそばさ/れ/ける¥おん=こゑ/の、¥こと/に¥すごう/ぞ¥きこえ/させ¥おはします。¥ほふいん/の、¥つと¥まゐら/れ/たれ/ば、¥あそばさ/れ/ける¥おん=きやうに、¥おん=なみだ/の¥はらはら/と¥かから/せ¥たまふ/を¥み¥まゐらせ/て、¥ほふいん¥あまり/の¥かなし−さ/に、¥きうたい/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥なくなく¥ごぜん/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥ごぜん/に/は¥あまぜ/ばかり/ぞ¥さふらは/れ/ける。「¥やや¥ほふいん/の¥おん=ばう、¥きみ/は¥きのふ/の¥あした、¥ほふぢうじ=どの/にて、¥ぐご¥きこしめし/て¥のち/は、¥ゆふべ/も¥けさ/も¥きこしめさ/ず。¥ながき¥よ−すがら¥ぎよ=しん/も¥なら/ず、¥おん=いのち/も¥すでに¥あやふう/こそ¥みえ/させ¥おはしませ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ほふいん¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥なにごと/も¥かぎり−ある¥こと/で/こそ¥さふらへ。¥へいけ¥よ/を¥とつ/て¥にじふ−よ−ねん、¥され/ども¥あくぎやう¥ほふ/に¥すぎ/て、¥すでに¥ほろび¥さふらひ/な/んず。¥され/ば¥てんせうだいじん、¥しやう−はちまんぐう/も、¥きみ/を/ば¥いかで/か¥おぼしめし−はなた/せ¥たまふ/べき。¥なか/に/も¥きみ/の¥おん=たのみ¥まします¥ひよし−さんわう−しちしや、¥いちじよう−しゆご/の¥おん=ちかひ¥いまだ¥あらたま/ら/ず/は、¥かの¥ほつけ−はちぢく/にP232¥たち−かけつ/て/こそ、¥きみ/を/ば¥まもり¥まゐら/させ¥たまふ/らめ。¥され/ば¥せいむ/は¥きみ/の¥おん=よ/と¥なり、¥きようと/は¥みづ/の¥あわ/と¥きえ−うせ¥さふらひ/な/んず」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ほふわう¥この¥ことば/に¥すこし¥なぐさま/せ¥おはします。¥しゆしやう/は¥くわんばく¥ながさ/れ¥たまひ、¥しんか/の¥おほく¥ほろび−そんずる¥こと/を/のみ/こそ、¥おん=なげき¥あり/つる/に、¥いま¥また¥ほふわう/の¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なり/ぬる¥よし¥きこしめし/て、¥つやつや¥ぐご/も¥きこしめさ/ず、¥ご=なう/とて¥つね/は¥よるの−おとど/に/のみ¥いら/せ¥おはします。¥ごぜん/に¥さぶらは/せ¥たまふ¥にようばう=たち、¥きさいのみや/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥いか/なる/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥ほふわう/の¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なつ/て¥のち、¥だいり/に/は¥りんじ/の¥ご=じんじ/とて、¥せいりやうでん/の¥いしばひ/の−だん/に/して、¥しゆしやう¥よ−ごと/に¥いせ−だい−じんぐう/を/ぞ¥ご=はい¥あり/ける。¥これ/は¥いつかう¥ほふわう¥おん=いのり/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥にでうのゐん/は、¥さ/ばかり/の¥けんわう/にて¥わたら/せ¥たまひ/しか/ども、¥てんし/に¥ぶも¥なし/とて、¥つね/は¥ゐん/の¥おほせ/を¥まうし−かへさ/せ¥おはしまし/けれ/ば/に/や、¥けいてい/の−きみ/にて/も¥ましまさ/ず。¥され/ば¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまひ/たり/し¥ろくでうのゐん/も、¥あんげん−にねん−しちぐわつ−じふしにち、¥おん=とし¥じふさん/にて、¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥あさましかり/し¥こと=ども/なり。P233¥
「せいなんのりきう」(『せいなんのりきゆう』)S0319¥はくかう/の¥なか/に/は、¥かうかう/を¥もつて¥さき/と¥す。¥めいわう/は¥かう/を¥もつて¥てんが/を¥をさむ/と¥いへ/り。¥され/ば¥たうげう/は¥おい−おとろへ/たる¥はは/を¥たつとび、¥ぐしゆん/は¥かたくな/なる¥ちち/を¥うやまふ/と¥みえ/たり。¥かの¥けんわう¥せいしゆ/の¥せんき/を¥おはせ¥ましまし/けん、¥えいりよ/の¥ほど/こそ¥めでたけれ。¥その−ころ¥だいり/より¥とば=どの/へ、¥ひそか/に¥ごしよ¥あり/けり。「¥かから/ん¥よ/に/は、¥くもゐ/に¥あと/を¥とどめ/て/も、¥なに/に/かは¥し¥さふらふ/べき/なれ/ば、¥くわんぺい/の¥むかし/を/も¥とぶらひ、¥くわざん/の¥いにしへ/を/も¥たづね/て、¥さんりん¥るらう/の¥ぎやうじや/と/も¥なり/ぬ/べう/こそ¥さふらへ」/と¥あそばさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/の¥おん=ぺんじ/に、「¥さ¥な¥おぼしめさ/れ¥さふらひ/そ。¥さて¥わたら/せ¥たまへ/ば/こそ、¥ひとつ/の¥たのみ/にて/も¥さふらへ。¥あと¥なく¥おぼしめし−なら/せ¥たまひ/な/ん¥のち/は、¥なに/の¥たのみ/か¥さふらふ/べき。¥ただ¥と/も−かう/も、¥ぐらう/が¥なら/ん¥やう/を、¥ごらんじ−はて/させ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と、¥あそばさ/れ/たり/けれ/ば、¥しゆしやう¥この¥おん=ぺんじ/を¥りようがん/に¥おし−あて/させ¥たまひ/て、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥きみ/は¥ふね、¥しん/は¥みづ、¥みづ¥よく¥ふね/を¥うかべ、¥みづ¥また¥ふね/を¥くつがへし、¥しん¥よく¥きみ/を¥たもち、¥しん¥また¥きみ/を¥くつがへす。¥ほうげん¥へいぢ/の¥ころ/は、¥にふだう−しやうこく、¥きみ/を¥たもち¥たてまつる/と¥いへ/ども、¥あんげん¥ぢしよう/の¥いま/は¥また、¥きみ/を¥なみし¥たてまつる。¥ししよ/のP234¥もん/に¥たがは/ず。¥
おほみやの−だいしやうこく、¥さんでうの−ないだいじん、¥はむろの−だいなごん、¥なかやまの−ちうなごん/も¥うせ/られ/ぬ。¥いま¥ふるき¥ひと/とて/は、¥せいらい、¥しんぱん/ばかり/なり。¥この¥ひとびと/も、¥かから/ん¥よ/に/は、¥てう/に¥つかへ¥み/を¥たて、¥だいちうなごん/を¥へ/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/とて、¥いまだ¥さかん/なつ/し¥ひとびと/の、¥いへ/を¥いで¥よ/を¥のがれ、¥みんぶきやう−にふだう−しんぱん/は、¥をはら/の¥しも/に¥ともなひ、¥さいしやう−にふだう−せいらい/は、¥かうや/の¥きり/に¥まじはつ/て、¥いつかう¥ごせ−ぼだい/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥なし/と/ぞ¥きこえ/し。¥むかし/も¥しやうざん/の¥くも/に¥かくれ、¥えいせん/の¥つき/に¥こころ/を¥すます¥ひと/も¥あり/けん/なれ/ば、¥これ¥あに¥はくらん−せいけつ/に/して、¥よ/を¥のがれ/たる/に¥あら/ず/や。¥なか/に/も¥かうや/に¥おはし/ける¥さいしやう−にふだう−せいらい、¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥あはれ¥こころ¥とく/も¥よ/を/ば¥のがれ/たる/ものかな。¥かくて¥きく/も¥おなじ¥こと/なれ/ども、¥まのあたり¥たち−まじはつ/て¥きか/ましか/ば、¥いか/ばかり¥こころ−うから/ん。¥ほうげん¥へいぢ/の¥みだれ/を/こそ、¥あさまし/と¥おもひ/つる/に、¥よ¥すゑ/に¥なれ/ば、¥かかる¥ふしぎ/も¥いで−き/に/けり。¥この−のち¥てんが/に¥いか/ばかり/の¥こと/か¥いで−こ/んず/らん。¥くも/を¥わき/て/も¥のぼり、¥やま/を¥へだて/て/も¥いり/な/ばや」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥げに¥こころ−あら/ん/ほど/の¥ひと/の、¥あと/を¥とどむ/べき¥よ/と/も¥おぼえ/ず。¥
おなじき−にじふいちにち、¥てんだい−ざす−かくくわい−ほつしんわう、¥しきり/に¥ご=じたい¥あり/しか/ば、¥さきの−ざす−めいうん−だいそうじやう、¥くわんちやく−し¥たまふ。¥にふだう−しやうこく、¥かく¥さんざん/に¥し−ちらさ/れ/たり/しか/ども、¥ちうぐう/と¥まうす/も¥おん=むすめ、¥くわんばく=どの/も¥また¥むこ/なり/けれ/ば、¥よろづ¥こころ−やすく/や¥おもは/れ/けん、¥せいむ/はP235¥いつかう¥しゆしやう/の¥おん=ぱからひ/たる/べし/とて、¥ふくはら/へ/ぞ¥くだら/れ/ける。¥おなじき−にじふさんにち、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥いそぎ¥さんだい−し/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥しゆしやう、「¥ほふわう/の¥ゆづり¥ましまし/たる¥よ/なら/ば/こそ。¥ただ¥しつぺい/に¥いひ−あはせ/て、¥むねもり¥と/も−かう/も¥よき¥やう/に¥あひ−はからへ」/とて、¥きこしめし/も¥いれ/ざり/けり。¥ほふわう/は¥せいなん/の−りきう/に/して、¥ふゆ/も¥なかば¥すごさ/せ¥たまへ/ば、¥やさん/の¥あらし/の¥おと/のみ¥はげしく/て、¥かんてい/の¥つき/ぞ¥さやけき。¥には/に/は¥ゆき¥ふり−つもれ/ども、¥あと¥ふみ−つくる¥ひと/も¥なく、¥いけ/に/は¥つらら¥とぢ−かさね/て、¥むれ−ゐ/し¥とり/も¥みえ/ざり/けり。¥おほでら/の¥かね/の¥こゑ、¥ゐあいじ/の¥きき/を¥おどろかし、¥にしやま/の¥ゆき/の¥いろ、¥かうろほう/の¥のぞみ/を¥もよほす。¥よる¥しも/に¥さむけき¥きぬた/の¥ひびき、¥かすか/に¥おん=まくら/に¥つたひ、¥あかつき¥こほり/を¥きしる¥くるま/の¥あと、¥はるか/の¥もんぜん/に¥よこたは/れ/り。¥ちまた/を¥すぐる¥かうじんせいば/の¥いそがはし=げ/なる¥けしき、¥うき−よ/を¥わたる¥ありさま/も、¥おぼしめし−しら/れ/て¥あはれ/なり。¥きうもん/を¥まもる¥ばんい/の、¥よる¥ひる¥けいゑい/を¥つとむる/も、「¥さき/の¥よ/の¥いか/なる¥ちぎり/にて、¥いま¥えん/を¥むすぶ/らん」/と、¥おほせ/なり/ける/ぞ¥かたじけなき。¥およそ¥もの/に¥ふれ¥こと/に¥したがつ/て、¥おん=こころ/を¥いため/しめ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥さる−まま/に/は、¥かの¥をりをり/の¥ご=いうらん、¥ところどころ/の¥ご=さんけい、¥おん=が/の¥めでたかり/し¥こと=ども、¥おぼしめし−つづけ/て、¥くわいきう/の¥おん=なみだ¥おさへ−がたし。¥とし¥さり¥とし¥きたつ/て、¥ぢしよう/も¥しねん/に¥なり/に/けり。P236¥

平家物語 巻第四  総かな版(元和九年本)
「いつくしまごかう」(『いつくしまごかう』)S0401¥P236¥ぢしよう−しねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥とば=どの/に/は、¥しやうこく/も¥ゆるさ/ず、¥ほふわう/も¥おそれ/させ¥ましまし/けれ/ば、¥ぐわんにち¥ぐわんざん/の¥あひだ、¥さんにふ¥つかまつる¥ひと/も¥なし。¥され/ども¥その¥なか/に¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥しそく、¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう、¥その¥おとと¥さきやう/の−だいぶ−ながのり/ばかり/ぞ、¥ゆるさ/れ/て/は¥まゐら/れ/ける。¥おなじき−はつかのひ、¥とうぐう¥おん=はかまぎ、¥ならびに¥おん=まなはじめ/とて、¥めでたき¥こと=ども¥あり/しか/ども、¥ほふわう/は¥とば=どの/にて、¥おん=みみ/の¥よそ/に/ぞ¥きこしめす。¥にんぐわつ−にじふいちにち、¥しゆしやう¥こと/なる¥おん=つつが/も¥わたら/せ¥たまは/ざり/し/を、¥おし−おろし¥たてまつ/て、¥とうぐう¥せんそ¥あり。¥これ/も¥にふだう−しやうこく、¥よろづ¥おもふ¥さま/なる/が¥いたす¥ところ/なり。¥とき¥よく¥なり/ぬ/とて¥ひしめき−あへ/り。¥しんし、¥ほうけん、¥ないしどころ¥わたし¥たてまつる。¥かんだちめ¥ぢん/に¥あつまつ/て、¥ふるき¥こと=ども¥せんれい/に¥まかせ/て¥おこなひ/し/に、¥さだいじん=どの¥ぢん/に¥いで/て、¥おん=くらゐ−ゆづり/の¥こと=ども¥おほせ/し/を¥きい/て、P237¥こころ−ある¥ひとびと/の¥なみだ/を¥ながし、¥こころ/を¥いたま/しめ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥われ/と¥おん=くらゐ/を¥まうけ/の−きみ/に¥ゆづり¥たてまつり、¥はこや/の−やま/の¥うち/も、¥しづか/に/など¥おぼしめす¥さきざき/だに/も、¥あはれ/は¥おほき¥ならひ/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は、¥おん=こころ/なら/ず¥おし−おろさ/れ/させ¥ましまし/けん¥おん=こころ/の¥うち、¥まうす/も¥なかなか¥おろか/なり。¥つたはれ/る¥おん=たからもの=ども¥しなじな、¥つかさづかさ¥うけ−とつ/て、¥しんてい/の¥くわうきよ¥ごでう−だいり/へ¥わたし¥たてまつる。¥かんゐん=どの/に/は、¥ひ/の¥かげ¥かすか/に、¥けいじん/の¥こゑ/も¥とどま/り、¥たきぐち/の¥もんじやく/も¥たえ/に/しか/ば、¥ふるき¥ひとびと/は、¥かかる¥めでたき¥いはひ/の¥なか/に/も、¥いまさら¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥なみだ/を¥ながし¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥しんてい¥こんねん¥さんざい、¥あはれ¥いつしか/なる¥じやうゐ/かな/と/ぞ、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/ける。¥
へい−だいなごん−ときただの−きやう/は、¥うち/の¥おん=めのと、¥そつのすけ/の¥をつと/たる/に¥よつ/て、「¥こんど/の¥じやうゐ¥いつしか/なり/と、¥たれ/か¥かたぶけ¥まうす/べき。¥いこく/に/は、¥しう/の¥せいわう¥さんざい、¥しん/の¥ぼくてい¥にさい、¥わが¥てう/に/は、¥こんゑのゐん¥さんざい、¥ろくでうのゐん¥にさい、¥これ¥みな¥きやうほう/の¥なか/に¥つつま/れ/て、¥いたい/を¥ただしう¥せ/ざり/しか/ども、¥あるひは¥せつしやう¥おう/て¥くらゐ/に¥つき、¥あるひは¥ぼこう¥いだい/て¥てう/に¥のぞむ/と¥みえ/たり。¥ごかん/の¥かうしやう−くわうてい/は、¥むまれ/て¥ひやく−にち/と¥いふ/に¥せんそ¥あり。¥てんし¥くらゐ/を¥ふむ¥せんじよう、¥わかん¥かく/の/ごとし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥その−とき/の¥いうしよく/の¥ひとびと、「¥あな¥おそろし、¥もの¥な¥まうさ/れ/そ。¥され/ば¥それ=ら/は¥よき¥れい=ども/か/や」/と/ぞ¥つぶやき−あは/れ/ける。¥とうぐう¥せんそ¥あり/しか/ば、¥にふだう−しやうこく¥ふうふ¥とも/に、¥ぐわいそぶ、¥ぐわいそぼ/とて、¥じゆんさんごう/のP238¥せんじ/を¥かうぶり、¥ねんぐわん¥ねんじやく/を¥たまはつ/て、¥じやうにち/の−もの/を¥めし−つかひ、¥ゑ¥かき¥はな¥つけ/たる¥もの=ども¥いで−いつ/て、¥ひとへに¥ゐんぐう/の/ごとく/にて/ぞ¥あり/ける。¥しゆつけ/の¥ひと/の¥じゆんさんごう/の¥せんじ/を¥かうぶる¥こと/は、¥ほふこうゐん/の−おほ−にふだう=どの−かねいへ=こう/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥おなじき−さんぐわつ−じやうじゆん/に、¥じやうくわう¥あきの−いつくしま/へ¥ご=かう¥なる/べし/と¥きこえ/けり。¥ていわう¥くらゐ/を¥すべら/せ¥たまひ/て、¥しよしや/の¥ご=かう¥はじめ/に/は、¥やはた、¥かも、¥かすが/へ/こそ¥ご=かう/は¥なる/べき/に、¥はるばる/と¥あきの−くに/まで/の¥ご=かう/は¥いか/に/と、¥ひとふしん/を¥なす。¥ある¥ひと/の¥まうし/ける/は、「¥しらかはのゐん/は¥くまの/へ¥ご=かう、¥ごしらかは/は¥ひよし/の−やしろ/へ¥ご=かう¥なる。¥され/ば¥しん/ぬ、¥えいりよ/に¥あり/と¥まうす¥こと/を」。¥ご=しんぢう/に¥ふかき¥ご=りふぐわん¥あり。¥その−うへ¥この¥いつくしま/を/ば、¥へいけ¥なのめ/なら/ず/に¥あがめ−うやまひ¥まうさ/れ/ける¥あひだ、¥うへ/に/は¥へいけ/に¥ご=どうしん、¥した/に/は¥ほふわう/の¥いつ/と−なく¥とば=どの/に¥おし−こめ/られ/て¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥にふだう−しやうこく/の¥こころ/も¥やはらぎ¥たまふ/か/と/の、¥ご=きねん/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥さんもん/の¥だいしゆ¥いきどほり¥まうし/ける/は、「¥しゆしやう¥おん=くらゐ/を¥すべつ/て、¥しよしや/の¥ご=かう¥はじめ/に/は、¥やはた、¥かも、¥かすが/へ¥ご=かう¥なら/ず/は、¥わが−やま/の¥さんわう/へ/こそ¥ご=かう/は¥なる/べき/に、¥はるばる/と¥あきの−くに/まで/の¥ご=かう/は、¥いつ/の¥ならひ/ぞ/や。¥その¥ぎ/なら/ば¥しんよ¥ふり−くだし¥たてまつ/て、¥ご=かう/を¥とどめ¥たてまつれ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥これ/に¥よつ/て¥しばらく¥ご=えんいん¥あり/けり。¥にふだう−しやうこく¥やうやう/に¥なだめ¥のたまへ/ば、¥さんもん/の¥だいしゆ¥しづまり/ぬ。¥
おなじき−じふしちにち、¥しやうくわう¥いつくしま−ご=かう/の¥おん=かどで/とて、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた¥にゐ=どの/のP239¥しゆくしよ、¥はちでう−おほみや/へ¥ご=かう¥なる。¥その¥よ¥やがて¥いつくしま/の¥ご=じんじ¥はじめ/らる。¥てんが/より¥から/の¥おん=くるま、¥うつし/の¥むま/など¥まゐらせ/らる。¥あくる¥じふはちにち、¥にふだう−しやうこく/の¥てい/へ¥いら/せ¥おはします。¥その−ひ/の¥くれがた/に、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/を¥めし/て、「¥みやうにち¥いつくしま−ご=かう/の¥おん=ついで/に、¥とば=どの/へ¥まゐつ/て、¥ほふわう/の¥おん=げんざん/に¥いら/ばや/と¥おぼしめす/は、¥しやうこく−ぜんもん/に¥しらせ/ず/して/は、¥あしかり/な/ん/や」/と¥おほせ/けれ/ば、¥むねもりの−きやう、「¥なんでふ¥こと/か¥さふらふ/べき」/と¥そうせ/られ/たり/けれ/ば、「¥さら/ば¥なんぢ¥こよひ¥とば=どの/へ¥まゐり/て、¥その¥やう/を¥まうせ/かし」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥いそぎ¥とば=どの/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥ほふわう/は¥あまり/に¥おぼしめす¥おん=こと/にて、¥こ/は¥ゆめ/やらん/と/ぞ¥おほせ/ける。¥あくる¥じふくにち、¥おほみやの−だいなごん−たかすゑの−きやう、¥いまだ¥よ¥ふかう¥まゐつ/て、¥ご=かう¥もよほさ/れ/けり。¥この¥ひごろ¥きこえ/させ¥たまひ/つる¥いつくしま−ご=かう/を/ば、¥にしはちでう/の−てい/より¥すでに¥とげ/させ¥おはします。¥やよひ/も¥なかば¥すぎ/ぬれ/ど、¥かすみ/に¥くもる¥ありあけ/の−つき/は¥なほ¥おぼろ/なり。¥こしぢ/を¥さし/て¥かへる¥かり/の、¥くもゐ/に¥おとづれ−ゆく/も、¥をりふし¥あはれ/に¥おぼしめす。¥いまだ¥よ/の¥うち/に¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なる。¥もんぜん/にて¥おん=くるま/より¥おり/させ¥おはしまし、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いら/せ¥たまふ/に、¥ひと¥まれ/に/して¥こ−ぐらく、¥もの−さびし=げ/なる¥おん=すまひ、¥まづ¥あはれ/に/ぞ¥おぼしめす。¥はる¥すでに¥くれ/な/ん/と¥す。¥なつ−こだち/に/も¥なり/に/けり。¥こずゑ/の¥はな¥いろ¥おとろへ/て、¥みや/の¥うぐひす¥こゑ¥おい/たり。¥きよねん/の−しやうぐわつ−むゆか、¥てうきん/の¥ため/に¥ほふぢうじ=どの/へ¥ぎやうがう¥あり/し/に/は、P240¥がくや/に¥らんじやう/を¥そうし、¥しよきやう¥れつ/に¥たつ/て、¥しよゑ¥ぢん/を¥ひき、¥ゐんじ/の¥くぎやう¥まゐり¥むかつ/て、¥まんもん/を¥ひらき、¥かもんれう¥えんだう/を¥しき、¥ただしかり/し¥ぎしき、¥いちじ/も¥なし。¥けふ/は¥ただ¥ゆめ/と/のみ/ぞ¥おぼしめす。¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう¥まゐつ/て、¥ご=きしよく¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/は¥はや¥しんでん/の¥はしがくし/の−ま/へ¥ご=かう¥なつ/て、¥まち¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥しやうくわう/は¥こんねん¥にじふ、¥あけがた/の¥つき/の¥ひかり/に¥はえ/させ¥たまひ/て、¥ぎよくたい/も¥いとど¥うつくしう/ぞ¥みえ/させ¥ましまし/ける。¥おん=ぼぎ¥こ=けんしゆんもんゐん/に、¥いたく¥に¥まゐら/させ¥たまひ/たり/しか/ば、¥ほふわう/は¥まづ¥こ=によゐん/の¥おん=こと¥おぼしめし¥いで/て、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥りやうゐん/の¥ござ、¥ちかく¥しつらは/れ/たり。¥ご=もんだふ/は¥ひと¥うけたまはる/に¥およば/ず。¥ごぜん/に/は¥あまぜ/ばかり/ぞ¥さぶらは/れ/ける。¥やや¥ひさしく¥おん=ものがたり−せ/させ¥おはしまし、¥はるか/に¥ひ¥たけ/て¥のち、¥おん=いとま¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥とば/の¥くさづ/より¥おん=ふね/に/ぞ¥めさ/れ/ける。¥しやうくわう/は¥ほふわう/の¥りきう/の¥こ=てい、¥いうかん¥せきばく/の¥おん=すまひ、¥おん=こころ−ぐるしう¥ごらんじ−おか/せ¥たまへ/ば、¥ほふわう/は¥また¥しやうくわう/の¥りよはく¥かうきう/の¥なみ/の¥うへ、¥ふね/の¥うち/の¥おん=ありさま、¥おぼつかなく/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。¥まことに¥そうべう、¥やはた、¥かも/など/を¥さし−おか/せ¥たまひ/て、¥はるばると¥あきの−くに/まで/の¥ご=かう/を/ば、¥しんめい/も¥など/か¥ご=なふじゆ¥なかる/べき。¥ご=ぐわん¥じやうじゆ¥うたがひ¥なし/と/ぞ¥みえ/たり/ける。P241¥
「くわんぎよ」(『くわんぎよ』)S0402¥おなじき−にじふろくにち、¥しやうくわう¥いつくしま/へ¥ご=さんちやく。¥にふだう−しやうこく/の¥さいあい/の¥ないし/が¥しゆくしよ、¥くわうきよ/に¥なる。¥なか¥ふつか¥おん=とうりう¥あつ/て、¥きやうゑ¥ぶがく¥おこなは/る。¥けちぐわん/の¥だうし/に/は、¥こうけん−そうじやう、¥かうざ/に¥のぼり¥かね¥うち−ならし、¥へうびやく/の¥ことば/に¥いはく、「¥ここのへ/の¥みやこ/を¥いで/させ¥たまひ、¥やへ/の¥しほぢ/を¥わき¥もつて、¥はるばると¥これ/まで¥まゐらせ¥たまひ/たる、¥おん=こころざし/の¥かたじけな−さ/よ」/と¥たからか/に¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥みな¥かんるゐ/を/ぞ、¥もよほさ/れ/ける。¥おほみや、¥まらうど/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥やしろやしろ¥ところどころ/へ¥みな¥ご=かう¥なる。¥おほみや/より¥ごちやう/ばかり、¥やま/を¥まはら/せ¥たまひ/て、¥たきのみや/へ¥まゐらせ¥たまふ。¥こうけん−そうじやう¥はいでん/の¥はしら/に¥かき−つけ/られ/ける/とかや。¥
くもゐ/より¥おち−くる¥たき/の¥しらいと/に¥ちぎり/を¥むすぶ¥こと/ぞ¥うれしき W016¥
かんぬし¥さいきの−かげひろ¥かかい、¥じゆ−じやう/の−ごゐ、¥こくし−ふぢはらの−ありつな、¥しな¥あげ/られ/て¥じゆ−げ/の−し−ほん、¥ならびに¥ゐん/の¥てんじやう/を¥ゆるさ/る。¥ざす−そんえい、¥ほふげん/に¥なさ/る。¥しんりよ/も¥うごき、¥にふだう−しやうこく/の¥こころ/も¥やはらぎ¥たまひ/ぬ/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥おなじき−にじふくにち¥おん=ふね¥かざつ/て¥くわんぎよ¥なる。¥をりふし¥なみかぜ¥はげしかり/けれ/ば、¥おん=ふね¥こぎ−もどさ/せ、P242¥その−ひ/は¥いつくしま/の¥うち、¥あり/の−うら/と¥いふ¥ところ/に¥とどまら/せ¥たまふ。¥しやうくわう、「¥だい−みやうじん/の¥おん=なごり−をしみ/に、¥うた¥つかまつれ¥ひとびと」/と¥おほせ/けれ/ば、¥たかふさの−せうしやう、¥
たち−かへる¥なごり/も¥あり/の−うら/なれ/ば¥かみ/も¥めぐみ/を¥かくる¥しらなみ W017¥
やはん/ばかり/に¥かぜ¥しづまつ/て、¥かいじやう/も¥おだしかり/けれ/ば、¥おん=ふね¥こぎ−いださ/せ、¥その−ひ/は¥びんごの−くに¥しきな/の−とまり/に¥つか/せ¥たまふ。¥この¥ところ/は¥さんぬる¥おうほう/の¥ころほひ、¥いちゐん¥ご=かう/の¥とき、¥こくし−ふぢはらの−ためなり/が¥つくつ/たり/ける¥ごしよ/の¥あり/ける/を、¥にふだう−しやうこく¥おん=まうけ/に¥しつらは/れ/たり/しか/ども、¥しやうくわう¥それ/へ/は¥ご=かう/も¥なら/ず、「¥けふ/は¥うづき−ひとひ、¥ころもがへ/と¥いふ¥こと/の¥ある/ぞ/かし」/とて、¥おのおの¥みやこ/の¥こと/を¥のたまひ−いだし、¥ながめ−やり¥たまふ/ほど/に、¥きし/に¥いろ¥ふかき¥ふぢ/の¥まつ/の¥えだ/に¥さき−かかり/ける/を、¥しやうくわう¥えいらん¥あつ/て、「¥あの¥はな¥をり/に¥つかはせ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥おほみやの−だいなごん−たかすゑの−きやう¥うけたまはつ/て、¥さししやう−なかはらの−やすさだ/が¥はし−ぶね/に¥のつ/て、¥をりふし¥ごぜん/を¥こぎ−とほり/ける/を¥めし/て、¥をり/に¥つかはす。¥ふぢ/の¥はな/を¥まつ/の¥えだ/に¥つけ/ながら、¥をり/て¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥こころばせ¥あり/など¥おほせ/られ/て、¥ぎよ=かん¥あり/けり。「¥この¥はな/にて¥うた¥つかまつれ。¥おのおの」/と¥おほせ/けれ/ば、¥たかすゑの−だいなごん、¥
ちとせ¥へ/む¥きみ/が¥よはひ/に¥ふぢなみ/の¥まつ/の¥えだ/に/も¥かかり/ぬる/かな W018¥
ふつかのひ/は、¥びぜん/の¥こじま/の−とまり/に¥つか/せ¥たまふ。¥いつかのひ¥てん¥はれ/て、¥かいじやう/も¥のどけかり/けれ/ば、¥ごしよ/の¥おん=ふね/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥ひとびと/の¥ふね=ども¥みな¥こぎ−いだす。¥くも/のP243¥なみ、¥けぶり/の¥なみ/を¥わき−しのが/せ¥たまひ/て、¥その−ひ/は¥はりまの−くに¥やまた/の−うら/に¥つか/せ¥たまふ。¥それ/より¥おん=こし/に¥めし/て、¥ふくはら/へ¥いら/せ¥おはします。¥むゆかのひ/は、¥おん=とうりう¥あつ/て、¥ふくはら/の¥ところどころ/を¥みな¥れきらん¥ある。¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/の¥さんざう、¥あらた/まで¥ごらんぜ/らる。¥あくる¥なぬかのひ、¥ふくはら/を¥たた/せ¥たまふ/とて、¥にふだう/の¥いへ/の¥しやう¥おこなは/る。¥にふだう−しやうこく/の¥やうじ、¥たんばの−かみ−きよくに¥じやう−げ/の−しゐ、¥おなじう¥にふだう/の¥まご、¥ゑちぜんの−せうしやう/は¥しゐ/の−じゆ−じやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥その−ひ¥てらゐ/に¥つか/せ¥たまふ。¥やうかのひ¥おん=むかひ/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥とば/の¥くさづ/まで¥みな¥まゐら/れ/けり。¥くわんぎよ/の¥とき/は、¥とば=どの/へ/は¥ご=かう/も¥なら/ず、¥すぐに¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/へ/ぞ¥いら/せ¥おはします。¥おなじき−にじふににち、¥しんてい/の¥ご=そくゐ¥あり。¥だいこくでん/にて¥おこなは/る/べかり/しか/ども、¥ひととせ¥えんしやう/の¥のち/は¥いまだ¥つくり/も¥いださ/れ/ず。¥だいこくでん¥なから/ん¥うへ/は、¥だいじやうぐわん/の−ちやう/にて¥おこなは/る/べき/か/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ば、¥くでう=どの¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥だいじやうぐわん/の−ちやう/は、¥ぼんにん/の¥いへ/に¥とら/ば、¥くもんじよ−てい/の¥ところ/なり。¥だいこくでん¥なから/ん¥うへ/は、¥ししんでん/にて/こそ、¥ご=そくゐ/は¥ある/べけれ」/と¥まうさ/せ¥たまへ/ば、¥ししんでん/にて/ぞ、¥ご=そくゐ/は¥あり/ける。¥いんじ¥かうほう−しねん−じふいちぐわつ−じふいちにち、¥れんぜいゐん/の¥ご=そくゐ、¥ししんでん/にて¥あり/し/は、¥しゆしやう¥ご=じやけ/に¥よつ/て、¥だいこくでん/へ/の¥ぎやうがう¥かなは/ざり/し¥おん=ゆゑ/なり。¥ごさんでうのゐん/の¥えんきう/の¥かれい/に¥まかせ/て、¥だいじやうぐわん/の−ちやう/にて¥おこなは/る/べき/ものを/と、¥ひとびと¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥その−とき/の¥くでう=どの/の¥おん=ぱからひ/の¥うへ/は、¥さう/に¥およば/ず。¥とうぐうP244¥せんそ¥あり/しか/ば、¥ちうぐう/は¥こうきでん/より¥じじゆでん/へ¥うつつ/て、¥やがて¥たかみくら/へ¥まゐらせ¥たまふ。¥へいけ/の¥ひとびと¥みな¥しゆつし−せ/られ/ける¥なか/に、¥こまつ=どの/の¥きんだち=たち/は、¥こぞ¥おとど¥こうぜ/られ/に/しか/ば、¥いろ/にて¥ろうきよ−せ/られ/けり。¥
「げんじそろへ」(『げんじぞろへ』)S0403¥くらんど/の−さゑもん/の−ごん/の−すけ−さだなが、¥こんど/の¥ご=そくゐ/に¥ゐらん¥なく、¥めでたき¥やう/を、¥こうし¥じふまい/ばかり/に¥かい/て、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた、¥はちでうの−にゐ=どの/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥ゑみ/を¥ふくん/で/ぞ¥よろこば/れ/ける。¥かやう/に¥はなやか/に、¥めでたき¥こと=ども¥あり/しか/ども、¥せけん/は¥なほ¥にがにがしう/ぞ¥みえ/し。¥その−ころ¥いちゐん¥だいに/の¥わうじ、¥もちひとの−しんわう/と¥まうし/し/は、¥おん=はは¥かがの−だいなごん−すゑなりの−きやう/の¥おん=むすめ/なり。¥さんでうたかくら/に¥ましまし/けれ/ば、¥たかくらのみや/と/ぞ¥まうし/ける。¥いんじ¥えいまん−ぐわんねん−じふいちぐわつ−じふごにち/の¥あかつき、¥おん=とし¥じふご/にて、¥しのび/つつ、¥こんゑかはら/の−おほみや/の−ごしよ/にて、¥ひそか/に¥おん=げんぶく¥あり/けり。¥おん=しゆせき¥うつくしう¥あそばし、¥おん=さいかく/も¥すぐれ/て¥ましまし/けれ/ば、¥たいし/に/も¥たち、¥くらゐ/に/も¥つか/せ¥たまふ/べかり/しか/ども、¥こ=けんしゆんもんゐん/の¥おん=そねみ/に¥よつ/て、¥おし−こめ/られ/させ¥たまひ/けり。¥はな/の¥もと/の¥はる/の¥あそび/に/は、P245¥しがう/を¥ふるつ/て¥てづから¥ご=さく/を¥かき、¥つき/の¥まへ/の¥あき/の¥えん/に/は、¥ぎよくてき/を¥ふい/て、¥みづから¥がいん/を¥あやつり¥たまふ。¥かく−し/て¥あかし−くらさ/せ¥たまふ/ほど/に、¥ぢしよう−しねん/に/は、¥おん=とし¥さんじふ/に/ぞ¥なら/せ¥ましまし/ける。¥その−ころ¥このゑかはら/に¥さぶらは/れ/ける¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ、¥ある¥よ¥ひそか/に¥この¥みや/の¥ごしよ/に¥まゐり/て、¥まうさ/れ/ける¥こと/こそ¥おそろしけれ。¥たとへば、「¥きみ/は¥てんせうだいじん¥しじふはつせ/の¥しやうとう、¥じんむ−てんわう/より¥しちじふはちだい/に¥あたら/せ¥たまふ。¥しかれ/ば¥たいし/に/も¥たち、¥くらゐ/に/も¥つか/せ¥たまふ/べかり/し¥ひと/の、¥さんじふ/まで¥みや/にて¥わたら/せ¥たまふ¥おん=こと/を/ば、¥おん=こころ−うし/と/は¥おぼしめさ/れ¥さふらは/ず/や。¥はやはや¥ご=むほん¥おこさ/せ¥たまひ/て、¥へいけ/を¥ほろぼし、¥ほふわう/の¥いつ/と−なく、¥とば=どの/に¥おし−こめ/られ/て¥わたら/せ¥たまふ¥おん=いきどほり/を/も、¥やすめ¥まゐらせ、¥きみ/も¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまふ/べし。¥これ¥ひとへに¥ご=かうかう/の¥おん=いたり/にて/こそ¥さふらは/んずれ。¥もし¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/て、¥りやうじ/を¥くださ/れ¥たまふ¥もの/なら/ば、¥よろこび/を¥なし/て¥はせ−まゐら/んずる¥げんじ=ども/こそ、¥くにぐに/に¥おほう¥さふらへ」/とて¥まうし−つづく。「¥まづ¥きやうと/に/は¥ではの−ぜんじ−みつのぶ/が¥こども、¥いがの−かみ−みつもと、¥ではの−はんぐわん−みつなが、¥ではの−くらんど−みつしげ、¥ではの−くわんじや−みつよし、¥くまの/に/は¥こ=ろくでうの−はうぐわん−ためよし/が¥ばつし¥じふらう−よしもり/とて¥かくれ/て¥さふらふ。¥つの−くに/に/は¥ただの−くらんど−ゆきつな/こそ¥さふらへ/ども、¥これ/は¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥むほん/の¥とき、¥どうしん−し/ながら¥かへりちう−し/たる¥ふたうじん/にて¥さふらへ/ば、¥まうす/に¥およば/ず。¥さり/ながら¥その¥おとと¥ただの−じらう−ともざね、¥てしまの−くわんじや−たかより、¥おほたの−たらう−よりもと。¥かはちの−くに/に/は、¥いしかは/の−こほり/を¥ちぎやう−し/けるP246¥むさしの−ごん/の−かみ−にふだう−よしもと、¥しそく¥いしかはの−はんぐわんだい−よしかぬ。¥やまとの−くに/に/は、¥うのの−しちらう−ちかはる/が¥こども、¥たらう−ありはる、¥じらう−きよはる、¥さぶらう−なりはる、¥しらう−よしはる。¥あふみの−くに/に/は、¥やまもと、¥かしはぎ、¥にしごり。¥みの¥をはり/に/は、¥やまだの−じらう−しげひろ、¥かうべの−たらう−しげなほ、¥いづみの−たらう−しげみつ、¥うらのの−しらう−しげとほ、¥あじきの−じらう−しげより、¥その¥こ/の¥たらう−しげすけ、¥きだの−さぶらう−しげなが、¥かいでんの−はうぐわんだい−しげくに、¥やしまの−せんじやう−しげたか、¥その¥こ/の¥たらう−しげゆき。¥かひの−くに/に/は、¥へんみの−くわんじや−よしきよ、¥その¥こ/の¥たらう−きよみつ、¥たけだの−たらう−のぶよし、¥かがみの−じらう−とほみつ、¥おなじき−こじらう−ながきよ、¥いちでうの−じらう−ただより、¥いたがきの−さぶらう−かねのぶ、¥へんみの−ひやうゑ−ありよし、¥たけだの−ごらう−のぶみつ、¥やすだの−さぶらう−よしさだ。¥しなのの−くに/に/は、¥おほうち−たらう−これよし、¥をかだの−くわんじや−ちかよし、¥ひらがの−くわんじや−もりよし、¥その¥こ/の¥しらう−よしのぶ、¥こ=たてはきの−せんじやう−よしかた/が¥じなん、¥きその−くわんじや−よしなか。¥いづの−くに/に/は¥るにん−さきの−うひやうゑ/の−すけ−よりとも。¥ひたちの−くに/に/は、¥しだの−さぶらう−せんじやう−よしのり、¥さたけの−くわんじや−まさよし、¥その¥こ/の¥たらう−ただよし、¥さぶらう−よしむね、¥しらう−たかよし、¥ごらう−よしすゑ、¥みちの−くに/に/は¥こ=さま/の−かみ−よしとも/が¥ばつし、¥くらう−くわんじや−よしつね、¥これ¥みな¥ろくそんわう/の¥ご=べうえい、¥ただの−しんぼち−まんぢう/が¥こういん/なり。¥てうてき/を¥たひらげ¥しゆくまう/を¥とぐる¥こと/は、¥げんぺい¥いづれ¥しようれつ¥なかり/しか/ども、¥いま/は¥うんでい¥まじはり/を¥へだて/て、¥しゆじう/の¥れい/に/も¥なほ¥おとれ/り。¥くに/は¥こくし/に¥したがひ、¥しやう/は¥あづかつしよ/に¥めし−つかは/れ、¥くじざふじ/に¥かり−たて/られ/て、¥やすい¥こころ/も¥し¥さふらは/ず。¥つらつら¥たうせい/の¥てい/を¥み¥さふらふ/に、¥うへ/に/は¥したがう/たる¥やう/なれ/ども、¥ないない/は¥いつかう¥へいけ/を¥そねま/ぬ¥もの/や¥さふらふ。¥きみ¥もし¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/て、¥りやうじ/を¥たう/づる/ほど/なら/ば、¥くにぐに/の¥げんじ=ども、¥よ/を¥ひ/に¥つい/で¥はせ−のぼり、P247¥へいけ/を¥ほろぼさ/ん¥こと/は、¥じじつ/を¥めぐらす/べから/ず。¥その¥ぎ/にて¥さふらは/ば、¥にふだう/も¥とし/こそ¥よつ/て¥さふらへ/ども、¥わかき¥こども¥あまた¥さふらへ/ば、¥ひき−ぐし/て¥まゐり¥さふらふ/べし」/と/ぞ¥まうし/ける。¥
みや/は¥この¥こと¥いかが¥あら/んず/らん/と、¥おぼしめし−わづらは/せ¥たまひ/て、¥しばし/は¥ご=しよういん/も¥なかり/ける/が、¥ここ/に¥あこまる−だいなごん−むねみちの−きやう/の¥まご、¥びんごの−ぜんじ−すゑみち/が¥こ/に、¥せうなごん−これなが/と¥まうし/し/は、¥すぐれ/たる¥さうにん/の¥じやうず/にて¥あり/けれ/ば、¥とき/の−ひと、¥さうせうなごん/と/ぞ¥まうし/ける。¥その¥ひと¥この¥みや/を¥み¥まゐらせ/て、「¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまふ/べき¥おん=さう¥まします。¥あひ−かまへ/て¥てんが/の¥こと、¥おぼしめし−すつ/な」/と¥まうさ/れ/ける¥をりふし、¥この¥さんみ−にふだう/も、¥かやう/に¥すすめ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さて/は¥しかる/べき¥てんせうだいじん/の¥おん=つげ/やらん/とて、¥ひしひし/と¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/けり。¥まづ¥しんぐう/の−じふらう−よしもり/を¥めし/て、¥くらんど/に¥なさ/る。¥ゆきいへ/と¥かいみやう−し/て、¥りやうじ/の¥お=つかひ/に¥とうごく/へ/こそ¥くださ/れ/けれ。¥しんぐわつ−にじふはちにち¥みやこ/を¥たつ/て、¥あふみの−くに/より¥はじめ/て、¥みの¥をはり/の¥げんじ=ども/に、¥しだいに¥ふれ/て¥くだる/ほど/に、¥ごぐわつ−とをか/に/は、¥いづの¥ほうでう¥ひるがこじま/に¥つい/て、¥るにん−さきの−うひやうゑ/の−すけ=どの/に、¥りやうじ/を¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥しだの−さぶらう−せんじやう−よしのり/は、¥あに/なれ/ば¥たば/ん/とて、¥しだ/の¥うきしま/へ¥くだる。¥きその−くわんじや−よしなか/は、¥をひ/なれ/ば¥とら/せ/ん/とて、¥せんだう/へ/こそ¥おもむき/けれ。¥ここ/に¥くまのの−べつたう−たんぞう/は、¥へいけ¥ぢうおん/の¥み/なり/し/が、¥なに/と/して/か¥きき−いだし/けんP248、「¥しんぐうの−じふらう−よしもり/こそ、¥たかくらのみや/の¥りやうじ¥たまはつ/て、¥すでに¥むほん/を¥おこす/なれ。¥なち¥しんぐう/の¥もの=ども/は、¥さだめて¥げんじ/の¥かたうど/を/ぞ¥せ/んず/らん。¥たんぞう/は¥へいけ/の¥ご=おん/を¥あめやま/に¥かうぶり/たれ/ば、¥いかで/か¥そむき¥たてまつる/べき。¥や¥ひとつ¥い−かけ/て、¥その−のち¥みやこ/へ¥しさい/を¥まうさ/ん」/とて、¥ひた−かぶと¥いつせん−よ−にん、¥しんぐう/の−みなと/へ¥はつかう−す。¥しんぐう/に/は¥とりゐの−ほふげん、¥たかばう/の−ほふげん、¥さぶらひ/に/は¥うゐ、¥すずき、¥みづや、¥かめのかふ、¥なち/に/は¥しゆぎやう−ほふげん¥いげ、¥つがふ¥その¥せい¥いつせんごひやく−よ−にん、¥とき¥つくり¥や−あはせ−し/て、¥げんじ/の¥かた/に/は/と/こそ¥いれ、¥へいけ/の¥かた/に/は¥かく/こそ¥いれ/と、¥たがひ/に¥やさけび/の¥こゑ/の¥たいてん/も¥なく、¥かぶら/の¥なり−やむ¥ひま/も¥なく、¥みつか/が/ほど/こそ¥たたかう/たれ。¥され/ども¥おぼえ/の¥ほふげん¥たんぞう/は、¥いへのこ−らうどう¥おほく¥うた/せ、¥わが−み¥て−おひ、¥からき¥いのち¥いき/つつ、¥なくなく¥ほんぐう/へ/こそ¥かへり−のぼり/けれ。¥
「いたちのさた」(『いたちのさた』)S0404¥さる−ほど/に¥ほふわう/は、¥なりちか¥しゆんくわん=ら/が¥やう/に、¥とほき¥くに¥はるか/の¥しま/へ/も、¥うつし/ぞ¥やり¥まゐらせ/んずる/に/こそ/と、¥おぼしめさ/れ/けれ/ども、¥さ/は¥なく/して、¥とば=どの/にて¥ぢしよう/も¥しねん/に¥おくら/せ¥おはします。¥おなじき−ごぐわつ−じふににち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥とば=どの/に/は、¥いたち¥おびたたしう¥はしり−さわぐ。¥ほふわう¥おん=うらかた¥あそばい/て、¥あふみの−かみ−なかかぬ、¥その−とき/は¥いまだ¥つるくらんど/にてP249¥さふらひ/ける/を、¥ごぜん/へ¥めし/て、「¥これ¥もつ/て¥あべの−やすちか/が¥もと/へ¥ゆき、¥きつと¥かんがへ/させ/て、¥かんじやう/を¥とつ/て¥まゐれ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥なかかぬ¥これ/を¥たまはつ/て、¥あべの−やすちか/が¥もと/へ¥ゆく。¥をりふし¥しゆくしよ/に/は¥なかり/けり。¥しらかは/なる¥ところ/へ/と¥いひ/けれ/ば、¥それ/へ¥たづね−ゆき/て、¥ちよくぢやう/の¥おもむき¥おほすれ/ば、¥やすちか¥やがて¥かんじやう/を/こそ¥まゐらせ/けれ。¥なかかぬ¥これ/を¥とつ/て¥とば=どの/へ¥はせ−まゐり、¥もん/より¥いら/ん/と¥すれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども¥ゆるさ/ず。¥あんない/は¥しつ/たり、¥ついぢ/を¥こえ、¥おほ−ゆか/の¥した/を¥はう/て、¥ごぜん/の¥きりいた/より、¥やすちか/が¥かんじやう/を/こそ¥まゐらせ/けれ。¥ほふわう¥これ/を¥ひらい/て¥えいらん¥ある/に、「¥いま¥みつか/が¥うち/の¥おん=よろこび、¥ならびに¥おん=なげき」/と/ぞ¥かんがへ¥まうし/たる。¥ほふわう、「¥この¥おん=ありさま/にて/も、¥おん=よろこび/は¥しかる/べし。¥また¥いか/なる¥おん=め/に/か¥あふ/べき/やらん」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥おなじき−じふさんにち¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥ちち/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、¥ほふわう/の¥おん=こと/を¥たりふし¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥やうやう/に¥おもひ−なほつ/て、¥ほふわう/を/ば¥とば=どの/を¥いだし¥たてまつり、¥みやこ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつり、¥はちでう−からすまる/の¥びふくもんゐん/の¥ごしよ/へ¥いれ¥たてまつる。¥いま¥みつか/が¥うち/の¥おん=よろこび/と/は、¥やすちか¥これ/を/ぞ¥まうし/ける。¥かかり/ける¥ところ/に、¥くまのの−べつたう−たんぞう、¥ひきやく/を¥もつて、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/の¥よし/を、¥みやこ/へ¥まうし/たり/けれ/ば、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥おほき/に¥さわい/で、¥をりふし¥にふだう−しやうこく/は、¥ふくはら/の¥べつげふ/に¥おはし/ける/に¥この¥よし¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥おほき/に¥いかつ/て、「¥その¥ぎ/なら/ば¥たかくらのみや/をP250¥からめ−とつ/て、¥とさ/の−はた/へ¥うつす/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥しやうけい/に/は¥さんでうの−だいなごん−さねふさ、¥しきじ/に/は¥とう/の−べん−みつまさ/と/ぞ¥きこえ/し。¥ぶし/に/は¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな、¥ではの−はうぐわん−みつなが、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥みや/の¥ごしよ/へ/ぞ¥むかひ/ける。¥この¥げん−だいふ/の−はうぐわん/と¥まうす/は、¥さんみ−にふだう/の¥じなん/なり。¥しかる/を¥この¥にんじゆ/に¥いれ/られ/ける¥こと/は、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/を、¥さんみ−にふだう¥すすめ¥まうさ/れ/たり/と¥いふ¥こと/を、¥へいけ¥いまだ¥しら/ざり/ける/に¥よつ/て/なり。¥
「のぶつらかつせん」(『のぶつら』)S0405¥さる−ほど/に、¥みや/は¥さつき−じふごや/の¥くもま/の¥つき/を¥ながめ/させ¥たまひ/て、¥なん/の¥ゆくへ/も¥おぼしめし−よら/ざり/ける/に、¥さんみ−にふだう/の¥ししや/とて、¥ふみ¥もち/て¥いそがはし=げ/に¥いで−き/たる。¥みや/の¥おん=めのとご、¥ろくでうの−すけ/の−たいふ−むねのぶ、¥これ/を¥とつ/て¥ごぜん/へ¥まゐり、¥ひらい/て¥みる/に、「¥きみ/の¥ご=むほん¥すでに¥あらはれ/させ¥たまひ/て、¥とさ/の−はた/へ¥うつし¥まゐらす/べし/とて、¥くわんにん=ども/が¥べつたうせん/を¥うけたまはつ/て、¥お=むかひ/に¥まゐり¥さふらふ。¥いそぎ¥ごしよ/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥みゐでら/へ¥いら/せ¥おはしませ。¥にふだう/も¥やがて¥まゐり¥さふらは/ん」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥みや/は¥この¥こと¥いかが−せ/ん/と、¥おぼしめし−わづらは/せ¥たまふ¥ところ/に、¥みや/の¥さぶらひ/に¥ちやう−ひやうゑ/の−じよう−はせべの−のぶつら/とP251¥いふ¥もの¥あり。¥をりふし¥ごぜん¥ちかう¥さふらひ/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥ただ¥なん/の¥やう/も¥さふらふ/まじ。¥にようばう−しやうぞく/に¥いで−たた/せ¥たまひ/て、¥おち/させ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし/とて、¥おん=ぐし/を¥みだり、¥かさね/たる¥ぎよ=い/に、¥いちめがさ/を/ぞ¥めさ/れ/ける。¥ろくでうの−すけ/の−たいふ−むねのぶ、¥からかさ¥もち/て¥おん=とも¥つかまつる。¥つるまる/と¥いふ¥わらは、¥ふくろ/に¥もの¥いれ/て¥いただい/たり。¥たとへば¥せいし/が¥ぢよ/を¥むかへ/て¥ゆく¥やう/に¥いで−たた/せ¥たまひ/て、¥たかくら/を¥きた/へ¥おち/させ¥たまふ/に、¥おほき/なる¥みぞ/の¥あり/ける/を、¥いと¥もの−がるう¥こえ/させ¥たまへ/ば、¥みちゆきびと/が¥たち−とどまつ/て、「¥はしたな/の¥にようばう/の¥みぞ/の¥こえやう/や」/とて、¥あやし=げ/に¥み¥まゐらせ/けれ/ば、¥いとど¥あしばや/に/ぞ¥すぎ/させ¥おはします。¥
ごしよ/の¥おん=るす/に/は、¥ちやう−ひやうゑ/の−じよう−はせべの−のぶつら/を/ぞ¥おか/れ/ける。¥にようばう=たち/の¥せうせう¥おはし/ける/を/ば、¥かしこ−ここ/へ¥たち−しのばせ/て、¥み−ぐるしき¥もの¥あら/ば、¥とり−したため/ん/とて¥みる/ほど/に、¥さ/しも¥みや/の¥ご=ひざう¥あり/ける¥こえだ/と¥きこえ/し¥おん=ふえ/を、¥つね/の¥ごしよ/の¥おん=まくら/に、¥とり−わすれ/させ¥たまひ/たる/を/ぞ、¥たち−かへつ/て/も¥とら/まほしう/や¥おぼしめさ/れ/けん。¥のぶつら¥これ/を¥み−つけ/て、「¥あな¥あさまし。¥さ/しも¥きみ/の¥ご=ひざう/の¥おん=ふえ/を」/と¥まうし/て、¥いま¥ごちやう/が¥うち/にて¥おつ−つい/て¥まゐらせ/たり。¥みや¥なのめ/なら/ず¥ぎよ=かん¥あつ/て、「¥われ¥しな/ば、¥この¥ふえ/を/ば、¥ご=くわん/に¥いれよ」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥やがて¥おん=とも¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥のぶつら¥まうし/ける/は、「¥ただいま¥あの¥ごしよ/へ、¥くわんにん=ども/が¥お=むかひ/にP252¥まゐり¥さふらふ/なる/に、¥ひと¥いち−にん/も¥さふらは/ざら/ん/は、¥むげ/に¥くちをしく¥ぞんじ¥さふらふ。¥その−うへ¥あの¥ごしよ/に、¥のぶつら/が¥さふらふ/と¥まうす¥こと/を/ば、¥じやうげ¥みな¥しつ/たる¥こと/で/こそ¥さふらへ。¥こんや¥さふらは/ざら/ん/は、¥それ/も¥その¥よ/は¥にげ/たり/など¥いは/れ/ん¥こと、¥くちをしう¥さふらふ/べし。¥ゆみ−や¥とる¥み/は、¥かり/に/も¥な/こそ¥をしう¥さふらへ。¥くわんにん=ども/に¥しばらく¥あひ−しらひ、¥いつぱう¥うち−やぶつ/て、¥やがて¥まゐり¥さふらは/ん」/とて、¥ただ¥いち−にん¥とつ/て¥かへす。¥のぶつら/が¥その¥よ/の¥しやうぞく/に/は、¥うすあを/の¥かりぎぬ/の¥した/に、¥もよぎ−にほひ/の−はらまき/を¥き/て、¥ゑふ/の−たち/を/ぞ¥はい/たり/ける。¥さんでうおもて/の¥そうもん/を/も、¥たかくらおもて/の¥こもん/を/も、¥とも/に¥ひらい/て¥まち−かけ/たり。¥
あん/の/ごとく¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな、¥ではの−はうぐわん−みつなが、¥つがふ¥その¥せい¥さんびやく−よ−き、¥じふごにち/の¥ね/の−こく/に、¥みや/の¥ごしよ/へ/ぞ¥おし−よせ/たる。¥げん−だいふ/の−はうぐわん/は、¥ぞんずる¥むね¥あり/と¥おぼえ/て、¥はるか/の¥もんぐわい/に¥ひかへ/たり。¥ではの−はうぐわん−みつなが/は、¥のり/ながら¥もん/の¥うち/へ¥うち−いれ、¥には/に¥ひかへ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥みや/の¥ご=むほん¥すで/に¥あらはれ/させ¥たまひ/て、¥とさ/の−はた/へ¥うつし¥まゐらせ/ん/が¥ため/に、¥くわんにん=ども/が¥べつたうせん/を¥うけたまはつ/て、¥ただいま¥おん=むかひ/に¥まゐり/て¥さふらふ。¥とうとう¥おん=いで¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥のぶつら¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、「¥たうじ/は¥ごしよ/で/も¥さふらは/ず、¥おん=ものま[う]で/で¥さふらふ/ぞ。¥なにごと/ぞ、¥こと/の¥しさい/を¥まうさ/れよ」/と¥いひ/けれ/ば、¥ではの−はうぐわん、「¥なんでふ¥この¥ごしよ/なら/で/は、¥いづく/へ/か¥わたら/せ¥たまふ/べかん/なる/ぞ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥しもべ=ども¥まゐつ/て¥さがし¥たてまつれ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥のぶつら¥かさね/てP253、「¥もの/も¥おぼえ/ぬ¥くわんにん=ども/が¥まうしやう/かな。¥むま/に¥のり/ながら、¥もん/の¥うち/へ¥まゐる/だに/も¥きくわい/なる/に¥あまつさへ¥しもべ=ども¥まゐつ/て¥さがし¥たてまつれ/と/は、¥いかで/か¥まうす/ぞ。¥ちやう−ひやうゑ/の−じよう−はせべの−のぶつら/が¥さふらふ/ぞ。¥ちかう¥よつ/て¥あやまち−す/な」/と/ぞ¥いひ/ける。¥ちやう/の¥しもべ/の¥なか/に、¥かなたけ/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥うちもの/の¥さや/を¥はづし、¥のぶつら/に¥め/を¥かけ/て、¥おほ−ゆか/の¥うへ/へ¥とび−のぼる。¥これ/を¥み/て¥どうれい=ども、¥じふしごにん/ぞ¥つづい/たる。¥のぶつら¥これ/を¥み/て、¥かりぎぬ/の¥おびひも¥ひつ−きつ/て¥すつる¥まま/に、¥ゑふ/の−たち/なれ/ども、¥み/を/ば¥こころ−え/て¥つくら/せ/たる/を¥ぬき−あはせ/て、¥さんざん/に/こそ¥ふるまう/たれ。¥かたき/は¥おほ−だち、¥おほ−なぎなた/で¥ふるまへ/ども、¥のぶつら/が¥ゑふ/の−たち/に¥きり−たて/られ/て、¥あらし/に¥こ/の−は/の¥ちる¥やう/に、¥には/へ¥さつ/と/ぞ¥おり/たり/ける。¥
さつき−じふごや/の¥くもま/の¥つき/の、¥あらはれ−いで/て¥あかかり/ける/に、¥かたき/は¥ぶあんない/なり、¥のぶつら/は¥あんないしや/にて¥あり/けれ/ば、¥あそこ/の¥めんらう/に¥おつ−かけ/て/は、¥はた/と¥きり、¥ここ/の¥つまり/に¥おつ−つめ/て/は、¥ちやうど¥きる。「¥いか/に¥せんじ/の¥お=つかひ/を/ば、¥かう/は¥する/ぞ」/と¥いひ/けれ/ば、「¥せんじ/と/は¥なん/ぞ」/とて、¥たち¥ゆがめ/ば¥をどり−のき、¥おし−なほし、¥ふみ−なほし、¥やには/に¥よき¥もの=ども¥じふしごにん/ぞ¥きり−ふせ/たる。¥その−のち¥たち/の¥きつさき¥さんずん/ばかり¥うち−をつ/て¥すて/てげり。¥はら/を¥きら/ん/と¥こし/を¥さぐれ/ども、¥さやまき¥おち/て¥なかり/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず。¥おほて/を¥ひろげ/て、¥たかくらおもて/の¥こもん/より、¥をどり−いで/ん/と¥する¥ところ/に、¥おほ−なぎなた¥もち/たる¥をとこ¥いち−にん¥より−あう/たり。¥のぶつら¥なぎなた/に¥のら/ん/とP254¥とん/で¥かかる/が、¥のり−そんじ/て、¥もも/を¥ぬひざま/に¥つらぬか/れ、¥こころ/は¥たけく¥おもへ/ども、¥おほぜい/の¥なか/に¥とり−こめ/られ/て、¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥その−のち¥ごしよ−ぢう/に¥みだれ−いつ/て¥さがせ/ども、¥みや/は¥わたら/せ¥たまは/ず。¥のぶつら/ばかり¥からめ/て、¥ろくはら/へ¥ゐ/て¥まゐる。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、¥のぶつら/を¥おほ−には/に¥ひつ−すゑ/させ、「¥まことに¥わ−をのこ/は、¥せんじ/の¥お=つかひ/と¥なのる/を、¥せんじ/と/は¥なん/ぞ/とて¥きつ/たり/ける/か。¥その−うへ、¥ちやう/の¥しもべ=ども、¥おほく¥にんじやう¥せつがい−し/たん/なれ/ば、¥よくよく¥きうもん−し/て、¥こと/の¥しさい/を¥たづね−とひ、¥その−のち¥かはら/に¥ひき−いだい/て¥かうべ/を¥はねよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥
のぶつら¥もと/より¥すぐれ/たる¥だい−かう/の−もの/なり/けれ/ば、¥ゐ−なほり¥あざ−わらつ/て¥まうし/ける/は、「¥この−ほど¥あの¥ごしよ/を、¥よなよな¥もの/の¥うかがひ¥さふらふ/を、¥なんでふ¥こと/の¥ある/べき/と¥おもひ−あなどつ/て、¥ようじん/も¥つかまつら/ぬ¥ところ/に、¥やはん/ばかり/に¥よろう/たる¥もの=ども/が、¥にさんびやくき¥うち−いつ/て¥さふらふ/を、¥なにもの/ぞ/と¥たづね/て¥さふらへ/ば、¥せんじ/の¥お=つかひ/と¥まうす。¥たうじ/は¥しよ−こく/の¥せつたう¥がうだう、¥さんぞく¥かいぞく/など¥まうす¥やつ=ばら/が、¥あるひは¥きんだち/の¥いら/せ¥たまひ/たる/ぞ、¥あるひは¥せんじ/の¥お=つかひ/など¥なのり¥まうす/と、¥かねがね¥うけたまはつ/て¥さふらふ/ほど/に、¥せんじ/と/は¥なん/ぞ/とて、¥きつ/たる¥ざふらふ。¥およそ¥のぶつら、¥もののぐ/を/も¥おもふ¥さま/に¥つかまつり、¥かね¥よき¥たち/を/も¥もつ/て¥さふらは/ん/に/は、¥ただいま/の¥くわんにん=ども/を/ば、¥よも¥いち−にん/も¥あんをん/で/は¥かへし¥さふらは/じ。¥その−うへ、¥みや/の¥ご=ざいしよ/は、¥いづく/に¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん、¥しり¥まゐらせ/ぬ¥ざふらふ。¥たとひP255¥しり¥まゐらせ/て¥さふらふ/とも、¥さぶらひ−ほん/の¥もの/の、¥いちど¥まうさ/じ/と¥おもひ−きり/て/ん¥こと/を、¥きうもん/に¥およん/で¥まうす/べき¥やう¥なし」/とて、¥その−のち/は¥もの/も¥まうさ/ず。¥いくら/も¥なみ−ゐ/たり/ける¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、「¥あつぱれ¥かう/の−もの/や。¥これ=ら/を/こそ¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/と/も¥いふ/べけれ」/と、¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、¥その¥なか/に¥ある¥ひと/の¥まうし/ける/は、「¥あれ/が¥かうみやう/は¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/ぞ/かし。¥せんねん¥ところ/に¥あり/し¥とき、¥おほ−ばんじゆ/の¥もの=ども/の¥とどめ−かね/たり/し¥がうだう¥ろくにん/に、¥ただ¥いち−にん¥おつ−かかり、¥にでうほりかは/なる¥ところ/にて、¥しにん¥きり−ふせ、¥ににん¥いけどつ/て、¥その−とき¥なさ/れ/たり/し¥さひやうゑ/の−じよう/ぞ/かし。¥あつたら¥をのこ/の¥きら/れ/んずる¥こと/の¥むざん−さ/よ」/と¥をしみ−あへ/り/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥いかが¥おもは/れ/けん、「¥さら/ば、¥な¥きつ/そ」/とて、¥はうき/の¥ひの/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥へいけ¥ほろび¥げんじ/の¥よ/に¥なつ/て、¥とうごく/へ¥くだり、¥かぢはら−へいざう−かげとき/に¥つい/て、¥こと/の¥こんげん¥いちいち/に¥まうし/たり/けれ/ば、¥かまくら=どの、「¥しんべう/なり」/と¥かんじ¥たまひ/て、¥のとの−くに/に¥ご=おん¥かうぶり/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「たかくらのみやをんじやうじへじゆぎよ」(『きをほ』)S0406¥さる−ほど/に、¥みや/は¥たかくら/を¥きた/へ、¥こんゑ/を¥ひがし/へ、¥かもがは/を¥わたら/せ¥たまひ/て、¥によいやま/へP256¥いら/せ¥おはします。¥むかし¥きよみばらの−てんわう、¥おほともの−わうじ/に¥おそは/れ/させ¥たまひ/て、¥よしのやま/へ¥いら/せ¥たまひ/ける/に/こそ、¥をとめ/の¥すがた/を/ば¥から/せ¥たまひ/ける/なれ。¥いま¥この¥みや/の¥おん=ありさま/も、¥それ/に/は¥すこし/も¥たがは/せ¥たまふ/べから/ず。¥しら/ぬ¥やまぢ/を、¥よ/も−すがら¥はるばる/と¥わけ−いら/せ¥たまふ/に、¥いつ¥ならはし/の¥おん=こと/なれ/ば、¥おん=あし/より¥いづる¥ち/は、¥いさご/を¥そめ/て¥くれなゐ/の/ごとし。¥なつぐさ/の¥しげみ/が¥なか/の¥つゆけ−さ/も、¥さ/こそ/は¥ところ−せう¥おぼしめさ/れ/けめ。¥かく−し/て¥あかつき−がた/に¥みゐでら/へ¥いら/せ¥おはします。「¥かひ−なき¥いのち/の¥をし−さ/に、¥しゆと/を¥たのん/で¥じゆぎよ¥あり」/と¥おほせ/けれ/ば、¥だいしゆ¥おほき/に¥かしこまり−よろこん/で、¥ほふりんゐん/に¥ごしよ/を¥しつらひ、¥かた/の/ごとく/の¥ぐご¥し−いだい/て¥たてまつる。¥
「きほふ」¥あくる¥じふろくにち、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん¥おこさ/せ¥たまひ/て、¥みゐでら/へ¥おち/させ¥たまふ/ぞ/や/と¥まうす/ほど/こそ¥あり/けれ、¥きやう−ぢう/の¥さうどう¥なのめ/なら/ず。¥そもそも¥この¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/は、¥としごろ−ひごろ/も¥あれ/ば/こそ¥あり/けめ、¥こんねん¥いか/なる¥こころ/にて、¥むほん/を/ば¥おこさ/れ/ける/ぞ/と¥いふ/に、¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/の、¥ふしぎ/の¥こと/を/のみ¥し¥たまひ/ける/に¥よつ/て/なり。¥され/ば¥ひと/の¥よ/に¥あれ/ば/とて、¥すずろ/に¥いふ/まじき¥こと/を¥いひ、¥す/まじきP257¥こと/を¥する/は、¥よくよく¥しりよ¥ある/べき¥こと/なり。¥たとへば¥その−ころ¥さんみ−にふだう/の¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな/の¥もと/に、¥くぢう/に¥きこえ/たる¥めいば¥あり。¥かげ/なる¥むま/の¥ならび−なき¥いちもつ、¥のり−はしり、¥こころ−むけ、¥よ/に¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥な/を/ば¥このした/と/ぞ¥いは/れ/ける。¥むねもりの−きやう¥ししや/を¥たて/て、「¥きこえ¥さふらふ¥めいば/を¥たまはつ/て、¥み¥さふらは/ばや」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥いづの−かみ/の¥へんじ/に/は、「¥さる¥むま/を¥もつ/て¥さふらひ/し/を、¥この−ほど¥あまり/に¥のり−つからかし/て¥さふらふ/ほど/に、¥しばらく¥いたはら/せ/ん/が¥ため/に、¥でんしや/へ¥つかはし/て¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥さら/ん/に/は¥ちから¥およば/ず」/とて、¥その−のち/は¥さた¥なかり/ける/が、¥おほく¥なみ−ゐ/たり/ける¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、「¥あつぱれ¥その¥むま/は¥をととひ/も¥さふらひ/し。¥きのふ/も¥みえ/て¥さふらふ。¥けさ/も¥にはのり−し¥さふらひ/つる」/など、¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、「¥さて/は¥をしむ¥ござんなれ。¥にくし。¥こへ」/とて、¥さぶらひ/して¥はせ/させ、¥ふみ/など¥し/て、¥ひととき/が¥うち/に¥ごろくど¥しちはちど/など¥こは/れ/けれ/ば、¥さんみ−にふだう¥これ/を¥きき、¥いづの−かみ/に¥むかつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥たとひ¥こがね/を¥もつて¥まろめ/たる¥むま/なり/とも、¥それ−ほど¥ひと/の¥こは/うずる/に、¥をしむ/べき¥やう/や¥ある。¥その¥むま¥すみやか/に¥ろくはら/へ¥つかはせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥いづの−かみ¥ちから¥およば/ず、¥いつしゆ/の¥うた/を¥かき−そへ/て、¥ろくはら/へ¥つかはさ/る。¥
こひしく/は¥き/て/も¥みよ/かし¥み/に¥そふる¥かげ/を/ば¥いかが¥はなち−やる/べき W021¥
むねもりの−きやう、¥まづ¥うた/の¥へんじ/を/ば¥し¥たまは/で、「¥あつぱれ¥むま/や、¥むま/は¥まことに¥よい¥むま/で¥あり/けり。P258¥され/ども¥あまり/に¥をしみ/つる/が¥にくき/に、¥ぬし/が¥なのり/を¥かなやき/に¥せよ」/とて、¥なかつな/と¥いふ¥かなやき/を¥し/て、¥むまや/に/こそ¥たて/られ/けれ。¥まらうと¥きたつ/て、「¥きこえ¥さふらふ¥めいば/を¥み¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、「¥その¥なかつな=め/に¥くら¥おけ、¥ひき−いだせ、¥のれ、¥うて、¥はれ」/なんど/ぞ¥のたまひ/ける。¥いづの−かみ¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥み/に¥かへ/て¥おもふ¥むま/なれ/ども、¥けんゐ/に¥つい/て¥とら/るる/さへ¥ある/に、¥あまつさへ¥てんが/の¥わらはれぐさ/と¥なら/んずる¥こと/こそ¥やすから/ね」/と¥おほき/に¥いきどほら/れ/けれ/ば、¥さんみ−にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥なんでふ¥こと/の¥ある/べき/と¥おもひ−あなどつ/て、¥へいけ/の¥ひと=ども/が、¥かやう/の¥しれごと/を¥する/に/こそ¥あん/なれ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん。¥びんぎ/を¥うかがふ/に/こそ¥あら/め」/と¥のたまへ/ども、¥わたくし/に/は¥おもひ/も¥たた/れ/ず、¥たかくらのみや/を¥すすめ¥まうさ/れ/ける/と/ぞ、¥のち/に/は¥きこえ/し。¥これ/に¥つけ/て/も、¥てんが/の¥ひと、¥こまつの−おとど/の¥こと/を/ぞ¥しのび¥まうし/ける。¥ある−とき¥おとど¥さんだい/の¥ついで/に、¥ちうぐう/の¥おん=かた/へ¥まゐらせ¥たまふ/に、¥はつしやく/ばかり¥あり/ける¥くちなは/の、¥おとど/の¥さしぬき/の¥ひだん/の¥りん/を¥はひ−まはり/ける/を、¥しげもり¥さわが/ば、¥にようばう=たち/も¥さわぎ、¥ちうぐう/も¥おどろか/せ¥たまひ/な/んず/と¥おぼしめし、¥ひだん/の¥て/にて¥を/を¥おさへ、¥みぎ/の¥て/にて¥かしら/を¥とつ/て、¥なほし/の¥そで/の¥なか/へ¥ひき−いれ、¥ちつと/も¥さわが/ず、¥つい−たつ/て、「¥ろくゐ/や¥さふらふ、¥ろくゐ/や¥さふらふ」/と¥めさ/れ/けれ/ば、¥いづの−かみ−なかつな、¥その−とき/は¥いまだ¥ゑふ/の−くらんど/にて¥さふらは/れ/ける/が、「¥なかつな」/と¥なのつ/て¥まゐら/れ/たる/に、¥この¥くちなは/を¥たぶ。¥たまはつ/て¥ゆば=どの/をP259¥へ/て、¥てんじやう/の¥こには/に¥いで/つつ、¥みくら/の¥こ−とねり/を¥まねい/て、「¥これ¥たまはれ」/と¥いは/れ/けれ/ば、¥おほき/に¥かしら/を¥ふつ/て¥にげ−さり/ぬ。¥いづの−かみ¥ちから¥およば/ず、¥わが¥らうどう/の¥きほふ/を¥めし/て¥これ/を¥たぶ。¥たまはつ/て¥すて/てげり。¥その¥あした¥こまつ=どの/より、¥よい¥むま/に¥くら¥おい/て、¥いづの−かみ/の¥もと/へ¥つかはす/とて、「¥さて/も¥きのふ/の¥ふるまひ/こそ、¥いう/に¥やさしう¥さふらひ/つれ。¥これ/は¥のりいち/の¥むま/で¥さふらふ/ぞ。¥ゆふべ/に¥およん/で、¥ぢんげ/より¥けいせい/の¥もと/へ¥かよは/れ/ん¥とき¥もちひ/らる/べし」/とて¥つかはさ/る。¥いづの−かみ、¥だいじん/の¥おん=ぺんじ/なれ/ば、「¥お=むま¥かしこまつ/て¥たまはり¥さふらひ/ぬ。¥さて/も¥きのふ/の¥おん=ふるまひ/は、¥げんじやうらく/に/こそ¥に/て¥さふらひ/しか」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥いか/なれ/ば¥こまつ=どの/は、¥かやう/に¥いう/なる¥ためし/も¥おはせ/し/ぞ/かし。¥この¥むねもりの−きやう/は、¥さ/こそ¥なから/め、¥ひと/の¥をしむ¥むま¥こひ−とつ/て、¥あまつさへ¥てんが/の¥だいじ/に¥および/ぬる/こそ¥うたてけれ。¥さる−ほど/に¥おなじき−じふろくにち/の¥よ/に¥いつ/て、¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ、¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな、¥じなん¥げん−だいぶ/の−はうぐわん−かねつな、¥ろくでうの−くらんど−なかいへ、¥その¥こ¥くらんど−たらう−なかみつ¥いげ、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥たち/に¥ひ¥かけ¥やき−あげ/て、¥みゐでら/へ/こそ¥まゐら/れ/けれ。¥ここ/に¥さんみ−にふだう/の¥としごろ/の¥さぶらひ/に、¥わたなべの−げんざう−きほふの−たきぐち/と¥いふ¥もの¥あり。¥はせ−おくれ/て¥とどまり/たり/ける/を、¥ろくはら/へ¥めし/て、「¥など¥なんぢ/は、¥さうでん/の¥しゆ、¥さんみ−にふだう/が¥とも/を/ば¥せ/で、¥とどまつ/たる/ぞ」/と¥のたまへ/ば、¥きほふ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥ひごろ/は¥しぜん/の¥こと/も¥さふらは/ば、¥まつさき¥かけ/て、¥いのち/を¥たてまつら/う/ど/こそ¥ぞんぜ/しか。¥こんど/は¥いかがP260¥さふらひ/つる/やらん。¥かう/と/も¥しらせ/られ/ざり/つる¥あひだ、¥とどまつ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥むねもりの−きやう、「¥これ/に/も¥また¥けんざん/の¥もの/ぞ/かし。¥せんど¥こうえい/を¥ぞんじ/て、¥たうけ/に¥つい/て¥ほうこうーせ/う/と/や¥おもふ。¥また¥てうてき¥よりまさ−ぼふし/に¥どうしんーせ/ん/と/や¥おもふ。¥あり/の−まま/に¥まうせ/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥きほふ¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥たとひ¥さうでん/の¥よしみ¥さふらふ/とも、¥いかん/か¥てうてき/と¥なれ/る¥ひと/に、¥どうしん/を/ば¥つかまつり¥さふらふ/べき。¥ただ¥てん−ちう/に¥ほうこう¥いたさ/うずる¥ざふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいしやう、「¥さら/ば¥ほうこうーせよ。¥よりまさ−ぼふし/が¥し/けん¥おん/に/は、¥ちつと/も¥おとる/まじき/ぞ」/とて¥いり¥たまひ/ぬ。¥あした/より¥ゆふべ/に¥およぶ/まで、「¥きほふ/は¥ある/か」。「¥ざふらふ」。「¥ある/か」。「¥ざふらふ」/とて¥しこうーす。¥ひ/も¥やうやう¥くれ/けれ/ば、¥だいしやう¥いで/られ/たり。¥きほふ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥まこと/や¥さんみ−にふだう/は、¥みゐでら/に/と¥きこえ¥さふらふ。¥さだめて¥ようち/なんど/も/や¥むけ/られ¥さふらは/んず/らん。¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう¥さて/は¥みゐでら−ぼふし/にて/ぞ¥さふらは/んず/らん。¥こころ−にくう/も¥さふらは/ず、¥まかり−むかつ/て¥えりうち/など/も¥つかまつる/べき。¥さる¥むま/を¥もつ/て¥さふらひ/し/を、¥この−ほど¥したしい¥やつ−め/に¥ぬすま/れ/て¥さふらふ。¥おん=むま¥いつぴき¥くだし−あづかり¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいしやう、「¥もつとも¥さる/べし」/とて、¥しらあしげ/なる¥むま/の、¥なんれう/とて¥ひざうーせ/られ/たり/ける/に、¥よい¥くら¥おい/て¥きほふ/に¥たぶ。¥たまはつ/て¥しゆくしよ/に¥かへり、「¥はや¥ひ/の¥くれ/よ/かし。¥みゐでら/へ¥はせーまゐり、¥にふだう=どの/の¥まつさき¥かけ/て¥うちじにーせ/ん」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ひ/も¥やうやう¥くれ/けれ/ば、¥さいし=ども/を/ば、¥かしこ−ここ/に¥たち=しのば/せ/て、¥みゐでら/へ/とP261¥いで−たち/ける、¥こころ/の¥うち/こそ¥むざん/なれ。¥ひやうもん/の¥かりぎぬ/の¥きくとぢ¥おほきらか/に¥し/たる/に、¥ぢうだい/の¥きせなが、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥ほしじろ−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥いかもの−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥おほ−なかぐろ/の−や¥おひ、¥たきぐち/の¥こつぽふ¥わすれ/じ/と/や、¥たか/の−は/で¥はい/だり/ける¥まとや¥ひとて/ぞ¥さし−そへ/たる。¥しげどう/の−ゆみ¥もつ/て、¥なんれう/に¥うち−のり、¥のり−かへ¥いつき¥うち−ぐし、¥とねり−をとこ/に¥もつだて¥わき−ばさま/せ、¥やかた/に¥ひ¥かけ¥やき−あげ/て、¥みゐでら/へ/こそ¥はせ/たり/けれ。¥ろくはら/に/は¥きほふ/が¥やかた/より¥ひ¥いで−き/たり/とて¥ひしめき/けり。¥むねもりの−きやう¥いそぎ¥いで/て、「¥きほふ/は¥ある/か」。「¥さふらは/ず」/と¥まうす。「¥すは¥きやつ−め/を¥てのび/に/して、¥たばから/れ/ぬる/は。¥あれ¥おつ−かけ/て¥うて」/と¥のたまへ/ども、¥きほふ/は¥すぐれ/たる¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥やつぎばや/の¥てきき/にて¥あり/けれ/ば、「¥にじふし¥さい/たる¥や/で/は、¥まづ¥にじふしにん/は¥い−ころさ/れ/な/んず。¥おと¥な¥せ/そ」/とて、¥すすむ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥ただいま/しも¥みゐでら/に/は、¥わたなべ−たう¥より−あひ/て、¥きほふ/が¥さた¥あり/けり。「¥いか/に/も−し/て¥この¥きほふ−たきぐち/を/ば、¥めしーぐせ/られ¥さふらは/んずる/ものを」/と、¥くちぐち/に¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さんみ−にふだう、¥きほふ/が¥こころ/を¥よく¥しつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥むげ/に¥その¥もの¥とらへ−からめ/られ/は¥せ/じ。¥にふだう/に¥こころざし¥ふかき¥もの/なれ/ば、¥みよ、¥ただいま¥まゐら/うずる/ぞ」/と¥のたまひ/も¥はて/ぬ/に、¥きほふ¥つと¥まゐり/たり。「¥され/ば/こそ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥きほふ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥いづの−かう/の=との/の¥このした/が¥かはり/に、¥ろくはら/の¥なんれう/を/こそ¥とつ/て¥まゐつ/てP262¥さふらへ。¥まゐらせ¥さふらは/ん」/とて¥たてまつる。¥いづの−かみ¥なのめ/なら/ず¥よろこび¥たまひ/て、¥やがて¥をがみ/を¥きり、¥かなやき/を¥し/て、¥その¥よ¥ろくはら/へ¥つかはさ/る。¥やはん/ばかり/に¥もん/の¥うち/へ¥おひ−いれ/たり/けれ/ば、¥むまや/に¥いつ/て、¥むま=ども/と¥くひ−あひ/けれ/ば、¥その−とき¥とねり¥おどろき−あひ、「¥なんれう/が¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥むねもりの−きやう¥いそぎ¥いで/て¥み¥たまふ/に、¥むかし/は¥なんれう、¥いま/は、「¥たひらの−むねもり−にふだう」/と¥いふ¥かなやき/を/こそ¥し/たり/けれ。¥だいしやう、「¥につくい¥きほふ−め/を¥きつ/て¥すつ/べかり/ける/ものを。¥てのび/に/して¥たばから/れ/ぬる¥こと/こそ¥やすから/ね。¥こんど¥みゐでら/へ¥よせ/たら/んずる¥ひとびと/は、¥いか/に/も−し/て¥きほふ−め/を¥いけどり/に¥せよ。¥のこぎり/で¥くび¥きら/ん」/と、¥をどり−あがり−をどり−あがり¥いから/れ/けれ/ども、¥なんれう/が¥をがみ/も¥おひ/ず、¥かなやき/も¥また¥うせ/ざり/けり。¥
「さんもんへのてふじやう」(『さんもんへのてうじやう』)S0407¥さる−ほど/に、¥みゐでら/に/は、¥かひ¥かね¥ならい/て、¥だいしゆ¥せんぎ−す。「¥そもそも¥きんじつ¥せじやう/の¥てい/を¥あんずる/に、¥ぶつぽふ/の¥すゐび、¥わうぼふ/の¥らうろう、¥まさに¥この−とき/に¥あたれ/り。¥こんど¥にふだう/の¥ばうあく/を¥いましめ/ず/ば、¥いづれ/の¥ひ/を/か¥ごす/べき。¥みや¥ここ/に¥じゆぎよ/の¥おん=こと、¥しやう−はちまんぐう/の¥ゑご、¥しんら−だい−みやうじん/の¥みやうじよ/に¥あら/ず/や。¥てんじゆ−ちるゐ/も¥やうがう/を¥たれ、¥ぶつりき¥じんりき/も¥がうぶく/を¥くはへP263¥まします¥こと、¥など/か¥なから/ん。¥なかんづく¥ほくれい/は¥ゑんじう¥いちみ/の¥がくぢ、¥なんと/は、¥げらふ¥とくど/の¥かいぢやう/なり。¥てつそう/の¥ところ/に¥など/か¥くみせ/ざる/べき」/と、¥いちみ−どうしん/に¥せんぎ−し/て、¥やま/へ/も¥なら/へ/も¥てふじやう/を/こそ¥つかはし/けれ。¥まづ¥さんもん/へ/の¥じやう/に¥いはく、「¥をんじやうじ¥てつす、¥えんりやくじ/の¥が。¥こと/に¥がふりよく/を¥いたし/て、¥たうじ/の¥はめつ/を¥たすけ/られ/ん/と¥おもふ¥じやう。¥みぎ¥にふだう−じやうかい、¥ほしいまま/に¥ぶつぽふ/を¥はめつ−し、¥わうぼふ/を¥みだら/ん/と¥ほつす。¥しうたん¥きはまり¥なき¥ところ/に、¥こんげつ−じふごにち/の¥よ、¥いちゐん¥だいに/の¥わうじ、¥ふりよ/の¥なん/を¥のがれ/ん¥ため/に、¥ひそか/に¥にふじ−せ/しめ¥たまふ。¥ここ/に¥ゐんぜん/と¥かうし/て、¥いだし¥たてまつる/べき¥よし、¥しきり/に¥せめ¥あり/と¥いへ/ども、¥いだし¥たてまつる/に¥あたは/ず。¥よつて¥くわんぐん/を¥はなち−つかはす/べき¥むね、¥その¥きこえ¥あり。¥たうじ/の¥はめつ、¥まさに¥この−とき/に¥あたれ/り。¥しよしゆ¥なんぞ¥しうたん−せ/ざら/ん/や。¥なかんづく¥えんりやく¥をんじやう¥りやうじ/は、¥もんぜき¥ふたつ/に¥あひ−わかる/と¥いへ/ども、¥がくする¥ところ/は、¥これ¥ゑんどん¥いちみ/の¥けうもん/に¥おなじ。¥たとへば¥とり/の¥さう/の¥つばさ/の/ごとく、¥また¥くるま/の¥ふたつ/の¥わ/に¥に/たり。¥いつぱう¥かけ/ん/に¥おいて/は、¥いかで/か¥その¥なげき¥なから/ん/や。¥ていれば¥こと/に¥がふりよく/を¥いたし/て、¥たうじ/の¥はめつ/を¥たすけ/られ/ば、¥はやく¥ねんらい/の¥ゐこん/を¥わすれ、¥ぢうせん/の¥むかし/に¥ふくせ/ん。¥しゆと/の¥せんぎ¥かく/の/ごとし。¥よつて¥てふそう¥くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−ごぐわつ−じふはちにち、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。P264
「なんとへのてふじやう」(『なんとてうじやう』)S0408¥さんもん/の¥だいしゆ、¥この¥じやう/を¥ひけん−し/て、「¥こ/は¥いか/に、¥たうざん/の¥まつじ/で¥あり/ながら、¥とり/の¥さう/の¥つばさ/の/ごとく、¥また¥くるま/の¥ふたつ/の¥わ/に¥に/たり/と、¥おさへ/て¥かく¥でう、¥これ¥もつて¥きくわい/なり」/とて、¥へんてふ/に/も¥およば/ず。¥その−うへ¥にふだう−しやうこく、¥てんだい−ざす−めいうん−だいそうじやう/に、¥しゆと/を¥しづめ/らる/べき¥よし¥のたまひ/けれ/ば、¥ざす¥いそぎ¥とうざん−し/て、¥だいしゆ/を¥しづめ¥たまふ。¥かかり/し−ほど/に、¥みや/の¥おん=かた/へ/は、¥ふぢやう/の¥よし/を/ぞ¥まうし/ける。¥また¥にふだう−しやうこく/の¥はかりごと/に、¥あふみごめ¥にまんごく、¥ほくこく/の¥おりのべぎぬ¥さんぜんびき、¥わうらい/の¥ため/に¥さんもん/へ¥よせ/らる。¥これ/を¥たにだに¥みねみね/へ¥ひか/れ/ける/に、¥にはか/の¥こと/にて¥あり/けれ/ば、¥いち−にん/して¥あまた¥とる¥だいしゆ/も¥あり、¥また¥て/を¥むなしう/して、¥ひとつ/も¥とら/ぬ¥しゆと/も¥あり。¥なにもの/の¥しわざ/に/や¥あり/けん、¥らくしよ/を/ぞ¥し/たり/ける。¥
やまぼふし¥おりのべごろも¥うすく/して¥はぢ/を/ば¥え/こそ¥かくさ/ざり/けれ W022¥
また¥きぬ/に/も¥あたら/ぬ¥だいしゆ/の¥よみ/たり/ける/に/や、¥
おりのべ/を¥ひときれ/も¥え/ぬ¥われ=ら/さへ¥うすはぢ/を¥かく¥かず/に¥いる/かな W023¥
また¥なんと/へ/の¥じやう/に¥いはく、「¥をんじやうじ¥てつす、¥こうぶくじ/の¥が。¥こと/に¥がふりよく/を¥いたし/て、¥たうじ/のP265¥はめつ/を¥たすけ/られ/ん/と¥こふ¥じやう。¥みぎ¥ぶつぽふ/の¥しゆしよう/なる¥こと/は、¥わうぼふ/を¥まもら/ん/が¥ため、¥わうぼふ¥また¥ちやうきう/なる¥こと、¥すなはち¥ぶつぽふ/に¥よる。¥ここ/に¥にふだう−さきの−だいじやうだいじん−たひらの−あそん−きよもり=こう、¥ほふみやう¥じやうかい、¥ほしいまま/に¥こくゐ/を¥ひそか/に¥し、¥てうせい/を¥みだり、¥ない/に¥つけ¥げ/に¥つけ、¥うらみ/を¥なし、¥なげき/を¥なす¥あひだ、¥こんぐわつ−じふごにち/の¥よ、¥いちゐん¥だいに/の¥わうじ¥ふりよ/の¥なん/を¥のがれ/ん/が¥ため/に、¥にはか/に¥にふじ−せ/しめ¥たまふ。¥ここ/に¥ゐんぜん/と¥かうし/て¥いだし¥たてまつる/べき¥むね、¥しきり/に¥せめ¥あり/と¥いへ/ども、¥しゆと¥いつかう¥をしみ¥たてまつ/て、¥いだし¥たてまつる/に¥あたは/ず。¥よつて¥かの¥ぜんもん、¥ぶし/を¥たうじ/へ¥いれ/ん/と¥す。¥ぶつぽふ/と¥いひ、¥わうぼふ/と¥いひ、¥いちじ/に¥まさに¥はめつ−せ/ん/と¥す。¥むかし¥たう/の¥ゑしやう−てんし、¥ぐんびやう/を¥もつて¥ぶつぽふ/を¥ほろぼさ/しめ/し¥とき、¥しやうりやうぜん/の¥しゆ、¥かつせん/を¥いたし/て、¥これ/を¥ふせぐ。¥わうけん¥なほ¥かく/の/ごとし。¥いか/に−いはんや¥むほん−はちぎやく/の¥ともがら/に¥おいて/を/や。¥たれ/の¥ひと/か¥きやうせい−す/べき/ぞ/や。¥なかんづく¥なんきやう/は¥れい¥なく/して、¥つみ¥なき¥ちやうじや/を¥はいる−せ/らる。¥この−とき/に¥あら/ずん/ば、¥いづれ/の¥ひ/か¥くわいけい/を¥とげ/ん。¥ねがは−く/は¥しゆと、¥うち/に/は¥ぶつぽふ/の¥はめつ/を¥たすけ、¥ほか/に/は¥あくぎやく/の¥はんるゐ/を¥しりぞけ/ば、¥どうしん/の¥いたり、¥ほんぐわい/に¥たん/ぬ/べし。¥しゆと/の¥せんぎ¥かく/の/ごとく、¥よつて¥てつそう¥くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−ごぐわつ−じふはちにち、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。P266
「なんとへんてふ」¥なんと/の¥だいしゆ¥この¥じやう/を¥ひけん−し/て、¥いちみ−どうしん/に¥せんぎ−し/て、¥やがて¥へんてふ/を/こそ¥おくり/けれ。¥その¥へんてふ/に¥いはく、「¥こうぶくじ¥てつす、¥をんじやうじ/の¥が。¥らいてふ¥いつし/に¥のせ/られ/たり。¥みぎ¥にふだう−じやうかい/が¥ため/に、¥きじ/の¥ぶつぽふ/を¥ほろぼさ/ん/と¥する¥よし/の¥こと¥てつす。¥ぎよくせん¥ぎよくくわ¥りやうか/の¥しうぎ/を¥たつ/と¥いへ/ども、¥きんしやう−きんく、¥おなじう¥いちだい/の¥けうもん/より¥いで/たり。¥なんきやう¥ほくきやう¥とも/に¥もつて¥によらい/の¥でし/たり。¥じじ¥たじ、¥たがひ/に¥でうだつ/が¥ましやう/を¥ぶくす/べし。¥そもそも¥きよもり−にふだう/は¥へいじ/の¥さうかう、¥ぶけ/の¥ぢんがい/なり。¥そぶ¥まさもり、¥くらんど−ごゐ/の¥いへ/に¥つかへ/て、¥しよ−こく¥じゆりやう/の¥むち/を¥とる。¥おほくらきやう−ためふさ、¥かしう−しし/の¥いにしへ、¥けんびしよ/に¥ふし、¥しゆり/の−だいぶ−あきすゑ、¥はりまの−たいしゆ/たり/し¥むかし、¥むまや/の−べつたうしき/に¥にんず。¥しかる/を¥しんぶ¥ただもり、¥しようでん/を¥ゆるさ/れ/し¥とき、¥とひ/の¥らうせう、¥みな¥ほうこ/の¥かきん/を¥をしみ、¥ないげ/の¥えいかう、¥おのおの¥ばだい/の¥じんもん/に¥なく。¥ただもり¥せいうん/の¥つばさ/を¥かいつくろふ/と¥いへ/ども、¥よ/の¥たみ¥なほ¥はくをく/の¥たね/を¥かろん/ず。¥な/を¥をしむ¥せいし、¥その¥いへ/に¥のぞむ¥こと¥なし。¥しかれ/ば−すなはち¥さんぬる¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥だ[い]じやう−てんわう¥いつせん/の¥こう/を¥かんじ/て、¥ふじ/の¥しやう/を¥さづけ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥たかく¥しやうこく/に¥のぼつ/て、¥かねて¥ひやうぢやう/を¥たまはる。¥なんし¥あるひは¥たいかい/を¥かたじけなう¥し、¥あるひは¥うりん/にP267¥つらなり、¥によし¥あるひは¥ちうぐうしき/に¥そなはり、¥あるひは¥じゆんごう/の¥せん/を¥かうぶる。¥くんてい−そし、¥みな¥きよくろ/に¥あゆみ、¥その¥まご¥かの¥をひ、¥ことごとく¥ちくふ/を¥さく。¥しか/のみ/なら/ず¥きうしう/を¥とうりやう−し、¥はくし/を¥しんだい−し/て、¥ぬび¥みな¥ぼくじう/と¥なす。¥いちまう¥こころ/に¥たがへ/ば、¥わうこう/と¥いへ/ども¥これ/を¥とらへ、¥へんげん¥みみ/に¥さかふ/れ/ば、¥くぎやう/と¥いへ/ども¥これ/を¥からむ。¥これ/に¥よつ/て、¥あるひは¥いつたん/の¥しんみやう/を¥のべ/ん/が¥ため、¥あるひは¥へんし/の¥りようじよく/を¥のがれ/ん/と¥おもつ/て、¥ばんじよう/の−せいしゆ、¥なほ¥めんてん/の¥こび/を¥なし、¥ぢうだい/の¥かくん、¥かへつて¥しつかう/の¥れい/を¥いたす。¥だいだい¥さうでん/の¥けりやう/を¥うばふ/と¥いへ/ども、¥しやうさい/も¥おそれ/て¥した/を¥まき、¥みやみや¥さうじよう/の¥しやうゑん/を¥とる/と¥いへ/ども、¥けんゐ/に¥はばかつ/て¥もの¥いふ¥こと¥なし。¥かつ/に¥のる¥あまり、¥きよねん/の¥ふゆ¥じふいちぐわつ、¥だ[い]じやうくわう/の¥すみか/を¥つゐふく−し/て、¥はくりく=こう/の¥み/を¥おし−ながす。¥ほんぎやく/の¥はなはだしき¥こと、¥まことに¥こきん/に¥たえ/たり。¥その−とき¥われ=ら、¥すべからく¥ぞくしゆ/に¥ゆき−むかつ/て、¥その¥つみ/を¥とふ/べし/と¥いへ/ども、¥あるひは¥しんりよ/に¥あひ−はばかり、¥あるひは¥りんげん/と¥しようずる/に¥よつ/て、¥うつたう/を¥おさへ/て、¥くわういん/を¥おくる¥あひだ、¥かさねて¥ぐんびやう/を¥おこし/て、¥いちゐん¥だいに/の¥しんわうぐう/を¥うち−かこむ¥ところ/に、¥はちまん−さん−じよ、¥かすが−だい−みやうじん、¥ひそか/に¥やうがう/を¥たれ、¥せんひつ/を¥ささげ¥たてまつり、¥きじ/に¥おくり−つけ/て、¥しんら/の¥とぼそ/に¥あづけ¥たてまつる。¥わうぼふ¥つき/ざる¥むね¥あきらけし。¥よつて¥きじ¥しんみやう/を¥すて/て¥しゆご−し¥たてまつる¥でう、¥がんじき/の¥たぐひ、¥たれ/か¥ずゐき−せ/ざら/ん。¥この−とき¥われ=ら¥ゑんゐき/に¥あつ/て、¥その¥なさけ/を¥かんずる¥ところ/に、¥きよもり=こう、¥なほ¥きようき/を¥おこし/て、¥きじ/に¥いら/ん/と¥する¥よし、¥ほのか/に¥つたへ¥うけたまはる/に¥よつ/て、¥かねて¥ようい/を¥いたす。¥じふはちにち¥たつ/の−いつてん/に¥だいしゆ/を¥おこし、¥しよじ/に¥てつそう−し、¥まつじ/にP268¥げぢ−し/て、¥ぐんし/を¥え/て¥のち、¥あんない/を¥たつせ/ん/と¥する¥ところ/に、¥せいてう¥とび−きたつ/て¥はうかん/を¥なげ/たり。¥すうじつ/の¥うつねん¥いちじ/に¥げさん−す。¥かの¥たうか¥しやうりやう−いつ−さん/の¥ひつしゆ、¥なほ¥ぶそう/の¥くわんびやう/を¥かへす。¥いはんや¥わこく¥なんぼく¥りやうもん/の¥しゆと、¥なんぞ¥ぼうしん/の¥じやるゐ/を¥はらは/ざら/ん。¥よく¥りやうゑん¥さう/の¥ぢん/を¥かため/て、¥よろしく¥われ=ら/が¥しんぱつ/の¥つげ/を¥まつ/べし。¥じやう/を¥さつし/て¥ぎたい/を¥なす¥こと¥なかれ。¥もつて¥てつす。¥くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−ごぐわつ−にじふいちにち、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。¥
「だいしゆそろへ」(『ながのせんぎ』)S0409¥てら/に/は¥みや¥いら/せ¥たまひ/て¥のち、¥おほぜき¥こぜき¥ほり−きつ/て、¥だいしゆ¥また¥せんぎ−す。「¥そもそも¥さんもん/は¥こころがはり−し/つ。¥なんと/は¥いまだ¥まゐら/ず。¥この¥こと¥のび/て/は¥あしかり/な/ん。¥いざ/や¥こんや¥ろくはら/に¥おし−よせ/て、¥ようち/に¥せ/ん。¥その¥ぎ/なら/ば、¥らうせう¥ふたて/に¥あひ−わかつ/て、¥まづ¥らうそう=ども/は、¥によいがみね/より¥からめで/へ¥むかふ/べし。¥あしがる=ども/を¥さき−だて/て、¥しらかは/の¥ざいけ/に¥ひ/を¥かけ¥やき−あげ/ば、¥ざいきやうにん、¥ろくはら/の¥ぶし=ども、¥あはや¥こと¥いで−き/たり/とて、¥はせ−むかは/んず/らん。¥その−とき¥いはさか、¥さくらもと/の¥へん/に、¥しばし¥ささへ/て¥ふせぎ−たたかは/ん¥ま/に、¥おほて/は¥まつざか/より、¥いづの−かみ/を¥たいしやうぐん/と/して、¥わかだいしゆ¥あくそう=ども/は、¥ろくはら/にP269¥おし−よせ、¥かざうへ/に¥ひ/を¥かけ¥やき−あげ、¥ひともみ¥もう/で¥せめ/ん/に、¥など/か¥だいじやう−にふだう¥やき−いだい/て、¥うた/ざる/べき」/と/ぞ¥せんぎ−し/たり/ける。¥ここ/に¥へいけ/の¥いのり−し/ける、¥いちによ−ばう/の−あじやり−しんかい/は、¥でし¥どうじゆく¥すじふにん¥ひき−ぐし、¥せんぎ/の¥には/に¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥かやう/に¥まうせ/ば、¥へいけ/の¥かたうど/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らん。¥いつかう¥その¥ぎ/にて/は¥さふらは/ず。¥たとひ¥さ¥さふらふ/とも、¥いかが¥しゆと/の¥ぎ/を/も¥おもひ、¥わが¥てら/の¥な/を/も¥をしま/で/は、¥さふらふ/べき。¥むかし/は¥げんぺい¥さう/に¥あらそひ/て、¥てうか/の¥おん=かため/たり/しか/ども、¥ちかごろ/は¥げんじ/の¥うん¥かたぶき、¥へいけ¥よ/を¥とつ/て¥にじふ−よ−ねん、¥てんが/に¥なびか/ぬ¥くさき/も¥さふらは/ず。¥され/ば¥ないない/の¥たち/の¥ありさま/も、¥こぜい/にて/は¥たやすう¥かなひ−がたし。¥よくよく¥はかりごと/を¥めぐらし、¥せい/を¥もよほし、¥ごにち/に¥よせ/らる/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と、¥ほど/を¥のばさ/ん/が¥ため/に、¥ながなが/と/こそ¥せんぎ−し/たり/けれ。¥ここ/に¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう/は、¥ころも/の¥した/に¥もよぎ−にほひ/の−はらまき/を¥き、¥おほき/なる¥うち−がたな¥まへだれ/に¥さし−ほらし、¥しらえ/の−なぎなた¥つゑ/に¥つき、¥せんぎ/の¥には/に¥すすみ−いで/て、「¥しようこ/を¥ほか/に¥ひく/べから/ず。¥まづ¥わが¥てら/の¥ほんぐわん、¥てんむ−てんわう、¥いまだ¥とうぐう/の¥おん=とき、¥おほともの−わうじ/に¥おそは/れ/させ¥たまひ/て、¥よしの/の¥おく/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥やまとの−くに¥うだ/の−こほり/を¥すぎ/させ¥たまふ/に/は、¥その¥せい¥わづか/に¥じふしちき、¥され/ども¥いが¥いせ/に¥うち−こえ、¥みの¥をはり/の¥ぐんびやう/を¥もつて、¥おほともの−わうじ/を¥ほろぼし/て、¥つひに¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/き。¥きうてう¥ふところ/に¥いる。¥じんりん¥これ/を¥あはれむ/と¥いふ¥ほんもん¥あり。¥じよ/は¥しら/ず、¥きやうしう/が¥もんと/に¥おいて/は、¥こんやP270¥ろくはら/に¥おし−よせ/て¥うちじに−せよ/や」/と/ぞ¥せんぎ−し/ける。¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく¥すすみ−いで/て、「¥せんぎ¥はし¥おほし。¥ただ¥よ/の¥ふくる/に。¥いそげ/や、¥すすめ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥
(『だいしゆそろへ』)S0410¥まづ¥からめで/に¥むかふ¥らうそう=ども/の¥たいしやうぐん/に/は、¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ、¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう、¥りつじやう−ばう/の−あじやり−にちいん、¥そつ/の−ほふいん−ぜんち、¥ぜんち/が¥でし¥ぎはう、¥ぜんやう/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥いつせん−にん、¥てんで/に¥たいまつ¥もつ/て、¥によいがみね/へ/ぞ¥むかひ/ける。¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな、¥じなん¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな、¥ろくでうの−くらんど−なかいへ、¥その¥こ¥くらんど−たらう−なかみつ。¥だいしゆ/に/は¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく、¥りつじやう−ばう/の−いがのきみ、¥ほふりんゐん/の−おにさど、¥じやうきゐん/の−あらとさ、¥これ=ら/は¥ちから/の¥つよさ、¥ゆみ−や¥うちもの¥とつ/て/は、¥いか/なる¥おに/に/も¥かみ/に/も¥あは/う/ど¥いふ、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/なり。¥びやうどうゐん/に/は、¥いなばの−りつしや−くわうだいぶ、¥すみの−ろくらうばう、¥しまの−あじやり、¥つつゐ−ぼふし/に、¥きやうの−あじやり、¥あく−せうなごん、¥きたのゐん/に/は、¥こんくわうゐん/の−ろくてんぐ、¥しきぶ−たいふ、¥のと、¥かが、¥さど、¥びんご=ら/なり。¥まつゐの−ひご、¥しようなんゐん/の−ちくご、¥がやの−ちくぜん、¥おほやの−しゆんちやう、¥ごちゐん/の−たぢま、¥きやうしう/が¥ばうにん、¥ろくじふにん/の¥うち、¥かが−くわうじよう、¥ぎやうぶ−しゆんしう、¥ほふし=ばら/に/は、¥いちらい−ほふし/に¥しか/ざり/き。¥だうじゆ/に/は、¥つつゐの−じやうめう−めいしう、¥をぐらの−そんぐわつ、¥そんえい、¥じけい、¥らくぢう、¥かなこぶしの−げんやう、¥ぶし/に/は¥わたなべの−はぶく¥はりまの−じらう−さづく¥さつまの−ひやうゑ、¥ちやうじつ−となふ、¥きほふの−たきぐち、¥あたふの−うま/の−じよう、¥つづくの−げんた、¥きよし、¥すすむ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥いつせんごひやく−よ−にん、¥みゐでら/を/こそ¥うつ−たち/けれ。P271¥てら/に/は¥みや¥いら/せ¥たまひ/て¥のち、¥おほぜき¥こぜき¥ほり−きり、¥かいだて¥かき、¥さかもぎ¥ひき/たり/けれ/ば、¥ほり/に¥はし¥わたし、¥さかもぎ¥とり−のけ/など¥し/ける/ほど/に、¥じこく¥おし−うつつ/て、¥せきぢ/の¥にはとり¥なき−あへ/り。¥いづの−かみ、「¥ここ/にて¥とり¥ない/て/は、¥ろくはら/へ/は、¥はくちう/に/こそ¥よせ/んずれ。¥いかが−せ/ん」/と¥のたまへ/ば、¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく、¥また¥さき/の/ごとく/に¥すすみ−いで/て、「¥むかし¥しん/の¥せうわう、¥まうしやうくん/を¥めし−いましめ/られ/たり/し/に、¥きさき/の¥おん=たすけ/に¥よつ/て、¥つはもの¥さんぜんにん/を¥ひき−ぐし/て、¥にげ−まぬかれ/ける/が、¥ほど−なく¥かんこくくわん/に¥いたり/ぬ。¥いこく/の¥ならひ/に、¥にはとり/の¥なか/ぬ¥かぎり/は、¥せき/の¥と/を¥ひらく¥こと¥なし。¥かの¥まうしやうくん/が¥さんぜん/の¥かく/の¥なか/に、¥てんかつ/と¥いふ¥つはもの¥あり。¥にはとり/の¥なく¥まね/を¥ゆゆしう¥し/けれ/ば、¥けいめい/と/も¥いは/れ/けり。¥かの¥けいめい、¥たかき¥ところ/に¥はしり−あがり、¥にはとり/の¥なく¥まね/を¥ゆゆしう¥し/たり/けれ/ば、¥せきぢ/の¥にはとり¥きき−つたへ/て、¥みな¥なき−あへ/り。¥その−とき¥せきもり、¥とり/の¥そらね/に¥ばかさ/れ/て、¥せき/の¥と/を¥あけ/て/ぞ¥とほし/ける。¥され/ば¥これ/も¥かたき/の¥はかりごと/に/や¥なか/す/らん。¥ただ¥よせよ/や」/と/ぞ¥まうし/ける。¥かかり/し−ほど/に、¥さつき/の¥みじか−よ/なれ/ば、¥ほのぼの/と/ぞ¥あけ/に/ける。¥いづの−かみ¥のたまひ/ける/は、「¥ようち/に/こそ¥さり/とも/と¥おもひ/つれ、¥ひるいくさ/に/は¥いか/に/も¥かなふ/まじ。¥あれ¥よび−かへせ/や」/とて、¥おほて/は¥まつざか/より¥とつ/て¥かへし、¥からめで/は¥によいがみね/より¥ひつ−かへす。¥わかだいしゆ¥あくそう=ども、「¥これ/は¥いちによ−ばう/が¥なが−せんぎ/に/こそ、¥よ/は¥あけ/たれ。¥その¥ばう¥きれ」/とて、¥おし−よせ/て¥ばう/を¥さんざん/に¥きる。¥ふせぐ¥ところ/の¥でし¥どうじゆく、¥みな¥うた/れ/に/けり。P272¥わが−み¥て−おひ、¥はふはふ¥ろくはら/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥うつたへ¥まうし/けれ/ども、¥ろくはら/に/は¥ぐんびやう¥すまんぎ¥はせ−あつまつ/て、¥ちつと/も¥さわぐ¥けしき/も¥し¥たまは/ず。¥さる−ほど/に¥みや/は、¥さんもん/は¥こころがはり−し/つ、¥なんと/は¥いまだ¥まゐら/ず。¥この¥てら/ばかり/で/は、¥いか/に/も¥かなふ/べから/ず/とて、¥おなじき−にじふさんにち/の¥あかつき−がた/に、¥みゐでら/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥なんと/へ¥おち/させ¥おはします。¥この¥みや/は¥せみをれ、¥こえだ/とて、¥かんちく/の¥ふえ/を¥ふたつ¥もち¥たまへ/り。¥なか/に/も¥せみをれ/は、¥むかし¥とばのゐん/の¥おん=とき、¥そうてう/の¥みかど/へ、¥しやきん/を¥おほく¥まゐらつ/させ¥たまひ/たり/しか/ば、¥へんぱう/と¥おぼしく/て、¥いき/たる¥せみ/の/ごとく/に、¥ふし/の¥つき/たる¥ふえたけ/を、¥ひとよ¥まゐらつ/させ¥たまひ/けり。¥これ−ほど/の¥ちようほう/を、¥いかん/か¥さう−なう¥ゑら/せ/らる/べき/とて、¥みゐでら/の¥だいしん/の−そうじやう−かくそう/に¥おほせ、¥だんじやう/に¥たて、¥しち−にち¥かぢ−し/て、¥ゑら/せ¥たまへ/る¥おん=ふえ/なり。¥ある−とき¥たかまつの−ちうなごん−さねひらの−きやう¥まゐつ/て、¥この¥おん=ふえ/を¥ふか/れ/ける/に、¥よ/の−つね/の¥ふえ/の¥やう/に¥おもひ−わすれ/て、¥ひざ/より¥しも/に¥おか/れ/たり/けれ/ば、¥ふえ/や¥とがめ/けん、¥その−とき¥せみ¥をれ/に/けり。¥さて/こそ¥せみをれ/と/は¥めさ/れ/けれ。¥この¥みや¥ふえ/の¥おん=きりやう/たる/に¥よつ/て、¥ご=さうでん¥あり/ける/とかや。¥され/ども¥いま/を¥かぎり/と/や¥おぼしめさ/れ/けん、¥こんだう/の¥みろく/に¥こめ¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥りうげ/の¥あかつき、¥ちぐ/の¥おん=ため/か/と¥おぼしく/て、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥さる−ほど/に¥みや/は、¥らうそう=ども/に/は¥みな¥いとま¥たう/で、¥とどめ/させ¥おはします。¥しかる/べき¥わかだいしゆ¥あくそう=ども/は¥まゐり/けり。¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥みゐでら/の¥だいしゆ¥ひき−ぐし/て、P273¥その¥せい¥いつせんごひやく−よ−にん/と/ぞ¥きこえ/し。¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう/は¥はと/の¥つゑ/に¥すがり、¥みや/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥さうがん/より¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て¥まうし/ける/は、「¥いづく/まで/も¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらひ/しか/ども、¥とし¥すでに¥はちじゆん/に¥たけ/て、¥ぎやうぶ¥いか/に/も¥かなひ−がたく¥さふらへ/ば、¥でし/で¥さふらふ¥ぎやうぶ−ばう−しゆんしう/を¥まゐらせ¥さふらは/ん。¥これ/は¥ひととせ¥へいぢ/の−かつせん/の¥とき、¥こ=さま/の−かみ−よしとも/が¥て/に¥さふらう/て、¥ろくでうかはら/で¥うちじに¥つかまつり¥さふらひ/し、¥さがみの−くに/の¥ぢうにん、¥やまのうちのすどう−ぎやうぶ/の−じよう−としみち/が¥こ/にて¥さふらひ/し/を、¥いささか¥ゆかり¥さふらふ/に¥よつ/て、¥あとふところ/にて¥おほし−たて/て、¥こころ/の¥そこ/まで/も、¥よく¥しつ/て¥さふらへ/ば、¥いづく/まで/も¥めし−ぐせ/られ¥さふらへ」/とて、¥なみだ/を¥おさへ/て¥とどまり/ぬ。¥みや/も¥あはれ/に¥おぼしめし/て、「¥いつ/の¥よしみ/に¥かく/は¥まうす/らん」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥
「はしかつせん」(『はしがつせん』)S0411¥さる−ほど/に、¥みや/は¥うぢ/と¥てら/と/の¥あひだ/にて、¥ろくど/まで¥おん=らくば¥あり/けり。¥これ/は¥さんぬる¥よ、¥ぎよ=しん/なら/ざり/し¥ゆゑ/なり/とて、¥うぢばし¥さんげん¥ひき−はづし、¥びやうどうゐん/に¥いれ¥たてまつり、¥しばらく¥ご=きうそく¥あり/けり。¥ろくはら/に/は、「¥すはや¥みや/こそ、¥なんと/へ¥おち/させ¥たまふ/なれ。¥おつ−かけ/て¥うち¥たてまつれ/や」/とて、¥たいしやうぐん/に/は、¥さひやうゑ/の−かみ−とももり、P274¥とう/の−ちうじやう−しげひら、¥さつまの−かみ−ただのり、¥さむらひ−だいしやう/に/は、¥かづさの−かみ−ただきよ、¥その¥こ¥かづさの−たらう−はうぐわん−ただつな、¥ひだの−かみ−かげいへ、¥その/こ¥ひだの−たらう−はうぐわん−かげたか、¥たかはし/の−はうぐわん−ながつな、¥かはちの−はうぐわん−ひでくに、¥むさしの−さぶらうざゑもん−ありくに、¥ゑつちうの−じらうびやうゑ−もりつぎ、¥かづさの−ごらうひやうゑ−ただみつ、¥あく−しち−びやうゑ−かげきよ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥にまんはつせん−よ−き、¥こはたやま¥うち−こえ/て、¥うぢばし/の¥つめ/に/ぞ¥おし−よせ/たる。¥かたき¥びやうどうゐん/に/と¥み/てげれ/ば、¥とき/を¥つくる¥こと¥さん−か−ど/なり。¥みや/の¥おん=かた/に/も、¥おなじう¥とき/の−こゑ/を/ぞ¥あはせ/たる。¥せんぢん/が、「¥はし/を¥ひい/たる/ぞ、¥あやまち−す/な。¥はし/を¥ひい/たる/ぞ、¥あやまち−す/な」/と¥どよみ/けれ/ども、¥ごぢん/は¥これ/を¥きき−つけ/ず、¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と¥すすむ/ほど/に、¥せんぢん¥にひやく−よ−き¥おし−おとさ/れ、¥みづ/に¥おぼれ/て¥うせ/に/けり。¥さる−ほど/に、¥はし/の¥りやうばう/の¥つめ/に¥うつ−たつ/て¥や−あはせ−す。¥みや/の¥おん=かた/より、¥おほやの−しゆんちやう、¥ごちゐん/の−たぢま、¥わたなべの−はぶく、¥さづく、¥つづくの−げんた/が¥い/ける¥や/ぞ、¥たて/も¥たまら/ず、¥よろひ/も¥かけ/ず¥とほり/けり。¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/は、¥けふ/を¥さいご/と/や¥おもは/れ/けん、¥ちやうけん/の−よろひ−びたたれ/に、¥しながは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥わざと¥かぶと/を/ば¥き¥たまは/ず。¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−よろひ/なり。¥ゆみ/を¥つよう¥ひか/ん/が¥ため/に、¥これ/も¥かぶと/を/ば¥き/ざり/けり。¥
ここ/に¥ごちゐん/の−たぢま、¥おほ−なぎなた/の¥さや/を¥はづい/て、¥ただ¥いち−にん¥はし/の¥うへ/に/ぞ¥すすん/だる。¥へいけ/の¥かた/に/は¥これ/を¥み/て、「¥ただ¥い−とれ/や¥い−とれ」/とて、¥さしつめ−ひきつめ、P275¥さんざん/に¥い/けれ/ども、¥たぢま¥すこし/も¥さわが/ず、¥あがる¥や/を/ば¥つい−くぐり、¥さがる¥や/を/ば¥をどり−こえ、¥むかつ/て¥くる/を/ば¥なぎなた/にて¥きつ/て¥おとす。¥かたき/も¥み=かた/も¥けんぶつ−す。¥それ/より/して/こそ¥やぎり/の−たぢま/と/は¥いは/れ/けれ。¥また¥だうじゆ/の¥なか/に、¥つつゐの−じやうめう−めいしう/は、¥かち/の−ひたたれ/に、¥くろかは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥ごまい−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こくしつ/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥くろぼろ/の−や¥おひ、¥ぬりごめどう/の−ゆみ/に、¥このむ¥しらえ/の−おほ−なぎなた¥とり−そへ/て、¥これ/も¥ただ¥いち−にん¥はし/の¥うへ/に/ぞ¥すすん/だる。¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥とほから/ん¥もの/は¥おと/に/も¥きけ。¥ちかから/ん¥ひと/は¥め/に/も¥み¥たまへ。¥みゐでら/に/は¥かくれ¥なし、¥だうじゆ/の¥なか/に¥つつゐの−じやうめう−めいしう/とて、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/ぞ/や。¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥より−あへ/や¥げんざん−せ/ん」/とて、¥にじふし¥さい/たる¥や/を、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥いる。¥やには/に¥かたき¥じふににん¥い−ころし、¥じふいち−にん/に¥て¥おう/せ/たれ/ば、¥えびら/に¥ひとつ/ぞ¥のこつ/たる。¥その−のち、¥ゆみ/を/ば¥から/と¥なげ−すて/て、¥えびら/も¥とい/て¥すて/てげり。¥つらぬき¥ぬい/で¥はだし/に¥なり、¥はし/の¥ゆきげた/を、¥さらさら/と¥はしり/ける。¥ひと/は¥おそれ/て¥わたら/ね/ども、¥じやうめう−ばう/が¥ここち/に/は、¥いちでう¥にでう/の¥おほち/と/こそ¥ふるまう/たれ。¥なぎなた/にて¥むかふ¥かたき¥ごにん¥なぎ−ふせ、¥ろくにん/に¥あたる¥かたき/に¥あう/て、¥なぎなた¥なか/より¥うち−をつ/て¥すて/てげり。¥その−のち、¥たち/を¥ぬい/て¥たたかふ/に、¥かたき/は¥おほぜい/なり、¥くもで、¥かくなは、¥じふもんじ、¥とんばう−かへり、¥みづくるま、¥はつぱう¥すかさず¥きつ/たり/けり。¥むかふ¥かたき¥はちにん¥きり−ふせ、¥くにん/に¥あたる¥かたき/が¥かぶと/の¥はち/に¥あまり/に¥つよう¥うち−あて/て、¥めぬき/の¥もと/より¥ちやうど¥をれ、P276¥くつ/と¥ぬけ/て、¥かは/へ¥ざつぶと/ぞ¥いり/に/ける。¥たのむ¥ところ/は¥こし−がたな、¥しな/ん/と/のみ/ぞ¥くるひ/ける。¥
ここ/に¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう/が¥めし−つかひ/ける¥いちらい−ほふし/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥じやうめう−ばう/が¥うしろ/に¥つづい/て¥たたかひ/ける/が、¥ゆきげた/は¥せばし、¥そば¥とほる/べき¥やう/は¥なし。¥じやうめう−ばう/が¥かぶと/の¥しころ/に¥て/を¥おい/て、「¥あしう¥さふらふ、¥じやうめう−ばう」/とて、¥かた/を¥づんど¥をどり−こえ/て/ぞ¥たたかひ/ける。¥いちらい−ほふし¥うちじに−し/てげり。¥じやうめう−ばう/は¥はふはふ¥かへつ/て、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥まへ/なる¥しば/の¥うへ/に¥もののぐ¥ぬぎ−すて、¥よろひ/に¥たつ/たる¥やめ/を¥かぞへ/たれ/ば¥ろくじふさん、¥うら¥かく¥や¥ごしよ、¥され/ども¥いたで/なら/ね/ば、¥ところどころ/に¥きうぢ−し、¥かしら¥からげ、¥じやうえ¥き、¥ゆみ¥きり−をり¥つゑ/に¥つき、¥ひらあしだ¥はき、¥あみだぶ¥まうし/て、¥なら/の¥かた/へ/ぞ¥まかり/ける。¥その−のち/は¥じやうめう−ばう/が¥わたつ/たる/を¥てほん/と/して、¥みゐでら/の¥だいしゆ、¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥われ¥さき/に/と¥はしり−つづき−はしり−つづき、¥はし/の¥ゆきげた/を/こそ¥わたり/けれ。¥あるひは¥ぶんどり−し/て¥かへる¥もの/も¥あり、¥あるひは¥いたで¥おう/て¥はら¥かき−きり、¥かは/へ¥とび−いる¥もの/も¥あり、¥はし/の¥うへ/の¥いくさ、¥ひ¥いづる/ほど/に/ぞ¥みえ/たり/ける。¥へいけ/の¥かた/の¥さぶらひ−だいしやう−かづさの−かみ−ただきよ、¥たいしやうぐん/の¥おん=まへ/に¥まゐり、「¥あれ¥ごらん¥さふらへ。¥はし/の¥うへ/の¥たたかひ、¥て−いたう¥さふらふ。¥いま/は¥かは/を¥わたす/べき/にて¥さふらふ/が、¥をりふし¥さみだれ/の¥ころ、¥みづ¥まさつ/て¥さふらへ/ば、¥わたさ/ば¥むま¥ひと¥おほく¥ほろび¥さふらひ/な/ん。¥よど、¥いもあらひ/へ/や¥むかふ/べき。¥また¥かはちぢ/へ/や¥まはる/べき。¥いかが−せ/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥しもづけの−くに/の¥ぢうにん、¥あしかがの−またたらう−ただつな、P277¥しやうねん¥じふしちさい/にて¥あり/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥よど、¥いもあらひ、¥かはちぢ/へ/は、¥てんぢく¥しんだん/の¥ぶし/を¥めし/て、¥むけ/られ¥さふらは/んずる/か、¥それ/も¥われ=ら/こそ¥うけたまはつ/て¥むかひ¥さふらは/んずれ。¥め/に¥かけ/たる¥かたき/を¥うた/ず/して、¥みや/を¥なんと/へ¥いれ¥まゐらせ/な/ば、¥よしの¥とづがは/の¥せい=ども¥はせ−あつまつ/て、¥いよいよ¥おん=だいじ/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥むさし/と¥かうづけ/の¥さかひ/に、¥とねがは/と¥まうす¥だいが¥さふらふ。¥ちちぶ、¥あしかが、¥なか¥たがう/て、¥つね/は¥かつせん/を¥つかまつり¥さふらひ/し/に、¥おほて/は¥ながゐ/の−わたり、¥からめで/は¥こがすぎ/の−わたり/より¥よせ¥さふらひ/し/に¥ここ/に、¥かうづけの−くに/の¥ぢうにん、¥につたの−にふだう、¥あしかが/に¥かたらは/れ/て、¥すぎ/の−わたり/より¥よせ/ん/とて、¥まうけ/たり/ける¥ふね=ども/を、¥ちちぶ/が¥かた/より¥みな¥わら/れ/て、¥まうし/ける/は、『¥ただいま¥ここ/を¥わたさ/ず/は、¥ながき¥ゆみ−や/の¥きず/なる/べし。¥みづ/に¥おぼれ/て/も¥しな/ば¥しね、¥いざ¥わたさ/う』/とて、¥むま−いかだ/を¥つくつ/て、¥わたせ/ば/こそ¥わたし/けめ。¥ばんどう−むしや/の¥ならひ、¥かたき/を¥め/に¥かけ、¥かは/を¥へだて/たる¥いくさ/に、¥ふちせ¥きらふ¥やう/や¥ある。¥この¥かは/の¥ふか−さ¥はやさ、¥とねがは/に¥いく−ほど/の¥おとり−まさり/は¥よも¥あら/じ。¥つづけ/や¥との=ばら」/とて、¥まつさき/に/こそ¥うち−いれ/たれ。¥つづく¥ひとびと、¥おほご、¥おほむろ、¥ふかず、¥やまがみ、¥なはの−たらう、¥さぬきの−ひろつな−しらう−だいふ、¥をのでらの−ぜんじ−たらう、¥へやこの−しらう、¥らうどう/に/は¥うぶかたの−じらう、¥きりふの−ろくらう、¥たなかの−そうだ/を¥はじめ/と/して、¥さんびやく−よ−き/ぞ¥つづき/ける。¥あしかが¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥よわき¥むま/を/ば¥したて/に¥たてよ。¥つよき¥むま/を/ば¥うはて/に¥なせ。¥むま/の¥あし/の¥およば/う/ほど/は、¥たづな/を¥くれ/て¥あゆま/せよ。P278¥はずま/ば、¥かい−くつ/て¥およが/せよ。¥さがら/う¥もの/を/ば¥ゆみ/の¥はず/に¥とり−つか/せよ。¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥かた/を¥ならべ/て¥わたす/べし。¥むま/の¥かしら¥しづま/ば¥ひき−あげよ。¥いたう¥ひい/て¥ひつ−かづくな。¥くらつぼ/に¥よく¥のり−さだまつ/て、¥あぶみ/を¥つよう¥ふめ。¥みづ¥しとま/ば、¥さんづ/の¥うへ/に¥のり−かかれ。¥かはなか/にて¥ゆみ¥ひく/な。¥かたき¥いる/とも¥あひびき−す/な。¥つねに¥しころ/を¥かたぶけよ。¥いたう¥かたぶけ/て¥てへん¥い/さす/な。¥むま/に/は¥よわう、¥みづ/に/は¥つよう¥あたる/べし。¥かね/に¥わたい/て¥おし−おとさ/る/な。¥みづ/に¥しなう/て¥わたせ/や¥わたせ」/と¥おきて/て、¥さんびやく−よ−き¥いつき/も¥ながさ/ず、¥むかひ/の¥きし/へ¥ざつと/ぞ¥うち−あげ/たる。¥
「みやのごさいご」(『みやのごさいご』)S0412¥あしかが/が¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥くちば/の−あやの−ひたたれ/に、¥あかがは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥たかづの¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥もち/て、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥かしはぎ/に¥みみづく¥うつ/たる¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て/ぞ¥のつ/たり/ける。¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むかし¥てうてき¥まさかど/を¥ほろぼし/て、¥けんじやう¥かうぶつ/て、¥な/を¥こうだい/に¥あげ/たり/し¥たはら−とうだ−ひでさと/に¥じふ−だい/の¥こういん、¥しもづけの−くに/の¥ぢうにん、¥あしかがの−たらう−としつな/が¥こ、¥またたらう−ただつな、¥しやうねん¥じふしちさい/に¥まかり−なる。P279¥かやう/に¥むくわん¥むゐ/なる¥もの/の、¥みや/に¥むかひ¥まゐらせ/て¥ゆみ/を¥ひき¥や/を¥はなつ¥こと/は¥てん/の¥おそれ¥すくなから/ず¥さふらへ/ども、¥ただし¥ゆみ/も¥や/も、¥みやうが/の¥ほど/も¥へいけ/の¥おん=うへ/に/こそ¥とどまり¥さふらは/め。¥さんみ−にふだう=どの/の¥おん=かた/に、¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥より−あへ/や¥げんざん−せ/ん」/とて、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥うち/へ、¥せめ−いり−せめ−いり¥たたかひ/けり。¥たいしやうぐん−さひやうゑ/の−かみ−とももり、¥これ/を¥み¥たまひ/て、「¥わたせ/や¥わたせ」/と¥げぢ−し¥たまへ/ば、¥にまんはつせん−よ−き、¥みな¥うち−いれ/て¥わたす。¥さ/ばかり¥はやき¥うぢがは/も、¥むま/や¥ひと/に¥せか/れ/て、¥みづ/は¥かみ/に/ぞ¥たたへ/たる。¥ざふにん=ばら/は、¥むま/の¥したて/に¥とり−つき−とり−つき¥わたる/ほど/に、¥ひざ/より¥うへ/を¥ぬらさ/ぬ¥もの/も¥おほかり/けり。¥おのづから¥はづるる¥みづ/に/は¥なに/も¥たまら/ず¥ながれ/たり。¥ここ/に¥いが¥いせ¥りやうごく/の¥くわんびやう=ら、¥むま−いかだ¥おし−やぶら/れ/て、¥ろくぴやく−よ−き/こそ¥ながれ/たれ。¥もよぎ、¥ひ−をどし、¥あか−をどし、¥いろいろ/の¥よろひ/の、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ¥ゆら/れ/ける/は、¥かみなみやま/の¥もみぢば/の¥みね/の¥あらし/に¥さそは/れ/て、¥たつたがは/の¥あき/の¥くれ、¥ゐせき/に¥かかり/て、¥ながれ/も¥あへ/ぬ/に¥こと/なら/ず。¥その¥なか/に¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/たる¥むしや¥さん−にん、¥あじろ/に¥ながれ−かかり/て、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ¥ゆら/れ/ける/を、¥いづの−かみ¥み¥たまひ/て、¥かく/ぞ¥えいじ¥たまひ/ける。¥
いせ−むしや/は¥みな¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て¥うぢ/の¥あじろ/に¥かかり/ぬる/かな W024¥
これ=ら/は¥みな¥いせの−くに/の¥ぢうにん/なり。¥くろだの−ごへい−しらう、¥ひのの−じふらふ、¥おとべの−やしち/と¥いふ¥もの/なり。¥なか/に/も¥ひのの−じふらう/は¥ふる−つはもの/にて¥あり/けれ/ば、¥ゆみ/の¥はず、¥いは/の¥はざま/に¥ねぢ−たて/て、¥かき−あがり、¥ににん/の¥もの=ども/を¥ひき−あげ/て、¥たすけ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P280¥おほぜい¥みな¥わたつ/て、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥うち/へ、¥せめ−いり−せめ−いり¥たたかひ/けり。¥この¥まぎれ/に¥みや/を/ば¥なんと/へ¥さきだた/せ¥まゐらせ、¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥みゐでら/の¥だいしゆ、¥のこり−とどまつ/て¥ふせぎ−や¥い/けり。¥げん−ざんみ−にふだう/は、¥しちじふ/に¥あまつ/て¥いくさ−し/て、¥ゆんで/の¥ひざぐち/を¥い/させ、¥いたで/なれ/ば、¥こころ−しづか/に¥じがい−せ/ん/とて、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥うち/へ¥ひき−しりぞく¥ところ/に、¥かたき¥おそひ−かかれ/ば、¥じなん¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな/は、¥こんぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に¥からあや−をどし/の−よろひ¥き/て、¥しら−つきげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て¥のり¥たまひ/たり/ける/が、¥ちち/を¥のばさ/ん/が¥ため/に、¥かへし−あはせ−かへし−あはせ¥ふせぎ−たたかふ。¥かずさの−たらう−はうぐわん/が¥い/ける¥や/に、¥げん−だいふ/の−はうぐわん、¥うち−かぶと/を¥い/させ/て¥ひるむ¥ところ/に、¥かづさの−かみ/が¥わらは、¥じらうまる/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥もよぎ−にほひ/の−よろひ¥き、¥さんまい−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥うちもの/の¥さや/を¥はづい/て、¥げん−だいふ/の−はうぐわん/に¥おしーならべ/て、¥むず/と¥くん/で¥どうど¥おつ。¥げん−だいふ/の−はうぐわん/は、¥だい−ぢから/にて¥おはし/けれ/ば、¥じらうまる/を¥とつ/て¥おさへ/て¥くび/を¥かき、¥たち−あがら/ん/と¥する¥ところ/に¥へいけ/の¥つはもの=ども、¥じふしごき¥おち−かさなつ/て、¥つひに¥かねつな/を¥うち/てげり。¥いづの−かみ−なかつな/も¥さんざん/に¥たたかひ、¥いたで¥あまた¥おう/て、¥びやうどうゐん/の¥つり=どの/にて¥じがい−し/てげり。¥その¥くび/を/ば¥しもかうべの−とうざぶらう−きよちか¥とつ/て、¥おほ−ゆか/の¥した/へ/ぞ¥なげ−いれ/たる。¥ろくでうの−くらんど−なかいへ、¥その¥こ¥くらんど−たらう−なかみつ/も、¥さんざん/に¥たたかひ、¥いつしよ/で¥うちじに−し/てげり。¥この¥なかいへ/と¥まうす/は、¥こ=たてはき−せんじやう−よしかた/が¥ちやくし/なり。¥しかる/を¥ちち¥うた/れ/て¥のち、¥みなしご/にて¥あり/し/を、¥さんみ−にふだう¥やうじ/に/して、¥ふびん/に¥し¥たまひ/しか/ば、¥ひごろ/の¥けいやく/を¥たがへ/じ/と/や、P281¥いつしよ/で¥しに/に/ける/こそ¥むざん/なれ。¥さんみ−にふだう、¥わたなべの−ちやうじつ−となふ/を¥めし/て、「¥わが¥くび¥うて」/と¥のたまへ/ば、¥しう/の¥いけくび¥うた/んずる¥こと/の¥かなし−さ/に、「¥つかまつ/と/も¥ぞんじ¥さふらは/ず。¥おん=じがい¥さふらは/ば、¥その−のち/こそ¥たまはり¥さふらは/め」/と¥まうし/けれ/ば、¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥にし/に¥むかひ¥て/を¥あはせ、¥かうじやう/に¥じふねん¥となへ¥たまひ/て、¥さいご/の¥ことば/ぞ¥あはれ/なる。¥
うもれぎ/の¥はな¥さく¥こと/も¥なかり/し/に¥み/の¥なる¥はて/ぞ¥かなしかり/ける W025¥
これ/を¥さいご/の¥ことば/にて、¥たち/の¥さき/を¥はら/に¥つき−たて、¥うつぶさま/に¥つらぬかつ/て/ぞ¥うせ/られ/ける。¥その−とき/に¥うた¥よむ/べう/は¥なかり/しか/ども、¥わかう/より¥あながち/に¥すい/たる¥みち/なれ/ば、¥さいご/の¥とき/も¥わすれ¥たまは/ず。¥その¥くび/を/ば¥ちやうじつ−となふ/が¥とつ/て、¥いし/に¥くくり−あはせ、¥うぢがは/の¥ふかき¥ところ/に¥しづめ/てげり。¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、¥いか/に/も−し/て¥きほふ−たきぐち/を/ば¥いけどり/に¥せ/ばや/と¥うかがひ/けれ/ども、¥きほふ/も¥さき/に¥こころ−え/て¥さんざん/に¥たたかひ、¥いたで¥あまた¥おひ、¥はら¥かき−きつ/て¥しに/に/ける。¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく/は、¥いま/は¥みや/も¥はるか/に¥のび/させ¥たまひ/ぬ/らん/と/や¥おもひ/けん、¥おほ−だち¥おほ−なぎなた¥さう/に¥もつ/て、¥かたき/の¥なか/を¥わつ/て¥いで、¥うぢがは/へ¥とん/で¥いり、¥もののぐ¥ひとつ/も¥すて/ず、¥みづ/の¥そこ/を¥くぐつ/て、¥むかひ/の¥きし/に/ぞ¥つき/に/ける。¥たかき¥ところ/に¥はしり−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いか/に¥へいけ/の¥きんだち、¥これ/まで/は¥おん=だいじ/か、¥よう」/と¥いひ−すて/て、¥みゐでら/へ/こそ¥かへり/けれ。P282¥ひだの−かみ−かげいへ/は、¥ふる−つはもの/にて¥あり/けれ/ば、¥この¥まぎれ/に¥みや/は¥さだめて¥なんと/へ/や¥おち/させ¥たまふ/らん/とて、¥ひた−かぶと¥しごひやく−き、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おつ−かけ¥たてまつる。¥あん/の/ごとく¥みや/は¥さんじつき/ばかり/で¥おち/させ¥たまふ¥ところ/を、¥くわうみやうせん/の¥とりゐ/の¥まへ/にて¥おつ−つき¥たてまつり¥あめ/の¥ふる¥やう/に¥い¥たてまつり/けれ/ば、¥いづれ/が¥や/と/は¥しら/ね/ども、¥や¥ひとつ¥きたつ/て、¥みや/の¥ひだり/の¥おん=そばはら/に¥たち/けれ/ば、¥お=むま/より¥おち/させ¥たまひ/て、¥おん=くび¥とら/れ/させ¥たまひ/けり。¥おん=とも¥まうし/たる¥おにさど、¥あらとさ、¥くわうだいぶ、¥ぎやうぶ−しゆんしう/も、¥いのち/を/ば¥いつ/の¥ため/に/か¥をしむ/べき/とて、¥さんざん/に¥たたかひ、¥いつしよ/で¥うちじにーし/てげり。¥そのなか/に¥めのとご/の¥ろくでうの−すけ/の−たいふ−むねのぶ/は、¥にひの/が−いけ/へ¥とん/で¥いり、¥うきぐさ¥かほ/に¥とり−おほひ、¥ふるひ−ゐ/たれ/ば、¥かたき/は¥まへ/を/ぞ¥うち−とほり/ぬ。¥やや¥あつ/て¥かたき¥しごひやく−き、¥ざざめい/て¥かへり/ける¥なか/に、¥じやうえ¥き/たる¥しにん/の¥くび/も¥なき/を、¥しとみ/の¥もと/より¥かき−いだい/たる/を¥みれ/ば、¥みや/にて/ぞ¥おはしまし/ける。「¥われ¥しな/ば¥ご=くわん/に¥いれよ」/と¥おほせ/られ/し¥こえだ/と¥きこえ/し¥おん=ふえ/を/も、¥いまだ¥おん=こし/に/ぞ¥ささ/せ¥ましまし/ける。¥はしり−いで/て、¥とり−つき¥たてまつら/ばや/と¥おもへ/ども、¥おそろしけれ/ば¥それ/も¥かなは/ず。¥かたき¥みな¥とほつ/て¥のち、¥いけ/より¥あがり、¥ぬれ/たる¥もの=ども¥しぼり−き/て、¥なくなく¥みやこ/へ¥のぼつ/たり/ける/を、¥にくま/ぬ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥さる−ほど/に¥なんと/の¥だいしゆ¥しちせん−よ−にん、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥みや/の¥おん=むかひ/に¥まゐり/ける/が、¥せんぢん/は¥こづ/に¥すすみ、¥ごぢん/は¥いまだ¥こうぶくじ/の¥なんだいもん/に/ぞ¥ゆらへ/たる。¥みや/は¥はや¥くわうみやうせん/のP283¥とりゐ/の¥まへ/にて、¥うた/れ/させ¥たまひ/ぬ/と¥きこえ/しか/ば、¥だいしゆ¥ちから¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥とどまり/ぬ。¥いま¥ごじつちやう/ばかり¥まち−つけ/させ¥たまは/で、¥うた/れ/させ¥たまひ/ける、¥みや/の¥ご=うん/の¥ほど/こそ¥うたてけれ。¥
「わかみやごしゆつけ」(『わかみやしゆつけ』)S0413¥へいけ/の¥ひとびと、¥みや¥ならび/に¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥みゐでら/の¥だいしゆ、¥つがふ¥ごひやく−よ−にん/が¥くび¥きつ/て、¥たち¥なぎなた/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥ゆふべ/に¥およん/で¥ろくはら/へ¥かへり−いら/る。¥つはもの=ども¥いさみ−ののしる¥こと¥おびたたし。¥なか/に/も¥さんみ−にふだう/の¥くび/を/ば、¥ちやうじつ−となふ/が¥うぢがは/の¥ふかき¥ところ/に¥しづめ/てげれ/ば、¥みえ/ざり/けり。¥こ=ども/の¥くび/を/ば、¥あそこ−ここ/より¥みな¥たづね−いださ/れ/たり。¥なか/に/も¥みや/の¥おん=くび/を/ば、¥つね/に¥まゐり−かよふ¥ひと/も¥なかり/しか/ば、¥たれ¥み−しり¥まゐらせ/たる¥ひと/も¥なし。¥てんやく/の−かみ−さだなり/こそ、¥せんねん¥ご=れうぢ/の¥ため/に¥めさ/れ/しか/ば、¥それ/ぞ¥み−しり¥まゐらせ/たる/に/こそ/とて¥めさ/れ/けれ/ども、¥げんしよらう/とて¥まゐら/ず。¥また¥ろくはら/より、¥つね/は¥みや/の¥めさ/れ¥まゐらせ/ける¥にようばう/とて、¥たづね−いださ/れ/たり。¥おん=こ¥あまた¥うみ¥まゐらせ/など/して、¥さ/しも¥おん=ちぎり¥あさから/ざり/しか/ば、¥なじかは¥み−そんじ¥たてまつる/べき。¥ただ¥ひとめ¥み¥まゐらせ/て、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て¥なみだ/をP284¥ながし/ける/に/ぞ、¥やがて¥みや/の¥おん=くび/と/は¥しつ/てげる。¥この¥みや/は、¥はらばら/に¥おん=こ/の¥みや=たち、¥あまた¥おはしまし/けり。¥はちでうの−にようゐん/に¥さぶらは/れ/ける¥いよの−かみ−もりのり/が¥むすめ、¥さんみ/の−つぼね/と¥まうし/ける¥にようばう/の¥はら/に、¥しちさい/の¥わかみや、¥ごさい/の¥ひめみや¥おはしまし/けり。¥にふだう−しやうこく/の¥おとと、¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/を¥もつて、¥はちでうの−にようゐん/へ¥まうさ/れ/ける/は、「¥ひめみや/の¥おん=こと/は¥まうす/に¥およば/ず。¥わかみや/を/ば、¥とう¥いだし¥まゐら/させ¥たまへ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようゐん/の¥おん=ぺんじ/に、「¥かかる¥きこえ/の¥あり/し¥あかつき、¥おち/の¥ひと/なんど/が¥こころ−をさなう¥ぐし¥たてまつ/て¥うせ/に/ける/に/や、¥まつたく¥この¥ごしよ/に/は¥わたら/せ¥たまは/ず」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥よりもりの−きやう¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし¥かく/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥なんでふ¥その¥ごしよ/なら/で/は、¥いづく/へ/か¥わたら/せ¥たまふ/べかん/なる/ぞ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥ぶし=ども¥まゐり/て¥さがし¥たてまつれ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥この¥ちうなごん/は、¥にようゐん/の¥おん=めのと、¥さいしやう=どの/と¥まうす¥にようばう/に¥あひ−ぐし/て、¥つね/は¥まゐり−かよは/れ/けれ/ば、¥ひごろ/は¥なつかしう/こそ¥おぼしめし/つる/に、¥この¥みや/の¥おん=こと¥まうし/に¥まゐら/れ/たれ/ば、¥いつしか¥うとましう/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。¥わかみや、¥にようゐん/に¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥これ−ほど/の¥おん=だいじ/に¥および¥さふらふ¥うへ、¥つひに/は¥のがれ¥さふらふ/まじ。¥はやはや¥いださ/せ¥おはしませ」/と¥まうさ/せ¥たまひ/けれ/ば、¥にようゐん¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまひ/て、「¥ひと/の¥ななつ¥やつ/は、¥いまだ¥なにごと/を/も¥きき−わか/ぬ/ほど/ぞ/かし。¥それ/に¥おん=み¥ゆゑ、¥かかる¥だいじ/の¥いで−き/たる/を、¥かたはらいたく¥おぼし/て、¥かやう/に¥おほせ/らるる¥こと/よ。¥よし−なかり/ける¥ひと/を、P285¥この¥ろくしちねん¥て−ならし/て、¥けふ/は¥かかる¥うき−め/を¥みるよ」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥よりもりの−きやう、¥わかみや/の¥おん=こと¥かさね/て¥まうし/に¥まゐら/れ/たれ/ば、¥にようゐん¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず、¥つひに¥いだし¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥おん=はは¥さんみ/の−つぼね、¥いま/を¥かぎり/の¥おん=わかれ/なれ/ば、¥さ/こそ/は¥おん=なごり−をしう/も¥おぼしめさ/れ/けめ。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥なくなく¥ぎよ=い¥き/せ¥まゐらせ、¥おん=ぐし¥かき−なで/て、¥いだし¥まゐら/させ¥たまふ/も、¥ただ¥ゆめ/と/のみ/ぞ¥おもは/れ/ける。¥にようゐん/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥つぼね/の¥にようばう、¥め/の−わらは/に¥いたる/まで、¥なみだ/を¥ながし¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥よりもりの−きやう、¥わかみや¥うけ−とり¥まゐらせ、¥おん=くるま/に¥のせ¥たてまつり/て、¥ろくはら/へ¥わたし¥たてまつる。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥この¥みや/を¥み¥まゐらせ/て、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、「¥ぜんせ/の¥こと/に/や¥さふらふ/らん、¥わかみや/を¥ただ¥ひとめ¥み¥まゐらせ/て¥さふらへ/ば、¥あまり/に¥おん=いたはしう¥おもひ¥まゐらせ¥さふらふ。¥なに/か¥くるしう¥さふらふ/べき、¥この¥みや/の¥おん=いのち/を/ば、¥まげ/て¥むねもり/に¥たび¥さふらへ/かし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう¥いかが¥おもは/れ/けん、「¥さら/ば¥とう¥ご=しゆつけ/を¥せ/させ¥たてまつれ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥むねもりの−きやう¥はちでうの−にようゐん/へ、¥この¥よし¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようゐん、「¥なん/の¥やう/も¥ある/べから/ず、¥ただ¥とうとう」/とて、¥ご=しゆつけーせ/させ¥たてまつら/る。¥しやくし/に¥さだまら/せ¥たまひ/しか/ば、¥ほふし/に¥なし¥まゐらせ/て、¥にんなじ/の−お=むろ/の¥おん=でし/に¥なし¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥のち/に/は¥とうじ/の¥いち/の−ちやうじや、¥やすゐのみや/の−だいそうじやう−だうそん/と¥まうし/し/は、¥この¥みや/の¥おん=こと/なり。P286¥
(『とうぜうのさた』)S0414¥なら/に/も¥また¥ご=いつしよ¥おはし/ける/を、¥おん=めのと¥さぬきの−かみ−しげひで/が¥ご=しゆつけ−せ/させ¥たてまつり、¥ぐし¥たてまつり/て、¥ほくこく/へ¥おち−くだり/たり/し/を、¥きそ−よしなか¥しやうらく/の¥とき、¥しう/に¥し¥まゐらせ/ん/とて、¥げんぞく−せ/させ¥たてまつり、¥ぐそく−し¥たてまつり/て、¥みやこ/へ¥のぼり/たり/けれ/ば、¥きそがみや/と/も¥まうし、¥また¥げんぞく/の−みや/と/も¥まうす。¥のち/には¥さが/の¥へん、¥のより/に¥ましまし/けれ/ば、¥のよりのみや/と/も¥まうし/き。¥むかし¥とうじよう/と¥いつ/し¥さうにん¥あり。¥うぢ=どの、¥にでう=どの/を/ば、¥きみ¥さんだい/の¥くわんばく、¥とも/に¥おん=とし¥はちじふ/と¥まうし/たり/し/も¥たがは/ず、¥そつ/の−うち/の−おとど/を¥るざい/の¥さう¥まします/と¥まうし/たり/し/も¥たがは/ず。¥また¥しやうとくたいし/の、¥しゆじゆん−てんわう/を¥わうし/の¥さう¥まします/と¥まうさ/せ¥たまひ/たり/し/が、¥むまこの−だいじん/に¥ころさ/れ/させ¥たまひ/ぬ。¥かならず¥さうにん/と/しも¥あら/ね/ども、¥しやうこ/に/は¥かく/こそ¥めでたかり/しか。¥これ/は¥いつかう¥さうせうなごん/が¥ふかく/に/は¥あら/ず/や/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥なか−ごろ¥げんめい−しんわう、¥ぐへい−しんわう/と¥まうし/し/は、¥ぜん−ちうしよわう、¥ご−ちうしよわう/とて、¥とも/に¥けんわう−せいしゆ/の¥わうじ/にて¥わたら/せ¥たまひ/しか/ども、¥つひに¥くらゐ/に/は¥つか/せ¥たまは/ず。¥され/ども¥いつか/は¥ご=むほん¥おこさ/せ¥たまひ/たり/き。¥また¥ごさんでうのゐん¥だいさん/の¥わうじ、¥すけひとの−しんわう/と¥まうし/し/は、¥おん=さいかく¥すぐれ/て¥おはしまし/けれ/ば、¥しらかはのゐん¥いまだ¥とうぐう/の¥おん=とき、¥おん=くらゐ/の¥のち/は、¥この¥みや/を¥くらゐ/に¥つけ¥まゐら/させ¥たまへ/と、¥ごさんでうのゐん、¥ご=ゆゐぜう¥あり/しか/ども、¥しらかはのゐん¥いかが¥おぼしめさ/れ/けん、¥つひに¥くらゐ/に/は¥つけ¥まゐら/させ¥たまは/ず。¥せめて/の¥おん=こと/に/や、P287¥すけひとの−しんわう/の¥おん=こ/の¥みや/に、¥げんじ/の¥しやう/を¥さづけ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥むゐ/より¥いちど/に¥さんみ/に¥じよし/て、¥やがて¥ちうじやう/に¥なし¥まゐらせ/て、¥さんみ/の−ちうじやう/と/ぞ¥まうし/ける。¥いつせ/の¥げんじ、¥むゐ/より¥さんみ−する¥こと/は、¥さがの−くわうてい/の¥おん=こ、¥やうぜいゐん/の−だいなごん−さだむの−きやう/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥はなぞのの−さだいじん−ありひと=こう/の¥おん=こと/なり。¥され/ば¥こんど/の¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/に¥よつ/て、¥てうぶく/の¥ほふ¥うけたまはつ/て¥おこなは/れ/ける¥かうそう=たち/に、¥けんじやう=ども¥おこなは/る。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥しそく、¥じじう−きよむね¥さんみ/に¥じよし/て、¥さんみ/の−じじう/と/ぞ¥まうし/ける。¥こんねん¥じふにさい、¥ちち/の¥きやう/は¥この¥よはひ/で/は、¥わづか¥ひやうゑ/の−すけ/まで/こそ¥いたら/れ/しか。¥たちまち/に¥かんだちめ/に¥あがり¥たまふ¥こと、¥いち/の−ひと/の¥きんだち/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥さる−ほど/に¥みなもとの−もちひと¥ならびに¥さんみ−にふだう−よりまさ−ふし、¥つゐたう/の¥しやう/と/ぞ¥ききがき/に/は¥あり/ける。¥まさしい¥だ[い]じやう−ほふわう/の¥わうじ/を、¥い¥たてまつる/だに¥ある/に、¥あまつさへ¥ぼんにん/に¥なし¥たてまつる/ぞ¥あさましき。¥みなもとの−もちひと/と/は、¥この¥たかくらのみや/の¥おん=こと/なり。¥
「ぬえ」(『ぬえ』)S0415¥そもそも¥この¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/は、¥つの−かみ−らいくわう/に¥ごだい、¥みかはの−かみ−よりつな/が¥まご、¥ひやうごの−かみ−なかまさ/がP288¥こ/なり/けり。¥ほうげん/の−かつせん/の¥とき/も、¥み=かた/にて¥さき/を¥かけ/たり/しか/ども、¥させる¥しやう/に/も¥あづから/ず。¥また¥へいぢ/の−げきらん/に/も、¥すでに¥しんるゐ/を¥すて/て¥さんじ/たり/しか/ども、¥おんしやう¥これ¥おろそか/なり/き。¥たいだい−しゆご/にて、¥とし¥ひさしう¥あり/しか/ども、¥しようでん/を/ば¥ゆるさ/れ/ず。¥とし¥たけ¥よはひ¥かたぶい/て¥のち、¥じゆつくわい/の¥わか¥いつしゆ¥よみ/て/こそ、¥しようでん/を/ば¥し/たり/けれ。¥
ひと¥しれ/ぬ¥おほうちやま/の¥やまもり/は¥こ−がくれ/て/のみ¥つき/を¥みる/かな W026¥
これ/に¥よつ/て¥しようでん¥ゆるさ/れ、¥じやう−げ/の−しゐ/にて¥しばらく¥あり/し/が、¥なほ¥さんみ/を¥こころ/に¥かけ/つつ、¥
のぼる/べき¥たより−なき¥み/は¥こ/の−もと/に¥しゐ/を¥ひろひ/て¥よ/を¥わたる/かな W027¥
さて/こそ¥さんみ/は¥し/たり/けれ。¥やがて¥しゆつけ−し/て、¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/とて、¥こんねん/は¥しちじふご/に/ぞ¥なら/れ/ける。¥この¥ひと¥いちご/の¥かうみやう/と¥おぼしき¥こと/は¥おほき/が¥なか/に/も、¥こと/に/は¥にんぺい/の¥ころほひ、¥こんゑのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥しゆしやう¥よなよな¥おびえ/させ¥たまふ¥こと¥あり/けり。¥うげん/の¥かうそう¥きそう/に¥おほせ/て、¥だいほふ−ひほふ/を¥しゆせ/られ/けれ/ども¥その¥しるし¥なし。¥ご=なう/は¥うし/の−こく/ばかり/の¥こと/なる/に、¥とうさんでう/の−もり/の¥かた/より、¥くろくも¥ひとむら¥たち−きたつ/て、¥ご=てん/の¥うへ/に¥おほへ/ば、¥かならず¥おびえ/させ¥たまひ/けり。¥これ/に¥よつ/て¥くぎやう−せんぎ¥あり/けり。¥さんぬる¥くわんぢ/の¥ころほひ、¥ほりかはのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥しゆしやう¥しか/の/ごとく¥おびえ¥たまぎら/せ¥たまひ/けり。¥その−とき/のP289¥しやうぐん−よしいへの−あそん、¥なんでん/の¥おほ−ゆか/に¥さふらは/れ/ける/が、¥ご=なう/の¥こくげん/に¥およん/で、¥めいげん−する¥こと¥さんど/の¥のち、¥かうじやう/に¥さきの−みちの−くにの−かみ−みなもとの−よしいへ/と¥なのり/たり/けれ/ば、¥きく¥ひと¥み/の−け¥よだつ/て、¥ご=なう¥かならず¥おこたら/せ¥たまひ/けり。¥しかれ/ば−すなはち¥せんれい/に¥まかせ/て、¥ぶし/に¥おほせ/て¥けいご¥ある/べし/とて、¥げんぺい−りやうか/の¥つはもの/の¥なか/を¥えらま/せ/られ/ける/に、¥この¥よりまさ/を/ぞ¥えらび−いださ/れ/たり/ける。¥その−とき/は¥いまだ¥ひやうごの−かみ/にて¥さふらは/れ/ける/が、¥まうさ/れ/ける/は、「¥むかし/より¥てうか/に¥ぶし/を¥おか/るる¥こと/は、¥ぎやくほん/の¥もの/を¥しりぞけ、¥ゐちよく/の¥ともがら/を¥ほろぼさ/ん/が¥ため/なり。¥め/に/も¥みえ/ぬ¥へんげ/の−もの¥つかまつれ/と¥おほせ−くださ/るる¥こと、¥いまだ¥うけたまはり¥およば/ず」/と¥まうし/ながら、¥ちよくせん/なれ/ば、¥めし/に¥おうじ/て¥さんだい−す。¥よりまさ¥たのみ−きつ/たる¥らうどう、¥とほたふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ゐの−はやた/に、¥ほろ/の¥かざぎり¥はい/だり/ける¥や¥おは/せ/て、¥ただ¥いち−にん/ぞ¥ぐし/たり/ける。¥わが−み/は¥ふたへ/の¥かりぎぬ/に、¥やまどり/の¥を/を¥もつて¥はい/だり/ける¥とがりや¥ふたすぢ、¥しげどう/の−ゆみ/に¥とり−そへ/て、¥なんでん/の¥おほ−ゆか/に¥しこう−す。¥よりまさ¥や¥ふたつ¥た−ばさみ/ける¥こと/は、¥がらいの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥させうべん/にて¥おはし/ける/が、¥へんげ/の−もの¥つかまつら/んずる¥じん/は、¥よりまさ/ぞ¥さふらふ/らん/と¥えらび¥まうさ/れ/たる¥あひだ、¥いち/の−や/にて¥へんげ/の−もの¥い−そんずる/ほど/なら/ば、¥に/の−や/に/は、¥がらいの−べん/の¥しや¥くび/の¥ほね/を¥い/ん/と¥なり。¥あん/の/ごとく¥ひごろ¥ひと/の¥まうす/に¥たがは/ず、¥ご=なう/の¥こくげん/に¥およん/で、¥とうさんでう/の−もり/の¥かた/より、¥くろくも¥ひとむら¥たち−きたつ/て、¥ご=てん/の¥うへ/に¥たなびい/たり。¥よりまさ¥きつと¥み−あげ/たれ/ば、P290¥くも/の¥なか/に¥あやしき¥もの/の¥すがた¥あり。¥い−そんずる/ほど/なら/ば、¥よ/に¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥さり/ながら¥や¥とつ/て¥つがひ、¥なむ−はちまん−だい−ぼさつ/と¥こころ/の¥うち/に¥きねん−し/て、¥よつ−ぴい/て、¥ひようど¥はなつ。¥てごたへ−し/て¥はた/と¥あたる。「¥え/たり/や、¥おう」/と、¥やさけび/を/こそ¥し/てんげれ。¥ゐの−はやた¥つと¥より、¥おつる¥ところ/を¥とつ/て¥おさへ、¥つか/も¥こぶし/も¥とほれ−とほれ/と、¥つづけさま/に¥ここの−かたな/ぞ¥さい/たり/ける。¥その−とき¥じやうげ¥てんで/に¥ひ/を¥とぼし/て、¥これ/を¥ごらんじ−み¥たまふ/に、¥かしら/は¥さる、¥むくろ/は¥たぬき、¥を/は¥くちなば、¥てあし/は¥とら/の/ごとく/にて、¥なく¥こゑ¥ぬえ/に/ぞ¥に/たり/ける。¥おそろし/など/も¥おろか/なり。¥しゆしやう¥ぎよ=かん/の¥あまり/に¥ししわう/と¥まうす¥ぎよ=けん/を¥くださ/る。¥うぢの−さだいじん=どの¥これ/を¥たまはり−つい/で、¥よりまさ/に¥たば/ん/とて、¥ごぜん/の¥きざはし/を¥なから/ばかり¥おり/させ¥たまふ¥をりふし、¥ころ/は¥うづき−とをか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥くもゐ/に¥くわつこう¥ふたこゑ¥みこゑ¥おとづれ/て¥とほり/けれ/ば、¥さだいじん=どの、¥
ほととぎす¥な/を/も¥くもゐ/に¥あぐる/かな
/と¥おほせ/られ−かけ/たり/けれ/ば、¥よりまさ¥みぎ/の¥ひざ/を¥つき、¥ひだり/の¥そで/を¥ひろげ/て、¥つき/を¥すこし¥そばめ/に¥かけ/つつ、¥
ゆみはりつき/の¥いる/に¥まかせ/て W028
/と¥つかまつり、¥ぎよ=けん/を¥たまはり/て¥まかり−いづ。¥この¥よりまさの−きやう/は¥ぶげい/に/も¥かぎら/ず、¥かだう/に/も¥また¥すぐれ/たり/と/ぞ、¥とき/の−ひとびと¥かんじ−あは/れ/ける。¥さて¥かの¥へんげ/の−もの/を/ば、¥うつほ−ぶね/にP291¥いれ/て¥ながさ/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥また¥おうほう/の¥ころほひ、¥にでうのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥ぬえ/と¥いふ¥けてう、¥きんちう/に¥ない/て、¥しばしば¥しんきん/を¥なやまし¥たてまつる¥こと¥あり/けり。¥しかれ/ば¥せんれい/に¥まかせ/て、¥よりまさ/を/ぞ¥めさ/れ/ける。¥ころ/は¥さつき−はつか−あまり、¥まだ¥よひ/の¥こと/なる/に、¥ぬえ¥ただ¥ひとこゑ¥おとづれ/て、¥ふたこゑ/と/も¥なか/ざり/けり。¥めざす/とも¥しら/ぬ¥やみ/で/は¥あり、¥すがた¥かたち/も¥みえ/ざり/けれ/ば、¥やつぼ/を¥いづく/と/も¥さだめ−がたし。¥よりまさ/が¥はかりごと/に、¥まづ¥おほかぶら¥とつ/て¥つがひ、¥ぬえ/の¥こゑ−し/たり/ける¥だいり/の¥うへ/へ/ぞ¥い−あげ/たる。¥ぬえ、¥かぶら/の¥おと/に¥おどろい/て、¥こくう/に¥しばし/ぞ¥ひひめい/たる。¥つぎ/に¥こかぶら¥とつ/て¥つがひ、¥ひいふつと¥い−きつ/て、¥ぬえ/と¥ならべ/て¥まへ/に/ぞ¥おとし/たる。¥きんちう¥ざざめき−わたつ/て、¥よりまさ/に¥ぎよ=い/を¥かづけ/させ¥おはします。¥こんど/は¥おほひのみかど/の−うだいじん−きんよし=こう/の¥たまはり−つい/で、¥よりまさ/に¥かづけ/させ¥たまふ/とて、「¥むかし/の¥やういう/は、¥くも/の¥ほか/の¥かり/を¥い/き。¥いま/の¥よりまさ/は、¥あめ/の¥うち/の¥ぬえ/を¥い/たり」/と/ぞ¥かんぜ/られ/ける。¥
さつきやみ¥な/を¥あらはせ/る¥こよひ/かな
/と¥おほせ/られ−かけ/たり/けれ/ば、¥よりまさ、¥
たそかれどき/も¥すぎ/ぬ/と¥おもふ/に W029
/と¥つかまつり、¥ぎよ=い/を¥かた/に¥かけ/て¥まかり−いづ。¥その−のち¥いづの−くに¥たまはり、¥しそく¥なかつな¥じゆりやう/に¥なし、¥わが−み¥さんみ−し/て、¥たんば/の¥ごか/の−しやう、¥わかさ/の¥とうみやがは/を¥ちぎやう−し/て、¥さて¥おはす/べかり/しP292¥ひと/の、¥よし−なき¥むほん¥おこい/て、¥みや/を/も¥うしなひ¥まゐらせ、¥わが−み/も¥しそん/も¥ほろび/ぬる/こそ¥うたてけれ。¥
「みゐでらえんしやう」(『みゐでらえんしやう』)S0416¥ひごろ/は¥さんもん/の¥だいしゆ/こそ、¥はつかう/の¥みだりがはしき¥うつたへ¥つかまつる/に、¥こんど/は¥いかが¥おもひ/けん、¥をんびん/を¥ぞんじ/て¥おと/も¥せ/ず。¥しかる/を¥なんと¥みゐでら¥どうじん−し/て、¥あるひは¥みや¥うけ−とり¥まゐらせ、¥あるひは¥おん=むかひ/に¥まゐる¥でう、¥これ¥もつて¥てうてき/なり。¥しから/ば¥なら/を/も、¥てら/を/も¥せめ/らる/べし/と¥きこえ/し/が、¥まづ¥みゐでら/を¥せめ/らる/べし/とて、¥おなじき−ごぐわつ−にじふしちにち、¥たいしやうぐん/に/は¥さひやうゑ/の−かみ−とももり、¥ふくしやうぐん/に/は¥さつまの−かみ−ただのり、¥つがふ¥その¥せい¥いちまん−よ−き、¥をんじやうじ/へ¥はつかう−す。¥てら/に/も¥だいしゆ¥いつせん−にん、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥かいだて¥かき、¥さかもぎ¥ひい/て、¥まち−かけ/たり。¥う/の−こく/より¥や−あはせ−し/て、¥いちにち¥たたかひ−くらし、¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥だいしゆ¥いげ¥ほふし=ばら/に¥いたる/まで、¥さんびやく−よ−にん¥うた/れ/ぬ。¥よいくさ/に¥なつ/て、¥くら−さ/は¥くらし、¥くわんぐん¥じちう/に¥せめ−いり/て、¥ひ/を¥はなつ。¥やくる¥ところ、¥ほんがくゐん、¥じやうきゐん、¥しんによゐん、¥けをんゐん、¥だいほうゐん、¥しやうりうゐん、¥ふげんだう、¥けうだい−くわしやう/の¥ほんばう、¥ならびに¥ほんぞうとう、¥はちけん−しめん/の¥だい−かうだう、¥しゆろう、¥きやうざう、¥くわんぢやうだう、¥ごほふぜんじん/の¥しやだん、¥いまぐまの/の¥ご=ほうでん、¥すべてP293¥だうじや¥たふべう¥ろくぴやくさんじふしちう、¥おほつ/の−ざいけ¥いつせんはつぴやくごじふさんう、¥ならびに¥ちしよう/の¥わたし¥たまへ/る¥いつさいきやう¥しちせん−よ−くわん、¥ぶつざう¥にせん−よ−たい、¥たちまち/に¥けぶり/と¥なる/こそ¥かなしけれ。¥しよてん−ごめう/の¥たのしみ/も、¥この−とき¥ながく¥つき、¥りうじん−さんねつ/の¥くるしみ/も、¥いよいよ¥さかん/なる/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥
それ¥みゐでら/は、¥あふみ/の¥ぎだいりやう/が¥わたくし/の¥てら/たり/し/を、¥てんむ−てんわう/に¥よせ¥たてまつり/て、¥ご=ぐわん/と¥なす。¥ほんぶつ/も¥かの¥みかど/の¥ご=ほんぞん、¥しかる/を¥しやうじん/の¥みろく/と¥きこえ¥たまひ/し¥けうだい−くわしやう、¥ひやくろくじふねん¥おこなう/て、¥だいし/に¥ふぞく−し¥たまへ/り。¥としたてんじやう、¥まにほうでん/より¥あま−くだり、¥はるか/に¥りうげげしやう/の¥あかつき/を¥また/せ¥たまふ/と/こそ¥きき/つる/に、¥こ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や。¥だいし¥この¥ところ/を¥でんぽふ−くわんぢやう/の¥れいせき/と/して、¥ゐけすゐ/の¥みつ/を¥むすび¥たまひ/し¥ゆゑ/に/こそ、¥みゐでら/と/は¥なづけ/たれ。¥かかる¥めでたき¥せいぜき/なれ/ども、¥いま/は¥なに/なら/ず。¥けんみつ¥しゆゆに¥ほろび/て、¥がらん¥さらに¥あと/も¥なし。¥さんみつ−だうぢやう/も¥なけれ/ば、¥れい/の¥こゑ/も¥きこえ/ず。¥いちげ/の−はな/も¥なけれ/ば、¥あか/の¥おと/も¥せ/ざり/けり。¥しゆくらう−せきとく/の¥めいし/は、¥ぎやうがく/に¥おこたり、¥じゆほふ−さうじよう/の¥でし/は、¥また¥きやうげう/に¥わかれ/ん/だり。¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/は、¥てんわうじ/の−べつたう/を/も¥とどめ/られ/させ¥たまふ。¥その−ほか¥そうがう¥じふさん−にん、¥けつくわん−せ/られ/て、¥みな¥けんびゐし/に¥あづけ/らる。¥だうじゆ/は¥つつゐの−じやうめう−めいしう/に¥いたる/まで、¥さんじふ−よ−にん¥ながさ/れ/けり。「¥かかる¥てんが/の¥みだれ、¥こくど/の¥さわぎ、¥ただごと/と/も¥おぼえ/ず、¥へいけ/の¥よ/の¥すゑ/に¥なり/ぬる¥ぜんべう/やらん」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。P294¥

平家物語 巻第五  総かな版(元和九年本)
「みやこうつり」(『みやこうつり』)S0501¥ぢしよう−しねん−ろくぐわつ−みつかのひ、¥ふくはら/へ¥ご=かう¥なる/べし/と¥きこゆ。¥この¥ひごろ¥みやこうつり¥ある/べし/と¥きこえ/しか/ども、¥たちまち/に¥きんみやう/の¥ほど/と/は、¥おもは/ざり/し/ものを/とて、¥きやう−ぢう/の¥じやうげ¥さわぎ−あへ/り。¥みつか/と¥さだめ/られ/たり/しか/ども、¥あまつさへ¥いま¥いちにち¥ひき−あげ/られ/て、¥ふつか/に¥なり/ぬ。¥ふつか/の¥う/の−こく/に、¥ぎやうがう/の¥み=こし/を¥よせ/たり/けれ/ば、¥しゆしやう/は¥こんねん¥さんざい、¥いまだ¥いとけなう¥ましまし/けれ/ば、¥なにごころ/も¥なう/ぞ¥めさ/れ/ける。¥しゆしやう¥をさなう¥わたら/せ¥たまふ¥とき/の¥ご=とうよ/に/は、¥ぼこう/こそ¥まゐらせ¥たまふ/に、¥これ/は¥その¥ぎ¥なし。¥おん=めのと¥そつのすけ=どの/ばかり/こそ、¥ひとつ¥おん=こし/に/は¥まゐら/れ/けれ。¥ちうぐう、¥いちゐん、¥しやうくわう/も¥ご=かう¥なる。¥せつしやう=どの/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥われ/も¥われ/も/と¥ぐぶ−せ/らる。¥へいけ/に/は¥だいじやう/の−にふだう/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥いちもん/の¥ひとびと¥みな¥まゐら/れ/けり。¥あくる¥みつかのひ、¥ふくはら/へ¥いら/せ¥おはします。¥にふだう−しやうこく/の¥おとと、¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/のP295¥さんざう、¥くわうきよ/に¥なる。¥おなじき−よつかのひ、¥よりもり、¥いへ/の¥しやう/とて¥じやう−にゐ−し¥たまふ。¥くでう=どの/の¥おん=こ、¥うだいしやう−よしみちの−きやう、¥かかい¥こえ/られ/させ¥たまひ/けり。¥せふろく/の¥しん/の¥ご=しそく、¥はんじん/の¥じなん/に¥かかい¥こえ/られ/させ¥たまふ¥こと、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥にふだう−しやうこく¥やうやう¥おもひ−なほつ/て、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/を¥いだし¥まゐらせ/て、¥みやこ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつら/れ/たり/し/が、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/に¥よつ/て、¥おほき/に¥いきどほり、¥また¥ふくはら/へ¥ご=かう¥なし¥たてまつり、¥しめん/に¥はたいた−し/て、¥くち¥ひとつ¥あき/たる¥うち/に、¥さんげん/の¥いたや/を¥つくつ/て、¥おし−こめ¥たてまつる。¥しゆご/の−ぶし/に/は、¥はらだの−たいふ−たねなほ/ばかり/ぞ¥さふらひ/ける。¥たやすう¥ひと/の¥まゐり−かよふ/べき¥やう/も¥なけれ/ば、¥わらんべ/など/は、¥ろう/の−ごしよ/と/ぞ¥まうし/ける。¥きく/も¥いまいましう、¥あさましかり/し¥こと=ども/なり。¥ほふわう、「¥いま/は¥よ/の¥まつりごと/を¥しろしめさ/ばや/と/は、¥つゆ/も¥おぼしめし−よら/ず。¥ただ¥やまやま¥てらでら¥しゆぎやう−し/て、¥おん=こころ/の¥まま/に¥なぐさま/ばや」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥へいけ/の¥あくぎやう/に¥おいて/は、¥ことごとく¥きはまり/ぬ。¥さんぬる¥あんげん/より¥この−かた、¥おほく/の¥だいじん¥くぎやう、¥あるひは¥ながし¥あるひは¥うしなひ、¥くわんばく¥ながし¥たてまつ/て、¥わが¥むこ/を¥くわんばく/に¥なし、¥ほふわう/を¥せいなん/の−りきう/に¥おし−こめ¥たてまつり、¥あまつさへ¥だいに/の¥わうじ¥たかくらのみや¥うち¥たてまつ/て、¥いま¥のこる¥ところ/の¥みやこうつり/なれ/ば、¥かやう/に¥し¥たまふ/に/や」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥
みやこうつり/は¥これ¥せんじよう¥なき/に¥あら/ず。¥じんむ−てんわう/と¥まうす/は、¥ぢじん¥ごだい/の¥てい、¥ひこなぎさたけうがやふきあはせずのみこと¥だいし/の¥わうじ、¥おん=はは/は¥たまよりひめ、¥かいじん/の¥むすめ/なり。¥かみ/の¥よ¥じふにだい/のP296¥あと/を¥うけ、¥にんだい−はくわう/の¥ていそ/なり。¥かのとのとり/の−とし、¥ひうがの−くに¥みやざき/の−こほり/に/して、¥くわうわう/の¥ほうそ/を¥つぎ、¥ごじふくねん/と¥いひ/し¥つちのとひつじ/の−とし¥じふぐわつ/に¥とうせい−し/て、¥とよあしはら−なかつくに/に¥とどまり、¥この−ころ¥やまとの−くに/と¥なづけ/たる、¥うねび/の−やま/を¥てんじ/て、¥ていと/を¥たて、¥かしはら/の¥ち/を¥きり−はらつ/て、¥きうしつ/を¥つくり¥たまへ/り。¥これ/を¥かしはらのみや/と¥なづけ/たり。¥それ/より¥この−かた、¥だいだい/の¥ていわう、¥みやこ/を¥たこく¥たしよ/へ¥うつさ/るる¥こと、¥さんじふど/に¥あまり、¥しじふど/に¥およべ/り。¥じんむ−てんわう/より¥けいかう−てんわう/まで¥じふにだい/は、¥やまとの−くに¥こほりごほり/に¥みやこ/を¥たて/て、¥たこく/へ/は¥つひに¥うつさ/れ/ず。¥しかる/を¥せいむ−てんわう−ぐわんねん/に、¥あふみの−くに/に¥うつつ/て、¥しが/の−こほり/に¥みやこ/を¥たつ。¥ちうあい−てんわう−にねん/に、¥ながとの−くに/に¥うつつ/て、¥とよら/の−こほり/に¥みやこ/を¥たつ。¥その¥くに¥かの¥みやこ/に/して、¥みかど¥かくれ/させ¥たまひ/しか/ば、¥きさき¥じんぐう−くわうこう、¥おん=よ/を¥うけ−とら/せ¥たまひ、¥によたい/と/して、¥きかい、¥かうらい、¥けいたん/まで¥せめ−したがへ/させ¥たまひ/けり。¥いこく/の¥いくさ/を¥しづめ/させ¥たまひ/て、¥きてう/の¥のち、¥ちくぜんの−くに¥みかさ/の−こほり/に/して¥わうじ¥ご=たんじやう、¥やがて¥その¥ところ/を/ば、¥うみのみや/と/ぞ¥まうし/ける。¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく¥やはた/の¥おん=こと¥これ/なり。¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/て/は、¥おうじん−てんわう/と/ぞ¥まうし/ける。¥その−のち¥じんぐう−くわうこう/は、¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥いはれわかざくらのみや/に¥おはします。¥おうじん−てんわう/は、¥おなじき−くに¥かるしまあかりのみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥にんとく−てんわう−ぐわんねん/に、¥つの−くに¥なんぱ/に¥うつつ/て、¥たかつのみや/に¥おはします。¥りちう−てんわう−にねん/に、¥また¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥とをち/の−こほり/に¥みやこ/を¥たつ。¥はんせい−てんわう−ぐわんねん/に、¥かはちの−くに/に¥うつつ/て、¥しばがきのみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥いんぎよう−てんわう−しじふにねん/に、¥また¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥とぶ−とり/のP297¥あすかのみや/に¥おはします。¥ゆうりやく−てんわう−にじふいちねんに、¥おなじき−くに¥はつせ−あさくら/に¥みやゐ−し¥たまふ。¥けいたい−てんわう−ごねん/に、¥やましろの−くに¥つづき/に¥うつつ/て¥じふにねん、¥その−のち¥おとぐん/に¥みやゐ−し¥たまふ。¥せんくわ−てんわう−ぐわんねん/に、¥また¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥ひのくま/の−いるののみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥かうとく−てんわう¥たいくわ−ぐわんねん/に、¥つの−くに¥ながら/に¥うつつ/て、¥とよざきのみや/に¥おはします。¥さいめい−てんわう−にねん/に、¥また¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥をかもとのみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥てんぢ−てんわう−ろくねん/に、¥あふみの−くに/に¥うつつ/て、¥おほつのみや/に¥おはします。¥てんむ−てんわう−ぐわんねん/に、¥なほ¥やまとの−くに/に¥かへつ/て、¥をかもとのみなみのみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥これ/を¥きよみばらの−みかど/と¥まうし/き。¥ぢどう¥もんむ¥にだい/の¥せいてう/は、¥ふぢはらのみや/に¥おはします。¥げんめい−てんわう/より¥くわうにん−てんわう/まで¥しちだい/は、¥なら/の−みやこ/に¥すま/せ¥たまふ。¥
しかる/を¥くわんむ−てんわう/の¥ぎよ=う、¥えんりやく−さんねん−じふぐわつ−みつかのひ、¥なら/の−きやう¥かすが/の−さと/より、¥やましろの−くに¥ながをか/に¥うつつ/て、¥じふねん/と¥いつ/し¥しやうぐわつ/に、¥だいなごん−ふぢはらの−をぐるまる、¥さんぎ−さだいべん−きの−こさみ、¥たいそうづ−げんけい=ら/を¥つかはし/て、¥たう−ごく¥かどの/の−こほり¥うだ/の−むら/を¥みせ/らるる/に、¥りやうにん¥とも/に¥そうし/て¥いはく、「¥この¥ち/の¥てい/を¥み¥さふらふ/に、¥さしやうりう、¥うびやくこ、¥ぜんしゆじやく、¥ごげんむ、¥しじん¥さうおう/の¥ち/なり。¥もつとも¥ていと/を¥さだむる/に¥たれ/り」/と¥まうす。¥これ/に¥よつ/て¥おたぎ/の−こほり/に¥おはします¥かもの−だい−みやうじん/に、¥この¥よし/を¥つげ¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥えんりやく−じふさんねん−じふいちぐわつ−にじふいちにち、¥ながをか/の−きやう/より¥この¥きやう/へ¥うつさ/れ/て、¥ていわう/は¥さんじふにだい、¥せいざう/は¥さんびやくはちじふ−よ−さい/の¥しゆんじう/を¥おくり−むかふ。¥それ/より¥この−かた¥だいだい/の¥みかど、¥くにぐに¥ところどころ/へ、¥おほく/の¥みやこ/を¥うつさ/れ/しか/ども、¥かく/の/ごとき/の¥しようち/は¥なし/と、¥くわんむ−てんわう¥こと/に¥しつ/しP298¥おぼしめし/て、¥だいじん¥くぎやう、¥しよ−こく/の¥さいじん=ら/に¥おほせ/て、¥ちやうきう/なる/べき¥さう/とて、¥つち/にて¥はつしやく/の¥にんぎやう/を¥つくり、¥くろがね/の−よろひ−かぶと/を¥きせ、¥おなじう¥くろがね/の¥ゆみ−や/を¥もた/せ/て、¥まつだい/と¥いふ/とも、¥この¥きやう/を¥たこく/へ¥うつす¥こと¥あら/ば、¥しゆごじん/と¥なら/ん/と¥ちかひ/つつ、¥ひがしやま/の¥みね/に、¥にしむき/に¥たて/て/ぞ¥うづま/れ/ける。¥され/ば¥てんが/に¥こと¥いで−こ/ん/とて/は、¥この¥つか¥かならず¥めいどう−す。¥しやうぐん/が−つか/とて¥いま/に¥あり。¥なかんづく¥この¥きやう/を/ば、¥へいあんじやう/と¥なづけ/て、¥たひら¥やすき¥みやこ/と¥かけ/り。¥もつとも¥へいけ/の¥あがむ/べき¥みやこ/ぞ/かし。¥くわんむ−てんわう/と¥まうす/は、¥へいけ/の¥なうそ/にて¥おはします。¥せんぞ/の¥きみ/の¥さ/しも¥しつし¥おぼしめし/つる¥みやこ/を、¥させる¥ゆゑ¥なう/して、¥たこく¥たしよ/へ¥うつさ/れ/ける/こそ¥あさましけれ。¥ひととせ¥さがの−くわうてい/の¥おん=とき、¥へいぜいの−せんてい、ないしのかみ/の¥すすめ/に¥よつ/て、¥すでに¥この¥きやう/を¥たこく/へ¥うつさ/ん/と¥せ/させ¥たまひ/しか/ども、¥だいじん¥くぎやう¥しよ−こく/の¥にんみん¥そむき¥まうし/しか/ば、¥うつさ/れ/ず/して¥やみ/に/き。¥いつてん/の−きみ¥ばんじよう/の−あるじ/さへ、¥うつし−え¥たまは/ぬ¥みやこ/を、¥にふだう−しやうこく¥じんしん/の¥み/と/して、¥うつさ/れ/ける/ぞ¥あさましき。¥きうと/は¥あはれ¥めでたかり/つる¥みやこ/ぞ/かし。¥わうじやう−しゆご/の¥ちんじゆ/は、¥しはう/に¥ひかり/を¥やはらげ、¥れいげん−しゆしよう/の¥てらでら/は、¥じやうげ/に¥いらか/を¥ならべ/たり。¥ひやくしやう¥ばんみん¥わづらひ¥なく、¥ごき−しちだう/も¥たより¥あり。¥され/ども¥いま/は¥つじつじ/を¥ほり−きつ/て、¥くるま/など/の¥たやすう¥ゆき−かふ¥こと/も¥なく、¥たまさか/に¥ゆく¥ひと/は、¥こぐるま/に¥のり、¥みち/を¥へ/て/こそ¥とほり/けれ。¥のき/を¥あらそひ/し¥ひと/の¥すまひ、¥ひ/を¥へ/つつ¥あれ−ゆく。¥いへいへ/は¥かもがは、¥かつらがは/に¥こぼち−いれ、¥いかだ/に¥くみ−うかべP299、¥しざい−ざふぐ¥ふね/に¥つみ、¥ふくはら/へ/とて¥はこび−くだす。¥ただなり/に、¥はな/の−みやこ、¥ゐなか/に¥なる/こそ¥かなしけれ。¥なにもの/の¥しわざ/に/や¥あり/けん、¥ふるき¥みやこ/の¥だいり/の¥はしら/に、¥にしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/ける。¥
ももとせ/を¥よかへり/まで/に¥すぎ−き/に/し¥おたぎ/の−さと/の¥あれ/や¥はて/なむ W030¥
さき−いづる¥はな/の−みやこ/を¥ふり−すて/て¥かぜ¥ふく¥はら/の¥すゑ/ぞ¥あやふき W031¥「しんと」¥おなじき−ろくぐわつ−ここのかのひ、¥しんと/の¥ことはじめ¥ある/べし/とて、¥しやうけい/に/は¥とくだいじの−さだいしやう−じつていの−きやう、¥つちみかどの−さいしやう/の−ちうじやう−とうしんの−きやう、¥ぶぎやう/の−べん/に/は、¥さきの−させうべん−ゆきたか、¥おほく/の¥くわんにん=ども¥めし−ぐし/て、¥たう−ごく¥わだ/の−まつばら、¥にしのの/を¥てんじ/て、¥くでう/の¥ち/を¥わら/れ/ける/に、¥いちでう/より/しも、¥ごでう/まで/は¥その¥ところ¥あり/て、¥それ/より¥しも/は¥なかり/けり。¥ぎやうじくわん¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし/を¥そうもん−す。¥さら/ば¥はりま/の¥いなみの/か、¥なほ¥つの−くに/の¥こやの/か/なんど、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、¥こと−ゆく/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。¥きうと/は¥すでに¥うかれ/ぬ。¥しんと/は¥いまだ¥こと−ゆか/ず。¥あり/と/し−ある¥ひと/は、¥みな¥み/を¥うきくも/の¥おもひ/を¥なし、¥もとこ/の¥ところ/に¥すむ¥もの/は、¥ち/を¥うしなつ/て¥うれへ、¥いま¥うつる¥ひとびと/は、¥どぼく/のP300¥わづらひ/を/のみ¥なげき−あへ/り。¥すべて¥ただ¥ゆめ/の¥やう/なつ/し¥こと=ども/なり。¥つちみかどの−さいしやう/の−ちうじやう−とうしんの−きやう/の¥まうさ/れ/ける/は、「¥いこく/に/は¥さんでう/の¥くわうろ/を¥ひらい/て、¥じふじ/の¥とうもん/を¥たつ/と¥みえ/たり。¥いはんや¥ごでう/まで¥あら/ん¥みやこ/に、¥など/か¥だいり/を¥たて/ざる/べき。¥かつがつ¥まづ¥さとだいり¥つくら/る/べし」/と¥くぎやう−せんぎ¥あつ/て、¥ごでうの−だいなごん−くにつなの−きやう、¥りんじ/に¥すはうの−くに/を¥たまはつ/て、¥ざうしん−せ/らる/べき¥よし、¥にふだう−しやうこく¥はからひ¥まうさ/れ/けり。¥この¥くにつなの−きやう/と¥まうす/は、¥ならび−なき¥だいふく−ちやうじや/にて¥おはし/けれ/ば、¥だいり¥つくり−いださ/れ/ん¥こと、¥さう/に¥およば/ね/ども、¥いかんが¥くに/の¥つひえ、¥たみ/の¥わづらひ¥なかる/べき。¥まことに¥さし−あたつ/たる¥てんが/の¥だいじ、¥だいじやうゑ/など/の¥おこなは/る/べき/を¥さし−おい/て、¥かかる¥よ/の¥みだれ/に、¥せんと、¥ざうだいり、¥すこし/も¥さうおう−せ/ず。「¥いにしへ/の¥かしこき¥みよ/に/は、¥すなはち¥だいり/に¥かや/を¥ふき、¥のき/を/だに/も¥ととのへ/ず、¥けぶり/の¥とぼしき/を¥み¥たまふ¥とき/に/は、¥かぎり−ある¥みつぎもの/を/も¥ゆるさ/れ/き。¥これ¥すなはち¥たみ/を¥めぐみ、¥くに/を¥たすけ¥たまふ/に¥よつ/て/なり。¥そ¥しやうくわ/の−たい/を¥たて/て¥れいみん¥あらけ、¥しん¥あはうのてん/を¥おこい/て/は、¥てんが¥みだる/と¥いへ/り。¥ばうし¥きら/ず、¥さいてん¥けづら/ず、¥しうしや¥かざら/ず、¥いふく¥あや−なかり/ける¥よ/も¥あり/けん/ものを。¥され/ば¥たう/の¥たいそう/の¥りさんきう/を¥つくつ/て、¥たみ/の¥つひえ/を/や¥はばから/せ¥たまひ/けん、¥つひに¥りんかう¥なく/して、¥かはら/に¥まつ¥おひ、¥かき/に¥つた¥しげつ/て、¥やみ/に/ける/に/は¥さうゐ/かな」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。P301¥
「つきみ」(『つきみ』)S0502¥ろくぐわつ−ここのかのひ、¥しんと/の¥ことはじめ、¥はちぐわつ−とをかのひ¥しやうとう、¥じふいちぐわつ−じふさんにち¥せんかう/と¥さだめ/らる。¥ふるき¥みやこ/は¥あれ−ゆけ/ど、¥いま/の¥みやこ/は¥はんじやう−す。¥あさましかり/つる¥なつ/も¥くれ/て、¥あき/に/も¥すでに¥なり/に/けり。¥あき/も¥やうやう¥なかば/に¥なり−ゆけ/ば、¥ふくはら/の¥しんと/に¥ましまし/ける¥ひとびと、¥めいしよ/の¥つき/を¥み/ん/とて、¥あるひは¥げんじ/の−だいしやう/の¥むかし/の¥あと/を¥しのび/つつ、¥すま/より¥あかし/の¥うら−づたひ、¥あはぢ/の−せと/を¥おし−わたり、¥ゑじま/が−いそ/の¥つき/を¥みる。¥あるひは¥しらら、¥ふきあげ、¥わか/の−うら、¥すみよし、¥なには、¥たかさご、¥をのへ/の¥つき/の¥あけぼの/を、¥ながめ/て¥かへる¥ひと/も¥あり。¥きうと/に¥のこる¥ひとびと/は、¥ふしみ、¥ひろさは/の¥つき/を¥みる。¥なか/に/も¥とくだいじの−さだいしやう−じつていの−きやう/は、¥ふるき¥みやこ/の¥つき/を¥こひ/つつ、¥はちぐわつ−とをか−あまり/に、¥ふくはら/より/ぞ¥のぼり¥たまふ。¥なにごと/も¥みな¥かはり−はて/て、¥まれ/に¥のこる¥いへ/は、¥もんぜん¥くさ¥ふかく/して、¥ていじやう¥つゆ¥しげし。¥よもぎ/が−そま、¥あさぢ/が−はら、¥とり/の¥ふしど/と¥あれ−はて/て、¥むし/の¥こゑごゑ¥うらみ/つつ、¥くわうぎく¥しらん/の¥のべ/と/ぞ¥なり/に/ける。¥いま¥こきやう/の¥なごり/とて/は、¥こんゑかはら/の−おほみや/ばかり/ぞ¥ましまし/ける。¥だいしやう¥その¥ごしよ/へ¥まゐり、¥まづ¥ずゐじん/を¥もつて、¥そうもん/を¥たたか/せ/らるれ/ば、¥うち/より¥をんな/の¥こゑ/にて、「¥た/そ/や、¥よもぎふ/の¥つゆ¥うち−はらふ¥ひと/も¥なき¥ところ/に」/とP302¥とがむれ/ば、「¥これ/は¥ふくはら/より¥だいしやう=どの/の¥おん=のぼり¥ざふらふ」/と¥まうす。「¥さ¥さぶらは/ば、¥そうもん/は¥ぢやう/の¥ささ/れ/て¥さぶらふ/ぞ。¥ひがし/の−こもん/より¥いら/せ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいしやう、¥さら/ば/とて、¥ひがし/の−こもん/より/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥おほみや/は、¥おん=つれづれ/に、¥むかし/を/や¥おぼしめし−いで/させ¥たまひ/けん、¥なんめん/の¥み=かうし¥あけ/させ、¥おん=びは¥あそばさ/れ/ける¥ところ/へ、¥だいしやう¥つと¥まゐら/れ/たれ/ば、¥しばらく¥おん=びは/を¥さし−おか/せ¥たまひ/て、「¥ゆめ/か/や¥うつつ/か、¥これ/へ−これ/へ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥げんじ/の−うぢ/の−まき/に/は、¥うばそくのみや/の¥おん=むすめ、¥あき/の¥なごり/を¥をしみ/つつ、¥びは/を¥しらべ/て¥よ/も−すがら¥こころ/を¥すまし¥たまひ/し/に、¥ありあけ/の−つき/の¥いで/ける/を、¥なほ¥たへ/ず/や¥おぼし/けん、¥ばち/にて¥まねき¥たまひ/けん/も、¥いま/こそ¥おぼしめし−しら/れ/けれ。¥まつよひ/の−こじじう/と¥まうす¥にようばう/も、¥この¥ごしよ/に/ぞ¥さふらは/れ/ける。¥そもそも¥この¥にようばう/を¥まつよひ/と¥めさ/れ/ける¥こと/は、¥ある−とき¥ごぜん/より、「¥まつ¥よひ、¥かへる¥あした、¥いづれ/か¥あはれ/は¥まされ/る」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かの¥にようばう、¥
まつ¥よひ/の¥ふけ−ゆく¥かね/の¥こゑ¥きけ/ば¥かへる¥あした/の¥とり/は¥もの/かは W032
/と¥まうし/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥まつよひ/と/は¥めさ/れ/けれ。¥だいしやう¥この¥にようばう/を¥よび−いで/て、¥むかし−いま/の¥ものがたり=ども¥し¥たまひ/て¥のち、¥さ−よ/も¥やうやう¥ふけ−ゆけ/ば、¥ふるき¥みやこ/の¥あれ−ゆく/を、¥いまやう/に/こそ¥うたは/れ/けれ。¥
ふるき¥みやこ/を¥き/て¥みれ/ば¥あさぢ/が−はら/と/ぞ¥あれ/に/けるP303¥
つき/の¥ひかり/は¥くまなく/て¥あきかぜ/のみ/ぞ¥み/に/は¥しむ
/と、¥おし−かへし−おし−かへし¥さんべん¥うたひ−すまさ/れ/たり/けれ/ば、¥おほみや/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥ごしよ−ぢう/の¥にようばう=たち、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥さる−ほど/に¥よ/も¥やうやう¥あけ−ゆけ/ば、¥だいしやう¥いとま¥まうし/つつ、¥ふくはら/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥とも/に¥さふらふ¥くらんど/を¥めし/て、「¥じじう/が¥なに/と¥おもふ/やらん、¥あまり/に¥なごり−をし=げ/に¥みえ/つる/に、¥なんぢ¥かへつ/て、¥と/も−かう/も¥いう/て¥こよ」/と¥のたまへ/ば、¥くらんど¥はしり−かへり、¥かしこまつ/て、「¥これ/は¥だいしやう=どの/の¥まうせ/と¥ざふらふ」/とて、¥
もの/かは/と¥きみ/が¥いひ/けむ¥とり/の−ね/の¥けさ/しも¥など/か¥かなしかる/らむ W033¥
にようばう¥とり−あへ/ず、¥
また/ば/こそ¥ふけ−ゆく¥かね/も¥つらから/め¥かへる¥あした/の¥とり/の−ね/ぞ¥うき W034¥
くらんど¥はしり−かへつ/て、¥この¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、「¥さて/こそ¥なんぢ/を/ば¥つかはし/たれ」/とて、¥だいしやう¥おほき/に¥かんぜ/られ/けり。¥それ/より/して/こそ、¥ものかは/の−くらんど/と/は¥めさ/れ/けれ。P304
「もつけ」(『もつけのさた』)S0503¥へいけ¥みやこ/を¥ふくはら/へ¥うつさ/れ/て¥のち/は、¥ゆめみ/も¥あしう、¥つね/は¥こころ−さわぎ/のみ¥し/て、¥へんげ/の−もの=ども¥おほかり/けり。¥ある¥よ¥にふだう/の¥ふし¥たまひ/たり/ける¥ところ/に、¥ひとま/に¥はばかる/ほど/の¥もの/の¥おもて/の¥いで−きたつ/て¥のぞき¥たてまつる。¥にふだう¥ちつと/も¥さわが/ず、¥はつた/と¥にらまへ/て¥おはし/けれ/ば、¥ただきえ/に¥きえ−うせ/ぬ。¥をか/の−ごしよ/と¥まうす/は、¥あたらしう¥つくら/れ/たり/けれ/ば、¥しかる/べき¥たいぼく/なんど/も¥なかり/ける/に、¥ある¥よ¥おほぎ/の¥たふるる¥おと−し/て、¥ひと/なら/ば¥にさんぜんにん/が¥こゑ−し/て、¥こくう/に¥どつと¥わらふ¥おと−し/けり。¥いかさま/に/も¥これ/は¥てんぐ/の¥しよゐ/と¥いふ¥さた/にて、¥ひる¥ごじふにん、¥よる¥ひやくにん/の¥ばんしゆ/を¥そろへ、¥ひきめ/の−ばん/と¥なづけ/て、¥ひきめ/を¥い/させ/られ/ける/に、¥てんぐ/の¥ある¥かた/へ¥むかつ/て¥い/たる/と¥おぼし/き¥とき/は、¥おと/も¥せ/ず。¥また¥ない¥かた/へ¥むかつ/て¥い/たる¥とき/は、¥どつと¥わらひ/なんど¥し/けり。¥また¥ある¥あした¥にふだう−しやうこく¥ちやうだい/より¥いで/て、¥つまど/を¥おし−ひらき、¥つぼ/の−うち/を¥み¥たまへ/ば、¥しにん/の¥しやれかうべ=ども/が、¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず、¥つぼ/の−うち/に¥みちみち/て、¥うへ/なる/は¥した/に¥なり、¥した/なる/は¥うへ/に¥なり、¥なか/なる/は¥はし/へ¥ころび−いで、¥はし/なる/は¥なか/へ¥ころび−いり、¥ころび−あひ、¥ころび−のき、¥からめき−あへ/り。¥にふだう−しやうこく、「¥ひと/や¥ある¥ひと/や¥ある」/とP305¥めさ/れ/けれ/ども、¥をりふし¥ひと/も¥まゐら/ず。¥かく−し/て¥おほく/の¥どくろ=ども/が、¥ひとつ/に¥かたまり−あひ、¥つぼ/の−うち/に、¥はばかる/ほど/に¥なつ/て、¥たかさ/は¥じふしごぢやう/も¥ある/らん/と¥おぼゆる¥やま/の/ごとく/に¥なり/に/けり。¥かの¥ひとつ/の¥おほがしら/に、¥いき/たる¥ひと/の¥め/の¥やう/に、¥だい/の¥まなこ/が¥せんまん¥いで−き/て、¥にふだう−しやうこく/を¥きつと¥にらまへ、¥しばし/は¥まだたき/も¥せ/ず。¥にふだう¥ちつと/も¥さわが/ず、¥ちやうど¥にらまへ/て¥たた/れ/たり/けれ/ば、¥つゆ¥しも/など/の¥ひ/に¥あたつ/て¥きゆる¥やう/に、¥あとかた/も¥なく¥なり/に/けり。¥
また¥にふだう−しやうこく、¥いち/の−おん=むまや/に¥たて/て、¥とねり¥あまた¥つけ/て、¥あさゆふ¥なで−かは/れ/ける¥むま/の¥を/に、¥ねずみ¥いち−や/の¥うち/に¥す/を¥くひ¥こ/を/ぞ¥うん/だり/ける。¥これ¥ただごと/に¥あら/ず、¥みうら¥ある/べし/とて¥じんぎくわん/に/して、¥みうら¥あり。¥おもき¥おん=つつしみ/と¥うらなひ¥まうす。¥この¥むま/は、¥さがみの−くに/の¥ぢうにん、¥おほばの−さぶらう−かげちか/が、¥とう−はつ−か−こく¥いち/の¥むま/とて、¥にふだう−だいしやうこく/に¥まゐらせ/たり/ける/とかや。¥くろき¥むま/の¥ひたひ/の¥すこし¥しろかり/けれ/ば、¥な/を/ば¥もちづき/と/ぞ¥いは/れ/ける。¥おんやう/の−かみ−あべの−やすちか¥たまはつ/てげり。¥むかし¥てんぢ−てんわう/の¥ぎよ=う/に、¥れう/の−お=むま/の¥を/に、¥ねずみ¥いち−や/の¥うち/に¥す/を¥くひ、¥こ/を¥うん/だり/ける/に/は、¥いこく/の¥きようぞく¥ほうき−し/たり/と/ぞ、¥につぽんぎ/に/は¥みえ/たり/ける。¥また¥げん−ぢうなごん−がらいの−きやう/の¥もと/に、¥めし−つかは/れ/ける¥せいし/が¥み/たり/ける¥ゆめ/も、¥おそろしかり/けり。¥たとへば¥たいだい/の¥じんぎくわん/と¥おぼし/き¥ところ/に、¥そくたい¥ただしき¥じやうらふ/の、¥あまた¥より−あひ¥たまひ/て、¥ぎぢやう/の¥やう/なる¥こと/の¥あり/し/に、¥ばつざ/なる¥じやうらふ/の、¥へいけ/の¥かたうど−しP306¥たまふ/と¥おぼし/き/を、¥その¥なか/より/して¥おつ−たて/らる。¥はるか/の¥ざじやう/に¥けだか=げ/なる¥おん=しゆくらう/の¥ましまし/ける/が、「¥この¥ひごろ¥へいけ/の¥あづかり¥たてまつる¥せつたう/を/ば¥めし−かへい/て、¥いづの−くに/の−るにん−さきの−うひやうゑ/の−すけ−よりとも/に¥たば/うずる/なり」/と¥おほせ/けれ/ば、¥その¥そば/に¥なほ¥おん=しゆくらう/の¥ましまし/ける/が、「¥その−のち/は¥わが¥まご/に/も¥たび¥さふらへ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥せいし¥ゆめ/の¥うち/に、¥ある¥らうをう/に、¥しだい/に¥これ/を¥とひ¥たてまつる。「¥ばつざ/なる¥じやうらふ/の、¥へいけ/の¥かたうど−し¥たまふ/と¥おぼし/き/は、¥いつくしまの−だい−みやうじん、¥せつたう/を¥よりとも/に¥たば/う/と¥おほせ/らるる/は、¥はちまん−だい−ぼさつ、¥その−のち¥わが¥まご/に/も¥たべ/と¥おほせ/ける/は、¥かすがの−だい−みやうじん、¥かう¥まうす¥おきな/は、¥たけうちの−みやうじん」/と¥こたへ¥たまふ/と¥いふ¥ゆめ/を¥み/て、¥さめ/て¥のち、¥ひと/に¥これ/を¥かたる/ほど/に、¥にふだう−しやうこく¥もれ−きき¥たまひ/て、¥がらいの−きやう/の¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥それ/に¥ゆめみ/の¥せいし/の¥さふらふ/なる/を¥たまはつ/て、¥くはしう¥たづね¥さふらは/ばや」/と¥のたまひ/て、¥つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥かの¥ゆめ¥み/たり/ける¥せいし、¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、¥やがて¥ちくでん−し/てげり。¥その−のち¥がらいの−きやう、¥にふだう−しやうこく/の¥てい/に¥ゆい/て、「¥まつたく¥さる−こと¥さふらは/ず」/と、¥ちんじ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥その−のち/は¥さた/も¥なかり/けり。¥それ/に¥また¥なに/より¥ふしぎ/なり/ける¥こと/に/は、¥きよもり¥いまだ¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥じんぱい/の¥ついで/に¥れいむ/を¥かうぶつ/て、¥いつくしま−だい−みやうじん/より¥うつつ/に¥たまはら/れ/たり/ける¥しろがね/の¥ひるまき−し/たる¥こなぎなた、¥つね/の¥まくら/を¥はなた/ず¥たて/られ/たり/し/が、¥ある¥よ¥にはか/に¥うせ/に/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥へいけ¥ひごろ/は¥てうか/の¥おん=かため/にて、¥てんが/を¥しゆご−せ/しか/ども、¥いま/は¥ちよくめい/に/もP307¥そむき/ぬれ/ば、¥せつたう/を/も¥めし−かへさ/るる/に/や、¥こころ−ぼそく/ぞ¥きこえ/し。¥
「おほばがはやむま」¥なか/に/も¥かうや/に¥おはし/ける¥さいしやう−にふだう−せいらい、¥この¥こと=ども/を¥つたへ−きい/て、「¥あは¥はや¥へいけ/の¥よ/は¥やうやう¥すゑ/に¥なり/ぬる/は。¥いつくしまの−だい−みやうじん/の、¥へいけ/の¥かたうど−し¥たまふ/と¥いふ/も、¥その¥いはれ¥あり。¥ただし¥この¥いつくしまの−だい−みやうじん/は、¥しやかつらりうわう/の¥だいさん/の¥ひめみや/なれ/ば、¥ぢよじん/と/こそ¥うけたまはれ。¥はちまん−だい−ぼさつ/の¥せつたう/を¥よりとも/に¥たば/う/と¥おほせ/られ/つる/も¥ことわり/なり。¥かすが−だい−みやうじん/の¥その−のち/は¥わが¥まご/に/も¥たび¥さふらへ/と¥おほせ/られ/ける/こそ¥こころ−え/ね。¥それ/も¥へいけ¥ほろび、¥げんじ/の¥よ¥つき/な/ん¥のち、¥たいしよくくわん/の¥おん=すゑ、¥しつぺいけ/の¥きんだち=たち/の¥てんが/の¥しやうぐん/に¥なり¥たまふ/べき/か/なんど¥のたまひ/ける。¥をりふし¥ある¥そう/の¥き/たり/ける/が¥まうし/ける/は、「¥それ¥しんめい/は、¥わくわう−すゐじやく/の¥はうべん、¥まちまち/に¥ましませ/ば、¥ある−とき/は¥ぢよじん/と/も¥なり、¥また¥ある−とき/は¥ぞくたい/と/も¥げんじ¥たまへ/り。¥まことに¥この¥いつくしまの−だい−みやうじん/は、¥さんみやう¥ろくつう/の¥れいしん/にて¥ましませ/ば、¥ぞくたい/と¥げんじ¥たまは/ん¥こと/も¥かたかる/べき/に¥あら/ず/や」/と/ぞ¥まうし/ける。¥うき−よ/を¥いとひ、¥まこと/の−みち/に¥いり¥たまへ/ば、¥ひとへに¥ごせ−ぼだい/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥ある/まじき¥こと/なれ/ども、¥ぜんせい/を¥きい/て/は¥かんじ、¥うれへ/をP308¥きい/て/は¥なげく、¥これ¥みな¥にんげん/の¥ならひ/なり。¥
(『はやむま』)S0504¥さる−ほど/に¥おなじき−くぐわつ−ふつかのひ、¥さがみの−くに/の¥ぢうにん、¥おほばの−さぶらう−かげちか、¥ふくはら/へ¥はやむま/を¥もつて¥まうし/ける/は、「¥さんぬる¥はちぐわつ−じふしちにち、¥いづの−くに/の−るにん−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥しうと¥ほうでう−しらう−ときまさ/を¥かたら/う/て、¥いづの−くに/の¥もくだい、¥いづみ/の−はんぐわん−かねたか/を、¥やまき/が−たち/にて¥ようち/に¥うち¥さふらひ/ぬ。¥その−のち¥とひ、¥つちや、¥をかざき/を¥はじめ/と/して¥さんびやく−よ−き、¥いしばしやま/に¥たて−こもつ/て¥さふらふ¥ところ/を、¥かげちか¥み=かた/に¥こころざし/を¥ぞんずる¥もの=ども、¥いつせん−よ−き/を¥いんぞつ−し/て、¥おし−よせ/て¥さんざん/に¥せめ¥さふらへ/ば、¥ひやうゑ/の−すけ¥わづか¥しちはつき/に¥うち−なさ/れ、¥おほ−わらは/に¥たたかひ−なつ/て、¥とひ/の¥すぎやま/へ¥にげ−こもり¥さふらひ/ぬ。¥はたけやま¥ごひやく−よ−き/で、¥み=かた/を¥つかまつる。¥みうらの−おほすけ/が¥こども、¥さんびやく−よ−き/で¥げんじ−がた/を/して、¥ゆゐ¥こつぼ/の−うら/で¥せめ−たたかふ。¥はたけやま¥いくさ/に¥まけ/て¥むさしの−くに/へ¥ひき−しりぞく。¥その−のち¥はたけやま/が¥いちぞく、¥かはごえ、¥いなげ、¥をやまだ、¥えど、¥かさい、¥そうじて¥ななたう/の¥つはもの=ども、¥ことごとく¥おこり−あひ、¥つがふ¥その¥せい¥にせん−よ−き、¥みうら¥きぬがさ/の−じやう/に¥おし−よせ/て、¥いちにち−いち−や¥せめ¥さふらひ/し/ほど/に、¥おほすけ¥うた/れ¥さふらひ/ぬ。¥こども/は¥みな¥くりばま/の−うら/より¥ふね/に¥のつ/て、¥あは¥かづさ/へ¥わたり/ぬ/と/こそ、¥ひと¥まうし/けれ。P309¥
「てうてきぞろへ」¥へいけ/の¥ひとびと、¥みやこうつり/の¥こと/も、¥はや¥きよう¥さめ/ぬ。¥わかき¥くぎやう−てんじやうびと/は、「¥あはれ¥とく/して、¥こと/の¥いで−こよ/かし。¥われ¥さき/に¥うつて/に¥むかは/う」/など¥いふ/ぞ¥はかなき。¥はたけやまの−しやうじ−しげよし、¥をやまだの−べつたう−ありしげ、¥うつのみやの−さゑもん−ともつな、¥これ=ら/は¥おほばんやく/にて、¥をりふし¥ざいきやう−し/たり/ける/が、¥はたけやま¥まうし/ける/は、「¥したしう¥なつ/て¥さふらふ/なれ/ば、¥ほうでう/は¥しり¥さふらは/ず。¥じよ/の¥ともがら/は、¥よ/も¥てうてき/の¥かたうど/は¥つかまつり¥さふらは/じ。¥ただいま¥きこしめし−なほさ/んずる/ものを」/と¥まうし/けれ/ば、「¥げに/も」/と¥まうす¥ひと/も¥あり、「¥いやいや¥ただいま¥おん=だいじ/に¥および¥さふらひ/な/んず」/と¥ささやく¥ひと/も¥あり/ける/とかや。¥にふだう−しやうこく/の¥いから/れ/ける¥さま¥なのめ/なら/ず、「¥そも¥かの¥よりとも/は、¥さんぬる¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥ちち¥よしとも/が¥むほん/に¥よつ/て、¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥こ=いけの−ぜんに/の¥あながち/に¥なげき−のたまふ¥あひだ、¥るざい/に/は¥なだめ/られ/たん/なり。¥しかる/に¥その¥おん/を¥わすれ/て、¥たうけ/に¥むかつ/て¥ゆみ/を¥ひき、¥や/を¥はなつ/に/こそ¥あん/なれ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥しんめい/も¥さんぽう/も、¥いかで/か¥ゆるし¥たまふ/べき。¥ただいま¥てん/の¥せめ¥かうぶら/んずる¥よりとも/かな」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥
(『てうてきぞろへ』)S0505¥そもそも¥わが¥てう/に¥てうてき/の¥はじまり/ける¥こと/は、¥むかし¥やまといはれひこのみこと/の¥ぎよ=う¥しねん、¥きしうP310¥なぐさ/の−こほり¥たかを/の−むら/に、¥ひとつ/の¥ちちう¥あり。¥み¥みじかく¥てあし¥ながく/して、¥ちから¥ひと/に¥すぐれ/たり。¥にんみん¥おほく¥そんがい−せ/しか/ば、¥くわんぐん¥はつかう−し/て、¥せんじ/を¥よみ−かけ、¥かづら/の¥あみ/を¥むすん/で、¥つひに¥これ/を¥おほひ−ころす。¥それ/より¥この−かた、¥やしん/を¥さし−はさん/で、¥てうゐ/を¥ほろぼさ/ん/と¥する¥ともがら、¥おほいしの−やままる、¥おほやまの−わうじ、¥やまだの−いしかは、¥もりやの−だいじん、¥そがの−いるか、¥おほともの−まとり¥ぶんやの−みやだ、¥きつ−いつせい、¥ひかみの−かはつぎ、¥いよの−しんわう、¥ださい/の−せうに−ふぢはらの−ひろつぎ、¥ゑみの−おしかつ、¥さはらの−たいし、¥ゐがみの−くわうこう、¥ふぢはらの−なかなり、¥たひらの−まさかど、¥ふぢはらの−すみとも、¥あべの−さだたふ¥むねたふ¥さきの−つしまの−かみ−みなもとの−よしちか、¥あく−さふ、¥あく−ゑもん/の−かみ/に¥いたる/まで、¥その¥れい¥すでに¥にじふ−よ−にん、¥され/ども¥いち−にん/と/して、¥そくわい/を¥とぐる¥もの¥なし。¥みな¥かばね/を¥さんや/に¥さらし、¥かうべ/を¥ごくもん/に¥かけ/らる。¥この−よ/こそ¥わうゐ/も¥むげ/に¥かろけれ。¥むかし/は¥せんじ/を¥むかつ/て¥よみ/けれ/ば、¥かれ/たる¥くさき/も¥たちまち/に¥はな¥さき¥み¥なり、¥とぶ¥とり/も¥したがひ/き。¥ちかごろ/の¥こと/ぞ/かし。¥えんぎ/の−みかど¥しんぜんゑん/へ¥ぎやうがう¥なつ/て、¥いけ/の¥みぎは/に¥さぎ/の¥ゐ/たり/ける/を、¥ろくゐ/を¥めし/て、「¥あの¥さぎ¥とつ/て¥まゐれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥いかんが¥とら/る/べき/と/は¥おもへ/ども、¥りんげん/なれ/ば¥あゆみ−むかふ。¥さぎ¥はねづくろひ−し/て¥たた/ん/と¥す。「¥せんじ/ぞ」/と¥おほす/れ/ば、¥ひらん/で¥とび−さら/ず。¥すなはち¥これ/を¥とつ/て¥まゐらせ/たり/けれ/ば、「¥なんぢ/が¥せんじ/に¥したがひ/て¥まゐり/たる/こそ¥しんべう/なれ。¥やがて¥ごゐ/に¥なせ」/とて、¥さぎ/を¥ごゐ/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥けふ/より¥のち、¥さぎ/の¥なか/の¥わう/たる/べし/と¥いふ¥おん=ふだ/を、¥みづから¥あそばい/て、¥くび/に¥つけ/て/ぞ¥はなた/せP311¥たまふ。¥まつたく¥これ/は¥さぎ/の¥おん=れう/に/は¥あら/ず、¥ただ¥わうゐ/の¥ほど/を¥しろしめさ/ん/が¥ため/なり。¥
「かんやうきう」(『かんやうきう』)S0506¥また¥いこく/に¥せんじよう/を¥とぶらふ/に、¥えん/の¥たいし−たん、¥しん/の¥しくわうてい/に¥とらはれ/て、¥いましめ/を¥かうぶる¥こと¥じふにねん、¥ある−とき¥えん−たん¥なみだ/を¥ながい/て、「¥われ¥こきやう/に¥らうぼ¥あり。¥いとま/を¥たまはつ/て、¥いま−いちど¥かれ/を¥み/ん」/と/ぞ¥なげき/ける。¥しくわうてい¥あざ−わらつ/て、「¥なんぢ/に¥いとま¥たば/ん¥こと、¥むま/に¥つの¥おひ、¥からす/の¥かしら/の¥しろく¥なら/ん/を¥まつ/べき/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥えん−たん¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし/て、「¥ねがは−く/は¥むま/に¥つの¥おひ、¥からす/の¥かしら/を¥しろく¥なし¥たべ。¥ほんごく/へ¥かへつ/て¥いま−いちど¥はは/を¥み/ん」/と/ぞ¥いのり/ける。¥かの¥めうおん−ぼさつ/は、¥りやうぜん−じやうど/に¥けいし/て、¥ふけう/の¥ともがら/を¥いましめ、¥くじ¥がんくわい/は、¥しな−しんだん/に¥いで/て、¥ちうかう/の¥みち/を¥はじめ¥たまふ。¥みやうけん/の¥さんぽう、¥かうかう/の¥こころざし/を¥あはれみ¥たまふ¥こと/なれ/ば、¥むま/に¥つの¥おひ/て¥きうちう/に¥きたり、¥からす/の¥かしら¥しろく¥なつ/て、¥ていぜん/の¥き/に¥すめ/り/けり。¥しくわうてい、¥うとう−ばかく/の−へん/に¥おどろき、¥りんげん¥かへら/ざる¥こと/を¥ふかく¥しんじ/て、¥たいし−たん/を¥なだめ/つつ、¥ほんごく/へ/こそ¥かへさ/れ/けれ。¥しくわう¥なほ¥くやしみ¥たまひ/て、¥しん/の−くに/と¥えん/の¥さかひ/に¥そこく/と¥いふ¥くに¥あり。¥おほい/なる¥かはP312¥ながれ/たり。¥かの¥かは/に¥わたせ/る¥はし/を、¥そこく/の−はし/と¥いへ/り。¥しくわう¥さき/に¥くわんぐん/を¥つかはし/て、¥えん−たん/が¥わたら/ん¥とき、¥かはなか/の¥はし/を¥ふま/ば、¥おつる¥やう/に¥したため/て、¥わたさ/れ/たり/けれ/ば、¥なじか/は¥よかる/べき。¥まんなか/にて¥おち−いり/ぬ。¥され/ども¥みづ/に/は¥ちつと/も¥おぼれ/ず、¥へいち/を¥ゆく/が/ごとく/にて、¥むかひ/の¥きし/に/ぞ¥つき/に/ける。¥えん−たん¥こ/は¥いか/に/と¥おもひ/て、¥うしろ/を¥かへり−み/たり/けれ/ば、¥かめ=ども/が¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず、¥みづ/の¥うへ/に¥うか/れ¥き/て、¥かふ/を¥ならべ/て¥その¥うへ/を¥とほし/ける。¥これ/も¥かうかう/の¥こころざし/を、¥みやうけん/の¥あはれみ¥たまふ/に¥よつ/て/なり。¥
えん−たん¥なほ¥うらみ/を¥ふくん/で、¥しくわうてい/に¥したがは/ず。¥しくわう¥くわんぐん/を¥つかはし/て、¥えん−たん/を¥ほろぼさ/ん/と¥す。¥えん−たん¥おほき/に¥おそれ−をののい/て、¥けいか/と¥いふ¥つはもの/を¥かたら/う/て¥だいじん/に¥なす。¥けいか¥また¥でんくわう−せんせい/と¥いふ¥つはもの/を¥かたらふ/に、¥せんせい¥まうし/ける/は、「¥きみ/は¥この¥み/が¥わかう¥さかん/なつ/し¥こと/を¥しろしめし/て、¥かく/は¥たのみ−おほせ/らるる/か。¥きりん/は¥せんり/を¥とぶ/と¥いへ/ども、¥おい/ぬれ/ば¥どば/に/も¥おとれ/り。¥この¥み/は¥とし¥おい/て、¥いか/に/も¥かなひ¥さふらふ/まじ。¥せんずる−ところ、¥よき¥つはもの/を¥かたらつ/て/こそ¥まゐらせ/め」/と¥まうし/けれ/ば、¥けいか、「¥あな−かしこ、¥この¥こと¥ひろう−す/な」/と¥いふ。¥せんせい¥きい/て、「¥この¥こと¥もれ/ぬる¥もの/なら/ば、¥われ¥まづ¥さきに¥うたがは/れ/な/んず。¥ひと/に¥うたがは/れ/ぬる/に¥すぎ/たる¥はぢ/こそ¥なけれ」/とて、¥けいか/が¥もんぜん/なる¥すもも/の−き/に¥かしら/を¥つき−あて、¥うち−くだい/て/ぞ¥しに/に/ける。P313¥また¥はんよき/と¥いふ¥つはもの¥あり。¥これ/は¥しん/の−くに/の¥もの/なり/し/が、¥しくわう/の¥ため/に、¥おや¥をぢ¥きやうだい¥ほろぼさ/れ/て、¥えん/の−くに/に¥にげ−こもり/ぬ。¥しくわう¥しかい/に¥せんじ/を¥なし−くだし、¥えん/の¥さしづ¥ならびに¥はんよき/が¥かうべ/を¥もつ/て¥まゐり/たら/んずる¥もの/に/は、¥ごひやくこん/の¥きん/を¥あたへ/ん/と¥ひろう−せ/らる。¥けいか、¥はんよき/が¥もと/に¥ゆい/て、「¥われ¥きく、¥なんぢ/が¥かうべ¥ごひやくこん/の¥きん/に¥ほうぜ/られ/たん/なり。¥なんぢ/が¥かうべ¥われ/に¥かせ。¥とつ/て¥しくわうてい/に¥たてまつら/ん。¥よろこび/て¥えいらん/を¥へ/ら/れ/ん/とき、¥つるぎ/を¥ぬい/て¥むね/を¥ささ/ん/は¥やすかり/な/ん」/と¥いひ/けれ/ば、¥はんよき¥をどり−あがり−をどり−あがり、¥おほいき¥つい/て¥まうし/ける/は、「¥われ¥おや¥をぢ¥きやうだい/を、¥しくわうてい/に¥ほろぼさ/れ/て、¥よる¥ひる¥これ/を¥おもふ/に、¥こつずゐ/に¥とほつ/て¥しのび−がたし。¥まことに¥しくわうてい¥うつ/べから/ん/に¥おいて/は、¥わが¥かうべ¥あたへ/ん¥こと、¥ちり¥あくた/より/も¥やすし」/とて、¥みづから¥かうべ/を¥きつ/て/ぞ¥しに/に/ける。¥また¥しんぶやう/と¥いふ¥つはもの¥あり。¥これ/も¥しん/の−くに/の¥もの/なり/し/が、¥じふさん/の¥とし¥かたき/を¥うつ/て、¥えん/の−くに/へ¥にげ−こもり/ぬ。¥かれ/が¥ゑん/で¥むかふ¥とき/は、¥みどりご/も¥いだか/れ、¥また¥いかつ/て¥むかふ¥とき/は、¥だい/の¥をとこ/も¥ぜつじゆ−す。¥ならび−なき¥つはもの/なり。¥けいか¥かれ/を¥かたらつ/て、¥しん/の¥みやこ/の¥あんないしや/に¥ぐし/て¥ゆく/に、¥ある¥かた−やまざと/に¥しゆくし/たり/ける¥よ、¥その¥へん¥ちかき¥さと/に¥くわんげん/を¥する/を¥きい/て、¥てうし/を¥もつて¥ほんい/の¥こと/を¥うらなふ/に、¥かたき/の¥かた/は¥みづ/なり、¥わが¥かた/は¥ひ/なり。¥はくこう¥ひ/を¥つらぬい/て¥とほら/ず。「¥わが¥ほんい¥とげ/ん¥こと¥あり−がたし」/と/ぞ¥まうし/ける。P314¥
さる−ほど/に¥てん/も¥あけ/ぬ。¥され/ども¥かへる/べき¥みち/に¥あら/ね/ば、¥しん/の¥みやこ¥かんやうきう/に¥いたり/ぬ。¥えん/の¥さしづ¥ならびに¥はんよき/が¥かうべ、¥もつ/て¥まゐり/たる¥よし/を¥そうもん−す。¥しんか/を¥もつて¥うけ−とら/ん/と¥し¥たまへ/ば、「¥まつたく¥ひとづて/に/は¥まゐらせ/じ。¥ぢき/に¥たてまつら/ん」/と¥そうする¥あひだ、¥さら/ば/とて¥せちゑ/の−ぎ/を¥ととのへ/て、¥えん/の¥つかひ/を¥めさ/れ/けり。¥かんやうきう/は、¥みやこ/の¥めぐり、¥いちまんはつせんさんびやくはちじふり/に¥つもれ/り。¥だいり/を/ば¥ち/より¥さんり¥たかく¥つき−あげ/て、¥その¥うへ/に/ぞ¥たて/られ/たる。¥ちやうせいでん¥あり。¥ふらうもん¥あり。¥こがね/を¥もつて¥ひ/を¥つくり、¥しろがね/を¥もつて¥つき/を¥つくれ/り。¥しんじゆ/の¥いさご、¥るり/の¥いさご、¥こがね/の¥いさご/を¥しき−みて/り。¥しはう/に/は¥くろがね/の¥ついぢ/を、¥たかさ¥しじふぢやう/に¥つき−あげ/て、¥てん/の¥うへ/に/も¥おなじう¥くろがね/の¥あみ/を/ぞ¥はつ/たり/ける。¥これ/は¥めいど/の¥つかひ/を¥いれ/じ/と/なり。¥あき/は¥たのも/の¥かり、¥はる/は¥こしぢ/へ¥かへる/に/も、¥ひぎやう−じざい/の¥さはり¥あり/とて、¥ついぢ/に/は¥がんもん/と¥なづけ/て、¥くろがね/の¥もん/を¥あけ/て/ぞ¥とほさ/れ/ける。¥その¥なか/に¥あはうでん/とて、¥しくわう/の¥つね/は¥ぎやうがう¥なつ/て、¥せいだう¥おこなは/せ¥たまふ¥てん¥あり。¥とうざい/へ¥くちやう、¥なんぼく/へ¥ごちやう、¥たかさ/は¥さんじふろく−ぢやう/なり。¥うへ/を/ば¥るり/の¥かはら/を¥もつて¥ふき、¥した/に/は¥こんごん/を¥みがけ/り。¥おほ−ゆか/の¥した/に/は、¥ご=ぢやう/の¥はたぼこ/を¥たて/たれ/ども、¥なほ¥およば/ぬ/ほど/なり。¥けいか/は¥えん/の¥さしづ/を¥もち、¥しんぶやう/は¥はんよき/が¥かうべ/を¥もつ/て、¥たま/の¥きざはし/を¥なから/ばかり¥のぼり−あがり/ける/が、¥あまり/に¥だいり/の¥おびたたしき/を¥み/て、¥しんぶやう¥わなわな/と¥ふるひ/けれ/ば、¥しんか¥これ/を¥あやしん/で、「¥けいじん/を/ば¥きみ/の¥かたはら/に¥おか/ず。¥くんし/は¥けいじん/に¥ちかづか/ず。P315¥ちかづけ/ば¥すなはち¥し/を¥かろんずる¥みち/なり」/と¥いへ/り。¥けいか¥たち−かへつ/て、「¥ぶやう¥まつたく¥むほん/の¥こころ¥なし。¥ただ¥でんじや/の¥いやしき/に/のみ¥ならつ/て、¥かかる¥くわうきよ/に¥なれ/ざる/が¥ゆゑ/に、¥こころ¥めいわく−す」/と¥いひ/けれ/ば、¥その−とき¥しんか¥みな¥しづまり/ぬ。¥よつて¥わう/に¥ちかづき¥たてまつり、¥えん/の¥さしづ¥ならびに¥はんよき/が¥かうべ/を¥げんざん/に¥いるる¥ところ/に、¥さしづ/の¥いつ/たる¥ひつ/の¥そこ/に、¥こほり/の¥やう/なる¥つるぎ/の¥あり/ける/を、¥しくわうてい¥ごらんじ/て、¥やがて¥にげ/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥けいか¥おん=そで/を¥むず/と¥ひかへ¥たてまつり、¥つるぎ/を¥むね/に¥さし−あて/たり。¥いま/は¥かう/と/ぞ¥みえ/たり/ける。¥すまん/の¥ぐんりよ/は、¥ていじやう/に¥そで/を¥つらぬ/と¥いへ/ども、¥すくは/ん/と¥する/に¥ちから¥なし。¥ただ¥この¥きみ¥ぎやくしん/に¥をかさ/れ/させ¥たまは/ん¥こと/を/のみ、¥なげき−かなしみ−あへ/り/けり。¥しくわうてい、「¥われ/に¥ざんじ/の¥いとま/を¥え/させよ。¥きさき/の¥こと/の¥ね/を、¥いま−いちど¥きか/ん」/と¥のたまへ/ば、¥けいか¥しばし/は¥をかし/も¥たてまつら/ず。¥しくわうてい/は¥さんぜんにん/の¥きさき/を¥もち¥たまへ/り。¥その¥なか/に¥くわやう−ぶにん/とて、¥ならび−なき¥こと/の¥じやうず¥おはし/き。¥およそ¥この¥きさき/の¥こと/の¥ね/を¥きけ/ば、¥たけき¥もののふ/の¥いかれ/る¥こころ/も¥やはらぎ、¥とぶ¥とり/も¥ち/に¥おち、¥くさき/も¥ゆるぐ/ばかり/なり。¥いはんや¥いま/を¥かぎり/の¥えいぶん/に¥そなへ/ん/と、¥なくなく¥ひき¥たまへ/ば、¥さ/こそ/は¥おもしろかり/けめ。¥けいか¥かうべ/を¥うなだれ、¥みみ/を¥そばだて/て、¥ほとんど¥ぼうしん/の¥こころ/も¥たゆみ/に/けり。¥その−とき¥きさき¥はじめて¥さらに¥いつきよく/を¥そうす。「¥しちせき/の¥へいふう/は¥たかく/とも、¥をどら/ば¥など/か¥こえ/ざら/ん。¥いちでう/の¥らこく/は¥つよく/とも、¥ひか/ば¥など/か¥たえ/ざら/ん」/と/ぞ¥ひき¥たまふ。P316¥けいか/は¥これ/を¥きき−しら/ず。¥しくわうてい/は¥きき−しり/て、¥おん=そで/を¥ひつ−きつ/て、¥しちしやく/の¥びやうぶ/を¥をどり−こえ、¥あかがね/の¥はしら/の¥かげ/へ¥にげ−かくれ/させ¥たまひ/けり。¥その−とき¥けいか¥いかつ/て、¥つるぎ/を¥なげ−かけ¥たてまつる。¥をりふし¥ごぜん/に¥ばん/の¥いし/の¥さふらひ/ける/が、¥つるぎ/に¥くすり/の¥ふくろ/を¥なげ−あはせ/たり。¥つるぎ¥くすり/の¥ふくろ/を¥かけ/られ/ながら、¥くち¥ろくしやく/の¥あかがね/の¥はしら/を、¥なから/まで/こそ¥きつ/たり/けれ。¥けいか¥また¥つるぎ/も¥もた/ざれ/ば、¥つづい/て/も¥なげ/ず。¥わう¥たち−かへつ/て、¥おん=つるぎ/を¥めし−よせ/て、¥けいか/を¥やつざき/に/こそ¥し¥たまひ/けれ。¥しんぶやう/も¥うた/れ/ぬ。¥やがて¥くわんぐん/を¥つかはし/て、¥えん−たん/を/も¥ほろぼさ/る。¥さうてん¥ゆるし¥たまは/ね/ば、¥はくこう¥ひ/を¥つらぬい/て¥とほら/ず。¥しん/の¥しくわう/は¥のがれ/て、¥えん−たん¥つひに¥ほろび/に/けり。¥され/ば¥いま/の¥よりとも/も、¥さ/こそ/は¥あら/んず/らめ/と、¥しきだい¥まうす¥ひとびと/も¥あり/ける/とかや。¥
「もんがくのあらぎやう」(『もんがくのあらぎやう』)S0507¥しかる/に¥かの¥よりとも/は、¥さんぬる¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥ちち¥さま/の−かみ−よしとも/が¥むほん/に¥よつ/て、¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥こ=いけの−ぜんに/の¥あながち/に¥なげき−のたまふ/に¥よつ/て、¥しやうねん¥じふしさい/と¥まうし/し¥えいりやく−ぐわんねん−さんぐわつ−はつかのひ、¥いづ/の¥ほうでう¥ひるがこじま/へ¥ながさ/れ/て、¥にじふ−よ−ねん/の¥しゆんしう/を¥おくり−むかふ。¥ねんらい/も¥あれ/ば/こそ¥あり/けめ、¥ことし¥いか/なる¥こころ/にて、P317¥むほん/を/ば¥おこさ/れ/ける/ぞ/と¥いふ/に、¥たかを/の¥もんがく−しやうにん/の¥すすめ¥まうさ/れ/ける/に¥よつ/て/なり。¥そもそも¥この¥もんがく/と¥まうす/は、¥わたなべの−ゑんどう−さこん/の−しやうげん−もちとほ/が¥こ/に、¥ゑんどう−むしや−もりとほ/とて、¥じやうせいもんゐん/の¥しゆ/なり。¥しかる/を¥じふく/の¥とし、¥だうしん¥おこし、¥もとどり¥きり、¥しゆぎやう/に¥いで/ん/と¥し/ける/が、¥しゆぎやう/と¥いふ/は、¥いか/ほど/の¥だいじ/やらん、¥ためい/て¥み/ん/とて、¥ろくぐわつのひ/の¥くさ/も¥ゆるが/ず¥てつ/たる/に、¥ある¥かた−やまざと/の¥やぶ/の¥なか/へ¥はひり、¥はだか/に¥なり、¥あふのけ/に¥ふす。¥あぶ/ぞ、¥か/ぞ¥はち¥あり/など¥いふ¥どくちう=ども/が、¥み/に¥ひし/と¥とり−つい/て、¥さし−くひ/など¥し/けれ/ども、¥ちつと/も¥み/を/も¥はたらか/さ/ず。¥なぬか/まで/は¥おき/も¥あがら/ず、¥やうか/と¥いふ/に¥おき−あがり/て、「¥しゆぎやう/と¥いふ/は、¥これ−ほど/の¥だいじ/やらん」/と¥ひと/に¥とへ/ば、「¥それ−ほど/なら/ん/に/は、¥いかで/か¥いのち/も¥いく/べき」/と¥いふ¥あひだ、「¥さて/は¥あんぺい¥ござんなれ」/とて、¥やがて¥しゆぎやう/に/こそ¥いで/に/けれ。¥くまの/へ¥まゐり、¥なち−ごもり−せ/ん¥と¥し/ける/が、¥まづ¥ぎやう/の¥こころみ/に、¥きこゆる¥たき/に¥しばらく¥うた/れ/て¥み/ん/とて、¥たきもと/へ/こそ¥まゐり/けれ。¥ころ/は¥じふにんぐわつ−とをか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥ゆき¥ふり−つもり、¥つらら¥い/て、¥たに/の¥をがは/も¥おと/も¥せ/ず。¥みね/の¥あらし¥ふき−こほり、¥たき/の¥しらいと¥たるひ/と¥なつ/て、¥みな¥しろたへ/に¥おし−なべ/て、¥よも/の¥こずゑ/も¥みえ−わか/ず。¥しかる/に¥もんがく¥たきつぼ/に¥おり−ひたり、¥くび−きは¥つかつ/て、¥じく/の−しゆ/を¥み/て/ける/が、¥にさんにち/こそ¥あり/けれ、¥しごにち/に/も¥なり/しか/ば、¥もんがく¥こらへ/ず/して¥うき−あがり/ぬ。¥すせんぢやう¥みなぎり−おつるP318¥たき/なれ/ば、¥なじか/は¥たまる/べき、¥ざつと¥おし−おとさ/れ、¥かたな/の¥は/の/ごとく/に、¥さ/しも¥きびしき¥いはかど/の¥なか/を、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ、¥ごろくちやう/こそ¥ながれ/けれ。¥とき/に¥うつくしき¥どうじ¥いち−にん¥きたつ/て、¥もんがく/が¥て/を¥とつ/て¥ひき−あげ¥たまふ。¥ひと¥きどく/の¥おもひ/を¥なし/て、¥ひ/を¥たき¥あぶり/など¥し/けれ/ば、¥ぢやうごふ/なら/ぬ¥いのち/で/は¥あり、¥もんがく¥ほど−なく¥いき−いで/ぬ。¥だい/の¥まなこ/を¥み−いからかし、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥われ¥この¥たき/に¥さんしち−にち¥うた/れ/て、¥じく/の¥さんらくしや/を¥み/て/う/と¥おもふ¥だい=ぐわん¥あり。¥けふ/は¥わづか¥ごにち/に/こそ¥なれ。¥いまだ¥なぬか/だに/も¥すぎ/ざる/に、¥なにもの/が¥これ/まで/は¥とつ/て¥きたれ/る/ぞ」/と¥いひ/けれ/ば、¥きく¥ひと¥み/の−け¥よだつ/て¥もの¥いは/ず。¥また¥たきつぼ/に¥かへり−たつ/て/ぞ¥うた/れ/ける。¥だいににち/と¥まうす/に、¥はちにん/の¥どうじ¥きたつ/て、¥もんがく/が¥さう/の¥て/を¥とつ/て、¥ひき−あげ/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥さんざん/に¥つかみ−あう/て¥あがら/ず。¥だいさんにち/と¥まうす/に、¥つひに¥はかなく¥なり/ぬ。¥とき/に¥たきつぼ/を¥けがさ/じ/と/や¥びんづら¥ゆう/たる¥てんどう¥ににん、¥たき/の¥うへ/より¥おり−くだら/せ¥たまひ/て、¥よ/に¥あたたか/に¥かうばしき¥おん=て/