国引
《既刊の童謡集収録分(=目次に*印のついていないもの)は省略》
- 序
- 日本に於ける新童謡の発生は、祖国日本の伝統及ぴ風土に因由すべきは当然である。
私のとつた童謡の道はこれであつた。
本集は昔噺、神話、伝説をその一にをさめ、民風土俗に属するものをその二に加へた。所謂白秋童謡の根元を為すものである。
その後の近代的廻転は凡て茲より八方に触手を伸ばしてゐる。
なほこの外にもこの種類の作品を集大成したものがあるが、今日までの主要作を如上の人文的意向のもとに網羅し編纂した。
作品十年廿年前の絶版の童謡集、或ひは未だ単行の集に収めなかつたもの及び未発表の新作をも総合した。
北原白秋
《既刊の童謡集収録分(=目次に*印のついていないもの)は省略》
その一昔話・神話・伝説篇
むかし噺
川上
*高い山から
かちかち山の夕焼
かちかち山の春
蟹のお宿
路つくり
雀のお宿
*腰折雀
とんからこ
雀さがし
*トンとカラリと
舌切雀
雀のお手まり
笛と雀
*花咲爺さんと子犬
竹取の翁
かぐや姫
花咲爺さん
鶯姫
山かつぎ
*浦島
*一寸法師
物臭太郎
日永の物臭太郎
*こんころころりん
*おむすびころりん
瘤とり爺
*ぶらぶら爺さん
*鼠の嫁入
*かりうど
*天狗の団扇
*文福茶釜
*鴨鳥権兵衛
*月夜の滝
*国引
*少彦名
九十九島
安寿と厨子王
雀追ひ
*山椒太夫
千匹猿
*驢馬の耳
待ちぼうけ
虎の煙草
その二民話・土俗
*ころころころ橋
鳥追い
左義長
さうらんえ
わらび
てくてく爺さん
お晩さん
低山、小山
雉ぐるま
かへろかへろ
寄り道
ほうほう蛍
閻魔堂
お嫁入り
夢買ひ
なまけ柿
*鈴
*和尚さんと小僧さん
*もの
*大黒さま
*福助さん
*なるほど爺さん
*すべり橋
真夜中
どんぐりこ
かやの木山の
かやの実
七つ坊主
おころり小山
雪のふる晩
雪女
鷺むすめ
ねんねのお里
げんげ草
ねんねのお国
ねんねん唄
- その一 昔噺・神話・伝説篇
- 高い山から
高い山から
谷底見れば、
豆の婆さま
ちよんぼり草屋。
豆の婆さま、
盥を出して、
そこで、ぽちよぽちよ
洗濯なさる。
ながれ、谷川、
ねんねのお里、
桃も咲いてる
向かふとこちら。
高い山から
谷そこ見れば、
けふも朝から
かすみがかかる。
- 腰折雀
たんたん、たたんと
へうたん、たたきや、
お米がいつでも
さらさら、さらり。
あら、たんたんよ、
ほら、たんたんよ。
雀が、雀が、
お腰を折れば、
婆さまたすける、
お礼にまゐる。
その、へうたんよ、
ほら、へうたんよ。
たんたん、たたんと
へうたん、たたきや、
となりの婆さま
きよろきよろ、きよろり。
あら、たんたんよ、
ほら、たんたんよ。
雀に、雀に、
小石をなげる。
腰折雀が
お礼にまゐる。
これ、へうたんよ、
ほら、へうたんよ。
たんたん、たたんと
へうたん、たたきや、
なめくぢ、げぢげぢ
ぞろぞろ、ぞろり。
ひやあ、たんたんよ、
うえへ、たんたんよ。
- トンとカラリと
トンと、カラリと、
カラリと、トンと、
雀機織る向かふの藪で。
そこへ爺さま、手に杖ついて、
お腰たたいて、エツチラござる。
トンと、カラリと、
カラリと、トンと、
窓があいてる。よこがほ見える。
雀かはいや、舌切雀、
そこかここかと、たづねて来たよ。
トンと、カラリと、
カラリと、トンと、
これはようこそ、お爺さまござれ。
ここは竹やぶ、雀のお宿、
お手をとりましよ、お疲れさまや。
トンと、カラリと、
カラリと、トンと、
筬は梭で鳴る、思へばひびく。
よいな、爺さま、おつづらもらふ、
よいな、夕方、雲まで染まる。
トンと、カラリと、
カラリと、トンと、
トンとカラリと、カラリとトンと。
- 花咲爺さんと小犬
ここ掘れ、そこ掘れ、
ちりんとぜ、
黄金にしろがね、
ちやらんとせ。
爺さん、ほくほく、
ちりんとせ、
黄金にしろがね、
ちやらんとせ。
となりの爺さん、
うんとこせ、
瓦に小石が、
こつりとせ。
意地わり、慾ばり、
うんとこせ、
瓦に小石が、
こつりとせ。
- 浦島
肩につりざを
浦島は
けふも岬の岩のうへ。
海の向かふに
立つ雲は
紫ふかい春の雲。
ちらりちらりと
あの中に
白いかもめも光るのに。
いつも、腰簑、
岩のうへ、
海の向かふを見てばかり。
- 一寸法師
一寸法師の京のぼり、
ぬひばり刀にむぎのさや。
えつちら、おつちら、
ほうほけきよ。
一寸法師の川のぼり、
お椀のおふねに箸の櫂。
どんぶら、こつこ、
ほうほけきよ。
一寸法師の春の旅、
のべには菜の花水ぐるま。
えつちら、どんぶら、
ほうほけきよ。
- こんころころりん
こんころころりん
お山の小石、
月夜はころげる
ほそ谷川へ。
こんころころりん
ちひさな小石、
なきなきころげる
ほそ谷川へ。
こんころころりん
ころげる小石、
夜つぴて琴ひく
ほそ谷川に。
こんころころりん。
こんころころりん。
- おむすびころりん
1
おむすびころりん、
ころころりん、
ころりん、小山をころげてく。
おむすびころりん、
ころころりん、
ころりん、砂山、砂に穴。
おむすびころりん、
ころころりん、
ころりん、ころころ、穴のなか。
おむすびころりん、
ころころりん、
ころりん、ころりん、すつとんとん。
2
おむすびころりん、
ころころりん、
爺さん、おむすび投げまする。
おむすびころりん、
ころころりん、
まいにち、お山で日が暮れる。
おむすびころりん、
ころころりん、
ころりん、こんどは重箱だ。
重箱ころりん、
ころころりん、
ころりん、ころりん、すつとんとん。
爺さんころりん、
ころころりん、
ころりん、爺さん、ころげてく。
3
おむすびころりん、
ころころりん、
ころりん、ころりん、すつとんとん。
重箱ころりん、
ころころりん、
ころりん、ころりん、すつとんとん。
爺さんころりん、
ころころりん、
ころりん、ころりん、すつとんとん。
鼠の餅つき、
ころころりん、
ころりん、小山の穴のなか。
爺さんお礼よ、
ころころりん、
ころりん、黄金も臼のなか。
すつとん、すつとん、
ころころりん、
ころりん、小槌も添へてあぎよ。
4
おむすびころりん、
ころころりん、
おかげで爺さん、ほいこらさ。
婆さん、これ見な、
この小槌、
どつさり、お宝うち出そか。
爺さん婆さん、
若くなれ、
ついでに赤んぼ、飛んで出ろ。
お家も出ろ出ろ、
よいお家、
よいことづくしで、すつとんとん。
おむすびころりん、
ころころりん、
今でも、どつかで、すつとんとん。
- ぶらぶら爺さん
ぶらぶら爺さん、なまけもの、
まいにち、ぶらぶら、出てあるく。
ぶらぶら爺さん、山いけば、
雀が二羽ゐてけんくわする。
ぶらぶら爺さん、杖でうつ、
こりやこりやけんくわをしてならぬ。
ぶらぶら爺さん、おどろいた、
雀がおこつてこしをつく。
ぶらぶら爺さん、かへつたら、
それこそお婆にしかられた。
「ぶらぶら爺さん、そぢやないよ。
かはいかはいとなでてあげ。」
ぶらぶら爺さん、そのあした、
出かけりや、め牛がけんくわした。
ぶらぶら爺さん、ああ、さうだ、
かはいかはいとなでてあぎよ。
ぶらぶら爺さん、こりやどうぢや、
め牛が二匹で、つきまくる。
ぶらぶら爺さん、なまけもの、
ぶらぶらあるいてないて来る。
- 鼠の嫁入
「鼠の嫁さま、誰にあぎよ、
かはいい鼠、よいむすめ。」
鼠のお父さん、お母さん、
お倉でちゆうちゆう首を振る。
「鼠なんぞにやられよか、
なんでもおえらい方のそば。」
「鼠の嫁さまさしあげよ、
おてんとさまなら、それよかろ。」
鼠のお父さん、天に行た。
「世界でおえらいあなたさま。」
「いやいや、わしでも、あれごらん、
雲めが出て来りや、もう暗だ。」
「鼠の嫁さまさしあげよ、
雲さん、おえらい、それよかろ。」
鼠のお父さん、雲へ行た。
「おてんとさまより、あなたさま。」
「いやいや、そぢやない、わしや負だ、
風めが吹き出しや、飛んぢまふ。」
「鼠の嫁さまさしあげよ、
風さん、おえらい、それよかろ。」
鼠のお父さん、出かけてく。
「風さん、どうぢや、たのみます。」
「いやいや、この風、吹いたとて、
あの壁ばかりは倒されぬ。」
「鼠の嫁さまさしあげよ、
壁さん、おえらい、それよかろ。」
鼠のお父さん、手をついた。
「流石だ、上には上がある。」
「いやいや、わしとて、壁は壁、
鼠が穴あけ、そら、かじる。」
「鼠の嫁さま、この娘、
鼠にやろぞえ、子の鼠。」
鼠のお父さんお母さん、
なる程、ちゆうちゆう気がついた。
「鼠は鼠で、それよかろ、
やつばり、おえらい、こちや鼠。」
- かりうど
九十九人のかりうどが、
鉄砲かついで、お月夜に。
らららん、らららん、らりるれろ。
どうどうめぐりの山の中、
ひいと啼くのが鹿だろな。
らららん、らららん、らりるれろ。
鹿は何鹿、子もち鹿、
かいもごろりと、もう寝てか。
らららん、らららん、らりるれろ。
待て待て、皆さん、この霧だ、
づどんづどんぢや腹がすく。
らららん、らららん、らりるれろ。
ここらあたりで火を焚いて、
雉の丸焼、ほらどうぢや。
らららん、らららん、らりるれろ。
月はさむざむ、夜はふける、
どうどうめぐりの山の中。
らららん、らららん、らりるれろ。
九十九人のかりうどが、
鉄砲かついで、犬連れて。
らららん、らららん、らりるれろ。
- 天狗の団扇
「高くなれなれ、高くなれ。」
天狗の団扇であふぐなら、
ずんずんお鼻が高くなる。
なんとお鼻のおひよりさん、
天つき雲つき高くなる。
「低くなれなれ、低くなれ。」
天狗の団扇はおもしろい。
ずんずんお鼻が低くなる。
なんとお鼻のおひよりさん、
神楽のお獅子で低くなる。
- 文福茶釜
文福茶釜に
尾がはえた。
雨夜の茂林寺、
藪のなか。
文福茶釜が
面出した。
ゐねむり和尚さん
おどろいた。
文福茶釜が
をどり出しや、
こはれたお寺も
すぐなほろ。
文福茶釜の
綱わたり、
太夫さん、カチカチ、
拍子木だ。
- 鴨取権兵衛
鴨を百羽とろ、鴨取権兵衛、
池に罠張り、そりや九十九羽だ、
鴨は軽鴨、ぱつと飛びあがつた、
権兵衛まかれてお空へあがつた。
空をぶらぶら、備後の津から、
ぷつり綱切れ、落ちたは四国、
為方なくなく、野良うち田うち、
粟にとりつきや、ぴんとはねあがつた。
はつと驚きや、どしんこと落ちた、
天満ころいち、浪花の町だ、
傘屋傘乾す、すげましよ、その柄、
風が吹きあげた、権兵衛と傘と。
吹かれ吹かれて落ちゆくさきは、
そのや都だ、京の三十三間堂、
高い棟からおづおづ見れば、
稚子や舞子のおまゐりざかり。
そこで京中の蒲団を積ませ、
飛んで下ります、やつこらさと、やつと、
眼だま火が出る、蒲団は燃える、
権兵衛焦げ焦げまつくろけに死んだ。
- 月夜の滝
月夜の滝に
うたれてゐるよ、
こどもがふたり、
こどもがふたり。
夜あけの滝に
うたれてゐるよ、
こんがら童子、
せいたか童子。
しやしやしやと滝に
うたれてゐるよ、
おめめもぬれて、
おめめもぬれて。
お山の滝に
うたれてゐるよ、
月夜はあをい、
月夜はあをい。
- 国引
もそろもそろと何を引く、
海の向かふの国を引く。
もそろもそろと何で引く、
綱で引く引く、浜に引く。
浜は遠凪、よい日和、
引くは神様、群れて引く。
出雲稚国、まだ小さい、
国よ来い来い、そろと来い。
あまる新羅のあの出ばな、
鋤で欠き欠き、綱で引く。
もそろもそろと来た国は
一に杵築よ、二に狭田。
三に闇見よ、四には美穂
国よ来い来い、そろと来い。
海ははるばる、日はのぼる、
えいや、神神、国を引く。
- 少彦名
豆の、小豆の蛾のやうな
少彦名の命さま、
すつとつかまる粟の穂に、
粟が撓んだ、弓のやう。
りりんりりんと鈴虫も
鳴いて連れます、夕焼に。
そこで、ひとはね、粟の茎、
少彦名の命さま、
ぱつとはじかれ、飛びあがる。
露といつしよに、飛びあがる。
りりんりりんと虫のこゑ、
白い月夜になりまする。
豆の小豆の、蛾のやうな
少彦名の命さま、
雲に消えます、のぼります。
粟はまだまだ揺れてます。
りりんりりんと鈴虫も
鳴いて連れます、秋かぜに。
- 山淑太夫
- ――柴刈りの厨子王のうた――
ほうほう鳥よ、ほろすけよ、
豆まき鳥よ、豆鳥よ。
山淑太夫の眼はこはい、
柴の三駄もみてたもれ。
- 驢馬の耳
新羅の王さま、驢馬の耳、
寝てもさめても昼も夜も、
すつぽりかぶつた赤頭巾。
アララアン、アララン。
新羅の王さま、驢馬の耳、
知つてゐるのはただひとり、
頭巾こさへたその男。
アララアン、アララン。
新羅の王さま、騎馬の耳、
「生命とるぞよ、話すな。」と
言はれりや言ひたい『驢馬の耳。』
アララアン、アララン。
『新羅の王さま、騎馬の耳。』
やつとこ一声、死にぎはに、
藪でどなつた、その男。
アララアン、アララン。
『新羅の王さま、驢馬の耳。』
風が吹くたび、うごくたび、
竹が声した、伐つちまつた。
アララアン、アララン。
新羅の王さま、驢馬の耳、
山茱萸植ゑます、そのあとで、
だめだ、やつぱり、『驢馬の耳。』
アララアン、アララン。
新羅の王さま、驢馬の耳、
嘘なら頭巾にきいて見ろ。
アララアン、アララン。
- その二 民話・土俗篇
- ころころころ橋
ころころころ橋、ころころ橋、
ころころころげて誰が来た。
ころころころ橋、ころころ橋、
ころころころげて餅が来た。
ころころころ橋、ころころ橋、
ころころころげて海老も来た。
ころころころ橋、ころころ橋、
ころころころげて羊歯も来た。
ころころころ橋、ころころ橋、
ころころころげて春が来た。
- 鈴
りん、りん、りんころりん、
りん、りん、りんころりん、
りんころ、こどもが三人よ、
あらあら、この鈴、みいつけた。
りん、りん、りんころりん、
りん、りん、りんころりん、
りんころ、この鈴、おれのだよ、
おれのだ、おれのだ、けんくわした。
りん、りん、りんころりん、
りん、りん、りんころりん、
りんころ、こどもよ、どうしたえ、
お寺の和尚さま、ぬつと来た。
りん、りん、りんころりん、
りん、りん、りんころりん、
りんころ、こまつた道のはた、
ころりと、その鈴、ころがつた。
りん、りん、りんころりん、
りん、りん、りんころりん、
りんころ、この鈴もらつとく、
りんりん、りんころ、あづかつた。
りん、りん、りんころりん、
りん、りん、りんころりん、
りんころ、こどもにやるまいぞ、
あかぺのぺろりん、行つちやつた。
- 和尚さんと小僧さん
ここは山寺、和尚さま、
餅は食べたし、慾アふかい、
焼いて煮ましよか、こつそりと。
そこで小僧たち考へた。
「えへん、よござろ、和尚さま、
名前かへましよ、わたしたち。」
「ふふん、よしよし、何だ、名は。」
「ぶうぶう」「くたくた」「うまいうまい。」
夜はふけます、和尚さま、
もちは食べたし、慾アふかい、
焼いて煮ましよか、こつそりと、
よいな、ひとりでこつそりと。
餅を焼きます、ほう、あつい。
息をぶうぶう吹つかける。
「はあい、和尚さま、何御用。」
それと小僧さん駈けつける。
鍋に入れます、焼いた餅、
餅はくたくたたぎりだす。
「どうれ、和尚さま、何御用。」
中の小僧さんお手をつく。
餅は煮えたて、湯気はたつ
うまいうまいと声立てる。
「へえい、和尚さま、何御用。」
あとの小僧さん、眼でじろり。
しかたなくなく、和尚さま、
焼いたはしから、そらお食べ、
煮たつはしから、えい、お食べ、
みんな食べられ、こまり餅。
- もの
もののお話いたそかな。
ある日、山寺、春のくれ。
「ものが来ました、和尚さま。」
お手々つきます、ちび小僧。
「何ぢや、ものとは、これ、おぬし。
人には名もあろ、顔もあろ。」
「へえい、それでも、ありやもので。
お名も知らねば、見も知らぬ。」
「ふふん、それなら、わしがゆく。」、
窓に出て見た和尚さま。
「ははん、なるほど、来よつたな。
はてな、あの仁、よう知らぬ。──
ものぢや、やつぱり、ありやものぢや。
顔も知らねば名も知らぬ。」
- 大黒さま
1
大黒さまといふ方は
いつもにこにこ、よい笑顔、
ふたつ俵をふんまへて、
背にお袋、手に小槌。
「なにを振り出そ、そら、子供、
けふはおひより、のんやほほ、のんやほほ。」
2
大黒さまは円頭巾、
そしてお耳が大きいな、
ちよろろ鼠もまへうしろ、
走りお使、尾はながい。
「みんな来い来い、よい子供、
けふも母さん、ごきげんか、ごきげんか。」
3
大黒さまは福の神、
いつもにこにこおやさしい。
見れば見るほど福々と、
黒いおつやで手に小槌。
「何を振り出そ、そら、子供、
よいか、ご褒美、またあした、またあした。」
- 福助さん
1
福助さん、
福助さん、
頭でつかち袋耳、
ちやんとお手々を膝に置き、
皆さん皆さん、ありがたう。
福徳円満 ありがたう。
2
福助さん、
福助さん、
ちよこんとのつけたちよん髭の
青い月代引き眉毛、
皆さん 皆さん ありがたう。
福徳円満 ありがたう。
3
福助さん、
福助さん、
霰小紋の、裃で
ちやんと坐つて 御挨拶、
皆さん 皆さん ありがたう。
福徳円満 ありがたう。
- なるほど爺さん
なるほど、なるほど、
なるほどな。
なるほど爺さん、
なるほどな。
日が照りや天気だ、
なるほどな。
雨ふりやさむいよ、
なるほどな。
いつでも爺さん、
なるほどな。
おなかがすいても、
なるほどな。
どちらをむいても、
なるほどな。
なるほど爺さん、
なるほどな。
なるほど、なるほど、
なるほどな。
- すべり橋
お月さんのうへに、
すべり橋かけた。
するりと、光つて、
すべりすべり落ちた。
お星さんのうへに、
すべり橋かけた。
ころころ、光つて、
すべりすべり落ちた。
- (奥付)
- 白秋全集28第九回配本(第2期二五〜三七巻・別巻一)
一九八七年九月七日発行
定価四五〇〇円
著者 北原白秋
発行者 緑川亨
発行所 〒101東京都千代田区一ツ橋二−五−五
株式会社岩波書店
電話 〇三−二六五−四一一一
振替 東京六−二六二四〇