七つの胡桃




七つの胡桃


胡桃

お月さまいくつ、
じふさんななつ、
ななつの胡桃、
いただこみんな。
いただこみんな。
  チツピ、チツピ、ポンヨ。

胡桃のからは、
くだいたからは、
あぶらをとつて、
ランプに入れて、
つけましよ、あかり。
つけましよ、明かり。
  チツピ、チツピ、ポンヨ。

あかりがつけば
たれかがみえる、
山から見える、
雪のよなてふてふも
ちらちらたかる。
ちらちらたかる。
  チツピ、チツピ、ポンヨ。


ピーナツツ

花のきいろいピーナツツ、
いつか咲いてた、ちらちらと。

ほそい根のつる、ピーナツツ、
ひけば出てくる、からからと。

今朝は焼きましよ、ピーナツツ、
雪よ、ふれふれ、ちらちらと。

かはいいお莢、ピーナツツ、
われば、茶いろのピーナツツ。

うらの畠のピーナツツ、
いつか咲いてたピーナツツ。


はこべの花

ついてる、つゆが、
はこべの花に、
はこべの花は
かはいいビーズ。
    らんろん、らんろん、
    よあけがくるよ。

ちちやのまへの
このみち、こみち、
おくつがなるよ、
わたしのおくつ。
    らんろん、らんろん、
    よあけがくるよ。

こほりのとけた
ちよろちよろながれ、
ねずみがあらふ、
おかほをあらふ。
    らんろん、らんろん、
    よあけがくるよ。

  註 ビーズはなんきんだまのことです。


お花のアーチ

お花のアーチ、夜あけから、
花が咲きます、もえるよに。
    らら、らんらん。

花は下から咲きかけて、
お眼眼あけます、棚のうへ。
    らら、らんらん。

ていかかづらの花よりも、
あかい蕾は時計事。
    らら、らんらん。

くぐれくぐれよ、ひとりづつ、
花の咲くよに眼がさめる。
    らら、らんらん。


パンとばら

あかい帽子にあをい服、
あをい帽子にあかい服、
ふたりならんだ椅子のうへ、
こくりこくりとねむります。

もたれかかつたふさ帽子、
腕にひつかけつるの籠、
鶴にいれたはパンとばら、
ゆらりゆらりとこぼれます。

あかい帽子はパンが好き、
あをい帽子はばらが好き、
ふたりゐねむり、夢のなか、
パンだ、ばらだ、と よんでます。


ころころ帽子

ころころ、帽子が
     ころげてく。
「あら、あら、風さん、
     よしてくれ。」

ぐるぐる花園、
     まはり道。
「あら、あら、風さん、
     まつてくれ。」

「いやいや、ころころ、
     ひとまはり、
ぽんぽんダリやを
     見においで。」

ころころ、帽子が
     ころげてく。
「あら、あら、嬢さん、
     つかまへて。」


たけのこ

竹の林の
たけのこは、
ほれば、黄いろい房がでる。

紫いぼいぼ、
たけのこは、
ほれば、その根に土がある。

うちの小薮の
たけのこに、
すみれ添へましよ、おくりましよ。

竹の林に、
母さまと
旅の父さま思つてる。


通り道

風が通る。
風が通る。
通り道おくれ、
  あかいあかいつばき。

みんな通る。
みんな通る。
通り道おくれ、
  あかいあかいつばき。

ばらの葉のうへ

ばらの葉に つく あぶらむし、
おちち ためため たかつてる

おちちしぼりは くろ蟻だ
いつも ひなたを かけまはる。

かたに あかすぢ、てんとむし、
ぼつりぼつりと うまれます。

ばらの葉を 食ふ あぶらむし、
あぶらむし 食ふ てんとむし。

はやく まるまれ、てんとむし、
蟻は こまつて かけまはる。


いちご

いちごの 花に むぎの わら、
わらを しきましよ、ばらばらと。

おはね たたけよ、よいすずめ、
いまに いちごが ふとりましよ。

あかい いちごが うれたなら、
だれに あげましよ 、ひとつづつ。

うでに かけましよ竹の かご、
いちご いちごと よんで いこ。


トマト

むぎから 帽子に
トマトを いれて、
かかへて あるけば あついよ おでこ。
  ラ ラ ラツタン ラツタン タン。

お日さま きついよ、
おひるの 野道、
ちちやは どこだか たづねて みましよ。
  ラ ラ ラツタン ラツタン タン。

ちちやの 小牛は
ポプラの したで
みじかい おつのだ、おひるね してる。
  ラ ラ ラツタン ラツタン タン。

むぎから 帽子の
トマトを ひとつ、
小牛の 頭に のつけて かへろ。
  ラ ラ ラツタン ラツタン タン。


すかんぽの咲くころ

土手のすかんぽ、
ジヤワ更紗。

昼は蛍が
ねんねする。

僕ら小学
尋常科。

今朝も通つて
またもどる。

すかんぽ、すかんぽ、
川のふち。

夏が来た来た、
ドヽレヽミヽフアヽソ。

  註 これはまだ国民学校と云はないころによく歌はれたものです。
  記念するためそのままにしておきます。


日ざかり

暑いな、日ざかり、
ここらは避暑地。

畠の中道、
郵便やさんが通る。

すゐくわの子供は
まるい顔ばかり。

花笠かぶつて
ころころ起きて。

「をぢさん、お暑う、今日は、
東京のお手紙ありますか。」

だくだく汗かき、
郵便やさんがとほる。

たうもろこしの子供は
みどりのドレス。

あかい毛ふりふり、
お嬢さんばかり。

「お手紙、お手紙、てうだいな。
あらあら、をぢさん す通りよ。」


ねぎ

ねぎよ、あをねぎ、
晴れた日も
さえて、朝からつめたいな。

ねぎよ、あをねぎ、
風の日は
白い鶏も吹かれるな。

ねざよ、あをねぎ、
さむい日は
みんな子どもがかけてくな。

ねぎよ、あをねぎ、
かんかんと、
国民学校、始業だな。


ひとつづつ

お皿、お皿は、
いく皿でしよか。
お皿、お皿は、
七皿、八皿。

月のひかりに
かぞへてみよか。
あかいろうそく
ともしてみよか。

お皿、お皿は
七皿、八皿。
お皿、お皿に
なになにのせよ。

お皿ひとつに
りんごをひとつ。
りんごひとつに
ナイフもひとつ。

ひとりづつだよ、
お皿はひとつ。
ひとりづつだよ、
りんごはひとつ。


りんご

りんご ころころ どこへ行く。
お皿もとめに まゐります。
    ころん ころん。

りんご ころころ どこへゆく。
ナイフさがしに まゐります。
    ころん ころん。

りんご ころころ どこへゆく。
フオクひろひに まゐります。
    ころん ころん。

りんご ころころ どこへ行く。
子供みつけに まゐります。
    ころん ころん。

りんご ころころ もういいの。
さあさ ぼつちやん めしあがれ。
    ころん ころん。


つぼみ

つぼみ よ、つぼみ、
見つけた つぼみ、
つぼみは ふたつ。

つぼみ よ、つぼみ、
りんどうの つぼみ、
つめたい つぼみ。

つぼみ よ、つぼみ、
つぼみの 中は
むらさき 色よ。

つぼみ よ、つぼみ、
ひらけよ、つぼみ、
かけひの 水に。

つぼみ よ、つぼみ、
りんだうの つぼみ、
水だま かかれ。



たあんき、ぽうんき


鮎の子

すウみすウみ谷川、
鮎の子がうウまれた。

すウみすウみ谷川、
鮎の子がくウだつた。

すウみすウみ谷川、
鮎の子がひイかつた。

すウみすウみ谷川、
鮎の子がつウづいた。


たあんき、ぽうんき

たあんき、ぽうんき、たんころりん。
田螺がころころないてゐる。

たあんき、ぽうんき、たんころりん。
鴉が田螺をつついてる。

たあんき、ぽうんき、たんころりん。
蛙が目ばかり出してゐる。

たあんき、ぽうんき、たんころりん。
ちんちん電車もやつてくる。

たあんき、ぽうんき、たんころりん。
お彼岸まゐりもつづいてる。

  註 「たあんき、ぽうんき、たんころりん」は鴉が田螺をつつつく
音です。


お玉じやくし

お玉じやくしのをどり子が、
ちらと出ました水のうへ。
ソレ、水のうへ。
  ちらら、ちらちら、ちよろ、ちらり、
  春は音頭で、ちよろんとせ。

お玉じやくしのくろばうず、
出たよ、出た出た、ごまのよに、
ソレ、ごまのよに。
  ちらら、ちらちら、ちよろ、ちらり、
  春は音頭で、ちよろんとせ。

お玉じやくしはでつかちで、
お手もないない、足もない。
ソレ、足もない。
  ちらら、ちらちら、ちよろ、ちらり、
  春は音頭で、ちよろんとせ。

お玉じやくしよ、まだゐるか。
ゐるよ、ねてゐる、水のそこ。
ソレ、水のそこ。
  ちらら、ちらちら、ちよろ、ちらり、
  春は音頭で、ちよろんとせ。

お玉じやくしよ、みな起きて、
をどれ、をどれよ、水のうへ。
ソレ、水のうへ。
  ちらら、ちらちら、ちよろ、ちらり、
  春は音頭で、ちよろんとせ。


水すまし

すい、すい、すいと行け、
水すまし、
お手々をひらいて
すいと切れよ、
お池の水なら
とよりとせ。

すい、すい、すいと行け、
水すまし、
後あしひらいて
すいと走れ、
朝日がさしたら
ちらりとせ。

すい、すい、すいと行け、
水すまし、
お先にしつれい
すいと抜けよ、
水の輪かいたら
くるりとせ。

すい、すい、すいと行け、
水すまし、
お父さんも、お母さんも
すいとおよげ、
お日和、ひよりは
ぽかりとせ。

  註 この水すましは、水馬、あめんぼのことです。


日ざかりのとかげ

とかげのおうち、青すすき、
ちらつと出て来て、またはひる。
  暑けりや五色に光つてけ。

とかげのお口、あかい舌、
ぴらぴらさしたら、ひつこめた。
  暑けりや五色に光つてけ。

とかげのおしつぽ、ぶちきれた。
ちらりと、ついだら、すつと逃げた。
  暑けりや五色に光つてけ。


こほろぎ

ぢしんのばんに
こほろぎないた。
ころころこほろぎ
草つぱにないた。

姉さんとわたしは
野原にねてた。
東京はまつかに
よつぴてもえた。

おやなし、家なし、
わたしたち子供、
ころころこほろぎ
草つぱにないた。


とんぼの小隊

とんぼの飛行機、航空隊、
君等のエンヂン何馬力、
  ガソリン、ガソリン、いらないか。

とんぼはふはりと離陸する、
とまつた葉つぱを飛びあがる。
  滑走もしないですいとたつ。

とんぼはキの字の複葉機、
おはねはぴかぴか絹のはね。
  プロペラなくてもついつーい。

とんぼの飛行士青眼玉、
くる/\眼鏡の百眼鏡。
  無線もラジオもいりやしない。


松虫

三日月さん、ちんちろりん。
 ちんちろりん、今晩は。

三日月さん、ちんちろりん。
 ちんちろりん、さびしいよ。

三日月さん、ちんちろりん。
 ちんちろりん、かぜでしよか。

三日月さん、ちんちろりん。
 ちんちろりん、あめでしよか。

三日月さん、ちんちろりん。
 ちんちろりん、だれかくる。

三日月さん、ちんちろりん。
 ちんちろりん、こゑがする。

三日月さん、ちんちろりん。
 ちんちろりん、ちんちろりん。


みのむし

みのむし、みのむし、ちちろむし、
枯つ葉みのきて、また雨だ。
むしつてみてやろ袋みの。

かはいいひきだし、マツチ箱。
はだかのみのむしいれておこ、
毛糸のくづでもかぶつてろ。

みのあめ、みのきろ、ちちろむし、
みどりや桃いろ、袋みの、
祭のゆめでもみてねてろ。



羽根と卵


鶉の卵

卵、卵よ、
うづらの卵、
卵、卵よ。
うづらがつめる。
    テープ、テープ、チヨン。

卵、卵よ、
お函に、卵、
いくつつめましよ、
かはいい卵。
    テープ、テープ、チヨン。

卵、卵よ、
もみがらまいて、
たてに五つよ、
よこにも五つ。
    テープ、テープ、チヨン。

卵、卵よ、
五、五、二十五でしよ。
ふたをしましよか、
リボンをつけて。
    テープ、テープ、チヨン。

卵、卵よ、
卵のお函、
だいておかへり、
うづらが孵る。
    テープ、テープ、チヨン。




椿の花環を首にかけ、
首にかけ、
僕等ははひつた、竹薮へ。
薮には鶯啼いてゐた。
  ほう、ほほ、ほけつきよ、
  けきよけきよ、きよ。

まつかな花環を首にかけ、
首にかけ、
僕等は出ました、竹薮を。
薮には鶯啼いてゐた。
  ほう、ほほ、ほけつきよ、
  けきよけきよ、きよ。


ほろほろ鳥

ほろほろ鳥が
ほろほろ啼いた。

動物園の
夕日に啼いた。

ほろほろ鳥が
そろつて啼いた。

沙漠の砂が
こひしいと啼いた。

敷砂、小砂
かきかき啼いた。

ほろほろ鳥は
頬の瘤赤い。

ほろほろ烏が
ほろほろ啼いた。


七面鳥

七面鳥、しちめんてう、
ぷうぷとふくれてどこへいく。
この街まつすぐ、どこへいく。

  あるいて行つたらどこまでも、
  ぷうぷとふくれてどこまでも、
  世界のはてまで、まつすぐに。

七面鳥、しちめんてう。
世界は地球よ、まんまるよ。
はてからはてまで、まんまるよ。

  地球がまるけりや、まはるだけ、
  まはつて、しまへばもとのとこ。
  まつすぐいつても、もとのとこ。


げんげに鴉

げんげ、げんげ田、鴉がおりた。
  かあ、
あかいお口だ、くちばしあけた。
  かあかあ。

鴉何みる、げんげにおりて、
  かあ、
歩き歩きよ、あちこち見てよ。
  かあかあ。

とんびとんでる、お山の空で、
  かあ、
一羽ぴいひよろ、向うでないた。
  かあかあ。

鴉、鴉よ、かすみがかかる。
  かあ、
春もをはりよ、もうぢき夏よ。
  かあかあ。

げんげ、げんげ田、あぜみち、こみち、
  かあ、
鴉あそべよ、まだ日はながい。
  かあかあ。


雉子と雀
    動物園所見

雉子のゑばこに
雀がはひつた、
雀 あたまで粟んなかもぐる。

雉子のゑばこは
ゆふやけこやけ、
ゑばこ、ちひさなつつぬけお家。

雉子はおもてで
砂ほりしてる、
あかいほつぺた火のよでさむい。

雉子はよこちよを
むきむきはしる。
雀 ゑばこのおやねでみてる。



声と足あと


ねずみとお馬

世界の海の
ちつちやな島に
ゐたとさ、ねずみ、
ちよろちよろねずみ。
  チユチユウ、コトカイナ、コトカイナ。

王さまねずみ
お舟にのつて
旅した、とほく
ちつちやなねずみ。
  チユチユウ、コトカイナ、コトカイナ。

南のをかに、
ひろ野のはてに、
ゐたとさ、お馬、
大きなお馬。
  チユチユウ、コトカイナ、コトカイナ。

ちよろちよろねずみ
たまげた見てた、
「でつかいねずみ、
神さまだろか。」
  チユチユウ、コトカイナ、コトカイナ。

ひひんとお馬、
「おまへはだれだ、
ちよろんべ、ちよんべ。」
鼠をけつた。
  チユチユウ、コトカイナ、コトカイナ。

ちよろんべねずみ
なきなきにげた、
「おえらいねずみ、
神さまだろか。」
  チユチユウ、コトカイナ、コトカイナ。


ねずみの密航

月夜のねずみがするするのぼつた。
あれあれ、ロツプがゆらゆらうごいた。
  さよならよ、さよならよ。
  父さん、母さん、さよならよ。チン。

はとばのねずみがするするのぼつた。
ななめのロツプが夜露に光つた。
  さよならよ、さよならよ。
  神戸のみなとよ、さよならよ。チン。

ちゆうちゆのねずみがするするのぼつた。
おふねのロツプをこそこそのぼつた。
  さよならよ、さよならよ。
  わたしの摩耶山、さよならよ。チン。

こどものねずみがするするのぼつた。
ケビンのあかりがちらちらうごいた。
  さよならよ、さよならよ。
  お倉の干葡萄、さよならよ。チン。

密航のねずみがするするのぼつた。
マストの向うを雁が啼いてわたつた。
  ヂヤランボン、ヂヤランボン。
  航路は上海、チンチンチン。チン。


ねずみの子

ほらほら、ちつちやいねずみの子、
生れたばかしよ、このしつぽ。
  ちよろりと一ぴき、
  つまんで、チユウ、
  ないても、おめめはまだ見えぬ。
               チユウ。

ほらほら、桃色、ねずみの子、
おみみの中まで、まつかいね。
  ちよろりと、二ひきよ、
  つまんで、チユウ、
  ないても、お手々はまだあけぬ。
               チユウ。

ほらほら、ねんねのねずみの子、
母さん、正月まだですか。
  ちよろりと一ぴき、
  つまんで、チユウ、
  ないても、あんよはまだたたぬ。
               チユウ。

ほらほら、そろつた、ねずみの子、
ねずみのおざしき、お菓子ばこ、
  ちよろりと三びき、
  おめでと、チユウ、
  チユウ子にチユウ吉チユウ三郎。
               チユウ。


朝のかね

ラランと鳴るかね、
時のかね、時のかね、
ねずみが引きます、かねの綱。
 ちよろりと出て来た、こまねずみ。

ラランと鳴るかね、
朝のかね、朝のかね、
ねずみが綱引きや夜はしらむ。
 ちよろりとまた来た、こまねずみ。

ラランと鳴るかね、
かねの綱、かねの綱、
ねずみの尻尾でつぎたそか。
 ちよろりと出た出た、こまねずみ。

ラランと鳴るかね、
ゆれ出した、ゆれ出した、
ねずみも総出で夜が明けた。
 ちよろりこちよろりこ、こま鼠。


小猫

小猫じやれつく、おててんてまり、
てまり、ころころ、ころげてにげる。
  おつほほ、おつほほ。
  にやう。ころころ。ぷう。

小猫じやれつく、てふてふのはねに、
てふてふ、ひらひら、ひらりとにげる。
  おつほは、おつほほ。
  にやう。ひらひら。ぷう。

小猫じやれつく、ねずみのしつぽ、
ねずみちよろちよろ、ちよろりとにげる。
  おつほほ、おつほほ。
  にやう。ちよろちよろ。ぷう。

小猫じやれつく、花かご小かご、
影はゆらゆら、ゆらりとにげる。
  おつほほ、おつほほ。
  にやう。ゆらゆら。ぷう。


ちひさな三毛猫

ついてきた 三毛猫、
ちひさな 猫の子、
自転車にのつけて、
   ちりりん、りんりん、
学校の もどりだ。

かはいそな 三毛猫、
こはいか、ぶるぶる、
自転車にのつけりや、
   ちりりん、りんりん、
カバンに かじりついた。

ぢきだよ、三毛の子、
もう、すぐおうちだ、
自転車ははやいよ、
   ちりりん、りんりん、
そら、そら、きたきた。

三毛猫、ちび猫、
ひろつたよ 母さん、
自転車にのつけて、
   ちりりん、りんりん、
すつとばして きました。


スリツパ

しろい仔猫は
スリツパに
まるくなつてる
毯のよに。

月がさすんだ
お廊下に、
猫よ、おめめを
あけないか。

山のホテルは
避暑客も
立つてしまつた、
もう、とうに。

柱時計の
木の鳩よ、
月がさしてる
スリツパに。


象さん
    動物園所見

どこからが、どこからが、
象さん、あなたのお鼻でしよ。
――ひたひのうへからお鼻です。

ないんでしよ、ないんでしよ、
象さん、お口がないんでしよ。
――横からかがんで見てごらん。

吸ひあげて、吸ひあげて、
象さん、その床どうするの。
──ほこりのお掃除すつぷうぷ。

ほそい目ね、ほそい目ね、
象さん、何かが見えますか。
向うの河馬さんよう見える。

たいくつね、たいくつね、
象さん、いちんちなにしてる。
──ぼんやりお鼻をふつてます。


象のお散歩
    動物園所見

象のお散歩、水曜日、
脚がだぶだぶ、尾が小さい。

象の垂耳、三角だ、
黒と桃いろ、眼がほそい。

ぽぽん、ぽぽんと──象の鼻、
上へ向き向き、跳ねあがる。

上へのびてく象の鼻、
高い木の洞たたきます。

ちやうどあを桐、雲のよに、
いまは黄いろい花ざかり。

象のお散歩、水曜日、
ぽぽん、ぽぽんで、おもしろい。


ストーブたいてるお爺さん
    動物園所見

ストーブたいてるお爺さん、
象のお家をあたためる。

ストーブたいてるお爺さん、
あかい帽子をかぶつてる。

ストーブたいてるお爺さん、
今夜も雪だと思つてる。

ストーブたいてるお爺さん、
石炭ばつかりしやくつてる。

ストーブたいてるお爺さん、
お向うばつかりむいてゐる。

象がお鼻でとんとんとん、
あかい帽子を撫でました。


虎の子
    動物園所見

虎の子は大きいな、
むくりむくりともぐつて。
  お母さん虎が笑ふな。

虎の子はりつばだな、
縞がながれて、きいろで。
  日が照つて光るな。

虎の子は身がるだな、
ふはりふはりとひそんで。
  てふてふを見てるな。

虎の子は暑さうだな、
岩をゆすつて、のぞいて。
  トンネルにはひるな。

虎の子は吼えるな、
赤いお口をひらいて。
  檻のなかつらいな。

虎の子は伏せるな、
じぶんの影をながめて。
  ねむさうに見えるな。


駱駝とお正月
    動物園所見

駱駝、駱駝、
駱駝のをぢさん、
お正月が来たよ。
はよ出てごらん。
 ほう、ほう、さうか、
 どつちから来たか。

駱駝、駱駝、
駱駝のをぢさん、
そつちぢやないよ。
よく見てごらん。
 そんならかうか、
 こつちのほうか。

駱駝、駱駝、
駱駝のをぢさん、
こつちぢやないよ。
まはつてごらん。
 やれやれまはろ、
 それでもみえぬ。

駱駝、駱駝、
駱駝のをぢさん、
そんなほうぢやないよ。
まへをまへをごらん。
 フム、フム、どこだ、
 お正月はどこだ。

駱駝、駱駝、
駱駝のをぢさん、
そら、もう来てる。
お正月が来てる。
 まつかな初日、
 ぽつかり出てる。


ボクシング

カンガールのボクシング、
あとあしでけるける。
  ぽぽんぽんとける。

こいつは困つた。
まへあしで来い来い。
  ぽぽんぽんと来い。

あとあしはけりよい。
まへあしや手ぢやない。
  ぽぽんぽんとけろ。

お耳を立て立て、
そらきた、もひとつ。
  ぽぽんぽんと来い。

カンガールのボクシング、
春が来た、来た来た。
  ぽぽんぽんと来た。


狐のお舌

風、かぜ、ふく日に
母さんと、
すすきの野原を
あるいてた。
こんこんきつねの舌買ひに。

狐のお舌は
よいくすり、
どもりのおくすり
もらひましよ、
かあさんこはいよ、あのお眼々。

きつねのおやどを
たづねたら、
あをい火ちよろちよろ、
もう日ぐれ、
こんこんきつねの尾が見えた。


ブルドツグ

ぼうわう、わう、うう、
ぶう、うう、うう、
見ろ見ろ、つよいぞ、
ブルドツグ、
お山の大将、おれひとり、

ぼうわう、わう、うう、
ぶう、うう、うう、
前から、よこから、
うしろから、
かかつて来い来い、おれひとり。

ぼうわう、わう、うう、
ぶう、うう、うう、
泣虫、べそかき、
ありや誰だ。
苦虫つぶして、おれひとり。

ぼうわう、わう、うう、
ぶう、うう、うう、
それでも、やさしい
ブルドツグ、
坊やのおともは、おれひとり。


うさうさ兎の

うさ、うさ、兎の足あとは
ポチポチつづいてかはいいな。
 月夜の月夜の
 雪のうへ、
まへあし、あとあし、ぴようんぴよん。

うさ、うさ、兎の足あとは
ささの芽、さがしにまた来てか。
 月夜の月夜の
 雪のかげ、
まへあし、あとあし、ぴようんぴよん。

うさ、うさ、兎の足あとは
雑木の木原をすぢかひに。
 月夜の月夜の
 雪の原、
まへあし、あとあし、ぴようんぴよん。
うさ、うさ、兎の足あとは
今、見たばかりよ、まだしろい。
 月夜の月夜の
 雪のうへ、
まへあし、あとあし、ぴようんぴよん。


兎のヂヤンプ

兎 ピヨンととぷ、
ピヨンととぶ、雪を。
雪は水雪、いまつんだばかり、
朝だ、夜あけだ、すんとした空気。
  ヂヤンプ、ヂヤンプだ、
  兎のヂヤンプ。

兎 ピヨンととぶ、
ピヨンととぶ 森へ。
森はもんもり木の根の雪だ、
山のヒユツテは煙をあげる。
  ヂヤンプ、ヂヤンプだ、
  兎のヂヤンプ。

兎 ピヨンととぶ、
ピヨンととぶ はねて、
耳をうしろへ あと足折つて、
前へつつかけ、つつかけ走る。
  ヂヤンプだ、ヂヤンプだ、
  兎のヂヤンプ。

兎 ピヨンととぶ、
ピヨンととぶ先を。
先はゲレンデ、見えたよ見えた。
行くぞスキーで、どつちが速い。
  ヂヤンプ、ヂヤンプだ、
  兎のヂヤンプ。

兎 ピヨンととぶ、
ピヨンととぶ、雪を。
雪はしんしん、技から落ちる。
朝だ、夜あけだ、すんとした空気。
  ヂヤンプ、ヂヤンプだ、
  兎のヂヤンプ。




鏡のなかのお父さん、
ライオンみたよになりました。

鏡のなかをあるくひと、
駝鳥のやうに長いすね。

鏡のなかの長い首、
きりんのやうに伸びました。

鏡のなかで笑ふひと、
大口あけて河馬のやう。

鏡のなかのお母さん、
ほら、カンガール、子をだいた。

鏡のなかのおぢいさん、
駱駝のやうだ、こぶがある。

鏡の中の脊広さん、
おや、あしが無い、あひるさん。

鏡の中のブルドツグ、
くしやくしやづらのお兄さん。

鏡の中をにげるひと、
ねずみのやうだ、こまねずみ。

凸面鏡に凹面鏡、
廊下の鏡はおもしろい。



帽子と地球儀


おん正、正月

日の出の松見て
お宮へ行けば、
おん正、正月、
しめなは飾。
 かしは手うつて、
 太神宮さま、
 おめでとございます。

雪道さくさく、
学校へ行けば、
おん正、正月、
朝礼はじめ。
 帽子をとつて、
 先生おめでと、


一、二、三、四。

スキーをはきはき、
あちこち行けば、
おん正、正月、
凧あげしてる。
 ステツキあげて、
 君、君、おめでと、
 僕らはつうつう。


お船の正月

お蜜柑なげだ、
蜜柑なげだ。
 拾をよ、拾を、
 ばらばら、まけよ。

新造だ、船は、
舟だまおろし。
 フラフは三色、
 のぼりは赤だ。

お正月が来たよ、
お正月が来たよ。
 磯鳥、千鳥、
 ひらひらまへよ。

お蜜柑、蜜柑、
舟から投げる。
 波、波、立つな、
 ふじの山しろい。


雪帽子

雪のつもつた
木の根つこ、
根つ株根株 雪帽子。
一、二、四、五、六、七。

雪がもんもり
山の小星、
出て来る子供も蓑帽子。
一、二、三、四、五、六、七。

雪の山原
開墾地、
スキーはきはきそら走れ。
一、二、三、四、五、六、七。

雪の山山
今朝初日、
学校がよひの蓑帽子。
一、二、三、四、五、六、七。


帽子と春

冬はすつぽり毛の帽子、
眼ばかりだしてた、ながいこと、
雪、雪、屋根よりたかい雪、
熊の子のよにあるいてた。

帽子とれとれ、大あたま、
おでこの、おでこの、みな子ども、
春がきた、春がきた、ほら、青い、
お空を光がかけてきた。
 春がきた、春がきた、
 うめ、すもも、
 さくらも、ひももも、みな咲いた。


来た来た春が

晴れた、晴れたよ、
からりと晴れた、
とけた、とけたよ、
雪道小道。

さけよ、いちどに、
うめ、もも、さくら、
もえよ、あをくさ、
もえろよ、はこべ。

そりよ、かんじき、
ありがと、スキー、
入れて、しまふよ、
またこの冬よ。

来たよ、来た来た、
僕らの春が、
来たよ、山から、
海から、野から。

晴れた、晴れたよ、
からりと晴れた、
みんな行こ行こ、
かけかけ走ろ。


雪どけ

とろろんとん、
とろろんとん、
とろろん、とんてん、とたんやね、
とろろん、とんてん、音がする。

とろろんとん、
とろろんとん、
とろろん、とんてん、雪どけだ、
とろろん、とんてん、ほら、とける。

とろろんとん、
とろろんとん、
とろろん、とんてん、豆こぞう、
とろろん、とんてん、またはねる。

とろろんとん、
とろろんとん、
とろろん、とんてん、そら、はずめ、
とろろん、とんてん、春がくる。

とろろんとん、
とろろんとん、
とろろん、とんてん、とたんやね、
とろろん、とんてば、雪どけだ。


クツクコツク

クツクコツク、コツククツク、
コケケケ、コツコウ、ヨウ。
春が来た、春が来た。
コケケケ、コツコウ、ヨウ。

粉屋の、粉屋の、水ぐるま、
水だまはねはね、早よまはれ、
柳につばめも飛んで来た。
 クツクコツク、コツククツク、
 コケケケ、コツコウ、ヨウ。

垣根の、垣根の、蕗のたう、
雪どけ、霜どけ、早よ光れ、
畠の芽麦もせのびした。
 クツクコツク、コツククツク、
 コケケケ、コツコウ、ヨウ。

山越え、山越え、郵便夫、
それそれ、お手紙、早よごらん、
野原にすみれも咲きました。
 クツクコツク、コツククツク、
 コケケケ、コツコウ、ヨウ。

巣箱の巣箱の、伏せたまご、
ピヨピヨ鳴き出せ、早ようたへ、
お空に雲雀もごきげんよ。
 クツクコツク、コツククツク、
 コケケケ、コツコウ、ヨウ。

クツクコツク、コツククツク、
コケケケ、コツコウ、ヨウ。
春が来た、春が来た。
コケケケ、コツコウ、ヨウ。


ピンポン

ピンポン、ポン。
ポンピン、ポン。

  ちひさなラケツト、
  ちひさなネツト。

ピンポン、ポン。
ポンピン、ポン。

  ぼくらは小人、
  房つき帽子。

ピンポン、ポン。
ポンピン、ポン。

  牡丹のはなの
  コートはあかい。

ピンポン、ポン。
ポンピン、ポン。

  まだ日は暮れぬ、
  春の日ながい。

ピンポン、ポン。
ポンピン、ポン。

  ねねさん、ねんね、
  おひるね、ねんね。
ピンポン、ポン。
ポンピン、ポン。


春の小人

地から小人は
飛びあがる。
   房はむらさき、土耳古帽、
   ぽん、ぽん、ぽん、ぽん、飛びあがる。

春の小人は
飛びあがる。
   鈴はつまさき、をどり靴、
   ちりから、ちりから、飛びあがる。

豆の小人は
飛びあがる。
   あをい野つ原、日の光、
   ちかりん、ちかちか、飛びあがる。

をどる小人は
飛びあがる。
   春がきたきた、てらたらたん、
   ぽん、ぽん、ぽん、ぽん、飛びあがる。


鯉のぼり

鯉のぼりがあがつた、
金の目の鯉が
おうちの空に、
わかばの上に、

鯉のぼりが風に
吹かれておよぐ、
吹きながしのそばに、
矢車の上に、

鯉のぼりのうろこ、
黒で三十八枚だ。
口からいきを吸つて
おしつぽではねる。

鯉のぼりがあがつた、
お節句の朝に、
どの空見ても
日本晴だ。

鯉のぼりをあふげ、
どの空見ても
男の子供
生れたうちだ。


雨だれ

ポツンと雨だれ、おひよりさん、
目高がちらつとにげました。

ポツンと雨だれ、輪がたつた、
すつぽん、のしくびすつこんだ。

ポツンと雨だれ、輪が三つ、
小えだが燕とゆれだした。

ポツンよポツンよ、ついついつい、
あめんぼ兵隊、あつまれだ。


雨あがり

この川わたれ、
くつしたぬいで、
手に靴さげて、
ちやぶちやぶわたれ。

雨ふりあがり、
はこべも水よ。
あかるい朝だ、
ちやぶちやぶわたれ。

わか葉のいろも
みどりにゆれる。
あちこち見ては
ちやぶちやぶわたれ。

仔馬も出てる
水たまあげる。
手に靴さげて
ちやぶちやぶわたれ。


羽虫の立つころ

ゆふやけ、こやけ、
火の見の塔に
もう、燈がついた、
とつとと走ろ。

ゆふやけ、こやけ、
雑木のやぶに
けぶりも見える、
とつとと走ろ。

ゆふやけ、こやけ、
ゆふかんうりも
かけてく、あぜを。
とつとと走ろ。

ゆふやけ、こやけ、
はむしよ、たつな、
眼のなかかゆい。
とつとと走ろ。


栗ひろひ

いが栗ひろひに行かないか。
みんながいくんだ、すぐ来いよ。

野を越え、川越え、谷越えて、
僕らはいくんだ、出ておいで。

いが栗ひろひは風のあと、
雨、雨やんだぞ、夜があけた。

山道、細道いかないか、
朝日がきらきら、百舌鳥が啼く。

いが栗坊主はまだ青い、
おちてる、はぜてる、ころげてる。

いがには一ばい露うけて、
中から栗の実のぞいてる。

いが栗ひろひにいかないか。
みんながいくんだ、すぐ来いよ。


宵祭

焙烙婆さま
はうろくで、
いりましよ、いりましよ、
落花生。

焙烙婆さま
三角の
ふくろに入れます、
落花生。

焙烙婆さま
屋台傘、
買はんせ、買はんせ、
落花生。

焙烙婆さま
宵まつり、
焦がした、焦がした、
落花生。


乳母ぐるま

ちひさな姉さん、麦わら帽、麦わら帽、
どこへ押してく乳母ぐるま、乳母ぐるま。

日和、野良道、うちのまへ、うちのまへ、
木にはすずなり、青りんご、青りんご。

かけて来た来た、自動車だ、自動車だ、
泣いて逃げだす女の児、女の児。

道のまんなか、乳母ぐるま、乳母ぐるま、
かはい赤んぼねねしてる、ねねしてる。

そこで、ストツプ、かたよせて、かたよせて、
そつと道ばた、乳母ぐるま、乳母ぐるま。

ぶうぶう自動車、走つてく、走つてく、
埃が、埃が、遠くなる、遠くなる。

あとで出て来た女の児、女の児、
またも押してく乳母ぐるま、乳母ぐるま。


月夜の戸口

風が出ました、ヒマラヤ杉に、
月夜、お月夜、おうちのそとに。

  ねんね、ねんねよ、
  風先雲に、
  月がのります、
  あの紫に。

なにか来ました、ゆれてる枝に、
ちつち小鳥よ、おねんね小鳥。

  ねんねしよにも、
  ちらちらゆれる、
  金のちらちら、
  お日々にゆれる。

月夜、お月夜、戸口があいて、
女異人が子をだいて見てる。


クリスマスの晩

雪の教会、クリスマス、
なんときれいなあのあかり。
  なかでおいのりきこえます。
  今夜オルガン弾いてます。

雪の教会、クリスマス、
ここは街角、ふきさらし、
  僕はこごえて佇つてます。
  なにかしんしんしてきます。

雪の教会、クリスマス、
星も出ました、あの星根に、
  はひつてみよか、どうしよか、
  僕は無いんだ、母さんが。

雪の教会、クリスマス、
ああら、誰かが出て来ます。
  マリヤさまではないかしら、
  かはいい赤さん抱いてます。


三日月

ほそい三日月
金の橇、
誰が駆るやら、
ほそぼそと。

氷すべりの
日も暮れて、
迷子さがしか、
星呼びか。

山は、アルプス、
雪の峯、
一つ越えても、
また一つ。

ほそい三日月
金の橇、
見えて、かくれて、
もう遠い。


三日月をぢさん

三日月をぢさん
横向いて、
いつもパイプを、それ、ふかす。
   こつち向いてよう、よう、
   こつち向いてよう。

三日月をぢさん
横向いて、
あごとひたひが、ほう、ほそい。
   こつち向いてよう、よう、
   こつち向いてよう。

三日月をぢさん
横向いて、
なんで宵から、雲のうへ、
   こつち向いてよう、よう、
   こつち向いてよう。


シイソウ

三日月さんの
シイソウに
鵲が二羽よ、
  上がつた、上がつた、
  アンドロメダひイかつた。

三日月さんの
シイソウに
鵲が二羽よ、
  下がつた、下がつた、
  地球がくるくる、まアはつた。


ちろろんろん

ふれふれ、粉雪
ちろんろんとふれよ、
お池の水に
ちろんろんときえよ。

ふれふれ、粉雪
ちろんろんとふれよ、
金の亀、小亀、
ちろんろんと吸へよ。

ふれふれ、粉雪
ちろんろんとふれよ。
水曜日の晩に
ちろんろんときえよ。


ちらちら雪

ちらちら雪よ、
早よおいで、お手に。
ああああ消えた。

ちらちら雪よ、
また日が射した。
ああああ溶けた。


あとがき

 この「七つの胡桃」には、植物や動物や季節に関りのある童謡ばかりを集めてみました。みんな皆さんの日常生活に親しいもので、さうして生々としたよろこびに満ちてゐる筈です。かうした集め方はこれまでのわたくしの童謡集には無かつたことです。この外にまた同じフタバ害院から、子供の生活ばかりを集めたものも「太陽と木銃」として上刊します。いづれも低学年向きのものです。
 ずゐぶん永い間わたくしはかうした童謡集を出しませんでした。昭和のはじめから作品だけがたまりにたまつてしまひました。それでかうした特殊の編輯もできたといふわけです。で、また外の集と重複する作もありません。
 内容について云つてみませう。
     七つの胡桃
 木の実や野山の花、お野菜やお庭の花などが、ここには集められてあります。パンとくらべてどちらがお好きですか。
     たあんき・ぽうんき
 たあんき・ぽうんきは鴉が田螺をつつく音です。そこで、ここには、さうした田圃の田螺や木の枝のちちろ虫や谷川の鮎の子などが歌はれてあります。それから水すましや、とかげや、とんぼの飛行隊や、松虫、こほろぎなど。
     羽根と卵
 羽根と卵だから、ここには鳥類ばかりです。と云つたつて、ここにもさう多くは歩いてをりません。
 動物園のほろほろ鳥や雉子が交つてゐるくらゐです。
     声と足あと
 鼠、猫、象に虎、カンガルー、兎、駱駝、こんこん狐、ここにはいくらか、獣の声と足あとが入り乱れてゐます。鼠がいちばん多いですね。動物園で見た獣もゐます。それよりもストーブ焚いてるお爺さんはどうですか、象がうしろからその長いお鼻でぱんぱんと肩を叩きますよ。
     帽子と地球儀
 季節の風と光はなつかしいものです。ことに雪どけの頃から春にかけては子供のまたとないよろこびです。それから夏のお祭、秋の栗ひろひ、冬のこんこ雪。
 さあ、皆さん、七つの胡桃のあぶらをしぼつて、そして、黄色いラムプをともして下さい。その胡桃を割るのですよ。お月さまいくつ、じふさんななつですよ。ピツチ、ピツチ、ポンヨですよ。
  昭和十七年 立秋
                    白秋識



(奥付)
白秋全集27 第八回配本(第2期二五〜三七巻・別巻)
一九八七年八月三日発行
定価  三九〇〇円
著者  北原白秋
発行者 緑川亨
発行所 〒101東京都千代田区一ツ橋二−五−五
    株式会社岩波書店
    電話 〇三−二六五−四一一一
    振替 東京六−二六二四〇