大東亜戦争 少国民詩集




僕らは昭和の少国民だ


僕らは昭和の少国民だ

僕らは昭和の少国民だ。
見ろ見ろ、時代の少国民を。
太陽――僕らの日章旗、
打ち振り打ち振り行進、進め。

ああ、見ろ偉大な東亜の今を。
空だ、青空、アジヤの空だ。
陸だ、大陸、アジヤの陸だ。
海だ、大洋、アジヤの海だ。

清明――僕らは正気に生きる。
忠誠――僕らは天地に誓ふ。
雄大――僕らは四方を望む。
崇高――僕らは祖国に殉ずる。

質実――僕らは簡素を忍ぶ。
剛健――僕らは力を養ふ。
堅忍――僕らは苦難に堪へる。
錬成――僕らは鍛へて克つのだ。

僕らは継ぐのだ、肇国精神。
僕らは承けてる、祖先の血統。
僕らは見て来た、興隆日本。
躍進、躍進、躍進しよう。

僕らは飛び立つ翼を張つて、
僕らは見つめる、羅針と星を。
僕らは闘ふ、戦車で、銃で、
潜航、爆撃、突進する。

僕らは学ばう、日本国史、
国語だ、科学だ、――僕らは育つ。
僕らは神話を創造する。
僕らは栄と光を思ふ。

僕らは文化の使節となる、
僕らは資源を開発する。
僕らは福祉を増進せしめる。
僕らは理想を実現する。

僕らは昭和の少国民だ。
見ろ見ろ、時代の少国民を。
鍛へろ鍛へろ、鋼の意志に、
ひらけよ桜と、純なる感情。


誓へこのときこの八日

けふだ、大詔奉戴日、
ああ、あの時だ、あの八日。
宣戦布告、あの電波、
朝のラジオのあのマーチ。

直立不動、しんとして、
涙ながれた、僕たちは。
天皇陛下万歳と、
そして叫んだ心から。

僕らは踏んださくさくと
しろいきびしい霜ばしら。
ただ感激にこみあげて、
誰も口もとふるへてた。

つぎつぎひびくあのニユース、
ハワイ、香港、マライ沖。
あらしだ、雲だ、太平洋、
大きアジヤの国生みだ。

けふだ、大詔奉戴日、
誓へ、このとき、この八日。
立て、錬成だ、行進だ、
こぞれ世紀の少国民。


大東亜地図

おい、君、遊びに来ないか、僕のうちに、
とても大きな世界地図があるんだぜ。

地図を壁一面に貼つて、そして、
毎日、僕はラジオや新聞とにらめつくらだ。

旗を書くんだ、僕は日の丸の旗を、
占領、戡定と聞くとすぐと、こんな「はた」を。(図省略)

それから、「はうだん」 だ、砲撃、侵入、ぐんぐんと、どかんだ、
それから「ひかうき」 だ、「せんすゐかん」 だ、愉快だなア君。

爆撃、雷撃、ブルルンルン、グワンだ、
敵前上陸、不沈艦轟沈、陥落。

見たまへ、君、大陸は「ひのまる」 ばかりだ、
フイリピンだつて、マライだつて、ビルマだつて、南洋だつてさうだ。

「はうだん」 だ、「ひかうき」 だ、「せんすゐかん」 だ、さうださうだ、
それから「らくかさん」 だ、どうだ、見ろ、急降下だ。

ハワイだ、ミツドウエーだ、アリユーシヤン、マダガスカルだ、
パレンバンだ、メナドだ、モレスビーだ、シドニーだ。

僕は日まで月まで書きこんどくんだ、
僕は塗る、塗りかへるんだ、点と線ばかりぢやないんだ。

すばらしいの、何のつて、君、
大東亜共栄圏なんだもの。

僕の脳髄はそのまま地図なんだぜ、
カナダだつて、スエズだつて、パナマだつて
もうとうに塗りかへてるんだぜ。


東亜の児童

少国民だ、少国民だ、僕たちは、
東亜の児童だ、手をつながう。
  大きな太陽、いま朝だ。
  見ろ見ろ、世紀のあを空だ。

少国民だ、少国民だ、僕たちは、
東亜の児童だ、手をつながう。
  緑だ、万里の大陸だ。
  太平洋なら黒潮だ。

少国民だ、少国民だ、僕たちは、
東亜の児童だ、手をつながう。
  誰でも来い来い、輪になつた。
  国々、島々、輪になつた。

少国民だ、少国民だ、僕たちは、
東亜の児童だ、手をつながう。
  日本児童が叫ぶんだ。
  東亜の子供よ集れだ。

少国民だ、少国民だ、僕たちは、
東亜の児童だ、手をつながう。

世界はよくなる、ほんとにだ、
見ろ見ろ、よくなる、ほんとにだ。


アジヤの青雲

一、
仰げよ、この空
アジヤの青雲
今こそ輝け、御稜威は涯なく
 アジヤ、アジヤ、
すなはち日本、正義をかざせば
立ちたり十億、挙つて奮はん。
 アジヤ、アジヤ、
 アジヤの青雲。
二、
乗り切れ、この潮
アジヤの海原
資源は豊けし、水天はるかに
 アジヤ、アジヤ、
今こそ国生み、船満ちつづけて
崎々島々、拓きに拓かん。
 アジヤ、アジヤ、
 アジヤの海原。
三、
文化よ華咲け
アジヤの大陸、
東に道あり、これ我が伝統、
 アジヤ、アジヤ、
興亜の大業、敢へてし遂げなば
秩序と平和は、呼ばずも来らん。
 アジヤ、アジヤ、
 アジヤの大陸。
四、
集まれ、新たに
アジヤの民族、
歓呼よどよもせ、誓へよ善隣、
 アジヤ、アジヤ、
すなはち万邦、所を得しめて
共存共栄、われひと歌はん。
 アジヤ、アジヤ、
 アジヤの民族。


あの声

君が代歌ふあの声は
インドネシヤの少国民、
椰子の葉風に、潮鳴に
声を合して歌ふのか。

白地に赤く染めぬいた
日の丸かざし、進むのか、
行けよ愛国行進曲、
列を正して歌ふのだ。

じつにすなほなあの調子、
インドネシヤと誰がいふ。
まるでそつくり、あのラジオ、
国民学校、僕の組。

強い日射の鋪装路で
インドネシヤは歌ふのだ。
ああ清朗の朝雲に、
ああ幽遠の神の代を。

声だ、あの声、あの肌に
おなじつながる血のながれ、
おい兄弟と駈け寄つて、
すぐと握手だ、スクラムだ。

南十字の真下でも
立つか東亜の少国民、
椰子の葉風に、潮鳴に
建国体操いまどよむ。




くれなゐ燃ゆる珊瑚礁、
みどりの椰子にほのぼのと
横雲かかる清らかさ、
海には日あしのぼつたと。

金にかがやく朝ぼらけ、
波は正面に幅つけて、
艦から鳴らす君が代の
喇叭がじつによかつたと。

布哇襲つたかへりみち、
グワムもウエーキも見舞つたと
友の寄越した年賀状、
すばらしいなと羨んだ。

僕のあの友、今ごろは
どこで食べてるパンにジヤム、
赤道越えて何千里、
まはつて出たか大西洋。

士官のたまご候補生、
短剣吊つて、白の服、
直立不動、挙手してる
あの正装が偲ばれる。

山本海軍大将に
僕がすきなはこの友だ、
僕の脳裡にこの二人
帝国海軍背負つてゐる。



ハワイ大海戦


ハワイ大海戦


天に二つの日は照らず
凌ぐは何ぞ星条旗、
大詔くだる時まさに
此の一戦と衝き進む
疾風万里太平洋、
目指すはハワイ真珠湾。

誰か思はむ暁の
夢おどろかす爆撃を、
つんざく雲の切れ間より、
見よ轟々と攻め襲ふ、
必殺の雷、海の鷲、
しんしん迫る潜航艇。

神か人かも身を捨てて
千古に徹るその命、
何をか哭かむ、尽忠の
ああ荒み魂、火の柱、
地軸も裂けよ艦共に
たちまち砕く敵主力。

天の下せる懲罰を
今こそ知れや米艦隊、
世紀の決意すでにして
凱歌はあがるこの八日、
一望万里太平洋、
我あり、臨む大東亜。


Z旗

仰げ、Zだ、Z旗だ、
なんで忘れよあの旗を。
日本海の殲滅戦、
旗艦三笠のあのマスト。

今もZだ、浪高く、
あらし吹き越す太平洋。
諸員整列、りうりやうと、
喇叭高鳴る海と空。

待ちに侍つたる初陣の
ハワイ奇襲だ、爆撃だ。
風に衝き行く波万里、
うなれプロペラ、どこまでも。

母のをしへに身も魂も
君にささげた上からは、
我が機一つに艦一つ、
撃つてうちぬけ体あたり。

今だ、飛び立て、大ゆれに
母艦はなれる海の鷲。
仰げ、Zだ、Z旗だ。
すめらみくにのこの決意。


その時

暴風を衝いて、
大揺れに
空母飛び出す
あの刹那、
ああ、その時のあの気もち。

航路の半ば
飛翔して
占めたとうつた
あの無電、
ああ、その時のあの気もち。

緒戦だ、死ねと
神かけて
一か八かを
のした時、
ああ、その時のあの気もち。

山の背面
すれすれに、
なだれをうつて
飛び越えた
ああ、その時のあの気もち。

ひと目だ、ここだ、
真珠湾、
だんと一弾
ぶつぱなす
ああ、その時のあの気もち。

ただ、この時と、
念かけて
今だとやつた
あの刹那、
ああ、その時のあの気もち。


海軍魂


皮を斬らして肉を斬り、
肉を斬らして骨を斬る。
必殺の剣君知るか。
これだ、この胆、この捨身。

Zかかげたむかしから
守りつたへたこのをしへ。
百発しかも百中の
腕だ、この的、この狙ひ

敢て真向ふ敵にして
比率が何ぞ、量何ぞ、
轟沈、爆破だアんだんと
今だ、この弾、この気ぐみ。

水づく屍と覚悟すりや
いつもほがらな面だましひ。
とどめだ、敵を刺すまでは
死ぬな、この時、この誠。

皮を斬らして肉を斬り、
肉を斬らして骨を斬る。
必殺の意気、君知るか、
これだ、この胆、この捨身。


九軍神

「では行きます。」と出て行つた
ああ、九柱の軍神。
サイダアの瓶ガチヤガチヤと
さげて鳴らして「行きます。」と。

行つて還らぬその門出、
必ず果つるその命。
願ふ武運は若ざくら
影ものこさぬその爆死。

我からかねて願ひ出た
ああ、あの気量、腕と胆、
胆より熱いあの誠、
ああ、報国の初一念。

母にも告げずひとに秘め、
待つたはただにその最期、
天皇陛下万歳と
そろつて死ぬるその誓。

昼の雷撃それのみか、
はやる心を圧ししづめ、
潜む闇夜の真珠湾、
月の出前は長かろに。

時を待つ間の手あそびと
寄木細工はどうしたぞ。
ああ、母さんと一言葉
誰が言つたか誰しらず。

敵轟沈の火の柱、
のこつた誰が見たのやら、
「我今つひに成功す。」
無電は絶えたふつつりと。

小型潜艦あやつつて、
では行きますと出て行つた
ああ、あの特別攻撃隊。
つひにかへらぬあの五隻。


旗艦

旗艦はいつも何処にゐる。
ああ、大東亜この戦
聯合艦隊何処にゐる。
だあれも 僕も知りやしない。

旗艦は今は何処にゐる。
山本五十六大将の
双眼鏡は何見てる。
だあれも 僕も知りやしない。

太平洋のまん中か
内地の沿海 野母の崎
或は支那海 印度洋
だあれも 僕も知りやしない。

東西南北何万浬、、
どんな大きな構想で
どこで作戦してるやら、
だあれも 僕も知りやしない。

旗艦は だけど 巍々として
聯合艦隊率ゐてる。
ああ 大将旗なびかした
あの砲塔と高やぐら。

旗艦の命令 放射線
アリユーシヤンにも飛んで行く、
または セイロン マダガスカル
無電一つでぐわんといく。

旗艦はあげるZ旗を、
旗艦は飛ばす索敵機、
旗艦は進む真つ先に、
だけど だあれも知りやしない。

旗艦は建てる日の丸を、
世界の地図に染めてゆく、
旗艦は夢む君が代に
前古未曾有の観艦式。

旗艦の意志は鋼鉄だ、
ぐうんと突き出す大巨砲
眼玉はいつも睨んでる。
七つの海を圧してる。


クワンタン沖の思ひ出

ほら、煙突のまん中へ、
突つこむ姿勢、急降下、
あの猛練習あつてこそ、
必死に遂げた体あたり。

雷、爆撃の凄まじさ、
マライは何処だ、クワンタンは、
不沈戦艦何ほどと、
襲ひかかつた五機三機。

何がプリンス・オプ・ウエルス、
何がレパルス、今見ろと、
英の伝統一撃に、
眼に物見せたあの度胸。

ハワイの真珠ぶつ潰し、
また轟沈だ、直ぐ後だ、
投げた花束さんさんと、
黒い重油の波の上。

英の提督フイリツプス、
するする落ちてくあつけなさ、
空翔けぬけて見て来たと、
えらい元気だ、落ちつきだ。

逆にふきたつスコールか、
一秒、何万何干発、
あの煙幕に、火柱に、
胆だ、クワンタン、体当り。


ソロモン夜襲戦軍歌

曳光弾の影しろく
不気味にあがる海のうへ、
砲塔高く今行くは
まさしく敵の艦列と
肉薄すでに突き進む。

乾坤これや一擲の
すなはちこれぞ桶狭間、
寡をもて衆によく当る
奇襲の極意将た知るや、
早や颯々と敵の中。

数度の敗を糊塗せむと
むなしく奮ふ反撃か、
北上しつつ陣傲る
英米濠の一として
闇夜はそれと気もつかず。

蓋しは昼の空爆に
ほとんど沈む気怯れか、
新装空母うしなひて
魂や消えたる惻々と、
近づく我をつゆ知らず。

突如と起る砲撃に
あわてふためくひますらや、
瞬時に滅ぶ短夜は
まして夜戦のうつくしさ、
五彩の火のみ交錯す。

外典のうちにくらぶれば
夢まぼろしか、電か、
ツラギの瀬戸の雲晴れて
何驚かす潮騒ぞ、
ああ、ソロモンの夜襲戦。


言葉

「轟沈」といふ言葉を聞いた時、
僕のたましひは爆発した。
「自爆」といふ言葉を聞いた時
僕の心臓は一塊の火となつて落ちて行つた。
何とすがすがしい一本の「雷跡」よ、
ああ、「戡定」はボルネオの大太鼓の音で終止した。


還らぬ偵察機

嵐かがやく珊瑚海、
浩蕩たりや幾千里、
雲より出でて雲に入る
我れは一羽の偵察機。

やはか逃さむ、弾幕に
それぞと知つた視野の影、
空母の二艦中にして
敵もさるものヂクザク陣。

孤立無援の濠洲と
知つてか来るその備、
旗艦はおろか我が撃たば、
まさに潰えむ空と海。

見よや無電をうちつづけ
天晴れ味方導くを、
還らば保つガソリンを
なにか惜しまむ決死の身。

天に沖する火のはしら
自爆ぞ、今ぞ、つはものぞ、
一発必中体あたり
音もとどろに轟沈す。

嵐かがやく珊瑚海、
浩蕩たりや幾千里、
旭日いよよ隈なくて
つひに還らぬ偵察機。



空の軍神


空の軍神

ああ、雲ひらく大東亜、
早や先駆くるしののめに
茜は映ゆる日の丸や、
長翔すでに幾千里、
鬼神と畏れ仰がれし
中佐の機翼今いづこ。

ああ、シンゴラの空遠く
飛行の基地を奪はむと、
将た兵団を援護して
阿修羅と勢ひ戦へば、
武勲はとどろシヤムロ湾、
中佐の機翼今いづこ。

ああ、純白の落下傘
神兵くだる、この時と
油田は目ざす高櫓、
目守りて羽搏つつかのまも
陣形ゆゆしパレンバン、
中佐の機翼今いづこ。

ああ、益良夫が火のみ魂
爆撃雷撃物かはと
見よさしちがふ戦闘機
たちまち一機射落して
遂にアキヤブの潮●(サンズイ+「區」)や、
中佐の機翼今いづこ。

ああ、それ、将は任重く
部下いつくしむ子のごとし。
敵に手向くる寛濶は
また花投ぐる波のうへ、
げに軍神の名も高き
中佐の機翼今いづこ。


けふぞ観兵式

正大、霜は天に満ち、
地にして菊は荘厳す。

時維れ正に大東亜興隆の朝、
国の秋。

兵みそなはす原頭の
今澄みわたるこの神気。

うたすは白馬耿として、
嚠喨たりや喇叭の音。

ああ、天皇の坐すところ
億兆帰一、兵強く。

大陸軍の在るところ
儼たり軍旗赫奕と。

剣影、軍靴、戞々音、
まさしく戦時、この沙塵。

天に飛行機、地に戦車、
爆々、囂囂、轣轆音。

歩武正々と列は行く。
威儀堂々と軍は行く。


銃を高く

銃を高く、
銃を高く、
銃を高く、
銃を高くさしあげ、
おお、高くさしあげ、
渡河する兵隊、
膝まで、腰まで、
ああ胸元まで、
泥と水、血と飛沫にひたつて、
づんづんと、づんづんと進む。兵隊、兵隊、兵隊。

銃を高く、
銃を高く、
銃を高く、渡河する兵隊、
タタタタと連続する機関銃音、
ピユンピユンと飛来する弾丸、
ああ、その敵の正面を切つて。

僕は見た、
トオキイの映画ニユース、
嵐にうごく椰子、ゴム、噴き出る白煙、
空は澄んで、おそらくは、熱帯の原色、
光だ、音だ、ああ、発射光、断雲。

兵隊は頑張る。
歯をくひしばつて頑張る。
両つの脚でしつかと身体を支へて、
流されまいと、仆れまいと、
渡り切るまで、渡り切るまで、頑張る。
射たれても、射たれても、応へない頑張り。
鉄のやうな兵隊の意志、
何ものでもはじきかへす胸板、
強烈な日の直射をい反す
鉄兜。

ああ、さうしてきつちりと締めこんだ、
革帯、――短剣、薬嚢。

兵隊は畏れない、
眼はらんらんと光つて、
歯を喰ひしばつて、
兵隊は皇国の気魂だ、
沈勇と剛胆、
堅忍と勇猛、
ああ、見ろ。
銃を高く、
銃を高く、
銃を高く、銃を高く、渡河する兵隊。


工兵魂

断崖絶壁攀ぢのぼる
工兵を見よ、工兵を。

噴進筒投げあげろ、
麻索攀登さあはじめ、
鋼索梯子だ組立だ、
猿のやうなその迅さ。
蟻かとつづく頂辺は。

果敢な渡河の作戦の
工兵を見よ、工兵を。

張れ濠々と発煙弾、
そら鉄舟だ、そら錨、
よいか橋板、舟橋だ。
さあ門橋だ、重門橋。
戦車よ進め、ぐわつぐわつと。


軍馬南進

赤道越えて雲や海、
よくぞ軍馬の船の旅、
流るる汗は滝のごと
拭いても雫、また雫。

きのふは北の大陸に
あげた嘶き、あの勲、
命を共に投げ出した
千山万河忘らりよか。

太平洋を乗りきつて
仰ぐ南の十字星、
勇みに勇み出たからは
頼むぞまたも一苦労。

暑熱にうだる秣桶、
蒸るる馬欄の馬いきれ、
兵でも堪へぬ日中は
眼もくらまう、身も痩せよう。

スコール過ぎた甲板に
せめておまへの口とつて、
歌ふは愛馬進軍歌、
たてがみ分けて涼まうぞ。

ああ、常夏の東印度、
椰子や油田の高櫓、
はるばる遠く来て見れば
嵐になびく日のみ旗。

赤道越えて雲や海、
今ぞ伸びゆく大東亜、
勝鬨あげてまた万里、
嶋から嶋へ進むのだ。


マライ攻略戦


雲か山かと見わたして
マライは今ぞ十字星、
万里の潮乗り越えて
船は満ちたり輸送団。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。

巨砲、要塞何ものぞ、
難攻不落何かある。
待て東洋のジブラルタル、
シンガポールの大崩壊。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。

敵の虚を衝く作戦の
神速果敢誰か知る、
ああ、シンゴラに、コタバルに、
早も輝く鉄兜。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。

不沈戦艦屠り去る
クワンタン沖の猛爆に、
相呼び応へ突破する
泰と英との国境線。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。

げにやとどろと押しくだる
三道にしてまつしぐら、
疾風木の葉まくごとく、
奇襲、強襲、また夜襲。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。

象の足跡もとめては
ジヤングル深く這ひ潜り、
擬装の戦車休止して
裸に綴る椰子の水。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。

胸を没する湿地帯、
鰐棲む淵も何のその、
爆破の直ち架橋して
泥と血に染む人柱。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。

君にささぐる一身は
縦し瘴癘の鬼となれ、
などかは死なむ、烈々と
たぎる誠ぞ、たましひぞ。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。

弾に裂かるるゴム林の
光といきれ時闌けて
空くつがへすスコールの
来らば来れ我往かむ。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。
10
つづくトラツク、自転車隊、
包囲の網を圧しつつ、
海上機動波蹴つて
迂回打尽すクワランポー。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。
11
五旬これただ南下して
すなはち長駆千余キロ、
坦々たりやジヨホールバル、
指呼に且つ見るコースウエー。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。
12
友の遺骨を犇と抱く
ああ、渡河戦の闇今宵、
鉄舟いくつ粛々と
待つは緑の信号燈。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。
13
天に冲する黒けむり、
また声ありやウビン島、
爆風荒び、肉飛びて、
吼ゆる火砲の発射光。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。
14
かねて期したる突撃に
ブキテマ高地陥せよと
猛攻、死闘、必中弾、
あがる凱歌もただ涙。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。
15
紀元の佳節いま遂に
眼下に展くシンガポール、
暴戻彼の蟠る
セレタの浮城将たいづこ。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。
16
英の慴伏前にして
興りに興る共栄圏、
不動の基地を此処に据ゑ
雲に燦たり日章旗。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。
17
大きアジヤの国生みや、
民十億の朝ぼらけ、
我が天皇のしろしめし
いよよ栄ある昭南島。
  怒濤のごとき我が軍の
  進撃を見よ、電撃を。


八達嶺(朗読詩)

わたしは記憶してゐる、あの写真を、光沢紙に黒く煌々と焼きつけてあつたあの画面を、八達嶺だ、さうだと、今も思つてゐる。記憶してゐる。

嶮しい山嶺であつた。逆光線の峻嶺、片面の光るばかりの白い山襞、その山峡、おそらくは高原であつたであらう。さうだ、さうして、風が、樹や草を(或は石を)颯々と吹きひるがへしてゐた。

黙々として斜めにつづいてゐた騎馬が一列、皇軍だ、山砲を曳き、弾薬函を車輛に積み、後から後からと続いてゐた。八達嶺だとわたしはあの時瞳をかがやかした。

ああ、夏のやうに画面はかがやき、秋のやうにまた澄みきつてゐた。風の響が虫の音がきこえさうであつた。大陸の雲が、雲が高くかかつてゐた。

どんな兵が、どんな面をしてゐたか、わたしは知らない。いつだつたか、何についてゐた写真かも。同じ馬と、同じ砲と、さうして同じ尖帽と、同じ服とだけだ。

背中に銃を負ひ、乗馬で、手綱を操る兵、先頭を切つた一人、その横顔、わたしは息をはずませて見入つた。誰かに似てると思つたり、隣村の弥つちやんかと思つたり、した。

ああ、黒く黒く焼きつけてあつた印画、八達嶺、軍馬が進み兵が進み、山砲が進んでゐた。

支那事変のはじめの頃、(あの頃を忘れてはならない。あの新鮮性。)ああ、あの八達嶺の、ああ黒白、嵐と光りとがわたしの網膜にある。



東条さん


東条さん

キヤベツに白菜、大蕪、
夜あけの青物しこたまだ。
「お早う、その山、自然薯か。」
お馬で声かけ、とつとつと、
ゲエトル宰相気らくだな。

朱描きでペガサス描いてある。
ガソリンスタンド、雪のあさ。
「お早う、内儀さん、お寒いね。」
お馬で声かけ、とつとつと、
みんなの宰相ほがらかだ。

鮪だ、秋刀魚だ、飛の魚、
魚がし仲仕はやつさもさ、
「お早う、今日は、威勢だね。」
お馬で声かけ、とつとつと、
背広の宰相ハンチング。

帝国議事堂、曲り角、
少年少女に手をあげる。
「お早う、禊か、よし、行つた。」
お馬で声かけ、とつとつと、
僕らの宰相、ほら駆けた。


まかせろ

僕のをぢさん、陸軍だ、
ハンドルにぎつて、重戦車。
  なんだ、トーチカ、突撃か。
  俺にまかせろ、さう言つた。

僕の兄さん、海軍だ、
いいな、少年飛行兵、
  ゆくぞ、雷撃、体あたり。
  俺にまかせろ、さう笑ふ。

兵は空から落下傘、
畳み畳んで、背に紐、
  見ろよ、油田か、パレンバン
  俺にまかせろ、さう飛んだ。

またも、軍神、潜航艇、
生きてかへらぬ大和魂。
  討てよ、轟沈、敵戦艦、
  俺にまかせろ、さうきめた。

僕もそんなら少国民、
野球選手だ、うん、さうだ。
  なんだ、ヒツトか、だいぢやうぶ、
  おれにまかせろ、カーンだ。


鷲のお土産


象に乗つて来た兵隊さん
片手でしつけい、にこにこだ。
  ジヤングル ジヤングル 南風。

きのふ パンパン、戦して、
空から 不時着、陸の鷲。
  ジヤングル ジヤングル 南風。

ほうら 見ろ見ろ、お土産だ、
マンゴーに、椰子の実、しこたまだ。
ジヤングル ジヤングル 南風。

海へ落ちても、兵隊さん、
お船で送られ、島廻り。
  ドンブラコツコ、ギツチラコ。

いいな、マライは、子供まで、
手に手に 日の丸、丸木舟。
  ドンブラコツコ、ギツチラコ。

みんな 集まれ、お土産だ、
バナナに コーヒー、それあげよ。
  ドンブラコツコ、ギツチラコ。


バウバウ

バウバウ よい国、ブートン島
金ぴか帽子に 槍刀、
真黒 素足の行列だ。
王さま、御家来、ヂヤンボラボン。
  日の丸 万歳、
  兵隊さん、
  東の国からようお出で。

バウバウ 来て見な、ブートン島、
鸚鵡やいんこや極楽鳥、
緑の林に飛んでます。
お伽のお国に飛んでます。
  日の丸万歳、
  兵隊さん、
  喇叭で分列君が代だ。

  註 ブートン島は、南洋のセレベス島の直ぐ東にある小さな島です。その島の都バウバウには王様がゐられます。


関門海底トンネル


電鍵ひとつヂリと押す
光栄の人誰でしよか、
関門海底トンネルの
最後の爆破今ぢきだ。
  東亜のダイヤ、黒ダイヤ、
  貨車につみこめ、山ほども。

警笛鳴らす試運転、
名誉の機関士誰でしよか、
世紀の列車動かして
最初の驀進、驀進だ。
  東亜のダイヤ、黒ダイヤ、
  貨車につみこめ、山ほども。

嵐も瀬戸の潮騒も
響かぬ洞の南北、
九州、本土、連絡の
レールは走る、まつすぐに。
  東亜のダイヤ、黒ダイヤ、
  貨車につみこめ、山ほども。

科学日本の人ばしら
戦士のみ魂ありがたう、
かがやく輪型つぎつぎに
こだまをかへす銀の壁。
  東亜のダイヤ、黒ダイヤ、
  貨車につみこめ、山ほども。

世界にまたとたぐひない
開通の日はいつでしよか、
世紀の列車ぐわうぐわうと
見ろ見ろ驀進、驀進だ。
  東亜のダイヤ、黒ダイヤ、
  貨車につみこめ、山ほども。


浅間丸

 還つて来た、還つて来た。待望の浅間丸が還つて来た。

 ああ、巨大な客船、白十字の尾燈、通風筒の赤い耳の孔、煙吐く大煙突、ぼうと太笛がこだまして、黎明、濃藍色の潮を白く白く掻き立てながら、日の丸だ、日の丸だ、日の丸だ。万歳。

 日本は剛毅だ。祖国日本の精神は森厳だ。日本人たる勇武、日本人たる誇を以て、生き抜いた、克ちぬいて来た同胞。微塵も悪びれず、犯されず、正大に神州の気を身に鍾めて来た在英米の同胞達。

 ああ、よくぞ還つて来て下さつた、御無事で、健康で。少年はまた少年同士で、さうだ、さうだ、さうだ、さうして第二世たち、おお、君たち、ここが日本だ、君たちのほんたうの祖国だ。さあ、一緒に歩かう。教練だ、錬成だ、肩を組まう、諸君。

  ア、イ、ウ、工、オ、
  カ、キ、ク、ケ、コ、
 ロレンソ・マルケスを出て、いよいよ阿弗利加の南端を巡ぐる時、印度洋をわたり、スマトラの海峡にさしかかつた時、君たちに莞やかに日本語を教へた先生、それはめつきりと白髪のふえた野村大使ではなかつたか。

 ああ、日の丸の嵐の中の昭南島、あの八ケ月前はどうであつたか、英米蘭の島々を飛石づたひに飛行機で飛ばれた来栖大使、その飛石は最早や日本のそれなのだ。どんなだつたらう、どんなに眼が輝き、声がつまり、血を肉をふりしぼつた万歳だつたらう。嵐だ、嵐だ、どこもかしこも日の丸の嵐だつたのだ。

 赤道を越えて、欧洲航路から帰る船の上で東を望むと、まるで、天に冲する火柱のやうに日本の存在が仰がれるといふ。

 ああ、今は、その赤道をそのまま縦にしたほどの巨大な火の柱となつて、ああ、日本は興隆しつつあるのだ。

 同胞の少年たち、君たちもさう感じるだらう。あの映画ニユースを、毎晩のやうに眺め入つたといふ君たち、君たちは、日本がどんなに雄大な構想でこの戦争を遂行しつつあるか、世界の維新、新らしい現代の神話を創造しつつあるか、空軍が、海軍が、陸軍が、どんなに豪快に、精密に敢闘し、連勝しつつあるか、どんなに崇高に行為しつつあるか、君等もよくわかつたらう。

 信ぜよ、日本は神国なのだ。仰慕せよ、祖国は万古無比の皇室を戴いてゐるのだ。

 日本、日本、日本は此処だ。
 ぼううわうと汽笛の鳴るこの湾、この潮、この霧、この星、この海港、ああ、この海堡、この防波堤、この赤いブイ、ああ、ここが君たちの日本なのだ。

 夏、夏、夏、

 かがやく南の嵐、秀麗の富士、ああ、恰度いま、朝日が、そのまつしろな肩にさし当つた。見よ、あの豊旗雲の上に夏なほとけぬ堅雪が白皚々としてゐるのを。
 浅間丸、浅間丸、万歳。


香港陥落映画集

女の俘虜が犬曳いて
風に金髪吹かれてる、
ふてて行くのか、棄鉢か、
ニユース映画で笑つてる。
 見ろ、香港が陥ちたのだ。

タアバン赤く巻きつけて
でかい図体、印度兵、
両手あげあげ駈けて来る。
おいでおいでとこちらもだ。
 見ろ、香港が陥ちたのだ。

ユニオンジヤツクひきおろし、
はや、へたへたと芝のうへ。
総督官邸巍々として、
なまじ日の照る潮の青。
 見ろ、香港が陥ちたのだ。

裸でくぐる機雷網、
やはかかかろか日本兵。
大和魂身をもつて
東亜の信示すのだ。
 見ろ、香港が陥ちたのだ。

燈と星のちりばめた
栄華の港いま何処、
ガソリンタンク濠々と
我から焦がす火と煙。
 見ろ、香港が陥ちたのだ。

阿片の鬼にさいなまれ
肋で泣いた百年目、
今こそ人が勝つたのだ。
ああ、日の丸の満嶋飾。
 見ろ、香港が陥ちたのだ。


ガンジー

ガンジー、
ガンジーは坐つてゐる。
あの怪しげな紡車のそばで
ガンジーは瞑想に耽つてゐる。
爺さん、何を考へてゐるのか、
横顔のガンジー。
ガンジーは絶対の無抵抗だ。
おそろしいほどにこやかなガンジー。
ガンジーは国民会議派、
ああ、寧ろ仏陀なのだ。
ガンジーは逮捕せられた、
全インドは煮えかへる坩堝となつた。
ガンジーは身を殺さうとする。
ガンジーは死んでも生きる。
ガンジーは信念だ、
インドは必ず独立する。
ガンジーに武器はない。
澄みに澄んだ紡車の音だけなのだ。
ああ、ガンジーの長い眉毛に
しろい綿ぼこりがふつかかつてゐる。



少年飛行士


少年飛行士

僕等の兄さん、あの人たち、
少年飛行士凛々しいな。
  身ぐるみつけた飛行服、
  切れたまなじり幼な顔。

巣立つ若鷲、あの人たち、
少年飛行士すばやいな。
  南をさすや、また南、
  はるばる霞む太平洋。

光る銀翼、あの人たち、
少年飛行士愉快だな。
  基地から基地へ、また艦へ、
  渡洋爆撃凄いんだ。

空の魂、あの人たち、
少年飛行士健気だな。
  雷撃、爆撃、必中弾、
  ぐわんと捨身の体あたり。

死をも畏れぬ、あの人たち、
少年飛行士若いんだ。
  生の一本だ。無垢なんだ、
  凝つて鍛へた鉄なんだ。

不屈不撓のあの人たち、
少年飛行士剛毅だな。
  ハワイ目がけたあの奇襲、
  クワンタン沖の決死行。

顔をあつめたあの人たち、
少年飛行士厳しいな。
  きつと結んだ唇に、
  いつも重大感じてる。

雲の中ゆくあの人たち、
少年飛行士何見てる。
  たまに覗いた青空に、
  母さんの眼も思ふだろ。

僕らの兄さん、あの人たち、
少年飛行士凛々しいな。
  巣立て巣立てよつぎつぎと、
  さうだ、僕らもこれからだ。


僕らは科学少国民

僕らは科学少国民、
僕らはいつも考へる、
僕らはそして工夫する、
模型を作る、発明する。

なぜに飛ぶのか飛行機は、
いかに潜ぐるか潜水艦、
拠物線は弾着は、
無限軌道はどんなわけ。

何と何とが化合して、
何ができるか、見きはめる。
電気は、音は、光線は、
鋳物は、デイゼル・エンジンは。

僕らの生活、朝に晩、
利用厚生考へる。
いつでも注意し観察する。
それからそれへと創案する。

見よい黒板どう吊るか、
先生の鞭どんな色、
改良リヤカー、紙やすり、
足駄の泥よけ、筆の鞘。

根を見る鉢や、セロフアンに
昆虫を観る函の窓。
そして簡易な顕微鏡、
何でも作る、組み立てる。

僕らは科学少国民、
僕らは戦時の発明者、
そして銃後の建設者、
時代は来てゐる、進んでく。

僕らは仰ぐ天体を、
僕らは探る資源地図、
僕らは東亜の少国民、
僕らはいつも科学する。


少年旋盤工

リングだ、削れ、リングだ、リング、
少年僕ら、旋盤工だ。
削れよ削れ、ピストンリング。
お国の鉄だ、シユツシユと削れ。

この幅削れ、鋼のリング、
少年僕ら、旋盤工だ。
精密機械、兵器のリング、
寸分の鉄だ、ヂリリとつめろ。

命に削れ、お国のリング、
少年僕ら、旋盤工だ。
飛行機、戦車、潜水艦のリング、
ぐわんぐわん削れ、必死に運べ。

日も夜も削れ、その輪のりング、
少年僕ら、旋盤工だ。
ベルトははずむ、まはれよリング、
微塵の鉄が眉毛にかかる。

たゆまず削れ、積め積めリング、
少年僕ら、旋盤工だ。
産業戦士、僕らのリング、
山なす鉄も消耗品だ。

大切に削れ、輝くリング、
少年僕ら、旋盤工だ。
戦時だ、戦時、ピストンリング、
戦は鉄だ、シユツシユと削れ。


造船

船だ、船だ、船が要るんだ、
幾千艘も万艘も要るんだ、
何故つて、君、僕らは
本来の海洋民族なんだぜ。

船だ、船だ、船が要るんだ、
大東亜海が呼ぶんだ、
船をじやんじやん造れ、寄越せと、
要るんだ、船が要るんだ。

船だ、船だ、船が要るんだ、
ああ、豊富な南の物資が
積まれてわんわん唸つてゐるのだ。
麻が、砂糖が、石油が、ゴムがだ。

船だ、船だ、船が要るんだ、
日本から持つてゆく平和産業品、
おうい、自転車だア、薬だ、帽子だ、靴だと、
待ちきつてゐるんだ、インドネシヤの少年たちは。

船だ、船だ、船が要るんだ、
黒潮の潮流を乗り切る、
珊瑚礁の照わかへしに走つて行く、
貨物船が、漁船が、真珠採取船が。

船だ、船だ、船が要るんだ。
ああ、神々の時代のやうに、海を
船で、船でうづめつくすのだ。
潮●(サンズイ+「區」)のつづくかぎり、青雲の棚引くきはみだ。
船だ、船だ、船が要るんだ、

千艘も万艘も要るんだ、だから、
造船技師になるのだ、僕は、
万歳、日の丸、マストは高しだ。


少年海員

僕は海員、セエラー服、
いつも見てゐる水平線。
  甲板さうぢだ、水シヤアシヤ、
  ホースにブラツシ、ゴツシゴシ。

ここはジヤワ沖、みなみ風、
勝つた戦に雲がわく。
  甲板さうぢだ、水シヤアシヤ、
  ホースにブラツシ、ゴツシゴシ。

船は日の丸輸送団、
をどれ黒潮波がしら。
  甲板さうぢだ、水シヤアシヤ、
  ホースにブラツシ、ゴツシゴシ。

行きは戦車に兵隊さん、
またの積荷はゴム、砂糖。
  甲板さうぢだ、水シヤアシヤ、
  ホースにブラツシ、ゴツシゴシ。

何が敵機だ、潜水艦
来たらずどんだ、それ見たか。
  甲板さうぢだ、水シヤアシヤ、
  ホースにブラツシ、ゴツシゴシ。

南十字だ、赤道だ、
共栄圏なら大東亜。
  甲板さうぢだ、水シヤアシヤ、
  ホースにブラツシ、ゴツシゴシ。


無電時代

天に聳える無電塔、
この秋空を君見たか、
戦時だ、しろいあの雲も、
ほら、ひつかかる短波長。

ニユースだ、同盟、U・P電、
ブエノスアイレス、チユーリツヒ、
ああ、リスボンだ、ベルリンだ。

監視船からうつ無電、
偵察機からうつ報知、
濃霧だ、敵だ、たいふう颱風だ。

僕は知つてる、軍艦の
あのすばらしい無電室、
そして思つた、月の出に
轟沈!アリゾナ!うつて来た、
ああ、あの特殊潜航艇。

僕は聴くんだ、殷々と
吼ゆる現地の録音を、
また疾駆する戦車から
しきりに放つ拡声を。

ああ、人間の背丈より
巨大な筒の真空管。
千里二千里切りかへる
声だ、電波だ、中継だ。

また精密の豆装置、
ポツチリ赤い燈を見たか。

戦時だ、そして建設だ、
街路の椰子にとりつけた
歌ふ木に寄る人だかり、
文化宣伝、テレビジヨン、
移動部隊の進軍歌。

さうだ、戦時だ、懸命だ、
世界の電波捉へよと
耳にレシーバー、朝に晩、
トンツ、トンツ、ツートントン、
こちらも負けずにうちかへす。

今だ、じんじん焼き付くる
電送写真それ見たか、

ああ、雷跡だ、電撃だ、
空一面の落下傘、
驀進、戦車白兵戦。
東亜だ、ソ聯コウカサス。

今に見ろ見ろ、無電技師。
僕は、立派な無電技師。


戦ふ医学

輝く明日の薬学者、
僕は世のため人となる。
そして治療者、国の医師、
さうだ、戦時は軍に出る。

戦ふ医学、新世紀、
冷たい床に突き立つて
覆面をする、僕たちは、
菌と戦ふ、接種する。

如何に毒瓦斯うち消すか、
人類の敵前にして
崇い闇夜の炬となるか。
光被するのだこの救。

A、B、C、D、ヴイターミン、
キニーネ、種痘、何でもだ。
マラリヤ、脚気、デング熱、
敵といふ敵を克服する。

外科だ、軍医だ。弾丸と
硝煙のなか進軍だ、
ああ、いさぎよく血にまみれ、
天に照る日を仰ぐのだ。

潜水艦の奥ふかく、
きはどい手術もやつてのけ、
病院船だ、赤十字、
白衣の天使みな友だ。

未来の野口英世が
僕らの中からきつと出る。
仁だ、福祉だ、皇道だ、
我が日本の輝きだ。




白秋全集28第九回配本(第2期二五〜三七巻・別巻一)
一九八七年九月七日発行
定価四五〇〇円
著者  北原白秋
発行者 緑川亨
発行所 〒101東京都千代田区一ツ橋二−五−五
    株式会社岩波書店
    電話 〇三−二六五−四一一一
    振替 東京六−二六二四〇