平家物語(城方本・八坂系)
巻第一
祗園精舎(序文)101
ぎをんしやうじやの・かねのこゑ・しよぎやうむじやうの・ひびきあり・しやらさうじゆの・はなのいろ・しやうじやひつすゐの・ことわりを・あらはす・おごれるものも・ひさしからず・ただはるのよの・ゆめのごとし・たけきものも・つひには・ほろびぬ・ひとへに・かぜのまへのちりに・おなじ・とほくいてうの・せんしようをとぶらふに・しんのてうかう・かんのわうまう・りやうのしうい・たうのろくさん・これらはみな・きうしゆせんくわうの・まつりごとにもしたがはず・たのしみをきはめて・てんかのみだれむことをも・さとられ・いさめをも・おもひよらず・みんかんの・うれふるところをも・しらざりしかば・ひさしからずして・ほろびにし・ものなり・ちかくほんてうを・うかがふに・しようへいにまさかど・てんぎやうにすみとも・かうわのよしちか・へいぢにのぶより・これらは・みな・おごれることも・たけきこころも・とりどりなりしかども・まぢかくは・さきのだいじやうだいじんたひらのあそんきよもりこうと・まをししひとの・ありさまを・つたへうけたまはるこそ・こころもことばも・およばP2
れね・そのせんぞをたづぬるに・くわんむてんわうだいごのわうじ・いつぽんしきぶきやう・かつらばらのしんわう・くだいのこういん・さぬきのかみまさもりのまご・ぎやうぶきやうただもりの・あそんのちやくなんなり・かのしんわうの・おんこたかみのわうは・むくわんむゐにして・うせたまひぬ・そのおんこ・たかもちのわうの・ときより・はじめて・たひらのせいを・たまはつて・かづさのかみに・なりたまひしより・このかた・たちまちわうしをいでて・ひさしく・じんしんに・つらなる・そのおんこ・ちんじゆふのしやうぐんよしもち・のちには・ひたちのたいぜうくにかと・あらたむくにかより・さだもり・これひら・まさのり・まさひら・まさもりに・いたるまで・ろくだいは・しよこくのじゆりやうたりと・いへどもいまだ・てんじやうの・せんせきをば・ゆるされず
殿上闇討102
しかるをただもりの・いまだ・びぜんのかみたりしとき・とばのゐんのごぐわん・とくちやうじゆゐんを・ざうしんして・三拾三げんの・みだうをたて・一千一たいの・みほとけをすゑたてまつる・くやうは・てんしようぐわんねん三ぐわつ十三にちなり・ただもりけんじやうには・けつこくをたまふべきよし・おほせくだされさふらふをりふし・たじまのくにの・あきたりけるをぞ・たまはりける・じやうわう・なほえいかんに・たへずして・うちのしようでんをぞ・ゆるされける・ただもり・とし三拾六にして・はじめて・しようでんす・くものうへびと・これをそねみいきどほつて・おなじきとしの十一ぐわつ廿三にち・五せち・とよのあかりのせちゑのよ・ただもりを・でんじやうにして・やみうちに・せんとぞ・ぎせられける・ただもりこのことをほのぎいて・われ・いうひつの・みにあらず・ぶようの・いへにむまれて・ふりよのはぢに・あはんこと・いへのため・みのため・こころうかるべし・せんずるところ・みをまつたうして・きみに・つかへよと・いふ・P3
ほんもんありとて・かねて・そのよういをいたす・さんだいの・はじめより・いくわんのしたに・おほきなるさやまきを・しどけなげに・さしつつ・ひの・ほのくらきかたに・むかひては・やはらかのかたなをぬきいだし・びんに・ひきあて・ひきあて・したまひけるが・よそよりは・こほりなんどのやうにぞ・みえし・しよにんめをすます・またただもりの・らうどうに・もとは・一もんたりし・むくのかみたひらのさだみつが・まご・しん三らうだいふいへふさがこに・さひやうゑのぜういへさだとまをす・ものあり・とくさの・かりぎぬのしたに・もえぎの・はらまきを・き・ゑふのたち・わきばさんで・でんじやうのこにはに・かしこまつてぞ・さふらひける・くわんしういげ・あやしみをなし・六ゐをもつて・いはせけるは・うつぼばしらよりうち・すずの・つなのへんに・ほいのものの・さふらふは・なにものぞ・らうぜきなり・まかりいでよと・いはせければ・いへさだ・かしこまつてまをしけるは・これはさうでんのしゆ・びぜんのかうのとのの・こんや・これにて・やみうちに・せられたまふべきよしを・つたへうけたまはつて・ならんやうを・みんとて・かくて・さふらへば・えこそ・まかりいづまじけれとて・かしこまつてぞ・さふらひける・これらをよしなしとや・おもはれけん・そのよのやみうち・なかりけり・ただもり・ごぜんの・めしに・ついて・まはれけるに・ひとびと・ひやうしをかつて(イかへて)・いせへいしは・すがめなりけるとぞ・はやされける・このひと・かたじけなくも・かしはばらのてんわうの・みすゑにては・おはしけれども・まぢかくは・むげにくだつて・くわんとも・あさう・みやこの・すまひもうとうとしく・いが・いせに・のみ・ぢうごくふかき・ひとにて・おはしければ・かのくにのうつはもの・へいしにたとへて・いせへいじとは・はやされけり・そのうへ・ただもりのかための・すこし・すがまれ・たりければにや・かやうには・はやされけり・ただもり・いかに・すべきやうも・なうて・いまだ・ぎよいうも・をはらぬ・さきに・ごぜんを・まかりいでられけるに・いかがは・P4
おもはれけん・よこたへ・さされたりつる・かたなをば・ししんでんの・ごごにして・とのもづかさに・あづけおきてぞ・いでられける・あんのごとく・いへさだ・まちうけたてまつつて・さて・いかにさふらふと・まをしければ・ただもりこのことありのままにいひつるほどならばでんじやうまでも・きりのぼらん・ほどのものの・つらたましひ・なりければ・いまは・べちのことなしとて・ひきぐしてぞ・いでられける・五せちには・しらうすやう・こぜんじ(イとうせんし)のかみ・まきあげのふで・ともゑ・かいたる・ふでのぢくなんど・かやうに・さまざま・おもしろきことを・のみこそ・うたひ・はやされしに・なかごろ・だざいのごんのそつすゑなかきやうと・まをすひと・おはしけり・あまりに・いろのくろかりければ・ひと・こくそつとぞ・まをしける・このひとのいまだそのころ・くらんどのとうたりしとき・ごぜんの・めしについて・まはれたるに・ひとびとひやうしを・かへて・あなくろくろ・くろきとうかな・いかなるひとの・うるしぬりけんとぞ・はやされける・ならびに・はくはつなる・でんじやうびとの・まはれけるに・このひとのかたうどと・おぼしくて・あなしろしろ・しろき・ぬしかな・たれ・とらへて・はくを・おしけんとぞ・はやされける・じやうこには・かやうのことども・ありしかども・いまだ・こと・いでこず・まつだい・いかが・あらんずらん・おぼつかなしとぞ・ひとまをしける・あんの・ごとく五せち・はてにしかば・でんじやうには・くぎやうせんぎあり・それ・ゆうけんを・たいして・くえんに・つらなり・ひやうぢやうを・たまはつて・きうちうを・しゆつにふすること・これきやくしきの・れいをまぼる・りんめい・よしある・せんきたり・しかるを・ただもり・さうでんの・らうじうを・ほいの・つはものと・がうして・でんじやうのこにはに・めしおき・そのみは・こしのかたなを・よこたへ・さいて・せちゑの・ざに・つらなる・りやうでう・きたいいまだきかざる・らうぜきなり・ことすでにちようでふせり・ざんくわもつとも・のがれがたし・はやく・みふだP5
をけづつて・けつくわんちやうにんに・おこなはるべき・かと・おのおの・うつたへまをされ・たりければ・じやうわうも・おほきに・おどろきおぼしめして・いそぎ・ただもりを・めして・おんたづねありければ・ただもり・かしこまつて・ちんじまうされけるは・まづ・らうじう・こにはに・しこうのこと・ただもり・かくごつかまつらず・ただし・きんじつ・ひとびとあひたくまるる・しさいあるかのあひだ・さうでんのらうじう・ことを・つたへうけたまはつて・しゆのはぢを・たすけんがために・ただもりには・しらせずして・ひそかに・さんこうのでう・ちからおよばざるしだいなり・なほそのとが・あるべくは・そのみを・めしつかはすべきは(イか)・つぎにかたなのことは・とのもづかさに・あづけおきをはんぬ・かのかたなを・めしいだし・かたなのじつぷに・まかせて・とがの・さう・あるべき(べきレある)かと・まをされたりければ・じやうわう・このぎもつともとて・いそぎ・かのかたなを・めしいだして・えいらんあるに・うへはさやまきの・くろう・ぬつたりけるが・なかは・きがたなに・ぎんぱくをぞ・おしたりける・たうざの・ちじよくを・のがれむが・ために・こしのかたなを・たいするよし・あらはす・といへどもごにちの・そしようを・ぞんじしつて・きがなたを・たいしける・よういの・ほどこそ・しんべうなれ・つぎに・らうじう・こにはにしこうのことかつうは・ぶしの・らうどうのならひなり・されば・これは・ただもりが・とがにはあらずとて・かへつてえいかんに・あづかつしうへは・あへて・ざいくわのさたは・なかりけり
清盛昇進の沙汰(あひの物)103
そのこども・しよゑのすけを・へて・しようでんせしに・ひと・でんじやうのまじはりを・きらふにおよばず・あるときただもり・あかしのうらの・つきみむとて・はりまへ・げかうせられたりけるが・ほどなう・かへりのぼられ・たりければ・ひとびと・あかしP6
のうらの・つきはいかにと・とひたまへば・ただもりのへんじには
ありあけのつきもあかしのうらかぜになみばかりこそよるとみえしか
と・まをされたりければ・じやうわうも・おほきにぎよかんあつて・やがてこのうたをば・きんえふしふにぞ・いれられたる・またただもり・せんとうに・かようて・あそばれける・にようばうの・もとに・みなくれなゐのあふぎの・つまに・つきいだしたりけるを・とりわすれて・いでられければ・かたへのにようばうたち・あれは・いづくよりの・つきかげぞや・いでどころ・おぼつかなし・なんど・わらひ・あはれければ・このにようばう
くもゐよりただもりきたるつきなればおぼろけにてはいはじとぞおもふ
ことを・ともとかやただもりの・すいたりければ・このにようばうもいふなりけり・かくて・ただもり・にんべい三ねん・しやうぐわつ十五にちに・とし五十八にて・うせたまふ・きよもり・ちやくなんたるによつて・そのあとをつぐ・ほうげんぐわんねんの・七ぐわつに・しゆじやう・じやうわうの・みくにあらそひの・ありしとき・きよもり・しゆじやうの・おんみかたに・さふらひて・くんこうあり・つぎのとしはりまのかみに・うつつて・おなじき三ねんに・だざいだいにになる・またへいぢぐわんねん十二ぐわつに・のぶより・よしともが・むほんのときも・きよもりなほ・みかたにさふらひて・くんこうあり・くんこうひとつにあらず・おんしやうこれなほおもかるべしとて・やがて・じやう三みして・うちつづき・さいしやうゑふのかみ・けんびゐしのべつたう・ちうなごん・だいなごんに・へあがり・あまつさへせうじやうのくらゐにいたる・ないだいじんより・さうを・へず・だいじやうだいじん・じゆ一ゐに・あがり・たまひけり・たいしやうには・あらねども・ひやうぢやうをたまはつて・ずゐじんをめしぐす・れんしやに・のつて・きうちうを・いでいること・ひとへに・しつせいのひとに・おなじP7
童のさた104
だいじやうだいじんは・いちじんに・しはんとして・四かいに・ぎけいせり・みちをろんじ・くにををさめ・いんやうを・やはらげたまへり・そのひとに・あらずんば・けがすべき・くわんならねば・そくけつのくわんとも・なづけられたり・きよもり・そのひとにはあらねども・かやうに・一てん四かいを・たなごころに・にぎりたまひしうへは・ひととかうまをすに・およばず・かくて・にんあん三ねん・十一ぐわつ十二にちに・きよもり・やまひに・をかされ五拾一にて・しゆつけし・ほうみやう・じやうかいとぞ・なのられける・されば・そのしるしにや・しゆくびやうたちどころに・いえて・てんめいを・まつたうし・ひとの・したがひ・つきたてまつることは・ふくかぜのくさきを・なびかすが・ごとし・よのあまねく・あふげることも・ふるあめの・こくどを・うるほすに・ことならず・六はらどのの・一けのきんたちと・だにも・いひてんしかば・くわぞくも・えいえうも・おもてをむかひ・かたを・ならぶるひとも・なし・されば・にふだうのこじうと・へいだいなごんときただのきやうの・この一もん・たらざらんひとは・みな・にんぴにん・たるべしとぞ・のたまひける・されば・いかにもして・このえんゆかりに・むすぼほれむとぞ・しける・えもんの・かきやう・ゑぼしの・ためやうに・いたるまで・なにごとも・みな・六はらやうとだに・いひてんしかば・一てん四かい・これをぞ・まなびける・いかなる・けんわうせいしゆの・おんまつりごと・せつしやう・くわんぱくのごせいばいをも・なにとなく・よに・あまされたるものの・そしり・かたぶき・まをすことは・つねの・ならひなれども・このぜんもん・よさかりのあひだは・いささか・いるがせに・まをすものなし・そのゆゑは・にふだうの・はかりごとに・十四五六のわらんべP8
を・三百よにん・めしあつめ・かみを・かぶろに・きりまはし・あかきひたたれを・きせ・かぶろと・なづけて・めしつかはれけるが・きやう・しらかはに・みちみちて・わうへんしけり・されば・いささかも・へいけの・ことを・いるがせに・まをすものあれば・一にん・ききいださん・ほどこそ・ありけれ・よたうに・ふれめぐり・そのいへに・らんにふし・しざいざふぐを・つゐぶくし・そのやつを・からめとつて・六はらへ・ぐして・まゐる・にふだう・うけとらせ・そくじにうしなはれけり・されば・みちをすぐる・むまくるまも・六はらどのの・かぶろと・だにも・いひてんしかば・みなよきてこそ・とほしけれ・されば・きうもんを・しゆつにふすと・いへどもしやうみやうをたづねらるるに・およばず・けいしの・ちやうり・これがために・めをそばむとも・みえたり
我身の栄花105
わがみのえいぐわを・きはむるのみならず・ちやくししげもり・ないだいじんの・さだいしやう・じなん・むねもり・ちうなごんのうだいしやう・三なんとももり・三ゐのちうしやう・四なんしげひらくらんどのとう・ちやくそんこれもり・四ゐのせうしやうとて・およそ・一もんのくぎやう・十六にん・てんじやうびと・三拾よにん・そのほかしよこくのじゆりやう・ゑふ・しよし・つがふ・六拾よにんなり・よにはまた・ひとなくぞ・みえられける・むかしならのみかどのおんとき・じんぎ五ねんに・てうかに・こんゑのたいしやうを・はじめおきたまひしより・このかた・きやうだいさうに・あひならび・たまふこと・わづかに・三四ケどなり・もんとくてんわうのおんときは・ひだんに・よしふさ・ないだいじんのさだいしやう・みぎに・よしあふ・だいなごんのうだいしやう・これは・かんゐんのさだいじんふゆつぐのおんこなり・しゆじやくゐんのおんときは・ひだんにさねP9
より・をののみやどの・みぎにもろすけ・九でうどのていじんこうのおんこなり・ごれんぜいゐんの・おんときは・ひだんに・のりみち・おほ二でうどの・みぎに・よりむね・ほりかはどの・みだうのくわんぱくのおんこなり・二でうゐんのおんときは・ひだんに・もとふさ・まつどの・みぎに・かねざね・つきのわどの・ほうしやうじどののおんこなり・これみな・せつろくのしんのごしぞん・ぼんにんにおいては・そのれいなし・ひごろは・でんじやうのまじはりを・だにもきらはれ・たまひしひとの・しそんの・いまは・きんじきざつぱうを・ゆり・りようらきんしうを・みにまとひ・あまつさへ・だいじんのたいしやうにいたつて・きやうだい・さうに・あひならびたまふこと・まつだいとは・まをしながら・ふしぎなりし・ことどもなり・また・にふだうしやうごくは・おんむすめも・八にん・ましましけり・それもみな・とりどりに・さいよはひ(イさいはひ)たまふ・一は・さくらまちのちうなごんしげのりきやうに・八さいより・おんやくそくありしが・へいぢのらんに・ひきちがへたてまつりて・のちには・くわざんのゐんの・さだいじんどのの・みだいばんどころに・ならせたまふ・きんだちあまた・ましましけり・そもそも・このさくらまちのちうなごんしげのりきやうと・いふは・こせうなごんにふだうしんせいの・じなんなり・ことに・こころ・すきて・おはしければ・つねは・よしののやまを・こひつつ・ちやうにさくらをうゑおき・そのうちに・やをつくつて・すまれければ・きたるとしの・はるごとに・みるひと・さくらまちとぞ・まをしける・さくらはさいて・七ケにちにちる・ちうなごん・はなのなごりを・をしみたまひて・つねは・あまてるおんかみに・いのりまをされければにや・三七にちまで・なごりあり・きみも・けんわうにて・ましませば・しんも・しんとくを・かがやかし・はなも・こころあればにや・廿かのよはひを・たもちけり・二は・きさきにたたせたまひ・わうじ・ごたんじやうあつて・くわうたいしに・たたせたまひしかば・ひととかうまをすに・およばず・三は・六でうの・せつしやうどのの・きたの・まんどころに・ならせたまふ・たかくらのゐん・ございゐのおんとき・おんははしろとて・三こうになぞらふる・せんじを・かうぶらせたまひ・しらかはP10
どのと・まをして・よには・また・おもきひとにてぞ・ましましける・四は・れんぜいのだいなごんりうばうきやうの・きたのかた・五は・ふげんじどのの・きたのまんどころに・ならせたまふ・六は・七でうのしゆりのだいぶのぶたかのきやうに・あひぐしたまへり・七は・ごしらかはのほうわうへ・まゐらせたまひて・ひとへに・にようごのやうにてぞ・ましましける・これは・あきのくにいつくしまの・ないしのはらの・おんむすめなり・そのほか・九でうゐんのざふし・ときはがはらにも・ひめぎみ一ところ・ましましけり・これは・のちには・おんあねくわざんのゐんどのへ・まゐらせたまひて・じやうらふにようばうにて・らふのおんかたとぞ・まをしける・につぽんあきつしまは・わづかに六拾六ケこく・へいけちぎやうのくに・卅よケこく・すでに・はんこくにおよべり・そのほか・しやうゑんでんばた・いくらといふ・かずをしらず・きらじうまんして・だうじやう・はなのごとし・けんきぐんじゆして・もんぜんにいちをなす・やうしうのこがね・けいしうのたま・ごぐんのあや・しよくかうのにしき・七ちん万ぱう一として・かけたることぞ・なかりける・かだうぶかくのもとゐ・ぎよりようしやくばのもてあそびもの・おそらくは・ていけつもせんとうも・これにはすぎじとぞ・みえし
義王106
むかしは・げんぺいりやうけ・てうかに・めしつかへて・わうくわにも・したがはず・てうけんをかろんずるものあれば・たがひにいましめを・くはへられしかば・よのみだれも・なかりしに・ほうげんにためよしきられ・へいじによしともちうせられしのちは・すゑずゑのげんじ・ありといへども・あるひは・ながされ・あるひは・ちうせられしかば・一かうへいけの・一るゐのみ・はんじやうして・かしらを・さしいだすものも・なし・されば・すゑのよに・なにごとか・あらんとぞ・みえし・かやうににふだうP11
しやうごく・一てん四かいを・たなごころににぎり・たまひしうへは・よのそしりをも・はばからず・ひとの・あざけりをもかへりみず・ふしぎのことをのみ・したまひけり・たとへば・そのころ・きやうちうに・きこえたる・しらびやうし・ぎわう・ぎによとて・おとどいあり・これは・とぢとまをすしらびやうしのむすめなり・にふだうなかにもあねの・ぎわうをさいあいして・にし八でうのしゆくしよに・とりすゑてぞ・おかれたる・かかりければ・いもうとのぎによをも・ひとおもうして・もてなすことは・かぎりなし・ははの・とぢをも・にふだう・だいじのものにしたまひて・よきや・つくつて・とらせ・まいげつついたちごとに・百こく・百くわんを・くるまにて・おくられければ・いへのうちも・ふつきして・たのしいことは・かぎりなし・かかりければ・きやうちうの・しらびやうしども・ぎわうが・さいあいを・うらやむものもあり・また・そねむものも・おほかりけり・うらやむものは・あなめでたの・ぎわうごぜんの・さいはひや・おなじ・あそびものと・ならば・もつとも・かくこそ・あらまほしけれ・いかさまにも・これは・ぎといふ・もじを・なに・つきて・かくは・めでたきやらむ・いざや・われらも・つきてみんとて・あるひは・ぎ一と・つくものもあり・あるひはぎ二と・つくものも・あり・ぎとく・ぎふく・ぎじゆ・ぎはう・なんど・つけけり・そねむものは・なんでう・なにより・もじには・よるべき・なによりもじに・よらむには・たれかは・おとるべき・くわはうは・ただ・なにごとも・むまれがらにてこそ・あれとて・つかぬものも・おほかりけり・そもそも・わがてうに・しらびやうしの・はじまりけることは・とばのゐんのおんとき・しまのせんざい・わかのまへとて・かの二にんが・まひはじめたりけるとかや・はじめは・すゐかんに・たてゑぼし・しろきさやまきを・さして・まひければ・をとこまひと・なづけられたりしを・なかごろより・かたな・ゑぼしを・のけられて・しろき・すゐかんばかりにて・まひければ・しらびやうしとは・p12
なづけられけり・かくて・ぎわう・とりすゑられ・まゐらせて・三とせと・まうしし・はるのころ・またほとけとまうして・いうなる・あそびもの・一にん・いできにけり・これは・かがのくにの・ものとぞ・きこえし・そのころの・きやうちうのじやうげ・むかしより・おほくの・あそびものありつれども・かやうのものは・いまだ・なしとて・こぞつてこれをぞ・もてなしける・あるとき・ほとけごぜん・まをしけるは・われ・てんかに・かくれなしと・いへども・たうじ・ときめきたまふ・へいけ・だいじやうにふだうどのへ・めされぬことこそ・ほに(イほい)なけれ・あそびものの・すゐさんは・なにかは・くるしかるべきとて・あるとき・ほとけくるまにのつて・にし八でうどのへぞ・まゐりたる・ひとまゐつて・ほとけとまをして・いうなる・あそびものの・まゐつてさふらふと・まをしたりければ・にふだう・なんでふ・さやうの・あそびものは・ひとの・めしに・ついてこそ・まゐることにては・あれ・めしもなきところへ・すゐさんしかるべからず・そのうへぎわうが・あらむ・かぎりは・かみともいへ・ほとけともいへ・とうとう・まかりいでよと・いへ・ほとけすげなう・おほせをかうぶつて・はるばると・いでたりけるを・ぎわうごぜんまをしけるは・あそびもののすゐさんは・つねのならひ・としも・いまだ・をさなしとこそ・うけたまはりさふらへ・たまたま・おもひたつて・まゐりて・さふらふに・すげなうおほせを・かうぶつて・いかばかりか・はづかしう・かたはら・いたくも・さふらはん・わが・たてしみちなれば・ひとのうへとも・おぼえず・たとひ・まひを・ごらんじ・うたをこそ・きこしめさずとも・めされて・ごたいめんあつて・かへさせ・おはしまさんは・ありがたき・おなさけにてこそ・さふらはんずれ・ただめさるべしと・まをしたりければ・にふだうさらば・よべとて・よびかへさせ・いであひ・たいめんしたまひて・いかにほとけ・けふのげんざんは・いかにも・あるまじかりつれども・ぎわうが・なにとおもひてやらp13
ん・しきりに・まをすあひだ・めしたるなり・かやうにまた・めされて・こゑを・きかざらんは・むねんなるべし・なにごとにても・いまやう一・うたへかしと・のたまへば・ほとけうけたまはつて・いまやうひとつぞ・うたうたる・きみをはじめて・みるときは・ちよもへぬべし・ひめこまつ・おまへのいけなる・かめをかに・つるこそ・むれゐて・あそぶめれと・これを・二三べん・うたひすまし・たりければ・みなひと・かんじあはれけり・にふだうしやうごくも・おもしろげに・おもひたまひて・わう・わごぜは・いまやうは・じやうずにて・ありけるや・いまやうが・おもしろければ・まひもさだめて・おもしろかるらん・なにごとにても・一ばんさうらは・ばや・つづみうち・めせとて・めされて・一ばん・まはせらる・およそ・このごぜん・としも十六・なるうへ・みめ・かたち・ならびなく・かみのかかり・まひすがた・こゑよく・ふしも・じやうずなれば・なじかは・まひも・そんずべき・こころもおよばずぞ・まうたりける・けんもんのひとびとも・みな・じぼくを・おどろかさずと・いふことなし・にふだう・まひにや・めでたまひけん・ほとけに・こころをぞ・うつされける・てんせいこのにふだうどのは・いらいらしきひとにて・おはしければ・まひのはつるをおそしとや・おもはれけん・はじめのわか一・うたはせ・せめのわか・いまだ・うたひも・はてざるに・ほとけを・いだいて・いりたまふ・ほとけごぜんまをしけるは・わらは・もとより・すゐさんのものにて・すげなう・おほせをかうぶつて・はるばると・いでさふらひしをも・ぎわうごぜんの・まをしじやうに・よつてこそ・めされまゐらせても・さふらへ・おぼしめしわすれぬ・おんことならば・めされてまたは・まゐりさふらふとも・けふは・ただ・いとまをたうで・いださせおはしませと・まをしければ・にふだうすべて・くるしかるまじ・ただ・ともかくも・じやうかいが・ままぞとよ・ただし・ぎわうp14
に・はばかるか・そのぎならば・ぎわうをこそ・いださめと・のたまへば・ほとけごぜん・それまた・こころうく・さふらふべし・わらは・もろともに・めしおかれ・まゐらせんだにも・いかばかりか・はづかしう・かたはらいたくも・さふらふべきに・まして・さやうに・ぎわうごぜんを・いださせおはしまさんは・いよいよ・こころうかるべしと・まをしけれども・にふだう・ぜひをも・いはせず・ぎわう・とうとうまかりいでよとの・つかひ・しきなみに・三どまで・たちければ・ぎわう・すこしも・やすらふべきに・あらずとて・はきのごひ・ちりひろはせ・みぐるしきものども・したためて・すでに・いづべきにぞ・さだまりける・ひごろより・かかるべしとは・おもひまうけし・ことなれども・さすが・きのふけふとも・おぼえず・この三とせがあひだ・すみなれし・しやうじのうちを・いづるにぞ・なごりもをしく・かなしくて・かひなきなみだぞ・ながれける・ぎわう・いでけるが・さるにてもとて・またたちかへり・すみなれししやうじに・かうぞ・かきつけたる
もえいづるもかるるもおなじのべのくさいづれかあきにあはではつべき
ぎわう・くるまにのつて・いでけるが・しきりになみだのすすみければ
いまさらにゆくべき(イいづちともいづべき)かたもおぼえぬになにとなみだのさきにたつらん
と・えいじつつ・ぎわう・しゆくしよにかへり・しやうじのうちに・たふれふし・なくよりほかの・ことぞなき・ははこれを・あやしみて・いかにや・いかにと・とひけれども・へんじを・するにおよばず・ぐしたるをんなに・たづねてぞ・さることありとは・しりてんげるかかりければ・きやうちうの・じやうげ・あはや・ぎわうこそ・にし八でうどのより・いとまたうp15
で・いだされたんなれ・いざやげんざんして・あそばんとて・あるひはふみをつかはす・ひともあり・あるひは・ししやを・つかはすものも・ありけれども・ぎわういまさら・ひとにげんざんして・あそび・たはぶるべきにあらずとて・ふみを・とりあげ・みるにおよばねば・まして・つかひを・あひしらふまでの・ことは・なかりけり・かくてそのとしもくれ・はるのころにも・なりしかば・にふだう・ぎわうがもとへ・ししやをたてて・いかにぎわう・そののちは・なにごとか・ありし・ほとけがあまりに・つれづれげになるに・まゐつて・まひをも・まひ・いまやうをも・うたうて・ほとけなぐさめよと・のたまひ・つかはされたりければ・ぎわう・あまりのこころうさに・へんじにも・およばず・にふだう・かさねてのたまひけるは・いかに・ぎわう・など・ごへんじをば・まをさぬぞ・まゐるまじきか・まゐるまじくは・いささか・そのやうを・すみやかにまをせ・にふだうも・きききつて・はからふむね・ありとぞ・のたまひける・ははのとぢ・あれほどの・おほせなるに・など・ごへんじをば・まをさぬぞ・ぎわう・まゐらんとおもふみちならばこそ・やがて・まゐるとも・まをさめ・まゐらざらんものゆゑに・なにとか・ごへんじをば・まをすべき・めすにまゐらずは・はからふむねありと・のたまふは・みやこのうちを・いださるるか・さらずは・いのちを・めさるるか・これふたつには・よもすぎじ・たとひ・みやこのうちを・いださるるとも・いづくかつひの・すみかなる・たとひ・いのちを・うしなはるるとも・をしかるべき・またいのちかは・一どうきもの
に・おもはれまゐらせて・ふたたびおもてをむかふべきに・あらずとて・なほ・へんたふにも・およばず・ははかさねて・まをしけるは・なんによのえん・しゆくせ・いまだはじめぬ・ことなれや・ちとせまつだいと・ちぎれども・やがて・わかるるなかも・あり・かりそめと・おもへども・ながらへはつる・ひともあり・ただよに・さだめなきは・なんによの・なからひなり・p16
いはんや・わごぜんたちは・あそびものの・一にち二か・めしおかれ・まゐらせんだにも・いかばかりか・ありがたう・さふらふべきに・まして・この三とせが・あひだ・めしおかれまゐらせぬれば・こんじやうのおもひいで・なにごとか・これにすぐべき・めすに・まゐらずば・はからふむねありと・のたまふは・みやこの・うちをこそ・いだされんずらめ・いのちを・めさるるまでのことは・よも・あらじ・たとひ・みやこのうちを・いださるるとも・わごぜんたちは・わかければ・いづくの・うらわ・いはきのうえにても・すぐさんことは・やすかるべし・わらはが・としおいおとろへたるみの・ならはぬひなずまゐを・かねて・おもふこそ・かなしけれ・ただわらはを・みやこのうちにて・すみはてさせんと・おもひたまへ・それぞ・なににも・すぐれたる・こんじやうごせの・けうやうにて・あるべけれと・なみだも・せきあへず・まをしたりければ・ぎわうさらば・まゐるまでにてこそ・あれとて・なくなくたちいで・けるがひとり・まゐらんも・ものうければとて・いもうとの・ぎによをも・ぐしけり・おなじやうなる・しらびやうし・二にん・そうじて・四にん・ひとつくるまに・とりのつて・にし八でうどのへぞ・まゐりたる・にふだう・ひごろ・めされしところより・はるかに・さがりたるところに・ざしきしてこそ・おかれたれ・ぎわう・こは・なにごとの・とがぞや・はては・ざしきを・さへ・さげられつることの・こころうさよ・これに・つけても・なにしにか・まゐりけんと・おもふに・けしきを・ひとに・みえじと・おさふるそでの・したよりも・あまりてなみだぞ・ながれける・ほとけごぜん・ひごろ・めされぬところにても・さふらはず・ただ・これへめさるべし・さらずは・いでて・げんざんせんと・まをしけれども・にふだう・なんでふと・はなつくあひだ・ちからおよばず・そののちにふだう・いであひ・たいめんしたまひて・p17
いかにぎわう・そののちは・なにごとかありし・ほとけが・あまりに・つれづれげなるに・なにごとにても・いまやうひとつ・うたへかしと・のたまへば・ぎわう・まゐるほどにては・ただともかうも・にふだうどのの・おほせにこそと・おもひければ・おつるなみだを・おさへて・いまやう・ひとつぞ・うたうたる・つきふけ・かぜをさまつてのち・こころのおくを・たづぬれば・ほとけもむかしは・ぼんぶなり・われらも・おもへば・ほとけなり・いづれも・ぶつしやうぐせるみを・へだつるのみこそ・おろかなれと・これを二三べん・うたひすましたりければ・みなひと・あはれをぞ・もよほしける・にふだうしやうごく・いしうも・うたうたり・やがて・まひをも・みるべけれども・いささかまぎるること・いできたり・こののちは・めざすとも・つねに・まゐつて・まひをもまひ・いまやうをも・うたうて・ほとけなぐさめよ・えいとぞ・のたまひける・ぎわうしゆくしよに・かへりしやうじの・うちに・たふれふし・なくよりほかの・ことぞなき・おやのめいを・そむかじと・ふたたび・うきみちに・おもむき・はては・ざしきを・さへ・さげられつることの・こころうさよ・なほも・うきよに・ながらへ・あるならば・かさねて・かく・うきことをこそ・みきかんずらめ・かかるついでに・ひのなかみづの・そこへも・いりなばやとぞ・かなしみける・あねみをなげば・いもうとのぎによも・ともにみをなげんと・いふ・ははのとぢ・うらむるもことわりなり・ひごろは・これほどまで・なさけなかりける・ひととは・つゆおもひよらずして・とかう・けうくんして・まゐらせつることの・こころうさよ・あね・みをなげば・いもうとのぎによも・ともにみを・なげんと・いふに・わらはが・としおいおとろへたるみの・ひとり・のこりとどまつて・なににかせん・ともに・みをこそ・なげんずらめ・ただし・しごも・きたらぬ・おやに・みをなげさせんは・五ぎやくざいにてもや・あらむp18
ずらん・みだによらいは・さいはうじやうどを・しやうごんし・一ねん十ねんをも・きらはず・十あく五ぎやくざいをも・みちびかんといふ・ひぐわん・ましますなる四拾八の・せいぐわんのうちに・だい三拾五のぐわんには・われらが・やうに・ぐちもんまうなるものを・みちびかむといふ・ひぐわんましますなり・われらこのたび・おもひで・あるでも・なうて・ふたたび・三づに・しづみなは・また・いつのよにかは・うかぶべき・かほどめでたき・みやうがうに・すがつて・ごくらくじやうどの・ふたいの・はうどに・まゐらんとは・おもひたまはずやと・なみだも・せきあへず・いひければ・ぎわう・まことに・しごも・きたらぬ・おやに・みをなげさせんは・五ぎやくざい・うたがひ・あらずとて・みをなげんことをば・おもひとどまり・二十一にて・さまかへけり・いもうとの・ぎによも・ともにと・ちぎりし・ことなれば・十九にて・さまかへけり・ははのとぢ・あれほどに・さかんなる・ふたりのむすめの・さまを・かふる・よのなかに・わらはが・としおいおとろへたるみの・しらがを・つけても・なににかはせんとて・四十五にて・さまかへけり・三にん・さがのおくなる・やまざとに・ねんぶつまをし・わうじやうけつぢやう・りんじゆしやうねんとぞ・いのりける・かくて・はるすぎ・なつたちぬ・あきのはつかぜ・たちぬれば・ほしあひのそらを・ながめつつ・あまの・とわたる・かぢのはに・おもふことかく・これなれや・ものおもは・ざらんひとだにも・くれゆくあきの・ゆふべは・かなしかるべし・いはんや・ものおもふひとの・こころのうち・おしはかられて・あはれなり・にしのやまのはに・かかるひを・みては・あれこそ・さいはうのじやうどにて・あんなれば・いつか・われらも・かのところにむまれて・ものを・おもはで・すごすらん・これにつけても・むかしのことの・わすられて・つきせぬものは・なみだなり・ひもやうやうしぐれければ・p19
三にんのものども・ひとつところにさしつどひ・ぶつぜんに・はなかうそなへ・ともしび・かすかに・かかげつつ・ねんぶつして・ゐたるところに・とぢふさぎたる・たけのあみどを・ほとほとと・たたくおとしけり・三にんのものども・ねんぶつを・とどめて・いかさまにも・これは・われらがやうに・ぐちもんまうなるものの・ねんぶつして・ゐたるを・をかさんとて・まえんの・きたれるにこそ・ただし・まえんならば・あれほどの・たけのあみどを・おしあけて・いらむことは・やすかるべし・ただすみやかに・あけたらんほどに・たすけば・一ぶつ・たとひ・いのちを・うしなはるるとも・このほど・たのみたてまつる・ねんぶつ・あひかまへて・おこたるなよと・こころに・こころをいましめて・三にん・てにてを・とりくみ・とぢふさぎたる・たけのあみどを・おもひきつて・あけたれば・まえんにては・なかりけり・ほとけごぜんぞ・いできたる・ぎわう・はしりいで・ほとけがたもとに・とりついて・こは・さらに・うつつとも・おぼえさふらはぬものかな・ひるだにも・ひとめまれなる・やまざとへ・ただいまなにとして・きたりたまへると・いひければ・ほとけごぜん・いまさらまをせば・ことあたらしきに・にたり・まをさねばまた・おもはぬに・にたれば・はじめより・まをすぞよ・わらは・もとより・すゐさんのものにて・すげなう・おほせをかうぶつて・はるばると・いでさふらひしをも・わごぜんの・まをしじやうに・よつてこそ・めされまゐらせても・さふらへ・やがてわごぜんの・いだされたまひしこと・かならずひとの・うへとも・おぼえず・いつかまた・わがみのうへにて・あらんずらんと・おもひしに・あはせて・しやうじに・いづれか・あきにあはではつべきと・かきおきたまひし・ふでのあと・やがて・おもひしられてこそ・さふらひしか・いつぞやまた・わごぜんの・めされまゐらせて・いまやう・うたひたまひしとき・ざしきをさへ・さげp20
られ・たまひしことの・こころうさ・まをすばかりも・さふらはず・そののちは・いづくにとも・うけたまはらざりしが・このほど・ききいだしたてまつつて・うらやましきことに・おもひまゐらせ・いかに・いとまを・まをせども・おほかた・ゆるされ・まゐらすることも・さふらはず・つくづくものを・あんずるに・しやばのえいぐわは・ゆめのゆめ・たのしみ・さかえも・なにかせん・にんじんは・うけがたく・ぶつけうにはまた・あひがたし・いづるいき・いるをまたず・かげろふ・いなづまよりも・なほあやうし・かやうのことを・おもふにも・いとどこころの・とどまらずして・このひる・おもひも・かけぬ・ひまのありつるに・にげいでて・かくなりてこそ・まゐりたれとて・かづきたる・きぬを・うちのけ・たるを・みければ・さしも・はなやかなりし・えいぐわのたもとを・ひきかへて・あまになりてぞ・いできたる・ひごろの・とがは・これに・ゆるしたまへ・ゆるさんと・のたまはば・おなじあんじつに・ねんぶつまをし・ともに・ごしやうを・いのるべし・なほゆるさじと・のたまはばこれよりいづかたへも・あしにまかせて・まよひゆき・いかなるらんいはのかど・こけのむしろ・まつがねに・たふれふすまでも・ねんぶつまをしみだ三ぞんの・らいがうに・あづからんと・なみだも・せきあへず・まをしたりければ・ぎわう・あなはづかしの・わごぜんのこころのそこの・いさぎよさよ・ひごろは・これほどまで・おもひたまふひととは・いかでか・つゆほども・しるべき・なにごとも・うきよのなかの・さがなれば・かならず・ひとを・うらみと・おもふべからず・みのうきことをこそ・しるべきに・ややもすれば・わごぜんのことのみ・わすられで・かたごころに・かかつて・こんじやうもごしやうも・なかなかに・しそんじたるやうに・おぼえて・やるかたも・なかりつるに・わごぜんは・なにごとをも・おもひたまp21
はず・としもいまだ・十七とこそ・きくに・ゑどをば・いとひ・じやうどをば・ねがふべしとの・こころこそ・まことの・だうしんじやにては・おはしませ・わらはが・廿一にて・さまかへしをこそ・ひとも・ありがたき・ことにまをし・みながらも・ふしぎのことに・おもひしに・いま・わごぜんの・しゆつけに・くらぶれば・ことのかずにてあらざりけり・ひごろのとがは・なにしにか・つゆほども・のこるべき・いざやさらば・おこなはんとて・四にん・おなじあんじつに・ねんぶつまをし・ともに・ごしやうを・いのりけるが・ちそくこそ・ありけれども・つひには・わうじやうの・そくわいを・とげけるとぞ・うけたまはる・そののちにふだう・ほとけを・うしなうて・てんてを・わかつて・たづねさせられけれども・なかりければ・じやうかいが・ほとけはあまりに・みめがよかりつれば・てんぐが・とりたるに・こそとぞ・のたまひける・そののち・はんとしばかりあつて・ききいだされたりけれども・さやうに・なりたらんずるものをばとて・のちには・たづねさせられず・されば・ごしらかはのほふわうの・ちやうかうだうの・くわこちやうにも・ぎわう・ぎによ・ほとけ・とぢとうが・そんりやうと・一しよに・いれられけるとぞ・うけたまはる・あはれなりし・ことどもなり
二代の后107
とばのゐん・ごあんがののちは・ひやうかく・うちつづいて・しざいるけい・けつくわんちやうにん・つねに・おこなはれて・かいだいも・しづかならず・せけんも・いまだ・らくきよせず・おうほう・ぢやうくわんの・ころほひは・ゐんの・きんじゆしやをば・うちより・いましめらp22
れ・うちの・きんじゆしやをば・ゐんより・いましめられしかば・じやうげ・おそれ・おののいて・やすきここちも・
したまはず・ただ・しんゑんに・のぞんで・はくひようをふむに・おなじ・そのころの・しゆじやうとまをすは・二でうのゐん・じやうわうとまをすは・ごしらかはのゐんの・おんことなり・しゆじやう・じやうくわう・ふしの・おんあひだなりければ・なにごとの・おんへだてかわたらせたまふべき・なれども・おもひのほかのことども・あつて・しゆじやう・つねは・ゐんのおほせをも・まをしかへさせ・おはします・これもただ・げうきにおよんで・ひと・けうあくを・さきとするゆゑなり・そのころ・ひと・じぼくをおどろかし・よもつて・おほきに・そしり・かたぶきまをすことあり・そのゆゑは・こんゑのゐんのきさき・たいくわうたいこうぐうと・きこえさせたまひしは・おほゐのみかどの・うだいじんきんよしこうの・おんむすめなり・せんていに・おくれ・まゐらつさせ・たまひてのちは・ここのへのほか・このゑかはらの・おほみやのごしよに・うつりぞ・すませたまひける・いつしか・さきの・きさいのみやにて・ふるめかしう・かすかなる・おんすまひにてぞ・わたらせたまひける・ぢやうくわんの・ころほひは・おんとし・廿二三にもや・ならせ・おはしましけん・おんさかりも・すこし・すぎさせたまふほどなり・されども・てんかだい一の・びじんの・きこえ・わたらせたまひしかば・しゆじやう・つねは・いろにのみ・そみたる・おんありさまにて・ひそかにかうりよくしに・ぜうし・ぐわいきうに・ひき・もとめしむるにおよんで・ひそかに・おほみやへ・ごえんしよあり・おほみやあへて・ごへんじも・なかりければ・しゆじやうひたすら・ほに・あらはれて・きさき・じゆだいあるべきよしを・だいじんけへ・おほせくださる・このこと・てんかに・おいて・ことなる・しようじなりければ・くぎやう・せんぎあつて・おのおのいけんにいはく・かのそくてんくわうごうは・たいそうのきさき・かうそうくわうてい
のけいぼなり・たいそう・ほうぎよののち・かうそうのきさきに・たちたまへるれいは・きけども・それは・いてうの・せんきたるうへ・p23
べつだんのこと・わがてうには・じんむてんわうよりこのかた・にんわう七拾よだいに・いたらせたまふまで・いまだ・二だいのきさきの・れいをきかずと・しよきやう一どうに・うつたへ・まをされたりければ・じやうくわうもこのぎ・おほきに・しかるべからざるよし・おほせければ・しゆじやうおほせありけるは・てんしに・ぶもなし・われ十ぜんの・よくんに・よつて・いま・ばんじようのはうゐを・たもつ・これらほどのことを・えいりよに・まかせざるべきとて・すでに・ごじゆだいのひを・おんさだめありけるうへは・ちからおよばせたまはず・おほみや・このよし・きこしめされし・ひよりして・なのめならず・おんなげきに・しづませ・おはします・せんていに・おくれまゐらせし・きうじゆのあきの・はじめ・おなじ・くさばのつゆとも・きえ・やがて・いへをも・いでよをも・のがれたらましかば・いま・かかる・うきことを・きかざらましとぞ・おほせける・そののち・ちちのおとど・まゐらせたまひて・やうやうに・こしらへ・まをさせたまひけるは・よに・したがはざるを・もつて・きやうじんとすと・みえたり・すでに・ぜうめいを・くだされぬるうへは・しさいを・まをすに・ところなし・はやはや・ごじゆだい・あるべし・これひとへに・ぐらうを・たすけさせ・おはします・ごかうかうの・おんいたり・なるべし・なんどまをさせたまひたり・けれども・おほみやあへて・ごへんじも・なかりけるが・ややあつて・ちちの・おとどの・ごへんじかと・
おぼしくて・おんすずりのふたに・かうぞ・あそばされける
うきふしにしづみもやらで(イはてぬよ)かはたけのよにためしなきなをやながさむ
よには・いかにしてかは・もれにけむ・いうに・やさしき・ためしにぞ・まをしはべりける・すでにごじゆだいの・ひにも・なりしかば・ちちのおとど・ぐぶの・かんたちめ・しゆつしやのぎしき・こころことに・いだしまゐらつさせ・たまp24
ひけり・おほみやものうきおんいでなりければ・とみにも・いでさせたまはず・はるかに・よふけさよも・なかばすぎてのち・おほみや・なくなく・おんくるまに・たすけ・のせられさせ・たまひけり・ものうき・おんいでなりければ・いろある・ぎよいをば・めさず・しろきおんぞ・十五ばかりぞ・めされける・うちへ・まゐらせたまひては・れいけいでんに・うつりぞ・すませたまひける・おんあさまつりごとを・すすめ・まゐらつさせ・たまふばかりなり・かのししんでんの・くわうきよには・けんじやうの・しやうじをたてられたり・いいん・ていごりん・ぐせいなん・たいこうばう・ろくりせんせい・りせきしば・りしやうぐんがすがたを・さながら・うつせる・しやうじもあり・てなが・あしなが・むまかたのしやうじ・おにのま・をはりのかみ・をののだうふうが・七くわいげんじやうの・しやうじと・かきながせるも・ことわりなり・かのせいりやうでんの・ぐわとのみしやうじには・むかし・かなをかが・うつせるゑんざんの・ありあけのつきも・ありとかや・こゐんの・いまだ・えうちに・わたらせたまひし・そのかみ・なにとなき・おんて・まさぐりに・かき・くもらかさせたまひしがありしながらに・かはらぬを・ごらんじて・さすが・せんていの・おんおもかげ・おんこひしうや・おもひまゐらつさせたまひけむ・かうぞあそばされける・
おもひきやうきみながらにめぐりきておなじくもゐのつきをみんとは
そのおんあひだの・おんなからひいひしらず・なにとなく・ものあはれなりし・おんことなり
額打論108
かくてしゆじやうは・えうまんぐわんねんの・はるのころより・つねは・ごふよのおんことと・きこえさせたまひしが・なつのころにも・なp25
りしかば・ことのほかに・おもらせたまひけり・これに・よつて・おほくらのたいふ・いきのかねもりが・むすめのはらに・こんじやう一のみやの・こんねん・二さいに・ならせ・たまふが・わたらせたまひけるを・たいしに・たてまゐらすべしなんどきこえさせたまひしが・おなじき六ぐわつ廿五にちに・にはかに・しんわうのせんじを・かうぶらせたまひ・そのよ・やがて・じゆぜんありしかば・てんか・なにとなう・ものあわてたる・さまなりけり・そのころのいうしよくのひとびとの・まをしあはれけるは・ほんてうに・どうたいのれいを・たづぬるに・せいわてんわう・九さいにて・もんとくてんわうの・おんゆづりを・うけさせたまひしは・かの・しうこうたんの・せいわうに・かはり・なんめんにして・一じつばんきの・おんまつりごとを・をさめたまひしに・なずらへて・ぐわいそちうじんこうえうしゆをふちしまゐらつさせ・たまひし・これせつしやうの・はじめなり・とばのゐん五さい・こんゑのゐん三さい・それをこそ・ひといつしか・なりと・まをししに・これはわづかに・二さいに・ならせたまふ・せんれいなし・ものさわがしとも・おろかなり・おなじき七ぐわつ廿七にちに・しんてい・だいごくでんにして・ごそくゐあり・てんかの・いうきともに・あひまじはつて・よろづなにごとも・とりあへぬ・おんことどもにてぞ・わたらせたまひける・おなじき廿九にちに・じやうわうつひに・ほうぎよならせたまひけり・みくらゐを・さらせたまひては・わづかに卅よにちぞ・ましましける・こんねんは廿三に・ならせ・おはします・つぼめるはなの・ちれるがごとし・ひとびと・おんなごりををしみたてまつつて・八ぐわつ七かまで・おきたてまつりたりしかども・さてしもわたらせたまふべきならねば・くわうりうじの・うしとら・れんたいののおく・ふなをかやまのふもとに・おくりをさめたてまつる・おほみや・二だいのきさきには・たたせたまひしかども・さまでの・おんさいはひもわたらせたまはず・またこのきみに・さへ・おくれ・まゐらつさせ・たまひたりしが・つひに・みぐし・おろさせ・たまひけり・なかにも・ぎをんのべつたうちようけんほういんの・いまだp26
ごんだいそうづにて・やまより・くだられけるが・ごさうそうの・けぶりをみたてまつつて・かうぞ・えいじ・たまひける
つねにみし(イきのふみし)きみがみゆきをけふとへばかへらぬたびときくぞかなしき
かかりける・ごさうそうのよ・えんりやく・こうぶく・りやうじのだいしう・がくうちろんと・いふことを・しいだして・たがひのらうぜきに・およぶ・一てんのきみ・ほうぎよのときは・なんぼく二きやうの・たいしう・ことごとく・ぐぶして・ごむしよの・めぐりにわがてらでらの・がくをうつことあり・まづ・しやうむてんわうのごぐわん・あらそふべきてらなければとて・とうだいじのがくをうつ・つぎに・たんかいこうの・ごぐわんとて・こうぶくじの・がくをうつ・ほくきやうには・こうぶくじにむかへて・えんりやくじの・がくをうつ・つぎに・てんむてんわうのごぐわん・ちしようだいしのさうさうとて・をんじやうじのがくをうつ・しかるを・こんど・さんもんに・いかがはおもひけむ・せんれいを・そむいて・こうぶくじの・うへに・えんりやくじの・がくをうつあひだ・なんとの・たいしう・いきどほり・こうぶくじの・さいこんだうしゆに・くわんおんばう・せいしばうとて二にんのあくそうあり・くわんおんばうは・もえぎのはらまきに・しらえのおほなぎなたの・さやをはづし・せいしばうは・くろいとをどしの・よろひに・おほたちを・ぬき・二にん・はしりかかり・えんりやくじの・がくを・きつて・おとす・きよみづほうしに・ちもんばう・はしりよつて・がくを・さんざんに・きりやぶつてんげり・うれしやみづ・なるはたきのみづひは・てるともたえず・とうたへ・つねに・とうたへと・はやしあげて・わがかたへぞ・はしりかへりける
清水炎上109
一てんのきみ・みよを・はやう・せさせ・おはしまさんときは・いかなる・こころなき・さうもくまでも・うれひたるいろp27
をこそ・あらはすべきに・このあさましさに・じやうげみな・四はうへ・にげちりぬ・おなじき八かのひ・れいのさんもん
のたいしう・またげらくすと・きこえしかば・だいりならびに・ゐんのごしよへ・ぐんびやう・めされけり・きやうちうの・さうどう・なのめならず・また・なにものか・まをしいだしけん・一ゐん・やまのたいしうにおほせて・へいじつゐたうあるべきよし・きこえしかば・へいけのひとびとこは・いかがせんとぞ・さわがれける・こまつどのの・いまだそのころ・さゑもんのかみにて・おはしけるが・たうじ・なにごとによつてか・さやうのおんことの・わたらせたまふべきとは・せいせられけれども・あまりに・あわてて・さわぎ・ののしること・なのめならず・おなじき九かのひ・れいのさんもんの・たいしうすでに・げらくするあひだ・ぶしけんびゐし・にしさかもとに・ゆきむかふを・たいしう・ことともせず・うちやぶつて・らんにふしけるあひだ・一ゐん・ろくはらへ・ごかうなる・へいしやうごくも・さわがれけり・されども・たいしうそぞろなる・せいすゐじに・おしよせたり・おうては・さかおもて・からめてはせいかんじ・うたのなかやまより・よせきたる・きよみづほうし・じやうくわくかまへて・たてこもる・たいしう・おしよせたりければ・ぶんないは・せばかりけり・ひとたまりも・たまらず・おちけり・ふせぐところの・たいしう・卅よにん・うちころさる・そののち・じちうに・みだれいつて・ひをはなつ・だうしやたふめう・ぶつかくそうばう・いちうも・のこさず・やきはらふ・せいすゐじとまをすは・こうぶくじの・まつじなるに・よつて・これは・さんぬる・ごさうそうのよの・くわいけいの・はぢを・きよめんが・ために・やくなりとぞ・まをしける・たいしう・かへりのぼりての・こうてうに・くわんおんや・くわきやうへんじやうちは・いかにと・ふだにかいて・だいもんに・たてたりければ・りやくこふふしぎと・これを・いふなりと・かへりふだにぞ・たてたりける・いかなる・あとなしものの・しわざにてか・ありけむ・をかしかりし・ことどもなり・さるほどに・ことしづまりしかば・一ゐん・ほうぢうじどのp28
へ・くわんぎよなる・さゑもんのかみ・おんともに・まゐられたり・ちちの・おとどは・とどまりたまふ・これは・なほろくはらの・えうじんのためとぞ・おぼえたるさゑもんのかみ・ほどなう・かへりまゐられ・たりければ・ちちのおとど・のたまひけるは・さるにても・一ゐんの・ごかうこそ・おほきにおそれいつて・おぼゆれ・いかさまにもこれは・おほせあはせらるるむねの・あるに・こそと・のたまへば・さゑもんのかみ・ゆめゆめさやうのおんこと・おんことのはに・いださせたまふべからず・ひとに・ちゑつけがほに・なかなか・あしう・さふらひなんず・ただいくたびも・えいりよに・そむかせたまはで・ひとのために・ぜんを・ほどこさせ・おはしまさば・おんみの・おそれ・あるまじうさふらふとて・たたれければ・あはれこの・しげもりほど・なにごとに・つけても・おほやうなるひとは・なかりけりと・ちちのおとども・のたまひける・さるほどに・ほうぢうじどのには・一ゐん・くわんぎよののち・ごぜんに・うとからぬひとびとを・めしてさるにても・つゆ・おぼしめしよらぬ・おんことを・なにものか・まをしいだしたりけむ・ゆめの・やうなることかなと・おほせければ・さいくわうが・まをしけるは・てんに・くちなし・ひとにいはせよと・まをすことのさふらふなれば・へいけ・あまりに・くわぶんに・なりゆき・さふらふのあひだ・ほろぶべき・ぜんぺうにて・てんの・つげにてもや・さふらふらんと・まをしたりければ・ひとびと・これ・よしなし・かべに・みみありとて・おのおのくちをぞ・とぢられける・ことしは・りやうあんなればとて・ごけい・だいじやうゑをも・おこなはれず・けんしゆんもんゐんの・いまだそのころ・ひんがしのおんかたとて・わたらせたまふ・おんはらに・一ゐんの・みことの・こんねん・五さいに・ならせたまふが・わたらせたまひけるが・にはかにしんわうの・せんじを・かうぶらせたまひ・あけければ・かいげんあつて・にんあんぐわんねんとぞ・まをしけるp29
春宮立(あひ)110
きよねん・しんわうの・せんじ・かうぶらせたまひたりし・わうじ・おなじき八ぐわつ十かのひ・とう三でうどのにして・とうぐうに・たたせたまふ・とうぐうと・まをすは・つねはていのみこなり・また・たいしとまをして・しゆじやうの・おんおととの・まうけのきみに・そなはらせたまふことあり・これをば・たいていとも・まをす・しかるにしゆじやう・おんをひ・三さい・とうぐう・おんをぢ・六さい・ぜうぼく・あひかなはせ・たまはず・ただし・一でうゐん七さい・三でうゐん十一さいにして・とうぐうに・たたせたまふ・されば・せんれいなきには・あらずやとぞ・ひとまをしける・しかるに・しゆじやう・二さいにて・みくらゐに・つかせたまひ・五さいと・まをしし・にんあん三ねん二ぐわつ十五にちに・みくらゐを・さらせたまひて・いつしか・ひと・しんゐんとぞ・まをしける・いまだ・ごげんぷくもなくして・だ[い]じやうてんわうのそんがう・かんか・ほんてうに・これや・はじめなるらん・六でうゐんのおんことなり・おなじき三ぐわつ十かのひ・しんてい・だいこくでんにて・ごそくゐあり・こんねんは・八さいに・ならせ・おはします・およそ・このきみの・てうかを・しろしめされけることは・一かう・へいけのはんじやうとぞ・みえし・なかにも・へいだいなごんときただのきやうは・みかどの・ごぐわいせきにて・おはしければ・かのやうきひが・さいはひしとき・やうこくちうが・さかえたりしが・ごとしにんあん四ねん・六ぐわつ十四かに・かいげんあつて・かおうぐわんねんとぞ・まをしける
殿下の乗合111
p30
おなじき・六ぐわつ十七にちに・一ゐん・おんとし四十三にて・ごしゆつけあり・ゐん・ごしゆつけののちも・なほ・ばんきのおんまつりごとを・しろしめされければ・ゐんに・さふらはれける・くぎやうでんじやうびとや・じやうげのほくめんにいたるまで・くわんゐほうろく・みにあまり・たり・されども・ひとのこころの・ならひにて・なほあきたらず・へいのひとびとの・くにをもしやうをも・たまはつたることをば・よに・めざましきことに・おもひあはれそのひと・ほろびなば・そのくには・あきなむ・そのくわんには・なりなん・なんど・うとからぬどちは・さしつどひ・ささやくときも・ありけり・ほうわうも・ないない・おほせけるは・むかしより・てうてきを・たひらぐるもの・おほしと・いへども・かかるれいは・いまだなしさだもり・ひでさとが・まさかどを・ほろぼし・らいぎが・さだたふ・むねたふを・せめ・ぎかが・たけひら・いへひらを・うちたりしにも・けんしやうおこなはるること・わづかに・じゆりやうには・すぎざりき・しかるを・きよもりにふだうが・かく・こころのままに・ふるまふことこそ・しかるべからね・これもただ・よすゑに・なつて・わうはふの・つきぬるにこそと・おぼしめしけれども・ついでも・なければ・おんいましめも・なし・へいけもまた・べつして・てうかを・うらみたてまつることも・なかりけるに・よのみだれ・そめけるこんぽんは・こまつどののじなん・しん三ゐのちうじやうすけもりの・いまだそのころ・ゑちぜんのかみとて・しやうねん十三に・なられける・いんじかおう二ねん・十ぐわつ十六にちに・ゆきははだれに・ふりたりけり・かれのの・けしきのおもしろさに・わかきさぶらひ・二三十き・めしぐして・たかども・あまた・すゑさせつつ・うこんのばば・むらさきの・きたののへんに・うちいでて・うづら・ひばり・おつたておつたて・ひねもすに・かりくらし・はくぼにおよんで・おほみやのおほぢより・こうぢきりに・ろくはらへこそ・かへられけれ・そのときのせうろく・まつどの・なかのみかど・ひがしのとうゐんの・ごしゆくしよを・ぎよしゆつあつて・いうはうもんより・じゆぎよなるべp31
きにて・ひがしのとうゐんを・くだりに・おほゐのみかどを・にしへ・ぎよしゆつなる・ほりかは・ゐのくまのへんにて・すけもり・でんかのぎよしゆつに・はなつきに・まゐりあふ・あまりにてうおんに・のみ・ほこつて・よを・よとも・ひとを・ひととも・せざつしうへ・めしぐしたりける・さぶらひみな・わかきものどもにて・れいぎ・こつぱふをも・ぞんぜず・一せつに・げばも・せず・ぜんぐうみずゐじんども・なにものぞ・らうぜきなり・ぎよしゆつ・のなるに・おりさふらへおりさふらへと・いらひけれども・みみにも・ききいれず・かけわつてこそ・とほりけれ・とののおんともの・ひとびと・くらさはくらし・にふだうのまごとも・つやつや・ぞんぜず・むまより・とつて・ひきおとし・あておとし・すこぶる・ちじよくにおよびけり・すけもり・はふはふ・六はらに・おはして・おほぢ・だいじやうのにふだうどのに・このよしうつたへまをされければ・にふだう・おほきに・いかつて・たとひ・いかなる・でんがにても・わたらせたまへ・にふだうが・あたりをば・一どは・などか・おぼしめし・はばからせたまは・ざるべきに・さやうに・おいさきある・をさなきものどもに・なさけなう・ちじよくを・あたへられける・ことこそ・かへすがへすも・ゐこんなれ・かかることよりして・ひとにも・あざむかるるぞ・このこと・おもひしらせまをさでは・えこそ・あるまじけれとのたまへば・こまつどのの・いまだ・そのころだいなごんのうたいしやうにて・ごぜんに・おはしけるが・このよしを・ききたまひ・ゆめゆめ・さやうのおんこと・おぼしめしよらせたまふべからず・しげもりが・こどもなんど・いひたらむずるものの・でんがのぎよしゆつに・まゐりあうて・のりものより・おりさふらはざりつることこそ・かへすがへすも・びろうには・さふらへ・そのうへ・よりまさ・みつもとなんどいふ・げんじどもに・あざむかれても・さふらはばこそ・一もんのちじよくにても・さふらふべけれ・これはすこしも・くるしうさふらふまじ・いかさまにも・でんがへ・ぶれいのよしをこそ・まをしたうさふらへとてぞ・たたれける・p32
そののちにふだう・こまつどのには・のたまひも・あはせられずして・かたゐなかの・さふらひの・きはめて・こはらかなるが・にふだうの・おほせよりほかは・おそろしき・ことなしと・おもひける・いせのかみかげつなを・さきとして・つがふ六十よにんを・めしてらい廿一にちに・しゆじやう・ごげんぷく・おんさだめの・おんために・でんが・さんだいあらんずる・みちにて・ぜんくうみずゐじんどもが・もとどり・きり・すけもりが・はぢすすぞと・のたまへば・これらかしこまつてうけたまはり・つがふそのせい・三百よきにて・でんがのぎよしゆつを・いまやいまやと・まちうけたてまつる・でんがは・このこと・ゆめにも・しろしめされず・しゆじやう・ごげんぷく・おんさだめ・ごかくわん・はいくわんのおんために・けふより・ごちよくろに・わたらせたまふべきにて・つねのぎよしゆつよりは・ひきつくろはせたまひて・ぜんくうみずゐじんどもに・いたるまで・はなやかにこそ・いでたちたれ・こんどは・たいけんもんより・じゆぎよなるべきにて・なかのみかどをにしへ・ぎよしゆつなる・ほりかは・ゐのくまのへんにて・つはものども・でんがの・ぎよしゆつを・まちえたてまつり・みくるまの・ぜんごさうにて・ときを・どつとぞ・つくりける・けふを・はれと・いでたちたりける・ぜんくうみずゐじんども・ここにおつつめ・かしこにおさへて・もとどりきる・ぜんくう六にんがうち・とうのくらんどたいふたけのりが・もとどりを・きるとては・これは・なんぢが・もとどりと・おもふべからず・しうの・もとどりと・おもふべしと・いひふくめてぞ・きつたりける・ずゐじん十にんが・うち・みぎのふしやうたけもとが・もとどりも・きられにけり・ぐぶのくぎやう・でんじやうびと・くるまの・ものみ・うちわり・むながけ・しりがい・きり・はなつたり・ければ・くものこを・ちらすが・ごとくにぞ・なりにける・すだれかなぐりおとし・とのの・みくるまの・うちへも・ゆみの・はず・つきいれ・なんど・しければ・でんが・あまりの・おそろしさにや・みくるまより・こぼれ・おちさせ・たまひて・あやしの・しづが・p33
こやに・なくなく・たちぞ・しのばせ・たまひける・つはものども・かやうに・さんざんに・しちらし・六はらに・かへりまゐつて・このよし・まをしたり・ければ・にふだう・しんべうなりとぞ・のたまひける・そののち・みくるま・つかまつるものも・なかりければ・いなばの・さいつかひ・とばの・くにひさまるは・げらふなりけれども・さがさがしきによつて・みくるま・つかまつる・せつしやうどのは・さてしも・わたらせたまふべきならねば・おんなほしの・そでにて・おんなみだ・おさへ・させ・たまひつつ・くわんぎよのぎしきの・あさましさ・まをすばかりも・なかりけり・たいしよくくわんたんかいこうのおんことは・なかなかまをすに・およばず・ちうじんこう・せうぜんこうより・このかた・せつしやう・くわんぱくの・かかる・おんめに・あはせたまふおんことは・これ・はじめとぞ・うけたまはる・これぞへいけのあくぎやうの・はじめとは・うけたまはる・そののち・こまつどの・このよしを・ききたまひて・そのとき・ゆきむかうたりける・いせのかみかげつなを・さきとして・つがふ・六十よにんを・かんだうせらる・たとひ・にふだう・ふしぎを・げぢしたまふとも・など・しげもりに・ゆめをば・みせざりけるぞや・およそは・すけもり・きくわいなり・せんだんは・ふたばより・かうばしとこそ・みえたれ・しげもりが・こどもなんど・いひたらんずるものの・ことしは・十二か三に・なるとこそ・おぼゆるに・いまは・れいぎこつぽふをも・ぞんじてこそ・ふるまふべきに・かかる・いひがひなきものを・めしぐして・おほぢ・にふだうのあくみやうをたつ・ふけうのいたり・なんぢひとりに・ありとて・すけもりをも・かんだうし・いせのくにへぞ・おひくだされける・そのころの・きやうちうの・じやうげ・あはれこの・たいしやうほど・なにごとに・つけても・いうに・やさしきひとは・なかりけりと・ほめぬひとこそ・なかりけれ・さるほどに・しゆじやうのごげんぷくも・そのよは・のびぬ・おなじき二十五にちに・ゐんのでんじやうにしてぞ・ごげんぷく・おんさだめは・わたらせたまひける・せつしやうどのは・p34
さてしも・わたらせたまふべき・ならねば・おなじき十一ぐわつ九かのひ・かねせんじを・うけたまはらせ・たまひ・おなじき十三にちに・だいじやうだいじんに・あがりたまふ・おなじき十二ぐわつ二十七にちに・ごはいがの・きこえ・ありしかども・よのなか・にがにがしうぞ・みえし・さるほどに・としくれて・かおうも・三ねんに・なりにけり・
徳大寺厳島詣112
かおう三ねん・しやうぐわつ五かのひ・しゆじやう・てうきんのおんために・ほうぢうじどのへ・ぎやうかうなる・これは・とばのゐん七さいまで・ぎやうかうなりたりし・こんど・そのれいとぞ・きこえし・こんねん十一さいに・ならせおはします・うひかふりのおんすがた・ほうわうも・にようゐんも・いかばかりか・めでたく・おもひ・まゐらつさせ・たまひけん・さるほどに・めうおんゐんの・だいじやうだいじんもろながの・いまだそのころ・ないだいじんのさだいしやうにて・おはしけるが・たいしやうを・じせさせたまふことあり・ときに・とくだいじどの・そのじゆんに・あたりたまへりと・いへりまたくわんざんのゐんの・ちうなごんかねまさのきやうも・しよまうあり・なかのみかどのしんだいなごんなりちかのきやうは・たうじ・きみの・ごちようしんなるうへ・このことしきりに・のぞみまをされけるが・さまざまの・おんいのりどもをぞ・はじめられける・まづ・やはたに・そうをこめて・しんどくの・だいはんにやを・よまれけるに・はんぶにおよんで・をとこやまのかたより・やまばと二・とびきたり・かうらのみやうじんの・おんまへにて・くひあひてこそ・しにけれ・はとは・だいぼさつの・だい一の・ししやなり・ときのけんぎやう・ぎやくせいほういん(イ長清法印)・うちへ・このよし・そうもんす・やがて・じんぎくわんにて・おんうらあり・てんかのさわぎと・うらなひまをす・ただし・てうかの・おんことには・あらず・しんかの・つつしみとぞ・うらなひまをしける・だいP35
なごん・これにも・おそれたまはず・ひるは・ひとめをつつみほかうにて・よなよな・かもの・かみのやしろへ・まゐられけるに・だい三かに・あたりけるよ・げかうして・くるしさにや・うちふされたりけるゆめに・なかのやしろへ・まゐりたるかと・おぼしくて・ごはうでんの・みとおしひらき・うちよりゆゆしうけだかき・みこゑにて・一しゆのうたをぞ・あそばされけるさくらばなかものかはかぜうらむなよちるをばえこそとどむまじ(イとどめざり)けれだいなごんこれにも・なほ・おそれたまはず・なかのやしろに・そうをこめて・七か・ひほうをおこなはせられけるに・けちぐわん・ちかうなつて・わかみやの・うしろなる・おほすぎに・いかづち・おちかかり・ひ・もえつきて・しやだんも・あやうく・みえければ・じんにん・きうにん・ことごとく・おこつて・これを・うちけつてんげり・かみは・ひれいを・うけさせたまはず・だいなごん・ひぶんの・たいしやうを・いのりまをされければにや・かかるふしぎぞ・いできにける・そのころの・ぢよゐぢもくは・ゐん・うち・せつしやうくわんぱくの・ごせいばいにも・あらず・一かう・へいけの・まま・なりければ・とくだいじ・くわざんのゐんも・なりたまはず・にふだうしやうごくのちやくし・こまつどの・ひだんに・うつつて・おんおととの・むねもり・ちうなごんにて・おはしけるが・すはいのじやうらふを・てうをつして・みぎに・くははりたまふこそ・こころも・ことばも・およばれね・とくだいじどのは・一の・だいなごん・くわしよく・えいえう・さいかくいうちやうにて・こえられたまふぞ・ゐこんなる・されば・とくだいじどのは・よの・なりゆくやうを・ごらんぜんとや・おぼしめされけん・だいなごんをば・じしまをされて・しばらく・ろうきよとぞ・きこえし・かの・だいなごんに・ほうこうの・ともがらどものなかに・くらんどのたいふのりはると・まをすものあり・あるよ・だいなごんに・まをしけるは・P36
きみ・ごしゆつけ・なんどもさふらはば・ほうこうのともがらども・みな・まどひものと・なりさふらひなんず・さらむに・とつては・たうじ・あきのいつくしまをば・一かうへいけの・あがめまをされさふらふ・かれへ・おんまゐりあつて・たいしやうの・ごきせいなんども・さふらへかし・くだんのやしろには・ないしとて・いうなる・まひびめどもの・す十にんさふらふなる・これらを・おんもてなしさふらはば・にふだうしやうごく・かへりききたまひて・さだめて・はからはるる・むねもや・さふらはんずらんと・まをしたりければ・とくだいじどの・さらばとて・やがて・しやうじんはじめて・いつくしまへぞ・まゐられける・七か・さんろう・ことゆゑなう・とげさせたまひて・のち・みやこへかへりのぼらせたまひけるに・ないしたち・とくだいじどのの・おんなごりを・をしみたてまつて・ひとひぢまで・おくりたてまつる・とくだいじどの・ないしたちに・あまりに・なごりの・をしう・おぼゆるに・さらば・みやこへ・のぼりたまへかしとて・そのなかに・しかるべき・ないし・十よにん・めしぐして・みやこにのぼり・やうやうのおんもてなし・さまざまの・おんひきでもの・あつて・かへされけり・ないしたち・かへるとて・いさや・われらが・へいけへ・まゐらんとて・にし八でうどのへぞまゐりたる・にふだうしやうごく・やがて・いであひたいめんしたまひて・いかにないしたち・なにごとの・れつさんぞと・のたまへば・さんさふらふ・これは・たうじ・とくだいじどのの・たいしやう・ごきせいのおんために・いつくしまへ・まゐらせたまひて・さふらひつるが・めしぐせさせ・たまひて・やうやうの・おんもてなし・さまざまの・おんひきでものの・さふらひつると・まをしたりければ・にふだうじやうかいが・あがめたてまつる・あきのいつくしま・とくだいじどのの・さやうにたつとみ・たまふこそ・なによりも・ゆうに・ありがたうおぼゆれ・しんめいも・などか・かんおうなかるべきとて・にふだうしやうごくのちやくし・こまつどの・だいなごんのさたいしやうにて・おはしけるを・たいしやうを・じせさせたてまつつて・とくだいじどのへこそ・わたさP37
れけれ・されば・のりはるが・はかりごと・かしこかりける・かうみやうかな
鹿谷(あひ)113
とくだいじどのは・かくこそ・ゆゆしう・おはせしに・なかのみかどの・しんだいなごんなりちかのきやうは・とくだいじ・くわざんのゐんに・こえられたらむは・いかがせん・へいけの・むねもりに・こえられぬるこそ・ゐこんなれ・これも・ただ・へいけの・おもふさまなるが・いたすところなり・されば・いかにもして・へいけを・ほろぼし・わが・ほんまうをとげばやと・おもはれけるこそ・おそろしけれ・ちちのきやうは・このよはひにては・わづかにちうなごんにてこそ・おはししに・これは・そのばつしにて・くらゐ・じやう二ゐ・くわん・だいなごんにあがり・たいこくあまた・たまはりて・しそくしよじうに・いたるまで・くわんゐほうろく・みにあまり・たり・されば・なんの・ふそくにか・かかるこころの・つかれけむ・これひとへに・てんまの・しよゐとぞ・おぼえたる・つねは・ぐわいじんなきところに・よりあひ・よりのき・へいけを・ほろぼさんとの・いとなみのほかは・たじなしとぞ・きこえし・ひがしやまししのたには・しゆんくわんそうづが・りやうなりけるが・うしろは・みゐでらへ・つづいて・くきやうの・じやうくわくなりければ・へいけを・ほろぼし・かしこに・ひきこもらんとぞ・ぎせられける・あるとき・ほうわうも・じやうけんほういんばかりを・めしぐして・ひそかに・かしこへ・ごかうなり・さてこのこと・いかが・あるべきと・おほせければ・ほういん・あな・あさまし・ひとあまた・うけたまはりさふらふ・もし・このことの・てんかへ・もれきこえさふらはば・たんだいま・よのみだれ・いできさふらはんずるものをと・まをされたりければ・だいなごん・けしき・おほきに・かはつて・ごぜんを・まかりいでられけるが・いP38
かがは・せられたりけむ・ごぜんに・たてられたりける・へいじのくちに・かりぎぬの・そでを・かけて・たをされたり・ほうわう・あれは・いかにと・おほせければ・だいなごん・たちかへり・へいじ・たをれさふらひぬとぞ・まをされける・ほうわう・おほきに・ゑつぼに・いらせ・おはしまして・ものども・まゐつて・さるがくつかまつれとおほせければ・へいはんぐわんやすより・ごぜんに・つつとまゐり・へいじの・あまり・おほうさふらふに・もてゑひてこそさふらへ・しゆんくわんが・さてそれをば・なにとかつかまつりさふらふべき・れいのさいくわうがつつとまゐり・へいじをば・くびとるに・しかじとて・へいじのくちをとつて・あなたへはわたす・こなたへは・わたすとてぞ・いりにける・ほういん・あまりのあさましさに・ほうわうを・すすめたてまつりて・いそぎ・ほうぢうじどのへ・くわんぎよなしまをされけり・よりきのしうには・あふみのちうじやうにふだうれんじやう・やましろのかみもとかぬ・しきぶのたいふまさつな・そうはんぐわんのぶふさ・しんへいはんぐわんすけゆき・へいはんぐわんやすより・ほつしようじのしゆぎやうしゆんくわんそうづ・つのくにげんじ・ただのくらんどゆきつなを・さきとして・ほくめんのともがらども・おほく・よりきしてんげり・なかにもただのくらんどゆきつなをば・だいなごん・だいじのものに・したまひて・もしこのこと・しおふする・ほどならば・くににても・しやうにても・こひによるべし・まづゆみぶくろの・れうにとて・しろぎぬ五十たん・おくりつかはさる・そも・じやうこには・ほくめんは・なかりけり・しらかはのゐんのおんときは・すゑしげ・わらはより・せんじゆまる・いまいぬまるとて・これらは・さうなき・きりものなり・また・とばのゐんのおんときは・すゑより・すゑのり・ふしとも・つねは・でんそうすることも・ありなんど・きこえしかども・これらは・みのほどを・ぞんじてこそ・ふるまひしに・このおんときほくめんは・もつてのほかに・くわぶんにて・げほくめんより・じやうほくめんに・あがり・じやうほくめんより・でんじやうの・まじはりをゆるさるるも・ありけり・かくのみ・ふるまひしほどに・これらは・おごれるものどもにて・かやうP39
のことにも・くみしてんげり
鵜川合戦114
かの・ほくめんのともがらどものなかに・もろみつ・なりかげと・まをすものあり・これは・こせうなごんにふだうしんせいのもとに・こんれいわらは・もしは・かくごんしやにて・けしかる・ものにてぞ・さふらひける・されども・さかさかしきによつて・つねは・ゐんの・おんまちにも・かかり・もろみつさゑもんのぜう・なりかげうゑもんのぜうとて・一どに・ゆきへのぜうに・なつて・しんせい・ことに・あひしとき・ともに・しゆつけして・さゑもんのにふだうさいくわう・うゑもんのにふだうさいけいとて・しゆつけののちも・なほ・ゐんのみくらあづかりにてぞ・さふらひける・かのさいくわうがこに・もろたかと・まをすものあり・これも・さうなき・きりものなりければ・けんびいし・五ゐのぜうまで・へあがり・あまつさへ・あんげんぐわんねん十二ぐわつ二十九にちの・つゐなのぢもくに・かがのかみにぞ・ふせられける・したがつて・こくむを・おこなふあひだ・ひほうひれいを・ちやうぎやうし・じんじやふつじ・けんもんせいかの・しやうゑんをもつたうして・さんざんのことどもにてぞ・さふらひける・たとひまた・せうこう(イてうこう)が・あとをこそ・へだつと・いふとも・をんびんのまつりごとをこそ・おこなふべきに・かくのみ・ふるまひしほどに・おなじき二ねんのなつのころ・おととこんどうはんぐわんもろつねを・かがの・もくだいに・さしくださる・もろつね・げちやくのはじめ・こふのへんに・うかはの・ゆせんじとまをす・やまでらあり・もろつねかのてらに・らんにふし・じそうどもの・ゆあびけるを・おひあげ・わがみも・あび・いへのこらうどうをも・おろし・あまつさへ・ざふにんばらを・いれて・むまのゆあらひなんどを・せさせければ・じそうら・おほきに・いかつて・むかしより・このところに・こくはうのものの・にふぶP40
する・やう・なしと・いひければ・もろつねまをしけるは・せんぜんもくだいは・ふかくにてこそ・いやしまれたれ・たう
もくだいに・おいては・まつたく・そのぎ・あるまじ・ただ・せんれいに・まかせて・にふぶのあふばうを・とどめよと・いひければ・じそうら・は・こくはうのものを・つゐしゆつせんとす・こくはうのものは・また・ついでをもつて・らんにふせんと・せしほどに・たがひに・うちあひ・はりあひなんど・しけるほどに・もろつねが・さしも・ひさうしける・むまのあしを・うちをる・のみならず・をがみを・さへに・きつてんげり・もろつね・おほきにいかつて・ただほふに・まかせよといふあひだ・じそうら・きうせんひやうぢやうを・たいして・たがひにいあひ・きりあひなんどしけるほどに・もろつね・かなはじとや・おもひけむ・よにいつて・しゆくしよにひきしりぞき・つぎのひ・もろつね・たうごくの・ざいちやうくわんにん・三千よきを・いんぞつして・うかはに・おしよせたり・ふせぐところのたいしゆ・三百よにん・うちころさる・そののち・ぢちうに・みだれいつて・ひをはなつ・だうしやたふめう・ぶつかくそうばう・一うも・のこさず・やきはらふ・うかはとまをすは・はくさんの・ちうぐうの・まつじなるによつて・三しやならびに・八ゐんのしゆと・さうどうす・八ゐんのしゆとの・ちやうぼんに・ちしやく・がくみやう・はうだいばう・しやうち・がくい・とさのあじやりぞ・すすんだる・つがふそのせい・二千よにん・おなじき七ぐわつ九かのひの・とりのこくには・もくだいもろつねが・たちぢかくこそ・おしよせたれ・けふはひくれぬ・しようぶは・けつせしとて・たいしゆ・そのひは・そのへんなるところに・ひかへたり・つゆふきむすぶ・あきかぜは・いむけのそでを・ひるがへし・くもまを・てらす・いなづまは・かぶとのほしを・かがやかす・もろつね・かなはじとや・おもひけむ・よにげに・してこそ・のぼりけれ・つぎのひの・まんだあした・たいしゆ・おしよせたりけれども・もろつね・おちて・なかりければ・ちからおよばず・ほんざんへ・ひきかへす・せんずるところ・このよしをさんもんへ・うつたへて・くげへ・そうもんせんとて・はくさんめうりごんP41
げんの・しんよを・ひえいざん・ひんがしさかもとへ・ふりたてまつるとぞ・きこえし・おなじき八ぐわつ十一にちの・むまのこくばかりに・めうりごんげんの・しんよ・ひえいざん・ひんがしさかもとへ・つかせたまふと・まをすほどこそ・ありけれ・にはかに・そらかきくもり・ほくこくのかたより・いかづちおびただしう・なりさかり・みやこをさして・なつてゆくに・はくせつ・くだつて・ちをうづみ・さんじやうらくちう・おしなべて・ときはの・やまの・こずゑまでも・みな・しろたへにぞ・なりにける・三ぜんのたいしゆ・ひんがしさかもとに・おりくだり・しんよを・はいしたてまつり・すなはち・きやくじんのやしろへ・いれたてまつる・さんもんに・きやくじんごんげんとまをすは・はくさんごんげんのおんことなり・さたのじやうひは・しらねども・しやうがいのめんぼく・ただこのことのみに・ありかの・うらしまが・七せのまごに・あへりしが・ごとし・たいだい(イたりない)の・ものの・りやうぜんの・ちちをみしに・おなじ・三千のたいしゆ・くびすを・つぎ・七しやのじんにん・そでを・つらね・じじこくこくの・きねんほつせ・こころもことばも・およばれず
願立115
さんもんのたいしゆ・そうじやうをささげて・なげきけれども・いまだ・ごしよういんなきあひだ・さもしかるべき・くぎやうでんじやうびとの・のたまひあはれけるは・あはれ・このこと・とうして・ごさいきよあるべきものを・さんもんのそせうは・たにことなり・おほくらきやうためふさ・だざいのそつすゑなかは・てうかの・ちようしんたりしかども・さんもんのそせうによつて・るざいせられき・されば・もろたか・もろつねなんどが・ことは・ことのかずにや・あるべきなんど・のたまひあはれけれども・だいじんは・ろくをおもんじて・いさめず・せうしんは・つみにおそれて・まをさずと・いふことなれば・おのおの・くちをぞ・とぢられける・かもがはのみづ・すごろくP42
のさい・やまほうし・これぞ・まろが・こころには・かなはぬと・しらかはのゐんも・おほせなりけむなる・またとばのゐんのおんとき・ゑちぜんのへいせんじを・さんもんへ・つけられけることも・たうざんのごきえ・あさからざるに・よつて・さんもんのそせうは・ひをもつて・りとせよと・せんぎせられてこそ・ゐんぜんをも・くだされけむなれ・げにも・がうそつきやうばうのきやうの・まをさるる・やうに・たいしゆ・しんよをささげたてまつつて・そせうを・いたさんに・おいては・きみも・いかがは・せさせ・おはしますべきとぞ・ほうわうも・おほせなりけむなる・またほりかはのてんわうのぎよう・かはうぐわんねんの・ふゆのころ・みののかみみなもとのよしつなのあそん・たうごくしんりふのしやうを・たをすに・よつて・やまのきうぢうしや・ゑんおうをせつがいす・これによつて・ひよしのしやし・えんりやくじのじくわん・つがふ三十よにん・しさいを・そうもんのために・ぢんとうへこそ・はつかうすれ・ご二でうのくわんぱくどの・やまとげんじ・なかつかさのせうよりはるに・おほせて・これを・ふせがせらる・よりはるがらうどう・やをはなつ・きずを・かうぶるもの八にん・しするは・四にんなり・しやししよしら・をめきさけんで・四はうへみな・にげちりけり・これによつて・さんもん・おほきにいきどほり・七しやのしんよを・こんぽんちうだうへ・ふりあげたてまつつて・ご二でうのくわんぱくどのを・さまざまに・じゆそしたてまつりけるとぞ・きこえし・あるときまた・三千のたいしゆ・みな・ひんがしさかもとに・おりくだり・八わうじごんげんの・おんまへにて・しんどくのだいはんにやを・よまれけるに・ちういんほういんの・いまだそのころ・ちういんぐぶにて・おはしけるが・かうざに・のぼり・けいびやくの・かねうちならし・けうげの・ことばこそ・おそろしけれ・われらが・なたねの・ふたばより・おほしたちたまふ・かみたちと・しりながら・むしものにあうて・こしからふたまふ(イこしからみたまふ)・ご二でうのくわんぱくどのに・かぶらや・ひとつ・はなちあてたべ・だい八わうじごんげんと・かうじやうに・ののしつたりけるにぞきくP43
ひとみな・みのけ・よだつて・おぼえたる・やがて・そのよの・ねのこくばかりに・八わうじごんげんの・しんでんより・かぶらやのこゑ・いでて・みやこをさして・なつてゆくとぞ・ひとのみみにも・きこえける・つぎのひの・まんだあした・みやこ・にはくわんぱくどの・ごしゆくしよに・おんきやくしの・やくつかまつりけるが・ただいま・やまより・おりて・くだりたるが・ことごとなる・しきみのはな一えだ・つゆに・ぬれたるが・おひいでたり・これおほきに・ふしぎのずゐさうと・まをししほどに・やがてそのころ・ご二でうのくわんぱくどの・さんわうの・おんとがめとて・ごぢうびやうを・うけさせたまひ・やうやうの・ごぐわんさまざまの・おんいのりあり・まづ・ひよしのやしろに・おいて・百ばんの・ひとつもの・百ばんの・しはでんがく・けいば・やぶさめ・すまふ・おのおの・百ばんえんりやくじに・おいて・百ざの・にわうかう・百ざのやくしかう・とうしんのやくしのざう・七たい・しやか・あみだいつちやくしゆはんのざう・おのおの百たいつくり・くやうしたてまつらる・なかにも・くわんぱくどのの・ごぼぎは・きやうごくのおほとのの・きたのまんどころにて・さいあいの・ご一しにて・わたらせたまへば・ごぼぎことに・おんなげきあつて・しのびつつ・ひよしのやしろへ・おんまゐりあつて・七かこれに・ごさんろうあつて・いのりまをさせたまふ・ひと・これをしりたてまつらず・いはんや・ごしんぢうに・三のごぐわんあり・いかでか・ひと・これを・しりたてまつるべき・あるよ・きせんじやうげまゐり・あつまれるなかに・みちのくより・はるばるとたづねのぼりたりける・わらはみこの・こんやはじめて・このみやしろへ・まゐりたりけるが・やはんばかりに・にはかに・ぜつじゆす・じやうげ・こは・いかにと・みるところに・やがていきかへり・われに・八わうじごんげんの・のり・ゐさせ・たまへりとて・たくせんして・いはく・たうじ・くわんぱくどの・かみの・おんとがめとて・ごぢうびやうを・うけさせたまひ・やうやうの・ごぐわんを・たて・さまざまの・おんいのりあり・ごぼぎことに・おんなげきあつて・しのびつつ・このみやしろへ・まゐP44
らせたまひ・七かこれに・ごさんろうあつていのり・まをさせたまふ・ひと・これをしりたてまつらず・いはんや・ごしんぢうの・三のごぐわんをや・いかでか・ひとこれをしりたてまつるべき・まづ・だい一のごぐわんには・こんど・くわんぱくどの・ごぢうびやう・たちどころに・いえさせたまひて・おほとりゐより・はじめて・やしろやしろのはうぜん・八わうじにいたるまで・くわいらう・つくりかけむとなり・第二のごぐわんには・こんどくわんぱくどの・ごじゆみやうちやうをんの・おんことならば・われ・さまをやつし・八わうじの・したどのなる・もろもろの・かたわうどの・なかに・まじはり・にはのちりをはらひ・千にちの・おんみやづかひと・うけたまはるだい三の・ごぐわんには・こんどくわんぱくどのの・ごぢうびやう・たちどころに・いえさせたまひて・八わうじごんげんの・おんまへにて・まいにち・ほつけもんだふかう・おこたりあらじと・うけたまはる・いづれも・いづれもありがたうこそ・きこしめせ・まことに・さんけいのともがらどもの・あしたには・きりをはらひ・ゆふべには・つゆをしのぐに・くわいらうあらんこと・あらまほしうこそ・おぼしめせ・ただし・このしゆとは・なんぎやうくぎやうのこう・つもつて・こんど・しやうじをはなれんと・なれば・いまさらに・くわいらうを・よろこぶべきにも・あらず・だい二のごぐわん・にはのちりを・はらひ・千にちの・おんみやづかひと・うけたまはる・かみは・いつさいしゆじやうを・おぼしめすもただ・おやの・こをおもふが・ごとし・ひごろは・きやうごくのおほとのの・きたのまんどころにて・たまのすだれの・うち・にしきのちやうに・まとはれて・たへなるおんみにて・わたらせ・たまひしかども・こをおもふみちには・まよはせたまふにや・まことに・みるも・いぶせく・あさましげなる・かたわうどの・なかに・まじはり・一にち二かのことならず・一千にちまでの・おんみやづかひをば・かみとしても・いかでか・あはれみたてまつらざるべき・さこそは・おぼしめすらめと・あはれなり・これも・さるおんことにては・さふらへどもだい三のごぐわん・ほつけもんだふかうP45
こそ・まことに・ありがたうさふらへ・われこのやまのふもとに・あとをたれ・いつさいしゆじやうを・どするもひとへに・一じようけちえんのためなり・いちげいつくの・ほうもんだにも・いかばかりか・ありがたかるべきに・まして・まいにち・おこたりなからんことの・めでたさよ・まことに・さもあらば・こんど・くわんぱくどののごぢうびやう・ぢやうごふかぎりとは・まをせども・かみ・かの・おんみに・あひかはつて・みとせの・いのちを・たすけまをさうずるは・いかに・ただしくわんぱくどのの・しやししよしらに・はなち・あてたまふ・やは・かみのこのたいに・あたれりとて・ひだりのそでを・ひきあげたるを・みければ・げにも・やめと・おぼしくて・おほきなるあと・あざやかにみゆ・じやうげ・めを・おどろかし・みな・ずゐきのなみだをぞ・ながしける・そのとき・きたのまんどころ・さんわうの・ごたくぜん・しんじつに・おぼしめしてひとめを・つつませたまはず・きせんのなかに・あらはれいでさせたまひて・おんなみだに・むせばせ・おはします・まことに・たてまをすところの・三の・ぐわん・いづれも・たがひさふらはず・一にち二かのびんだにも・いかばかりか・ありがたかるべきに・まして・三とせがあひだとうけたまはる・こんどの・まゐりの・ごりしやう・ただこのことにこそ・さふらへ・ほつけもんだふかうに・おきさふらひては・おんうたがひさふらふまじと・なみだも・せきあへず・まをさせたまひ・たりければ・おんとものひとびと・さて・いかなるおんことの・わたらせたまひでか・なほもおんいのちの・のびさせたまひさふらふべきと・まをしあはれければ・かみも・三とせののちは・ちからおよばせ・たまはずとて・ごんげん・あがらせたまひけり・やがてつぎのひ・みやこへ・ごげかうあつて・くわんぱくどの・ごぢうだいの・ごけりやう・きのくにたなかのしやうと・いふところを・八わうじへ・ごきしんあつて・まいにち・ほつけもんだふかう・まつだいの・いまに・たえずとこそ・うけたまはる・しんかんは・つきさせたまはずと・P46
ありがたかりし・おんことなり・一にち二かと・せしほどに・三とせのすぐるは・ゆめなれや・かうわぐわんねん六ぐわつ二十一にちの・ゆふべより・くわんぱくどの・またごぢうびやうに・うちぞ・ふさせたまひける・さんわうのおんやくそく・いまのつきひをかぎらせたまふ・ことなれば・ただじこくたうらいを・またせたまふほどに・おなじき二十九にちの・あかつきがた・おんとし・三十八にてつひに・かくれさせたまひけり・みこころのたけさ・りの・つよさ・さしもただしき・ひととこそ・きこえさせたまひたりしかども・まめやかに・ことのきふにも・なりしかば・おんいのちををしませたまひけり・まことに・をしかるべし・いまだ四十をだにも・みたさせ・たまはで・おほとのにさきだち・まゐらつさせ・たまふぞ・あさましき・かならず・おやに・さきだつべしと・いふことには・あらねども・しやうじの・おきてに・したがふならひ・まんとくゑんまんの・せそん・十ちくきやうの・だいしたちも・ちからおよばせたまはず・じひぐそくの・さんわうだいし・りもつのはうべんなれば・とがめさせたまは・ざるべしとも・おぼえず・されば・さんもんのそせうは・おそろしき・ことに・のみこそ・まをしつたへたれ・さるほどに・としくれて・あんげんも・三とせに・なりにけり
御輿振116
あんげん三ねん三ぐわつ五か・のひ・めうおんゐんどの・だいじやうだいじんに・てんじたまふ・かはり・こまつどの・だいなごんさだふさのきやうを・こえて・ないだいじんに・あがりたまふ・めうおんゐんどの・おしあげられさせ・たまひけり・いちのかみこそ・せんど・なりしかども・ちち・あくさふの・おんれい・そのはばかりありとぞ・きこえし・おなじき十三にちに・こまつどのには・だいじんの・P47
だいきやう・おこなはる・そんじやは・おほゐのみかどの・さだいじんつねむねこうとぞ・きこえし・おなじき四ぐわつに・さんもんには・ひよしのさいれいを・おしとめ・おなじき十三にちに・おほみやろうもんのまへに・三たふくわいがふして・こくし・かがのかみ・もろたか・るざいにしよせられ・もくだいもろつね・きんごくせらるべきよし・どどのそうもんに・およぶといへども・ごさいだん・おそかりければ・十ぜんじ・きやくじん・ならびに・八わうじ三しやの・しんよを・かきささげたてまつつて・しさいを・そうもんのために・ぢんとうへこそ・はつかうすれ・にしさかもと・さがりまつ・きれつつみ・ただす・むめただ・やなぎはら・とうぼくゐんのへんに・ししつづみの・おとおびただしく・きこゆ・じんにん・みやし・しらたいしゆ・かもがはらに・みちみちたり・しんよは・一でうをにしへ・みゆきなる・ごしんはうは・てんに・かがやき・きらめき・わたつて・じつげつちに・おちさせ・たまへるかとぞ・おぼえたる・くわうきよには・げんぺいりやうかの・たいしやうぐん・ちよくをうけたまはつて・しはうのもんを・かためて・だいしゆを・ふせぐ・へいじには・こまつどの・三千よきにて・ひんがしおもてのぢん・やうめい・たいけん・いうはうもん・三のもんを・かためらる・うゑもんのかみよりもり・一千よきにて・みなみおもてのぢんを・かためらる・へいさいしやうのりもり・これも一千よきにて・にしおもてのぢんを・かためらる・げんじには・だいだいしゆごの・げん三みよりまさ・わたなべの・はぶく・さづくを・さきとして・つがふそのせい・三百よき・きたおもて・ぬひどののぢんを・かためて・たいしゆを・ふせぐ・おほぢは・ひろし・せいは・すくなし・まばらにこそは・みえたりけれたいしゆ・ぶせいたるに・めをかけて・きたおもてぬひどのの・ぢんより・しんよを・ふりいれたてまつらんとす・すでに・かうと・みえけるに・よりまさきやう・いかがは・おもはれけん・ゆみをばはづし・かぶとを・ぬいで・しんよを・はいしたてまつらる・たいしやうの・かく・しけるうへは・いへのこらうどうどもも・みな・したがつて・かくのごとしよりまさきやう・しばらく・P48
しゆとのおんなかへ・まをすべきむねありとて・つかひは・わたなべのちやう七となふとぞ・きこえし・となふが・そのひの・しやうぞくには・きちんのひたたれに・こざくらを・きに・かへしたる・よろひを・き・こくじつの・たちを・はき・二十四さいたる・おほなかぐろのや・おひ・ぬりこめどうのゆみ・わきにはさみつつ・かぶとをば・ぬいで・たかひもに・かけ・おき・みちより・あゆみいで・たいしゆのまへに・かしこまり・これは・げん三ゐどのよりまをせとさふらふ・こんどさんもんの・ごそせう・りうんのでう・もちろんにさふらふ・ただし・ごさいだんちちこそ・よそにても・ゐこんにぞんじさふらへ・さては・しんよを・このぢんより・あけて・いれまゐらせんこと・いとやすきおんことにては・さふらへども・しかも・あけて・いれまゐらせんぢんより・いらせ・おはしましたらむは・さんもんの・たいしゆ・たいぜいには・おそれて・めだれがほを・しけるよなんど・きやうわらんべの・まをさんこと・ごにちの・なんにてもや・さふらはんずらん・またふせぎ・まゐらせさふらへば・ねんらい・いわうさんわうに・かうべを・かたぶけ・まゐらせたるよりまさが・けふよりして・ながく・ゆみやのみちに・わかれはて・さふらひなんず・またあけて・とほしまゐらせさふらへば・せんじをそむくに・にたり・かれといひ・これといひ・かたがたなんぢの・やうにさふらふ・ひがしおもてのぢんをば・こまつどのの・三千よきにて・かためさせられてさふらふ・あのぢんより・いらせおはしましたらむ・は・さんわうのごゐくわうも・いよいよめでたく・しゆとの・ごいしゆも・あらはれて・ごそせう・やがて・たつしぬと・おぼえさふらふといひ・おくりたりければ・となふが・かくまをすに・ふせがれて・じんにんみやし・しばらく・ゆらへたり・わかたいしゆ・あくそうどもは・なんでふただ・このぢんより・しんよをふりいれたてまつれやと・せんぎす・すでに・かうと・みえけるに・ここに・三千のちやうぼん・つの・りつしやがううん・すすみいでて・まをしけるは・われらこんど・しんよを・P49
ささげたてまつつて・そしようを・いたさんに・おいては・たいぜいの・なかうちやぶつて・いつたらむこそ・こうだいのきこえも・あらんずれ・そのうへ・このよりまさきやうとまをすは・六そんわうより・このかた・げんじちやくちやくの・しやうとう・ゆみやを・とつて・てんかに・なをあぐる・のみならず・やまとことばにも・いうに・やさしかんなるぞ・ひととせこんゑのゐんのおんとき・たうざのごくわいの・ありしに・しんざんのはなと・いふだいの・いでたりしを・ずゐぶんのひとびとの・よみわづらはれたりしをも・このよりまさきやうこそ・しうかには・よみたりしか
みやまぎのそのこずゑともみえざりしさくらははなにあらはれにけり
と・まをす・めいかつかまつつて・ぎよかんにあづかりし・そのやさをとこが・かためたる・もんにこそ・あんなれ・いかが・なさけなう・ちじよくをば・あたふべき・ただそのしんよ・かきかへし・たてまつれやと・せんぎしければ・せんぢんより・ごぢんにいたるまで・みな・もつとももつともとぞ・どうじける・そののち・きたののしんよを・さきだてたてまつつて・ひがしのぢんへ・まはる・ぶしども・しんばし・ささへて・ふせぎけれども・たいしゆ・ことともせず・うちやぶつて・らんにふしけるあひだ・たちまちらうぜきいできて・たいけんもんかためたる・ぶし六にん・やをはなつ・そのや・十ぜんじごんげんの・みこしに・たつ・じんにんみやし・いころされ・しゆと・おほく・きずをかふむつて・をめきさけぶこゑ・かみはぼんでんまでも・きこえ・しもは・けんらうぢじんまでも・おどろきさわぎたまふらんとぞ・おぼえたる・そののち・さんしやのしんよをば・ぢんとうに・ふりすてたてまつつて・なくなく・ほんざんにこそ・かへりのぼりけれP50
内裏炎上117
こんど・みこしに・たつところの・やをば・じんにんして・ぬかせらる・そののち・だいりには・くらんどのさせうべんかねみつに・おほせて・せんれいを・だいげきもろひさに・おんたづねありければ・もろひさまをしけるは・まづ・はうあん四ねん四ぐわつに・しんよじゆらくのときは・ざすに・おほせて・せきさんのやしろへ・いれたてまつらる・またはうえん四ねん四ぐわつに・しんよじゆらくのときは・ぎをんのべつたうにおほせて・ぎをんのやしろへ・いれたてまつりたるよしをそうもんす・しからば・こんどは・はうえんの・れいたるべしとて・ぎをんのべつたうちようけんに・おほせて・ぎをんのやしろへ・いれたてまつらる・かのやしろの・しやししよしらへいしよくに・およんで・しんよを・うけとりたてまつつて・みやしろへ・いれたてまつる・いんじえいきうより・あんげんのいまに・いたるまで・たいしゆ・しんよを・ささげたてまつつて・そしようを・いたすこと・六どなり・まいど・ぶしを・もつてこそ・ふせがせらるるに・しんよに・やいかけたてまつること・これはじめとぞ・うけたまはる・れいしん・いかりをなす・ときは・さいがい・ちまたに・みつとも・いへり・おそろしおそろしとぞ・ひとまをしける・おなじき十四かに・れいのさんもんのたいしゆ・また・げらくすと・きこえしかば・だいりならびに・ゐんのごしよへ・ぐんびやう・めされけり・きやうちうのさうだう・なのめならず・さんもんには・じんにんみやし・いころされ・しゆとおほく・きずをかうぶりしかば・ひよしのおほみや・二みや・えんりやくじの・ちうだう・かうだう・すべて・しよだうを・やきはらつて・みな・さんりんに・まじはるべしとぞ・三千一どうに・せんぎしける・きみもこのこと・ごしよういんあるべきよし・きこえしかば・さんもんのじやうかうら・もんとのたいしゆに・このよし・ふれんとて・とうざんしけるを・たいしゆおほきにいかつて・にしさかもとより・P51
おつかへす・おなじき二十かのひ・へいだいなごんときただのきやうの・いまだそのころ・さゑもんのかみにて・しやうけいに・たたる・さんもんのたいしゆ・だいかうだうの・にはに・しふゑして・せんぎしけるは・せんずるところ・しやうけいを・とつて・ひつぱり・かぶりをうちおとし・みづうみへ・しづめよなんどぞ・まをしける・すでにかうとみえけるに・さゑものかみ・しばらく・しゆとの・おんなかへ・まをすべき・むねありとて・ふところより・こすずりたたうがみを・とりいだし・一くを・かいて・たいしゆのなかへぞ・おくられける・しゆと・らんあくを・いたすは・まえんのしよぎやう・めいわうのせいしを・くはふるは・ぜんせいのかごなりとぞ・かかれたる・たいしゆ・もつとももつともとて・たにだにに・くだり・ばうばうへこそ・いりにけれ・一し一くをもつて・三たふ三千の・いきどほりを・やすめこうしのはぢを・きよめたまふ・ときただのきやうこそ・やさしけれと・さんじやう・らくちう・おしなべて・ほめぬひとこそ・なかりけれ・おなじき二十三にちに・ほりかはの・だいなごんただちかのきやうを・しやうけいにて・こくし・かがのかみもろたか・るざいに・しよせられ・もくだいもろつねきんごくせらる・こんどしんよに・やいかけたてまつる・ぶし六にん・ごくぢやうせらる・これは・こまつどのの・めしつかはれける・ところの・ぐんびやうどもなり・おなじき二十八にちのよの・ねのこくばかりに・みやこには・ひぐち・とみのこうぢより・ひいできて・をりふし・たつみのかぜはげしうふいて・きやうちうおほく・やけにけり・きたののてんじんの・こうばいどの・ぐへいしんわうの・ちくさどの・さい三でうかもゐどの・とう三でう・そめどのふゆつぎのおとどの・かんゐんどの・ていじんこうのこ一でう・せうぜんこうの・ほりかはどの・たちばなのいつせいが・はいまつどの・おにどのに・いたるまで・むかしいまの・めいしよきうせき・二十よケしよ・くぎやうのしゆくしよだに・十七ケしよまで・やけにけり・そのほか・しよだいぶさぶらひのいへいへは・なかなかまをすにおよばず・しやりんのやうなる・ほむらが・三ちやう五ちやうを・へだてつつ・とびこえとびこえ・いぬゐをさして・やけゆけP52
ば・おそろしなんどもおろかなり・はては・だいだいにふきつけたり・しゆじやくもんより・はじめて・おうでんもんくわいしやうもん・だいごくでん・しよし八しやう・ぶらくゐん・あいたんどころ・くわんのちやう・だいがくれうに・いたるまで・ただ一じがあひだの・くわいじんの・ちりとぞ・なりにける・いへいへのにつき・だいだいのもんじよ・七ちん万ぱう・さながらちりはひと・なる・そのほかの・つひえ・いくばくぞや・ひとのやけしぬること・す百にん・ぎうばのたぐひ・かずをしらず・これただごとに・あらず・ひえいざんより・おほきなる・さるどもが一二千・おりくだりてんでに・たいまつを・とぼして・やくとぞ・ひとのゆめには・みえにける・およそ・だいごくでんの・やきにけるこそ・あさましけれ・だいごくでんは・せいわてんわうのぎよう・じやうぐわん十八ねんに・やけたりしかば・おなじき十九ねんしやうぐわつ三かのひ・やうぜいゐんの・ごそくゐは・ぶらくゐんにてぞ・とげられける・ぐわんぎやうぐわんねんしやうぐわつに・ことはじめあつて・おなじき二ねん四ぐわつに・つくりいだしたてまつつて・せんかう・なしたてまつつたりしを・またごれんぜいゐんの・ぎよう・てんき五ねん・二ぐわつ二十六にちに・やけたりしかば・ぢりやく四ねん八ぐわつに・ことはじめあつて・おなじき十ぐわつ十かのひ・おんむねあげとは・さだめられたりしかども・ごれんぜんゐん・つくりもいだされずして・ほうぎよなりぬ・しかるをご三でうゐんのぎよう・えんきう四ねん四ぐわつに・つくりいだしたてまつつて・おなじき十五にちに・せんかうなしたてまつり・れいじん・がくを・そうし・ぶんじん・しをたてまつる・いまは・くにのちからも・おとろへて・そののちは・つくりも・いだされず
平家物語(城方本・八坂系)
巻第二 P53
座主流 201
あんげん三ねん五ぐわつ五かのひてんだいざすめいうん・だいそうじやうくじやうをとどめて・けつくわん・せられたまふうへ・くらんどをおんつかひにて・によいりんの・ごほんぞんを・めしかへしたてまつつて・ごぢそうを・かいえきせらる・すなはちしちやうのつかひを・つけてこんど・だいりへ・しんよふりたてまつりし・しゆとの・ちやうぽんをぞ・めされける・またかがのくにに・ざすのごばうりやうあり・もろたか・これを・ちやうはいのあひだ・もんとの・だいしゆを・かたらつて・そしせうを・いたす・これすでに・てうかの・おんだいじに・およびぬべきよし・さいくわうほうし・ふしが・むじつの・ざんそうによつて・ほうわう・つみなき・めいうんを・ぢうくわに・おぼしめし・さだめけり・めいうんも・またほうわうの・ごきそく・あしきよし・きこえしかば・いんやくをかへしたてまつつて・ざすをじし・まをされけり・おなじき十一にちに・とばのゐんの・七のみや・かくくわいほうしんわう・てんだいざすに・ならせたまふ・これは・こしやうれんゐんの・だいそうじやう・ぎやうげんの・みでしなり・おなじき十二にちに・せんざすをば・すでに・すゐくわのせめにおよびぬべきよし・きこえしかば・おなじき十三にちに・だいじやうだいじんいげの・くぎやう十六にん・さんだいあつて・ぢんのざにつき・さきのざす・ざいくわのこと・ぎぢやうあり・なかにも・八でうのちうなごんながかたのきやうの・いまだ・そのころさだいべんのさいしやうにて・ばつざに・さふらはれけるが・すすみいでて・まをされけるは・ほつけの・かんじやうに・まかせ・しざい・一とうを・げんじ・をんる・せらるべしとは・みえてさふらへども・P54
このめいうんは・じやうぎやう・ぢりつなるうへ・けんみつ・けんがく・して・一じようめうきやうを・くげに・さづけたてまつり・三しゆ・じやうかいを・ほふわう(ほうわう)に・たもたせたてまつる・あるひは・おんきやうの・しなり・あるひは・ごかいのしなり・てうくわのをんるに・おこなはれんこと・みやうの・せうらん・はかりがたし・されば・げんぞくをんるをも・ともに・なだめまをさるべきかと・いささか・はばかるところもなう・まをされたりければ・たうざの・くぎやう・もつとも・ながかたのきやうの・ぎに・どうずとは・のたまひあはれけれども・ほうわうの・おんいきどほりふかかりければ・なほてうくわに・おぼしめしさだめけり・そうを・つみするならひとて・どゑんをとつて・げんぞくせさせたてまつり・だいなごんのたいふふぢゐのまつえだといふ・ぞくみやうをつけられける・こそ・うたてけれ・おなじきはつかのひ・せんざすをば・すでに・いづのくにへ・ながし・たてまつらるべきよし・きこえしかば・にふだうしやうごくも・このこと・なだめまをさんとて・ゐんざん・まをされ・たりけれども・ほうわう・おんかぜの・ここちとて・ごぜんへも・めされ・ざりければ・いきどほりふかげにてぞ・いでられける・おなじき廿二にちに・せんざすをば・けふすでに・みやこのうちを・おひいだし・たてまつるべしとて・おつたてのくわんにん・りやうそうしら・しらかはの・ごばうに・まゐりむかひ・このよし・まをしたりければ・せんざす・すこしも・やすらふべきに・あらずとて・いそぎ・ごばうを・いでさせたまひ・そのひは・あはたぐちのほとり・一さいきやうの・べつしよに・なくなくたちぞ・しのばせたまひける・さるほどに・さんもんの・だいしゆ・だいかうだうの・にはに・しゆゑして・せんぎしけるは・そもそもわれらが・かたきは・さいくわうほうし・ふしなりとて・かれら・おやこが・みやうじをかいて・こんぽんちうだうに・おはします・こんぴらたいしやうの・ひだりのみあしのしたに・ふませたてまつり・ねがはくは・十二じんしやう・七千やしや・じこくを・めぐらさず・さいくわうほうし・ふしが・いのちを・めしとらせ・たまへやと・をめきさP55
けんで・しゆそしけるこそ・おそろしけれ・おなじき廿三にちに・せんざす・いつさいきやうのべつしよを・なくなくたちぞ・いでさせたまひける・さしもの・ほふむの・だいそうじやう・ほどのひとに・かうぞめの・おんころもをば・きせたてまつりながら・てんまの・うたてげなるに・のせたてまつり・おつたてのくわんにん・りやうそうしらが・さきに・けたてたてまつつて・けふを・かぎりに・せきのひんがしへ・こえられける・みこころのうち・おしはかられて・あはれなり・おほつの・うちでのはまにも・なりしかば・もんじゆろうの・のきばの・しろじろとして・みえけるを・ふためとも・みたまはず・そでを・かほに・おしあてて・なくなく・そこをぞ・すぎられける・なかにも・ぎをんの・べつたうちようけんほういんの・いまだそのころ・ごんだいそうづにて・おはしけるが・せんざすの・おんなごりををしみたてまつり・あはづまで・おくりたてまつつて・かへられけるに・せんざす・ちようけんの・はるばると・これまで・とぶらひきたりたまへる・こころざしのほどをかんじたまひて・ねんらいごしんぢうに・ひせられける・てんだい・ゑんじゆの・ひほふ・一しん・三くわんのもん・ならびに・けちみやく・せうじようの・しだいを・ちようけんに・さづけらる・そもそも・このひほふとまをすは・しやか・ふぞくのでし・はらないこくの・めみやうびく・なんてんぢくの・りうじゆぼさつ・よりこのかた・しだいに・さうでんし・きたれり・しかるをけふのなさけに・ちようけんに・これを・さづけらる・さすが・わがてうは・ぞくさんへんちの・さかひとはまをしながら・ちょうけんこれを・ふぞくして・ありがたさに・ほうえのそでを・かほにあて・なくなくかへりたまひけり・そもそもこの・めいうんと・まをしたてまつるは・むらかみのてんわうに・だい七のわうじ・ぐへいしんわうに・五だいのまご・こがの・だいなごんあきみちのきやうの・おんこなり・じやうぎやうぢりつなるうへ・けんみつけんがくして・ならびなき・かうそうにて・ましましければ・六しようじ・ならびに・てんわうじの・べつたうをも・かねたまへり・にんあん三ねん二ぐわつ十五にちに・てんだいざすに・ならせたまふ・そのとき・あべのやすちか・このめいうんを・P56
みたてまつつて・ぎようとくのほどは・ありがたけれども・ただしおんなこそ・こころえられね・めいうんは・かみに・じつげつの・ひかりをならべて・しもに・くもありとぞ・なんじまをしける・むかし・でんけうだいし・ちうだうの・はうざうに・こめられたりける・はう一しやくの・はこあり・しろききぬにて・つつまれたり・かのなかに・わうしに・かけるふみ一くわんあり・これはでんけうだいし・まつだいの・ざすの・しだいを・かねてあそばし・おかれたり・されば・だいだいのざす・ごはいだうのおんとき・かのはこを・あけ・ふみをひらいて・みたまふに・わがなの・あるところまでは・みたまひて・それより・おくをば・みずして・まきをさめて・おかるる・ならひあり・されば・このめいうんも・ごはいだうの・おんとき・かのはこをあけ・ふみをひらいて・みたまふに・ぎしんくわしやうより・このかた・てんだいざすはじまつて・五十五だい・めいうんとまをす・おんなあり・かほど・めでたき・かうそうにて・ましましけれども・いかなるつみの・むくいにか・いまるざい・せられたまふらん・さるほどに・さんもんのだいしゆ・だいかうだうの・にはに・しゆゑして・せんぎしけるは・でんけう・じかくの・おんことは・なかなか・まうすにおよばず・ぎしんくわしやうより・このかた・てんだいざす・はじまつて・五十五だい・いまだ・るざいのれいを・きかず・つらつらことのこころを・あんずるに・さんぬる・えんりやくの・ころほひ・くわんむてんわう・でんけうだいしと・おんちぎりを・むすばせたまひ・くわうていは・ていとをたて・だいし・たうさんに・よぢのぼり・このところに・しめいの・けうぼふを・ひろめたまひしより・このかたながく・五しやうの・によにん・あとたえて・三千の・じやうりよ・きよをしめたり・みねには・一じようどくじゆ・としふりて・ふもとには・七しやの・れいげん・あらたなり・かの・ぐわつしの・りやうぜんは・ていとの・とうぼくに・そばだつて・だいしやうの・いうくつたり・じちゐきのえいがくは・わうじやうの・きもんに・あたつて・ごこくの・れいちたり・されば・だいだいの・けんわう・P57
ちしん・みな・このところに・だんじやうをしむ・こは・まつだいと・いはぬからに・いかでか・わがやまの・くわんしゆを・たこくへは・うつさるべき・こは・こころうしなんど・をめきさけぶ・ほどこそありけれ・三千の・だいしゆ・一にんものこらず・みなひがしさかもとに・おりくだる・そののち・三千のだいしゆ・十ぜんじごんげんの・おんまへに・しうゑして・せんぎしけるは・おつたてのくわんにん・りやうそうしらが・あんなれば・われら・こんど・あはづに・ゆきむかひ・るにんを・うばひとどめたてまつらんこと・ありがたし・いまは・十ぜんじごんげんの・おんちからの・ほかは・またたのみたてまつる・かたなしとて・かんたんを・くだいて・いのりたてまつりけるに・ここに・じようゑんりつしが・わらはに・つるまるとて・しやうねん・十八さいに・なりけるが・しんじんを・くるしめ・五たいに・あせをながし・われに・十ぜんじごんげんの・のりゐさせ・たまへりとて・たくせんして・いはく・しやうじやうせぜに・こころうし・こは・まつだいと・いはんからに・いかでか・わがやまの・くわんしゆを・たこくへは・うつすべき・さらんにとつては・われこのやまの・ふもとに・あとをたれても・なににかはせむとなり・だいしゆ・ずゐきのなみだを・ながし・まことの・れいけんにて・ましまさば・われらしるしを・たてまつらん・まづ・ひとつの・ずゐさうを・みせしめたまへとて・おもてに・たちならびたる・らうそう・千よにんが・てんでに・もちたる・じゆずどもを・おほゆかの・うへへぞ・なげあげたる・くだんのものつき・はしりめぐり・つかのごとくに・とりあつめ・すこしもたがへず・もとのぬしに・くばり・わたす・だいしゆいまは・十ぜんじごんげんの・れいけんあらたにましましけり・われらこんど・あはづに・ゆきむかひ・るにんを・うばひとどめたてまつらんこと・うたがひなしとよろこびて・いさみをなしてぞ・むかひける・あるひは・べうべうたる・しが・からさきの・はまぢに・あゆみつづける・だいしゆもあり・あるひは・やまだ・やばせの・こじやうに・ふねおしいだす・しゆともあり・たいぜいP58
うんかのごとくに・むかひければ・さしも・きびしげなりつる・おつたてのくわんにん・りやうそうしら・ざすをば・あはづの・こくぶんじの・みだうのまへに・すておきたてまつつて・みなちりぢりにこそ・なりにけれ・だいしゆ・まゐりければ・せんざす・のたまひけるは・けふすでに・みやこのうちを・おひいださるべしといふ・ゐんぜん・せんじの・なりぬるうへは・すこしもやすらふべきに・あらずとて・はしぢかう・ゐいで・のたまひけるは・われ三たいくわいもんの・いへをいで・四めいけいけいの・まどにいつしより・このかた・ひろく・ゑんしうの・けうぼふをがくし・けんみつ・りやうしうを・まなべり・ひとへにわがやまの・こうりうをのみ・おもへり・しゆとを・はごくむ・こころざしも・ふかかりき・またこくかを・いのりたてまつることも・あさからざりき・りやうしよ・さんじやう・さんわう・七しやも・さだめてせうらんしたまふらん・つみなくして・とがをかうむること・これひとへに・ぜんぜのしゆくしふとのみ・おもへば・まつたうよをも・ひとをも・かみをも・ほとけをも・うらみたてまつらず・しゆとの・これまで・はるばると・とぶらひきたりたまへる・はうしこそ・いつのよまで・わすれがたけれとて・かうぞめの・おんころもの・そでしぼるばかりに・みえられければ・だいしゆも・みなよろひのそでをぞ・ぬらしける・だいしゆ・おんこしさしよせ・いまはとうとう・めさるべうさふらふと・まをしたりければ・せんざす・のたまひけるは・われすでに・るにんのみとして・いかでか・ちゑふかき・しゆがくしや・やごとなき・だいとくたちに・かきささげられては・のぼるべき・たとひかへりのぼるとも・おなじう・あゆみ・つづきてこそは・のぼるべけれとて・さうなう・のりたまはず・ここに・さいたふのぢうりよ・かいじやうばうの・あじやりいうけいとて・そのたけ・七しやくばかりありけるが・ふしなはめのよろひの・かねまぜたるを・くさずりながにきなし・くはがたうつたる・三まいかぶとのををしめ・しらえのおほなぎなたの・さやをはづいて・つゑにつき・はるかのごぢんに・たちたりけるP59
が・かぶとをば・ぬいで・うしろへかつばと・なげけるを・げにんのほうし・とりてんげり・そののち・たいぜいのなかを・おしわけおしわけ・せんざすの・おんまへに・つつとまゐり・だいのまなこに・かどをたて・ざすを・はつたと・にらみたてまつつて・あなあさまし・そのみこころにて・わたらせたまへばこそ・いまかかる・うきめには・あはせたまへ・とうとうめさるべうさふらふとて・おんてをとつて・あらけなく・ひつたてまゐらせければ・ざす・あまりの・おそろしさにや・いそぎ・おんこしにぞ・めされける・だいしゆせんざす・とりえたてまつつたることを・よろこびて・いやしき・ほうしばらに・あらず・ちゑ・ふかき・しゆがくしや・やごとなきだいとくたち・かきささげてぞ・のぼりける・やがて・さきごしをば・いうけいかく・ひとは・かはれども・いうけいはかはらず・ごぢんは・よわれども・せんぢんは・つかれず・こしのながえも・なぎなたのえも・をれよ・くだけよと・もつままにさしも・さかしき・ひんがしざか・へいちをゆくがごとくにて・だいかうだうのにはにぞ・かきすゑたる・そののち・三千のだいしゆ・まただいかうだうの・にはに・しふゑして・せんぎしけるは・われら・こんど・るにんを・うばひとどめたてまつつて・いかでか・わがやまの・くわんしゆとは・あがめたてまつるべきと・せんぎしけるところに・いうけい・またさきのごとくに・すすみいでて・それわがやまは・につぽんぶさうの・れいち・ちんごこくかの・だうぢやうなり・されば・しゆとのいしゆも・よさんにこえ・いやしき・ほうしばらに・いたるまで・よもつて・これをかろんぜず・ちゑ・かうきにして・三千の・くわんしゆたり・とくぎやうおもうして・いつさんのくわしやうたり・われら・こんど・けんみつの・あるじを・うしなひたてまつつて・けいせつの・つとめ・おこたらんこと・とうだい・こうぶく・をんじやうの・あざけり・さんじやう・らくちうの・いきどほりに・あらずや・いうけいこんど・ちやうぽんにしようせられ・きんごく・るざい・かうべを・はねられ・まゐらせむこと・こんじやうのめんぼく・めいどのP60
おもひいでなるべしとて・さうがんより・なみだを・はらはらとながしければ・だいしゆ・もつともとて・またおんこし・かきささげたてまつつて・とうたふの・みなみだに・めうくわうばうへ・いれたてまつる・それよりしてぞ・いうけいをば・いかめばうとは・まをしける・されば・ときのわうさいをば・いかなる・ごんげのひとも・のがれたまはざるにや・だいたうの・一ぎやうあじやりは・げんそうくわうていの・ごぢそうなり・くわうていの・きさき・やうきひに・なだちたまへることあり・これ・あとかたなき・むじつの・とがなりけれども・くわらこくへぞ・ながされける・くだんのくにへは・三のみちあり・いうちだう・りんちだう・あんけつだうとぞ・まをしける・いうちだうは・みゆきみち・りんちだうは・ざふにんの・かよひぢ・なかにも・あんけつだうとまをすは・ぢうぼんのものを・つかはすに・七か七やがあひだ・つきひの・ひかりをみずして・ゆくみちなり・一ぎやうぢうぼんのひとなればとて・かのあんけつだうよりぞ・ながされける・みやうみやうとして・ひとりゆく・かうほうに・千ど・まよひ・しんしんとして・やまふかく・ただかんこくに・とりの一こゑ・ばかりにて・こけの・ぬれぎぬ・ほしあへず・てんだう・むじつの・とがを・あはれませたまふことなれば・九えうの・かたちを・げんじて・一ぎやうを・てらしたまふ・ときに一ぎやう・みぎのゆびを・くひきつて・ひだりのそでに・九えうの・かたちをぞ・うつされける・わかん・りやうてうに・しんごんの・ほんぞんたる・九えうの・まんだら・これなり
西光がきられ 202
こんど・さんもんのだいしゆの・せんざす・とりとどめたてまつたることを・ほうわう・きこしめされて・おほきに・やすからずとぞ・おほせける・れいのさいくわうがまをしけるは・むかしより・さんもんのだいしゆの・みだりがはしきそしようさふらふこと・いまにはじめずとは・まをしながら・P61これらほどの・らうぜきをば・いまだ・うけたまはりおよばず・よは・よにても・さふらふまじと・わがみの・たつたいま・ほろびんずるをも・しらずまた・さんわうだいしの・しんりよにも・はばからず・かやうにまをして・しんきんを・なやましたてまつる・そうらんしげからんとすれば・あきのかぜ・これをやぶり・わうしや・あきらかならんとすれば・ざんしん・これをくらうすともいへり・ざんしんは・くにをみだり・とふは・いへをやぶるとも・かやうのことをや・まをすべき・さるほどに・ほうわうは・しんだいなごんなりちかのきやういげ・ごきんじゆのひとびと・そのほか・ほくめんのともがらに・おほせて・やませめらるべしとぞ・きこえし・さんもんのだいしゆこのよしを・つたへうけたまはつて・われら・わうどに・はらまれながら・さのみ・ぜうめいを・たいかんすべきに・あらずとて・ないないは・ゐんぜんに・したがひ・つきたてまつる・しゆとも・せうせうありなんど・きこえしかば・せんざすは・めうくわうばうに・おはしけるが・このよしを・ききたまひて・またいかなる・うきめにか・あはむずらんとて・やすきこころも・したまはず・さるほどに・しんだいなごんなりちかのきやうは・たうじ・さんもんの・さうどうによつて・わたくしの・しゆくいをば・しばらく・おさへられたり・そもそも・ないぎしたくは・さまさまなりしかども・おほかたの・ぎせいばかりにては・いかにも・かなふべうも・みえざりけるに・むねと・たのまれたりける・つのくにげんじ・ただのくらんどゆきつな・このことむやくなりと・おもふこころぞ・いできにける・つらつらへいけの・はんじやうをみるに・たやすく・かたぶけがたし・まただいなごんどのの・かたらはるるところの・ぐんびやう・いくほどなし・ゆきつなよしなきことに・くみしたり・このことてんかに・もれなば・まづ・ゆきつな・さきに・うしなはれなんず・されば・ひとのくちより・もれぬ・さきに・このことへいけへまをし・わがみの・さいなんを・のがればやと・おもひければ・おなじき五ぐわつ廿九にちの・よにいつて・にふだうしやうごくの・しゆくしよ・にし八でうどのへぞ・P62
まゐりたる・にふだうやがていであひ・たいめんしたまひて・このよは・はるかに・ふけぬらんに・そもなにごとぞと・のたまへば・ゆきつなさんさふらふ・たうじ・ごきんじゆのひとびとの・ひやうぐを・ととのへぐんびやう・あつめられさふらふをば・いまだ・しろしめされ・さふらはぬやらんと・まをしたりければ・にふだうよにも・こともなげにて・わうそれは・ほうわうの・やませめらるべしとこそ・きけとのたまへば・ゆきつな・ゐよりて・いや・そのぎにてはさふらはず・たうじ・ごきんじゆのひとびとの・ご一もんを・かたぶけ・まゐらせんとこそ・ぎせられげに・さふらへと・まをしたりければ・にふだう・もつてのほかに・おどろきたまひて・さてさやうの・ことどもをば・ゐんにも・しろし・めされたるか・まをすにやおよびさふらふ・しつじのべつたう・しんだいなごんどのの・ぐんぴやうあつめられさふらひしにも・ゐんぜんとてこそ・もよほされ・さふらひしか・そのほか・さいくわうが・と・まをして・しゆんくわんが・かうまをしてなんど・あるままにも・さしすぎて・まをしちらし・いとままをして・まかりいづ・にふだうもつてのほかの・おほごゑをもつて・さぶらひども・よび・ののしりたまふ・こゑ・おそろしく・ゆきつなも・なまじひなること・まをしいだし・わがみも・そのしようにんにや・ひかれつらんと・おもひければ・ひともおはぬに・とりはかまし・おほのに・ひをはなつたるここちして・もんぜんにはしりいで・ばばなるむまに・うちのりて・いそぎしゆくしよへ・にげかへる・にふだう・さだよしとめす・ちくごのかみさだよし・おんまへに・まゐりかしこまる・にふだう・ややさだよし・きやうちうに・むほんのともがらどもが・みちみちたんなるぞ・ひとびとにも・ふれまをせ・さぶらひども・めすべしと・のたまへば・さだよしうけたまはつて・きやうちうを・もよほしけるに・こまつどのばかりこそ・なにごとにも・さわぎたまはぬひとにて・さんぜられね・そのほかのひとびとには・とうのちうじやうくらんどのかみ・さまのかみいげの・くぎやうでんじやうびと・みなわれもわれもと・はせまゐらる・そのほか・さぶらひぐんびやうども・われもわれもと・はせたりけり・よのほどに・P63
にし八でうどのには・四五千きにこそ・なりにけれ・あくれば・六ぐわつついたちの・まだくらかりけるに・にふだう・けんびゐしあべのすけなりを・めして・やよすけなり・ゐんのごしよにまゐり・だいぜんのだいぶ・よびいだし・そうせうずるやうよな・ごきんしゆの・ともがらどもが・あまりの・くわぶんにて・あまつさへ・じやうかいを・かたぶけんと・けつこうつかまつりさふらふをいちいちに・めしとつて・ことのしさいを・たづねうけたまはり・まをさうずるをば・ゐんには・しろし・めさるまじうさふらふと・まをせとて・つかはさる・すけなり・ゐんのごしよにまゐり・だいぜんのだいぶを・よびいだし・このよしまをしたりければ・ほうわう・あはれこれは・ひごろ・はかりしことの・はや・もれきこえたるに・こそと・おぼしめすより・あさましくて・こは・なにごとぞと・ばかりにて・ふんみやうのごへんじも・なかりければ・すけなり・さればこそと・むやくにて・いそぎ・かへりまゐるべきよしを・いひいれつつ・にし八でうに・かへりまゐりて・このよし・まをしたりければ・にふだう・さればこそ・よもごへんじは・あらじ・ゆきつなは・まことを・いひけり・このこと・つげしらせずは・にふだうあんをんにてや・あるべきとて・やがて・なんばせのをを・めして・むほんの・ともがらども・からめとるべきやうを・いちいちしだいに・げぢせらる・なかのみかど・からすまるの・しんだいなごんなりちかのきやうの・もとへ・ざふしきをもつて・きつとたちよらせさふらへ・いささか・のたまひあはすべきことの・さふらふとのたまひ・つかはされたりければ・だいなごん・あはれこれは・たうじ・さんもんの・さうどうのことを・ゐんへ・そうせんとにやらん・そのぎならば・おんいきどほり・もつてのほかげなるものをとて・わがみのうへとは・つゆ・しりたまはず・ないきよげなる・ほうえ・たをやかに・きなしつつ・八えふのくるまの・あざやかなるに・のりたまふ・うしかひざふしきに・いたるまで・みな・きよげにてぞ・いでられける・そもさいごとは・のちにぞ・おもひしられける・だいなごん・にし八でう・ちかうなP64
るままに・そのへんを・みたまへば・もののぐしたるつはものどもが・四五ちやう・十ちやうに・ところもなくぞ・みちみちたる・だいなごん・こは・なにごとやらんと・むねうちさわぎ・もんを・さしいりて・みたまへば・ちうもんのとには・おそろしげに・よろうたる・むしや・二にん・だいなごんどのに・たちむかひたてまつり・だいなごんどのの・さうのてを・とつて・ひつぱり・にはへ・ひきおとしたてまつつて・こは・いましめたてまつるべうもや・さふらふらんと・まをしたりければ・にふだう・すこしはらゐて・あるべからずと・のたまへば・うけたまはつて・つはものす十にんがなかに・とりこめたてまつつて・ひとまなるところに・おしこめたてまつる・だいなごんただ・ゆめのここちぞ・したまひける・おんともにさふらひける・しよたいふ・さぶらひども・いくらも・ありけれども・たいぜいに・おしへだてられて・ものをだにも・まをさず・うしかひざふしきに・いたるまで・くるまをすてて・みなちりぢりにこそ・なりにけれ・これをはじめとして・へいけの・さぶらひども・二百よき・三百よき・しよしよに・おしよせおしよせ・むほんのともがらども・一々しだいに・からめとり・まづ・あふみのちうじやうにふだうれんじやう・やましろのかみもとかね・しきぶのたいふまさつな・そうのはんぐわんのぶふさ・しんへいはんぐわんすけゆき・へいはんぐわんやすより・ほつしようじのしふぎやうしゆんくわんそうづも・からめられてぞ・いできたる・さいくわう・これも・このこと・ゐんへそうせんとて・いそぎ・むちあぶみあはせて・はせまゐる・へいけのさぶらひども・みちにて・ゆきあうたり・いかに・ごへん・にし八でうどのより・めしのさうぞ・きと・まゐりたまへと・いひければ・さいくわうこれも・いささか・ゐんへそうすべき・やうあつて・まゐりさふらふ・いかさまにも・やがて・まゐらむずるさふらふとて・うちすぎんとす・につくい・にふだうの・なにごとをか・そうすべき・さな・いはせそと・いふままに・むまよりとつて・あておとして・からめとる・ひのはじめより・どういよりきの・ものなりければ・したたかに・いましめて・にふだうしやうごくのしゆくしよ・にし八でうへ・ぐしP65
てまゐり・おんつぼのうちにぞ・ひつすゑたる・にふだうごらんじて・あはれ・このひごろ・いかにもして・じやうかいを・かたぶけんとせし・やつばらどもの・なれるすがたの・おもしろさよ・しやつ・ここへ・ひきよせよやとて・えんのきはに・ひきふせさせ・まづ・おほきなるむちをもつて・こころのゆくゆく・うちて・のたまひけるは・やれおのれが・やうなる・げらふのはてを・きみの・めしつかはせたまひて・なさるまじき・くわんしよくを・たうで・ふしともに・くわぶんの・ふるまひせし・やつばらと・みしにあはせて・あやまらぬ・てんだいざす・るざいに・まをしおこなひ・あまつさへ・じやうかいをかたぶけんとせし・むほんにん・ひのはじめより・みなひと・しつたり・いささか・そのやうを・すみやかにまをせ・につくい・にふだうのと・のたまへば・さいくわう・ちつともいろも・へんぜず・わるびれたる・きしよくもなくゐなほり・いでいで・さらば・のちごと・ひとつはなさんとて・いいや・さもさうぬぞとよ・しつじのべつたう・しんだいなごんどのの・ぐんびやう・あつめられさふらひしかば・ゐんちうに・めしつかはるるものの・みなれば・くみせぬとは・まをすまじ・それは・くみしたり・ただしごへんは・みみに・とどまることをも・のたまふものかな・たにんのまへはしらず・さいくわうなんどが・まへにては・さやうのくわんぶんの・ことばをば・えこそ・のたまふまじけれ・みさうざつし・ことか・ごへんは・こぎやうぶきやうのこにては・ありしかども・十四五までは・しゆつしもなく・こなかのみかどの・とうのちうなごんかせいのきやうのもとに・たちよりたまひしをば・きやうわらんべは・れいのたかへいたとこそ・わらひしか・いんじはうえんの・ころかとよ・ごへんのちち・ただもりの・はかりごと・いみじうして・かいぞくの・ちやうぽんにん・四十よにん・めししんぜられたりし・けんしやうに・ごへんのいまだ・そのころ・十八か・九にて・四ゐして・四ゐのひやうゑのすけと・いはれたまひしをば・ひといP66
つしかなりと・まをししが・ひごろは・でんじやうのまじはりをだにも・きらはれ・たまひしひとの・しそんの・いまは・きんじき・ざつはうをゆり・りようらきんしうを・みにまとひ・あまつさへ・だいじんたいしやうに・いたつて・きみをも・きみとはせず・しんをも・しんとせぬをこそ・くわぶんとはいへ・さぶらひほどのものの・じゆりやうけびゐしになること・せんれい・はふれい・なきにあらず・されば・なにごとか・くわぶんなるべき・にふだうどのといひければ・にふだうあまりに・はらをすゑかねて・しばしは・ものをも・のたまはず・ややあつて・にふだうしやうごく・のたまひけるは・しやつ・ここへひきよせよやとて・えんのきはに・あをのけに・ひきふせさせ・さいくわうが・しやつらを・ものはきながら・むんずむんずと・ふんで・しやつに・ものないはせそ・したをぬけ・くちをさけとぞ・いかられける・まつうらのたらういへとしと・まをすもの・ちうにくくつて・いでにけり・そののち・あしてを・はさみ・がうきにかけ・さまざまに・いため・とふ・さいくわうもとより・あらがひざつしうへ・きうもんは・きびしかりけり・ことのしさい・のこりなうこそ・おちたりけれ・はくじやうを・かみ四五まいに・きせられけり・そののち・五でうにしのしゆじやかに・ひきいだし・したをぬき・くちをさき・つひに・かうべをはねられけり・じなん・こんどうはんぐわんもろつね・きんごく・せられたりけるをも・めしいだし・おとと・さゑもんのじよう・もろひら・ともに・かうべを・はねられけり・ならびに・らうどう三にん・ちうせらる・ちやくし・かがのかみもろたかをば・をはりの・ゐどたへ・ながされ・たりけるをも・うつてをつかはして・ほろぼさる・もろたか・さんざんに・たたかひけるが・かなはじとや・おもひけむ・たちに・ひかけ・じがいしてこそ・うせにけれ・これらは・すべて・いひがひなき・ものの・ひいでて・あやまらぬ・てんだいざす・るざいに・まをしおこなひ・さんわうだいしの・しんばちみやうばちを・たちどころに・えて・わがみも・P67
しそんも・ことごとくほろびぬるこそ・あさましけれ
小教訓 203
さるほどに・だいなごんは・ひとまなるところに・おしこめられて・おはしけるが・あはれこれは・ひごろ・はかりしことの・はやもれ・きこえたるにこそ・たれもらしけむ・いかさまにも・これは・ほくめんのともがらどもの・うちにもや・あるらんなんど・おもはしなき・こともなう・あんじつづけて・おはしけるところに・うしろのかたより・あしおと・たからかに・ひとの・きたるおとの・しければ・だいなごん・ただいまこれにて・うしなはれんずるに・こそと・おもはれけるに・さはなくて・にふだうしやうごく・そけんのころもの・も・みじかなるに・しろき・おほくち・ふみふくみ・ひじりづかの・かたな・おしくつろげて・さすままに・だいなごんの・おはしける・うしろの・しやうじを・あららかに・さつとあけて・しばらく・にらまへてぞ・たちたまひける・ややあつて・にふだう・のたまひけるは・いかに・ごへんさんぬる・へいぢに・のぶよりのきやうが・むほんの・どうしんによつて・すでに・ちうせられたまふ・べかりしを・こまつのだいふが・やうやうにまをして・くびを・つぎたまひし・ひとぞかし・いつしか・そのおんをわすれて・あまつさへ・じやうかいを・かたぶけむとの・ごけつこうぞや・ひごろの・むほん・けつこうの・しだいを・たづねうけたまはり・まをさうずるは・いかにと・のたまへば・なまじひに・だいなごん・いかさまにも・それは・ひとの・ざんげんにてぞ・さふらふらん・くはしくおんたづねあるべうさふらふと・いはせも・はてず・それなりつる・さいくわうが・はくじやうもつて・まゐれと・のたまへば・うけたまはつて・P68
かみ四五まいに・かいたるものを・もつて・まゐりたり・にふだうひきひろげ・二三べんがほど・たからかに・よみきかせ・あらにくや・このうへは・ここをなにとか・あらがひたまふべき・それよく・みたまへとて・だいなごんの・かほに・さつと・なげかけて・いそぎ・しやうじを・ちやうどたててぞ・いりたまひける・そののち・にふだう・なんばせのをと・めされければ・つねとほ・かねやす・まゐりたり・あのをとこ・とつて・ひつぱり・にはへひきおとし・とつてふせて・をめかせよと・のたまへば・二にんのものども・こまつどのの・かへりきこしめされんずるところも・いかが・さふらふべかるらんとて・ふかうかしこまつてぞさふらひける・にふだう・よしよし・さきいつ・じやうかいが・めいをば・かるんじて・だいふはなほ・おそろしいとや・そのぎならば・そのむねをこそ・こころえめと・のたまへば・二にんのものども・あしかりなんとや・おもひけん・だいなごんどのの・さうのてを・とつて・ひつぱり・にはへ・ひきおとしたてまつつて・さうのおんみみに・くちをよせて・いかさまにも・おんこゑの・いづべうさふらふとて・あげては・どうとおき・どうとおき・二三ど・あげおろしたりければ・おんこゑ二こゑ三こゑぞ・いだされたる・なほいまめ・たてまつるべうもや・さふらふらんと・まをしたりければ・にふだう・すこし・はらゐて・いまはとうとう・やすめまをせとのたま・へば・うけたまはつて・つはものす十にんが・なかに・とりこめたてまつつて・また・ひとまなるところに・おしこめたてまつる・だいなごん・ただゆめのここちぞ・したまひける・そのてい・めいどにて・ざいにんどもが・つみのけいぢうによつて・あるひは・ごふのはかりにかけられ・あるひは・じやうはりの・かがみに・ひきむけられ・しよさのごふに・よつて・かしやくをくはへ・けいばつを・おこなはるらんも・これには・すぎじとぞ・みえし・せうはんとらはれ・とらはれて・かんはうにらき・すされたり・てうそりくをうけ・しうぎ・つみせらる・たとへば・P69
かのせうか・はんくわい・かんしん・はうゑつ・これらはみな・かうその・こうしんたりしかども・せうじんの・ざんによつて・くわはいの・はぢをうくとも・かやうのことをや・まをすべき・さるほどに・だいなごんは・ひとまなるところに・おしこめられて・おはしけるがちやくし・たんばのせうしやうも・いまは・めしやこめられぬらん・のこりとどまる・あとのありさま・さこそはあるらめなむど・おもはじなきこともなう・あんじつづけて・おはしける・ほどに・さしもの・ごくねつに・しやうぞくをだにも・くつろげたまはねば・あせも・なみだも・あらそひてぞ・みえられける・おとどは・いまだ・おはせぬやらん・さりとも・よもすておき・たまふべきとは・おもはれけれども・たれして・のたまふべきとも・おぼえねば・くれをもまたで・つゆのみの・きえぬべうこそ・おもはれけれ・こまつどのは・なにごとにも・さわぎたまはぬひとにて・おはしければ・はるかに・ひたけて・のち・ゑふ四五にん・ずゐしん三四にんほど・めしぐして・のどやかげにてぞ・おはしたる・にふだうよにも・あしげに・みたまへば・ちくごのかみさだよし・おんまへをついたつて・おとどに・まゐりむかひたてまつり・これほどの・おんだいじに・など・ぐんびやうどもをば・一にんも・めしぐ・せられさふらはぬやらんと・まをしたりければ・おとど・だいじとは・てんがの・だいじをこそいへ・されば・これは・わたくしごと・なんでう・ことのあるべきとて・いりたまへば・かつちうを・よろひ・きうせんを・たいしたる・ものどもも・みな・そぞろいてぞ・さふらひける・そののち・おとど・ちうもんに・おはして・だいなごんの・おはするところは・いづくやらんと・かしこここの・しやうじを・ひきあけひきあけ・みたまへば・ここに・くもでゆうたる・ところあり・これや・そなるらんとて・ひきあけて・みたまへば・をりふし・だいなごんは・おとどのこと・おぼしめしいだし・なみだにむせび・うつぶして・おはしけるが・おとど・P70
さていかにやと・のたまふこゑを・ききつけて・めをもちあげ・うれしげに・おもはれたる・けいき・ごくあくしんぢうの・ざいにんが・ぢざうぼさつに・あひたてまつるらんも・これには・すぎじとぞ・みえし・だいなごんは・こはなにごとにてさふらふやらん・みには・いつせつ・あやまつたる・こともさふらはねども・けさより・かやうに・めしこめられ・まゐらせて・ゆふさり・すでに・うしなはるべしとやらん・うけたまはりさふらふ・さんぬる・へいぢに・いのちたすけられ・まゐらせて・そのごおん・いまだ・はうじ・つくしがたうてさふらふ・こんども・よきやうに・まをして・たすけさせ・おはしましさふらへかし・かひなき・いのちだには(イ命だに生きて候はば)・やがて・もとどりきつて・いかならむ・かたやまざとにも・とぢこもり・ひとすぢに・ごしやうぼだいの・いとなみをも・つかまつりさふらはんと・おもひなつて・こそさふらへと・のたまへば・おとど・いかさまにも・それは・ひとの・ざんげんにてぞ・さふらふらん・さりながら・こんどもまた・よきやうにまをして・たすけ・たてまつらばやとこそ・ぞんじさふらへ・おんこころやすく・おぼしめされさふらふべしとて・いでられければ・だいなごん・おとどの・おはしつるほどは・いささか・たのもしう・おもはれつるに・おとど・いでたまひてのちは・だいなごん・よにも・こころぼそくぞ・おもはれける・そののち・おとど・ちちのおんまへに・おはして・さてあの・だいなごんをば・きられんずるにて・さふらふやらんと・まをされたりければ・にふだう・しさいにや・およぶ・このくれを・まつなりとぞ・のたまひける・おとど・あのだいなごん・さうなう・うしなはるべからず・そのゆゑは・かれがせんぞ・六でうのしゆりのだいぶあきすゑきやう・しらかはのゐんに・めしつかへてより・このかた・いへひさしう・へのぼり・くらゐ・じやう二ゐ・くわん・だいなごんに・あがり・ことには・たうじの・きみの・ぶさうのおんいとほしみにて・さふらふなるものを・さうなう・うしなはるべきこと・P71
いかがさふらふべかるらん・かやうには・また・きこしめされてさふらふとも・もしこのことの・ひがごとならば・いよいよふびんの・いたりなるべし・きたののてんじんは・しへいのおとどの・ざんげんによつて・うきなを・さいかいのなみにながし・にしのみやのだいじんは・ただのしんぼちが・ざんさうによりて・そのみを・せんやうの・くもにかくしたまふ・これみな・えんぎのせいしゆ・あんわのみかどの・おんひがごととぞ・まをしつたへたる・じやうこもつて・かくのごとしいはんや・まつだいに・おいてをや・けんわうなほ・おんあやまりあり・いはんやぼんにんにおいてをや・よくよく・ごあんも・あるべし・くはしう・おんたづねも・さふらふべし・こうくわい・さきにただずとこそ・うけたまはりさふらへ・けいのうたがはしきをば・かるんぜよ・こうのうたがはしきをば・おもんぜよとこそ・みえてさふらへ・かやうにまをしさふらへば・しげもり・かのだいなごんが・いもうとに・あひぐしたり・これもりまた・むこなり・かたがたしたしければ・まをすとや・おぼしめされさふらふらん・まつたく・そのぎにてさふらはず・ただよのため・いへのために・ぞんじて・かやうには・まをしさふらふなり・むかしさがのくわうていのおんとき・さひやうゑのじようふぢはらのなかなりが・ちうせられてより・このかた・しにたるものの・ふたたび・かへることなし・これふびんの・いたりなるべしとて・はうげんまでは・きみ・廿五だい・たえてひさしかりし・しざいを・しんぜいにふだう・しつけんのときに・あひあたりて・うぢのさふの・しがいを・ほりおこし・かうべをはね・おほぢをわたし・じつけんせられしこと・なんどは・むだうなる・いたり・あまりなる・まつりごととこそ・みさふらひしか・されば・ふるきひとのことばにも・あまりに・しざいを・おこなへば・かいだいに・むほんの・ともがらたえずと・まをししに・あはせて・なか・ふたとせあつて・へいぢに・こといでき・しんぜい・みやこのうちを・いだされ・いきながら・うづまれ・いくほどなうて・ほりおこし・かうべをはね・おほぢを・わたされ・くびをごくもんに・かけられし・ことP72
なんどは・いつしか・そのむくいかと・おぼえて・かへすがへすおそろしう・こそさふらへ・これは・させる・てうてきにても・さふらはず・せめては・みやこのうちを・いだされたらんに・ことたりさふらひなんず・だいじやうだいじんまでも・きはめさせたまひぬれば・ごえいぐわ・のこるところはさふらはねども・ししそんそんまでも・はんじやうこそ・あらまほしうさふらへ・ふその・ぜんあくは・しそんにおよび・しやくぜんのいへに・よけいあり・しやくあくのかどに・よあうとどまるとこそ・うけたまはりさふらへなんど・やうやうに・まをされたりければ・ゆふさりだいなごん・きられんことをば・おぼしめしとどまり・たまひける
あひ 204
そののちおとど・ちうもんにいで・さぶらひどもに・むかつて・のたまひけるは・たとひにふだう・ふしぎを・げぢしたまふとも・あのだいなごん・さうなう・きるべからず・おんふくりふのままに・ものさわがしき・おんことならば・さだめて・ごこうくわいあるべし・さるにても・つねとほ・かねやすが・けさあの・だいなごんに・あらけなく・あたりつることこそ・かへすがへすも・きくわいなれ・かたゐなかのものどもは・よろづのことに・かかるぞとよと・のたまへば・二にんのものども・さればこそ・けさ・われらが・まをしつるところも・ここぞかしとて・ふかう・おそれいつてぞ・さふらひける・おとどは・かやうに・げぢしつつ・こまつどのへぞ・かへられける・さるほどに・だいなごんのともに・さふらひける・しよたいふさふらひども・なかのみかど・からすまるのだいなごんなりちかのきやうの・ごしゆくしよに・かへりまゐつて・かみには・けさよりして・にし八でうに・めしこめられ・まゐらつさせたまひて・ゆふさりすでに・うしなはれ・させたまふべきと・やらん・うけたまはりさふらふ・またせうしやうどのを・はじめたてまつつて・P73
きんたちたちをも・みな・むかへまゐらつさせ・たまふべしと・やらん・つたへうけたまはつてさふらふと・まをしたりければ・きたのかためのとのにようばうを・はじめたてまつつて・いへのうちに・ありとし・あるひと・みな・きもたましひを・うしなつて・こゑをあげてぞ・なかれける・によばうだち・いまは六はらより・つゐふのくわんにんどもの・まゐりむかひさふらふらんに・こはいづくへも・しのばせたまひてと・まをしあはれければ・きたのかた・いまこれほどに・なりぬるうへは・いづかたへか・しのぶべき・ただひとところにて・ともかうも・なりたらんこそ・ほんいなれ・さるにても・けさをかぎりと・しらざりつる・ことこそ・かなしけれとて・ふししづみてぞ・なかれける・さるほどに・六はらより・つゐふのくわんにんどもの・まゐりむかふよし・きこえしかば・きたのかた・いまさればとて・はぢがましく・うきめを・みむよりは・しのばむとて・きたのかた・くるまにのりたまふ・十さいのわかぎみ・八さいのひめぎみ・ひとつくるまにのせ・たてまつつて・おほみやをのぼりに・きたやまのほとり・うんりんゐんへ・いれたてまつり・あさましげなる・そうばうに・おろしおきたてまつる・おんとものひとびとは・みのすてがたさに・いとままをして・みなちりぢりにこそ・なりにけれ・きたのかた・きんだちばかり・のこりとどまらせたまひて・くれゆくかげを・みたまふにつけても・あはれやだいなごんは・ゆふさりすでに・うしなはれさせたまふべき・なれば・つゆのおんいのち・いまいくほどぞやと・おもひやるにも・きえぬべし・さるほどに・だいなごんのとしごろ・めしつかはれたる・つぼねのにようばうめのわらは・ものをだにも・うちかつがず・かちはだしにて・もんぜんに・はしりいで・みなちりぢりにこそ・なりにけれ・もんをだにも・おしたてず・むまやには・むまどもなみたちけれども・くさかふものもなし・よあくれば・もんぜんには・うまくるまのひまなく・うちには・ひんかく・ざにつらなつて・よをよともせず・みちをすぐる・ものP74
ども・おぢおそれてこそ・きのふまでも・ありつるに・よのまにかはる・よのならひ・しやうじやひつすゐのことわり・は・めのまへにこそ・あらはれたれ・たのしみつきて・かなしみきたると・かかれたる・がうしやうこうの・ふでのあと・いまこそ・おもひしられけれ
少将の乞請 205
さるほどに・しんだいなごんなりちかのきやうのちやくし・たんばのせうしやうなりつねは・きのふより・ゐんのごしよに・うへぶしして・いまだまかりも・いでられざりけるに・ひとまゐつて・このよしまをしたりければ・せうしやうなど・これほどのことを・しうと・さいしやうのもとよりは・つげられぬやらんと・のたまふところに・しうとさいしやうのもとより・つかひあり・にし八でうより・ぐしたてまつつて・きつときたれとさふらふ・とうとうと・のたまひつかはされたりければ・せうしやう・はやこころえたまひて・ごしよちうの・にようばうたちを・よびいだしたてまつつて・かかることこそさふらへ・きのふより・せけん・なんとなう・そうぞうにさふらひつるを・れいのやまの・だいしゆの・くだるかなんど・よそに・ぞんじてさふらへば・はやなりつねが・みのうへにて・さふらひけり・さても・八さいより・おんめにかかり・十二より・このごしよに・しこうつかまつつて・あさゆふは・ふびんのおほせ・まかりかうぶり・さふらひしに・ゆふさり・あのだいなごん・うしなはれさふらはば・さだめてなりつねも・おなじみちにぞ・おこなはれ・さふらはんずらん・いま一ど・きみをも・みまゐらせたくは・さふらへども・かかるみに・まかりなりさふらひぬるうへは・よにおそれてこそ・まかりいでさふらへと・まをされたりければ・にようばうたち・ごぜんにまゐり・このよしそうし・まうされたりければ・ほうわう・なにかはくP75
るしかるべき・いま一どこれへと・おほせければ・せうしやうなくなく・ごぜんへは・まゐられたりけれども・まをしいださるるむねもなし・ほうわうもまた・おほせいださせたまふかたも・なかりけるに・さてしも・あるべきならねば・せうしやうおんいとままをして・いでられけり・ほうわうは・せうしやうの・うしろを・はるばると・ごらんじおくらせたまひて・ただまつだいこそ・こころうけれ・またもごらんぜられぬ・おんこともや・あらんずらんとて・おんなみだに・むせばせ・おはします・そのほかごしよちうのひとびと・せうしやうの・そでに・すがり・たもとにとりつき・みななみだをぞ・ながされける・せうしやうは・けさゐんのごしよを・いづるより・ながるるなみだも・つきざるに・しうとさいしやうのもとに・おはして・まづ・きたのかたの・おんありさまを・みたまふに・せんかたなし・ちかうさんしたまふべきにて・つきごろも・なにとなう・うちなやみたまひけるが・またこのことさへ・うちそひて・ふししづみてぞ・おはしける・またせうしやうのめのとに・六でうとまをす・にようばうあり・せうしやうの・そでをひかへたてまつつて・きみのちのなかに・わたらせたまひしを・とりあげいだき・そだて・まゐらせてより・このかた・わがみのとしの・おいゆくをもしらず・いつかとくして・おとなしく・ならせたまはんずらんと・まをしあかし・まをしくらし・ことしは・廿一まで・そだてまゐらせて・ゐんへも・うちへも・おんまゐりあつて・おそういでさせたまふときは・かつうは・おんこひしうも・かつうはまたおぼつかなうも・おもひまゐらせつるに・ただいまいでさせたまひて・いかなるおんめにか・あはせたまはんずらんとて・なきければ・せうしやういたうな・なげきそ・さいしやうさてましませば・いのちばかりをば・まをして・たすけたまはぬ・ことあらじとは・のたまへども・めのとの・六でう・ただもだえこがれ・たをれふし・なくよりほかの・ことぞなき・さるほどに・にし八でうより・つかひしきなみに・たちけP76
れば・さいしやうさらば・いでてこそ・ともかうも・ならめとて・くるまにのつてぞ・いでられける・せうしやうもどうしやして・こそいでられけれ・さいしやうのうちの・じやうげ・なんによみな・くるまよせまで・はしりいで・なきひとを・いだすがやうに・こゑをあげてぞ・なかれける・はうげんへいぢより・このかた・へいけのひとびとの・たのしみさかえは・ありしかども・うれへなげきは・なかりしに・このさいしやうばかりこそ・よしなき・むこゆゑに・かかるなげきは・したまひけれ・さるほどにさいしやう・にし八でうにおはして・あんないを・まをされたりければ・にふだう・せうしやうをば・うちへは・かなふまじと・のたまふあひだ・そのへんちかき・さぶらひのもとに・おろしおきたてまつつて・さいしやうばかり・いりたまふ・いつしかつはものども・せうしやうを・うちかこみたてまつつて・しゆごしたてまつる・さいしやう・ちうもんにおはして・いであはるるかと・たいめんを・またれけれども・にふだう・とみにも・いでられざりければ・げんたいふのはんぐわんすゑさだをもつて・まをされけるは・のりもり・よしなきものに・むすぼほれて・いまさら・くやしうさふらへどもちからおよびさふらはず・またかれに・あひぐせさせて・さふらふもののうちなやむことのさふらふが・またこのことさへ・うちそへて・いのちも・あやうくこそさふらへ・あはれかれが・いかにも・ならんほど・たんばのせうしやうを・のりもりに・あづけさせ・おはしまし・さふらへかし・なじかは・ひがごと・せさせさふらふべきと・まをされたりければ・すゑさだ・おんまへに・まゐつて・このよし・まをしたりければ・にふだうあはや・また・れいのさいしやうの・ものにも・こころえぬことを・のたまふものかなとて・おほきに・いかつて・しばしは・ものをも・のたまはず・ややあつて・にふだうしやうごく・のたまひけるは・そもそもかの・しんだいなごんなりちかのきやうと・いつぱ・むほんをおこして・たうけを・がたぶけむとす・されども・この一もんいまだ・うんつきざるによつて・このことはやく・あらはれたり・もしこのP77
むほん・とげましかば・そのごへんとても・あんをんにや・おはすべき・うとうも・おはせよ・したしうも・おはせよ・えこそ・なだめ・まをすまじけれ・むこも・こも・まことのときは・ただ・みに・まさることや・あるとぞ・のたまひける・さいしやうかさねて・まうされけるは・はうげん・へいぢよりこのかた・だいせうじ・おんいのちにかはり・まゐらせて・あらきかぜをば・まづふせぎ・まゐらせんとこそ・つかまつりさふらひしが・いまよりのちも・たとひのりもりこそ・としおいてさふらふとも・こどもあまた・もちてさふらへば・などか一ぱうの・おんかために・なりまゐらせでは・さふらふべき・それにしばらく・せうしやうを・のりもりに・あづけさせ・おはしませとまをすを・おんゆるされも・なきはよく・のりもりをも・ふたごころあるものに・おぼしめされたる・にてこそさふらへ・さやうに・うしろめたいものに・おもはれまゐらせて・のり
もり・よにありても・なににかはし・さふらふべき・あはれしゆつけのいとまをたまはつて・かうや・こがはにも・とぢこもり・ひとすぢに・ごしやう・ぼだいの・いとなみをつかまつりさふらはばや・よしなき・うきよの・まじはりなり・よにあればこそ・のぞみもあれ・のぞみのかなはねばこそ・うらみもあれ・しかじうきよをいとひ・まことのみちに・いりなんにはとぞ・まをされける・すゑさだまた・おんまへに・まゐつて・このよし・まをしたりければ・にふだうもつてのほかに・おどろきたまひて・さてはさやうに・さいしやうの・しゆつけにふだうなんどまで・まをさるなるこそ・けしからね・さらばしばらく・せうしやうを・しゆくしよにも・おかれさふらへかしと・よにも・しぶしぶにこそ・のたまひけれ・さいしやうなみだをながし・あはれわがこに・むすぼほれざらんには・なにしにか・これほどに・こころをくだくべき・よしなかりける・によしかなとて・なみだにむせびてぞ・いでられける・せうしやうまちうけたてまつつて・さていかに・さふらふと・のたまへば・さいしやうさればこそ・いかにも・かなP78
ふまじかりつるを・のりもりが・しゆつけにふだうなんどまで・まをしたればにやらん・しばらくしゆくしよに・おきたてまつれとはのたまへども・ゆくすゑとても・たのもしからずと・のたまへば・せうしやうさては・ごおんをもつて・しばらくの・いのちのたすかりさふらふござんなれ・さてあの・だいなごんどののおんことをば・なにとか・きこし・めされたるやらんと・のたまへば・さいしやう・いさとよ・いかにもしてぞ・このことをこそ・まをさばやと・しつれ・それまでの・ことは・おもひも・よらずと・のたまへば・さてあの・だいなごんどの・ゆふさり・うしなはれたまひさふらはば・うきもしづみも・なりつねをも・おなじみちには・まをさせたまはでと・のたまへば・さいしやうよにも・こころぐるしげにて・いさとよそれも・こまつのだいふの・けさよりして・やうやうに・とりまをさるなるが・それもしばらくの・いのちのたすからせ・たまふやうにこそ・うけたまはりつれと・のたまへば・せうしやうてをあはせてぞ・よろこばれける・まことの・こならざらむひとの・わがみの・うへをさしおきて・たれかは・かやうに・よろこぶべき・まことのちぎりは・おやこのなかにぞ・ありける・さればこに・すぎたる・たからなしと・やがて・おもひぞ・かへされける・さるほどに・さいしやうは・くるまにのつてぞ・いでられける・せうしやうもまた・けさのやうに・どうしやしてこそ・かへられけれ・ひとさきにまゐつて・せうしやうどのは・べちのおんことも・わたらせたまはで・かへらせたまひてさふらふと・まをしたりければ・さいしやうのうちの・じやうげなんによみな・くるまよせまで・はしりいで・ししたるひとの・いきかへりたるここちして・みなよろこびのなみだをぞ・ながされけるP79
教訓状 206
にふだうしやうごく・しんだいなごんなりちかのきやういげ・ごきんじゆのひとびと・そのほか・ほくめんのともがらどもに・いたるまで・おほくいましめおかれても・なほこころゆりずや(イ心ゆかずや)・おもはれけむあかぢのにしきのひたたれに・くろいとをどしの・はらまきの・むないたせめ・そのかみいまだ・あきのかみたりしとき・いつくしまのだいみやうじんより・れいむかうぶり・うつつにたまはられたりける・しらえのこなぎなた・つねのまくらをはなたず・たてられたりけるを・わきにはさみつつ・ちうもんのらうへぞ・いでられける・おほかたそのけしき・ゆゆしうぞみえし・にふだう・さだよしとめす・ちくごのかみさだよし・もくらんぢの・ひたたれに・ひをどしの・よろひきて・おまへにまゐり・かしこまる・にふだう・やや・さだよし・いかがはからふ・さんぬるはうげんに・をぢへいむまのすけただまさをさきとして・一もんなかばすぎ・しんゐんのみかたに・まゐりたりき・一みやのおんことは・ごぎやうぶきやうのとのの・やうくんにて・わたらせたまひしかば・かたがた・みはなちまゐらせがたうは・おもひしかども・こゐんの・ごゆゐかいにまかせて・このおんかたに・まゐり・さきをかけたりき・これ一の・ほうこうにあらずや・またへいぢぐわんねん十二ぐわつに・のぶより・よしともが・むほんのとき・ゐんうちおしこめたてまつつて・てんかは・くらやみとなりたりしにも・にふだう・いのちを・すてずしては・いかにも・かなふまじかつしあひだ・みかたにてぞくとを・うち・たひらげ・のぶより・よしともを・ちゆうりくし・つねむね・これかたをめし・いましめしにいたるまで・きみのおんために・いのちをすつること・どどにおよぶ・されば・ひと・いかにまをすとも・この一もんをば・いかでか・七だいまでも・おぼしめしすてさせたまふべきに・それになりちかといふ・むようのいたづらもの・またP80
さいくわうといふ・げせんのふたうにんが・まをすことに・きみのつかせ・おはしまして・たうけをかたぶけんとの・ごけつこうこそ・しかるべからね・なほも・ざんそうするものあらば・かさねてゐんぜん・くだされつと・おぼゆるなり・てうてきとなりなんのちは・いかにくゆとも・えきあるまじ・さればしばらくよをしづめむほど・ほうわうを・とばの・きたどのへうつし・まゐらするか・しからずば・また・ごかうを・これへなりとも・なしまゐらせばやと・おもふはいかがあるべき・さらむにとつては・ほくめんのともがらどもの・なかに・やをもひとつ・いつとおぼゆるもののあるぞとよ・さぶらひどもに・そのようい・せよと・ふるべし・おほかたにふだう・ゐんがたのほうこうに・おいては・おもひきつたり・むまにくらおけ・きせなが・とりいだせよとぞ・ひしめかれける・そののち・しゆめのはんぐわんもりくに・いそぎこまつどのに・はせまゐつて・まうしけるは・よははやすでに・かうとこそみえさせおはしましさふらへ・そのゆゑは・かみに・おんきせながを・めされさふらふうへ・つはものどもみな・うつたつて・ただいますでに・ゐんのごしよ・ほうぢうじどのに・よせさふらふぞや・ほうわうをば・とばどのにと・ごひろうあつて・ないないは・さいこくのかたへ・ながしまゐらすべしとこそ・うけたまはりさふらへと・まをしたりければ・おとどいかでか・さるおんことの・わたらせたまふべきとは・おぼしめされけれども・けさのぜんもんの・ふるまひ・さるものぐるはしう・おはしつれば・もし・さやうのこともや・おはすらんとて・いそぎ・おんくるまにめし・にし八でうに・おはして・もんぜんにて・くるまよりおり・もんをさしいりて・みたまへば・げにも・にふだう・はらまきを・ちやくしたまふうへ・一もんのけいしやううんかく・す十にんおもひおもひのひたたれに・いろいろのよろひきて・ちうもんのらうに・二ぎやうにちやくせられたり・そのほかしよこくのじゆりやう・ゑふしよしなんどは・えんにもゐこぼれて・にはにもひしと・なみゐたり・つはものどもはたさをを・ひきP81
そばめひきそばめ・むまのはるびをかため・かぶとのををしめて・ただいますでに・うつたたうずる・きそくなるに・おとどはまた・けさのやうに・ゑぼし・なほしに・だいもんの・さしぬきのそばとつて・さやめきいりたまふ・ことのほかにぞ・みえられける・にふだうしやうごく・このよしをみたまひて・あはまた・れいのだいふが・よをへうするやうに・ふるまふものかな・ついでをもつて・おほきに・いさめばやと・おもはれければ・なぎなた・ひざのしたにおき・ゐだけだかに・なつて・おはしけるが・さすがだいふは・こながらも・うちには・五かいをたもつて・じひをさきとし・ほかにはまた・五じやうをみだらず・れいぎをただしうしたまふ・ひとなり・あのすがたに・はらまきをちやくして・むかはんこと・さすが・おもはゆう・はづかしくもや・おもはれけん・しやうじを・すこしひきたて・そけんの・ころもをとつて・はらまきのうへに・あわてぎに・きたまひけるが・むないたのかなもののはづれて・すこしみえける・を・かくさんと・ころものむねをとつて・しきりにひきちがへひきちがへぞ・したまひける・おとどは・おんおとと・うたいしやうむねもりの・ざじやうに・ちやくせられけり・にふだうしやうごくも・のたまひいださせたまふむねもなし・おとどもまた・まうしいださせたまふかたも・なかりけるに・ややあつて・にふだうしやうごく・のたまひけるは・そもそもかの・しんだいなごんなりちかのきやうが・むほんはことの・かずならず・一かうこれは・おほかた・ほうわうの・ごけつこうにて・さふらひけるぞや・それにふだうが・くわたいは・がいぶんに・くわんとを・すすむばかりなり・それ・ゆみやとるならひ・せんれいなきにあらず・たむらまろは・ぎやうぶきやう・さかのうへの・かつたまろが・こなりしかども・わづかに・とういをたひらげし・けんしやうに・だいなごんにて・さこんのたいしやうを・けんじき・せいだいじやうこにも・わづかに・とういへんどをかせし・くんこうかくのごとし・いはんやにふだう・わうゐをうばはれ・たまはんとせP82
し・二ケどの・くんしやう・すてがたし・しかのみならず・こうしんちやくちやくのみとして・てうていどどの・はぢをきよめき・それになりちかといふ・むようのいたづらもの・さいくわうといふ・げせんのふたうじんが・まうすことに・きみのつかせおはしまして・たうけつゐたうの・ごけつこうこそ・しかるべからね・なほも・ざんそうするものあらば・かさねて・ゐんぜんくだされつと・おぼゆるなり・てうてきと・なりなんのちは・いかにくゆとも・えきあるまじ・さればしばらく・よをしづめむほど・ほうわうを・とばの・きたどのへ・うつしまゐらするか・しからずはまた・ごかうを・これへなりとも・なしまゐらせばやと・おもふは・いかがあるべきと・のたまへば・おとど・このこと・ききもあへたまはず・まづさめざめとぞ・なかれける・にふだうさてはいかにや・いかにと・あきれたまへば・ややあつて・おとどなみだをおさへて・まうされけるは・このおほせうけたまはりさふらふに・ごうんははや・すゑになりぬと・おぼえて・まづ・しげもりが・ふかくのなみだの・さきだちさふらふなり・ひとはかならず・うんめいつきむとては・かかるあくぎやうを・おもひたつことにてさふらふなり・さすがわがてうは・ぞくさんへんちの・さかひとはまをしながら・てんせうだいじんの・ごしそん・くにのあるじとして・あまつこやねの・みことの・ごべうえい・てうのまつりごとを・つかさどりたまひしより・このかた・だいじやうだいじんのくわんに・いたりたまふほどのひとの・かつちうをよろひ・ましますこと・これれいぎを・そむくにあらずや・なかんづくしゆつけのおんみなり・それ三ぜのしよぶつ・げだつどうさうの・ほうえをぬぎすてて・たちまちにかつちうをよろひきうせんをたいしましますこと・うちには・はかいむざんの・つみをまねかせ・たまふのみならず・ほかにはまた・じんぎれいちしんの・ほふにも・すでに・そむきぬらんとこそ・みえてさふらへ・かたがたおそれあるまをしごとにてはさふらへども・しばらく・おんこころをしづめて・しげもりが・まをしじやうを・つぶさにきこしめさるべうもや・さふらふらん・かつうは・さいごの・まうしじやうP83
なり・こころのうちに・ししゆを・のこすべからず・まづよに四おんさふらふ・しよきやうのせつさう・ふどうにして・ないげのぞんぢ・かくべちなりとは・まをせども・しんちくわんぎやうのもんにも・とかれてさふらふが・てんちのおん・こくわうのおん・ぶものおん・しゆじやうのおん・これなり・しるをもつて・じんりんとす・そのなかに・もつともおもきは・てうおんなり・ふてんのしたことごとく・わうどにあらずと・いふことなし・されば・えいせんのみづに・みみをあらひ・しゆやうざんに・わらびををつし・けんじんも・ちよくめいそむきがたき・れいぎをば・ぞんぢすとこそ・うけたまはれ・いまだせんぞにも・きかざりし・だいじやうだいじんのくわんを・きはめさせたまふのみならず・いはゆる・しげもりなんどが・むさいぐあんの・みをもつて・れんぶくわいもんの・くらゐにいたる・しかのみならず・こくぐんなかば・一かのしよりやうたり・でんをんはことごとく・一もんのしんしたり・これきたいの・てうおんにあらずや・いまばくだいの・ごおんをわすれて・みだりがはしく・きみをなみし・まゐらつさせたまはんおんこと・しんりよのほども・はかりがたし・それわがてうは・しんこくなり・かみはひれいを・うけさせたまはず・およそてうてきとなりなんものは・ちかくは百にち・とほくは・みとせを・すごさずとこそ・うけたまはりさふらへ・これはきみの・おぼしめしたつところ・だうりなかば・なきにあらずや・およそ・この一もんは・だいだいの・てうてきを・たひらげて・四かいの・げきらうをしづむること・ぶさうのちうとは・まをしながら・そのしやうにほこること・かへりて・ばうじやくぶじんともまた・まをしつべし・いへのめいをもつては・きみのめいをじせざれ・わうふのめいをもつては・ちちのめいをじせよとこそ・みえてさふらへ・おほせあはせらるる・だいなごんいげの・よたうのともがらに・しよたうのざいくわ・おこなはれぬるうへは・なにのおそれかさふらふべき・いまはしりぞいて・このしさいをちんじ・まをさせたまはば・きみのおんためには・いよいよほうこうのちうきんをいたし・たみのためには・ますます・むいくの・あいれんを・P84
ほどこさせおはしまさば・しんめいの・かごに・あづかつて・ぶつだの・みやうりよにも・そむくべからず・しんめいぶつだの・かんおうあらば・きみもなどか・おぼしめしなほさせたまはでは・さふらふべき・されば・しやうとくたいしの・十七ケでうの・ごけんぽふにも・みなひとこころ・まちまちなり・おのおのしふあり・われをぜし・かれをひす・かれをぜし・われをひす・ぜひのことわりを・たれかよく・さだむべき・あひともに・けんぐなり・はしなくして・たまきのごとし・たとひかのひと・いかるといふとも・かへりて・わがしつを・をさめよとこそ・みえてさふらへ・きみと・しんとを・ならぶるに・しんそわくかたなし・きみにつきたてまつるは・ちうしんのはふ(ほふ)・だうりと・ひがごとを・くらべんに・いかでか・だうりにつかざるべき・これはきみの・おんことわりにてさふらへば・しげもりはかなはぬまでも・ゐんちうを・しゆごしまゐらせんとこそ・ぞんじさふらへ・そのゆゑは・しげもりはじめ・じよしやくより・いまだいじんのたいしやうに・いたるまで・一として・てうおんならずと・いふことなし・そのおんの・おもきことを・おもへば・せんくわ・ばんくわの・たまにもこえ・そのふかきいろを・ろんずれば・一じふさいじふの・くれなゐにもなほ・すぎたらん・しげもりが・みにかはらむ・いのちにかはらむと・ちぎつてさふらふ・さぶらひども・せうせうさふらふらん・かれらを・めしぐして・ゐんの・ごしよにまゐり・もんもんをかためて・ふせぎまゐらせんは・ゆゆしき・おんだいじにてこそ・さふらはんずれ・かなしきかな・きみのおんために・ほうこうのちうきんを・いたさんと・すれば・めいろ八まんの・いただきよりなほたかき・ちちのおん・たちまちにわすれなんとす・いたましきかな・ふかうのつみを・のがれんと・すれば・きみのおんためには・ふちうの・ぎやくしんともなりぬべし・しんたいこれきはまれり・ぜひいかにも・わきまへがたし・せんずるところ・きみをも・しゆごし・まゐらせさふらふまじ・またゐんざんの・おんともをも・つかまつるP85
べからず・せんはただ・まをしうくるところ・しげもりが・くびをめさるべし・らうしのことばこそ・おもひいでてさふらへ・こうみやうかなひとげて・みをしりぞけず・くらゐをさらざれば・すなはち・がいにあふともまをす・かのせうかは・だいこうかたへに・こえたりしによつて・くわん・だいしやうごくにあがり・けんをたいし・くつをはきながら・でんじやうへのぼることを・ゆるされたりしかども・ひとたび・えいりよにそむくこと・ありしかば・かうそこれを・いましめて・おもうつみせられき・かやうのことを・おもふにも・ふつきといひ・えいぐわといひ・てうおんとまをし・ちようしよくといひ・かたがたきはめさせ・たまひぬれば・いまはごうんの・つきさせたまはんことも・かたかるべしとも・おぼえず・ふつきのいへには・ろくゐちようでふせり・なほふたたび・みなるきは・そのねかならず・いたむともまをす・いつまでか・ながらへて・かやうに・みだれむ・よをも・みさふらふべき・ただまつだいに・しやうをうけて・かかるうきめに・あひさふらふ・しげもりが・くわはうのほどこそ・つたなうさふらへ・さぶらひ一にんに・おほせつけ・おつぼのうちに・めしいだし・しげもりが・くびをめされんは・いとやすき・おんことにてこそ・さふらはんずらめ・これやおのおの・ききたまへとて・なほしのそで・しぼるばかりに・みえられければ・にふだうしやうごくを・はじめたてまつつて・一もんのけいしやううんかく・みなよろひのそでをぞ・ぬらされける・にふだうしやうごく・たのみきつたる・だいふは・かやうに・のたまふ・よろづ・ちからも・なげにて・いやいやそれまでの・ことは・おもひもよらず・あくたうどもの・まをすことに・きみのつかせおはしまして・もしおんひがごとなんどもや・いでこん・ずらんなど・おもふばかりにてこそ・あれと・のたまへば・おとど・たとひ・いかなる・おんひがこと・わたらせたまひさふらふとも・きみをば・なにとかし・まゐらつさせたまふべき(イべきとて)・おんまへを・ついたつて・ちうもんにいで・さぶらひどもにむかつて・のたまP86
ひけるは・いまおんまへにて・まをしつることどもをば・なんぢらはうけたまはらずや・けさよりこれにありて・かやうのことどもをもまをし・なだむべかりつれども・これていに・ひたさわぎ・なりつれば・かへりたりつるなり・またゐんざんのおんともに・おいては・しげもりが・くびをめされんをみて・まをすべし・さらばおのおの・まゐれとて・こまつどのへぞ・かへられける・されども・たうけぢうだい・からかはといふ・よろひ・こがらすといふたちをば・しのびつつ・おんくるまに・いれられけるとぞ・うけたまはる・よういのほどこそ・おそろしけれ・そののち・こまつどのには・おとど・かへりたまひてのち・しゆめのはんぐわんもりくにをもつて・もよほされけるは・しげもりこそ・べつして・てんがのだいじ・ききいだしたれ・しげもりを・しげもりと・おもひあはれんずるひとびとは・みな・もののぐして・はせまゐるべしと・ふれられ・たりければ・ひごろは・おぼろけにても・さわぎ・たまはぬひとの・いまかやうに・おほせなるは・べつのしさいぞ・あるらん・いざや・まゐらんとて・あるひは・よどはつかし・うぢをかのや・だいご・うぐるす・ひの・くわんじゆじ・おはら・しづはら・せれうのさと・むめづ・かつらに・あふれゐたりける・つはものども・あるひはよろひきて・かぶと・きるもあり・きぬもあり・やおひて・ゆみとるもあり・とらぬもあり・われさきに・さきにと・こまつどのへぞ・はせたりける・さるほどに・にし八でうに・す千きありつる・つはものどもも・こまつどのに・だいじいできたりと・ききてんげれば・にふだうしやうごくにこのよしかくとも・まをさず・みな・さやめき・つれて・こまつどのへぞ・まゐりける
烽火の沙汰(あひ) 207 P87
さるほどに・にし八でうには・ちくごのかみさだよしが・ほかは・きうせんに・たづさはりぬべき・ひと・一にんもなし・ただおいたるあま・あをにようばう・ふでとりなんどぞ・さふらひける・にふだう・さだよしとめす・ちくごのかみさだよし・おんまへにまゐりかしこまる・にふだう・ややさだよし・なにとてだいふは・これらをば・かやうに・よびとるやらん・いかさまにも・けさこれにて・いひつるやうに・にふだうが・もとへ・うつてなんどや・むけんずらんなど・のたまへば・さだよしまをしけるは・いかでか・さるおんことの・わたらせたまひさふらふべき・けさおんまへにて・まをさせたまひつる・おんことどもをも・いまはさだめて・ごこうくわいぞ・さふらふらんと・まをしたりければ・にふだういやいや・だいふと・なかたがうては・ゆゆしき・だいじぞとて・もののぐぬぎすて・そけんのころもに・けさうちかけ・ながずずつまぐつて・いとこころも・おこらぬ・ねんじゆしてこそ・おはしけれ・ひとへにものぐるひの・くるひさめたに・ことならず・そののち・こまつどのには・しゆめのはんぐわんもりくにうけたまはつて・ちやくたうつけけり・まゐりこもるつはもの・一まんよにんとちうしまをす・ちやくたうひけんののち・おとど・ちうもんにいで・さぶらひどもにむかつて・のたまひけるは・ひごろのけいやくたがへず・みな・しんべうにまゐりたり・ただしいこくにさるためしあり・むかししうのいうわうと・まをししひと・はうじとて・さいあいの・きさきを・もちたまへり・てんかいちの・びじん・されども・このきさき・いささかわらふことを・したまはず・かのくにのならひにて・てんかに・ことのいできたるときは・ほうくわとて・みやこよりはじめて・ひをあげ・たいこをうつて・くにぐにのつはものを・めさるるならひあり・あるとき・てんかにこといできにしかばほうくわを・あげたりければ・きさきこれをごらんじて・ふしぎや・ひもされば・あれほどに・たかうもあがる・ことかやとて・はじめてわらひたまひけり・ひとたびゑめば・もものこび・ありとかや・いうわうふしぎや・このきさきは・ほうくわを・あいしたまP88
へりとて・つねはそのこととなく・ひをあげ・たいこをうつて・きさきをなぐさめたてまつる・しよこうきたるに・あたなし・あたなければ・ほどなくさる・かやうにすること・どどにおよぶ・あるとき・りんごくより・きようぞくおこつて・いうわうのみやこを・かたぶけんとせしとき・ひをあげ・たいこをうちけれども・れいのきさきの・ひにならつて・まゐりちかづく・ものもなし・すなはち・みやこかたぶいて・いうわううたれたまひけり・そののち・このきさきは・きうびの・しやつことなつて・かきけすやうにぞ・うせられける・よにはかかる・ためしの・あるぞとよ・しげもりも・べつしててんかの・だいじききいだしたり・つれども・またひがごとに・ききなしたり・じこんいごも・これよりめさば・かくのごとく・まゐるべし・さらば・おのおのかへれとて・さぶらひどもをぞ・かへされける・およそ・このおとど・まことに・ちちといくさを・すべきには・あらず・またてんかのだいじをも・ききいだされざりけれども・かやうにして・わがみに・せいのつくや・つかぬをもみ・またはにふだうしやうごくの・あくしんをも・やはらげんのための・おとどの・はかりごととぞ・うけたまはる・きみきみたらずと・いふとも・しんもつて・しんたらずんば・あるべからず・ちちちちたらずといふとも・こもつて・こたらずんば・あるべからず・いはんやこのおとどは・きみのおんためには・ちうあつて・ちちのためには・かうあり・これぶんせんわうのことばに・たがはず・ほうわうも・ないないきこしめされて・いまにはじめぬことなれども・だいふがこころのうちこそ・はづかしけれ・あたをばはや・おんをもつて・はうじけりとぞ・おほせける・くににいさむる・しんあれば・そのくにかならず・やすし・いへにいさむる・こあれば・そのいへかならず・ただしともいへり・じやうこにも・まつだいにも・ありがたかりし・おとどなりP89
大納言の流され 208
おなじき六ぐわつ二かのひ・しんだいなごんなりちかのきやうをば・にし八でうの・くぎやうのざに・いだしたてまつつて・ぎよもつまゐらせたりけれども・むねふさがつて・おんてをだにも・かけられず・さてしもあるべき・ならねば・つはものども・おんくるまよせて・いまはとうとう・めさるべうさふらふと・まをしたりければ・だいなごん・こころならずのりたまふ・くるまの・ぜんごさいうを・みたまへば・もののぐしたる・つはものどもが・ところもなく・みちみちて・ひごろみなれたる・ひと・一にんもなし・ただみにそふものとては・つきせぬ・なみだばかりなり・しゆじやかを・みなみへゆけば・おほうちやまも・いまはよそにぞ・なりにける・とばどのを・すぎられけるに・ひごろ・このごしよへ・ごかうなりしには・一どもおんともには・はづれ・ざりつるものをと・わがさんしやう・すはまどのをも・よそに・してこそ・とほられけれ・とばのみなみのもんにて・つはものども・ふねをおそしと・いそがすれば・だいなごん・こはいづくを・さして・ゆくやらん・とても・うしなはるべくは・みやこちかき・このへんにても・あらばやと・のたまひけるぞ・いとほしき・だいなごん・ちかうさふらふ・ぶしは・たそと・とひたまへば・なんばの二らうつねとほと・まをす・だいなごんさて・このへんに・わがかたざまの・ものやある・たづねて・えさせよと・のたまひければ・うけたまはつて・たづねけれども・なかりければ・さふらはずとまをす・だいなごん・むざんやな・われよに・ありしときは・きのふまでも・したがひつきたりし・じやうげ・一二千にんもこそ・ありつらんに・いまはよそにてだにも・とぶらふものの・なきことよと・のたまひけるぞ・いとほしき・ひごろ・くまのまうで・てんわうじまうで・なP90
んどの・ありしには・ふたつがはら・みつむねに・つくつたるふね・またつぎのふね・およそ二三十さう・こぎつづけ・させてこそおはせしに・いまはいつしか・けしかる・かきすゑ・やかたぶねの・ともへあれたるに・おほまく・ひきまはさせ・みもなれぬ・つはものどもと・のりぐして・けふをかぎりに・みやこのうちを・いでられける・こころのうち・おしはかられて・あはれなり・よどのいりえを・こぎすぎて・こつどのうとの・はしらもと・きんや・かたのの・なぎさのをか・いりえいりえを・こぎすぎて・そのひは・つのくに・だいもつのうらにぞ・つきたまふ・またかおうぐわんねんのふゆのころ・このきやう・いまだそのころ・ちうなごんにて・みののくにを・ちぎやうせられたりけるに・もくだい・さゑもんのじようまさとも・さんもんのしよりやう・ひらののしやうの・じんにんと・ことをしいだし・たりしによつて・さんもんおほきに・いきどほり・こくしなりちかるざいにしよせられ・もくだいまさとも・きんごく・せらるべきよし・そうもんまをしたりければ・そのときも・このきやうの・さんもんの・そしようによつて・びつちうへ・ながさるべきにて・にしのきやうまで・いでられたりしをも・きみいかがは・おぼしめされけん・なか五かあつて・やがて・めしかへされさせ・たまひけり・これによつて・さんもんおほきに・いきどほり・なりちかきようを・さまざまに・じゆそしたてまつりけるとぞ・きこえし・されども・じようあんにねんしやうぐわつ十二にちに・じゆ二ゐしたまふ・おなじき三ねん三ぐわつ十三にちに・うひやうゑのかみを・けんじて・けびゐしのべつたうにぞ・あがられける・そのときは・あぜちのだいなごんすけかた・くわざんのゐんのちうなごんかねまさのきやう・こえられさせたまひけり・あぜちのだいなごんは・いへのひとおとななり・かねまさのきやうは・せいぐわのひと・けちやくにて・こえられたまふぞ・ゐこんなる・これは・三でうどの・ざうしんの・しやうとぞ・きこえし・またあんげんぐわんねん七ぐわつ五かのひ・じやう二ゐしたまふ・そのときは・なかのみかどのちうなごんむねいへのきやう・こえられさせ・たまひけP91
り・おなじき二ねん十ぐわつ廿二にちに・けびゐしのべつたうより・ごんだいなごんにぞ・あがられける・かくのみ・さかえたまひしかば・ひとあざけりて・あはれさんもんのだいしゆには・のろはるべかりけるものかなとぞ・まをしける・されども・しんばつ・みやうばつは・ときもあり・おそきもありし・ならひにて・つひには・かかるうきめに・あはれけるこそ・あさましけれ・おなじき三かのひ・だいもつのうらには・みやこよりおんつかひありとて・ひしめきけり・だいなごん・ただいまこれにて・うしなへとの・つかひやらんと・ききたまへば・びぜんの・こじまへ・ながしたてまつれとの・つかひなり・またこまつどのより・おんふみあり・ひらきてみたまへば・みやこちかき・かたやまざとにも・おきまゐらせんとて・やうやうに・まをしさふらひしかども・かなはぬことこそ・よにある・かひもさふらはね・さりながら・おんいのちばかりをば・よきやうに・まをしてこそさふらへ・おんこころやすく・おぼしめされさふらふべし・またなんばがかたへも・あひかまへて・おんこころにたがひたてまつらで・よくよくおんみやづかひ・つかまつれと・あそばされたる・だいなごんさても・かたじけなう・おもはれ・まゐらせつる・きみにも・すてられたてまつり・またつかのまも・はなれがたき・きたのかた・きんたちだちをも・ふりすてて・こはいづくを・さして・ゆくやらん・ひととせも・びつちうへ・ながさるべきにて・にしのきやうまで・いでたりしをも・やがて・めしこそ・かへされたれ・こんどは・いのちながらへて・こひしきものどもを・いま一ど・みみえむことも・かたかるべしとて・あけければ・ふねにのつてぞ・いでられける・みちすがらも・なみだにくれて・ゆくさきさらに・みえわかず・あとのしらなみ・へだつれば・みやこはしだいに・とほざかり・ゑんごくはまた・ちかくなる・さるほどに・だいなごん・びぜんのこじまに・つきたまふ・たひのうらと・いふところの・あさましげなる・しばのいほりに・おきたてまつる・これやこの・しづがP92すむなる・はにふのこやも・これなるらん・しまのならひ・うしろはやま・まへは・いそなれば・きしうつなみのおと・まつふくかぜ・あはれいづれも・つきざりけり
阿古屋の松 209
おなじき六ぐわつ五かのひ・むほんのともがらども・くにぐにへ・ながしつかはさる・まづ・あふみのちうじやうにふだうれんじやう・さどのくに・やましろのかみもとかぬ・おきのくに・しきぶのたいふまさつな・びんごのくに・そうはんぐわんのぶふさ・いよのくに・しんへいはんぐわんすけゆきは・みまさかのくにとぞ・きこえし・にふだうしやうごく・かやうに・さんざんに・しちらし・わがみは・いそぎ・ふくはらへこそ・くだられけれ・おなじき廿かのひ・つのさゑもんもりずみを・ししやにて・おととかどわきどののもとへ・いまは・たんばのせうしやうをも・とうとう・くだされさふらへかしと・のたまひつかはされ・たりければ・さいしやう・さらば・ありしとき・ともかうも・なしたまはで・ふたたびものを・おもはすることよと・のたまへば・にようばうたち・あはれ・さいしやうの・いま一ど・よきやうに・まをさせたまへかし・なんど・のたまひあはれければ・さいしやういまは・のりもりが・よをいとふより・ほかのことをば・なにごとをか・まをすべき・さりながら・いづくのうらわにも・おはせよ・のりもりが・いのちのあらんかぎりは・はぐくむべしとぞ・のたまひける・またせうしやうの・わかぎみ三さいに・なりたまふおはしけり・ひごろは・わかきひとにて・いとこまやかなる・ことも・おはせざりしかども・いまはのときにも・なりしかば・さすがこころにかかつてや・おもはれけん・あはれ・をさなきものを・いま一ど・みばやと・のたまへば・めのといだいてまゐりたり・せうしやう・ひざにおき・わかぎみの・かみP93
かきなでて・のたまひけるは・むざんや・なんぢ七さいにもならば・げんぷくせさせ・ゐんへまゐらせんとこそ・おもひしに・いまは・かひなし・もしまた・いのちながらへて・おとなしく・なりたらば・なりつねが・ごせとぶらうて・えさせよと・おとなしきひとに・むかつて・のたまふやうに・かきくどきて・のたまへば・このわかぎみ・うちうなづき・たまひけり・さてこそ・にようばうたちも・いとどそでをぞ・ぬらされけれ・おつかひ・こんやは・とばまでと・まをしければ・せうしやうとても・かなはぬ・ものゆゑに・こんやはこれにありて・あかつきとく・いでんと・のたまへども・おつかひゆるしたてまつらず・おなじき廿三にちに・つのさゑもん・せうしやうどのを・ぐそくしたてまつつて・ふくはらにくだり・にふだうしやうごくに・このよしまをしたりければ・にふだう・せうしやうをば・びつちうのくにのぢうにん・せのをのたらうかねやすに・おほせて・びつちうのせのをへこそ・くだされけれ・かねやす・かどわきどのの・かへりきこし・めされんずる・ところをも・はばかりにおもひければ・せうしやうどのを・やうやうに・もてなしたてまつる・されども・せうしやうは・いささか・くつろぐここちも・したまはず・ただあけくれ・ほとけのみなを・となへても・ちちだいなごんどのの・ことをのみぞ・いのられける・さるほどに・だいなごんは・びぜんのこじまに・おはしけるが・ここはなほ・ふねつきなれば・びんぎ・あしかりなんとて・それより・(イこなたの)ちにわたしたてまつる・びぜん・びつちう・りやうごくのさかひ・なんばに・かせのがう・きびのなかやまのふもと・ありきのべつしよと・いふところに・おきたてまつる・それより・せうしやうのおはしける・びつちうのせのをへは・わづかに・五十よちやうの・あひだなり・あるときせうしやう・かねやすをめして・これより・ちちだいなごんどのの・おはしける・ありきのべつしよとかやへは・いかほどの・みちぞと・とひたまへば・かねやす・ちかき・よしを・まうしあげては・あしかりなんとや・おもひけむ・十二三にちに・P94
ゆくところにてさふらふと・まをす・せうしやうこはいかに・につぽんは・むかし・三十三ケこくなりしを・てんぢてんわうのおんとき・六十よしうには・わけられたり・さればあづまに・きこゆる・あうしうも・むかしは・六十六ぐんなりしを・もんむてんわうのぎよう・たいはうけいうんに・十二ぐん・さきわかつて・ではのくにとは・なづけられたり・なかごろ・さねかたのちうしやうの・あづまへながされたりしに・むつに・あこやのまつといふ・めいしよあり・ちうしやうかれを・みんとて・くにのうちを・まはつて・たづねられけれども・なかりければ・ちからおよばず・かへられける・みちにて・らうおう・一にんゆきあうたり・ちうしやう・らうおうの・そでをひかへて・ややごへん・みちのくに・あこやのまつといふ・めいしよや・しりたまひたると・とひたまへば・たうごくのうちには・さふらはずと・まをす・ちうしやう・ふしぎや・よのすゑになれば・めいしよをも・はや・よみうしなへるに・こそとて・かへられければ・らうおう・ちうしやうのそでをひかへて・ややきみはみちのくのあこやのまつにこがくれていづべきつきも(イの)いでもやらぬかと・よめるうたのこころをもつて・たうごくのうちとは・しろしめされてさふらふか・さればそれは・いまだかのくにの・六拾六ぐんなりしとき・よめるうたのこころなり・もし・ではのくにに・もやさふらふらんと・いひければ・まことにもとて・ではのくにに・こえてこそ・あこやのまつをも・みたりしか・すでに・十二三にちは・ほとんどみやこより・ちんぜいげかうほどござんなれ・ちんぜいより・はらかの・つかひののぼるこそ・かちぢ・十四五にちとは・きけびぜん・びつちう・びんごも・むかしは・一こくなりしを・三ケこくには・わけられたり・なかんづく・せんやうだうに・それほどの・たいこくありとは・きかぬものを・びぜん・びつちうりやうごくのさかひ・いかにとほしといふとも・りやう三にちには・よもすぎじ・ちかきを・P95
とほきに・まをしなすは・しらせじ・とにこそとて・のちには・こひしけれども・とひたまはず・なかにも・へいはんぐわんやすより・ほつしようじのしゆぎやうしゆんくわんそうづをば・さつまがた・きかいがしまへぞ・ながされける・たんばのせうしやうをも・あひそへてこそ・くだされけれ・なかにも・やすよりは・すはう・むろつみと・いふところにて・しゆつけし・ほうみやう・しやうぜうとぞ・なのられける・しゆつけはもとよりの・のぞみなりければ・かうぞ・おもひつづけ・たるつひにかくそむきはてけるよのなかをとくすてざりしことぞくやしききかいがしまとまをすは・みやこをいでて・ほどとほく・うみをわたりて・ゆくしまなり・ふねなんども・たやすくかよふことなければ・しまには・ひとまれなり・をとこは・ゑぼしきず・をんなは・かみもさげず・みには・しきりに・けおひつつ・いろくろくして・うしのごとし・いしやうなければ・ひとにもにず・しよくするものも・なければ・ただ・せつしやうをもつて・さきとす・しづがやまだを・うたざれば・べいこくの・たぐひもなく・そののくはをも・とらざれば・けんばくのたぐひ・さらになし・さつまがたとは・そうみやうなり・むかしは・おにが・すみければ・きかいが・しまとは・なづけられけり・またいわうといふもの・おほかりければ・いわうがしまともまをす・しまのうちには・たかきやまあり・やまのいただきには・とこしなへに・ひもえつつ・つねは・いかづらのなりあがり・なりさがれば・ふもとのさとに・あめしげし・一にちへんし・つゆのいのち・ながらふべしとも・みえざりけり大納言の死去 210 P96
さるほどに・だいなごんは・びぜんのくに・ありきのべつしよに・おはしけるが・いささかくつろぐこともやと・おもはれけるに・さはなくて・ちやくし・たんばのせうしやうも・きかいが・しまへなんど・きこえしかば・よろづ・こころぼそくや・おもはれけん・こまつどのへしゆつけのいとままをし・おんとし四十三にて・うきよをよそに・すみぞめのそでと・なられけるこそ・あはれなれ・さるほどに・だいなごんのきたのかたは・みやこきたやまのほとり・うんりんゐんに・おはしけるが・さらでだに・すみもならはぬ・かたやまざとは・さびしきに・いとどしのばれければ・おのづから・すぎゆく・つきひを・くらしかね・あかしわづらふ・おんさまなり・さるほどに・だいなごんの・としごろ・めしつかはれける・しよたいふ・さぶらひども・いくらも・ありけれども・あるひは・よにおそれ・あるひは・へいけに・はばかつて・まゐりちかづく・ものもなし・なかにも・げんざゑもんのじようのぶとしばかりぞ・つねは・まゐりける・あるとき・きたのかた・のぶとしを・めして・ややのぶとしや・まことや・とのは・びぜんのありきの・べつしよとかやに・おはすなる・せめて・ふみをたてまつつて・へんじをなりとも・みて・なぐさまばやと・おもふは・いかがあるべきと・のたまひければ・のぶとし・まをしけるは・これは・えうせうより・きみの・ごおんあくまで・まかりかうぶり・さふらひしかば・つねは・いさめられまゐらせし・おんことの・きもにめいじ・そのみやこまでも・めされたりし・おんこゑの・はるかに・みみのそこに・とどまつて・かたとき・わすれまゐらすることも・さふらはず・みやこを・おんいでのときも・もつともおんともつかまつるべう・ぞんじ・さふらひつれども・へいけゆるされ・さふらはねば・ちから・およびさふらはず・こんどは・たとひ・いかなる・うきめにも・あひさふらへ・おんゆくへを・したひまゐらせて・たづねまゐらばやとこそ・ぞんじさふらへ・おんふみたまはらむと・まをしたりければ・きたのかた・なのめならず・よろこびたまひて・やがて・おんふみあそばP97
してぞ・たうだりける・のぶとし・おんふみたまはつて・よをひについで・くだるほどに・ほどなう・びぜんのくに・ありきのべつしよに・くだりつき・しゆごの・ぶしに・むかつて・まをしけるは・これは・だいなごんどのの・としごろ・めしつかはれし・さぶらひに・げんざゑもんのじようのぶとしと・まをすものにてさふらふ・おんゆくへを・したひまゐらせて・たづねまゐりたるよしを・まをしたりければ・なんばのじらうのぶとしが・はるばると・これまで・たづねくだりたる・こころざしのほどを・かんじて・だいなごんどのに・このよし・まをしたりければ・をりふしだいなごんは・みやこのおんこと・おぼしめしいだし・なみだに・むせび・うつぶして・おはしけるが・のぶとしが・これへこれへと・のたまへば・のぶとし・おんそばちかう・まゐつて・みたてまつるに・おはするところのあさましげなるも・さることにて・はやおんさまかへておはしけるを・みたてまつるにつけても・つきせぬものは・なみだなり・だいなごんさて・みやこのことは・いかにと・のたまへば・みやこのおんことは・なかなか・おぼしめし・やらせたまふべし・きたのおんかたよりの・おんふみとて・とりいだしてたてまつる・だいなごん・ひらいて・みたまへば・きたのかたの・みづぐきの・あとはなみだに・かきくれて・とかく・うらみくどきて・かかれたるより・をさなきひとびとの・いまだいとけなき・ふでのすさび・なるに・こひしこひしと・かかれたるを・みたまひてぞ・いとど・せんかたなくは・おもはれける・そののち・五六にちありて・のぶとしまをしけるは・いましばらくも・さふらひて・おんゆくへをも・みまゐらせたくは・さふらへども・きたのかたよりは・あひかまへて・ごへんじ・たまはつて・いそぎ・まゐりのぼるべきよしを・おほせられさふらひしに・あともなく・ゆくへもなく・さふらはんこと・おほきに・おそれいつて・おぼえさふらへば・こんどは・まづ・まかりのぼり・やがて・まゐるべきよしを・まをしたりければ・だいなごん・こんど・なんぢが・くだらんまで・いのちいきて・みみえんこともかたかるべし・あひかまへて・なりP98
ちかが・ごせとぶらうて・えさせよと・のたまひぬべき・ことはみな・かねてより・はやつきけれども・せめての・したはしさにや・はるばると・いでたりける・のぶとしを・いましばしや・しばしとて・たびたびめしぞ・かへされける・のぶとし・ごへんじたまはつて・またよを・ひについで・のぼるほどに・ほどなう・みやこにのぼりつき・うんりんゐんに・まゐり・だいなごんどのの・ごへんじを・きたのかたへたてまつる・きたのかた・めづらしき・ふみをも・みるものかなとて・わかぎみ・ひめぎみ・三にんひとつところに・さしつどひ・このふみを・ひらいて・みたまひて・なみだに・むせび・たまひけり・ふみのおくに・びんのかみを・一むら・まき・ぐせられたり・けるを・みたまひてぞ・はやさまかへて・おはしけるをも・しられける・あんげん三ねん八ぐわつ十六にちに・かいげんあつて・ぢしようぐわんねんとぞ・まをしける・おなじき廿二日に・だいなごん・ありきのべつしよにて・うせたまふ・そもさいごのありさま・さまざまに・きこゆ・はじめは・さけに・ぶすを・いれて・すすめたてまつりけれども・そのしるしも・なかりければ・のちには・二ぢやうばかりありける・きしのしたを・ほりにほり・ひしをうゑ・うへより・つきおとしたてまつつて・うしなひたてまつりけるとぞ・きこえし・さるほどに・だいなごんの・きたのかたは・うんりんゐんに・おはしけるが・このよしを・つたへ・ききたまひて・やがて・ぼだいゐんより・ひじりをしやうじ・おんとし三十九にて・さまをかへ・ひたすらだいなごんの・ごしやうぜんしよをぞ・いのられける・このきたのかたと・まをすは・やましろのかみあつかたのきやうの・おんむすめなり・わかぎみ・ひめぎみ・きたのかた・のべにいでては・はなをたをり・さはべにおりては・みづをむすび・ひたすらだいなごんの・ごしやう・ぼだいをぞ・いのられける・さるほどに・ときさり・ときうつり・よのかはりゆく・ありさま・ただてんにんの・五すゐとぞみえし・おなじき十ぐわつ廿五にちに・せいせいとうばうにいづ・または・せきP99
きあり・しいうきとも・まをす・てんもんはかせ・これをうらなひまをす・うちには・だいびやう(乱字脱か)あるのみならず・ほかにはまた・おほきなる・うれへとぞ・まをしける・さるほどに・としくれて・ぢしようも・二ねんに・なりにけり
平家物語(城方本・八坂系)
巻第三 P100
山門滅亡 301
ぢしよう二ねん・しやうぐわつついたちのひ・しゆじやう・てうきんのおんために・ほうぢうじどのへ・ぎやうかうなつて・なにごとも・れいにかはりたる
ことは・なけれども・きよねんのなつ・しんだいなごんなりちかのきやう・いげ・ごきんじゆのひとびと・そのほかほくめんの・ともがらどもに・いたるまで・
おほくながし・うしなはれし・ことどもを・ほうわうやすからず・おぼしめされければ・よの・おんまつりごとをも・ものうく・おぼしめされけ
り・にふだうしやうごくも・ゆきつなが・つげしらせしのちは・きみをもうしろめたいことに・おもひまゐらせ・うへにはことなき・や
うなれども・したには・こころえうじんつねにして・にがわらひて・のみぞ・おはしける・そのころ・ほうわうは・みゐでら・
の・こうけんそうじやうを・ごしはんとして・しんごんの・ひほふ・こんねむ・だいにちきやう・こんがうちやうぎやう・そしつぢきやう・三ぶの
ひきやうを・ごでんじゆありて・おなじき二ぐわつ五かのひ・みゐでらにて・ごくわんぢやう・あるべきよし・きこえしかば・さんもんおほきに・
いきどほり・むかしより・だいだいの・みかどの・じゆかいくわんぢやうは・わがやまにて・とげさせたまふこと・これせんきなり・なかにも・さん
わうの・けだうは・じゆかい・くわんぢやうのためなり・しかるを・こんど・みゐでらにて・とげさせたまはば・をんじやうじを・やきはらふ
べしとぞ・せんぎしける・ほうわうこのよしを・つたへきこしめされて・やうやうに・こしらへ・なだめ・おほせられけれども・P101
れいの・さんもんの・だいしゆ・ゐんぜんにも・かかはらず・いよいよほうきすと・きこえしかば・ほうわうこれおほきに・むやく
なりとて・いそぎ・ごけぎやうを・ごけちぐわんあつて・みゐでらにての・ごくわんぢやうをば・おぼしめし・とどまらせ・たまひけり・
されども・ごほんいなりければ・こうけんを・めしぐして・てんわうじへ・ごかうなり・五ちくわうゐんを・つくらせたまひ・
かめゐの・みづをもつて・五ひやうの・ちすゐと・さだめ・ぶつぽふ・さいしよの・れいちにてぞ・でんほふ・くわんぢやうをば・とげさ
せたまひける・さるほどに・ほうわうは・さんもんの・さうどうことを・やめさせ・たまはんがために・みゐでらにての・ごくわん
ぢやうをば・おぼしめしとどまらせ・たまひたりけれども・そのころさんもんには・だうしゆと・がくしやうのあひだに・ふくわいのこと・いできて・
かつせん・どどに・およぶまいどに・がくりよ・うちおとさる・さんもんの・めつばう・これひとへにてうかの・おんだいじとぞ・みえし・
だうしゆと・まをすは・がくしやうの・めしつかひける・わらんべの・ほうしになりたるなり・もしは・ちうげんほうしばらや・こん
がうじゆゐんの・ざす・かくそん・ごんそうじやう・ちさんのとき・三たふに・けちばんして・げしゆと・がうして・がくしやうをも・こととも
せず・どどのいくさに・かちにけり・だうしゆ・ししゆの・めいをそむきて・かつせんのくはだてあり・だいじやうのにふだうどのも・ゐんぜんを・
うけたまはつて・きのくにのぢうにん・ゆあさの七らうひやうゑむねみつに・おほせて・きないのつはもの・二千よにん・だいしゆにさしそへて・だうしゆ
を・せめさせらる・だうしゆひごろは・とうやうばうに・さふらひけるが・あふみのくに・三かのしやうに・げかうして・こくちうのあくたう
らを・かたらひ・すたの・せいをいんぞつして・こんどは・さうおいさかのじやうに・たてこもる・だいしゆ・くわんぐんに・五
千よにんにて・おしよせたり・だいしゆは・くわんぐんを・さきだてんとす・くわんぐんはまた・だいしゆを・さきだてんとせしほど
に・おもひおもひ・こころごころになつて・こんどのいくさも・はかばかしうは・せざりけり・だうしゆが・かたらふところの・P102
あくたうとまをすは・しよこく七だうの・せつたう・がうたう・さんぞく・かいぞくらなれば・よくしん・しじやうにして・ししやうふちの・やつばら
なりければ・いのちもをしまず・せめたたかふ・こんどもみな・がくしやういくさに・まけにけり・よすゑになれば・あくにんは・い
よいよつよく・ぜんにんはまた・よわくなるこそかなしけれ・そののち・さんもんいよいよ・あれはてて・十二しん・ところ
ところのほかは・しぢうの・そうりよまれなり・たにだにの・かうえん・まめつして・だうだうの・ぎやうほふも・たいてんす・しゆがくの・まどを
とぢ・ざぜんのゆかも・むなしくせり・四けう・五じの・はるのはなも・にほはず・三たい・そくぜの・あきのつきも・くも
れり・三百よさいの・ほつとうかかぐる・ひともなく・六じふだんのかうのけぶりも・たへやしぬらん・だいしやたかくそびえて
は・三ぢうのかまへを・せいかんの・うちにさしはさみ・とうりやうはるかに・ひいでては・四めんのたるきを・はくぶのあひだに・
かけたりき・されども・いまは・ぐぶつは・みねのあらしに・まかせ・きんようを・こうれきに・うるほし・よるのつき・ともし
びをかかげ・あかつきのつゆ・たまをたれ・れんざのよそほひを・そふとかや・それまつだいの・ぞくに・およんで・三ごくのぶつ
ぽふも・しだいに・すゐびしけるにや・とほくてんぢくの・ぶつせきを・とぶらふに・ぎをんしやうじや・ちくりんしやうじや・ぎつこどくをん・
わしの・たかねも・このごろは・こらうのすみかと・あれはてて・いしずゑのみや・のこるらん・はくろちには・みづたえ
て・くさのみ・ふかくしげれり・たいぼん・げじようの・そとばも・こけのみ・むして・かたぶきぬ・しんたんには・
てんだいさん・五だいさん・はくばじ・ぎよくせんじも・このごろは・ぢうりよ・なきさまと・あれはてて・だいせうじようの・ほうもんも・
はこのそこにや・くちぬらん・わがてう・あたご・たかをの・だうたふも・むかしは・のきをならべて・ありしかども・いちやの・
うちにあれはてて・てんぐのすみかとなりにけり・なんとの七だいじも・このごろは・とうだい・こうふく・りやうじのほかは・のこP103
れる・だうしやもまれなり・八しう九しうも・あとたえて・ほつさう・三ろん・二しうのほかは・のこれる・ほうもんまれなり・
さしも・やごとなかりし・てんぢくの・ぶつぽふも・ぢじようの・いまにおよんで・ほろびぬるにやと・こころあるひとの・
これをかなしまずと・いふことなし・りざんしける・そうのうちにや・よみたりけん・ふるきばうの・はしらに・いつしゆのうたをぞ・かきつけける
いのりこしわがたつそまのひきかへてひとなきみねとあれやはてなん
これは・でんけうだいし・たうさん・さうさうの・いにしへ・あのくたら・三みやく・三ぼだいの・ほとけたちに・いのりまをされたりし・
そのこころをやおもひいでてや・よみたりけん・いと・やさしうぞ・きこえし・八日は・やくしの・ひなれども・な
むと・となふるこゑもせず・うづきは・すゐじやくのつきなれども・へいはくを・ささぐるひともなし・あけのたまがき・かみさびて・し
めなは・のみや・のこるらん・さればふるきひとびとの・まをしあはれけるは・わうばふつきんとては・まづ・ぶつぽふさき
だつて・ばうずと・いへり・されば・しなののくに・ぜんくわうじも・さんぬる・三ぐわつ十三にちに・えんじやうの・きこえあり・
このによらいとまをしたてまつるは・むかし・ちうてんぢく・びしやりこくに・おいて・五しゆの・あくびやう・おこつて・にんみんことごとく・
ほろびしとき・びしやりこくの・ぐわつがいちやうじやと・しやくそん・もくれん・みこころを・ひとつにして・えんぶだごんにて・てづからみ
づから・いうつし・まゐらつさせたまへる・一ちやくしゆはんの・みだの三ぞん・えんぶだい一の・れいざうなり・されば・
ぶつぽふ・とううぜんの・ことわりにこたへて・ちうてんぢくにて・五百さい・はくさいこくにて・一千よねん・そののちわがてう・つのくに・
なにはの・ほりえにして・しばらく・やすらひたまひしを・おほみの・あづまうど・ほんだよしみつ・とりたてまつつて・P104
しなののくに・みのちのこほりに・あんぢしたてまつる・ぢしようのころまでは・五百五十よねんなり
康頼祝 302
きかいがしまの・るにんども・つゆのいのち・くさばのすゑに・すがりても・をしむべきにはあらねども・たんばのせうしやうの・しうと・
へいさいしやう・のりもりの・しよりやう・ひぜんの・かせのしやうより・いしよくを・つねにおくられしかば・しゆんくわんも・やすよりも・いのちを
いきては・ながらへけり・たんばのせうしやうなりつね・へいはんぐわんやすよりにふだうと・二にんは・くまのしんし(イ信心)の・ひとにてお
はしければ・いかにもして・たうしまのうちに・くまの三しよごんげんを・くわんじやうしたてまつりて・きらくのことを・いのらばや
といふに・しゆんくわんは・もと・さんそうなるうへ・ふしんの・ひとにて・さんわうの・おんことならば・さもありなん・ごんげん
の・おんことは・あながち・しんも・おこらずとて・このぎに・どうしんをも・したまはず・二にんは・おなじこころに・も
ししまのうちに・くまのににたる・ところやあると・たづねまはるに・あるひは・りんたふの・たへなるところもあり・あるひは・こうきん
しうの・やまもあり・やまのけしき・きの・こだちほかより・なほすぐれたり・みなみをのぞめば・かいまんまんとし
て・くものなみ・けぶりのなみ・いとふかく・みづは・へきたんを・おび(イたたへ)たれば・かのちやうあん・しやうかが・むすめの・げんのとくを・
あらはせし・じんやうの・かう・のほとりも・これには・すぎじとぞ・みえし・きたをかへりみれば・また・さんがくの・
ががたるなかより・はくせきの・れうすゐ・みなぎりおちたる・たきのおと・ことにすさまじく・しようふう・かみさびたる・けしき・まこと
に・ひれうごんげんの・おはします・なちの・おやまに・さ(も字脱 )にたりけり・さてこそ・やがて・そこをば・なP105
ちさんとは・なづけられけれ・かのみねは・ほんぐう・これは・しんぐう・かれは・そんぢやう・そのわうじ・どのわうじ・
このわうじと・わうじわうじの・なをまをし・やすよりにふだう・せんだちにて・きらくの・ことをぞ・いのられける・なむごんげん・
こんがうどうじ・ねがはくは・われらを・いまいちど・こきやうへかへさせたまひて・こひしき・ものどもを・みせしめたまへと・
ふたとせが・あひだぞ・いのられける・ひかずつもつて・たちかふべき・じやうえなければ・あさのころもを・みにまとひ・
きりべの・わうじの・なぎのはを・いなりのやしろの・すぎのはには・たむけつつ・くろめに・つくとぞ・くわんじけ
る・けがらはしき・心ある時は・さはべの・みづを・こりにかき・いはたがはの・きよきながれと・おもひやり・
たかきところに・のぼりては・ほつしんもんとぞ・くわんじける・さるほどに・やすよりにふだうは・ひに六十六ど・まゐり・ご
へいがみの・なければ・はなをたをりて・へいとささげ・ほんぐう・しようじやうでんの・おんまへにて・つねはのつとをぞ・まをしけ
る・それあたりきたれる・としのついで・ぢしよう二ねん・つちのえいぬのとし・つきのならひは・十ぐわつ・二ぐわつ(イ十二月)・ひのかず・三
百五十よケにち・きちにちりやうしんを・えらびて・かけまくも・かたじけなく・まします・につぽんだい一・だいれいけん・ゆや三しよ・ごんげん・
ひれう・だいぼさつの・けうりやう・うづの・ひろまへにして・しんじんの・だいせしゆ・うりんふぢはらの・なりつね・ならびに・しやみしやうせう・一しんしやうじやうの・まことをいたし・三ごふさうおうの・こころざしを・ぬきんでて・つつしんでもつて・うやまつてまをす・それ・しようじやうだいぼさつは・さいどくかい
の・けうしゆ・三じんゑんまんの・かくしゆなり・りやうしよごんげんは・あるひは・とうばう・じやうるり・いわうのしゆ・しゆびやうしつぢよの・によらいた
り・あるひは・なんぱうふだらく・のうけのしゆ・にふちう・げんもんの・だいし・にやくわうじは・しやばせかいの・ほんしゆ・せむゐしや
のだいし・ちやうじやうの・ぶつめんを・げんじてしゆじやうのしよぐわんを・みてしめたまふ・ここをもつて・かみいちじんを・はじめたてまつつP106
て・しもばんみんに・いたるまで・あるひは・げんせあんをんのため・あるひは・ごしやう・ぜんしよのために・あしたには・じやうすゐを・むすん
で・ぼんなうの・あかを・すすぎ・ゆふべにはしんざんに・むかつて・はうがうを・となふるに・かんおうおこたることなし・
ががたる・みねのたかきをば・じんとくの・たかきに・たとへ・れいれいたる・たにのふかきをば・ぐぜいの・ふか
きに・なずらふる・くもをわけて・のぼり・つゆをしのぎて・くだる・ここに・りやくの・ちを・たのまずんば・
いかがあゆみを・けんなんのみちに・はこばむや・それ・ごんげんの・ゐとくを・あふがずんば・なんぞ・かならずしも・いうゑんのさかひ
に・ましまさむや・よりて・しようじやうだいごんげん・ひれうだいぼさつ・しやうれん・じひの・おんまなじりを・あひならべ・われらが・
むにの・たんせいを・ちけんして・いちいちにこんしを・なふじゆせしめたまへ・ままのみ・(イままのみ四字ナシ)そもそもむすぶはや
たまの・りやうしよごんげんは・おのおのきに・したがつて・あるひは・うえんの・しゆじやうを・みちびき・あるひは・むえんの・ぐん
るゐを・すくはんがために・七はうしやうごんの・すみかをすて・八まん四千の・ひかりを・やはらげ・かりに・すゐじやくと・あらはれ
て・六だう三うの・ちりに・どうじたまへり・されば・ぢやうごふやくのうてん・ぐちやうじゆ・とくちやうじゆの・らいはい・そでをつらね・
へいはくれいてんを・ささぐる・ことひまなし・にんにくのころもを・かさね・かくだうのはなを・ささげてしんでんのゆかを・うごかし・しん
じんの・みづをすましては・りしやうの・いけを・たたへたり・しんめい・なふじゆしたまはば・しよぐわんなんぞ・じやうじゆせざらんや・あ
ふぎ・ねがはくば・十二しよごんげん・おのおの・りしやうのつばさを・ならべ・はるかに・くかいの・そらにかけり・さ
せんの・うれへを・やすめて・すみやかに・きらくの・ほんくわいを・とげしめたまへ・さいはいさいはい・とぞまをしけるP107
卒都婆ながし 303
さるほどに・二にんのひとびとは・あるよ・ほんぐうしようじやうでんの・おんまへに・つやして・よもすがら・ねんじゆせられけ
るに・おきのあらし・ことに・はげしかりけるに・いづかたよりともしらず・このはふたつ・二にんの・ひとびとの・そでの
うへに・ふきかけたり・はんぐわんにふだう・なにとなう・これをとつて・みけるに・さしも・このあひだたのみを・かけたてまつる・
みくまのの・なぎのはにてぞ・さふらひける・このきのはに・一しゆのうたを・むしくひにこそ・したりけれ
ちはやぶるかみにいのりのしげければなどかみやこへかへらざるべき W
ごんげんの・ごなふじゆ・うたがひなしとぞ・おぼえたる・あるよまた・二にんの・ひとびとにしの・ごぜんのおんまへに・つやして・
ねんじゆ・せられけるに・ゆめうつつとも・わかざるに・おきのかたより・かざり・じんじやうに・したる・こ
ぶねを・一さう・なぎさによせ・よにうつくしき・にようばうたち・十よにん・ふねよりあがり・つづみ・しらべひやうしを・もたせつ
つ・にしのごぜんの・おんまへにて・いまやうをこそ・うたはれけれ・よろづのほとけの・ぐわんよりも・せんじゆの・
ちかひぞ・たのもしき・かれたる・くさ・木にも・たちまちに・はなさき・みのるとこそ・きけと・これを・二三
ど・うたふかと・おぼしくて・かきけすやうにぞ・うせられける・にしのごぜんの・ごほんぢ・せんじゆせんげんにて・
おはします・りうじんは・廿八ぶしゆの・そのひとつなれば・さだめて・ごやうがうなるらんと・たのもしかりしおんことなり・
なかにも・やすよりにふだうは・みやこのこひしさの・せつなるままに・せんぼんの・そとばを・つくり・あじの・ぼんじをかき・P108
けみやう・じつみやう・ねんがう・ぐわつぴのしたには・二しゆの・うたをぞ・かきつけける・
さつまがたおきのこじまにわれありと・おやにもつげよやへのしほかぜ
おもひやれしばしとおもふたびだにも・なほふるさとはこひしきものを
これをうらに・もつて・いで・につぽんのかたを・ふしをがみ・なむ・きみやうちやうらい・ぼんてん・たいしやく・四だいてんわう・けんらう
じしん・そうじては・につぽん・六拾よしうの・だいせうのじんぎ・みやうだう・べつしては・ゆや三しよ・ごんげん・かいりうわうとう・ま
でも・あはれみを・たれさせたまひて・このうちに・一ぽんなりとも・こきやうへ・つたへてたばせ・たまへと・きせいして・
おきつしらなみの・よせては・かへす・たびごとに・そとばを・うみにぞ・うかべける・そとばは・つくりいだすに・
したがつて・うみにいれければ・ひかず・つもれば・そとばの・かずも・つもりにけり・おもふこころや・たよ
りのかぜとも・なりたりけん・またしんめいぶつだや・おくらせ・おはしましけん・千ぼんの・そとばのうちに・一ぽんは
るばると・八へのしほぢを・ゆられきて・あきのくに・いつくしまの・だいみやうじんの・おまへのなぎさに・うちあげたり・
ここにやすよりが・ゆかりありけるそう・一にん・せんやうだう・しゆぎやうしけるが・あるとき・いつくしまに・まゐり・しやだんのていを・を
がみたてまつるに・こころもことばも・およばれず・八しやの・ごてんは・いらかをならべ・百八十けんの・くわいらうあり・しやとうは・
うみにのぞめる・ところにて・しほの・みちひに・つきぞすむ・しほの・さすときは・おきのとりゐ・うちのくわいらう・あけのたまがき
に・いたるまで・ことごとくみな・るりのごとし・またしほのひくときは・なつのよなれども・おまへの・はくさに・しもぞ
おく・それ・わくわうどうぢんの・すゐじやくは・いづれも・とりどりなりとは・まをせども・いかなれば・このおんかみは・P109
かいまんの・うろくづに・えんをばむすばせ・たまふらんと・ごほんぢを・みやびとに・たづねたてまつれば・しやがら・りうわうの・
だい三の・ひめみや・たいざうかいの・すゐじやくとぞ・まをしける・このそういよいよ・たつとくおもひ・たてまつつて・ひねもすに・ほつ
せまゐらせ・やうやう・ひくれ・つきさしいでて・おまへのなぎさに・たちいでまんまんたるかいしやうを・みけるに・そこはか
となく・うちよせける・もくづの・なかに・そとばのかたのみえけるを・このそうなにとなう・これをとつて・み
けるに・さつまがたおきの・こじまと・かきながせる・ことのはは・やすよりにふだうが・しわざなり・もじをばゑりい
れ・きざみつけたりければ・なみにも・いそにも・あらはれずして・よにも・あざやかにこそ・みえにけれ・
このそうあはれにもまた・ふしぎにおもひ・おひのかたはらに・さし・みやこに・のぼり・やすよりが・ははや・つまこどもの・
一でうのきた・むらさきののへんに・しのうでさふらひけるに・とらせければ・らうぼ・これをうけとり・なみだをはらはらと・なが
いて・あはれこのそとばの・もろこしのかたへも・ゆられもゆかで・なにしにこれまでつたはりきて・ふた
たびものを・おもはすることよ・とて・なきければ・つまこどもも・ながされしときの・おもひより・いまこのそとば
を・みけるにぞ・いとどおもひは・ふかかりける・そののちはるか・えいぶんに・およんで・ほうわう・かのそとばを・
めしよせ・えいらんあつて・あなむざん・このものどもは・いまだきかいがしまに・ながらへて・あるにぞとて・れうがんにおんなみだせ
きあへさせたまはず・そののち・うちのおとどのもとへ・つかはし・おはします・だいふはまた・ちちのぜんもんに・みせ
たてまつらる・にふだうもいはきならねば・よにも・あはれげにこそ・のたまひけれ・そのころ・きやうちうに・あやしの・しづのを・しづの
めに・いたるまで・やすよりが・二しゆのうたとて・くちずさまぬは・なかりけり・かきのもとのひとまろは・しまがくれゆく・P110
ふねをおもひ・やまべのあかひとは・あしべのたづを・ながめたまふ・すみよしのみやうじんは・かたそぎの・おもひをなし・み
わのみやうじんは・すぎたてるかどをさす・むかし・そさのをのみことの・三十一じを・はじめおき・たまひしより・このかた・も
ろもろのしんめい・ぶつぽふ・そのえいぎんをもつて・百千まんの・おもひをのぶ・千ぼんの・そとばなれば・さこそは・
ちひさくも・ありけめに・さつまがたより・みやこまで・つたはりけるこそ・ふしぎなれ
蘇武 304
あまりに・ひとのおもふことは・かくしるしありけるにや・むかし・かんてうのみかど・ここくを・せめさせたまひしに・はじめは・
りりようとまをす・しやうぐんの・十八さいに・なりけるに・かんわうの・はたをたうで・十万きを・さしそへて・ここくへ・むけ
られたりけるに・ここくのいくさこはく・かんわうのいくさ・よわくして・みかたほどなく・おつかへさる・つぎのとし・またそぶ
とまをす・しやうぐんの・十六さいに・なりけるに・かんわうのはたをたうで・卅万きを・さしそへて・ここくへ・むけられた
りけるに・こんどもまた・ここくのいくさ・こはく・かんわうのいくさ・よわくして・みかた・たたかひまけにけり・そぶを・はじめ
て・つはもの千よにんを・とりこにし・ほらにおひこめ・三ねんといふに・とりいだし・そぶを・はじめて・つはもの・六百よにんが・かたももを・いち
いちにおしきつて・ひろきのべへ・おひはなつ・やがてしするもあり・ほどへてむなしく・なるもあり・そのなか
に・そぶ一にんは・しなざりけり・のべにいでては・くさのみをとり・やまだにおりては・おちぼをひろひ・さは
べの・みづを・えんとして・つゆのいのちを・ささへけり・さるままには・たのむのかり・はじめは・そぶに・おそれP111
けるが・しだいに・みなるるままに・おそるることこそ・なかりけれ・あるとき・そぶ・ゆびのさきより・
ちをあやし・一くをかいて・かりのつばさに・むすびつけ・これをかんてうに・もつてわたり・みかどのごげんざんに・い
れよやと・いひふくめてぞ・はなちける・かひがひしくも・たのものかり・あきはかならず・ここくより・みやこへかよふもの
なれば・かんの・せうてい・じやうりんゑんに・みゆきなつて・ぎよいうあり・ゆふされのそら・うすぐもつて・なにとなく・ものあはれ
なる・をりふし・ひとつらのかりとびわたる・そのなかに・かりひとつとびさがつて・おのがつばさに・むすび・つけた
る・たまづさを・くひきつてぞ・おとしける・くわんじんあやしみをなし・これをとつて・みかどへたてまつる・みかどひらい
て・えいらんあるに・そぶが・ほまれの・あとなれや・むかしは・がんくつの・ほらに・こめられて・いたづらに・三しゆんの・
しうたんを・おくりき・いまはくわうでんの・うねに・はなたれて・むなしく・こてきの一そくと・なれり・たとひかばねは・このち
に・ちらすと・いふとも・たましひはかへつて・ふたたびくんべんに・つかへん・そしけいとぞ・かいたりける・みかど・あなむざん
これは・ひととせ・そぶと・いつしものを・ここくへ・むけたりしが・いまだながらへて・あるにこそ・とて・こんど
は・やうりとまをす・しやうぐんの・十九さいに・なりけるに・かんわうの・はたをたうで・百まんきを・さしそへて・ここく
へぞ・むけられける・やうりは・そぶが・こなりけり・やうり・百万きを・たまはつて・ここくにむかひ・せめ
けるに・こんどぞ・ここくのいくさよわく・かんわうのいくさ・こはくして・ここくほどなく・やぶれにけり・そののち・そぶをば・
くわうやのうちより・たづねいだす・かたあしは・きられながら・十九ねんの・せいさうを・おくり・とし卅四とまをすには・かんきう
ばんりの・なみのうへ・ふたたび・きうりへ・かへりけり・それよりしてぞ・ふみをがんしよと・なづけ・つかひを・がんしP112
とまをすなり・かんかの・そぶは・しよを・かりにつけて・きうりへ・おくり・ほんてうの・やすよりは・うたをなみのたよりに・
こきやうへ・つたふ・かれは・かりのつばさの・一くのし・これは・そとばの・おもての二しゆのうた・かれは・かんてう・こ
れは・ほんてう・かれは・じやうだい・これは・まつだいさかひを・へだて・よよは・かはれども・ふぜいは・いづれも・おなじ・あはれなりし・ことどもなり
ゆるしふみ 305
にふだうしやうごくの・だい二のおんむすめ・ちうぐうとて・だいりにわたらせたまひけるが・ぢしよう二ねんの・はるのころより・ごなうと・
きこえさせたまひしかば・くものうへ・あめがしたの・さわぎなるうへ・へいけのひとびと・ことにさわぎ・あはれけり・い
け・くすりを・つくし・おんやう・じゆつを・きはむ・しよじに・みどつきやう・はじめてしよしやへ・くわんぺいを・たてまつらる・されども・ご
なう・ただにも・わたらせたまはず・ごくわいにんと・きこえさせたまひしかば・いつしか・ひきかへたる・おんよろこびにてぞ・
わたらせたまひける・しゆじやう・こんねん・十八さい・ちうぐう・廿二に・ならせたまふまで・わうじ・ひとところも・いでき
させたまはず・あはれこんど・わうじにて・わたらせたまはば・いかばかりか・めでたからましと・たんだいま・わう
じ・ごたんじやうなんどの・あるやうに・みなひと・あらましごとをぞ・まをされける・しやうしゆく・ぶつ・ぼさつに・つけ
ては・ごさん・へいあん・きそうかうそうに・おほせては・わうじたんじやうとぞ・いのりまをされける・おなじき・六ぐわつついたつのひ・ちうぐう・
ごちやくたいあり・にんわうじのみや・これをごかぢあり・ざすのみやは・七ぶつ・やくしのほふ・ならびに・へんじやう・なんしの・ほふP113
をぞ・しゆせられける・きさきは・つきの・かさなるに・したがひて・おんみをのみ・くるしう・せさせたまひて・くご
をも・つやつや・きこしめされず・ひすゐの・おんかんざしは・おんめのうへに・ところせく・おもやせさせ・たま
へる・おんありさま・なほいたはしき・おんさまなり・さるままには・かんの・りふじん・せうやうでんの・やまひの・とこ
にふし・たうの・やうきひ・りくわ・いつし・はるの・あめを・おび・ふようの・かぜに・しをれつつ・をみなへしの・つゆおも
げなるより・なほうつくしき・おんさまなり・かかりける・をりをえて・こはき・おんもののけども・とりいれ・まゐ
らせ・ごけんじや・しきりなり・まづは・さぬきのゐんの・ごりやう・うぢの・あくさふの・おくねん・なりちかのきやう・さいくわうほう
し・ふしが・しりやう・べつしては・きかいがしまの・しやうりやうなんどそ・うらなひまをしける・きくもよに・おどろ
おどろしう・おそろしかりし・おんことどもなり・きんねん・ふりよなる・ことども・あつて・せじやう・いまだ・らくきよ・せざる
ことも・これひとへに・ごりやうの・ゆゑなりとて・さぬきのゐんの・ごつゐがうあつて・しゆとくてんわうと・がうし・うぢの・あくさふの・
ぞうくわん・ぞうゐ・だいじやうだいじん・じやういちゐを・つかはさる・ちよくしは・せうないき・これながとぞ・きこえし・くだんの・むしよは・
やまとのくに・そうのかみのこほり・かはかみのむら・はんにやのの・五三まいなりしを・はうげんの・むかしほりおこして・すてられし・のち
は・しがい・みちのべの・つちとなつて・ねんねんに・はるのくさのみ・しげれり・しかるを・いまちよくし・たづねくだつて・
ちよくめいを・さづけられけれども・ばうこんいかが・おもはれけん・おぼつかなしとぞ・ひとまをしける・むかしもをんりやうは・かくおそ
ろしき・ことにのみこそ・まをしつたへたれ・くわざんのゐんの・みよを・いとはせたまひたりしは・もとかたの・みんぶきやうが・
りやう・れいぜんゐんの・おんものぐるはしう・さんでうのゐんの・おんめも・ごらんぜ・ざりしは・くわんざん・ぐぶがりやうとかや・ゐP114
かみのないしんわうをば・しゆだうてんわうと・がうし・さうらの・はいたいしをば・くわうごうの・しきゐに・ふくす・(イ早良の廃太子をば崇道天皇と
号しゐかみの内親王をば皇后の職位に補す)かかりける・をりをえて・かどわきの・へいさいしやう・のりもりのきやう・うちのおとどの・もとに・おはして・まこと
やらん・うけたまはりさふらへば・ちうぐう・ごさん・へいあんの・おんいのりの・おんために・さまざまの・おんことどもの・さふらふなる・なに
なにとまをすとも・たいしやに・すぎたる・ことはさふらふまじ・さらんにとつてはきかいがしまの・るにんども・めしかへされたら
んずるほどの・くどく・ぜんごんは・またなにごとか・さふらふべきと・まをされたりければ・おとど・いかさまにも・ちちのけ
しきを・うかがうて・こそ・みさふらはめとて・あるときおとど・ちちのおんまへに・おはして・ちうぐう・ごさん・へいあんの・おん
いのりのおんためには・なになにとまをすとも・たいしやに・すぎたることは・さふらふまじ・さらんに・とつては・あの・たん
ばのせうしやうがことを・さいしやうの・いたう・なげき・まをされさふらふが・まことに・ふびんにさふらふ・なりちかのきやうが・しりやうを・な
だめられんに・つけても・いきてさふらふ・たんばのせうしやうを・めしかへされたらんずるほどの・くどく・ぜんごんは・なにごとか・
さふらふべき・ひとのおもひをやめさせたまはば・ごぐわんも・かならず・じやうじゆし・ひとの・ねがひを・みてさせたまは
ば・ちうぐうやがて・ごさん・へいあんわうじ・ごたんじやうあつて・かもんの・えいぐわ・いよいよ・ひらけさふらふべしと・まをされけれ
ば・にふだうしやうごく・ひごろは・さしも・よこがみを・やられたりしが・こんどは・おもひのほかに・やはらぎ・たまひ
て・たんばのせうしやうをば・めしかへすべき・ござんなれ・あの・しゆんくわんや・やすよりほうしが・ことは・いかにとのたま
へば・おとど・それも・どうざいにて・ひとつはいしよに・さふらへば・ともに・めしこそ・かへされさふらはんずらめ・
一にんも・のこされたらんは・なかなか・ざいごふの・いんえんなるべうさふらふと・まをされたりければ・にふだう・いやいや・やすP115
よりほうしがことは・さもやありなん・しゆんくわんは・ずゐぶん・にふだうが・こうじゆによつて・ひととなりたる・ものぞかし・し
かるに・ひがしやま・ししのたにに・じやうくわくを・かまへて・じやうかいが・ことをおろかに・いひけるときくが・きくわいな
れば・しゆんくわんに・おいては・おもひもよらずとぞ・のたまひける・そののち・おとどさいしやうの・もとに・おはして・たん
ばのせうしやうをば・めしかへさるべきにてさふらふなり・おんこころやすく・おぼしめされさふらふべしと・のたまへば・さいしやうなのめ
ならず・よろこびたまひて・のりもりが・ごいつけのかたはしに・なりまゐらせたる・しるしにや・などか・このこと・
いまいちど・よきやうに・まをさるべきと・おもひてやらん・かれに・あひぐ・せさせてさふらふものの・のりもりが・か
たをみさふらふ・たびごとに・なみだにむせびさふらふが・あまりにふびんにぞんじて・あながちに・かくはまをしさふらふなり・おとどそれ
はさぞ・おぼしめされさふらふらん・こはたれとても・かなしければ・あの・なりちかのきやうがことをも・ずゐぶんとり
まをしさふらひしかども・きらくを・またずして・はいしよにて・うせさふらひぬるうへは・ちからおよばず・いきてさふらふ・たんば
のせうしやうに・おいては・おんこころやすく・おぼしめされさふらふべしと・のたまへば・さいしやう・てをあはせてぞ・よろこば
れける・さるほどに・きかいがしまの・るにんども・すでに・めしかへさるべきに・さだまりしかば・にふだうしやうこくより・おんゆ
るしぶみあり・さいしやうのもとよりも・べつして・よろこびの・つかひをぞ・そへられける・つかひは・たんざゑもんのじよう・もとやすとぞ・
きこえし・七ぐわつげじゆんに・みやこをたつ・あひかまへて・よをひに・ついで・くだるべしとは・のたまへども・こころにまかせぬ・かいろ
なれば・ながづき廿かころにぞ・さつまがた・きかいがしまには・つきにける・おつかひ・ふねより・のぼり・これに・きよねんみやこ
より・三にん・ながされたまひし・たんばのせうしやうどのや・へいはんぐわんやすより・ほつしようじの・しゆぎやう・しゆんくわんそうづの・ごばうの・P116
おはする・ところは・いづくやらんと・こゑごゑに・よばはつたりければ・ににんの・ひとびとは・れいの・くまのまうでし
て・おはせざりけり・そうづ一にん・しばのいほりに・おはしけるが・ききたまひて・はしるともなく・たをるるともな
く・いそぎ・ふなつきに・おはして・これこそきよねん・みやこより・ながされし・しゆんくわんよ・そもなにごとぞと・のたまへ
ば・おつかひ・べつのしさいにてはさふらはず・みやこよりの・おゆるしぶみさふらふとて・くびにかけたる・ふみぶくろより・とりいだ
して・たてまつる・そうづ・なのめならず・よろこびたまひて・いそぎ・しばのいほりに・かへり・このふみを・ひらいてみたまへば・ぢう
くわは・をんるに・めんず・はやはや・きらくの・おもひをなすべし・ちうぐう・ごさん・へいあんの・おんいのりのおんために・
たいしや・おこなはるるに・よつて・きかいがしまの・るにん・たんばのせうしやうなりつね・へいはんぐわんやすより・二にん・しやめんと・ばか
りにて・そのなかに・そうづ一にん・もれにける・こそかなしけれ・うらにもや・あるらんとうらを・みたまふに
もなし・またらいしにもや・あるらむと・らいしをみたまふにも・なかりけり・さるほどに・二にんの・ひとびとも・や
うやう・げかうせられたる・せうしやうの・よまれけるにも・やすよりが・よみけるにも・二にんしやめんと・ばかりに
て・三にんとは・いれられず・そうづ・こはいかに・つみも・おなじつみ・はいしよも・ひとつ・ところぞかし・う
きも・しづみも・ともにこそ・おこなはる・べきに・されば・しひつの・あやまりかや・または・へいけの・お
ぼしめしわすれかや・みやうけんは・こはいかに・したまひつる・ことぞや・とて・ふみを・はしより・おくへ・ま
き・おくより・はしに・まきかへし・てんにあふぎ・ちにふし・かなしみたまへど・かひぞなき・されば・これは・ゆめか
や・うつつかや・うつつかと・おもはんと・すれば・さながら・ゆめのごとくなり・さるほどに・二にんの・ひとP117
びとは・よろこびまをしの・くまのまうでをぞ・したまひける・そうづ・ひごろは・おぼろけにても・まゐりたまはぬ・ひとの・せう
しやうのそでに・すがり・やすよりにふだうが・たもとにとりつき・なくなくまゐりたまひ・あひかまへて・このことひとのうへと・おも
ひたまふべからず・しゆんくわんがいま・かかるうきめに・あふことも・こだいなごんどのの・よしなきむほんの・ゆゑぞ
かし・みやこまでと・まをさばこそ・かたからめ・このふねにうちのせて・九こくの・ちまで・つけたまひて・そののちは・
すておき・たまふべしと・かきくどきて・のたまひければ・せうしやう・それは・さぞおぼしめされさふらふらん・なりつね・みやこ
をいで・はるばると・やへの・しほぢを・こぎすぎて・かかるうきしまに・ながされ・いちにちへんし・ながらふべし
とは・ぞんぜざりしかども・つゆのいのち・きえやらで・いまめしかへさるる・うれしさも・さることにては・さふらへ
ども・一にん・のこされたまふ・いたはしさ・まをすばかりも・さふらはず・このふねに・うちのせ・たてまつつて・九こくのちま
で・つけまゐらせんこと・いとやすきおんことにては・さふらへども・おつかひも・いかにもかなふまじきよしを・まをし
さふらふうへ・みやこよりも・おんゆるされも・さふらはざらんに・三にんともに・しまをば・いでたりなんど・きこえさふらひ
ては・なかなか・あしうさふらふべし・こんどはまづ・なりつね・みやこにのぼり・ひとびとにも・よきやうに・まをしあはせ・また
はにふだうしやくごくの・けしきをも・うかがうて・やがてひとを・むかひにたてまつるべし・あひかまへて・よしなきことども・おぼし
めしたたで・みやこのつてを・まちたまふべしなんど・やうやうに・こしらへ・のたまひけれども・そうづはいささか・
くつろぐここちも・したまはず・さるほどに・じゆんぷう・いできに・しかば・ふねをいだす・せうしやうの・かたみには・よる
のふすま・やすよりにふだうが・かたみには・一ぶの・ほけきやうを・とどめ・おきたりけれども・そうづは・なほなぐさむ・P118
ここちも・したまはず・かねてより・ふねにのつては・おり・おりては・のり・あらましごとをぞ・したまひけ
る・おつかひ・おんゆるされも・さふらはざらんに・なにしに・おふねには・めさるべきとて・あらけなく・おひ
おろし・たてまつつて・やがてふねをば・いだしけり・そうづは・なほも・ふねの・ともづなに・とりつき・こしになり・わきにな
り・たけのおよぶほどは・ひかれて・おはしけるが・たけも・およばぬほどにも・なりしかば・またむなしき
なぎさに・およぎかへり・をさなきものどもの・ははやめのとを・したふやうに・これ・ぐして・ゆけや・われ
のせて・ゆけやとて・をめきさけびたまへども・こぎゆく・ふねのならひにて・あとはしらなみばかりなり・いまい
くほども・へだたらねども・なみだにくれて・みえざれば・おきの・かたをぞ・まねかれける・かの・まつらさ
よひめが・もろこしぶねを・したひつつ・ひれふりたりけんも・これには・すぎじとぞ・みえし・せうしやうはよろづに・
なさけあるひとにて・おはしければ・さだめてよきやうにぞ・まをされんずらんとて・そのせに・みをも・なげざり
し・こころのほどこそ・うたてけれ・そうづ・そのよは・しばのいほりへも・かへりたまはず・なみにあしうちあらはせて・そのよは・
そこにて・なきあかす・かのさうり・そくりと・いつしひと・かいかんざんにはなたれて・むなしくなり
たりしも・これにはすぎじとぞ・みえし・さるほどに・二にんのひとびとは・うらづたひ・しまづたひして・十ぐわつ廿かごろ
には・ひぜんのくにかせのしやうにぞ・つきたまひける
あひ 306 P119
さいしやう・みやこよりひとをくだして・としのうちは・なみかぜもはげしければ・しばらくそれにて・ゆをもあび・みをもい
たはり・たまひて・はるになりて・のぼりたまふべしと・のたまひつかはされたりければ・二にんのひとびと・そのとしを
ば・ひぜんのくにかせのしやうにてぞ・おくられける・
御産の巻 307
さるほどに・みやこには・おなじき・十一ぐわつ・十二にちの・とらのこくばかりより・ちうぐう・ごさんのけ・わたらせたまふとて・きやう
ちう・ろくはら・ひしめきけり・きよげつ・廿七にちより・をりをり・そのけ・わたらせ・たまひけるが・ことには・けさの・
とらのこくばかりより・とりたてたる・おんことどもにてぞ・わたらせたまひける・ごさんじよは・ろくはら・なりければ・
ほうわうも・ごかうなる・そのほか・だいじん・くぎやう・でんじやうの・じしん・やくいのかみ・てんやくのかみ・おんやうのかみ・みなわれもわれもと・
はせまゐらる・にふだうどのも・二ゐどのも・むねにてを・おきたまひて・ひとのまゐつて・ものまをすときは・ただなにごとも・よ
きやうによきやうにと・ばかりぞ・のたまひける・さりとも・じやうかいが・いくさばなんどへ・いでたらんには・これほどにしも・おく
せじものをとぞ・のちには・のたまひける・こまつどのは・なにごとにも・さわぎたまはぬ・ひとにておはしければ・はるか
に・ひたけてのち・おんむま十二ひき・ひかせつつ・ちやくしごんのすけ・せうしやうこれもり・じなん・ゑちぜんのせうしやうすけもり・いげの・
きんだちのくるま・やりつづけさせ・よにも・のどやかげにてぞ・おはしたる・おとどまゐりも・はてたまはず・
しやきん・千りやう・なんれう・百ぎん・けん七・ぎよい・四十りやう・ひろぶたに・おいて・いだされたり・おほかた・きらきらしうP120
ぞ・みえし・五でうの・だいなごん・くにつなきやうも・おんむま二ひき・しんじやうせらる・おとどの・おんむま・まゐらせられ・けること
は・かつは・きさいのみやの・おんせうとなるうへ・ふしの・ごけいやく・あれば・ことわりや・くにつなきやうの・おん
うまの・まゐらせられやうは・こころざしのいたりか・または・とくの・あまりかとぞ・ひとびと・かたぶき・あはれける・こまつ
どのの・おんむま・まゐらせられけることは・いんじ・くわんこうに・一でうのゐんのきさき・じやうとうもんゐん・ごさんのとき・みだうどのの・
おんむま・まゐらせられたりし・そのれいとぞ・きこえし・またたいしや・おこなはれけることは・だいぢ・二ねん・九ぐわつ七かのひ・
とばのゐんの・きさき・たいけんもんゐん・ごさんのとき・ゆるしもの・おこなはれて・ぢうくわのもの・三百よにん・くわんいうせられた
りし・こんどそのれいとぞ・きこえし・じんじやには・いせ・いはしみづ・を・はじめたてまつつて・廿二しやに・くわんぺいあり・また
じんめを・まゐらせられけることも・かもを・はじめたてまつつて・あきの・いつくしまに・いたるまで・廿三しやとぞ・きこ
えし・ぶつじには・とうだい・こうふく・えんりやく・をんじやうじを・はじめとして・四十二ケしよへ・みじゆきやうものの・おつかひには・
みやのさぶらひの・なかに・うくわんの・ものども・うけたまはつて・ひやうもんの・かりぎぬに・たいけんしたる・ものどもが・ひがしの・ちうもんより・
いでて・にしのちうもんへいる・いろいろのみじゆきやうもの・ぎよけん・ぎよい・もち・つづいたる・ありさまは・めづらしかり
し・みものなり・ぶつしよの・ほういんに・おほせては・ごし・とうじんの・七ぶつ・やくしのざう・ならびに・五だいそんの・ざうを・つく
りはじめらる・にんわじのみや・くじやくきやうのほふ・てらの・ちやうり・こんがうどうじのほふ・ざすのみや・七ぶつ・やくしのほふ・
そのほか・一じきんりん・五だいこくうざう・五だんのほふ・六じかりん・八じもんじゆ・ふげんえんめいのほふに・いたるまですべて・だい
ほふ・ひほふ・のこるところなく・しゆせられけり・ごまのけぶりは・ごしよちうに・みちみち・すずのこゑは・くもをひびかし・しゆP121
ほふのこゑには・みのけよだつ・ごけんじやには・ばうかく・しやううんりやうそうじやう・しゆんげうほういん・がうせん・実せん・りやうそうづ・
いげの・ごけんじやたち・ねんらいしよぢのほんぞん・ほんじ・ほんざんの・さんばう・としごろの・ぎやうこふをもつて・おのおのそうが
のくどもを・あげあせをながし・くろけぶりをたてて・もみあはれたる・けいき・いかなる・おんもののけなりとも・
おもてを・むかふべしとも・みえざりけり・そのほか・あらはるるところの・おんもののけどもをば・みやうわうよりましの・ばく
にかけて・せめふせせめふせ・をどりくるふ・ありさまは・おそろしなんども・おろかなり・ほうわうは・いまくまのへ・
ごかうなるべきにて・ごしやうじんのおついで・なりければ・みきちやうちかう・ござあつて・せんじゆきやうを・うちあげうち
あげ・あそばされけるにぞ・さしもをどりくるふ・おんよりましどもも・しばらく・ばくを・しづめて・ちやう
もんつかまつりける・なによりも・ほうわうの・おほせけるおんことばこそ・かたじけなうはうけたまはれ・たとひいかなる・おんものの
け・なりとも・このおいほうしが・かくてさふらはんほどは・いかでか・たやすくちかづきたてまつるべき・ただしさぬきのゐんの・ご
りやうばかりなり・それもごつゐがうののちは・おんうらみあるべしとも・ぞんぜず・そのほか・つぎさまの・ものどもは・
てうおんをもつてみな・ひととなりたる・ものぞかし・たとひはうしやの・こころをこそ・ぞんぜずとも・あにしやうげを・なさんや・
とうとう・まかりしりぞき・さふらへとて・によにん・しやうさんしがたからん・ときに・のぞんで・じやま・じやしやうして・く・
しのびがた・からんときも・こころをいたして・だいひしゆを・しようじゆせば・きじんたいさんして・あんらくに・しやうぜんと・となへさ
せたまひて・おんじゆず・さらさらと・もませも・はてさせ・たまはぬに・ごさん・へいあんのみ・ならず・わうじ・に
てぞ・ましましける・なかにも・ほん三ゐのちうじやうしげひらのきやうの・いまだそのころ・ちうぐうのすけにて・おんまへに・さふらはれけP122
るが・みすのうちより・つつといで・ごさん・へいあんのみならず・わうじ・ごたんじやうさふらふ・ぞやと・たからかに・まを
されたりければ・ほうわうを・はじめたてまつつて・おのおのの・じよしゆ・すはいの・ごけんじやに・いたるまで・一どうに・あはや
とまをしあはれける・こゑごゑの・はるかに・もんぐわいまでも・ののめいて・しばしは・しづまりも・やらざりけ
り・にふだうしやうごく・あまりの・うれしさにや・こゑをあげてぞ・なかれける・よろこびなきとは・これをまをすべきにや・
ほうわうは・いまくまのへ・ごかうなるべきにて・はるかの・もんぜんにみくるま・たてさせられたりければ・いそぎ・ごたいしゆつ
あり・にうだう・あまりの・めでたさにや・ふじの・わた千りやう・おつさまに・ほうぢうじどのへ・しんじやうせらる・ほう
わう・これおほきに・むやくなりとて・いそぎ・ごけんじやの・うちへぞ・くだされける・そののち・ほうわうは・いまくまのへ・ごかうな
る・七か・ごさんろうのうちに・ごあんじちのまへに・こんど・ほうわうの・六はらにての・ごけんじやの・ごしやうよう・ほこ
りあるべしといふ・らくしよをぞ・たてたりける・いかなる・あどなしものの・しわざにてか・ありけん・を
かしかりし・ことどもなり・そののち・こまつどの・ごさんじよへ・まゐらせたまひ・きんせん・九十九もんを・わうじの・おんまくらが
みの・したに・おき・くはのゆみ・よもぎの・やを・もつて・てんち四はうを・い・てんをもつては・ちちとさだめ・ち
をもつては・ははとさだむ・みこころには・てんせうだいじん・いりかはらせたまへ・ごじゆみやうちやうをんは・むかしの・ほうそ・とうばう
さくが・よはひを・たもたせたまへと・いはひまゐらつさせ・たまひて・やがて・おんほそのを・きりまゐらつさせ・たまひけり
公卿揃(あひ) 308 P123
おんちつけには・へいだいなごん・ときただのきやうの・きたのかた・そつのすけどのぞ・まゐられける・さきのうだいしやうむねもりのきやうの・きたのかたこ
そ・まゐらせ・たまふ・べけれども・さんぬる・七ぐわつに・せいきよのうへは・たいしやう・だいなごん・りやうくわんをじし・まをさ
れて・むねもりきやうは・ろうきよとぞ・きこえし・あはれ・こんど・しゆつしあらば・きやうだい・さうにあひならび・たまひて・い
かばかりか・めでたからまし・むねもりのろうきよ・ほいなかりし・ことどもなり・されば・ふるきひとびとや・つぼねの・
にようばうたちの・まをしあはれけるは・あはれ・こにようゐん・だにも・わたらせたまはんには・これほどしも・おんかるがるし
き・おんことは・よもわたらせたまはじ・だいじやうほうわうの・ごけんじや・じやうこにもうけたまはらず・またまつだいにも・あるべしとも・
ぞんぜず・こんどの・ごさんに・めでたかりしは・わうじ・たんじやう・かたじけなかりしは・ほうわうの・ごけんじや・いう
なりしは・こまつどのの・ふるまひ・おもはざりしは・にふだうしやうごくの・よろこびなき・ほいなかりしは・むねもりの・
ろうきよ・またあやうかりしことは・わうじたんじやうの・ときは・ごてんのむねより・こしきを・みなみへころばかすことのさふらふ
を・ひめみや・たんじやうの・やうに・ききなして・きたへむけて・ころばかす・ひとびとあれは・いかにととよまれて・
またからげ・なほして・みなみへおとし・なほしたりしぞ・これきたいの・あやまりなる・またをかしかりしことに
は・かもんのかみ・ときはると・まをす・おんやうしの・千どのおはらひの・やくにめされて・まゐりけるが・しよじうなんども・
ほくせうなりけるに・ひとのおほきことは・たう・ま・ちく・ゐの・ごとし・ひざをよこたふるに・およばねば・やく
にんの・まゐりさふらふ・まゐりさふらふとて・たいぜいのなかを・おしわけおしわけ・まゐるほどに・いかがは・したりけむ・みぎの・くつ
を・ふみぬかれ・うつぶして・とらんと・しけるを・かうぶりをさへに・つきおとされて・そくたい・ただしき・P124
らうしやの・もとどりはなちにて・ゆるぎ・いでたりけるにぞ・みなひと・はらのわたをば・きられける・ときはる・
わがみのうへとは・つゆしらず・かかる・めでたき・ごさんじよに・いかなる・けうけいの・いできてさふらふ・や
らんとて・あきれて・たつたりければ・こらへかねたる・わかきひとびとは・みなかんしよへ・いでてぞ・わら
はれける・おんやうしは・へんばいとて・あしをだにも・あらけなく・ふまずとこそ・うけたまはりつるに・その
ときは・なにともおもはざりしかども・のちにこそ・おもひあはすることども・おほかりけれ・こんど・ふさんの・くぎやうには・
まづ・さきのうたいしやうむねもり・おほみやの・だいなごんたかすゑ・七でうのしゆりのだいぶのぶたかのきやうを・さきとして・いじやう十三にんとぞ・
きこえし・このひとびとは・つぎのひ・ゑぼし・ひたたれにて・おんよろこびまをしに・にし八でうへ・まゐられけるとぞ・きこえし・
さるほどに・ごさんじよに・まゐりこもらせたまふ・ひとびとには・くわんぱく・まつどの・めうおんゐんの・だいじやうだいじんもろなが・おほゐ・みかどの・さだいじんつねむね・つきのわの・うだいじんかねざね・こまつのないだいじんしげもり・ごとくだいじの・さたいしやうさねさだ・げんだいなごんさだふさ・三でうだいなごんさねふさ・とうだいなごんさねくに・五でうだいなごんくにつな・なかのみかどの・ちうなごんむねいへ・いけのちうなごんよりもり・くわざんのゐん
の・ちうなごんかねまさ・べつたうただちか・あぜちすけかた・げんちうなごんまさより・とうちうなごんすけなが・ごんちうなごんさねつな・さゑもんのかみとき
ただ・さひやうゑのかみしげのり・うひやうゑのかみみつよし・くわうごぐうのだいぶともかた・へいさいしやうのりもり・ひだりのさいしやうちうじやうさねむね・みぎのさいしやうちうじやうさねいへ・さだいべんさいしやうながかた・うだいべんのさいしやうつねふさ・六かくのさいしやうよりさだ・ほりかはのさいしやう・いへみち・しんさいしやうのちうじやう
みちちか・さきやうのだいぶながのり・三ゐのちうじやうとももり・しん三ゐのさねきよ・いじやう・卅三にん・うだいべんの・ほかは・みな・ちよくいなりP125
頼豪 309
そののちだいりには・こんどの・ごさんの・おんいのりの・きそう・かうそうたちに・けんしやうおこなはれけり・にんわじのみやは・とう
じしゆざう・ならびに・五七にちのみしゆほふ・たいけんのほふ・くわんちやうの・こうぎやうあるべしとて・みでし・ゑんりやうほうげんを・ほういん
にきよせらる・ざすのみやは・二ほん・ならびに・ぎうしやを・まをさせたまひけるを・おむろしきりに・あたへ(ささへノ愆カ)まを
させたまひければ・みでし・かくせいそうづを・ほういんに・きよせらる・むかししらかはのゐんのきさきは・きやうごくのおほとののおんむすめな
り・しゆじやういかにもして・きさきばらに・わうじ・あらま・ほしうおぼしめされければ・そのころ・みゐでらに・うげんと
きこゆ・じつさうばうの・あじやりらいがうを・めされて・なんぢ・きさきばらに・わうじ・いのりいだして・まゐらせよ・けんしやうは・こひに
よるべしと・おほせければ・らうがうかしこまつて・うけたまはり・おんまへを・ついたつて・みゐでらにかへり・ぢぶつだうに・とぢ
こもり・百にちかんたんを・くだきて・いのりまをされたりければ・そのしるしにや・きさきほどなう・ごくわいにんあつて・しようはう二ねん・
七ぐわつ九かのひ・おぼしめす・さまに・ごさん・へいあん・わうじ・ごたんじやうありとかや・しゆじやうなのめならず・
ぎよかんあつて・やがて・らいがうを・めされて・ごぐわんははや・じやうじゆしぬ・さてなんぢがけんしやうは・いかにとおほせけれ
ば・らいがうかしこまつてうけたまはり・みゐでらにかいだんこんりふつかまつるべきよしを・まをす・しゆじやうこはいかに・一かい
そうじやうなんどをも・のぞみまをさんずるかと・おぼしめされたれば・ぞんぐわいのまをしやうかな・われわうじを・まうけ
まゐらせて・そをつがしめんと・おぼしめすもただかいだいぶゐを・おぼしめすゆゑなり・なんぢがしよまう・たつせば・P126
りやうもん・かつせんして・てんだいの・ぶつぽふ・ことごとくほろびなんず・つゆおぼしめし・よらぬおんことなりとて・つひにきこしめしも・いれさ
せたまはず・らいがう・もつてのほかにいかれる・けしきにて・おんまへを・ついたつて・みゐでらにかへり・ぢぶつだう
に・とぢこもり・ひとへに・ひじにに・せんとぞしける・しゆじやうこのよしをつたへ・きこしめされて・がうそつまさふさのきやうの・
いまだそのころ・みまさかのかみにて・おはしけるを・めされて・なんぢはらいがうに・しだんの・けいやくあんなれば・みゐでら
に・ゆきむかひ・やうやうに・こしらへて・みよかしと・おほせければ・まさふさ・かしこまつてうけたまはり・いそぎ・みゐでら
に・ゆきむかひ・ちよくぢやうのおもむき・いひふくめけるに・らいがうとみにも・いでやらず・ややあつて・ふすぼつたる・だう
ぢやうの・うちより・おそろしげなる・こゑをもつて・くんしにたはぶれの・ことばなし・りんげん・あせの・ごとしとこそうけたま
はれ・まをすむねを・ごしよういんなからんに・おいては・わがいのりいだしたてまつりたる・わうじなれば・とりたてまつつて・ま
だうへこそ・ゆかんずれとて・そののちは・ものをもまをさず・まさふさのきやう・おほきにおどろき・いそぎだいりに・かへりまゐつて・
このよしを・そうしまをされたりければ・きんちうもつてのほかに・さわがせたまふ・ほどこそありけれ・十四にちとまをすには・
らいがうつひに・ひじににこそは・したりけれ・そののち・わうじ・らいがうが・りやうとて・つねは・なやませ・たまひしがあ
るときは・すずもちたる・らうそう・またあるときは・みづがめもちたるそうの・わうじの・おんまくらちかうまゐると・おぼし
きときは・ごなういよいよ・おもらせたまひしが・おんとし四さいとまをしし・しようりやく二ねん・八ぐわつ六かのひ・つひにか
くれさせたまひけり・あつぶんのしんわうこれなり・しゆじやうなのめならず・おんなげきあつて・そのころのさいきやうのざす・りやうしんだいそうじやう
の・いまだそのころゑんゆうばうのそうづにて・おはしけるを・めされて・たまたままうけ・まゐらせたる・わうじを・P127
うしなひ・たてまつりたるよしを・おほせければ・ゑんゆうばうの・そうづ・かしこまつてうけたまはり・むかしより・よよの・みかどの・ごぐわんは・
わがやまにてこそ・とげさせたまふ・おんことにてはさふらへ・されば九でのうしようじやうも・てんだいのじゑそうじやうに・しだんのけい
やくさふらひてこそ・れいぜんのゐんの・ごさんも・へいあんにはわたらせ・たまひけむなれ・わがやまのぶつぽふ・さんわうの・ごゐくわう・いま
にはじめぬ・おんことなりとて・いそぎとざんして・ぢぶつだうにとぢこもり・かんたんをくだきて・いのりまをされたりければ・そのし
るしにや・きさきほどなう・ごくわいにんあつて・しようりやく三ねん・十二ぐわつ廿九にちに・おぼしめすさまに・ごさん・へいあん・
わうじ・ごたんじやうありとかや・八さいよりみくらゐに・つかせたまひ・ございゐ廿一ねん・さしもけんわう・せいしゆの・きこえ
わたらせたまひしが・これも・らいかうがりやうとて・をりをりなやませ・たまひしが・おんとし廿九とまをしし・かしよう二ねん・七ぐわつ
十九にちに・つひにかくれさせたまひけり・ほりかはのてんわうこれなり・むかしもをんりやうはかく・おそろしき・ことにのみこそ・
まをしつたへたれ・さればいまの・きかいがしまの・しゆんくわんをも・ともにめしこそかへされんずらめ・おそろしおそろしとぞ・ひとまをしける
大塔建立 310
にふだうしやうごくの・だい二のおんむすめ・ちうぐうとて・だいりに・わたらせたまへば・あはれきさきばらに・わうじいできさせ・たまへか
し・にふだうしやうごくふうふともに・ぐわいそふ・ぐわいそぼと・いはれ・てんがをわがままにせむと・おもはれければ・ひ
よしのやしろへ・百にちまうでなんどして・いのりまをされけれども・そのしるしも・なかりければ・さらばわがあがめたてまつる・P128
あきのいつくしまへ・まをさんとて・みとせつきまうでなんどして・いのりまをされたりければ・そのしるしにや・きさきほどなくご
くわいにんあつて・おぼしめすさまに・ごさん・へいあん・わうじ・ごたんじやうありとかや・そもそもにふだうしやうごくの・あきのいつくしま
を・しんじはじめられける・ゆゑをいかにとまをすに・そのかみいまだ・あきのかみたりしとき・とばのゐんのごぐわん・かうやの
だいたふこんりふあるべしとて・あき・すはう・ながと・三ケこくをたまはつて・かうやにのぼり・だいたふこんりふ六ねんに・こと
をへてのち・きよもり・おくのゐんにまゐり・つやして・ねんじゆせられけるに・ゆめうつつとも・わかざるに・ひたひには・
四かいのなみを・たたみ・まゆには・しもをたれ・ふたまたなる・かせづゑにすがつたる・らうそう一にんいでさせ・たまひ・
きよもりにたいめんあつて・ややはるかに・おんものがたりあり・われこのやまに・みつしうを・ひろめて・としひさし・だいたふこんりふ・こと
をはつたり・てんがにまたも・さふらふまじさらむにとつては・ゑちぜんの・けひのやしろと・あきのいつくしまのやしろは・ともに・
りやうかいの・すゐじやくにて・わたられたまふ・なかにも・こんがうかいの・すゐじやく・ゑちぜんの・けひのやしろは・めでたうさかえて・
ましませども・たいざうかいのすゐじやく・あきのいつくしまのやしろの・はいゑして・ひさしくなきが・ごとくに・さふらふをこれをもまをし
て・しゆざうし・たまへかし・さだにもさふらはば・ごへんのくわん・かかいにおいては・てんがにならぶ・ものもあるまじ
きぞとて・たたれければ・きよもりふしぎのおもひをなし・ひとをつけてみせられければ・一ちやうばかりはみえたま
ひて・そののち・みえたまはず・つかひかへつてこのよし・まをしたりければ・きよもりたつとや・まことの・だいしにて・まし
ましけるぞや・そのぎならば・しやばせかいのおもひいで・ひとつせんとて・だんにかへり・りやうかいの・まんだらを・すみゑに
こそ・うつさせられけれ・さいまんだらをば・じやうめうほういんとまをす・ゑしに・うつさせらる・とうまんだらをば・きよP129
もりみづからかかれけるが・なかにも八えふの・ちうぞんのはうくわんをば・かうべよりちを・いだしてかかれける・と
ぞうけたまはる・きよもりみやこに・のぼり・ゐんのごしよに・まゐつて・このよしをそうし・まをされたりければ・ほうわう・
なのめならず・ぎよかんあつて・さらばあきのいつくしまをも・しゆざうせよやとて・あき・すはう・ながと・三ケこくへ・また
にんを・のべられけり・きよもりうけたまはつて・いつくしまにわたり・とりゐを・たてかへ・やしろやしろをつくりあらためらる・百八十
けんのくわいらう・ことゆゑなうとげてのち・きよもり・みやうじんのおんまへにまゐり・つやして・ねんじゆせられけるに・ゆめうつつとも・
わかざるに・ごはうでんの・みと・おしひらき・うちより十二三ばかりなる・よにうつくしきどうじ一にん・いで
させたまひ・やや・なんぢ・てんがをばこれをもつて・をさむべしとて・ぎんにて・ひるまきしたる・しらえのこなぎなたを
たまはるとみて・うちおどろいてみたまへば・すなはちまくらにぞさふらひける・きよもりやがてかぐらを・まゐらせられければ・みやうじん
ないしに・のりうつらせたまひて・なんぢしれりや・わすれりや・あるひじりをもつて・いはせしことは・ただしあくぎやうあら
ば・しそんまでは・かなふまじとて・みやうじんあがらせたまひけり・ありがたかりしおんことなり・おなじき・十二ぐわつ・
十六にちに・しゆじやうごさんじよへ・ぎやうかうなる・やがてくわんかうとぞ・きこえし・おなじき・廿かのひ・わうじしんわうの・
せんじをかうぶらせたまふには・こまつのないだいじんしげもりこうとぞ・きこえしごさんありてのち・わづか卅よにち・ひといつしか
なりとぞまをしける・ひかずふればちうぐうだいりへ・まゐらせたまふ・さるほどにとしくれて・ぢしようも・三とせになりにけり
少将の都がへり 311 P130
ぢしよう三ねん・しやうぐわつ十かのひ・たんばのせうしやうなりつね・へいはんぐわんやすよりにふだうと・二にんは・ひぜんのくに・かせのしやうをたつ
て・みやこへとは・いそがれけれども・よかんもいまだはげしくて・かいじやうもいたくあれければ・ふねのうちにてひかず
をおくり・きさらぎ廿かごろにぞ・びぜんのこじまには・つきたまひける・それより・ちにわたり・ありきの・べつしよにたづね
いり・ちちだいなごんどのの・すみたまひしところにおはして・みたまふに・あやしのしづが・いへなれば・むぐらしげりてかきをと
ぢ・まつのはつもりて・のきをうづむ・しばひきむすぶ・いほのうちこのはかきしく・やどなれや・ふるきしやうじ・たけ
のはしらに・かきおきたまひし・ふでのすさみを・みたまふになみだせきあへたまはず・あんげん三ねん七ぐわつ廿かのひ・しゆつけ・おなじ
き廿五にちに・のぶとしげかうとも・かかれたり・さてこそげんざゑもんのじよう・のぶとしがまゐりたるをも・しられけれ・そ
ばなるかべには・三ぞんらいがう・たよりあり・九ほんわうじやう・うたがひなしとも・かかれたり・さすがこのひと・こんぐじやうどの
のぞみも・おはしけるにやと・かぎりなき・なげきのうちにもいささか・たのもしくぞおもはれける・あはれひとの・のちの
よまでの・かたみには・しゆせきにすぎたる・ものあらじ・ろてんかわかず・ふぜいなほおなじ・ぬしはおはせ
ねども・はかなきあとは・うせざりけり・かきおきたまはずば・いかでか・これをも・しるべきとて・やすよりにふ
だうと・二にん・よみてはなき・なきてはよみぞ・したまひける・そののちはかを・たづねたてまつるに・ひがしへ十よちやう・ゆきてまつの
ひとむらあるなかに・かひがひしう・だんをつきたることもなく・そとば一ぽんも・みえざりけるに・せうしやうつちのす
こしたかきところに・そでかきあはせ・いきたるひとにむかひて・ものをまをすやうに・かやうにこのよにも・わたらせたまはず・とほ
きおんまもりとならせ・たまひたるおんことをば・しまにてかすかにつたへうけたまはつてはさふらへども・こころにまかせぬうきP131
みなれば・いそいでまゐることもさふらはず・なりつねみやこをいで・はるばるとやへの・しほぢをこぎすぎて・かかるうきしま
にながされ・一にちへんしながらふべしとは・ぞんぜざりしかども・つゆのいのちきえやらで・いまめしかへさるるうれし
さも・さることにてはさふらへども・おなじうは・いきてこのよにわたらせ・たまふをみまゐらせても・さふらははばこそ・
いのちながらへたるかひもさふらはめ・これまでこそいそがれつれ・いまよりのちは・いそぐべしとも・おぼえずとて・か
きくどいてぞ・なかれける・まことにぞんじやうのときならば・まづこだいなごんどのこそ・いかにやとものたまふべきに・しやう
をへだつるならひほど・くちをしかりける・ものあらじこけのしたには・たれかはこたふべき・ただあらしにさわぐまつのひび
きばかりなり・そのよはやすよりにふだうも・ふたりはかのまはりを・ぎやうだうし・あけければ・はかにだんゆゆしう・つかせつつ・くぎ
ぬきしまはさせ・はかのまへには・かりやをうつて・そうをあまたしやうじたてまつり・七か七よがあひだ・ふだんねんぶつまをさせ・
わがみはきやうをぞ・かかれける・けちぐわんには・おほきなる・そとばをたて・くわこしやうりやう・しゆつりしやうじ・しようだいぼだい
と・かきとどめ・ねんがうぐわつぴしたには・かうしなりつねとぞ・かかれたる・三ぜ十ぱう・ぶつだの・しやうしゆも・あはれ
みたまひ・ばうこんそんれいも・いかにうれしとおもはれけむ・としさりとしきたれども・わすれがたきは・ぶいくのむかしのおん・ゆめ
のごとく・まぼろしのごとし・つきがたきは・れんぼのいまのなみだなり・されば・あやしの・しづやまがつの・こころなきもの
までも・いかなるののすゑ・やまのおくにも・こをば・もつべかりける・ものかなとて・みななみゐて・そでを
ぞぬらしける・そののちせうしやう・はかのまへに・かしこまり・いましらばらくもさふらひて・ねんぶつのこふをも・つむべうさふらへども・
みやこにまつらんひとの・おぼつかなくも・さふらふらんに・またこそまゐりさふらはめと・まうじやに・いとままをしつつ・なくなくそこをP132
ぞ・たたれける・さこそは・だいなごんも・くさのかげにて・なごりをしうや・おもはれけむ・おなじき・三ぐわつ
十六にちに・せうしやうとばにつきたまふ・だいなごんの・さんざうすはまどのとて・とばにあり・すみあらして・としへにけれ
ば・ついぢはあれども・おほひもなく・もんはあれども・とびらなし・にはにたちいりみたまへば・じんせきたえて・くさふかく・いけ
のみぎはを・みまはせば・あきのやまの・はるかぜに・しらなみしきりに・おりかけて・しゑん・はくおう・せうえうす・けうぜし
ひとの・こひしさに・つきせぬものは・なみだなり・いへはあれども・らんもんおちて・しとみ・かうしも・たえてなし・ここは・
だいなごんどのの・すみたまひしところ・このしやうじをば・かうこそありたまひしか・このとをば・とこそたてたまひしか・この
つまどをば・かうこそいであひたまひしか・このきをば・みづからこそ・うゑおき・たまひしかなんど・ちちのこ
とを・ことにふれて・よにも・なつかしげにこそ・のたまひけれ・やよひ・なかの六か・なれば・はなはいまだ・な
ごりあり・やうばいとうりの・こずゑこそ・をりしりがほに・いろいろなれ・むかしのあるじは・なけれども・はるをわすれぬ・はな
なれや・せうしやうはなのもとに・たちよつて・とうりものいはず・はるいくばくかくれぬ・えんかあとなし・むかしたれかすみし
ふるさとのはなのものいふよなりせば・いかにむかしのことをとはまし・
このふるきしいかを・えいぜられけるにぞ・やすよりにふだうも・そぞろになみだを・ながしつつ・すみぞめのそでをぞ・ぬらし
ける・くるるほどとは・おもはれけれども・なほもなごりの・をしければ・よふくるまでこそ・おはしけれ・あ
れたるやどの・ならひにて・ふるきのきの・いたまより・もるつきかげはくまぞ・なき・けいろうのやま・あけな
んとすれども・いへぢは・なほもいそがれず・さてしも・あるべきならねば・なみだをおさへて・いでられけり・あけP133
ければ・みやこより・めんめんに・のりものども・とばのへんまで・つかはされたりけれども・やすよりにふだうは・せうしやうの・
おんなごりををしみたてまつつて・ひとつくるまにのり・七でうかはらにて・ゆきわかれけるが・たがひに・なごりを・をしみつつ・
しばしは・はなれも・やらざりけり・まことにをしかるべし・たびびとが・ひとむらさめのすぎゆくとき・いちじゆのもとに・たちや
どり・ゆきわかるるだに・なごりは・したふ・ならひなり・はなのもとの・はんじつのかく・つきのまへの・一やの
とも・だにも・なごりはをしき・ならひなり・いはんやこのひとびとは・このみとせがあひだ・うかりししま・なみのうへ・ふねのうち
の・ともなれば・一ごうしよかんの・ちぎりにて・ぜんせのはうえんも・あさからずや・おもはれけん・さるほどに・やすより
にふだうは・ひがしやま・さうりんじへとて・ゆきければ・せうしやう・六はらへ・いりたまふ・せうしやうの・ははうへりやうぜんにおはしけ
るが・きのふよりさいしやうのもとに・おはして・またれけるが・せうしやうのいりたまふを・ただひとめみたまひて・いのちだに
あればと・ばかりにて・またひきかづきてぞ・なかれける・さいしやうのうちの・じやうげなんによ・みなひとつところに・さしつ
どひ・よろこびの・なみだをば・ながしける・せうしやうのめのとの・六でうが・くろかりし・かみもしろくなり・きたのおん
かたの・さしもはなやかなりし・おんありさまも・このみとせがあひだの・つきせぬ・おんものおもひに・やせくろませ・
たまひて・そのひととも・みえたまはず・またせうしやうの・ながされ・たまひしとき・三さいになられける・をさなきひとも・
ことしは・五さいに・なられける・はるかに・おとなしうなつて・かみゆふばかりにぞ・みえられける・また
きたのかたの・かたはらに・みつばかりなる・をさなきひとの・おはしけるを・せうしやうあれは・いかにと・のたまへ
ば・めのとの・にようばう・これこそと・ばかりにて・なみだに・むせびければ・せうしやうまことや・ながされしとき・たいないにありP134
しを・こころもとなう・みすてて・くだりしが・さては・べちのことなう・むまれ・そだちたることの・ふしぎ
さよどぞ・のたまひける・そののち・せうしやうふたたび・きみに・めしつかへて・さいしやうの・ちうしやうまで・あがられけると
ぞ・きこえし・さるほどに・やすよりにふだうは・ひがしやま・さうりんじの・やどに・おちついて・まづとどめ・おきたりける・
ははのゆくへを・とひけるに・ちかきあたりのひとの・まをしけるは・さんさふらふそれは・きよねんのはるのころまでは・これに
おんわたり・さふらひしが・それもなほ・ひとめをつつませ・たまひて・一でうのきた・むらさきののへんに・しのうで・おんわたり
さふらひしが・おんのぼりのよしを・ききたまひて・なのめならず・よころばせ・たまひしが・すぎにし・きさらぎの・ころより・
おんかぜの・ここちとやらん・きこえさせ・たまひしが・つひに・むなしう・ならせたまひて・けふははや・いつかな
りとぞ・まをしける・やすよりにふだう・なみだをながし・われひぜんの・かせのしやうのにて・としをおくり・びぜんのありきの・べつしよ
にて・ひかずをだにも・おくらずば・などか・いま一どははを・みたてまつらざるべき・さだめなき・よのならひなり・
一しやうはこれ・ゆめのごとし・たれか百ねんの・よはひをごせん・ばんじは・みなむなし・いづれか・じやうぢうの・おもひ
をなさんと・えいじつつ・ふるき・のきのいたまより・もるつきかげの・おぼろなるをみて・なくなく・よみたりけるとぞ
ふるさとののきのいたまにこけむして・おもひしほどはもらぬつきかな
と・くちずさみつつ・やがてそこに・ろうきよして・うかりしむかしを・おもひやり・はうもつしふといへる・もの
がたりを・つくりけるとぞ・うけたまはる・あはれなりし・ことどもなりP135
蟻王が島くだり 312
なかにも・ほつしようじの・しゆきやう・しゆんくわんそうづのわらはに・ありわう・かめわうとて・さふらひけるが・ともにしうのことを
ぞ・かなしみける・なかにも・かめわうは・そのおもひの・つもりにや・ほどなう・はかなくなりにけり・なほもうき
よにありわうは・あはたぐちのへんに・しのうで・さふらひけるが・二にんのひとびとは・めしかへされて・のぼりたまひぬ・そうづ
一にん・しまにとどまりたまふと・きこえしかば・もしやと・とばのへんまで・ゆきむかうて・みけるに・まことに・二
にんのひとびとは・みえたまへども・わがしうは・みえたまはず・ひとにとへば・しまにとどまり・たまひぬとぞ・まをしける・
わらははんぐわんにふだうの・そばちかうたちよつて・ことのしさいをとひけるに・やすよりにふだう・しまのありさまを・こまやかに・
かたりければ・いとどせんかたなく・かなしくて・つきせぬはなみだり・わらはわれ・みやこにて・かくものをおも
はんより・しまへたづねまゐらせてまゐり・かはらぬおんすがたをも・いまいちど・みもし・みえたてまつらばや・たとひ・またこの
よに・なきみと・なりたまひたりとも・おんこつをもとりて・たつときところに・をさめばやと・おもひければ・ひと
には・いはねども・ないないは・いでたちけり・そうづの・ひめぎみの・ならに・おはしければ・わらはならに・くだつて・ひ
めぎみに・まをしけるは・二にんのひとびとは・めしかへされて・のぼりたまひぬ・かみの一にん・しまにとどまらせ・お
はしますが・あまりに・あさましう・ぞんじさふらふ・かなはぬまでもしまへ・たづねまゐらせて・まゐらばやとこそ・ぞんじ
さふらへ・おんふみやさふらふと・まをしたりければ・ひめぎみ・なのめならず・よろこびたまひて・やがておんふみ・あそばしてぞ・たP136
うだりける・わらはひめぎみの・おんふみたまはつて・いきながら・めいどにおもむく・ここちして・おもひければ・よもゆるさ
じとて・おやにも・きやうだいにも・しらせずして・みやこのうちを・しのびつつ・まぎれいで・さつまがたへぞ・おもむき
ける・もろこしぶねのともづなは・うづき・さつきに・とくなれば・なつごろもたつを・おそしと・まちかねて・やよひのすゑに・
みやこをたつて・はるばると・やへのしほぢを・しのぎつつ・さつまがたへぞ・くだりけるわらは・さつまのちに・おち
ついて・しまへわたらんと・びんせんをこへば・ひとあやしめ・いしやうを・はぎとり・なんどしけれども・わらはすこし
も・こうくわいせず・ひめぎみの・おんふみばかりをこそ・ひとにしられじと・もとゆひの・なかにはいれたりけれ・とかくし
て・あきびとのふねに・びんせんし・しまにわたつて・みけるに・みやこにて・つたへききしは・ことのかずならず・たもなく・はたけ
もなく・むらもなく・またさともなし・たまたまあるものも・このどの・ひとには・にざりけり・いふことをも・ききしら
ず・わらはあるものの・そばちかうたちよつて・これにひととせ三にん・ながされたまひしが・二にんは・めしかへされて・のぼり
たまひぬ・一にんのこされおはします・ほつしようじの・しゆぎやう・しゆんくわんそうづの・ごばうの・おんゆくへや・しりたまひた
ると・とひければ・そうづとも・しゆぎやうとも・しつたらばこそ・へんじをもせめ・ただかしらを・ふつて・しらず
と・のみぞこたへける・そのなかに・すこし・こころえたるものの・まをしけるは・いざとよ・さやうのひとは・このへんに・あ
りしが・それも・このちかうよりは・いづちへか・ゆきぬらん・ゆきがた・しらずとぞまをしける・わらはさては・こ
のよに・なきひとと・なりたまひたるにこそと・おもひければ・いとどせんかたなく・かなしみて・つきせ
ぬものは・なみだなり・もし・やまのかたにもや・おはすらんとて・いまだしらぬ・みやまへこそ・わけいりけれ・みねP137
によぢ・たににくだれども・せいらん・ゆめを・やぶつて・そのおもかげも・みえず・はくうんあとを・うづめて・ゆききのみちも・
さだかならず・なほもはまのかたの・おぼつかなさに・あるときの・まだあした・わらははまのかたへと・ゆくほどに・ここに
もと・ほうしなりけりと・おぼしくて・かみは・そらざまに・おひのぼり・よろづのもくづ・とりついて・ひとへに・
やぶをいただけるがごとし・みにきたるものは・つぎめあらはれ・かはゆたえ・きぬ・ぬののわけもみえ
ぬが・かたてには・なましきうををもち・かたてには・あらめいそものをもつて・ずゐぶんさきへと・いそげども・は
かゆかず・ただひとところに・よろよろとしてぞ・いできたる・わらはわれ・みやこにておほくの・こつかいにんを・みつれども・
かやうのものは・いまだなし・ぢごく・がき・三あく・四しゆは・しんざん・だいかいの・ほとりに・ありと・ほとけののべ
ときたまふなるをしらず・われいき・ながら・がきだうへ・まよひ・きたれるやらんとおもひ・やうやう・あゆみ
ゆくほどに・さすが・ひとのすがたに・みなし・ややものまをさうといへば・なにごとと・こたふ・わらはふしぎやこれ
こそ・わがいふことをも・ききしつたるよとおもひ・そばちかうたちよつて・これに・ひととせ・三にん・ながされたまひ
しが・二にんは・めしかへされて・のぼりたまひぬ・一にんのこされ・おはします・ほつしようじの・しゆぎやう・しゆんくわん
そうづの・ごばうの・おんゆくへや・しりたまひたると・とひければ・わらはこそ・みわすれたりけれども・そうづはなにか
は・みわすれ・たまふべきなれば・いかに・ありわうよ・われこそ・それよと・のたまひもあへず・てにもちたまへる・
あらめ・いそものを・なげすてて・すなごのうへに・たふれふし・やがてきえいりたまひけり・わらはそうづを・かかへ
たてまつつて・われみやこより・はるばると・これまで・たづねまゐらせて・まゐりたるかひもなく・いかにかかる・P138
うきめをば・みせさせたまひさふらふやらん・たとひ・ぢやうごふにて・わたらせたまひさふらふとも・しやうあるみこゑをも・いまいちど・き
かさせたまへと・やうやうに・かなしみければ・そうづさすが・ぢやうごふならねば・またいきかへり・たまひけ
り・わらはまゐつてさふらふ・ありわう・まゐりてさふらふと・まをしたりければ・そうづいきのしたにて・のたまひけるは・われこのしま
に・ながされてのち・こひしきものどもを・ゆめにみるときもあり・またまぼろしにたつときもありしが・それもこの・ちか
うよりは・みもよわり・こころもつきはてて・さやうのゆめ・うつつをも・おもひ・わかぬなり・さればただいま
また・なんぢがくだりたるをも・ただゆめとのみこそ・おもへ・もしこのことの・ゆめならば・さめてののちを・いかが
せん・わらは・これはうつつにてさふらふ・ふしぎや・このおんありさまにても・ただいままでも・おんいのちののびさせ・たま
ひたることの・ふしぎさよと・まをしければ・そうづ・のたまひけるは・われこのしまに・ながされてのち・たんばのせうしやうの・
しうと・へいさいしやう・のりもりのしよりやう・ひぜんの・かせのしやうより・いしよくをつねは・おくられしかば・その・はぐくみにて・
ありしが・二にんのひとびとに・わかれてのち・やがていかにも・なるべかりし・みの・たんばのせうしやうの・よしなき
ことどもを・おもひたてて・みやこのつてを・まてなんど・のたまひしほどに・もしやと・おろかに・たのみつつ・
いままでかくてありつるなり・このしまには・ひとのしよくじたえて・なきところなり・やまにいりては・いくらもある・ゆわう
と・いふものをとつて・あきびとにあひものに・かへなんどして・すぎしが・それも・このちかうよりは・みも
よわり・ちからも・つきはてて・さやうのわざも・かなはぬなり・かやうにひの・のどかなるときは・なぎさにいで・た
またまこえたる・つりびとに・あひ・ひざをかがめ・てをあはせ・なましきうをを・こひ・なぎさにいくらも・うちP139
よせける・あらめ・いそものをとつて・つゆのいのちを・いそのこげぢに・かけたるなり・さらでは・うきよを・わたる・
よすがをば・いかにしつるとか・おもふ・これにて・なにごとをも・いふべけれども・いざわがいへへと・のたまへ
ば・わらは・ふしぎや・あのおんありさまにても・わがいへとて・もちたまひたる・ことのふしぎさよとおもひ・や
うやう・あゆみゆけども・そうづさすが・あゆみも・やりたまはねば・わらはが・かたに・ひつかけて・をしへに・まかせ
て・ゆくほどに・あるやまのふもとに・二にんのひとびとの・つくりおかれたりし・あしやの・まつのえだを・はしらにし・よりたけ
をけたうつばりにわたし・まつのおちば・あしのかればを・うへにも・したにも・ひしと・とりかけられたりけるを・これこ
そ・わがいへよとて・たちいつて・ふされけれども・いづくに・あめかぜの・たまるべしとも・みえざりけり・わら
は・いとほしや・このひとの・みやこにおはせしときは・ほつしようじの・じむしきとて・八十よケしょの・しやうゑんを・つかさど
り・たまひしかば・むなかど・ひらかどの・うちにして・おほくの・しよじう・けんぞくどもに・ゐねうかつがう・せられてこそ・お
はせしに・ごふにさまざまあり・じゆんしやう・じゆんげん・じゆんごごふと・いへりされば・このひとの・いちごのあひだ・もちゐ・た
まへるところの・ざいはう・ひとへに・だいがらんの・じもつ・ぶつもつ・ならずと・いふことなし・されば・しんせ・むざんの・こ
とわりに・こたへて・こんじやうにて・ぜんごふをかんじ・たまへるかと・おぼえたり・そうづいまは・まことにうつつなりと・
おもひさだめて・のたまひけるは・われ・このしまに・ながされてのち・二にんのひとびとの・むかひのときも・いつさつをことづ
くる・ものもなし・されば・ただいままた・なんぢがくだりたるにも・おとづれの・なきは・よく・わがえん・ゆかり
のものどもは・一にんもみやこに・あとをとどめぬかと・のたまひければ・わらはさんさふらふ・きみにし八でうどのへ・おんいでののち・つゐふくP140
のくわんにんどもが・まゐりむかひさふらひて・てんでんの・ごえんじやたちを・ここかしこにて・うしなひたてまつりさふらひぬ・きたのおんかたば
かりこそ・わかぎみひめぎみ・ひきぐし・まゐらつさせたまひて・くらまに・しのうで・わたらせ・おはしまし・さふらひし
が・わらはつねはまゐりさふらふに・わかぎみは・いかにありわうよ・ちちのわたらせたまふなる・きかいがしまとかやに・われつれてゆ
け・ぐしてゆけとて・まゐりさふらふ・たびごとに・むづからせ・おはしましさふらひつるが・このはるせけんに・わらは
べのし・さふらふなる・もがさとやらん・まをすことを・せさせおはしましさふらひつるが・すぎにしきさらぎ九かのひ・つひ
にむなしう・ならせ・おはしましさふらひぬ・きたのおんかたは・ひごろのおんおもひに・またこのことさへ・うちそひて・
おんなげきあさからず・ましましさふらひつるが・それも・おなじき・やよひ二かのひ・つひに・むなしう・ならせ・お
はしましさふらひぬ・いまはひめぎみばかりこそ・ならどのに・むかへられ・まゐらつさせたまひて・おんわたりさふらへ・そのおん
ふみはさふらふとて・もとゆひのなかより・とりいでて・たてまつる・そうづひらいて・みたまへば・げにもわらはが・まをすにたが
はず・かかれたり・いまははや・わかにもおくれ・さふらひぬ・またははうへにさへ・わかれまゐらせ・さふ
らひて・たうじは・ならの・をばごぜの・おんもとに・むかへられ・まゐらせて・こそさふらへ・などや・
二にんの・ひとびとは・かへりのぼりたまふに・一にんしまに・とどまらせ・おはしまし・さふらふやらん・あはれ・
によしほど・かなしかりける・ものあらじ・われ・をのこごのみならば・この・わらはに・ぐせられて・など
か・おんむかへにまゐらでは・さふらふべき・こんどはこのわらはを・ともにて・いそぎのぼらせ・たまへなんどぞ・かかれ
たる・そうづ・ひめはみしときよりも・てもはしたなく・ことばつづきも・おとなしけれども・ただし・はかないP141
ことをも・かいたるものかな・われこころに・まかせたる・みならば・なにしにか・かくうきしまにひとりのこ
り・とどまつて・うきめをみんとも・おもふべき・こんどは・このわらはを・ともにて・いそぎのぼれなんど・かい
たることの・はかなさよ・ひめはことしは・十二か・三になるかとこそ・おもへと・のたまへば・わらはも・いちぢやう
の・おんとしをば・しりまゐらせさふらはずと・まをす・そうづ・さて・このふみの・ところどころの・もじぎえの・したる
は・いかにと・のたまへば・わらはそれは・さぞおんわたりさふらふらん・あのおんふみ・あそばすとて・ひとふで・あそ
ばしてはうつぶし・ひとふであそばしては・うつぶし・なのめならず・むづからせ・おはしまし・さふらひつるが・
さては・おんなみだの・かからせ・たまひたるらんにては・さふらふらんと・まをせば・そうづも・なみだにむせばれけり・そう
づ・のたまひけるは・われこのしまに・ながされてのちは・つきひの・かはりゆくをも・しらず・はなさき・もみぢて・
ちるをもつて・はる・あきを・しり・あつきをもつて・なつをわきまへ・さむきをもつて・ふゆをわきまへ・びやく
げつ・こくげつの・かはりゆくをもつて・一つき・三十にちを・わきまふ・しづかに・ゆびを・をつて・かぞふれば・は
やみとせに・なるとこそ・おもへ・われにし八でうへ・いでしとき・われもゆかんと・したひしを・やがて・か
へらんずるぞとて・とどめおきたりし・ことの・ただいまの・やうに・おぼゆるぞや・わかは・そのとき・七に
なりしかば・ことしは・九にこそ・ならんずらめ・おやとなり・ことなり・ふうふの・ちぎりを・こむる
も・このよ・ひとつの・ことならず・されば・それらが・さやうに・なりけるをば・など・ゆめ・まぼろ
しにも・みえざりけるぞや・ひとのおやの・こころはやみに・あらねども・こをおもふ・みちにまよふとも・いまこP142
そ・おもひしられけれ・されば・それらを・みんとおもふ・ゆゑにこそ・いまいちど・みやこへも・のぼりたか
りつれ・それらが・さやうに・なりたらんに・おいては・きらくのことをも・おもはぬなり・ただし・ひめがことば
かりなり・それも・いきたるみは・ともかうも・してこそ・すごさんずらめ・すずり・すみ・ふでも・なけ
れば・へんじには・およばぬなり・しまのありさま・わがことをば・なんぢがみるやうに・かたるべし・またひとし
もこそ・おほきに・なんぢが・これまで・はるばると・たづねくだりたる・こころざしのほどこそ・かへすがへすも・しんべうなれ・
またいつまでか・ながらへて・なんぢに・うきめをも・みすべきとて・おのづからの・しよくじを・とどめて・いつ
かう・ごせ・ぼだいのつとめをのみ・したまひけるが・わらはしまにくだつて・三十よにちと・まをすには・そうづ・ねぶるが・ご
とくにて・つひに・はかなく・なりたまふ・わらは・あとにふし・まくらにつき・かなしみけれども・かひぞなき・おな
じくは・ごせのおんとも・つかまつりたくは・さふらへども・みやこにのぼり・ひめぎみに・このよしまをし・ごぼだいをこそ・とぶ
らひ・まゐらせさふらはめとて・こころのゆくゆく・なきあきて・まつのおちば・あしのかれはを・とりおほひ・もし
ほの・けぶりと・たきあげ・けぶりすめば・こつを・ひろひ・くびに・かけ・またあきびとの・ふねに・びんせんして・九こく
の・ちにこそ・つきにけれ・わらは・みやこに・のぼり・ならに・くだつて・そうづの・ゐこつを・ひめぎみに・たてまつれば・むね
にあて・かほにあて・かなしみ・たまへど・かひぞなき・すずり・すみ・ふでも・さふらはねば・ごへんじには・およばせ
たまひさふらはず・なにごとも・おぼしめしおく・おんことどもをば・むねのあひだに・とどめさせ・おはしまし・さふらふやらん・いま
は・たしやうを・へだて・くわうごふを・おくらせたまひさふらふとも・こんじやうにては・あひまゐらつさせ・たまはんこと・ありがP143
たし・いまは・ごぼだいをこそ・とふらひまゐらつさせ・たまはんずれ・なんどまをせば・ひめぎみ・さてはとて・とし
十三にて・さまをかへ・ならの・ほつけじに・おこなうて・ちちのごせをぞ・いのられける・わらはも・そうづの・
ゐこつを・くびにかけ・かうやへ・のぼり・おくのゐんに・をさめつつ・れんげだににて・ほうしになり・やまやま・てら
でら・しゆぎやうして・しうのごせをぞ・いのりける・かやうに・ひとの・おもひの・つもりける・へいけの・すゑこそ・おそろしけれ
辻風の沙汰(あひ) 313
おなじき五ぐわつ・十二にちの・むまのこく・ばかりに・つじかぜ・おびただしう・ふきて・じんをく・おほく・てんだうす・かぜは・
なかみかど・きやうごくより・おこつて・ひつじさるを・さして・ふきけるに・むなかど・ひらかど・ふきぬきふきぬき・三ちやう・五ちやうを・
へだてつつ・なげすて・なげすて・しけるうへは・けた・はしら・なげしなどは・こくうに・あがり・ひはだぶき・いたの
たぐひは・ふゆの・このはの・かぜに・みだるるが・ごとし・ひともあまた・いのちを・うしなひ・ぎうば・六ちくのたぐひ・
かずをつくして・うちころさる・これただごとに・あらずとて・やがて・じんきくわんにて・みうらあり・てんかの
さわぎと・うらなひまをす・ただし・てうかの・おんだいじには・あらず・ことには・ろくをおもんずる・だいじん・百にち
のうちの・つつしみ・べつしては・へいくわく・さうぞくして・ききん・えきれいの・うれひとぞ・じんぎくわん・おんやうれうともに・うらなひまをしけ
る・そのころ・こまつの・ないだいじんしげもりこう・このよしを・ききたまひて・やがて・くまのさんけいとぞ・きこえし・おとど・P144
ほんぐう・しようじやうでんの・おんまへに・つやして・よもすがら・けいびやく・したまひけるは・ちちにふだうしやうごくの・ていをみ
さふらふに・あくぎやくぶだうにして・ややもすれば・きみをなやまし・たてまつる・しげもり・その・ちやうしとして・しきりに・
いさめをいたすといへども・みふせうのあひだ・かれもつて・ふくようせず・そのうんめいをはかるに・いちごのえいぐわ・なほあやうし・
なまじひに・しげもり・そのときに・いたつて・よにふちんせんこと・あへて・りやうしん・かうしのほふに・あらずや・しえふ・
れんぞくし・みをあらはし・なをあげんことかたし・しかじなを・のがれ・みをしりぞいて・こんじやうのめいばうを・なげ
すてて・らいせのぼだいを・もとめんには・ただし・ぼんふはくち・ぜひに・まどへるがゆゑに・こころざしをほしいままにせず・
ねがはくはごんげん・こんがうどうじ・しそんはんえい・たえずして・つかへて・てうていに・まじはるべくんば・ちちにふだうしやうごくの・
あくしんをやはらげて・てんかのあんぜんを・えしめたまへ・もしまたえいえう・いちごをかぎつて・こうこんはぢに・およぶべくん
ば・まづしげもりがうんめいを・つづめて・らいせのくりん(イ苦患)を・たすけたまへ・りやうケのぐぐわん・ひとへに・みやうじよをあふぐと・
かんたんをくだいて・いのりまをされけれども・ひとこれをしりたてまつらず・あるよ・おとどの・おんみより・とうろうのやうなるも
のいでて・はつときえけるを・けんしよのものどもみとがめ・たてまつりけれども・おそれて・ひとこれを・まをさず・おとど
の・ごけかうのとき・いはたがはを・わたられけるに・ちやくしごんのすけせうしやうこれもり・なつのことなりければ・じやうえのし
たにうすいろの・きぬを・きたまひて・なにとなう・かはのみづにたはぶれ・たまひけるが・きぬのぬれて・じやう
えにうつりたるが・ひとへにいろのごとし・ちくごのかみさだよし・このよしをみとがめたてまつつて・あのきんだちのめされてさふらふ・
ごじやうえの・なにとやらん・いまはしう・みえさせたまひてさふらふ・いそぎめしかへらるべうもや・さふらふらんとまをしP145
たりければ・おとど・しげもりが・しよぐわんはや・じやうじゆしぬとや・おもはれけん・あへてそのじやうえ・あらたむべからずと
て・べつして・いはだがはより・よろこびのほうへいを・ほんぐうへこそたてられけれ・ひとあやしとおもひたてまつりけれども・あへてその
こころをえず・さればにや・このきんだち・ほどなくまことのいろに・なられけるこそふしぎなれ・おとどの・ごげかうののち・
いくばくのひかずを・へずして・おんやまひつきたまひしかば・ごんげんはや・ごなふじゆあるにこそとて・おのづから
れうぢをもくはへられず・またきたうをもいたされず・そのころ・にふだうしやうごくは・ふくはらに・おはしけるが・このよしをきき
たまひ・いそぎしやうらくしたまひて・まづゑつちうのぜんじもりとしを・もつて・のたまひつかはされけるが・しよらう・ひびにそひ
て・だいじなるべきよし・そのきこえあり・このほど・そうてうより・すぐれたる・めいい・ほんてうにわたりたるよしをき
く・をりふしこれをよころびとす・いそぎかれをめししやうじて・いれうを・くはへしめたまへとなり・おとどよにもくるしげに
てふされたりけるが・やうやうに・たすけおこされ・もりとしを・おんそばちかうめして・のたまひけるはまづ・
いれうのことかしこまつて・うけたまはりぬとまをすべし・ただし・なんぢもきけ・むかし・えんぎの・せいだいはさばかりのけんわうにて・
わたらせたまひたりしかども・いこくのさうにんを・わうじやうのうちへ・いれられたりしことをば・けんわうの・おんあやまち・または・
わがてうのはぢとこそ・まをしつたへたれ・いはゆる・しげもりなんどが・みとして・このありさまにて・いこくのいしに
まみえんこと・いかでか・てうについてそのはばかりの・あひのこらざるべき・むかしかんのかうそは・三じやくのつるぎ
をひつさげて・てんがををさめたまひしに・あるとき・くわいなんのけいほを・うちしとき・りうしにあたつて・きずをかう
ぶる・きさき・りよたいこうりやういをめして・これをみせしむるに・いのいはく・このきずぢしつべし・ただし五十こんのきんP146
をたまはつて・ぢせむとなり・かうその・のたまはく・われむかし・まぼりのつよかりしときは・おほくのや
に・あたりしかども・しすることをえず・いまは・うんすでにつきぬ・いのちはすなはち・てんにあり・へんじやくといふとも・
なにのせんかあらん・しからずば・また・きんををしむに・にたりとて・五十こんのきんをいしにたうで・つひにぢ
せられず・せんげんみみにあり・いまもつてこれをかんしんす・しげもりいやしくも・きうけいにつらなり・三たいにのぼる・その
うんめいを・はかるに・もつててんしんにあり・なんぞてんしんをさつせずして・いれうを・おろかにいたはしうせ
んや・しよしんもし・ぢやうごふたらば・れうぢをくはふとも・えきなからんか・しよらうまた・ひごふたらば・れうぢを・くは
へずとも・たすかるむねさふらふべし・ただぢやうごふのやまひをぢするに・なほたへざるむねあきらけし・かのきばがいじゆつを・
よけずして・だいかくせぞんめつどを・ばつだいかのほとりに・となへたまひき・これひとへに・ぢやうごふのやまひをぢするに・なほいや
さ・ざることわりを・しめさんがためなりき・ぢするはぶつたいれうするはきばなり・しかるに・しげもりがみ・
ぶつたいにあらず・めいいまた・かのきばにおよぶべからず・かの四ぶのしよをかかがみて・はくれうにちやうずといふとも・い
かでかうだいのゑしんを・くれうせん・たとひ五きやうのせつは・つまびらかにして・しゆびやうを・いやすといふとも・あにせんぜのごふ
びやうをぢせんや・もしいじゆつによつて・ぞんめいあらば・ほんてうのいだう・なきににたり・いじゆつまた・かうげんなくん
ば・たいめんなんの・せんかあらん・なかんづくほんてうの・だいじんほどのものの・このありさまにて・いこくのいしにまみえ
んこと・かつはくにのはぢ・かつはみちのれうし(イれうち)なり・たとひしげもりがいのちは・ばうすといふとも・いかでかくにのはぢを・
おもふこころをぞんぜざらんや・せんずるところこのむねをまをすべしとぞ・のたまひける・もりとしかへりまゐつて・このよしまをしP147
たりければ・にふだうしやうごくもつてのほかに・おどろきたまひて・むかしよりおほくの・だいじんはありつれども・これほどま
でくにのはぢを・おもふだいじんはいまだなし・くににさうおうせぬ・だいじんにてこのたびさだめて・うせんず・こはいかがせ
んとぞ・さわがれける・おなじき七ぐわつ・廿七にちに・おとどしゆつけしたまひて・ほうみやう・せうくうとぞ・なのられける・
おなじき・八ぐわつついたちのひ・おとどつひにかうじたまひぬ・おんとし四十三・りんじうしやうねんとぞきこえし・およそこのおとどの・うせたま
ひけることは・いつかうへいけのうんめいのすゑに・なるのみならず・よのためもかならずあしかりなん・にふだうしやうごくの・
さしもよこがみをやられたりしをも・このおとどこそ・やうやうになほし・なだめられしか・こはいかがせんとぞ・
たけのひとびとも・さわがれける・いまはおんおとと・うだいしやうむねもりきやうの・おんかたざまのひとばかりこそ・みよはさだめてたい
しやうどのへぞ・まゐらんずらんとて・よろこびあへるもおほかりけり・ひとのおやの・こをおもふならひおろかなるが・
さきだつだにもおんあいのみちは・かなしきぞかし・いはんやこのおとどは・たうけのとうりやう・たうせいのけんじんにておはしけれ
ば・いへのすゐびといひ・おんあいのわかれといひ・かなしんでも・なほあまりあり・およそこのおとどは・ぶんしやううるはしう
して・こころにちうをぞんちして・ことばにとくをかねたまへり・さればよには・りやうしんをうしなへることを・なげき・いへに
はまた・ぶりやくの・すたれぬることを・かなしめり
無紋かねわたし 314
およそこのおとどは・みらいのことをも・かねてよくさとりたまへるひとなり・そのゆゑは・わがてうに・いかなる・だいぜんごんを・P148
したりと・いふとも・しそんあひつづいて・とぶらはれんこと・ありがたし・されば・いこくに・いかなることをもして・
わがごせ・とぶらはればやと・おもはれければ・さんぬるあんげんのころほひ・ちんぜい・はかたより・めうでんとまを
す・せんどうを・めしよせ・三千五百りやうの・こがねをたうで・これ五百りやうをば・なんぢにたぶ・いま三千りやうをば・そうてうに
もつてわたり・千りやうをば・いわうざんの・そうにひき・二千りやうをみかどへ・たてまつつて・でんだいをながく・いわうさんへ・
まをしよせ・わがごせとぶらはせよと・のたまへば・めうでんかけばくも・かたじけなくおもひたてまつり・かしこまつて・うけたまはり・
やがて・ちんぜいのはかたにくだり・もろこしぶねのともづなを・とくほどこそありけれ・ばんりのゑんらうを・しのぎつつ・
だいそうこくにぞ・つきにける・いわうざんのちやうらう・ぶつせうぜんじとくくわうに・あひたてまつつて・このよしまをしたりければ・ちやうらう・
おほきに・ずゐきかんたん・したまひて・やがて・千りやうをば・いわんざんの・てらのそうにひき・二千りやうを・みかどへたてまつつ
て・につぽんのだいふのまをさるるやうを・一々に・かきしるしまをされたりければ・みかど・なのめならず・ぎよかんあ
つて・五百ちやうのでんだいを・ながく・いわうざんへぞ・よせられける・につぽんのだいじんたひらのあそんしげもりこうの・ごじやうぜん
しよと・いのること・いまにありとぞ・うけたまはる・およそ・このおとどは・へいけのうんめいの・すゑになりなんことをも・かね
てより・しりたまへることあり・そのゆゑは・あるよおとどのおんゆめに・べうべうたるはまを・なぎさにそひて・ひがしへゆけば・
おほきなるとりゐたちたまへり・いづのみしまの・だいみやうじんの・おんとりゐかと・おぼしくて・とりゐのひがしのわきには・
ひといく千万といふ・かずもしらず・ならびゐて・ただいまきりたると・おぼしき・にふだうのくびを・たちのさきに
さしつらぬき・こなたかなたへ・もてあつかふ・おとど・あれはいかにと・おもひたまへば・これは・へいけP149
だいじやうのにふだうどののくびを・いづのくにのみしまの・だいみやうじんの・めしとらせたまひて・いづのくにの・るにん・さきのうひやう
ゑのごんのすけよりともに・たまはすなりとぞ・まをしける・おとど・さては・ちちのおんことにこそと・おぼしめし・たちよつ
て・みたまへば・まことに・ちちの・おんくびなり・おとど・こはいかにしつることぞやとて・いそぎとりゐのそとに・たちい
づるかと・おぼしくて・そのよのおんゆめ・さめにけり・おとどそののちは・うちも・まどろみたまはず・よろづこころ
ぼそう・あんじつづけて・おはしけるところに・ひがしのだいのつまどを・ほとほととたたくおとしけり・おとどあれな
にごとぞきけとて・ひとをいだされければ・びつちうのくにのぢうにん・せのをのたらうかねやすが・いささか・まをすべきことあつて・
まゐつてさふらふと・まをしければ・おとど・やがていであひ・たいめんしたまひて・このよははるかに・ふけぬらんに・そもなにごとぞ
とのたまへば・かねやす・おんまへのひとをのけ・おそばちかうまゐつて・まをしけるは・こんやにし八でうどのに・おんとのゐまをして
さふらひつれば・かかるゆめをみさふらふが・あまりにあさましさに・そのやうを・まをさんために・さてまゐりてさふらふとて・ただ
いま・おとどの・みたまひたる・ゆめに・すこしもたがへず・かたりければ・おとど・しげもりも・ただいまかかるゆめを・みつ
るぞとよ・さてはかねやすは・しげもりがこころにつうずるものにこそとて・おほきに・かんじたまひけり・つぎのひのまんだあさ・
ちやくしごんのすけ・せうしやうこれもり・さんだいのついでに・おとどの・おんかたにおはしたり・おとど・やがていであひたいめん・したま
ひて・いつよりも・けふのしゆつしこそ・いうにみえられさふらひしか・あれあれせうしやうどのに・さけすすめたてまつれとの
たまへば・ちくごのかみさだよしうけたまはつて・さけをすすめたてまつる・おとど・このさかづきをば・まづこそまをしたうさふらへども・おやに
てさふらへば・たまはつてまをさんとて・おとど三どののち・せうしやうどのにさされたり・せうしやう三どののち・さしおかれけれP150
ば・おとどいまひとつとのたまへば・せうしやうまたくまれけるとき・おとどあれあれ・せうしやうどのに・ひきでものせよと・のたまへば・
さだよしうけたまはつて・しやうぢのうちより・からにしきのふくろにいりたる・たちをひとふりとりいだし・せうしやうどのにたてまつる・せうしやうこの
たちを・ぬいてみたまへば・たうけちやくちやくにつたはれる・こがらすといふたちにもあらず・おとどしきよのとき・その
いへをつぐぬしのはいて・ともすなる・むもんといへるたちなりけり・せうしやういまこれほど・たうけよさかんなるに・
さだよしが・このたちをひくは・いつかうだいふを・じゆそしたてまつるにこそと・おもはれければ・さだよしがかたを・よに
もあしげに・みたまへば・おとどはやこころえたまひて・いかにやせうしやうどの・そのたちを・あしうなおもひたまひそ・そ
れは・にふだうどの・しきよのとき・しげもりはいてともせんとて・よういせさせてさふらへども・いまははや・しげもり・にふだうどのに・
さきだちたてまつりぬと・おぼゆるあひだ・さてそこへわたしたてまつるなり・あひかまへて・しげもりがなからんのち・ひとびとにも・にく
まれたまふなよ・またさぶらひどもをも・ふびんにしたまふべし・かやうにまをすや・さいごのことばにて・さふらはんずら
んとて・はらはらとなきたまへば・せうしやうどのも・なかれけり・おんまへにさふらひける・さぶらひどもも・みななみだをぞ・
ながしける・ただなにとなき・かねごととこそ・おもひしに・おとどほどなう・かうじたまへば・さてははや・ご
りんじうをも・かねてより・さとりたまへるひとにこそと・おもふにも・いよいよなみだぞ・すすみける
あひ 315
にふだうしやうごく・たのみきつたる・だいふには・おくれたまひぬ・よろづ・こころぼそくや・おもはれけむ・いそぎ・ふくはらに・P151
はせくだり・へいもんしてこそ・おはしけれ
法印問答 316
おなじき・十一ぐわつ七かのよの・いぬのこくばかりに・みやこには・だいち・おびただしう・うごいて・ややひさし・おんやう
のかみ・あべのやすちか・いそぎ・だいりに・はせまゐつて・そうもんしけるは・ただいまの・だいぢしん・せんもんのさすところ・そのつつしみ
かろからず・なかにもたうだう・三きやうのなか・こんききやうのせつを・みさふらふに・としをえては・としをいでず・つきをえては・
つきをいでず・ひをえて・ひをいでず・もつてのほかに・くわきふにさふらふとて・さうがんよりなみだを・はらはらと・ながしけれ
ば・てんそうの・ひとびとも・いろをうしなひ・きみも・えいりよを・おどろかさせ・おはします・わかき・くぎやうでんじやうびとや・
つぼねのにようばうたちは・けしからぬ・やすちかが・ただいまのなきやうや・されば・なにごとのあるべきとてぞ・わらひあはれ
ける・されども・このやすちかは・せいめい六だいの・あとをうけ・てんもんは・ゑんげんをきはめ・ずゐでうたなごころを・さすがごと
し・いちぢも・たがはざりしかば・よにはひと・さすのみことぞ・まをしける・されば・うこんの・ばばにして・
いかづちのおちかかりたりしにも・らいくわのために・かりぎぬのそでは・やけながら・そのみは・つつがもなかりけり・じやう
こにも・まつだいにも・ありがたかりし・ものなりけり・さるほどに・にふだうしやうごくは・ふくはらに・おはしけるが・おなじき
十四かに・す千きの・ぐんびやうをたなびいて・しやうらくせらると・きこえしかば・そのころの・きやうちうのじやうげ・あはや
また・なにごとの・いでこんずらんとて・さわぎののしること・なのめならず・またなにものか・まをしいだしたりけん・にふだうP152
てうかを・うらみたてまつらるべしと・きこえしかば・てんがのひとびとも・みな・しくわいのごとし・くわんぱくどのも・ないないきこしめさる
るむねもや・ありけん・いそぎ・ごさんだいあつて・こんどしやうごくぜんもん・じゆらくのことは・ひとへに・もとふさをかたぶくべき・
けつこうと・うけたまはり・さふらへば・いかなるうきめにか・あひさふらはんずらんと・まをさせたまひたりければ・
しゆじやうそこに・いかならんめをも・みられんは・ただちんがみるにてこそ・あれとて・りようがんに・おんなみだせき
あへさせたまはず・まことに・てんがのおんまつりごとは・きみとしんとの・おんはからひなるに・こはいかにしつることぞや・
てんせうだいじん・かすがのだいみやうじんの・しんりよのほども・はかりがたし・おなじき・十五にちに・にふだうてうかをうらみ・たてまつ
らるべきこと・すでに・ひつぢやうときこえしかば・ほうわう・こせうなごん・にふだうしんぜいの・しそく・じやうけんほういんを・おんつかひにて・
にふだうしやうごくのしゆくしよ・にし八でうへ・おほせつかはされけるは・きんねんてうてい・しづかならずして・ひとのこころも・ととのほらず・せけん
も・いまだ・らくきよせず・なりゆくこと・そうべつにつけて・なげきおぼしめせども・さてそこにあれば・ばんじはたの
みおぼしめすに・これていに・がうがうなるさまにて・たとひ・てうかを・しづむるまでのことこそ・なからめ・あまつさへ・
これをうらむべしなんど・きこしめすは・いかにほういん・にし八でうに・おはして・げんたいふのはんぐわんすゑさだをもつ
て・ちよくぢやうのおもむき・いひいれつつ・ごへんじを・またれけれども・あしたより・ゆふべにおよぶまで・にふだうぶいんなりけれ
ば・ほういんさればこそと・むやくにて・いそぎ・かへりまゐるべきよしを・いひいれつつ・いでられければ・にふだう・い
かがおもはれけん・あのほういんよべとて・よびかへさせ・いであひたいめん・したまひて・やや・ほういんのごばう・じやうかい
がまをすところは・ひがごとか・だいふ・みまかりすぎさふらへば・にふだうずゐぶんひるゐをおさへてこそ・まかりすぎさふらへ・それににふP153
だう・けふあすをもしらぬ・おいのなみにのぞんで・かかるうきめにあひさふらふ・しんちうをば・いかばかりとか・お
もひたまふ・ごへんのこころにも・すゐさつさふらへ・ほうげんいごは・らんげき・うちつづいて・きみやすきみこころも・わたらせ・
たまはざりしを・にふだう・どどのてうてきを・たひらげて・四かいのげきりんを・しづめまゐらせさふらひき・そのときも
にふだうは・ただおほかたをとりおこなひしばかりなり・まさしう・だいふこそてを・おろし・みをくだきたるものにてもさふら
へ・されば・ばんしにいつて・いつしやうをうることもどどなり・そのほかりんじのおんだいじ・てうせきのせいむ・だいふほどのこうしん
は・ありがたうこそさふらへ・ここをもつて・いにしへを・おもふに・かのたうの・たいそうは・ぎてうにおくれて・
かなしみのあまりに・むかしのいんそうは・りやうひつを・ゆめのうちにえ・いまのちんは・けんしんをさめののちに・うしなふといふ・
ひのもんをかいて・みづからべうにたてて・だにこそかなしび・たまひけんなれ・わがてうにも・まのあたり
みさふらひしことぞかし・あきよりのみんぶきやうが・せいきよしたりしをば・こゐんことに・おんなげきあつて・やはたのぎやうかうを・えん
いんせられて・ぎよいうなかりき・すべて・しんかのそつすることをば・よよのきみも・なげきおぼしめす・おんことにてこ
そさふらへ・さればおやよりも・なつかしく・こよりもむつまじきをば・きみとしんとの・おんなかとは・まをしつたへ
たり・それにだいふがちういんに・やはたへごかうなり・あまつさへ・ほうぢうじどのにして・ぎよいうあり・おんなげきのいろ・いちじもこれ
をみず・たとひ・だいふがちうをこそ・おぼしめしわすれさせたまひさふらふとも・にふだうがなげきをば・ひとたびはなどか
あはれませたまはざるべき・たとひにふだうがなげきをこそ・あはれませたまはずとも・だいふがちうをば・いかでかおぼし
めし・すてさせたまふべきに・ふしともに・えいりよにそむきぬること・いまにおいて・めんぼくを・うしなひさふらふ・まづこれ一・つぎに・P154
ゑちぜんのくにをば・ししそんそんまでも・ごへんがいあるまじきよしの・ごちよくやくあつて・だいふたまはりたりしを・がうせいの
のち・いくばくの・ひかずをへずして・やがてめしかへして・たにんにたぶこと・これなんのくわたいぞや・これ一・
つぎに・ちうなごんけつのさふらひしとき・こんゑの二ゐのちうしやうどの・しよまうさふらひしを・にふだうずゐぶんとりまをし・さふらひしか
ども・つひにごしよういんなくて・くわんぱくのそくをなされしことはいかに・たとひ・にふだう・ひきよをまをすとも・ひとたびはなどか・
おんもちゐなかるべき・いはんや・ゐかいといひ・けちやくといひ・りうんさうなき・ことなるを・ひきちがへられしこと・ゐ
こんのしだいなり・これ一・つぎに・しゆんくわんなりちかいげの・むようの・いたづらもの・ししのたにに・じやうくわくをかまへて・たう
けを・かたぶけんと・つかまつりさふらひしこと・まつたくこれ・わたくしのけいりやくにあらず・ただきみごきよようあるに・よつてなり・い
まめかしき・まをしごとにてさふらへども・この一もんをば・いかでか・七だいまでも・おぼしめしすてさせたまふべきに・それに
にふだう・七じゆんにおよんで・よめいいくばくならぬ・いちごのうちにだにも・ややもすれば・ほろぼさるべきよし
の・おんはからひあり・いはんやしそんあひついで・てうかに・めしつかへむこと・ありがたし・およそ・おいてこをうし
なふは・こぼくの・えだなきがごとし・だいふにおくれ・さふらひぬるをもつて・りやうけのうんめいは・はやおもひし
られてこそさふらへ・このよ・いまいくばくならぬに・さのみこころを・つひやしても・なににかは・しさふらふべき・
されば・いかていにも・ありなんと・おもひなつてこそさふらへとて・かつはふくりふし・かつはらくるゐして・くど
かれけるにぞ・ほういんおそろくしくも・またあはれにて・あせみづにこそ・なられけれ・ほういんわがみも・きんじゆのじんなり・
そのほか・ししのたににて・ひとびとの・ぎせられし・ことどもをも・まさしう・みきかれし・ひとなれば・わがみも・そのにん・P155
じゆとて・ただいま・めしやこめられんずらんと・りうのひげをなで・とらのをを・ふむここちしては・おもはれ
けれども・ほういんも・さるおそろしきひとにて・おはしければ・すこしもさわがず・まことに・どどのごほうこう・あさから
ず・しかりとはまをせども・くわんゐといひ・ほうろくといひ・おんみにとつては・ことごとくまんぞくしぬ・こうのばくだいなること
をば・きみもぎよかんなるおんことにてこそさふらへ・つぎに・きんしんことをみだり・きみごきよようありといふことは・いかやうにも・
ばうしんのけうがいと・おぼえさふらふ・およそ・みみを・しんじて・めをうたがふは・ぞくのつねのへいなり・せうじんのふげんを・しんじて・
てうおんの・たにことなるに・みだりがはしう・きみをなみし・まゐらつさせ・たまはんおんこと・しんりよのほども・はかり
がたし・それてんしんは・さうさうとして・はかりがたしと・いへども・えいりよさだめて・そのぎにてぞさふらふらん・しもとし
て・かみにさかふること・あに・じんしんのれいたらむや・せんずるところ・このむねをこそ・ひろうつかまつり・さふらはめとて・いで
られければ・へいけのさぶらひども・らうせうなみゐたりけるが・あなおそろし・あれほどに・にふだうしやうごくの・いかりたま
ふに・すこしも・さわがず・へんじして・たたれける・ゆゆしさよと・ほういんを・ほめぬひとこそ・なかりけれ。
大臣流罪(あひ) 317
ほういん・ゐんのごしよに・かへりまゐつて・このよしを・いちいちにそうし・まをされたりければ・ほうわうも・だうりしごくし
ては・おぼしめされけれども・おほせいださるる・むねもなし・おなじき・十六にちに・にふだうしやうごく・おもひたちたまP156
へる・ことなれば・くわんぱくどのを・はじめたてまつつて・四十三にんの・くわんしよくをとどめて・おひこめらる・なかにも・くわん
ばくどのをば・だざいのそつに・うつして・つくしへ・ながしたてまつらるべきよし・きこえしかば・かからんよには・とて
もかくても・ありなんとて・おとはのへん・こがといふところにて・ごしゆつけあり・ことしは・卅五にならせおは
します・れいぎよく・しろしめされて・くもりなき・かがみにて・わたらせたまひつる・ものをとて・よの・をしみたてまつ
ること・ひとへに・つきひを・うしなひ・たてまつるがごとし・はいしよへおもむくひとの・みちにて・しゆつけしたりしをば・やくそくの
くにへは・つかはされぬ・ことなれば・はじめは・ひうがのくにと・きこえしが・のちには・はいしよをかへて・びぜんのこふ
に・とどめおきたてまつる・だいじんるざいのれいは・さだいじんそがのあかゑ・うだいじんとよなり・さだいじんうをなこう・うだいしんすが
はら・かたじけなくも・きたののてんじんのおんことなり・さだいじんかうめいこう・ないだいじんふぢはらの・いしうこうに・いたるまで・そのれい六にん・
されども・せつしやうくわんぱくるざいのれいは・これはじめとぞうけたまはる
妙音院の琵琶ひき 318
なかにも・六でうのせつしやうどののおんこ・こんゑの二ゐの・ちうじやうどのをば・にふだうおんむこに・とりたてまつつて・だいじんくわんぱく・一
どに・せさせたてまつる・ふげんじどのの・おんことなり・さんぬる・ゑんゆうゐんのぎよう・てんろく三ねん十一ぐわつついたちのひ・一でうの
せつしやう・けんとくこう・にわかに・かくれさせたまひしかば・ほりかはのくわんぱく・ちうぎこうの・おんおとと・ほこゐんの・だいにふだうどのかね
いへこうの・いまだそのころ・じゆ二ゐの・ちうなごんにて・おんはくぶれいぎこう・こえかへしたてまつつて・ないだいじんじやう二ゐしP157
たまひて・ないらんのせんじを・かうぶらせ・たまひたりしをこそ・ひといつしかなりしと・まをししに・これは・それには
てうくわせり・ひさんぎ・二ゐのちうしやうより・だいちうなごんを・へずして・だいじんくわんぱくの・おんれい・めづらし・かりし・
おんことなり・だいげきの・たいふしひつのさいしやうに・いたるまで・みな・あきれたる・さまなりけり・なかにも・めうおんゐん
の・だいじやうだいじんもろながをば・つかさを・とどめたてまつつて・あづまのかたへ・おひくだしたてまつる・これは・さんぬるほう
げんに・ちちあくさふの・ごえんざに・よつて・きやうだい四にん・るざいせられたまひしに・うだいしやうかねなが・ひだんのさいしやうのちう
しやうたかなが・はんちやうぜんじ三にんは・きらくを・またずして・はいしよにて・うせられぬ・これは・とさのはたにして・ここの
かへりのさいさうを・おくり・ちやうくわん二ねん八ぐわつに・めしかへされ・つぎのとし・もとにふくし・おなじき三ねんに・さきのちうなごんより・
ごんだいなごんにあがられけり・をりふし・だいなごん・あかざりければ・かずのほかにぞ・くははられける・だいな
ごんの・六にんあることも・これはじめとぞうけたまはる・またさきのちうなごんより・だいなごんになることは・ごやましなのおと
どみもりこう・うぢのだいなごんたかくにのきやうの・ほかは・うけたまはりおよばず・およそこのおとどは・くわんげんのみちにたつし・さいげいすぐ
れて・おはしければ・きみもしんも・おもくしたてまつつて・しだいのしようしん・とどこほらず・だいじやうだいじんまでも・たや
すく・へあがりたまふほどの・ひとの・いかなる・つみのむくいにか・またるざいせられたまふらん・ほうげんのむかしは・
なんかい・どしうにうつされ・ぢしようのいまは・また・とうくわんをはりのくにとかや・つみなくして・はいしよのつきを・みんと・い
ふことをば・もとより・こころあるほどのひとの・このむことなれば・おとどあへて・ことともしたまはず・かのたうのだいじん・ひん
かく・はくらくてん・きうがうきんの・しいばに・させんせられて・じんやうのかうの・ほとりに・さすらへたまひし・そのいにしP158
へを・おもひやり・なるみがた・しほぢはるかに・ゑんけんして・うらかぜに・うそぶき・つねは・かうげつをのぞみ・び
はを・だんじ・わかをえいじて・なほさりがてらに・つきひを・おくりたまひけり・あるとき・だいじん・たうごくだい三
のやしろ・あつたの・だいみやうじんに・さんけいあつて・びはひき・らうえい・したまひけれども・ところもとより・むちの・ぞくな
れば・あはれを・しれるものなし・いううらうそんぢよぎよじんやそう・かうべを・うなだれ・みみを・そばだつと・いへども・さら
に・せいだくを・わかち・りよりつを・しれるものなし・されども・こはきんをだんぜしかば・ぎよりんをどり・ほとばし
り・ぐこう・うたをはつせしかば・りやうぢんうごき・うごくもののたへなる・きよくをきはむるには・しぜんに・かんをもよほす・こ
とわりに・こたへて・まんざなみだをながし・しよじんきいの・おもひをなす・はるかに・やろうしんかうに・およんで・おと
どしらべ・ひきよくをつくされけり・ふかうてうのうちには・はなふんぶくのきをふくみ・りうせんのきよくのあひだには・つきせい
めいのひかりを・あらそふ・またねがはくば・こんじやうせぞくの・もんじのわざ・きやうげんきぎよの・あやまりをもつてといふ・
らうえいしつつ・びは・かきならしたまへば・しんめいかんおうに・たへずして・はうでんおほきに・しんだうす・へいけのあくぎやう・な
かりせばいかでか・いまかかる・ずゐさうを・をがむべきとて・おとどかんるいをぞ・ながされける・おほくらきやう・うきやうのだいぶ・けんいよのかみ・たかしなのやすつね・さんぎくわうたいこうぐうのだいぶ・けんうひやうゑのかみ・ふぢはらのみつよし・くらんどのせうしやうけんちうぐうの・
ごんのたいしん・ふぢはらのもとちか・三くわんともに・とどめらる・あぜちのだいなごんすけかた・くらんどのごんのせうしやう・けんさぬきのかみ
みなもとのすけときは・二のくわんを・とどめらる・あぜちのだいなごんすけかた・ことに・うせうしやうまさかたをば・よのほどに・みやこのうち
をおひいだし・たてまつるべしとて・しやうけいには・とうだいなごんさねくに・ぶしには・はかせのはんぐわんのりさだ・まゐりむかつて・このP159
よし・まをされたりければ・だいなごんとるものも・とりあへたまはず・三がいひろしといへども・五しやくのみ・おき
どころなし・一しやうほどなしと・いへども・一にちくらしがたしとて・やちうに・ここのへのうちをば・まぎれいで・やへだ
つくもゐの・よそにぞ・おもむかれける・かのおほえやまや・いくののみちに・かかつて・はじめは・たんばのくに・
むらくものさとと・きこえしが・のちにははいしよをかへて・しなののこふと・こそきこえけれ
院の流され 319
なかにも・あぜちのだいなごんすけかたは・およそくわんげんのみちに・たつし・さいげいすぐれて・おはしければ・ほうわう・しよじない
げなう・おほせあはせられけるによりて・にふだうかやうに・あだを・むすばれけるとぞ・きこえし・こんど四十よにん
のひとびとの・ことに・あはれける・ゆゑをいかにと・まをすに・ちうなごんのちうしやうどのと・こんゑの二ゐの・ちうしやうどのと・
ちうなごん・ごさうろんゆゑとぞ・きこえし・さらば・ちうなごんの・ちうしやうどのばかりこそ・いかなるおんめにも・あは
せたまふべきに・四十三にんの・ひとびとの・ことに・あはれけるこそ・ふしぎなれ・きんねん・ふりよなること・ども
あつて・せじやうさわぎ・やまざることも・これひとへに・ごりやうの・ゆゑなりとて・きよねん・さぬきのゐんの・ごつゐがうあつ
て・しゆとくてんわうとがうし・うぢのあくさふの・ぞうくわんぞうゐの・きこえありしかども・ごりやうは・いまだ・しづまりも・
やまざるにや・にふだういよいよ・はらをすゑかねたまへりと・きこえしかば・きやうちうのじやうげ・またいかなることか・いで
こむずらんとて・さわぎののしること・なのめならず・そのころ・さきのさせうべんゆきたかと・きこえしは・こなかのやまのちうなP160
ごんあきたかのきやうの・ちやうしにて・二でうゐんのおんときは・べんくわんにて・さもゆゆしう・わたらせたまひしかども・ゐんほうぎよ
ののちは・くわんとをうばはれ・せんとをうしなつて・この十よねんがあひだは・しよじあるか・なきかの・ていにて・おはしけ
るを・にふだうゆきたかのもとへ・ししやをたてて・きつと・たちよられさふらへ・いささか・のたまひあはすべきことのさふらふと・のたまひつ
かはされたりければ・ゆきたか・こは・なにごとを・のたまひあはせらるべき・やらん・この十よねんがあひだは・しよじなにごと
にも・まじはらざりつるものを・いかさまにも・これは・ざんげんするものの・あるにこそと・のたまへば・きたのかた・
めのとのにようばうを・はじめたてまつつて・いへのうちに・ありとし・あるひとみな・きも・たましひを・うしなつて・こゑ
を・あげてぞ・なげかれける・さるにても・ゆきたか・やがてさんずべきよしの・ごへんじをば・まをされたりけ
れども・ぎつしや・しゆつしのしやうぞくともに・なかりければ・おととの・さゑもんみつたかのもとへ・このよしのたまひ・つかはされ
たりければ・ぎつしや・しゆつしのしやうぞくともに・ゆきたかのもとへ・つかはさる・ゆきたかくるまにのり・にし八でうに・おは
して・もんぜんにて・くるまよりおり・あんないを・まをされたりければ・にふだう・おもふにもにず・やがていであひたいめん・し
たまひて・こちうなごんどのとは・にふだう・しよじないげなう・まをしうけたまはりさふらひしかば・ごへんとても・おろかには・おも
ひたてまつらず・ねんらいろうきよのことをも・いたはしうは・さふらひつれども・ほうわうの・ごせいむなるうへ・ちからおよびさふら
はず・いまは・とうとうしゆつし・したまふべし・おほかた・くわんとのことをも・にふだうはからひ・まをすべし・そのやうを・
まをさむとてなり・ベちのやうは・なし・はやはや・かへりたまへと・のたまへば・ゆきたか・なのめならず・よろこうで・
かへられけるに・にふだう・あとより・げんたいふの・はんぐわんすゑさだが・くるまに・にふだうのうしかけさせ・しゆつしのしやうぞくともP161
に・ゆきたかの・もとへ・おくりつかはさる・つぎのひの・まんだあさ・にふだう・さぞあるらむとて・よねを百こく・くるまに
つみて・ゆきたかのもとへ・つかはさる・ゆきたか・てのまひ・あしの・ふみども・おぼえず・こはゆめかや・ゆめか
とぞ・あきれたまひける・おなじき十七にちに・五ゐのさふらひちうに・ふせられ・させうべんあきときが・おひこめられたる
かはりに・さきのさせうべんに・なりかへり・たまひけり・ことしは・五十一・いつしか・わかやぎたまふぞあはれな
る・これもただ・へんしの・えいぐわとぞみえし・おなじき廿かのひの・まんだあさ・ろくはらの・つはものども・ほうぢうじどの
の・四もんを・うちかこみたてまつる・およそそのせい・二三千きは・あるらんとぞ・みえし・ひととせ・のぶよりのきやうが・三
でうどのを・なしまゐらせたるやうに・ごしよにも・ひをかけ・にようばうたちをも・みなやきころすべし・なんど・きこ
えしかば・つぼねのにようばう・めのわらは・ものをだにも・うちかづかず・もんぜんにはしりいで・みなちりぢりにこそ・なり
にけれ・さきのうたいしやうむねもりのきやう・みくるまよせて・いまは・とうとうめさるべうさふらふと・まをされたりければ・ほう
わう・こはいかに・なしまゐらせんとは・つかまつるぞ・しゆじやう・さてましませば・せいむに・こうじゆする・ばかりなり・
それも・さあるまじくは・さらでこそ・あるべきに・いかで・かやうに・うきめを・みせまゐらせむとは・
つかまつるぞ・いかさまにも・これは・しゆんくわん・なりちか・なんどがやうに・とほきくに・はるかのしまへも・ながしうしなは
むずるに・こそと・おほせければ・むねもりこのおほせうけたまはる・かたじけなさに・いかでか・さるおんことの・わたらせたまひさふらふ
べき・しばらく・よをしづめんほど・とばどのへ・ごかう・なしまゐらすべきよし・を・にふだう・はからひまをされ
さふらふと・まをされたりければ・ほうわうさらば・おんともに・ひと・ひとりもなきに・やがて・なんぢおんともにさふらへかしと・P162
おほせけれども・にふだうのけんゐに・はばかつて・まゐらせられず・ほうわう・あはれこだいふには・おとりたるものかな・ひと
とせも・かかるおんめに・あはせたまふべかりしを・こまつのだいふが・やうやうにまをしてこそ・いままでも・あんおん
には・わたらせたまひしか・いまはさやうに・いさむるものの・なきあひだ・かくこころのままに・ふるまふにこそ・ゆくすゑ
とても・たのもしからず・さよとぞ・おほせける・みくるまへは・おんきやうばこ・ばかりぞいれられたる・じやうどじの・二
ゐどのの・さまかへて・あまぜと・めされけるばかりこそ・みくるまへはまゐられけれ・おんともには・おんりきしやに・
こんぎやうばかりぞ・おほくの・ひとのなかにまぎれては・まゐりける・そのころの・きやうちうのじやうげ・このよしを・みたてまつ
つて・あはや・ゐんのながされさせたまふはとて・みななみゐて・そでをぞ・ぬらしける・さんぬる七かのよの・だい
ぢしんは・はや・かかるせんべうにて・十六らくしやの・そこまでも・こたへ・けんらうぢしんも・さだめて・おどろきさわぎ・たまふ
らむとぞ・おぼえたる・だいぜんのだいぶのぶなりが・なにとしてかは・まゐりたりけむ・おんまへちかうさふらひけるを・め
されて・やや・のぶなりや・ゆふさりすでに・うしなはるべしとこそ・きこしめされさふらへ・さらんにとつては・いま一
ど・おんぎやうずゐを・めさばやと・おぼしめすは・いかがあるべきと・おほせければ・のぶなりは・けさ・ゐんのごしよを
いづるより・ながるるなみだも・つきざるに・またこのおほせうけたまはる・かたじけなさに・つきせぬものは・なみだなり・のぶなり・ひたたれに・
たまだすきあげ・こしばがき・こぼち・おほゆかのつかばしら・わりなんどして・こんぎやうに・みづあげさせ・かたのごと
くの・ゆを・しいだして・まゐらせけり・ほうわう・おんぎやうずゐを・めして・おんきやうばこより・おんきやうとりいださせ・たまひ・
うちあげ・うちあげ・あそばされけるにも・いまをかぎりとぞ・おぼしめされける・つぎのひの・まんだあさ・じやうP163
けんほういん・にし八でうに・おはして・まことやらむ・とばどのに・ひとひとりも・なきよしを・うけたまはりさふらふ・あはれ・おんゆるさ
れをかうぶつて・まゐらばはやと・まをされければ・にふだうごへんは・ことすごすまじき・ひとなれば・とうとうとて
ぞ・ゆるされける・ほういんくるまにのり・とばどのにまゐり・もんぜんにて・くるまよりおり・もんをさしいりて・みたまへば・
とばどのには・のやまのあらし・はげしくして・ものさびしげなる・をりふし・ほうわうの・おんきやう・うちあげうちあげ・あそば
されけるおんこゑの・はるかのもんのそとまでも・きこえさせたまひけるに・ほういんおんまへちかう・まゐられたりけれ
ば・ほうわうこれを・えいらんあつて・あそばされける・おんきやうに・おんなみだのはらはらと・かからせたまへば・ほういんも
しのびがたさに・ほうえのそでを・かほにあて・なくなく・おんまへへぞ・まゐられける・ほういんまゐられたりければ・あま
ぜの・のたまひけるは・きみは・きのふのあさ七でうどのにして・くごきこしめされたるほかは・ゆふべもけさも・きこし
めされず・さらんにとつては・おんいのちもあやうくこそ・みえさせたまひて・さふらへと・まをさせたまひたり
ければ・ほういんなど・それは・きこしめされさふらはぬやらん・へいけあくぎやうつもつて・としひさし・てんせうだいじん・しやう八
まんぐうも・きみをこそ・まぼりまゐらつさせ・たまはんずれ・ことには・きみのしつしおぼしめす・ひよしさんわう廿一しや・
一じようしゆごの・おんちかひ・あらたまらせたまはずば・かのほつけ八ぢくに・たちかけらせたまひて・きみをこそ・しゆご
し・まゐらつさせ・たまはんずれ・さらんにとつては・きようとは・みづのあわと・きえ・ごせいむは・おんはからひ
にこそ・なりまゐらつさせ・たまはんずれなんど・やうやうに・まをしたりければ・そののちは・くごをも・きこし
めされけるとかや・さるほどに・しゆじやうは・ゐんのながされ・しんかたちの・おほくながし・うしなはれし・ひよりP164
して・だいりには・りんじのごじんじあつて・しゆじやうみづから・いしばひのだんにして・いせだいじんぐうを・ごはいあり・これ
ひとへに・ほうわうの・いつとなく・とばどのに・おしこめられて・わたらせたまふ・おんいのりの・ためとぞ・おぼえたる
あひ 320
二でうゐんは・てんしに・ぶもなしとて・つねは・ゐんのおほせをも・まをしかへさせ・おはします・さればそれは・けい
ていの・きみにては・わたらせたまはず・これはおなじふしの・おんならひとは・まをしながら・おんちぎりことに・ふかかり
ければ・よそのたもとも・おさへがたし
城南の離宮 321
はつかうのなかには・かうかうをもつて・さきとす・めいわうは・かうをもつて・てんかををさむと・みえたり・されば・たう
げうは・おいおとろへたる・ははをたつとみ・ぐしゆんは・かたくななるちちを・うやまふと・みえたり・かの・けんわう・せいしゆ
の・せんきを・おはせ・おはします・えいりよのほどこそ・めでたけれ・あるとき・だいりより・しのびつつ・とば
どのへ・ぎよしよあり・かからんよには・くもゐにあとを・とどむべしとも・ぞんじさふらはず・されば・くわんぺいの・む
かしをたづね・くわざんの・いにしへをも・おひ・さんりんるらうのみとも・なりぬべうこそ・さふらへと・まをさせ
たまひ・たりければ・ほうわうの・ごへんじには・さなおぼしめされそ・さてわたらせたまへばこそ・一のたのみP165
にてもさふらへ・さやうにあとなく・おぼしめしたちなば・なんのたのみか・さふらふべき・ただぐらうが・ともか
うも・ならんやうを・ごらんじはてさせ・たまひてこそと・まをさせたまひたりければ・しゆじやう・このぎよしよを・りよう
がんに・おしあて・させたまひて・おんなみだいよいよ・せきあへさせ・たまはず・きみは・ふね・しんはみづ・みづよく・ふね
を・うかべ・みづまた・ふねを・くつがへす・しんよく・きみを・たもち・しんまた・きみをくつがへす・はうげん・へいぢ
の・むかしは・にふだうしやうごく・きみをたもち・たてまつるといへども・あんげんぢしようの・いまはまた・きみを・なみしたてまつる・これ・し
しよのもんにたがはず・おほみやの・だいしやうごく・三でうの・ないだいじん・はむろのだいなごん・なかのやまのちうなごん・このひとびとも・う
せられぬ・いまふるきひととては・なりより・ちかのり・ばかりなり・このひとびとも・かからんよには・てうにつかへ・み
をたて・だいちうなごんを・へても・なににかは・せむとて・いまだ・わかう・さかんなつしひとの・いへをいで・
よをのがれ・さいしやうにふだうなりよりは・かうやの・きりにまじはり・みんぶきやうにふだうちかのりは・をはらのしもにともなひ・いつ
かうごせぼだいの・つとめの・ほかたじなしとぞ・きこえし・むかしも・しやうざんのくもにかくれ・えいせんのつきに・こころをすます・
ひともあり・なむと・きこえしかども・あに・はくらんせいけつにして・よをのがれたるに・あらずや・なかにも・かうやのお
やまに・おはします・さいしやうにふだうなりより・このよしを・つたへききたまひて・あはれこころとうも・よをのがれたる・ものか
な・かくて・きくも・おなじこと・なれども・まのあたり・たちまじはつて・みましかば・いかばかりか・
こころうからまし・はうげん・へいぢの・みだれをこそ・あさましと・おもひしに・いまはよすゑに・なつて・かかる
ふしぎの・いでくるにや・またいかなる・うきことをか・みきかむ・ずらん・されば・くもゐを・わけても・のP166
ぼり・ふかき・やまのおくへも・いりなばやとぞ・のたまひける・こころあらんほどの・ひとの・あとを・とどむべき・
よとも・みえざりけり・おなじき廿三にちに・せんざす・めいうんだいそうじやう・てんだいざすに・なりかへらせ・たまふぞ・あり
がたき・これも・ただ・いつかうへいけの・とりまをされけるに・よりてなり・にふだうしやうごくは・くわんぱくどのむこなり・ちうぐうまた・だい
りにわたらせたまへば・よろづ・なにごとも・こころやすくや・おもはれけん・いつかうてんかの・おんまつりごとは・くげのごさたたる
べうさふらふと・まをしおき・わがみは・いそぎ・ふくはらへこそ・くだられけれ・さきのうたいしやうむねもりのきやう・さんだいあつて・
このよしを・そうしまをされたりければ・しゆじやう・おほせなりけるは・ほうわうより・ゆづりたうだる・よならばこそ・せい
むをも・しろしめさめ・ただ・しつぺいに・いひあはせて・たいしやう・はからへとて・つひに・きこしめしも・いれさせたま
はず・さるほどに・ほうわうは・せいなんの・りきうにして・ふゆも・なかばすぎさせたまへば・あきのやまのあらしのおとのみ・は
げしくて・かんていのつきのひかりぞ・さやけき・にはには・ゆきふり・つもれども・あとふみつくる・ひともなく・いけに
は・つらら・とぢかさなつて・むれゐし・とりもみえざりけり・おほでらのかねのこゑ・ゐあいじの・きき(イひびきを)おどろか
し・せいざんの・ゆきのいろ・かうろほうの・のぞみをもよほす・よるしもに・さむけき・きぬたのひびき・かすかに・おんまくらに・つたひ・あか
つき・こほりをきしる・くるまのあと・はるかの・もんぜんによこたはれり・ちまたをすぐる・かうじん・せいばの・いそが
はしげなる・けしき・うきよをわたる・ありさま・かつかつ・おぼしめし・しられて・あはれなり・きうもんをまぼる・ばんいの・
よる・ひる・けいごを・つとむるも・さきのよに・いかなる・ちぎりにて・いまえんを・むすぶらんと・おぼしめすぞ・
かたじけなき・さるままには・ほうわう・ところどころの・ごさんけい・をりをりの・ごいうらん・おんがの・めでたかりし・ことどもP167
を・おぼしめし・つづくるに・くわいきうの・おんなみだおさへがたし・さるほどに・としくれて・ぢしようも・四とせに・りな(なり)にけり
平家物語(城方本・八坂系)
巻第四 P168
新院厳島御幸 401
ぢしよう四ねん・しやうぐわつついたちのひ・とばどのには・ぐわん三のおんあひだなりけれども・にふだうしやうごくも・ゆるされず・ほうわうもまた・
おほきにおそれさせ・おはしましければ・にふだうのけんゐに・はばかつて・さんにふするひともなく・さくらまちの・ちうなごん
しげのり・おとうとさきやうのだいぶながのり・この二にん・ばかりぞ・おんゆるされを・かうむつては・まゐられける・おなじき四かのひ・
六はらには・とうぐうの・おんはかまぎ・ならびに・おんまな・きこしめす・なんど・よには・かくめでたきことども・
ありしかども・ほうわうはただ・とばどのにして・おんみみのよそにぞ・きこしめされける・おなじき二ぐわつ十八にちに・とうぐう
おんとし三さいにて・せんそあり・しゆじやうは・ことなる・おんつつがも・わたらせたまは・ざりしかども・おしおろしたてまつつて・
いつしか・ひとしんゐんとぞ・まをしける・そのころのいうそくの・ひとびとの・いつしか・なる・こんどの・ごじやうゐかなと・
のたまひあはれける・なかにも・へいだいなごんときただのきやうばかりこそ・うちのおんめのと・そつのすけの・をつとたりしかば・この
たびのごじやうゐ・いつしかなりと・たれやのひとか・まをさるべき・ゐこくには・しうのせいわう三さい・しんのぼくてい二さい・
わがてうには・こんゑのゐん三さい・六でうのゐん二さい・これみな・きやうはうのなかに・つつまれて・いたいをただして・せざりしか
P169
ども・あるひは・せつしやうおうて・くらゐにつき・あるひは・ぼこう・いだいて・てうにのぞむと・みえたり・ごかんのくわうせうくわうていは・
うまれて百にちといへば・せんそあり・せんしようわかんかくの・ごとしと・まをされたりければ・ひとびとあな・おそろし・
ものなまをされそ・さればそれは・よきためしかは・とぞ・かたぶきあはれける・とうぐうせんそありしかば・にふだう
しやうごく・ふうふともに・じゆん三こうの・せんじをかうぶり・ねんくわんねんしやくをたまはつて・じやうじつのものを・めしつかはる・ゑかき
はなつけたるさふらひども・いでいつてひとへに・ゐんみやの・ごとくにてぞ・さふらひける・しゆつけのひとの・じゆん三こうの・せんじを
かうぶらせたまふことは・ほこゐんの・だいにふだうどのかねいへこうのほかは・うけたまはりおよばず・しゆつけののちも・えいぐわはなほ・つ
きせずとこそ・うけたまはれ・おなじき三ぐわつ十九にちに・しんゐんあきの・いつくしまへ・ごかうとぞきこえし・ていわうみくらゐを・さ
らせたまひて・のち・しよしやのごかうの・はじめには・あるひは・やはた・かも・かすが・なんどへこそ・ごかうならせたま
ふに・これははるばると・あきのいつくしままでの・ごかうを・いかにとまをすに・しらかはのゐんは・くまのへごかう・いちのゐんは・
ひよしのやしろへ・ごかうなる・すでにしりぬ・えいりよにありと・いふことを・ごしんちうに・ふかきごぐわんあり・またごむさう
の・つげありとぞおほせける・たうじ・あきのいつくしまをば・いつかうへいけの・あがめまをされければ・うへには・へいけにごどう
しん・したには・またほうわうの・いつとなく・とばどのに・おしこめられて・わたらせたまふ・そのおんいのりの・おんためとぞ・
おぼえたる・おなじき三ぐわん(ぐわつ)十八にちの・まんだあさ・しんゐん・さきのうたいしやうむねもりを・めして・みやうにちごかうのついでに・と
ばどのへ・まゐらばやと・おぼしめすは・ぜんもんに・ふれずしては・あしかりなんやと・おほせければ・むねもり・この
おほせうけたまはる・かたじけなさに・いかでか・さるおんことの・わたらせたまひ・さふらふべきと・まをされたりければ・じやうわう・なのめなら
P170
ずぎよかんあつて・さらばやがてなんぢ・とばどのに・まゐりこのよしを・そうせよかしとおほせければ・むねもり・かしこまつてうけたはまり・
やがて・とばどのに・まゐり・このよしを・そうしまをされたりければ・ほうわうもあまりにおぼしめすおんことなれば
こはゆめやらんとぞ・おほせける・おなじき三ぐわつ十九にちの・あかつきがた・しんゐん・にふだうしやうごくの・しゆくしよ・にし八でうを・しゆつぎよ
なる・かすみにくもる・ありあけの・つきのひかりも・おぼろにて・こしぢへかへる・かりがねの・くもゐにおとづれゆくを・きこ
しめすに・つけても・をりふしあはれに・おぼしめすぐぶのひとびとには・まづさきの・うたいしやうむねもり・三でうのだいなごん
さねふさ・とうだいなごんさねくに・五でうのだいなごんくにつな・つちみかどのさいしやうのちうじやうみちちか・たかくらのちうじやうやすみち・れいぜんのせうしやうたか
ふさ・くないのせうむねのり・なんどぞ・まゐられける・よもほのぼのと・あけければ・じやうわう・とばどのに・まゐらせたま
ひ・まづもんを・さしいつて・えいらんあるに・はるもすでに・くれなんと・して・なつこだちにぞ・なりにける・こずゑ
のはな・いろおとろへ・みやのうぐひす・こゑおいたり・ひとまれにして・こぐらく・ものさびしげなる・おんありさまを・ごらん
ぜらるるに・つけても・まづおんなみだぞ・すすみける・きよねんのしやうぐわつ・六かのひ・しゆじやうてうきんのおんために・ほうぢうじ
どのへ・ぎやうかうなりたりしには・しよゑ・ぢんをひき・しよきやうれつにたつて・まんもんをひらき・ゐんじのくぎやう・まゐりむ
かつて・かもんれう・えんだうをしき・さしも・ただしかりしぎしき・けふはいちじもなし・ただゆめと・のみこそ・お
ぼしめせ・そののち・さくらまちのちうなごんしげのりきやう・まゐりむかつて・ごきそく・まをされたりければ・じやうわう・いらせたま
ひけり・ほうわうは・しんでんの・はしがくしのまにて・まちまゐらつさせ・たまひけりじやうわうは・ことし・廿にならせお
はしましけるが・あけがたのつきの・ひかりにはへさせたまひて・ぎよくたいも・ことにうつくしく・おんぼぎけんしゆんもんゐんに・
P171
すこしもたがはせたまはず・よく・にまゐらつさせたまひたりければ・ほうわうはまづ・こにようゐんの・おんことを・お
ぼしめしいでて・おんなみだに・むせばせおはします・そののち・りやうゐんちかう・ござあつて・やや・はるかにおんもの
がたりあり・ごもんだふのやう・たれうけたまはるべうもなし・おんまへには・あまぜばかりぞ・さぶらはれける・そののちはるか
にひたけてのち・じやうわう・とばどのを・たつてぞ・いでさせ・たまひける・じやうわうは・ほうわうの・ぜいなんのりきうのこてい・
いうかんせきばくの・ものさびしげなる・おんありさまを・ごらんじ・おかせたまへば・ほうわうはまた・じやうわうの・いつとなき・
りよはくわうぐうの・なみのうへ・ふねのうちの・おんすまひ・おぼつかなくぞ・おぼしめす・まことにそうべう・やはた・かも・かすが・
なんどをば・さしおかせたまひて・これははるばると・いつくしままでの・ごかうをば・しんめいもなどか・かんおうなかるべ
き・ごぐわんじやうじゆ・うたがひなしとぞ・おぼえたる
源氏そろへ 402
おなじき三ぐわつ廿六にちに・しんゐん・あきのいつくしまへ・ごさんちやくあり・にふだうの・さいあいのないしが・しゆくしよ・くわうきよに・なる・
なか一りやうにち・ごとうりうあつて・きやうゑぶがくなんど・おこなはれけり・こくしゆふぢはらのありつな・かんぬし・さへぎのかげひろ・ざす
そんえい・けんじやうかうふる・しんりよもうごき・にふだうしやうごくのこころも・さだめてはたらくらんとぞ・おぼえたる・おなじき四ぐわつ三
かのひ・しんゐんくわんぎよのついで・にふだうしやうごくのしゆくしよ・ふくはらのべつげふに・いらせたまふ・にふだうの・おとと・いけのちうなごんよりもり・
きやうのしゆくしよ・くわうきよになる・おなじき四かのひ・いへのしやうとて・ぢもくおこなはれけり・にふだうのやうし・たんばのかみきよくに・じやう
P172
げの五ゐ・まごに・ごんのすけせうしやうこれもりは・四ゐのじゆじやうとぞ・きこえし・おなじき五かのひ・じやうわう・ふくはらをたたせたま
ひて・てらゐにいらせたまひ・おなじき六かのひ・とばに・つかせたまふ・みやこよりのおんむかへの・くぎやうでんじやうびと・とば
のくさつまで・まゐられけり・おなじき七かのひ・みやこには・しんていのごそくゐとぞきこえし・ごそくゐは・だいごくでんにて
こそ・とげらるべけれども・だいごくでんは・ひととせ・やけたりしかば・だいじやうくわんのちやうにて・とげらるべしと・しよ
きやう・ごさたありけるに・九でうのみぎのおとどのまをさせたまひけるは・だいじやうくわんのちやうは・ぼんにんのいへにとつても・
くもんじよていのところなり。だいごくでんなからんうへは、ししんでんにてこそとげらるべけれとて、ししんでんにてぞとげられけ
る。さんぬるかうはう四ねん十一ぐわつに、れいぜんのゐんのごそくゐを、ししんでんにてとげられたりしは、ごじやきによりて、か
しこへぎやうかうもかなはざりしゆゑなり。さればそのれいいかがあるべからん。ただご三でうのゐんの、えんきうのかれいにま
かせて、だいじやうくわんのちやうにてあるべきものをと、とりどりにまをされしかども、九でうどののおんはからひのうへは、ちから
およばせたまはず。おなじき八かのひ、ちうぐうこうきでんより、じじうでんにうつらせたまひて、たかみくらへ、まゐらせたま
ひしおんありさま、めづらしかりしみものなり。へいけのひとびとも、みなしゆつしまをされけり。なかにもこまつどののきんだちば
かりこそ、きよねんの八ぐわつに、おとどかうじたまひしかば、いまだいろにて、しゆつしもなかりけり。さきのうたいしやうむねもり、
こんどのごそくゐのゐらんなく、めでたかりしことどもを、こまやかにしるして、ふくはらへまをされたりければ、にふ
だうどのも二ゐどのも、ゑみをふくみてぞおはしける。よにはかく、めでたきことどもありしかども、せけんはいまだ
らくきよせず。だいじやうほうわうのだい二のみこ、もちひとのわうとまをし、おんはははかがのだいなごんすゑなりのおんむすめ、三でうたかくらにまし
P173
ましければ、ひとたかくらのみやとぞまをしける。おんとし十五とまをし、しやうぐわつ十五にちに、ここのへのほか、こんゑかはらのおほみやの
ごしよにして、ひそかにごげんぷくあり。まさしう一ゐんだい二のみこにてわたらせたまへば、いまはたいしにもたち、
みくらゐにもつかせたまふべけれども、たうじのおんぼぎけんしゆんもんゐんのおんそねみによつて、おしこめられてわたらせ
たまへば、はなのもとのはるのあそびには、しがうをふるつて、てづからぎよせいをかき、つきのまへのあきのえんには、ぎよく
てきをふいて、みづからがいんをあやつり、かくてあかしくらさせたまふほどに、ぢしよう四ねんには、おんとし三十にならせお
はします。おなじきうづき九かのひのよにいりて、げん三ゐよりまさにふだうしのびつつ、みやのおんまへにまゐり、ひそかにまをさ
れけることこそ、なによりもおそろしけれ。まさしう一ゐんだん(だい)二のみこにてわたらせたまへば、いまはたいしにも
たち、みくらゐにもつかせたまふべきひとの、いまだしんわうのせんじをだにも、かうぶらせたまはぬおんことをば、こころうしと
はおぼしめされさふらはずや、うへにこそしたがふやうにさふらへども、たうじたれかへいけをそむかぬものやさふらふ、はやはやご
むほんおぼしめしたたせたまひ、へいけをほろぼさせおはしましさふらへかし。またほうわうのいつとなく、とばどのにおし
こめられてわたらせたまふ、そのおんいきどほりをもやすめまゐらつさせたまはんは、ごかうかうのおんいたりにてこそさふらはんず
れ。さだにもさふらはば、にふだうも、こども一りやうにんもちてさふらへば、などか一ぱうのおんかためになりまゐらせではさふらふべき、
そのほかりやうじをだにもたうづるほどならば、よろこびをなして、はせまゐらんずるげんじどもこそ、くにぐににおほうさふらへとて、
いちいちにまをしつづく。まづきやうとには、ではのかみみつのぶがこどもに、いがのかみみつもと、ではのはんぐわんみつなが、げんはんぐわんみつしげ、では
のくわんじやみつよし、くまのには、ためよしがばつし十らうよしもりとて、しんぐうのへんにかくれゐてさふらふ。つのくにには、ただのくらんど
P174
ゆきつな、ただのじらうともざね、おなじき八らうたかより、おほたのたらうたかよし、てしまのくわんじやよりもと、かはちのくにには、むさしのごんのかみ
よしもとにふだう、しそくいしかはのはんぐわんだいよしかね、やまとのくにには、うのの七らうちかはるがこどもに、たらうありはる、じらうなりはる、三
らうきよはる、四らうよしはる、あふみのくにには、やまもと、かしはぎ、にしごりが一たう、みのをはりには、やまだのじらうしげひろ、かうべのたらう
しげなほ、いづみのじらうしげみつ、うらのの四らうしげすけ、あじきのじらうしげより、そのこの四らうしげずみ、くわいでんのはんぐわんだいしげくに、きた
の三らうしげなが、やしまの四らうしげとき、そのこのたらうとききよ、かひのくにには、たけたのたらうのぶよし、かがみのじらうとほみつ、
そのこのこじらうながきよ、一でうのじらうただより、いたがきの三らうかねのぶ、ゐさはの五らうのぶみつ、へんみのくわんじやありよし、やすだの三
らうよしさだ、しなののくにには、おほうちのたらうこれよし、きそのくわんじやよしなか、をかだのくわんじやちかよし、そのこの四らうしげよし、ひらがのくわん
じやもりよし、そのこのこ四らうよしのぶ、いづのくにには、るにんさきのうひやうゑのごんのすけよりとも、ひたちのくにには、ためよしが三なん、三
らうせんじやうよしのりとて、しだのうきしまにかくれゐてさふらふ、さたけのくわんじやまさよしがこどもに、たらうただよし、じらうたかよし、三らうよしすゑ、
四らうよしむね、五らうよしきよ、むつのくにには、よしともがばつし、九らうくわんじやよしつねとて、これらはみな六そんわうのごべうえい、た
だのまんぢうがこういんなり。
いたちの沙汰(あひ) 403
むかしはげんぺいさうにあらそひて、いづれしようれつもさふらはざりしかども、いまはうんれいまじはりをへだてつつ、しうじうのれいにもなほおとれ
り。くにはこくしにしたがひ、しやうはりやうけのままなりければ、くじざふじにかりたてられて、よるひるやすきこころもさふらは
P175
ず、かれらにりやうしをだにも、くだしたうづるほどならば、よろこびをなしてませまゐり、へいけをほろぼし、きみをみくらゐ
につけまゐらせむこと、じじちはめぐらしさふらふまじと、かやうにたのもしげにまをされたりければ、みやはこのことおほ
きにおぼしめしわづらはせたまひけるが、そのころこあこまのだいなごんすけみつがまご、びんごのぜんじこれみつがこに、せう
なごんこれながは、ならびなきさうにんなりければ、にんさうせうなごんとぞまをしける。あるときかれがみやをみたてまつつて、きみは
みくらゐのさうわたらせたまふ、あひかまへててんがのおんことおぼしめしすてさせたまふべからずとまをしたりしにあはせて、三ゐにふ
だういままたかやうにまをされければ、これひとへにてんせうだいじんじやう八まんぐうのおんはからひにこそと、おぼしめし、まづくま
のにさふらふ十らうよしもりをめして、くらんどになさる。ゆきいへとかいみやうしてりやうしをたぶ。おなじき四ぐわつ廿八にちにみやこをたつ
て、あふみのくによりはじめて、くにぐにのげんじどもに、つげしらせてこそとほりけれ。おなじき五ぐわつ八かのひ、いづのくににくだりつ
き、るにんさきのうひやうゑのごんのすけよりともに、りやうしをたてまつる。せんじやうよしのりはあになりければ、たばんとてひたちのくにへもくだり
けり。きそのよしなかはをひなりければ、しらせんとて、それよりせんだうへこそかかりけれ。さるほどにほうわうは、しゆん
くわんなりちかなんどがやうに、とほきくにはるかのしまへもながしうしなはんずるにこそと、おぼしめされけれども、さはな
くて、ただとばどのにして、ことしはふたとせにならせおはします。おなじき五ぐわつ十二にちのとりのこくばかりに、とばどの
には、おほきなるいたちのおびただしうなきて、ごしよちうをはしりければ、ほうわうおんうらかたあそばして、あふみの
かみなかかねが、いまだそのころつるくらんどにて、おんまへちかうさふらひけるをめされて、これやすちかがもとにもちてゆき、きつとか
むがへさせよとおほせければ、なかかねかしこまりうけたまはり、やすちかがもとにゆきむかふ。やがてかんがへてまゐらせけり。なかかね
P176
いそぎかへりまゐりけれども、よははやふけぬ。しゆごのぶしきびしうして、もんをもあけざりければ、なかかねもとよ
りあんないはしつたり、ついぢをのぼりこえ、おほゆかのしたをくぐつて、きりいたよりかんじやうをたてまつる。ほうわうひらいてえい
らんあるに、三かがうちのおんよろこびならびにおんなげきとぞうらなひまをしける。三かがうちのおんよろこびとはなになるらんとおぼしめしけ
れば、いつとなくとばどのに、おしこめられて、わたらせたまひたりしを、さきのうたいしやうむねもりのきやうをりふしまをさ
れしによつて、とばどのをいだしたてまつつて、八でうからすまるなるびふくもんゐんのごしよへいれたてまつる。これぞおんよろこびなる。
またおんなげきとはなになるらんとおぼしめしければ、おなじき十四かのとりのこくばかりに、たかくらのみやのごむほんといふことあらはれ
て、きやうちうのさうどうなのめならず、これぞおんなげきなる。さきのうたいしやうむねもりのきやうはやむまをたてて、ふくはらへこのよしをまをされ
たりければ、にふだうおほきにいかつて、せんずるところみやをばとりたてまつつて、とさのはたへながしたてまつるべしとて、じやう
けいにはとうだいなごんさねくに、ぶしにはではのはんぐわんみつなが、げんたいふのはんぐわんかねつなをさきとして、つがふそのせい三百よきに
てぞむかはれける。このげんたいふのはんぐわんかねつなとまをすは、三ゐにふだうのじなんなり。へいけかやうに三ゐにふだうみやをすすめ
まゐらせけるとは、ゆめにもしらざりけるによりてなり。みやは五ぐわつ十五にち、よるのくもまのつきをながめさせたまひて、
なんのおんゆくへもおぼしめしよらざりつるに、ここに三ゐにふだうのつかひとて、ふみもつたるをとこひとり、いそがはし
げにてまゐりたり。
信連合戦 404
P177
みやのおめのとご、六でうのすけのたいふむねのぶこれをよむ。ごむほんすでにあらはれさせたまひて、六はらよりくわんにんどもが、
べつたうせんをうけたまはつて、おんむかへにまゐりさふらふ、とうとうごしよちうをいでさせたまひて、みゐでらへいらせたまふべし、にふ
だうもこどもらうじうひきぐして、やがてまゐらむずるさふらふとぞよみあげたる。みやはこのことおほきにおぼしめしわづらはせたまひ
ければ、ちやうさひやうゑのじようはせべののぶつらがまをしけるは、べちのやうやさふらふべき、ただにようばうのしやうぞくをからせたまふべし
とまをしたりければ、みやはかさねたるぎよいに、いちめがさをぞめされける。くろまろとまをすわらはに、つつみ
にものいれていただかせらる。すけのたいふむねのぶはひたたれにたまだすきあげて、からかさもつておんともつかまつる。たとへ
ばせいしがぢよをむかへてゆくがごとくにて、たかくらおもてのこもんよりいでさせたまひ、たかくらをのぼりに、こんゑを
ひがしへすぎさせたまひけるに、おほきなるみぞのありけるを、いとものかるやかに、さつとこえさせたまひければ、
みちゆきびとがたちとどまつて、あれはしたなのにようばうの、みぞのこえやうかなと、あやしげにみとがめまゐらせければ、
みやは、いとどあしばやにこそすぎさせたまひけれ。みやはなにごとも、とりあへぬおんさまにて、さしものてうはうどもを、
とりわすれさせたまひけるなかにも、せみをれこえだとて、ふたつのおんふえをつねのおんまくらにとりわすれさせたまひたりけるを、たちかへ
つてもとらまほしくぞおぼしめされける。さるほどにごしよのおんるすには、のぶつらいちにんさふらひけるが、みぐるしきもの
あらば、とりしたためんとて、ごしよちうをはしりめぐつてみけるに、このおんふえをみつけたてまつつて、あなあさま
し、これはきみのさしものごひさうにて、あんなるものをとて、五ちやうがうちにて、おつつきまゐらせければ、みやなのめ
ならずぎよかんあつて、われしなば、このふえをごくわんにいれよとぞおほせける。みややがて、なんぢもおんともにさふらへかしと
P178
おほせければ、のぶつらかしこまつてまをしけるは、あのごしよにのぶつらがさふらふことをば、きやうちうのじやうげみなぞんぢのことにてさふらふに、
それもそのよは、おちてなかりけりなんどいはれむこと、ゆみやとりは、かりにもなこそをしうさふらへ、くわんにんども
にひつとあひしらひあひしらうて、一ぱううちやぶつて、やがてまゐらむずるさふらふとてはしりかへる。のぶつらがそのよの
しやうぞくには、とくさのかりぎぬのしたに、もえぎのはらまきをき、ゑふのたちをぞはいたりける。三でうおもてのそうもん
をも、たかくらおもてのこもんをも、ともにひらいてぞまちかけたる。あんのごとくそのよのやはんばかりに、六はらの
つはものども三百よきにておしよせたり。なかにもげんたいふのはんぐわんかねつなは、ぞんずるむねありとて、はるかのもんぜんにひかへ
たり。ではのはんぐわんみつながはむまにのりながら、ごもんのうちにかけいり、おほにはにひかへ、あぶみふんばりつつ
たちあがり、だいおんじやうをあげて、みやのごむほんすでにあらはれさせたまひて、六はらよりくわんにんどもがべつたうせんをう
けたまはつて、おんむかへにまゐりてさふらふ、とうとうごしよちうをいでさせたまふべしとまをしたりければ、のぶつらおほゆかにたつ
て、たうじはごしよにてもさふらはず、おんものまうでのおんるすにてさふらふ、なにごとぞことのしさいをまをされよといひければ、
みつなが、なんでうこのごしよならではいづくにかわたらせたまふべき、そのぎならば、しもべどもまゐつてさがしたてまつれとぞまをし
ける。のぶつらおほきにいかつて、ものにもこころえぬくわんにんどもがもののまをしやうかな、たとひきみのてうてきとならせたまひて、いつ
てんがをかたきにうけさせたまはんからに、むまにのりながら、ごもんのうちへまゐるだにも、きつくわいなるに、あまさへ
しもべどもまゐつて、さがしたてまつれとはいかでかまをすぞ、ごぜんにはさひやうゑのじようはせべののぶつらがさふらふぞ、まぢかうよつて
あやまちすなとぞまをしける。はるかのもんぜんにひかへたりける、げんたいふのはんぐわんかねつなこのよしをききて、をめいてか
P179
けいり、かねつながらうどうに、かねたけといふやつはきこゆるだいりきのがうのものなりけるが、うちもののさやをはづし、のぶつら
をめにかけて、おほゆかのうへへきつてのぼる。のぶつらこのよしをみるよりも、かりぎぬのおびひぼひつきつてなげのけ、
ゑぶのたちとはいへども、みをばすこしこころえてうたせたりけるを、ぬきあはせ、かたきはおほたちおほなぎがたにてふ
るまへども、のぶつらがゑふのたちにきりたてられて、あらしにこのはのちるやうに、にはへさつとぞおりたりける。ころ
はさつきもちのよの、ひとむらさめのくもまより、ありあけのつきのあらはれいでて、あかかりけるに、のぶつらはあんないしや、
かたきはぶあんないなり、ここのめんらうにおつかけてははたときり、かしこのつまりにおつつめてはちやうと
きる。せんじのおつかひをば、いかでかくはつかまつるぞといひければ、せんじとはなんぞとて、さんざんにこそはきりたりけ
れ。たちゆがめばをどりのき、ふみなほしおしなほし、もみにもうでぞきつたりける。たちどころにくきやうのつはもの
ども十四五にんぞきりふせたる。そののちたちのさき五すんばかり、うちをつてすててけり。こしのかたなをさぐりけれども、
さやまきおちてなかりければ、ちからおよばずおほてをひろげ、もんぜんのかたへとゆくほどに、ここにてつかの八らうがなぎなたもつて
いできたり。のぶつらなぎなたにのらむととんでかかる。いかがはしたりけむ、あしうのりそんじ、ももをぬいさまに
つらぬかれ、のぶつらこころはたけうすすみけれども、たいぜいのなかにとりこめられて、とりこにこそせられけれ。そののちごしよ
ちうをさがしたてまつりけれども、みやわたらせたまはざりければ、のぶつらばかりからめとつて、六はらへこそかへられけれ。
つぎのひのまんだあさ、さきのうだいしやうむねもりのきやうおほゆかにたつて、のぶつらをおつぼのうちにめしいだし、まことやわをとこは、せんじ
とはなんぞとてきつたるか。のぶつらさんさふらふ、このほどあのごしよを、よなよなものがうかがひさふらふを、なんでうことのある
P180
べきとおもひあなづつて、えうじんをもつかまつりさふらはぬところに、このよのやはんばかりに、なにかはしらず、よろうたるもの
が参百きばかりうちいつてさふらふを、なにものぞととうてさふらへば、せんじのおつかひとなのるあひだ、たうじはせつたう、がうたう、さんぞく、
かいぞくらなんどいふやつばらどもが、あるひはせんじのおつかひ、あるひはきんだちのおいでなんど、かねがねなのるとうけたまはつてさふらふあひだ、
せんじとはなんぞとてきつた(イ切りたん候)さふらふ。うたいしやう、せんじのおんつかひあつこうし、ちやうのしもべにんじやうせつがい、かたがたもつてきくわいな
り、さだめてみやのおんありかをば、しりまゐらせたるらん、よくよくせめとうて、そののちかはらにひきいだし、かうべをはねさふら
へとぞのたまひける。のぶつらおほきにあざわらつて、せんじのおつかひあつこうし、ちやうのしもべにんじやうせつがいこともなげにさふらふや、
かねよきたちだにももつてさふらはば、三百にんのくわんにんどもをば、よも一にんもあんをんにてはかへしさふらはじ、これはがう
たうめらおどさんためのゑふのたちにてさふらへば、なにほどのことさふらふべき、ことごとしうとぞまをしける。そのうへみやの
おんありかをばしりまゐらせずさふらふ、たとひしりまゐらせてさぶらふとも、さふらひほどのものが、まをさじとおもひきつてんずることを、きう
もんにおよんでまをすべきや、みやのおんために、かうべをはねられまゐらせんこと、こんじやうのめんぼくめいどのおもひでなるべしとて、
そののちはものもまをさず。へいけのさぶらひどもらうせうなみゐたりけるが、あつぱれがうのもののてほんかなと、くちぐちにほめけ
れば、あるもののまをしけるは、あれがかうみやうは、いまにはじめぬことぞかし、かれが十六のとし、だいばんしうのとめか
ねたるがうたう六にんを、二でうほりかはに、ただ一にんおひかけ、四にんきりふせ、二にんをからめとつて、そのときなされたりしさひやう
ゑのじようぞかし、きられんことのをしさよをしさよと、くちぐちにをしみたてられて、うたいしやうもさすがをしうやおも
はれけん、もしおもひなほつたらば、たうけにほうこうをもいたせかしとて、はうきのひのへぞながされける。その
P181
のちへいけほろび、げんじのよとなつて、かまくらにくだり、かぢはらへい三かげときについて、ことのこんげんをくはしうまをしたり
ければ、かまくらどの、みやのおんために、こころざしのふかきほどをかんじたまひて、のとのくににごおんありとぞきこえける。
競 405
みやはたかくらをのぼりに、こんゑをひんがしへ、かはをわたつて、によいざんにかからせおはします。いつならはせたまふべきな
れば、おんあしかけぬ、はれぬ、ちあえつつ、あゆみぞかねさせたまひける。なつぐさのしげみがもとのつゆけさも、さこ
そはおんところせくおぼしめされけめ。むかしきよみはらのてんわうの、おほとものわうじにおそれさせたまひて、やまとのくによし
ののやまへ、わけいらせたまひしおんことまでも、いまこそおぼしめししられけれ。しらぬやまぢにかからせたまひ
て、よもすがらまよはせおはします。とかくしてあかつきがた三ゐでらへいらせたまひけり。みやだいしゆにむかつて、
おほせられけるは、かひなきいのちのすてがたさよ、しゆとをたのんでこれまできたれるなりとおほせければ、だいしゆかしこまつてうけ
たまはり、やがてほうりんゐんにごしよしつらうておきたてまつり、ぐごしたててまゐらせけり。おなじき十六にちに、こんゑ
がはらにさふらひけるげん三ゐよりまさにふだう、いへのこらうじうひきぐして、つがふそのせい三百よき、やかたにひかけ、みゐでらへこそ
まゐりけれ。としごろひごろもあればこそありけめ、いかなればことししも、三ゐにふだう、かかるむほんをおもひ
たたれける、ゆゑをいかにとまをすに、ごにちにきこえしは、さきのうだいしやうむねもりのきやうの、ふしぎのことをのみしたまひ
けり。さればひとのよにあればとて、いふまじきことをいひ、すまじきことをすることをば、かねてよくみなひとの
P182
しりよあるべきことどもなり。たとへばそのころ三ゐにふだうのちやくし、いづのかみなかつなのもとに、きこえたるめいばあり。かげな
るむまのいつきばかりなるが、なをばこのしたとぞまをしける。うたいしやうこのよしをつたへききたまひて、いづのかみのもとへししや
をたてて、それにきこえさふらふこのしたを、たまはつてみさふらはばやと、のたまひつかはされたりければ、いづのかみのごへん
じには、さるむまをもつてさふらひつるを、このほどあまりにのりそんじて、いたはらせんがために、ゐなかへつかはして
さふらふ、やがてめしこそのぼせさふらはめと、へんじせられたりければ、うたいしやうさてはとておはしけるところに、へいけ
のさぶらひどもらうせうならびゐたりけるが、あるもののまをしけるは、あつぱれそのむまはをととひまでもさふらひつるものを、き
のふもさふらひし、けさもにはのりさせさふらひつるものをなんど、くちぐちにまをしあはれければ、うたいしやう、さてはをしむご
ざんなれ、にくしそのむまこへとて、あるひはさぶらひしてはせはせつ、あるひはふみなんどして、ひびに五六どなんどぞ、
こはれける。ちちの三ゐにふだうどのこのよしをききたまひて、いづのかみをようでのたまひけるは、たとひこがねをもつてむまにした
りといふとも、さやうにひとのこばむを、をしむべきやうやある、はやはやそのむま六はらへつかはすべしとのたま
へば、いづのかみのごへんじには、まつたうむまのをしきにてはさふらはず、ただけんゐについて、こはるるとなれ
ば、やすからずさふらうてこそ、いままでもつかはしさふらはざりつれとて、ちからおよばず六はらへ、このむまをこそつ
かはされけれ。うたいしやうひきまはさせ、みるべきほどみて、むまはよきむま、ただしぬしがをしみつることこそに
くけれ、やがてなのりを、かなやきにしさふらへとて、いづのかみなかつなといふかなやきをしてぞおかれたる。きやく
じんきたつて、これにきこえさふらふこのしたを、たまはつてみさふらはばやとまをすときは、あのなかつなめがことさふらふか、あのなかつなめひきいだ
P183
せ、なかつなめにくつわはげよ、うてはれなんどぞのたまひける。いづのかみこのよしをききたまひて、ちちの三ゐにふだうどのにまをさ
れけるは、いつかむまをばうてとはいへども、はれとはいふ、さしもひとのみにかへてをしかりつるむまを、けん
ゐについて、こはるるをだにもやすからずさふらふに、けふこのごろなかつながむまゆゑに、てんかのわらはれぐさとなりさふら
ひぬることこそ、かへすがへすもくちをしうさふらへ、はぢをみむよりは、しにをせよとまをすことのさふらふものをなんど、やうやう
にまをされたりければ、三ゐにふだうまことに、ひとにさやうにせられては、いのちいきてもなににかはせん、さりな
がらびんぎをうかがふみにてこそあれとて、おはしけるが、さすがわたくしにてはおもひもたたで、みやをすす
めまゐらせけるとぞうけたまはる。これにつけてもあにのおとどのことをのみぞ、いまさらしのびまをしける。あるときおとどさんだい
のついでに、ちうぐうのおんかたへまゐらせたまひたりけるに、いづかたよりともしらぬ、おほきなるくちなはの、お
とどのおはしけるさしぬきのひだりのりんをはひまはりけるあひだ、おとどこのよしかくとまをさば、にようばうたちもさわがせたまひ、
ちうぐうもさだめておどろかせたまひなんずと、おもはれければ、ひだりのてにては、くちなはのかしらをおさへ、みぎのてに
ては、ををおさへ、やはらなほしのそでのうちにひきいれつつ、おんまへをついたつてぞまかりいでられける。おとどちうもん
におはして、六ゐやさふらふ六ゐやさふらふとめされけれども、をりふしひと壱にんもさふらはざりけるに、いづのかみなかつなの、いまだそ
のころゑぶのくらんどにてさふらはれけるが、なかつなとおいらへまをしてまゐられたり。おとどこのくちなはをたぶ。なかつな
たまはつて、でんじやうのこにはをへて、ゆばどのにいで、みくらのこどねりをめして、これたまはれとのたまへば、きや
つかしらをふつてにげさりぬ。そののちわたなべのきほふの、たきぐちをめして、このくちなはをたぶ。たきぐちたまはつてすて
P184
てんげり。つぎのひのまんだあさ、おとどよきむまにくらおかせ、たち一ふりそへて、いづのかみのもとへおくりつかはさ
るとて、さてもきのふのふるまひこそ、いうにみえられさふらへ、このむまはのりいちのむまなり、やいんにおよんで、ぢんげ
よりけいせいのもとなんどへかよはれんずるとき、もちひらるべうさふらふとのたまひつかはされたりければ、いづのかみのごへん
じには、六ゐのことば、おとどのごへんじなりければ、まづおんむまかしこまつてうけたまはりさふらひぬ、さてもきのふのおんふるまひ
は、げんじやうらくににてさふらひしかとぞまをされける。いかなればあにのおとどはかくこそゆゆしうおはせしに、おん
おとうとのむねもりは、さしもひとのをしむむまをこひとつて、てんがのだいじにおよびぬるこそあさましけれ。なかにもわた
なべのきほふのたきぐちがしゆくしよは、六はらのうらかきのうちなりければ、おくればせして、とどまりたるよしを、う
たいしやうききたまひて、きほふめせとてめされけり。めされてきほふまゐりたり。うたいしやうやがていであひ、たいめんしたまひて、など
なんぢはさうでんのしゆ三ゐにふだうがともをばせでとどまりたるぞ、いかさまにもぞんずるむねのあるかとのたまへば、きほふさん
さふらふ、ひごろはしぜんのこともさふらはば、まつさきかけて、うちじにつかまつるべうぞんじさふらひつるが、こんどはなにとおもはれさふら
ひてやらん、このよしかくともしらせられさふらはねば、まかりとどまりさふらふ、うたいしゃう、としごろなんぢがこのへんをいでいりつるを、
あつぱれめしつかはばやとおぼしつるに、たうけにほうかうをいたせよかし、三ゐにふだうがおんには、すこしもおと
るまじきぞとよ、ただしてうてき三ゐにふだうにどうしんをやすべき、またたうけにほうこうをいたさんとやおもふとのたまへば、きほふ、
さんさふらふ、たとひさうでんのよしみさふらふとも、いかでかてうてきにどうしんをばつかまつりさふらふべき、ぜんあくたうけにほうこうをいたさうず
るさふらふとまをしたりければ、うたいしやうなのめならずよろこびたまひていりたまふ。きほふはあるかさふらふさふらふとて、あしたよりゆ
P185
ふべにおよぶまでしこうす。そのひのくれがたに、きほふまをしけるは、みやならびに三ゐにふだうどの、三ゐでらにとうけたまはりさふらふ
が、わたなべたうには、ぞんぢやうそれがしたれがしなんどぞさふらふらん、おもふにこころにくうもさふらはず、さだめてようち
なんどをもせさせられさふらはんずらむ、しぜんのこともさふらはば、えりうちなんどをもつかまつるべうぞんじさふらふが、このほどのり
てようにあひぬべきむまをもつてさふらひつるを、したしきやつにぬすまれて、むま一ぴきももちさふらはず、あはれさ
もしかるべうさふらはば、おんむま一ぴきくだしたまはりさふらはばやとまをしたりければ、うたいしやういかにもして、あらせつ
けばやとおもはれければ、しろあしげなるむまのなをば、なんれう(イなんちやう)とつけて、さしもひざうせられたり
けるめいばに、きんぷくりんのくらおいてぞたうだりける。きほふおんむまたまはつて、なのめならずよろこび、しゆくしよにかへり、
あはれさらば、ひのとうしてくれよかし、このむまにうちのりて三ゐでらにはせまゐり、みやならびに三ゐにふだうどののまつさきか
けてうちじにせんと、おもひけるこそおそろしけれ。しだいにくらうもなりしかば、さいしどもをばしのばせて、
みづにちどりをおしたる、ひやうもんのひたたれに、きくとぢおほきらかにしてぞきたりける。ぢうだいのきせなが、ひ
をどしのよろひをき、くはがたうつたる五まいかぶとのををしめ、いかものづくりのたちをはき、廿四さいたるおほなかぐろのや
おひ、ぬりごめとうのゆみもちて、たきぐちがこつはうをわすれじと、たかのはにてはいだりける、まとや一てぞさしそ
へたる。げにんのをのこにたてわきはさませ、やかたにひかけ、三ゐでらへこそまゐりけれ。そののち六はらには、きほふがしゆくしよ
より、ひいできたれりとてさうだうす。うたいしやうまづ、きほふはあるか。さふらはずとまをす。すはやきやつにだしぬかれつ
ることこそやすからね、しやつおつかけ、いけどりにせよとのたまへば、へいけのさぶらひども、らうせうなみゐたりけるが、い
P186
やいやきほふはきこゆるだいりきのがうのものにて、つよゆみせいひやうなり、廿四のやにては、まづ廿四にんはいころされなんず、
おとなせそとて、むかふものこそなかりけれ。そののち三ゐでらには、きほふがさたあつて、あつぱれこのもの一にんを
ば、めしぐせらるべうさふらひつるものをなんど、くちぐちにまをしあはれければ、三ゐにふだうかねてよつく、きほふがこころの
そこをやしりたまひたりけむ、いたづらにそのもの、とらへからめられはよもせじ、みよたんだいまこれへまゐ
らうずるものをとのたまふところに、きほふつつとまゐりたり。さればこそとぞのたまひける。きほふまをしけるは、いづのか
うのとののこのしたがかはりに、六はらのなんれうをこそとつてまゐりてさふらへとまをしたりければ、いづのかみなのめな
らずよろこびたまひて、やがてそのむまをきほふにこうて、をがみをきりすてさせ、むかしはなんれう、いまはたひらのむねもりにふだう
じやうはんといふかなやきをして、おなじ十八にちのまんだあさ、六はらのそうもんのうちへおひいれられたりければ、
へいけのさぶらひども、これをみつけてさうどうす。うたいしやう、こんど三ゐでらへよせたらんには、ひとをばしるべからず、まづ
きほふめをいけどりにせよ、のこぎりにてくびきらんずるものをとて、をどりあがりをどりあがりいかりたまへども、いまだなんれうがをがみ
もおひず、かなやきもまたうせざりけり。
三井寺より山門へ牒状 406
さるほどに三ゐでらには、みやいらせたまひてのち、おほせきこせきほりきつて、かひがねならし、だいしゆおこつてせんぎす。きん
じつせじやうのていをみるに、ぶつぽふのすゐびわうぱふのらうろうただこのときにあたれり。いまきよもりにふだうがぼあくをいましめずんば、い
P187
づれのひかくわいけいをきよめんや。しかるにたかくらのみやたうじへにふぎよのこと、これひとへにてんせうだいじん、しやう八まんぐう、しんらだいみやう
じんのみやうじよにあらずや。てんじんちるゐもやうがうをたれ、ぶつりきしんりきもさだめてかうぶくをくはへたまふべし。そもそもほくれいはゑん
とん一みのけうもんなり、なんとはまたげらふとくどのかいぢやうなり、てふそうのところなどかくみせざるべきとて、ならへもやまへも
てふじやうをこそおくりけれ。まづさんもんへのじやうにいはく、
をんじやうじてふすえんりやくじのがことにがふりよくをいたしてたうじのぶつぽふはめつをたすけられんとこふじやう
みぎにふだうじやうかいがために、ぶつぽふをほろぼし、わうばふをかたぶけむとす。うちにつけほかにつけ、なげきをなしうらみをなすあひだ、
しうたんきはまりなきところに、こんげつ十五にちのよ、一ゐんだい二のみこ、たかくらのみやふりよのなんをのがれむがために、ひそかににふじ
せしめたまふところなり。ここにゐんぜんとがうして、いだしたてまつるべきむねしきりにせめありといへども、しゆと一かう
これををしみたてまつる。よりてかのぜんもんぶしをたうじへいれんとす。たうじのぶつぽふのすゐびまさにこのときにあたれり。しよしゆ
なんぞしうたんせざらむや。それえんりやくをんじやうりやうじは、もんぜき二にあひわかるといへども、がくするところは、おなじくゑんとん一
みのけふもんなり。たとへばとりのさうのつばさのごとし。またはくるまの二のわににたり。一ぱうかけむにおいては、いかでかその
なげきなからんやは。ことにがふりよくをかうぶつて、たうじのぶつぽふはかいをたすけらるべくんば、ねんらいのゐこんをわすれて、ぢう
せんのむかしにふくせん。しゆとのせんぎかくのごとし。たいしゆら
ぢしよう四ねん五ぐわつのひ
とぞかいたりける。
P188
三井寺より南都への牒状 407
さるほどにさんもんには、このじやうをひけんして、なんぞたうじのまつじのみとして、とりのさうのつばさくるまのりやうりんなむどおさへ
て、かくでうらうぜきなりとて、へんてふにもおよばず。つぎになんとへのじやうにいはく、
をんじやうじてふすこうふくじのがことにがふりよくをかうぶつてたうじのぶつぽふはめつをたすけられんとこふじやう
みぎぶつぽふのしゆしようなることは、わうぽふによる。わうはふまたちやうきうなることも、かならずぶつぽふによる。ここにしきりのとしよりこの
かた、へいしやうごくぜんもんじやうかいがためにぶつぽふをほろぼし、てうせいをみだる。うちにつけほかにつけ、なげきをなしうらみをなすあひだ、
しうたんきはまりなきところに、こんげつ十五にちのよ、一ゐんだい二のみこ、たかくらのみやふりよのなんをのがれんがために、にはかににふじ
せしめたまふところなり。ここにゐんぜんとがうしていだしたてまつるべきむね、しきりにせめありといへども、しゆと一かうこれををしみ
たてまつる。よりてくわんぐんをはなちつかはさるべきむね、そのきこえあり。ぶつぽふといひわうぱふといひ、一じにまさにはめつ
せんとす。それたうのゑしやうてんしは、くわんぐんをおこして、ぶつぽふをほろぼさしめむとせしとき、しやうりやうせんのしゆと
かつせんをいたして、これをふせぐ。いはんやむほん八ぎやくのはいにおいてをや。なかんづくなんきやうれいなくして、つみなきちやう
じやをはいるせらる。このときにあらずんば、いづれのひかくわいけいをかうぶらんや。しゆとねがはくは、うちにはぶつぽふはめつを
たすけ、ほかにはまたあくぎやくのはんるゐをしりぞけば、どうしんのいたり、ほんくわいにたりぬべし。しゆとのせんぎかくのごとし。
ぢしよう四ねん五ぐわつのひ だいしゆら
P189
とぞかきたりける。
南都より円城寺への返牒 408
そののちなんとには、このでうをひけんして、とうだいこうふくてらでらのだいしゆ、しふゑしてせんぎす。せんぎことをはつてのち、やがてまゐ
るべきよしのへんてふをこそおくりけれ。そのじやうにいはく、
こうふくじてふすをんじやうじのがことにらいてふいつしにのせられたり
みぎさきのだいじやうだいじんたひらのあそんきよもりがために、きじのぶつぽふをほろぼさしめむとするよしのことてふす。ぎよくせんぎよく
くわりやうかのしうぎをたつといへども、きんしやうきんくこれみなおなじく、一だいのけうもんよりいでたり。なかんづくなんきやう
ほつきやうともににて、によらいのでしたり。じじたじたがひにてうだつがましやうをふくすべし。そもそもきよもりにふだうはへいけの
さうかう、ぶけのぢんかいなり。そふまさもり、くらんど五ゐのいへにめしつかへて、しよこくじゆりやうのさくをとる。おほくらきやうため
ふさかしうししのこけびゐしよにふし、しゆりのだいぶあきすゑはりまのたいしゆたりしむかし、みまやのべつたうしきににんず。しかるをただ
もりしようでんをゆるされんとせしとき、とひのらうせうほうこのかきんををしみ、ないげのえいぐわおのおのばだいのしもん
になく。ただもりせいうんのつばさをかいつくろふといへども、よのためなほはくをくのたねをかろんじ、なををしむせいしそのいへに
のぞむことなし。しかるにきよもりにふだう、さんぬるへいぢぐわんねん十二ぐわつに、だいじやうてんわういつせんのこうをかんじて、ふじの
しやうをさづけられたまひしよりこのかた、たかくしやうごくにあがり、かねてひやうぢやうをたまはる。なんしあるひはたいくわいをかたじけなく
P190
し、あるひはうりんにつらなり、によしあるひはちうぐうしきにそなはり、あるひはじゆごうのせんをかうぶる。ぐんていそしみなきよくろにあゆみ、
そのまごかのをひことごとくちくふをさく。かみきうしをとうりやうし、はくしをしんだいして、みなぬひぼくじうとなす。一もこころに
たがへば、わうこうといへどこれをとらへ、へんげんみみにさかふれば、くぎやうといへどこれをからむ。しかりといへ
ども、あるひは一たんのしんみやうをのびんがため、あるひはへんしのれうにくをまぬかれんとおもひて、ばんじようのせいしなほめ
んてんのこびをなして、ぢうだいのけくんかへつてしつかうのれいをいたす。よよさうでんのけりやうをうばふといへども、じや
うさいもおそれてしたをまき、みやみやさうしようのしやうゑんをとるといへども、けんゐにはばかつてものいふことなし。かつに
のるあまり、きよねんのふゆ十一ぐわつに、だいじやうくわうのすみかをつゐぶくして、はくろくこうのみをおしながす、ほんげきのはなはだ
しきことまことにこきんにたえたり。そのときわれらすべからくは、ぞくしゆにゆきむかつてそのつみをとふべきなり。しかりと
いへども、あるひはしんりよにあひはばかつて、わうけむをしやうじ、あるひはうつたうおさへてくわういんをおくるあひだ、かさね
て一ゐんだい二のしんわうのみやをうちかこみたてまつるところに、八まん三しよかすがのだいみやうじん、ひそかにやうがうをたれ、せんひつをささ
げ、きじにおくりつけ、しんらのとぼそにあづけたてまつるところなり。これひとへにわうぱふつくべからざるむねあきらけし。したがつて
きじしんみやうをすててしゆごしたてまつるでう、がんしきのたぐひたれかずゐきせざらむや。そのときわれらゑんゐきにあつて、そのじやう
をかんずるところに、きよもりにふだうなほきようきをおこして、きじにみだれいらんとするよしのこと、ほのかにつたへう
けたまはりおよぶによつて、かねてそのよういをいたす。十七にちにたいしゆにふれ、十八にちのたつの一てんにしよじに
てふそうし、まつじにげぢし、ぐんしをえてのちあんないをたつせんとするところに、せいてうとびきたつてはうくわんをなげたり。すじつ
P191
のうつねん、一じにかいさんす。かのたうかしやうりやういつさんのひしゆ、なほぶそうのくわんびやうをかへす。いはんやわこくなんぼくりやうもん
のしゆと、いかでかぼうしんのじやるゐをはらはざらんや。よりてさうゑりやうのぢんをあはせて、よろしくわれらが
しんぱつのつげをまつべし。はやくじやうをさつしてぎたいなることなかれ。しゆとのせんぎかくのごとし。
ぢしよう四ねん五ぐわつのひ だいしゆら
とぞかきたりける。
大衆そろへ 409
おなじき廿二にちのくれかたに、げん三ゐよりまさにふだう、みやのおんまへにまゐつて、まをされけるは、さんもんはこころがはりしぬ、
なんとはいまだまゐらず、このてらばかりにては、いかにもかなひがたし、いまはみかたにらうせう二千よにんはあるら
ん、いざやこんや六はらへようちにせん、まづらうそうどもはによいがみねよりからめてにむかふべし、もしたいしゆあくそうどもを
ば、一二百にんさきだてて、しらかはのざいけにひをかけて、くだりにゆかば、きやうしらかはのはやりうのものども、あ
はやこといできたりとて、さだめてはせむかはんずらむ、そのときいはさかさくらもとにひつかけひつかけ、たたかはんまに、い
づのかみをたいしやうとして、六はらにおしよせ、かざかみよりひをかけて、ひともみもうでせめたらんに、などかだい
じやうのにふだうやきいだしうたざるべきとぞまをされける。ここにへいけのいのりしける、一によばうのあじやりしんかいといへる
ものあり。せんぎのにはにすすみいで、かうまをせばへいけのかたうどするとやおぼしめされさふらふらん、それはさもさふらふべし、い
P192
かでかわがてらのはぢをおもひ、もんとのなをもをしまではさふらふべき、いくさはせいにはよらず、はかりごとによると、
むかしよりまをしつたへてさふらへば、よくよくごえうじんあつてよせさせたまふべしと、わざわざよをふかさんがために、さしも
なきことをながながとぞせんぎしける。ここにじようゑんばうのあじやりきやうしうは、もしやうぞくにかしらつつみ、おほきなるうち
かたなおしくつろげてさすままに、せんぎのにはにすすみいで、しようこをほかにひくべからず、わがてらのほんぐわん、
きよみはらのてんわう、おほとものわうじにおそれさせたまひて、やまとのくによしののやまへわけいらせたまひしとき、そのせいわづかに十
七き、されどもいがいせにいで、みのをはりのおんせいをもつて、おほとものわうじをほろぼし、つひにみくらゐにつかせたまふ。
きうてうふところにいり、じんりんこれをあはれぶといふほんもんあり、じよをばしるべからず、きやうしうがもんとにおいては、こん
や六はらにおしよせてうちじにせよやとぞまをしける。ゑんまんゐんのたいふげんかくすすみいでて、せんぎはしおほし、いそげやす
すめ、よのふくるにとぞまをしける。まづによいがみねへむかふらうそうどものたいしやうぐんには、げん三みにふだう、じようゑんばうの
あじやりきやうしう、りつざうばうのあじやりにちいん、そつのほうげんぜんちがでしぎはう、ぜんやうをさきとして、つがふそのせい六百よにん、
かぶとのををしめてぞうつたちける。まつさかよりむかふあくそうどものたいしやうぐんには、ゑんまんゐんのたいふげんかく、りつざうばうのい
がのきみ、ほふりんゐんのおにとさ、かれら三にんは、うちものとつてはおににもかみにもあはむといふ、一にんたうせんのつはものなり。
びやうどうゐんにはいなばのりつしやがうたいふ、じやうきゐんのあらさど、すみの六らうばう、つつゐほうしにきやうのきみ、あくせうなごん、きたのゐんに
は、こんくわうゐんのろくてんぐ、たいふ、しきぶ、のと、かが、さど、びんごらなり。かやのちくご、おほやのしゆんちやう、ひのをの
ぢやうおん、四らうばう、まつゐのひご、五ちゐんのたじま、じようゑんばうのあじやりきやうしうがばうに、六十にんがうち、かがのくわうじよう、
P193
ぎやうぶ、しゆんしう、ほうしばらには、一らいほうしぞすすんだる。だうしゆにはつつゐのじやうめうめいしゆん、をぐらのそんげつ、そんえい、ぢ
けい、らくぢう、かなこぶしのげんえいばう、ぶしにはいづのかみなかつな、げんだいふのはんぐわんかねつな、六でうのくらんどなかいへ、そのこくらんどたらう
なかみつ、しもかうべのとう三らうきよちか、わたなべたうにははぶく、はりまのじらうさづく、さつまのひやうゑのじよう、きほふのたきぐち、ちやう七、となふ、
あたふのうまのじよう、きよし、すすむ、さわぐ、むつる、つづくのげんだをさきとして、つがふそのせい一千よにん、てんでにたいまつをぞもつ
たりける。さるほどにみゐでらには、みやいらせたまひてのち、おほぜきこせきほりきつて、さかもぎゆひふさぎたりけれ
ば、ほりにはしわたし、さかもぎのけむとしけるまに、じこくおしうつつて、せきのにはとりことごとくなきあひぬ。いづのかみこのよし
をききたまひて、ここにてとりないては、六はらへははくちうにこそよせんずらめ、こはいかがせんとのたまふところに、
ゑんまんゐんのたいふげんかく、しばしとよ、いこくにさるためしあり、かんのせうわうのおんとき、まうしやうくんいましめをかうぶり、
めしこめられしに、はかりごとをもつて、にげまぬかれむとせしとき、かんこくのせきにいたる。かのせきのならひに
て、にはとりのなかざるほどは、せきのとあけてとほすことなし。まうしやうくん三千のかくのうちに、てんかつといへるつはものあ
り。あまりににはとりのなくまねをよくしければ、ひとけいめいとぞまをしける。いまだうしのこくばかりのことなりけるに、てん
かつたかきところにはしりのぼり、いむけのそでを二三どほととうちたたき、にはとりのなくまねをゆゆしくしたりければ、
せきのにはとりききつけてなきあひぬ。とりのそらねにばかされて、せきのとあけてとほすことあり。これもさだめてかた
きのはかりごとにてもやなかすらん、ただよせばやといひけれども、さつきのみじかよなりければ、よはほの
ぼのとぞあけにける。いづのかみ、ようちにはさりともとこそおもひしに、ひるいくさにてはいかにもかなふまじ、
P194
さらばてどもをよびかへせやとて、おほてはまつざかよりとつてかへし、からめてはによいがみねよりひつかへす。い
づのかみのたまひけるは、せんずるところこれは、一によばうがながせんぎによつてこそよはあけたれ、にくにくしそのばうきれと
て、ばうにおしよせさんざんにこそせめたりけれ。ふせぐところのでしどうしゆく十よにんうちころさる。いちによばうもいたでおう
て、はふはふ六はらにまゐり、このよしをまをしたりけれども、へいけはいとさわぐけしきもましまさず。おなじき廿三
にちのまんだあさ、げん三ゐよりまさにふだう、みやのおんまへにまゐつてまをされけるは、ようちには、さりともとこそぞんじさふら
ひつるに、ひるいくさにてはいかにもかなひさふらふまじ、いまはなんとへいらせたまふべうもやさふらふらんとまをされたり
ければ、みやも、いまはのときにもなりしかば、よろづおんこころぼそくやおぼしめされけん、せみをれこえだとて、ふたつの
おんふえを、さしもごひさうありけるを、なかにもせみをれをば、こんだうのみろくにこめまゐらつさせたまひけり。そもそもこのおんふえ
とまをしたてまつるは、とばのゐんのおんとき、そうてうのみかどへ、こがねを千りやうおくらせおはしましたりければ、そのごへんぱうかと
おぼしくて、しやうじんのせみのごとくに、ふしつきたりけるかんちくを、ひとよおくらせおはしましたりければ、み
かどなのめならずぎよかんあつて、わがてうにるゐあるべからず、ちようはうをいかでかただはえらせらるべきとて、だいなごん
のほういんかくそうにおほせて、だんじやうにたてしちにちかぢして、ゑらせられたりしおんふえなり。さればおぼろけのぎよいうに
は、とりもいだされざりけるを、あるときのぎよいうに、たかまつのちうなごんさねいへのきやううけたまはつて、このおんふえをふか
れけるに、ただよのつねのふえのやうにこころえて、とりわすれてひざよりしもにおかれたりければ、ふえやとがめけむ、
せみをれにけり。それよりしてこそせみをれとはなづけられけれ。しかるを、このみやのつたはらせたまひて、いつの
P195
よまでもおんみをはなたじとこそおぼしめされけれども、りうげのあかつき、ちぐのおんためにとおぼえて、あはれなりしおんことなり。
なかにもじようゑんばうのあじやりきやうしうは、はとのつゑにすがり、みやのおんまへにまゐつてまをしけるは、いづくのうらわまでも、
おんともつかまつるべうぞんじさふらへども、七じゆんにあまりぎやうぶもかなひがたうてさふらへば、でしにてさふらふぎやうぶしゆんしうをまゐら
せさふらふ、このしゆんしうとまをすは、とうごくさがみのくにのぢうにん、やまだのすどうぎやうぶのじようとしみちがこにてさふらふなり、ちちのぎやうぶのじようは、さん
ぬるへいぢによしともにつれて、六でうかはらにてうちじにつかまつりさふらひぬ、このしゆんしうはきやうしうにいささかゆかりあるによ
つて、えうせうよりあとふところにおほしそだててさふらへば、こころのおくまでも、よくぞんじしつてさふらふ、いづくのう
らわまでもめしぐせらるべうさふらふと、なみだもせきあへずまをしたりければ、みやもまたいつのよしみにか、かくはまを
すらめとて、おんなみだにむせばせおはします。これをはじめとして、らうそうどもはみないとままをして、まかりとどまりさふらふ
あくそうどもは、みなおんともにぞさふらひける。みやのおんせいわづかに一千よにんにはすぎざりけり。みやは、いつかおんむまにもめし
もならはせたまふべきなれば、てらとうぢとのあひだにて、六ケどまでごらくばあり。これはさんぬるよ、うちとけぎよ
しんもならざりつるゆゑなりとて、うぢのびやうどうゐんへいれたてまつり、しばらくこれにてごきうそくあり。
橋合戦 410
さるほどに三ゐにふだうなかつないげのぶしどもは、うぢばしのなか三げんひかせてかいだてにかき、むまひやさせ、くらがひおこな
ひなんどしけるほどに、へいけのかたには、このよしをききて、あはやたかくらのみやこそ、なんとへおもむかせたまふな
P196
れ、にくにくしそのぎならば、おつかけてうちたてまつれやとて、たいしやうぐんにはにふだうの三なんさひやうゑのかみとももり、をひに
ちうぐうのすけみちもり、おとうとにさつまのかみただのり、さぶらひたいしやうには、かづさのかみただきよ、ちやくしたらうはんぐわんただつな、ひだのかみかげいへ、そのこ
たいふのはんぐわんかげたか、ゑつちうのぜんじもりとし、じらうびやうゑもりつぎ、むさしの三らうさゑもんありくにをさきとして、つがふそのせい三万
よき、ぢしよう四ねん五ぐわつ廿三にちのむまのこくばかりに、こばたやまをうちこえて、うぢばしのつめにぞおしよせたる。むかひの
びやうどうゐんに、かたきありとみてんげれば、へいけのさぶらひども、えびらのほうたてうちたたき、てんもひびき、だいちも
ゆるぐばかりに、ときつくること三ケどなり。へいけのさぶらひどもあまりにいさみほこつてわたるほどに、せんぢんがはし
をひいたぞ、あやまちすな、はしをひいたぞ、あやまちすなと、いひけれども、ちかきものこそききつけけれ、ご
ぢんはこれをききつけず、ただおしにおしてわたるほどに、せんぢん二百よきおしおとされ、みづにおぼれてながれけり。そののち
げんぺいたがひに、はしのさうのつめにうつたつてやあはせす。げんじのかたには、わたなべたうのいけるやぞ、ものには
つよくとほりける。三ゐにふだうは、ちやうけんのひたたれに、しなかはをどしのよろひをき、ゆみをつよくひかんとて、
わざとかぶとはきたまはず。ちやくしいづのかみなかつなは、こんぢのにしきのひたたれに、くろいとをどしのよろひをき、けふをさいごとたたかは
んとて、これもかぶとはきざりけり。五ちゐんのたじまは、もくらんぢのひたたれに、ひをどしのよろひをき、くはがたうつたる五まい
かぶとのををしめ、しらえのおほなぎなたのさやをはづし、はしのつめにすすみいで、むかひのきしより、さしつめひきつめさん
ざんにいけるやの、あがるやをばついくぐり、さがるやをばをどりこえ、むかうてくるやをば、なぎなたにてきつ
ておとす。しよにんめをすます。それよりしてぞ、やぎりのたじまとはまをしける。つつゐのじやうめうめいしゆんは、かちのひた
P197
たれに、くろかはをどしのよろひをき、くはがたうつたる五まいかぶとのををしめ、いかものづくりのたちをはき、廿四さいたるおほ
なかぐろのやおひ、ぬりごめどうのゆみに、このむしらえのおほなぎなたをぞとりそへたる。はしのつめにすすみいで、だいおんじやうをあ
げて、ものそのものにてはなけれども、みやのおんかたに、つつゐのじやうめうめいしゆんとて、をんじやうじにおいては、そのかく
れなし、へいけのかたに、われとおもはむずるひとびとは、すすめやむかへ、げんざんせんとて、やたばねといて、
おしくつろげさしつめひきつめさんざんにいけるに、やにはにかたき十二きいおとし、十一きにておはせたれば、
ひとつはのこつてえびらにあり。いまはゆみをもからとなげすて、えびらをもといてかはへなげいれ、つらぬきぬいて、は
だしになり、かぶとのををつようしめける。かたきみかたあれはいかにとみるところに、はしのゆきけたを、さらさら
とはしりわたる。ひとはおそれてわたらぬを、じやうめうがここちには、ただ一でう二でうのおほぢとこそはふるまひけれ。まづむ
かふかたきをば、なぎなたにて四にんなぎ、五にんにあたるとき、なぎなたうちをつてすててけり。つぎにたちをぬいてきり
けるが、三にんきりふせ、四にんにあたるとき、あまりかぶとのはちにつよううちあて、めぬきのもとよりちやうとを
れ、ぐつとぬけて、かはへざんぶとぞいれにける。たのむところはこしがたな、ひとへにしなんとのみぞくるひける。
ここにじようゑんばうのあじやりきやうしがうしもぼうしに、いちらいほうしとて、しやうねん十八さいになりけるが、もくらんぢのひたたれにもえぎ
のはらまきをき、三まいかぶとのををしめ、うちものぬいてかたになげかけ、これもはしのゆきけたを、さらさらとはしりわた
り、じやうめうはたつたり、よくべきやうはなかりけり。ここをせんどとたたかひけるじやうめうが、かぶとのてつさきにてうち
かけ、あしうさふらふじやうめうばうとて、かたをゆらりとをどりこえてぞたたかひける。じやうめうはいちらいをうたせじとつづく、いち
P198
らいはまたかたきのなかにわつていり、さんざんにたたかひ、ぶんどりあまたして、わがみもうちじにしてんげり。そのまに
じやうめうは、はしのゆきけたを、はふはふびやうどうゐんのしばにかへり、もののぐぬきおき、よろひにたつたるやめをかぞ
ふれば六十三、うらかくやは五ところなり。されどもいたでならねば、かしらをつつみ、じやうえをき、ゆみきりをつて
つゑにつき、あみだぶまをしてなんとのかたへぞまかりける。そののちじようめうがわたつたるをてほんにして、かたきみかた
はしのゆきけたをはしりわたりはしりわたりしようぶをす。とほきをばゆみにてい、ちかきをばたちにてきり、くまでにかけ
てとるもあり、とらるるもあり、ひきくんでさしちがへてかはへいるものもあり、はしのうへのいくさ、ひいづるほどにぞ
みえたりける。さぶらひたいしやうかづさのかみただきよ、たいしやうぐんのおんまへにまゐつてまをしけるは、いまはかはをわたさんずるにて
さふらふが、をりふしさみだれのころにて、みかさはるかにまさりたり、さればよどいもあらひかはちぢへやまゐりさふらふべき
とまをしけるところに、ここにしもつけのくにのぢうにん、あしかがのたらうとしつながこに、またたらうただつなとて、しやうねん十七さいなりけるが、
しげめゆひのひたたれに、もえぎをどしのよろひをき、くはがたうつたる五まいかぶとのををしめ、あししろのたちをはき、廿四さい
たるきりふのやおひ、しげどうのゆみもつて、れんせんあしげなるむまのふとくたくましきに、きんふくりんのくらおいて、のつたりけるが、
すすみいでてまをしけるは、あしうもまをさせたまひたるかづさどのかな、さればよどいもあらひかはちぢをば、てんぢくしんたんのぶし
がまゐつてわたすべきか、それもおもふに、われらこそわたさんずれ、めのまへなるかたきをのがしたてまつつて、なんとへ
いれまゐらせなば、よしのとつがはのおんせいがまゐりては、いよいよみかたのおんだいじなるべし、とうごくにはとねがは
とまをすおほかはあり、このながゐのわたり、すぎのわたりとて、ともにだいじのわたりあり、せんねんちちぶとあしかがなかをたがひ、
P199
かつせんをつかまつりさふらひしに、あしかが、につたのにふだうをかたらうて、おほてはこのながゐのわたり、すぎのわたりへはにつた
のにふだう、からめてにまはりさふらひしに、すぎのわたりにいくらもよういしたりしふねどもを、ちちぶがかたよりわられて、
につたのにふだうのまをししは、かはをへだてたるいくさに、ふねがなければとて、ふちせをきらふやうやある、みづにおぼれて
しなばしね、いざわたらむとて、たいぜいがむまいかだをつくつてわたせばこそ、とねがはをもわたしけめ、このかはの
ていをみるに、とねがはにはいくほどまさじおとらじな、とのばらいざわたさんとて、たづなかいくり、たいぜいがまつさ
きにこそうちいれたれ。つづくつはものたれたれぞ、たいこ、おほむろ、ふかす、やまかみ、なはのたらうひろずみ、さぬきの四らうたいふ、
をのでらのぜんじたらう、へやこの七らう、らうどうには、とねの六四らう、きりやた五らう、うぶがたじらう、おほをかのあん
五らうをさきとして、つがふそのせい三百よき、くつばみならべてうちいれたり。あしかがあぶみふんばりつつたちあがり、だいおんじやうをあ
げてげぢしけるは、つよからむむまをばうはてにたてて、よわからんむまをばしたてになせ、むまのあしのおよばん
ほどは、たづなをくれてあゆませよ、はずまばかいくつておよがせよ、さきなるむまのをにとりつけ、くらつぼに
みづしどまば、さうづにのりさがつて、むまにはよわくみづにはつよくあたるべし、くらつぼにのりさだまつて、あぶみ
をつよくふめ、むまのかしらしづまばひきあげよ、いつたうひいてひつかつぐな、かはなかにてかたきいるともあひびき
すな、かぶとのしころをかたぶけよ、いつたうかたぶけて、てへんいさすな、かねにわたいて、あやまち
すな、みづにしなうてわたすべし、わたせやわたせやとげぢしつつ、三百よきを一きもながさず、むかひのきしにさ
つとわたす。
P200
宮の最後 411
そののちあしかがたかきところにうちあがり、むちにてよろひのみづなでくだし、あぶみふんばりつつたちあがり、だいおんじやうをあげて、これは
むかしてうてきまさかどをたひらげてけんじやうかうぶりたりし、たはらとうだひでさとに五だいのまつえふ、しもつけのくにのぢうにん、あしかがのたらうとし
つながこに、またたらうただつなとて、しやうねん十七さいにまかりなる、かやうにむくわんむゐなるものの、みやにむかひたてまつつ
て、ゆみをひきやをはなつこと、みやうけんにつけてそのおそれすくなからずさふらへども、ゆみもやもみやうがのほども、へいけだいじやうの
にふだうどののおんみのうへにぞさふらふらん、みやのおんかたにわれとおもはんひとびとは、すすめやむかへ、げんざんせんとて、
びやうどうゐんのしばにおしよせ、ひいづるほどにぞたたかひける。これをはじめとして、二万よきのつはものどもも、みなうちいれうちいれ
わたしければ、さしもにはやきうぢがはなれども、むまひとにせかれて、みづはうへにぞたたへたる。おのづからは
づるるみづには、なんにもたまらず、おしながさる。そのなかにいがいせのつはもの六百よき、むまいかだおしやぶられ、
みづにおぼれてながれけり。もえぎ、ひをどし、あかをどし、いろいろのよろひかぶとのうきぬしづみぬながれけるは、かみなびやまのも
みぢばの、みねのあらしにさそはれて、たつたのかはのあきのくれ、ゐせきにかかつてながれもやらぬにことならず。なかに
もひをどしのよろひきたりけるむしや三にん、うぢのあじろにかかつてゆられけるを、いづのかみみたまひて、
いせむしやはみなひをどしのよろひきてうぢのあじろにかかりぬるかな
これはひののげん三、とばのげん六、くろだの五らう四らうとまをすものなり。なかにもくろだはふるつはものなりければ、ゆみのはずを
P201
いはのあひにねぢたて、わがみもあがり、のこり二にんをもたすけけるとぞうけたまはる。さるほどに三ゐにふだうは、みかた
のいくさまけいろにみえしかば、かなはじとやおもはれけん、わかたいしゆあくそうども廿よにんつけたてまつつて、みやをばなんとへ
さきだてたてまつり、わがみはこどもらうじうのこりとどまりて、ふせぎやいけり。なかにも三みにふだうのじなんげんたいふのはんぐわんかねつなは、あか
ぢのにしきのひたたれに、くろいとをどしのよろひをき、くはがたうつたる五まいかぶとのををしめ、いかものづくりのたちをはき、廿四さい
たるおほなかぐろのやをおひ、ぬりごめどうのゆみに、しらえのおほなぎなたのさやをはづいて、ちちの三ゐにふだうどのにかかりける
かたきに、かへしあはせかへしあはせさんざんにたたかはれけるところに、へいけのさぶらひたいしやうかづさのかみただきよがよつぴいていけるや
に、うちかぶとをしたたかにいさせて、ひるみたまふところを、かづさのかみがわらはおちやうて、げんたいふのはんぐわんとむずとくむ。はん
ぐわんはてはおはれたりけれども、きこゆるしたたかびとにておはしければ、とつておさへ、わらはがくびかききつて
なげのけ、おきあがらんとしたまふところを、かづさのかみがらうどうあまたおちあひて、げんたいふのはんぐわんのくびをとる。三
ゐにふだうこのよしをみたまひて、よろづこころぼそくやおもはれけん、ゆみやになつつうちものになつつ、たたかはれ
けるが、かたき四五ききつておとし、わがみもいたでおひければ、びやうどうゐんのしばにかへり、もののぐぬぎおき、わた
なべのちやうしちとなふをめして、はやはやなんぢかたきのてにかけで、わがくびうてとのたまへば、となふなくなく、おんくびたまは
つつともぞんじさふらはず、ごじがいだにもさふらはばと、なみだもせきあへずまをしたりければ、三ゐにふだうさらばとてにしに
むき、かうじやうにねんぶつす百べんとなへたまひけるが、ねんぶつをとどめ、さいごのことばぞあはれなる。
うもれぎのはなさくこともなかりしにみのなるはてぞかなしかりける
P202
そののちたちのきつさきをはらにおしあて、うつぶしにふしつらぬかつてぞうせられける。ことし七十五にぞな
られける。かならずそこにてうたよむべきにはあらねども、わかうよりすかれたりければ、さいごまでもわすれ
ざりけりとあはれなり。となふなくなくおんくびたまはつてひたたれにつつみ、おほきなるいしにくくりあはせて、うぢがはのふかきところ
にしづめてんげり。さるほどに三ゐにふだうのちやくし、いづのかみなかつなははしのうへにてたたかはれけるが、かたき七八ききつ
ておとし、わがみもいたでおひければ、びやうどうゐんのしばにかへり、もののぐぬぎおき、じがいしてこそうせたりけれ。その
くびをば、しもかうべのとう三らうきよちかとつて、びようどうゐんのつりどののしたへぞなげいれたる。なかにも六でうのくらんどゆきいへ、
そのこくらんどたらうなかみつは、たいぜいのなかにわつていり、さんざんにたたかひ、かたき四五ききつておとし、いつしよにうちじにしてん
げり。このくらんどとまをすは、こ六でうのためよしがじなん、こたてはきせんじやうよしかたがちやくし、きそのくわんじやにはあになりけり。三
ゐにふだうえうせうよりふぢして、くらんどにもなしたりしかば、そのおんをわすれじと、こんどどうしんしてうちじにしたりける
こそあはれなれ。なかにもわたなべきほふのたきぐちをば、へいけいかにもしていけどつて、うたいしやうどののげんざんにいれんとおも
ひあはれけるに、きほふさきにこころえてんげれば、てにもたまらずかけまはる。たいぜいのなかにわつていり、にし
よりひがしへ一わたり、きたよりみなみへ一わたり、とつてはかへし、わつてはとほり、さんざんにたたかひ、かたき十
四五ききつておとし、わがみはふかでもうすでもおはずして、びやうどうゐんのしばにかへり、三ゐにふだうのむくろのへんにち
かづき、ひごろは一しよにとちぎりたてまつりしことなればとて、はら十もんじにかききつて、おなじまくらにふしにけり。なか
にもゑんまんゐんのたいふげんかくは、つりどのにたつたりけるが、なぎなたのえくきみじかにとりなし、たいぜいのなかにわつ
P203
ていり、さんざんにたたかひ、一ぱううちやぶつて、うらへつつといで、かはへざんぶとぞとびいりける。かたきみかた、あはや
げんかくこそじがいしてんげるとまをしけるに、もののぐをもぬかず、ぐそくひとつもすてずして、みづのそこをくぐつて、むか
ひのきしにわたりつき、だんにあがりなぎなたうちふり、いかにへいけのひとびと、これまではおんだいじかようとて、てらのか
たへぞまかりける。なかにもへいけのかたのさぶらひたいしやう、ひだのかみかげいへは、ふるつはものなりければ、いまはさだめてみや
はなんとへぞさきだたせたまふらんとて、五百よきにておひかけたてまつる。あんのごとくくわうみやうせんのとりゐのまへに
ておつつきたてまつり、さしつめひきつめさんざんにいたてまつる。たがいるやともみえざるに、しらはのやひとすぢきたつて、
みやのおんそばはらにたちければ、やがておんむまよりおちさせたまひけり。へいけのつはものあまたおちあひて、みやのおんくびたま
はりけり。くろまるとまをすわらはも、ここにてうちじにす。ぎやうぶしゆんしうもうたれにけり。わかだいしゆあくそうども二十よにんつきたてまつ
りたりけるも、もるるは一にんもなかりけり。みないつしよにてぞうたれにける。なかにもみやのおめのとご、六
でうのすけのたいふむねのぶは、てんがだい一のだいおくびやうしやなりければ、みやはうたれさせたまひしかども、じがいをもせずうち
じにをもせで、むまにまかせておちゆくほどに、むまはよわしかたきはちかづく、かなはじとやおもひけん、にいのが
いけにとびいつてもひきかづき、めわづかにみいだしてぞゐたりける。いけのはたをうちすぎうちすぎしけるかたきのなかに、はるか
にひきさがつて、五百きばかりうちとほりけるかたきのなかをみけるに、じやうえきたまへるひとのくびもなきを、しとみの
もとにかいてとほる。あれはいかにとみたてまつるに、これぞわがしうのみやにてわたらせたまひける。われしなばご
くわんにいれよとおほせなりしこえだときこえしおんふえも、いまだおんこしにぞさされたる。やがてはしりもいでて、とりつき
P204
たてまつらばやとはおもひけれども、それもさすがおそろしければ、ただみづのそこにて、かはづとともにぞなきゐたる。
かたきみなうちとほりてのち、いけよりあがり、ぬれたるものどもしぼりきて、ゆふべにおよんでみやこへいる。にくま
ぬものこそなかりけれ。さるほどになんとのだいしゆ、みやのおむかへにまゐりけるが、つがふそのせい七千よにん、せんぢんはこづに
すすめば、ごぢんはいまだこうふくじのなんだいもんにぞささへたる。されどもみやははやくわうみやうせんのとりゐのまへにて、う
たれさせたまひぬときこえしかば、だいしゆちからおよばず、なみだをおさへてひきかへす。いま五十ちやうがあひだをまちつけさせたま
はずして、うたれさせたまひけるみやのごうんのほどこそうたてけれ。
若宮の沙汰(あひ) 412
さるほどに・へいけのさぶらひどもは・いづのかみいげ・つはもの五百よにんが・くびとつて・そのひのよに・いつてみやこへいる・へいけの
ゆかりのひとびと・いさみののしりたまふこと・なのめならず・なかにも・三みにふだうのくびは・おほきなるいしに・くくりあは
せて・うぢがはの・ふかきところに・しづめてんげれば・なかりけり・ただしみやのおんくび・みしりたてまつつたるものぞ・なか
りける・てんやくのかみさだなりが・ごれうぢの・おんためにとてつねは・まゐりたりければ・これぞさだめて・みしりたてまつりたるら
んとて・めされけれども・げんしよらうとて・まゐらず・一とせおんひたひに・あしきおんかさの・いできさせ・たまひたりし
をも・このさだもりが・やうやうに・れうぢまをしてこそ・いままでも・あんをんには・わたらせたまひしを・こんどあへなう・
うしなひたてまつりけるこそ・あさましけれ・さるほどに・いよのかみ(イ伊豆守)もりのりのむすめ・三ゐのつぼねとて・八でうの・によう
P205
ゐんに・さぶらはれけるを・みや・よなよなめされければ・うちつづき・わかみや三ところ・いできさせたまひけり・これ
ぞさだめて・みしりたまひたるらんとて・たづねいだしたてまつる・このにようばう・あるくびを・一めみて・なみだにむせばれける
にぞ・みやのおんくびとは・しりてげる・このにようばうをば・なのめならずにようゐんの・おんいとほしみにて・おはしければ・
みこの・みやたちをも・わがおんこのごとく・おぼしめされて・つねは・ぎよいの・おんふところにて・そだて・まゐら
つさせ・たまひけり・なかにも・こんねん七さいに・ならせたまひける・わかみやの・わたらせたまひけるを・にふだう・おとといけ
のちうなごんよりもりを・もつて・わかみやとうとう・いだしまゐらつさせ・たまふべきよしを・まをされたりければ・によう
ゐんいざとよ・それはさやうのことの・きこえつる・あかつきがた・めのとのにようばうが・こころをさなくも・とりたてまつりて・いづ
かたへか・ゆきぬらん・ゆきがたも・しらずとぞ・おほせける・このよりもりのきやうと・まをすは・にようゐんのおんめのと・ぢみやうゐんの
さいしやうどのに・あひぐせられたりければ・ひごろは・さしもむつまじう・おぼしめされけるに・いま・このわか
みやのおんこと・まをされければ・いつしか・あらぬひとの・やうにうとましうぞ・おぼしめされける・ちうなごん・六
はらにかへり・まゐつてこのよし・まをされたりければ・にふだう・おほきに・いかつてなんでう・そのごしよならでは・
いづくにか・わたらせたまふべき・そのぎならば・ごしよちうを・さがしたてまつれとぞ・のたまひける・ちうなごん・また・ご
しよにまゐり・もんぜんに・つはものおきなんどして・このよしまをされたりければ・わかみやまをさせたまひけるは・なじかは・
くるしうさふらふべき・ただとくいださせ・おはしますべしと・まをさせたまひければ・にようゐんいとほしや・われから
に・だいじの・いでくることを・あさましう・おぼしめして・ただとく・いだすべしなんど・のたまふことの・いとふし
P206
さよ・なにしにか・かくうきひとを・この六七ねん・てならしたてまつて・いまかくうきめを・みることよとて・おん
なみだに・むせばせおはします・おんぼぎ三みのつぼねのおんことは・なかなかまをすにおよばず・にようくわんたち・つぼねのにようばう・め
のわらはにいたるまで・みなそでをぞ・ぬらしける・ちうなごんも・さすがいはきならねば・よにもあはれに・おもは
れけれども・さてしもあるべきならねば・わかみや・ひとつことに・のせたてまつて・六はらへぐそくしたてまつらる・さき
のうたいしやうむねもりのきやう・このわかみやを・みたてまつつて・あはれにおもひ・まゐらせられければ・ちちのおんまへにおはして・あはれ
このみやの・おんいのちをば・むねもりに・たびさふらへかしと・まをされければ・にふだうさらば・やがてごしゆつけ・せさせたてまつ
れとぞ・のたまひける・うたいしやう・このよしを・にようゐんへ・まをされたりければ・にようゐんなのめならず・おんよろこばせ
おはしまして・ただともかうも・よきやうにとぞ・おほせける・やがてにんなじどのにして・ごしゆつけせさせたてまつる・
やすゐのみや・だうそんと・きこえしは・このわかみやのおんことなり・またならにも・一ところ・わたらせたまひけれ・これをば・おん
めのとごの・さぬきのかみいへひで・とりたてまつて・ほつこくに・おちくだりしを・きそこれをば・わがしうに・したてまつらんとて・
とりたてまつて・ゑつちうのくにみやざきと・いふところに・ごしよ・しつらうて・おきたてまつりたりしが・一とせ・きそうじやうらくの
とき・ぐそくしたてまつて・みやこにのぼり・げんぞくせさせたてまつる・さてこそ・げんぞくのみやともまをし・またはきそがみやとも・
まをしき・のちには・さがのへん・のよりと・いふところに・わたらせたまひければ・ひとのよりのみやとぞまをしける・さても・せう
なごんこれながは・みやをば・あしうみそんじたてまつりたるものかな・なかごろ・とうじう(イ通乗)と・きこえしさうにんは・おほ二でうどの
をば・三だいのくわんぱく・おんとし八十・そちのうちの・おとどをば・るざいのさう・わたらせたまふと・まをしたりしに・たがはず・
P207
むかししやうとくたいし・しゆじゆんてんわうを・みまゐらつさせたまひ・きみはわうしのさう・わたらせたまふと・まをさせたまひた
りしは・むまこのだいじんに・ころされ・させたまひけり・むかしはさせるさうにんと・しもは・なけれども・さもしか
るべきひとは・みなかくこそ・ゆゆしう・わたらせたまひしに・これは・せうなごんこれながが・ひがごと也(なり)とぞ・ひとまをしけ
る・かのけんめいしんわう・ぐへいしんわうは・けんわうせいしゆの・みこにて・さきのちうしよわう・あとのちうしよわうとて・ともにめでたう・
わたらせたまひたりしかども・いつか・ごむほんおこさせ・たまひたりし
三井寺炎上 413
ご三でうゐんの・だい三のわうじ・すけひとのしんわうと・きこえしは・おんこころもがうに・ごさいがくも・ゆゆしうわたらせ・たまひ
しかども・しらかはゐん・なんとかおもひまゐらつさせたまひたりけむ・つひにみくらゐにも・つけまゐらつさせ・たまはず・
されば・そのおんこころを・なぐさめまゐらせんとにや・おんこ・はなぞののさだいじんどのに・げんじのしやうを・さづけ・まゐらつさせ
たまひて・むゐより三ゐして・やがて・ちうしやうに・なしまゐらつさせたまひけり・むかしより・一せいのげんじの・む
ゐより三ゐに・なることは・さがの・てんわうのみこ・やうぜいゐんのだいなごんさだむのきやうのほかは・うけたまはりおよばず・
おなじき廿四かに・ぢもくおこなはれて・さきのうたいしやうむねもりのおんこ・じじうきよむね・しやうねん十二さいに・なられけるが・
三ゐして・三ゐのじじうとぞ・まをしける・ちちのきやうは・このよはひにては・わづかに・ひやうゑのすけにてこそ・おはせしに・
さこそよを・とるひとの・こならんからに・おそろしおそろしとぞ・ひとまをしける・これは・みなもとのもちひと・三ゐにふだう
P208
いげ・つゐたうのしやうとぞ・きこえし・おなじき廿五にちに・みなもとのもちひと・三ゐにふだういげ・てうぷくせられたりし・きそうかう
そうたちに・けんしやうおこなはれけり・このみなもとのもちひととまをすは・たかくらのみやのおんことなり・まさしく・一ゐんだい二のみこ
にて・わたらせたまひけるを・ここのへのうちを・おひいだしたてまつつて・うしなひたてまつるのみならず・ぼんにんに・さへなし・
まゐらせぬることこそ・くちをしけれ・ひごろは・さんもんのだいしゆ・いささかのこともあれば・みたりがましくうつたへつかまつるが・こんど
は・をんびんのぎを・ぞんじて・おともせず・しかるになんと・三ゐでらは・あるひはみやを・ふぢしたてまつる・あるひはおんむかへに・
まゐる・これひとへに・てうてきなりとて・ならをも・てらをも・はつかうあるべしとぞ・きこえし・へいけさらば・まづ・
をんじやうじを・はつかうせよやとて・たいしやうぐんには・にふだうの三なん・さひやうゑのかみとももり・おととにさつまのかみただのり・さぶらひ大
しやうには・ゑつちうのぜんじ・もりとし・じらうびやうゑもりつぎ・かづさの五らうびやうゑただみつを・さきとして・つがふそのせい・三千よき・
おなじき五ぐわつ廿七にちに・をんじやうじへ・はつかうせられけり・てらにも・おほぜき・こぜき・ほりきつて・さかもぎ・ひいて・
まちかけたり・ふせぐところの・だいしゆ三百よにん・うちころさる・そののち・ぢちうにみだれいつて・ひをはなつ・やくるところは・
どこどこぞ・ほんかくゐん・しんによゐん・じやうきゐん・だいがくゐん・けおんゐん・ふげんゐん・しやうりうゐん・こんがうわうだう・けいそくばう・けうたい
くわしやうのほんばうならびに・ごほんぞん・ごわうぜんじんの・しやだん・八けん四めんの・だいかうだう・しゆろう・きやうざう・二かいのろうもん・くわんちやう
だう・すべて・だうしやたふめう・あはせて・六百廿七う・おほつのうらの・にしのざいけ・二千八百五十三う・ことごとくちをはらふ・
そのなかに・こんだう一う・やけのこりけるこそ・ふしぎなれ・だいしのわたしたまへる・一さいきやう・七千よくわん・ぶつざう・二
千よたいも・たちまちに・けぶりとなるこそ・かなしけれ・ほうもんしやうげうの・やくるけぶりには・だいぼんてんわうの・まなこも・くれ・
P209
しよてん五めうの・がくもこのとき・ながくばうじ・けんらうぢしんのたん・しきりにこがれ・りうじん三ねつのくるしみも・まさるらんとぞ・おぼ
えたる・三ゐでらはこれ・あふみのぎだいりやうが・わたくしのてらたりしを・てんぢてんわうへ・よせたてまつて・ごぐわんとなす・ほんぶつ
は・かのみかどの・ごほんぞん・しやうじんのみろくとぞ・きこえさせたまひし・しかるを・けうたいくわしやう・百六拾ねん・おこな
うてのち・ちしようだいしに・ふぞくしたてまつる・としたてんじやうまにはうでんより・あまくだらせ・たまひて・はるかに・りうげげしやう
の・あかつきを・またせたまふ・てんぢ・てんぶ・ぢとう・これ三だいのみかどの・おんうぶゆを・めされたりしに・よつてこ
そ・三ゐでらとは・なづけられけれ・かく・めでたかりし・せいせきも・いまはなにならず・けんみつしゆゆに・ほろびて・
がらんさらに・あとも・なし・三みつのだうぢやうも・なければ・しんれいのひびきも・たえ・一げのぶつぜんも・なければ・あ
かのおとも・せざりけり・しゆくらうせきとくの・めいしは・ぎやうがくに・わかれ・じゆほうさうしようの・でしどもは・きやうげうにこそ・
わかれんだれ
あひ 414
そうかう十二にんけつくわんせらる。あくそうどもには、つつゐのじやうめうみやうしゆんをさきとして、卅よにんをきんごくせらる。三ゐにふだう
みやをば、さしもたのもしげにまをして、すすめまゐらせたりけれども、をんごくはしらず、きんごくのげんじだにもまゐら
ねば、みやをもあへなううしなひたてまつり、わがみもしそんも、ことごとくほろびぬるこそあさましけれ。
P210
ぬえ(空+鳥) 415
そもそもげん三ゐよりまさにふだうの、一ごのあひだかうみやうとおぼしきことおほきなかにも、ことにはこのゑのゐんのおんとき、しゆじやうよな
よなおびえさせたまふことあり。くだんのごなうは、ひがし三でうのこむらより、くろくも一むらごてんのうへに、おしおほふと
おぼしきときは、しゆじやういよいよおびえさせたまひけり。これによつてさんもんなんとのきそうかうそうにおほせて、だいほふひほふしゆ
せられけり。またぶしをもつてもけいごあるべしとて、げんぺいりやうかのつはものをぞめされける。よりまさのきやうのいまだその
ころひやうごのかみたりしとき、めしぬかれてまゐる。これはほりかはのてんわうのぎよう、くわんぢのころかとよ、しゆじやうかやうにおび
えさせたまふことあり。そのときのしやうぐんよしいへのあそんをぞめされける。かうのかりぎぬのそでながやかにかいつくろひ、なん
でんにしこうして、めいげんすること三どののち、これはさきのむつのくにのかみみなもとのよしいへのあそんぞやと、かうじやうに三ケどま
で、ののしつたりければ、ごなうやがておこたらせたまひけり。こんどそのれいとぞきこえし。よりまさまをしけるは、てう
かにぶしおかるることは、ゐちよくのともがらをしりぞけ、またはぎやくほんのものを、しづめられんがためにてこそあるに、
めにもみえぬへんげのものいよとのちよくぢやうこそ、しかるべからね、とはまをしながらりんげんそむきがたうして、
しらあをのかりぎぬのそでながやかにかいつくろひ、たのみきつたるらうどう、とほたふみのくにのぢうにんゐのはやたに、ほろのか
さきりにてはいだりけるや一こしおほせ、ぬりごめどうのゆみに、やまどりのをにてはいだりけるとがりやふたつとりそ
へ、なんでんにしこうして、よふくるまませけんをうかがひみるほどに、あんのごとく、そのよのやはんばかりに、ひがし三でうの
P211
こむらよりくろくも一むら、ごてんのうへに五ぢやうばかりぞたなびいたる。くもすきにみければ、くものなかにすがたあるもの
あり、よりまさとがりやをとつてうちつがひ、よつぴいてひやうといる。ふつとあたる。よりまさえたりやお
うとやさけびをこそしたりけれ。やがてやたちながらていじやうへどうとおつ。ゐのはやたつつとよりとつて
おさへ、こしのかたなをぬき、つかもこぶしもとほれとほれと、九かたなぞさいたりける。そののちてんでにひをとぼして
みたまへば、かしらはさる、むくろはたぬき、をはくちなは、あしてはとらのごとくにて、なきごゑぬえにぞにたり
ける。きたいふしぎのものなりけり。ごなうやがておこたらせたまひけり。しゆじやうぎよかんのあまりに、ししわうとまをす
ぎよけんを、よりまさにこそくだされけれ。らいちやうのさふたまはり、ついでごてんのきざはしを、なからばかりおりくだ
らせたまひて、よりまさにたまはしける。ころはうづき十かあまりのことにてもやさふらひけん、ほととぎすくもゐに二こゑ三こゑおと
づれてすぎければ、やがてさだいじんどの、
ほととぎすなをもくもゐにあぐるかな
とおほせられかけたりければ、よりまさかしこまつてうけたまはり、もとよりこのむことなれば、つきをそばめにかけて、
ゆみはりづきのいるにまかせて
とつかまつて、ぎよけんをたまはつてまかりいづ。そののちくだんのへんげのものをば、うつぼふねにいれて、にしのうみへぞ
ながされける。そのときのけんしやうには、たんばの五かのしやうをぞたまはりける。また二でうのゐんのぎよう、おうはうのころかとよ、
ぬえとまをすけてうが、よなよなぢんとうにないて、しばしばしんきんをなやましたてまつる。せんれいにまかせて、またよりまさを
P212
ぞめされける。よりまさまをしけるは、げんぺいりやうけのうちより、めしぬかれてまゐること、みのめんぼくとはまをしながら、いお
ふせんことふぢやう、いそんぜむことはけつぢやうなり、ただいまいそんずるほどならば、ゆみきりをつてさんりんにまじはるべし、さる
にても八まんだいぼさつあはれみをたれさせたまへと、しんちうにきせいして、またなんでんにしこうす。ころはさつきはつか
あまりのことなれば、さみだれさへにかきくれて、めざすともしらぬやみなるに、くだんのけてうが、ただ一こゑおと
づれて、二こゑともなかざれば、いづくにありともしりがたし。すがたもかたちもみえざれば、いづくをやつぼと
さだめがたし。よりまさはかりごとに、かぶらをとつてうちつがひ、よつぴいてひやうといる。ぬえかぶらのおとにおどろ
いて、こくうにしばらくひひめいたり。つぎにこかぶらをとつてうちつがひ、よつぴきしばしたもつて、ひい
ふつとぞいおとしたる。ごなうやがておこたらせたまひけり。しゆじやうぎよかんのあまりに、ぎよいを一りやうよりまさにこそくだ
されけれ。こんどはおほゐのみかどのうだいじんきんよしこうたまはりついで、ごてんのきざはしを、なからばかりおりくだらせたまひ
て、よりまさにうちかづけさせらるとて、むかしのやうゆうはくものほかなるかりをい、いまのよりまさはあめのなかにぬえをいえた
りとぞおほせける。やがてうだいじんこう、
さつきやみなをあらはせるこよひかな
とおほせられかけたりければ、よりまさかしこまつてうけたまはり、
たそがれどきもすぎぬとおもへば
とつかまつて、ぎよいをたまはつてまかりいづ。よりまさゆみやをとつててんがになをあぐるのみならず、かだうのか
P213
たにも、いうにやさしかりけりと、きんちうさざめきあへり。そのときのけんじやうには、わかさのとうのみやかはをぞたまはりけ
る。そもそもこのよりまさのきやうとまをすは、つのかみよりみつに五だいのまご、さきのみかはのかみよりつなのまご、ひやうごのかみなかまさのあそんのこなり
けり。はうげんにまつさきかけたりしかども、させるごおんにもあづからず、へいぢにおほくのしんるゐをすててみかた
にまゐりたりしかども、おんじやうこれおろそかなり。ぢうだいのしよくなれば、おほうちのしゆごうけたまはつてとしひさし。されどもしよう
でんをばゆるされざりしかば、はるかにとしたけよはひかたぶいてのち、じゆつかいのわか一しゆよみてこそ、しようでんをもゆる
されたりしか。
ひとしれずおほうちやまのやまもりはこがくれてのみつきをみるかな
とつかまつつて、四ゐしてしばらくさふらひけるが、また三ゐをこころにかけて、
のぼるべきたよりなければこのもとにしひをひろひてよをわたるかな
とつかまつつて三ゐになされ、しゆつけしてほうみやうじやうれんとぞまをしける。たんばの五ケのしやう、わかさのとうのみやかは、いづのくにを
もちぎやうして、しそくなかつなずれうになし、さてあるべかりしひとの、よしなきむほんおもひたち、みやをもあへな
ううしなひたてまつり、わがみもしそんことごとくほろびぬるこそあさましけれ。
平家物語(城方本・八坂系)
巻第五 P214
都遷 501
ぢしよう四ねん・六ぐわつ三かのひ・にふだうしやうごくの・としごろしつして・かよはれし・ふくはらへ・みやこうつりし・あるべしとぞ・きこ
えしかねては・三かとさだめられたりしかども・いま一にちひきあげて・二かのひの・うのこくに・ぎやうかうなる・しゆじやうえう
しゆのときの・ごどうよには・ぼこうとて・ははのきさきの・まゐらせたまふことなるに・こんどは・そのぎなし・へいだいなごんとき
ただのきやうの・きたのかた・そちのすけどのぞ・ごどうよには・まゐられける・おなじき三かのひ・ふくはらへ・いらせたまふ・にふだう
のおとと・いけのちうなごんよりもりのきやうの・しゆくしよ・くわうきよになる・おなじき四かのひ・いへのしやうとて・ぢもくおこなはれける・
よりもりのきやう・じやうニゐしたまふ・九でうどののおんこ・うたいしやうよしみちのきやう・こえられさせ・たまひけり・むかしより・せうろくの
きんだちの・ぼんにんに・かかい・こえられさせ・たまふこと・これはじめとぞ・うけたまはる・さるほどに・ほうわうは・じやうなんのり
きうに・おしこめられて・わたらせたまひたりしを・さきのうたいしやうむねもりのきやう・をりふし・まをされしによつて・と
ばどのをば・いだしたてまつつて・八でうからすまるの・びふくもんゐんのおんまへへ・いれたてまつりたりしが・こんどは・たかくらのみやの・ご
むほんによつて・ふくはらへ・ごかうなしたてまつり・四めんに・はたいたおし・くちひとつある・三げんのいたやを・つくつて・P215
おひこめたてまつつて・おきたてまつり・しゆごのぶしには・はらだの・たいふ・たねなほばかりぞ・さふらひける・わらべどもは・ふく
はらの・ろうの・ごしよとぞ・まをしける・きくも・よにおそろしう・あさましかりしおんことなり・さるままには・ほうわう
ばんきのおんまつりごとをば・つゆしろしめさず・ただやまやま・てらでら・しゆぎやうして・こころのままに・なぐさまばやとぞ・おほせ
ける・にふだうしやうごくの・あくぎやうに・おいては・はやみなきはまりぬ・くわんぱく・ながしたてまつつては・むこをくわんぱくに・おしな
し・あまつさへ・一ゐんだい二のおんこ・たかくらのみやをば・ここのへのうちを・おひいだしたてまつつて・うしなひたてまつる・のみならず・ぼん
にんにさへ・なしまゐらせぬる・ことこそ・くちをしけれ・いまのこるところとては・みやこうつしは・これせんしよう・なきにあら
ず・じんむてんわうは・ぢじん五だいのみかど・ひこなぎさたけうがやふきあはせずのみことの・だい四のわうじ・おんははは・たまよりひめ・てんじん
七だい・ぢじん五だい・かみのよ・十二だいのあとを・うけ・にんだい百わうの・ていそなり・かのとのとりのとし・ひうがのくに・みやさきの
こほりにして・くわうわうのはうそを・つぎ・五十九ねんと・いつし・つちのとのひつじのとし・十ぐわつに・とうせいして・このごろ・やまとの
くにと・なづけたり・とよあしはらの・なかつくにに・とどまつて・うねびの・やまを・てんし・きうと(イ帝都)を・たて・かし
はらのちを・きりはらうて・きうしつを・つくりたまふ・これを・かしはらのみやとは・なづけられけり・しかしよりこのかた・よよのみ
かどの・みやこを・たこく・たしよへ・うつさるること・三十どにあまり・四十どに・およべり・じんむてんわうより・けいかうてん
わうまで 十二だいは・なほ・おなじきくに・こほりこほりに・みやこをたてて・たこくへはうつされず・しかるを・せいむてんわうぐわんねん
に・あふみのくにに・うつつて・しがのこほりに・みやこをたつ・ちうあいてんわうニねんに・ながとのくににうつつて・とよらのこほり
に・みやこをたつ・そのくにの・かのこほりにして・みかど・かくれさせたまひしかば・きさき・じんぐうくわうごう・によたいとして・おんP216
ゆづりを・うけさせたまひ・しんら・はくさい・かうらい・けいたんを・はじめとして・いこくのいくさを・たひらげさせ・たまひて・その
のちわがてう・ちくぜんのくに・三かさのこほりにして・わうじ・ごたんじやうあり・それよりしてぞ・そのところを・うみのみやとも・まをす
なり・みくらゐののちは・おうじんてんわうとも・まをしき・かけはくも・かたじけなく・まします・やはたのおんことこれなり・
にんとくてんわうぐわんねんに・つのくに・なにはに・うつつて・たかつのみやに・すみたまふ・りちうてんわうニねんに・なほ・やまとの
くにに・うつつて・とをちのさとに・すみたまふ・はんぜいてんわうぐわんねんに・かはちのくにに・うつつて・しばがきのさとに・みやゐ・し
たまふ・いんけうてんわう四十二ねんに・なほ・やまとのくにに・うつつて・とぶとりの・あすかのみやに・すみたまふ・ゆうりやくてんわう
廿一ねんに・なほ・おなじきくに・はつせ・あさくらに・みやこをたつ・けいたいてんわう五ねんに・やましろのくに・つづきに・うつつ
て・十二ねん・そののち・おとくにに・すみたまふ・せんくわてんわうぐわんねんに・なほやまとのくにに・うつつて・ひのくまの・いるののみや
に・すみたまふ・きんめい・びだつ・ようめい・しゆじゆん・すゐこ・じよめい・くわうきよくまで・七だいは・なほ・おなじきくにに・みやこをた
てて・たこくへは・うつされず・しかるを・かうとくてんわう・たいくわぐわんねんに・つのくに・ながらに・うつつて・とよさきのこほり
に・みやこを・たつ・さいめいてんわうニねんに・なほ・やまのとのくにに・うつつて・をかもとのみやに・すみたまふ・てんぢてんわう・六
ねんに・あふみのくにに・うつつて・おほつにみやを・つくりたまふ・てんむてんわう・ぐわんねんに・なほ・やまとのくにに・かへつて・
をかもとの・みなみのみやに・すみたまふ・ぢとう・もんむ・二だいのせいてうは・なほ・おなじきくに・ふぢはらのみやに・すみたまふ・げんめい
げんせい・しやうむ・かうけん・はいたい・せうとく・くわうにんまで・七だいは・なほおなじき・くに・ならのみやこに・すみたまふ・しかるを・くわん
むてんわう・えんりやく三ねん・十一ぐわつついたちのひ・ならのきやう・かすがのさとより・やましろのくに・ながをかのきやうに・うつつて・十P217
ねん・このみやこに・すみたまふ・おなじきえんりやく十三ねん・しやうぐわつの三かのひ・だいなごん・ふぢはらのをぐろまる・さんぎさだんべん・き
のこさびを・つかはして・たうごくかどののこほり・うだのむらを・みせしむるに・りやうにんともに・そうして・いはく・この
ちのていを・みさふらふに・さしやうりう・うびやつこ・ぜんしゆじやく・ごげんむ・四じんさうおうのちなり・もつとも・ていとを・もとむるに・た
れり・よりておとくにのこほりに・おはします・かものだいみやうじんに・まをさせたまひて・おなじきえんりやく十三ねん・十一ぐわつ廿かのひ・
ながをかのきやうより・いまの・へいあんじやうに・うつつて・ていわう卅ニだい・せいさう・三百八十よさいの・しゆんじうを・おくりむか
へてぞ・ましましける・しかつしより・このかた・よよのみかどの・みやこを・たこく・たしよへ・うつされしかど
も・かかる・しようちは・いまだなしとて・くわんむてんわう・ことにしつし・おぼしめして・まづ・ちやうきうなるべき・じゆつ
とて・だいじん・くぎやう・しよだうの・さいじんに・おほせて・つちにて・八しやくの・ひとがたをつくらせ・くろがねのかつちうを・きせ・お
なじう・くろがねのきうせんを・もたせて・ひがしやまのみねに・にしむきに・たててぞ・うづませられける・これはすゑのよに・
このみやこを・たこくへ・うつすもの・あらば・かならずしゆごじんと・なるべしとの・おんやくそくありけり・されば・てん
がに・ことの・いでこんとては・このつかかならず・めいどうす・しやうぐんがつかとて・いまにあり・くわんむてんわうは・へいけの
なうそにてぞ・ましましける・へいあんじやうと・なづけては・たひらかにやすき・みやこと・かけり・もつともへいけのあがむべ
きみやこぞかし・さがのてんわうのおんとき・へいぜいのせんてい・よをみだらむと・せさせたまひしに・みやこを・たこく・たしよへ・
うつさんと・せさせたまひしとき・だいじん・くぎやう・しよこくのじんみん・ことごとくおこつて・そむき・まをせしかば・つひに・うつさ
れで・やみにき・かたじけなくも・いつてんのきみ・ばんじようの・あるじだにも・たやすく・うつしえたまはぬ・みやこを・なんP218
ぞ・だいじやうのにふだう・じんしんのみとして・たやすくうつされけるこそ・ふしぎなれ・いかさまにも・これはしよこくのい
ぞく・せめのぼり・へいけ・みやこのうちを・おひいだされ・さんりんにまじはるべき・ぜんぺうかとぞ・じやうげささやき・あへりける・
あはれきうとは・めでたかりし・みやこぞかし・わうじやうしゆごのちんじゆは・四はうにひかりをやはらげ・れいげんしゆしようのてらでら
は・じやうげにいらかを・ならべたり・はくせい・ばんみん・わづらひなく・五き・七だうも・たよりあり・ひとびとのいへいへをば・か
もがは・かつらがはに・こぼちいれ・いかだにくみ・うかべ・しざい・ざふぐを・ふねにつみて・ふくはらへはこびくだされ・たりければ・
はなのみやこも・ただなりに・ゐなかと・なるこそ・かなしけれ・つじつじほりきり・さかもぎ・ゆひふさぎ・たりけれ
ば・くるまなんどの・わのかよふこともなし・たまたま・ゆくひとは・みなをぐるまにのつて・みちを・へて・こそ
とほられけれ・またなにものがしたりけん・ふるきみやこの・だいりのはしらに・二しゆのうたをぞ・かきける・
ももとせをよかへりまでにすぎきにし・をたぎのさとのあれやはてなむ・
さきいづるはなのみやこをふりすてて・かぜふくはらのすゑぞあやうき・
されども・ふくはらには・しんとの・ことはじめ・あるべしとて・ぶぎやうのべんには・くらんどのさせうべんゆきたかとうの・うちうべん
みつまさ・くわんにんども・あひぐして・たうごくわだの・まつばらの・にしののをてんし・ここのへのちを・わられけるに・一でうよ
りはじめて・五でうまでは・ありしかども・それより・しもは・なかりけり・ぎやうじくわん・かへりまゐつて・このよしを・
そうし・まをしたりければ・さらば・はりまのいなみのか・なほたうごく・こやのか・なんど・さたありしかども・と
みに・ことゆくべしとも・みえざりけり・きうとは・すでに・うかれぬ・しんとは・いまだ・ことゆかず・ありとし・P219
あるひと・みなみを・うきぐもの・まよひと・なし・もと・そのところに・すむひとは・ちをうしなつて・うれ
へ・いまうつりくるひとは・みな・どぼくの・わづらひをぞ・なげかれける・なかにも・つちみかどの・さいしやうのちう
じやうみちちかのきやうの・まをされけるは・いこくには・三でうのくわうろを・ひらいて・十二のとうもんをたつと・いへり・いはんや
わがてうに・五でうまで・あらむみやこに・などか・だいりを・たてざるべきとて・五でうの・だいなごんくにつなのきやうの・
りんじに・すはうのくにを・たまはつて・さとだいり・つくらせらる・このくにつなのきやうとまをすは・ならびなき・だいふくちやうじやに
て・おはしければ・さとだいりざうしんせらるべきこと・さうにおよばすとは・まをしながら・まづさしあたつて・おこな
はるべき・ごけい・だいじやうゑをば・さしおかれて・かかる・よのみだれのなかに・せんとざうだいり・すこしも・さうおう
せず・いにしへの・かしこかりける・みよには・だいりをば・かやにて・ふき・のきをだにも・あらためられず・
たみのかまどの・ともしきをごらんじては・かぎりある・みつぎものをも・ゆるされけり・これひとへに・くにを・た
すけ・たみをはごぐむに・よりてなり・かのたうのげんそうの・りさんきうを・つくられしには・かはらにまつおひ・かきに・こけむす
まで・りんかう・なかりけるには・さうゐかな・しよしやう・くわたいをたて・れいみんあらけ・じんあはうのでんを・おこして・
てんがみだるとも・いへり・ばうしきらず・さいてんけづらず・しうしやかざらず・いふくあやなかりける・よも・ありける
ものを・おそろしおそろしとぞ・ひとまをしける
月見 502 P220
おなじき八ぐわつ八かのひ・ふくはらには・しんとの・ことはじめあつて・おなじき・十ぐわつ十かのひ・おんむねあげとぞ・きこえし・きう
とは・あれゆけば・いまのみやこは・はんじやうす・あさましかりし・なつもすぎ・あきも・なかばに・なりにけり・ふくはら
に・おはしける・ひとびとは・めいしよのつきを・みむとて・あるひは・げんじのたいしやうの・むかしのあとを・たづねつつ・す
まより・あかしのうらづたひ・しらく(イ白浦)ふきあげ・わかのうら・すみよし・なにはえ・たかさごをのへのつきの・あけぼのを・な
がめてかへる・ひともあり・きうとにのこるひとびとは・ふしみ・ひろさはの・つきをみる・なかにも・ふくはらにおはしける・ご
とくだいじのさたいしやう・じつていのきやうは・きうとのつきをみんとて・にふだうしやうごくに・いとまこひ・八ぐわつ十かあまりに・ふるきみやこ
へ・かへりのぼられけるが・みちすがらも・めいしよめいしよのつきをみる・すずめのまつばら・みかげのまつ・いくたこやのの・つき
をみる・くもゐにさらす・ぬのびきの・これや・この・もとめづかと・なづけしは・かのしまの・ほとりなり・こひゆゑみをうしなひ
し・二にんのをとこの・はかとかや・ゐなのみなとのあけぼのに・きりたちわたる・なにはがた・をとこやまのつきかげは・いはしみづにや・
やどるらん・むつだのよはの・むしのねに・いなばに・そよぐ・かぜのおと・あきのやまの・もみぢのいろ・こころをく
だく・たよりとなる・たいしやうきうとに・かへり・みたまへば・ひとびとのいへいへをば・さんぬる・なつ・かもがは・かつらがはに・
こぼちいれ・いかだにくみうかべ・しざいざふぐを・ふねにつみて・ふくはらへはこび・くだされたりければ・たまたまのこ
る・いへいへは・もんぜんくさふかく・ていじやうつゆしげく・よもぎが・そま・あさぢがはら・とりのふしどと・あれはてて・ただ・
きぎく・しらんの・のべとぞなりにける・いまふるき・みやこのおんなごりとては・おんいもうとこんゑがはらの・おほみやのごしよ
ばかりなり・たいしやうかれへ・まゐらせたまひて・ずゐじんをもつて・そうもんを・たたかせらるれば・うちよりにようばうのP221
こゑにて・たそやこのよもぎふの・つゆうちはらふひとだにも・まれなるところにと・とがむれば・これは・ふくはらより・たい
しやうどのの・おんまゐりにてさふらふと・まをす・ささふらはば・そうもんは・ぢやうが・さされて・さふらふぞ・ひがしのこもん
より・まゐらせたまふべしと・まをしたりければ・たいしやうさらばとて・ひがしのもんよりぞ・まゐられける・をりふしおほみやは・
つきにめでさせ・たまひて・みなみの・だいにして・おんびは・おんばちのおと・あざやかにこそ・あそばされけれ・かの
げんじの・うぢのまきには・うばそくのみやの・おんむすめ・あきのなごりを・をしみつつ・びはをしらべて・よもすがら・おん
こころをすまさせ・たまひしに・ありあけのつきの・やまのはより・いでけるを・なほ・たへず・やおぼしめされけむ・
ばちして・まねかせたまひしも・いまこそ・おぼしめししられけれ・おほみや・おんばちさしをさめさせ・たまひて・い
かにや・たいしやうこれへこれへと・おほせければ・たいしやうごぜんちかうまゐらせたまひて・ややはるかに・おんものがたりあり・そののち・たい
しやう・まつよひのこじじうを・よびいださせ・たまひて・むかしいまのことどもを・よもすがら・かたりぞ・あかさせたまひける・
そもそもこのまつよひのこじじうとまをすは・あるとき・おほみや・じじうをめして・まつよひと・かへるあしたは・いづれかはと・おほせ
ければ・じじうとりあへず・
まつよひのふけゆくかねのこゑきけば・あかぬわかれのとりはものかは
と・まをしたりけるによつてこそ・まつよひのこじじうとは・めされけれ・そののちたいしやう・はるかによふけ・ひとしづ
まつて・のち・やうでうねとり・さうさうかれなんとす・むしのおもひ・ねんごろなりといふ・らうえいして・
ふるきみやこの・あれゆくやうを・いまやうにこそ・うたはれけれ・P222
ふるきみやこをきてみれば・あさぢがはらとぞ・あれにける・
つきのひかりはくまなくて・あきかぜのみぞ・みにはしむ・
と・これを・二三どうたひ・すまされたりければ・おほみやをはじめまゐらせて・じじういげのにようばうたち・みなそでをぞぬ
らされける・あけければたいしやういとままをして・ふくはらへこそ・くだられけれ・じじう・たいしやうのおんなごりを・をしみたてまつつ
て・くるまよせまで・たちいで・おんうしろをはるばるとみおくりたてまつり・なみだをおさへてとどまりけり・たいしやうおんともにめしぐせら
れたりける・くらんどをめして・じじうがなにとおもひてやらむ・よにもなごりをしげにみえつるに・なんぢゆきて
なにともよきやうに・いひてこよかしとおほせければ・くらんどはしりかへり・これは・たいしやうどののまをせとさふらふとて
ものかはときみがいひけむとりのねの・けさしもなどかこひしかるらん・
じじうとりあへず
またばこそふけゆくかねもつらからめ・あかぬわかれのとりのねぞうき・
くらんどかへりまゐり・このよしをまをしたりければ・さればこそ・なんぢをばつかはしたりつれとて・たいしやうおほきのかんぜら
れけり・それよりしてこそ・ものかはのくらんどとは・めされけれ
物怪 503
にふだうしやうごくの・みやこうつりののちは・ゆめみも・あしう・またふしぎのことども・おほかりけり・たとへば・そのころ・にふだうP223
しやうごくの・すまれける・つぼのうちに・ひさうして・うゑさせられける・五えふのまつの・一やの・うちに・かれにけるこ
そ・ふしぎなれ・またうしろなる・まつやまのかたには・ひとならば・四五百・千にんばかりの・こゑにて・たいぼくをた
をすが・やうに・一どにどつと・わらふこゑしけり・にふだうひきめのばんと・なづけて・ひる卅にん・よる六十にんの
ひやうしを・すゑて・ひきめかぶらを・いさせられけるに・いおふせたるかと・おぼしきときは・おともせず・またそ
ぞろなるかたへ・いやつたるかと・おぼしきときは・一どにどつとぞ・わらひける・またにふだうしやうごくの・ちやうないには・
一まに・はばかるほどのものの・おもてが・いできて・にふだうしやうごくをにらみたてまつる・にふだうもさる・おそろしき・ひと
にて・おはしければ・すこしもさわがず・にらまれけるに・しにん・わらうて・うせにけり・あるときの・ふたあさ・
にふだう・ちうもんのらうに・いでたまひ・六ゐやさふらふ六ゐやさふらふと・めされけれども・をりふしひと・一りもさふらはざりけるに・つね
の・つぼのうちを・みやりたまへば・しやれたる・かうべが・四五百・千ばかり・みちみちて・はしなるが・なかへ
いり・なかなるが・はしへいで・うへなるが・したになり・したなるが・うへへあがり・たがひに・ころびあひ・ころ
びのき・がらめきけるが・さるかと・すれば・ひとつになつて・十ぢやうばかりに・そびえあがる・ときもあ
り・またちつとに・なるときもあり・千万のまなこをもつて・にふだうしやうごくを・にらめたてまつる・たとへば・にふだうも・せけん
に・わらはべのめくらべ・なんどを・するがやうに・またたきもせず・にらまれければ・つゆしものひに・あた
つて・きゆるが・ごとくに・あとかたもなうぞ・うせにける・またにふだうしやうごく・十四五六のわらはべを・三百よにん
めしあつめ・かぶろとなづけて・めしつかはれけるなかに・てんぐ・まぎれて・あそびけり・またにふだうしやうごくの・ひさうP224
して・なでかはれける・むまのをに・ねずみすをくひ・一やのうちに・こをうみにけるこそ・ふしぎなれ・
このむまはとうごく・さがみのくにのぢうにん・おほばの三らうかげちかが・もとより・八ケこく一の・めいばとて・まゐらせたりけるが・
くろきむまの・ひたひすこし・しろかりければ・もちづきと・なづけて・なのめならず・ひさうして・なでかはせられける・
むまのをに・ねずみすをくひ・一やのうちに・こをうみければ・これただごとに・あらずとて・八にんのはかせを・め
して・うらなはせらる・てんがの・さわぎと・うらなひまをす・やがてこのむまをば・あべのやすちかたまはりけり・むかしてんぢてん
わうのおんとき・れうのおんむまのをに・ねずみすをくひ・一やの・うちにこを・うみに・けるにも・てんがおだやかならずと
ぞ・にほんぎには・しるされたる・またふるきみやこに・おはしける・げんちうなごんがらいのきやうのもとに・さふらひけるせいし
が・みたりしゆめこそ・なによりも・ふしぎなれ・たとへば・たいだいの・じんぎくわんのへんを・とほると・おぼしき
に・そくたいしたまひたる・じやうらふの・いくらも・なみゐさせたまひて・ぎぢやうなんどの・ありけるを・なにごと
やらむと・たちとまつて・きくほどに・なかにも・ざじやうに・おはします・じやうらふの・ゆゆしう・けだかき・おんこゑに
て・このほど・へいけに・あづけおきたる・せつばかりを・めしかへし・いづのくにのるにん・さきのうひやうゑのごんのすけよりともに・た
ばんとぞ・おほせける・またまつざに・おはします・じやうらふの・へいけの・かたうどしたまふと・おぼしきを・おつたてらる
ると・みまをして・あけてのち・ひとに・かたるほどに・このことふくはらへ・きこえたり・にふだう・がらいのきやうのもとへ・ししや
を・たてて・それにゆめみの・をとこのさふらふなり・たまはつてゆめのやう・あひたづねさふらはんと・のたまひ・つかはされたり
ければ・このをとこ・あしかりなんとや・おもひけむ・やがてちくでん・してんげり・がらいのきやう・まつたう・さるP225
きよじを・ぢんじまをされたりければ・このうへは・にふだうちからおよばずとぞ・のたまひける・にふだうしやうごくの・いまだその
ころ・あきのかみたりしとき・いつくしまのだいみやうじんより・れいむかうふり・うつつに・たまはられたりける・しらえの
こなぎなた・つねのまくらを・はなたず・たてられたりけるが・にはかに・うせにけるこそ・ふしぎなれ・なかにも・かう
やのおやまに・おはしける・さいしやうのにふだうなりより・このよしを・つたへききたまひて・すはすは・へいけのうんめいは・すゑになり
ぬるは・なかにもざじやうに・おはします・じやうらふの・このほど・へいけに・あづけおきたる・せつどを・めしかへし・いづ
のくにのるにん・さきのうひやうゑのごんのすけよりともに・たばんと・おほせのわたらせたまふは・げんじのうぢがみ・しやう八まんだいぼさつ
にてぞ・わたらせたまふらん・またまつざに・おはします・じやうらふの・へいけのかたうど・したまふと・おぼしきを・おつ
たてらるると・みまをしたるは・へいけのうぢがみ・あきのいつくしまの・だいみやうじんにてぞ・わたらせたまふらん・いつくしまのだいみやう
じんは・しやからりうわうの・だい三のひめみや・たいざうかいのすゐじやくにて・によしんとこそ・うけたまはりつるに・さやうに・ぞくたいに
て・みえさせたまひけるこそ・ふしぎなれ・ただしこのおんかみは・三めい六つうを・えさせたまひたんなれば・もし・
さやうの・おんことにも・どうしんしたまへるに・こそと・ありがたかりし・おんことなり・うきよをいとひ・まことのみちに・
いるひとも・ぜんせいを・きいては・よろこび・なげきを・きいては・かなしめり・ふかきやまに・いりたまひしより
このかた・一かう・ごせぼだいの・つとめのほかは・たじやは・あるべきなれども・そのときより・をりにしたがふ・ならひと
て・かやうのことをも・のたまひけり・へいけ・よをとつて・廿一ねん・たのしみ・さかえは・むかしも・いまも・た
めし・すくなかりしことどもなり・されども・ほういつじやけんに・おはしければ・いまはせつどをも・めしかへさせたまふに・P226こそと・あはれなれし・ことどもなり
大場がはや馬(あひ) 504
おなじき九ぐわつニかのひ・とうごく・さがみのくにのぢうにん・おほばの三らうかげちかが・もとより・はやむまを・たてて・へいけへ・まをし
けるは・いづのくにのるにん・さきのうひやうゑのごんのすけよりとも・しうとほうでうの四らうときまさを・いんぞつして・つがふそのせい・五十
よき・さんぬる・八ぐわつ十七にちのよ・たうごくのもくだい・いづみのはんぐわんかねたかをやまきがたちにて・ようちに・しぬ・おなじき
二十かのひ・さがみのくにに・うちこえ・どひ・つちや・をかざきの・ものども・三百五十よきにて・いしばしのじやうに・たて
こもりさふらひぬ・おなじきニ十二にちに・かげちか・むさし・さがみ・二ケこくの・ぐんびやう・三千よきを・あひぐして・いしばしのじやう
におしよせ・さんざんに・せめたたかひさふらふほどに・よりとも・いくさに・うちまけ・しゆじう・七八きに・うちなされ・どひの・すぎ
やまに・にげかくれさふらひぬ・おなじき廿四かに・みうらのおほすけが一たう・五百よきにて・げんじがたす・はたけやま・五百
よきにて・ゆゐこつぼにて・かつせんす・はたけやま・いくさにうちまけ・むさしのくにに・ひきしりぞきさふらひぬ・なほ・はたけやま・はらを
たて・えど・かさい・しながはのものども・三千よきを・ひきぐして・おなじき廿六にちに・三うらきぬがさのじやうに・おしよせ・
さんざんにせめたたかひさふらふほどに・おほすけうたれさふらひぬ・こどもまごどもは・三百よきに・うちなされ・三うらくりばまよりふね
にとりのり・ひやうゑのすけが・あとをたづねてあはかづさへ・わたりぬとこそ・たてたりけれP227
朝敵揃 505
そのころふくはらに・さふらひける・へいけのさむらひども・このよしを・ききて・あはれさらば・げんじが・とうして・よせこよかし・
われうつてに・むかはんなんど・いふぞ・はかなき・そのころふくはらに・さふらひける・とうごくのだいみやうには・はたけやまの
しやうじしけよし・おととをやまだのべつたうありしげ・うつのみやのさゑもんともつななり・にふだうかれらをめして・のたまひけるは・なんぢらが
こども・とうごくに・あんなれば・げんじに・さだめて・どうしんするらん・なと・のたまへば・これらかしこまつて・まをしけるは・
ほうでうは・したしうなつてさふらへば・さやうの・おんこともやさふらふらん・そのほかのものどもは・まつたう・さなきよしを・
ちんじまをしたりければ・にふだうさらば・きしやうもんに・およぶべかしと・のたまへば・おのおのかしこまつてうけたまはり・くまののごわうを
まをしおろし・七まいのきしやうもんを・かいて・たてまつる・げにもと・まをすひともあり・いやいやこのこと・だいじにや・およばんず
らんと・ささやくものも・おほかりけり・にふだうかさねて・のたまひけるは・そもそもかの・ひやうゑのすけよりともと・いつぱ・さんぬ
るへいぢに・ちちよしともが・むほんによつて・いけどりに・せられ・すでにちうせらるべかりしを・こいけのぜんにの・を
りふし・のたまひしに・よつてこそ・しざいを・るざいに・しよするところなれ・いつしか・そのおんをわすれて・たうけに・
むかつて・ゆみを・ひき・いかでか・やをも・はなつべき・たうじこそ・わうゐもむげに・かるけれ・むかしは・
せんじを・むかへて・よみしかば・かれたる・くさきにも・ははり・はなさき・とぶとりも・したがひ・たてまつりたりしが・
むかしえんぎのせいだい・しんせんゑんに・ごかうなつて・いけの・みぎはに・さぎの・さふらひけるを・くらんどをめして・あP228
のさぎ・とつて・まゐらせさふらへと・おほせければ・くらんど・いかで・とるべきとは・おもひけれども・りんげんなれば・
まかりむかふ・さぎはね・つくろひを・して・たたんとす・くらんど・いかに・せんじぞ・まかりたつなと・い
はれて・さぎ・ひらみて・とびさらず・くらんどかれを・いだいて・おんまへへ・まゐりたりければ・みかど・なのめな
らず・ぎよかんあつて・なんぢが・せんじに・したがひ・まゐらせて・まゐりたるこそ・しんぺうなれ・やがて五ゐに・なせ
とて・五ゐに・なさる・けふよりのち・さぎのうちの・わうたるべしと・いふ・おんふだを・あそばして・さぎの・
くびにかけて・はなたせ・おはしましけり・まつたうこれは・さぎの・ごようには・あらず・ただ・わうゐの・
ほどを・しろしめされむが・ためなりき・それ・てうてきのはじめには・きのくに・なぐさのこほり・たかをのむらに・一のつちぐも
あり・あしてながく・みみじかく・ちからひとに・すぐれたり・じんみんおほく・がいせられしかば・くわんぐんはつかうし・
かづらの・あみを・むすびつつ・せんじを・よみかけて・つひにこれを・おほひ・ころす・しかつしより・この
かた・やしんを・さしはさむもの・おほいしのやままろ・おほやまのわうじ・おほともの・まとり・もりやのだいじん・そがの・い
るか・やまだ・いしかは・ぶんやのみやだ・おほやの・さゑもん・だざいのだいにひろつぐ・さだいじんながや・うだいじんとよなり・ゑ
みのだいじんおしかつ・いがみの・くわうぐう・さあらのたいし・たちばなのいつせい・ふぢはらの・ちうせい・たひらのまさかど・ふぢはら
のすみとも・あべのさだたふ・むねたふつしまのかみ・みなもとのよしちか・あくさふ・あくゑもんのかみに・いたるまでつがふそのれい・廿よにんなり・
されども・これらは・いつかは・そくわいを・とげたりし・かばねを・りようもんげんじやうの・つちにうづみ・かうべを・ごくもんに
かけられし・ものなりきP229
咸陽宮 506
とほくいてうの・せんじようを・とぶらふに・むかしえんの・たいしたんは・じんのしくわうていに・とらはれて・いましめを・かうぶ
ること・十二ねん・あるとき・たいしたん・しくわうていに・まをしけるは・われにしばらくの・いとまを・たまはれかし・わがふるさと
に・いちにんのらうぼあり・われほんごくにかへつて・いまいちどははを・みむと・まをしたりければ・しくわうてい・おほきに・あ
ざわらつて・なんぢに・いとまたばんこと・むまに・つのおひ・からすの・かしらの・しろくならむを・まつべしとぞ・のたまひける・
ときにたいしたん・てんに・あふぎ・ちにふして・ねがはくは・みやうけんの三ばう・かうかうのこころざしを・あはれませたまひて・むま
につのおひ・からすのかしらしろく・なしたまへ・われほんごくに・かへつて・いまいちど・ははをみむとぞ・いのりける・かの
めうおんだいしは・りやうぜんじやうどに・けいして・ふかうのつみを・いましめ・くしらうしは・だいたうしんたんに・いでて・ちうかうの
みちを・はじめたまふ・みやうけんの三ばう・かうかうのこころざしを・あはれませ・たまふことなれば・むまにつのおひて・きうちうに
きたり・からすのかしら・しろくなつて・ていぜんのきに・いたり・うとう・ばかくの・へんに・おどろき・りんげん・かへらざること
を・しくわうていおぼしめして・たいしたんを・ゆるして・ほんごくへこそ・かへされけれ・しくわうてい・たいしたんをゆるして・
ほんごくへ・かへされけることを・なほやすからず・おぼしめされければ・じんのくにと・えんのくにのさかひに・そこく
と・まをすくにあり・かのくににたいがあり・たいがのうへに・たかきはしあり・すなはちそこくの・はしとぞまをしける・しくわうていかしこ
へ・ひとをつかはして・たいしたんが・わたらんとき・おつべき・はかりごとを・めぐらされ・たりけるを・たいしP230
たんは・ゆめにもしらずして・わたるほどに・なじかは・よかるべき・なかのほどにて・おちに・けり・されども・みづ
にも・おぼれず・しさいなく・むかひのきしに・わたりつつ・たいしたん・おほきに・ふしぎの・おもひを・なし・うしろ
を・かへりみければ・おほきなる・かめの・かふにぞ・のつたりける・これもただ・かうかうの・こころざしの・ふかかりけるに・
よつてなり・たいしたん・これによつて・なほうらみをふくみ・しくわうていにも・したがはずかへつて・しくわうてい・うつべき・は
かりごとをぞ・めぐらしける・しくわうてい・四かいに・せんじを・くだし・たいしたんを・うつべき・はかりごとを・め
ぐらされたりければ・たいしたん・けいかだいじんを・はじめとして・つはものあまた・かたらはれけり・またここに・でんくわうせん
せいと・いへる・つはものあり・けいかかれが・もとにゆきて・かたらはれければ・せんせいがまをしけるは・きりんは千り
をとべりと・いへども・としおいぬれば・どばにも・おとれり・きみはこのみの・わかう・さかんなつし・ことを・
おぼしめして・かやうに・たのみおほせさふらふが・いかさまにも・べちのつはものを・かたらつて・たてまつらむとて・いでけれ
ば・けいか・かれが・そでをひかへて・あなかしこ・このことてんがに・もらしたまふなよと・いひければ・せんせい・
たちかへつて・なによりも・ひとに・うたがはれぬるに・すぎたるはぢはなし・われいはずとも・このこと・てんがに・も
れなば・さだめて・うたがはれなんず・ひとのくちより・もれぬさきに・こころやすう・おもひたまへとて・けいかが・
まえにて・じがいしてこそ・うせにけれ・またここに・はんよきと・まをすつはものあり・これはもと・じんのくにの・ものなりけ
るが・おや・をぢ・きゃうだいを・しくわうていに・ほろぼされて・えんのくにに・にげこもりたり・しくわうてい・四かいにせんじを・
くだして・はんよきが・かうべ・ならびにえんの・さしづもつて・まゐりたらむずる・ものには・五百こんの・きんをあたP231
ふべしと・ふれられ・たりければ・けいか・かれがもとに・ゆいて・われきく・なんぢが・かうべ・五百こんのきんに・
ほうぜられたんなり・まことになんぢ・しくわうてい・ほろぼすべき・こころざしならば・なんぢがかうべ・われにかせ・しくわうの・だいり
に・もつてゆき・えいらんを・へられんとき・つるぎをむねに・ささんは・やすかるべしと・いひければ・はんよき・
をどりあがり・いきをついて・まをしけるは・われ・おや・をぢ・きゃうだいを・しくわうわていに・ほろぼされ・よるひる・これを・おも
ふに・こつずゐに・とほつて・しのびがたし・まことに・なんぢしくわうてい・ほろぼすべきこころざしならば・わが・くび・なんぢに・あたへ
んこと・ちりはひよりも・なほ・やすかるべしとて・けいかがまへにて・みづから・くびかきおとし・うせに・けり・また
ここに・しんぶやうと・まをすつはものあり・これももとは・じんのくにの・ものなりけるが・十三のとし・おやの・かたきをうつて・
えんのくにに・にげこもりたり・かれが・いかつて・むかふときは・だいのをとこも・ぜつじゆし・またわらうて・むかふときは・み
どりごも・いだかれけり・かれに・はんよきが・くびを・もたせ・わがみは・えんのさしづの・いりたりける・
ひつを・もつて・じんのくにへぞ・むかひける・さうてん・ゆるしたまはねば・はつこう・ひをつらぬいて・とほさず・され
ば・わがほんい・とげがたしとぞ・たいしたんは・のたまひけるほどなう・じんのくににいたりぬ・はんよきが・かうべならびに・
えんのさしづ・もちて・まゐりたるよしを・そうもんす・しくわうてい・ひとして・うけとらむと・のたまへば・ひとしては・かな
ふまじ・ただちに・たてまつるべきよしを・まをしたりければ・しくわうてい・さらばとて・にはかに・せちゑのぎを・ととのへて・
えんの・つかひをぞ・めされける・かんやうきうと・まをすは・みやこのめぐり・一万八千三百七十よりと・かや・だいりをば・
ちより・三りたかく・つきあげ・くろがねのついぢ・たかさ百よぢやう・はう四十りに・つかせ・そのうちに・つくられP232
たり・あきは・たのむのかり・はるは・かならず・みやこより・こしぢへかへる・ものなれば・ひぎやう・じざいの・さはり
ありとて・ついぢには・がんもんと・いへるもんを・あけてぞ・とほされける・しろがねをもつて・つきを・つくり・
こがねを・もつて・ひを・つくれり・しんじゆのいさご・るりのいさご・こがねのいさごを・しきみてり・ちやうせいでんあり・ふらうもんあり・
四十八でんの・そのうちに・しくわうていの・つねに・すまれける・でんあり・あはうきうとて・くち・六しやくの・あかがねのはしらを・たか
さ・卅六ぢやうに・たてさせ・とうざいへ九ちやう・なんぼく五ちやうに・つくられたり・おほゆかのしたには・五ぢやうの・はたほこ
を・たてたれども・なほ・およばぬ・ほどなり・かしこに・たまの・きざはし・あり・しんぶやう・これを・のぼる
ほどに・おくしてもや・ありけん・ひざのふし・わなわなと・ふるつて・のぼり・わづらふ・しんか・あやし
みを・なし・ぶやうは・むほんのこころざし・あり・きみはけいじんに・ちかづかず・けいじんをば・また・きみのかたはらに・おか
ずと・いひければ・けいかたちかへつて・ぶやうは・むほんのこころざしなし・えんのくにの・いやしきに・ならつて・かかる
くわうきよを・はじめて・みるあひだ・めいわくすと・いはれて・しんか・おのおのしづまりぬ・そののち・はんよきが・かう
べならびに・えんのさしづともに・ひけんせらる・さしづの・いりたりける・ひつのそこに・つるぎの・こほりなんどの・やうに
て・みえければ・しくわうてい・おほきに・おそれをののいて・いそぎ・にげんと・したまひけるを・ぎよいの・たもとを・
むんずと・ひかへたてまつつて・つるぎを・むねにさしあて・たてまつる・すでに・かうとぞ・みえたりける・千万のつはものども
ていじやうにひざをつらねけれどもすくはんとするに・ちからなし・ただこのきみ・ぎやくしんに・をかされたまはんことを・
かなしみけりとぞ・うけたまはる・しくわうていは・三千にんの・きさきを・もちたまへり・そのなかにも・くわやうぶにんとて・ならびなP233
き・ことのじやうずにて・ましましけり・しくわうてい・けいかにむかつて・のたまひけるは・われにへんしのいとまをえさせ
よ・さいあいのきさきの・ことのねを・いまいちど・きかんと・のたまへば・けいかゆるしたてまつる・きさきは・七しやくのびやうぶを・へ
だてて・ことを・しらべ・ましましけり・およそこのきさきの・ことのねには・もののふの・たけく・いかれるも・しづま
り・とぶとりも・おち・くさきも・なびくばかりなり・いはんやけふをかぎり・ただいまばかりの・えいぶんに・そなへむと・し
らべましましければ・さこそは・おもしろかりけめ・けいかも・ぼうしんの・こころうしなひはて・かうべをうなだれ・みみ
を・そばだてて・これをきく・そのとききさき・はじめて・一きよくをそなふ・七しやくのびやうぶはたかくとも・をどらば・こえぬべ
し・一ぢようの・らこくは・つよくとも・ひかば・たえぬべしと・しらべ・ましましけるを・けいかは・これをきき
しらず・しくわうていは・ききしつて・ましましければ・ひかへたりける・ぎよいの・たもとを・ふつつと・ひきちぎ
つて・七しやくのびやうぶを・をどりこえ・あかがねのはしらの・かげに・かくれたまふ・けいか・おほきに・いかつて・つるぎを・なげ
かけたてまつる・をりふし・おんまへにばんのいしの・さふらひけるが・くすりのふくろを・なげかけたり・つるぎくすりのふくろを・かけられなが
ら・くち六しやくの・あかがねのはしらを・なからまでこそ・きつたりけれ・けいかは・つるぎの・あまたもなければ・つづい
ても・なげず・しくわうてい・たちかへり・ひしゆとまをす・ぎよけんを・めしよせて・けいかを・やつざきにこそ・したまひけ
れ・しんぶやうも・うたれにけり・そののちうつてをつかはして・たいしたんをも・ほろぼさる・むかしもいまも・おんをわす
れ・ちぎりをへんぜしものは・つひには・かくこそ・ありしか・さればいまの・ひやうゑのすけも・さこそは・あらんずら
むと・しきだいするひとも・おほかりけりP234
文覚の勧進帳 507
そもそもかのひやうゑのすけよりともといつぱ、おんとし十四とまをしし、えいりやくぐわんねん三月廿日のひ、いづのくにほうでうひるがしまにながされて、
廿よねんのはるあきをおくり、ことしはすでに卅四にぞなられける。としごろひごろもあればこそありけれ、いかなれば
ことししも、かかるむほんをおもひたたれける、ゆゑをいかにとまをすに、ごにちにきこえしは、たかをのもんがくしやうにんの
おんすすめなりけるとぞきこえし。このもんがくしやうにんとまをすは、わたなべのゑんどうさこんのしやうげんたいふもちとほがこに、ゑんどうむしやもり
とほとて、じやうさいもんゐんのしゆなり。しかるにもりとほ十九のとし、あさからずおもひけるをんなにおくれ、けんごのだうしんおこ
して、やまやまてらでらしゆぎやうしけるが、あるときおほみねをぎやうぜばやとおもひ、せんだちかたらうてくまのへまゐり、なちに千
にちこもり、おほみねことゆゑなうぎやうじてのち、さすがこきやうやこひしかりけむ、みやこにのぼり、たかをとまをすところにしばら
くおこなひてぞさふらひける。せんねんたかをに、じんごじとまをすやまでらあり。ひさしくしゆざうなくしてあれはいせり。とびらはかぜに
たふれて、むなしくおちばのしたにくち、のきばはあめにをかされて、ぶつだんさらにあらはなり。もんがくわれたまたまにん
げんにしやうをうけ、さいはひにしゆつけとんせいのみとなれり。あたらしうだうたふをたてんより、ふるきをこんりふしたらむに
はしかじと、たいきやうにもみえたり。せんずるところしゆざうせばやとおもひ、くわんじんちやうをかきて、十ぱうだんなをすすめあ
りきけるが、あるときゐんのごしよほうぢうじどのにまゐり、ほうがのよしをまをしければ、ひとびとけうなるひじりのごばうかな、ぎよいうの
をりふしぞ、わたるにまゐれとおほせければ、もんがくこれはまをせどもひとがそうせぬぞとこころえて、もとよりふてきだい一のあらP235
ひじりにてはさふらひけり。おんつぼのうちにやぶりいつて、だいじだいひのきみにてわたらせたまへば、などかごほうがのな
かるべきとて、ふところよりくわんじんちやうをおつとりいだし、おそろしげなるこゑをもつて、たからかにこそよみたりけれ。
しやみもんがくうやまつてまをす、ことにはじうばうだんなのごじよじやうをかうぶつて、たかをさんのいちに一ゐんをこんりふし、げんたうニ
せあんらくのだいりを、こんぎやうせしめんとこふくわんじんのじやう。
それおもんみれば、しんによくわうだいなり。しやうぶつのけみやうをたつといへども、ほつしやうずゐまうのくもあつくおほひて、はるかに十二いんえんのみね
にたなびきしよりこのかた、ほんうしんれんのつきのひかりかすかにして、いまだ三どく四まんのそらにあらはれず、かなしいかな、
ぶつじつはるかにぼつして、しやうじるてんのちまたみやうみやうたり。いろにふけり、かにほこる、たれかきやうざうてうゑんのまどひを
しやせん。ひとをばうしほふをばうす、あにえんらごくそつのせめをまぬがれんや。ここにもんがく、たまたまぞくぢんをはらひて、
ほうえをかざるといへども、あくぎやうなほこころにたくましくしてにちやにうつり、ぜんいんまたみみにさかつててうぼにすたる、いたましいかな、ふたたび
さんづのくわきようにかへつて、かさねてしやうじのくりんをめぐらんことを、このゆゑにむにのけんしやう千万ぢく、ぢくぢくにぶつしゆの
いんをあらはし、ずゐえんししやうのほふ、みなもつてぼだいのひがんにいたらずといふことなし。ゆゑにもんがくむニのくわんもんになみだをおとし、
じやうげしんぞくのけちえんをもよほし、じやうぼんれんだいにふをはげまして、とうめうかくわうのれいぢやうをたてんとなり。それたかをさんは、やま
うづたかうしてしゆぶのやまのこずゑをまなび、たにしづかにしてしやうさんとうのこけをしく。がんせんむせんでぬのをひき、れいゑんさけんでえだ
にあそぶ。じんりとほくしてがうぢんなく、しせきことなうしてしんじんのみあり。ちけいすぐれたり。もつともぶつてんをあがむべ
し。ほのかにきくしゆさゐぶつたふくどく、たちまちにぶついんをかんず、いはんやいつしはんせんのほうさいにおいてをや。ねがはくはこんりふじやうじゆして、きんP236
けつほうれきごぐわんゑんまん、ないしとひゑんきんりんみんしんそ、ともにげうしゆんぶゐのくわをうたひ、ちんえふさいくわいのゑみをひらか
ん。かねてまたしやうりやういうぎぜんごだいせう、ともにいちぶつしんもんのだいにいつて、おなじく三(イ三身)万とくのつきをもてあそばんや。
よりてくわんじんしゆぎやうのおもむきけだしもつてかくのごとし。
ぢしよう三ねん三ぐわつ廿かのひ もんがくほうし
うやまつてまをすとぞよみあげたる。
文覚の流され 508
さるほどに・ほうぢうじどのには・めうおんゐんのだいじやうだいじんもろなが・びは・かきならし・あぜちのだいなごんすけかたのきやう・ひやうしを
うちて・ふぞく・さいばら・うたはれけり・げんせうしやうまさかた・わごんを・しらべ・四ゐのじじうもろさだ・いまやう・と
りどりに・うたうて・たまのすだれも・れいれいと・してまことに・おもしろかりければ・ほうわうも・ぎよかんのあま
り・おんつけうたなんど・さふらひけるに・それに・もんがくが・もつてのほかおほごゑに・てうしも・はやことごとくみだれぬ・ほう
わう・あれなにものぞ・らうぜきなり・つゐほうせよと・おほせくださるる・ほどこそありけれ・あはれなにごとかな・ことにあはば
やと・おもふ・はやりうの・ものども・はしりよりて・いかに・けうのひじり・ぎよいうのをりふしぞ・ごにちにまゐれと・おほせけれ
ば・もんがくあなことごとし・たかをのじんごじに・おいて・くににても・しやうにても・いつしよ・よせたまはざらんほか
は・まつたうまかりいづまじとぞ・まをしける・そののち・すけゆきはんぐわんは・もんがくが・そくび・つかんとて・よりけるを・もんP237
がくくわんじんちやうをば・ひだりのてに・おつとりなほし・みぎのかひなを・さしいだし・すけゆきはんぐわんが・ゑぼしを・う
つてうちおとし・むねを・ばぐと・ついて・のけに・つきたふす・すけゆきはんぐわんは・もんがくに・ゑぼし・うちおと
され・をめをめと・なりて・おほゆかのうへへぞ・にげ・のぼりける・そののち・もんがくは・むまのをにて・つかまいたる・
かたなの・そのたけ・七すんばかり・ありけるが・よそよりは・こほりなんどの・やうに・みえけるを・ぬきもつて・
よりくるもの・あらば・つかんとこそは・まちかけたれ・もんがく・ひだりのてには・くわんじんちやうをもち・みぎのてに
は・かのかたなを・もつて・はしりありきければ・おもひもかけぬ・にはかごとにては・さふらひけり・ひとめにはただ・さ
うのてに・かたなをもつたる・やうにぞ・みえし・ほうわうも・えいりよを・おどろかさせ・おはします・わかき・く
ぎやうでんじやうびとや・つぼねのにようばうたちに・いたるまで・こは・いかなるべしとも・おぼえさせたまはず・ここにしなののくに
のぢうにん・あんどうみぎむねが・たうしよくにて・むしやどころに・さふらひけるが・たちを・ぬいて・つつといで・くわんじんのひじりを・
きつては・せんなしとてや・おもひけん・もんがくが・かたなもちたるかたの・かひなを・たちのみねにて・かたかけて・
したたかにうつ・うたれてひるむところを・たちをなげすて・はしりかかつて・むずとだく・もんがくは・だかれな
から・みぎむねが・かひなをぞ・ついたりける・みぎむねは・つかれながらぞ・しめたりける・もんがくもつよし・
みぎむねも・つよかりければ・たがひに・うへになり・したになり・ころびあふところを・ここかしこへ・にげ・ちり
たりつるものども・わが・かうみやうがうに・ちぎりき・さいぼうを・もつて・より・もんがくが・はたらくところの・
ぢやうを・さんざんに・がうしてんげり・されどももんがくは・ちつとも・いろもへんぜず・わるびれたる・けP238
しきも・なく・ゐをり・いよいよあくこう・ほうごんをぞ・しける・たとひほうがをこそ・したまはざらめ・これほどに・
くわんじんのひじりに・からきめを・みせたまひぬれば・たんだいま・おもひしらせ・まをさんずるものを・三がいは・
みなこれくわたくなり・わうぐうとても・のがるべからず・たとひいまこそ・十ぜんのていゐに・ほこつたうとも・くわうせんのたびに・
おもむきたまひなんのちは・ごづめづのせめをば・よにし・まぬがれたらじものを・まぬがれたらじものをと・をどりあがりをどりあがりぞ・
まをしける・そののちもんがくをば・ちやうのものに・たぶちやうのもの・たまはつて・七八にんが・なかに・ひつたてて・いでけるが・
ちやうのものどもは・もんがくを・ひつたてて・いづると・おもひけれども・ひとめには・ただ・ちやうのものどもが・もんがくに・ひ
つたてられて・いづるとぞ・みえし・もんがくをば・やがて・ごくぢやうせらる・そののち・すけゆきはんぐわんは・もんがくに・ゑぼ
し・うちおとされ・めんぼくなくや・おもひけむ・しばしは・しゆつしも・せざりけり・あんどうみぎむねは・もんがくに・くみ
たる・けんしやうに・たうざに・一らふを・へずして・うまのじようにぞなされける・そのころ・びふくもんゐん・にはかに・
かくれさせ・たまひしかば・もんがく・やがて・ごくをば・いだされけり・もんがくなほも・こりぬさまにて・またくわんじん
ちやうをかいて・十ぱうだんなを・すすめ・ありきけるが・へいけのひとびとの・あたり・とほると・おぼしきときは・
あつぱれ・てうおんに・ほこりたる・へいけのひとびとの・たんだいま・よのみだれ・いできて・うせはてに・あはう
ずるものを・あはうずるものをと・かやうに・のろのろしきことを・いひ・ありきければ・すべて・このほうし・みやこの・うちに
は・かなふまじ・さらば・をんるせよやとて・いづのくにへぞ・ながされける・これぞ・へいけのうんの・きはめ
なる・かいだうは・かなふまじ・ふねにのせて・くだせやとて・いせのくに・あののつより・ふねに・のせて・くだP239
すほどに・とほたふみのくに・てんりうなだ・九十九ひきのこまがた・なんどまをす・あくしよを・すぎゆくほどに・をりふし・おほかぜおほなみたつ
て・ふねすでに・じゆかいせんとす・すゐしゆかんどりども・ろ・かき・かぢを・たてなほせども・かなはず・あるひは・くわんおんの
みやうがうを・となへ・あるひは・さいごの・十ねんに・およびけれども・もんがくは・ちつとも・さわがず・ふなぞこに・ざぜんしてこ
そ・ゐたりけれ・すゐしゆかんどりども・いかに・ひじりのごばう・これほどに・おほかぜおほなみ・たつて・ふねすでに・じゆかいせん
と・するに・などきやうをもよみ・ねんぶつをも・まをして・りうじんに・たむけ・いのちたすからんとは・おもひたまはぬぞ
と・いひければ・もんがくげにもとや・おもひけん・かつぱと・おきなほり・ふなばたに・あゆみいで・だいのまなこに・
かどをたて・うみのおもてを・はつたと・にらまへて・いかにりうわうやある・いかにりうわうやある・これほどに・だいぐわん・おこ
したる・ひじりを・いかで・しづめて・みんとは・するぞ・たんだいま・てんのせめ・かうぶらんずる・りうじんどもかなと・
よばはつ・たりければ・りうじんこのことばにや・おそれけん・なみかぜしづまつて・ことゆゑなく・いづのくににぞ・つきにけ
る・もんがくだいぐわんを・おこすことあり・われふたたび・みやこにのぼり・たかをのじんごじを・しゆざうすべくば・しぬまじ・さ
らずば・しぬべしとて・みやこを・いでしひよりして・いづのくにに・つくまで・二十一にちがあひだは・ゆみづを・だにも
のみいれず・だんじきしてこそ・くだりけれ・されどもきりよくすこしも・おとろへず・ざぜん・ぎやうほふをも・おこたらず
して・いづのくににぞ・つきにける・そのほか・ただびとならずと・おもふことども・おほかりけり
福原院宣 509 P240
さるほどに・もんがくをば・たうごくのざいちやう・こんどう四らうくにたか・うけとつて・なごやがをかにぞ・おきたりける・それよ
りひやうゑのすけの・おはするところも・ほどちかかりければ・つねはよりあひ・きやう・ゐなか・むかし・いまのことどもを・かたりあ
はせて・たがひに・なぐさめあはれけり・あるとき・もんがく・ひやうゑのすけに・まをしけるは・へいしには・こまつどの・ばかりこそ・
おんこころも・がうにごさいかくも・ゆゆしう・わたらせたまひたりしかども・それも・へいけのうんめいを・はかつて・きよねんの
八ぐわつに・こうじたまひぬ・いまは・げんぺいりやうけのうちを・みるに・ごへんほど・しやうぐんのさう・もちたるひとも・おはせぬ
ぞ・はやはやおもひたつて・へいけをほろぼし・につぽんのしやうぐんとならむとは・おもひたまはずやと・いひければ・
ひやうゑのすけ・それおもひも・よらぬことなり・そのゆゑは・さんぬる・へいぢに・いけどりに・せられて・すでに・ちうせらる
べかりしを・こいけのぜんにに・いのちたすけられ・まゐらせしのちは・まいにち・ほけきやうを・二ぶようで・一ぶをば・
ぶもけうやう・一ぶをば・かのぜんにのために・たむけたてまつるよりほかは・またたじなしとぞ・のたまひける・もんがくかさねて・まをし
けるは・てんのあたふるを・とらざれば・かへりてそのとがめを・うけ・ときいたつて・おこなはざれば・そのわざはひを・う
くといふ・ほんもんあり・ごへんに・こころざしの・あり・なきをば・これにて・よく・しりたまへとて・ふところより・ぬののふくろ
に・いれたる・しやれたる・かうべを・なげいだし・ひやうゑのすけにたてまつる・ひやうゑのすけ・あれは・いかにとのたまへば・これこそ・
ごへんのちち・こさまのかうのとのの・おんくびよ・さんぬる・へいぢに・ごくしよのへんに・うづもれて・おはしけるを・
もんがくあまりの・いたはしさに・ほりおこし・たてまつつて・この二十よねんがあひだみを・はなたず・とぶらひたてまつりぬれば・
いまはさだめて・一ごふも・うかびたまひぬらむ・されば・もんがくは・こさまのかうのとのの・おんためには・ほうこうのものにP241
て・さふらふものをなんど・やうやうに・まをしたりければ・ひやうゑのすけ・これを・まこととは・おもはれざりけれども・ちちの
くびと・きくが・なつかしさに・ひだりのそでに・うけとつて・まづ・なみだをぞ・ながされける・それよりしてぞ・
むほんをば・やうやう・おもひたちたまひける・そののち・ひやうゑのすけ・のたまひけるは・たとひさやうのこと・おもひたつとも・
ちよくかんを・ゆるされ・まゐらせずしては・いかがあるべきと・のたまへば・もんがく・それは・われみやこにのぼり・まをして・
ゆるしたてまつらん・ひやうゑのすけ・おほきに・あざわらつて・ごへんも・るにんのみとして・ひとのちよくかんを・まをして・ゆるさ
んと・のたまふこそ・おほきに・まことしからねと・のたまへば・もんがく・やらそれは・わが・ゆりんと・まをさば
こそ・ひとの・ちよくかんを・まをして・ゆるしたてまつらむは・なじかは・くるしかるべき・これより・ふくはらのしんとへ・
三か・ゐんぜん・うかがはんに・一にち・じやうげ・七か八かには・よもすぎじ・あひかまへて・そのあひだは・まちたまふべしと
て・させる・りやうじやうは・なけれども・もんがく・ばうにかへり・でしどもに・あうて・かたりけるは・われ・いづ
のおやまに・七かさんろうのこころざしあり・たとひひと・たづぬるとも・あひかまへて・このよしかくと・かたるべからずとて・おひを・かけ・
ばうをいで・よをひについで・のぼるほどに・三かとまをす・とりのこくばかりに・ふくはらのしんとに・のぼりつき・うひやうゑの
かみみつよしの・もとに・いささか・ゆかりありければ・もんがく・かしこにおちつき・みつよしにあうて・かたりける
は・いづのくにのるにん・さきの・うひやうゑのごんのすけよりともこそ・ちよくかんを・だにも・ゆるされ・まゐらせば・へいけを・
ほろぼさんと・まをせなんど・かたりければ・みつよし・たうじは・きみも・へいけに・おしこめられさせたまひて・
つきひのひかりを・だにも・はかばかしう・ごらんぜず・みつよしも・三くわんともに・おしとどめられて・こころぐるP242
しき・をりふしなりとは・のたまへども・もんがくかさねて・まをしければ・みつよしおんまへに・まゐり・このよしを・そうし・まをされた
りければ・ほうわう・なのめならず・ぎよかんなつて・やがてゐんぜん・あそばしてぞ・たうだりける・もんがく・ゐんぜん・
たまはつて・なのめならず・よろこび・またよをひについで・くだるほどに・ひやうゑのすけ・あはれ・このひじりの・なまじひなること・
まをしいだし・またいかなる・うきめにか・あはんずらむ・なんど・おもはじなき・こともなう・あんじつづけて・お
はしける・七かとまをす・いぬのこくばかりに・もんがく・いづのくにに・おちつき・たまひて・くは・やとの・ひやうゑのすけ・ゐんぜんよ・
とてなげいだす・ひやうゑのすけ・ゐんぜんときくが・かたじけなさに・あたらしき・じやうえをき・てうづ・うがひして・
そののちかのゐんぜんをぞ・ひらかれける・そのじやうに・いはく
へいし・わうくわを・べちじよして・せいだうにはばかることなし・それわがてうは・しんこくなり・そうべう・あひならむで・じんとくこれあら
たなり・ゆゑに・てうていかいきののち・す千よさいのあひだ・ていゐを・かたぶけ・こくかを・あやぶめんと・せしもの・
みなもつて・はいぼくせずと・いふことなし・これによつて・かつは・しんだうのみやうじよに・まかせ・かつは・ちよくせんの・しいしゆに・
まかせて・はやく・へいじの・いちるゐを・ほろぼして・てうのをんてきを・しりぞけて・ふだいきうせんの・ひやうりやくをつぎて・みを
たて・いへを・おこすべし・てへりゐんぜん・かくのごとく・よりてしつぴつくだんのごとし
ぢしよう四ねん・七ぐわつ九かのひ・うひやうゑのかみみつよしが・うけたまはりたてまつりてひやうゑのすけどのへとぞ・あそばされたる
富士川合戦 510 P243
そののち・かのゐんぜんをば・にしきの・ふくろにいれて・いしばしの・かつせんのときも・ひやうゑのすけの・くびに・かけられけるとぞ・きこ
えし・さるほどに・ふくはらには・さらばまづ・とうごくへ・うつてを・むけよやとて・たいしやうぐんには・こまつのごんのすけ
せうしやうこれもり・ふくしやうぐんには・さつまのかみただのり・さぶらひたいしやうには・かづさのかみただきよ・ちやくしたらうはんぐわんただつな・ひだのかみかげいへ・その
こたいふのはんぐわんかげたか・かはちのはんぐわんひでくに・たかはしのはんぐわんながつな・いとう九らうすけうぢ・またのの五らうかげひさ・むさしの三らうさ
ゑもんありくに・ながゐのさいとうべつたうさねもりを・さきとして・つがふそのせい・三まんよき・おなじき九ぐわつ十八にちに・ふくはらをたちて・
あくる十九にちに・きうとに・つき・おなじき二十かのひ・とうごくへ・はつかうせられけり・なかにも・こまつのごんのすけせう
しやうこれもりは・しやうねん・廿三に・なられけるが・ようぎ・たいはい・よに・すぐれむまくら・もののぐにいたるまで・あた
りも・てりかがやくほどにぞ・みえられける・そのほか・われもわれもと・いでだたれ・たりし・ありさま・めづらし
かりし・けんぶつなり・せんぢやうへ・むかふ・たいしやうぐん・三のそんちあり・せつとを・たまはるとき・いへを・わすれ・いへをいづ
るとき・つまこを・わすれ・かたきと・たたかふとき・みをわするると・いふほんもんあり・このひとびとも・さこそは・
おもはれけめと・あはれなり・なかにも・ふくしやうぐん・さつまのかみただのりの・ねんらい・かようて・あそばされける・みやばらの
にようばうの・もとより・こそでをひとかさね・おくられけるが・千りのなごりを・をしみつつ・一しゆのうたをぞ・おくられける・
あづまぢのくさばをわけてそでよりも・たたぬたもとはなほぞつゆけき
ただのりの・へんじには
あづまぢをなにとなげかんこえてゆく・せきをむかしのあととおもへば・P244
せきをむかしのあととおもへばと・よめるうたのこころは・このひとびとの・せんぞ・へいしやうぐんさだもり・さうまのまさかど・つゐたうのために・とう
八ケこくへ・こえられたりしこころを・おもひいでてや・よまれたりけむ・いと・やさしうぞ・きこえし・てうてきを・
たひらげに・ぐわいとへ・むかふしやうぐんは・まづ・さんだいして・せつたうを・たまはるものなれば・しゆじやう・しんぎなんでんに・
しゆつぎよなつて・ないべんぐわいべんのくぎやう・さんれつして・ちうぎのせちゑを・おこなはる・しようへいてんぎやうの・しようせきも・としひさし
くして・なぞらへがたし・これは・ほりかはのてんわうのおんとき・さぬきのかみまさもりが・いまだいなばのかみ・たりしとき・つしまのかみ・
みなもとのよしちか・つゐたうのために・いづもへ・げかう・したりしれいとて・すずばかりを・たまはつて・かのふくろに・いれざふ
しきがくびに・かけさせてぞ・くだられける・さるほどに・へいけは・ここのへのみやこを・たちて・のはらのつゆに・やどをか
り・たかねの・くもに・たびねして・やまを・かさね・かはをへだてつつ・やうやう・くだりたまふほどに・十ぐわつ十六
にちには・するがのくに・きよみがせきにぞ・つきたまひける・ろじのつはもの・かりぐして・つがふそのせい・七万よき・せんぢん
は・ふじかは・かんばらに・ささへければ・ごぢんは・いまだ・てごしうつのやまにこそ・みちみちたれ・つぎのひ・
せうしやう・さぶらひたいしやう・かづさのかみただきよを・めして・おなじうは・あしがらを・うちこえ・八ケこくに・ついて・かつせん・せばや
と・おもふは・いかが・あるべきと・のたまへば・かづさのかみ・かしこまつて・まをしけるは・とうごくは・くさもきも・みな・
ひやうゑのすけに・したがひ・つきて・さふらへば・およそ・二三十まんきに・おとることは・さふらふまじ・みかたはわづかに・七万よき
とは・まをせども・あるひは・ざふひやう・あるひは・くにぐにの・かりむしやどもにて・ながたびに・せめつかれては・いかにも・
かなひさふらふまじ・ただこのたびも・やまを・まへにあて・かはをへだてて・みかたのおんせいを・またせたまふ・べうもや・さふらふらP245
んと・まをしたりければ・このうへは・せうしやうも・ちからおよびたまはず・なかにも・ふくしやうぐん・さつまのかみただのり・あはれひとの
こころの・のびたるほど・くちをしかりける・ものあらじ・にふだうの・いま一にちも・さきに・うつてを・むけられたらんに
は・おほばや・はたけやまが一たうは・まつさきに・こそまゐらんずれ・これほどに・こころうきことあらじとぞ・のたまひけ
る・そののち・せうしやう・とうごくのあんないしやに・めしぐせられたりける・ながゐのさいとうべつたうさねもりを・めして・とうごくに・
なんぢほどの・おほやいるものは・いかほどあるぞと・のたまへば・さねもり・おほきに・あざわらつて・きみは・さねもりをも・おほ
や・いるものと・おぼしめされさふらふか・わづかに・十三ぞくをこそ・つかまつりさふらへ・とうごくに・おほやと・まをすぢやうのものの・
十五そくに・おとつて・ひくは・さふらふまじ・ゆみは・三にん・五にんして・おしかかる・おほゆみ・おほやを・もつて・
つかまつりさふらへば・よろひの・二三りやうは・かけず・とほりさふらふ・とうごくに・だいみやうと・まをすぢやうのものの・五百きに・
おとつて・つるるは・さふらふまじ・むまをのるに・おつることを・しらず・あくしよを・はするに・むまを・たふさず・
さいこくぶし・きないのつはものどもこそ・おや・うたれさふらへば・こは・ひきしりぞき・いみ・あひて・よせ・こ・うたれ
さふらへば・おやは・ひきしりぞき・けうやうしては・よせさふらへ・とうごくには・すべて・そのぎさふらふまじ・おやうたれんと・すれ
ば・こは・さきに・しなんと・すすみ・しううたれんとすれば・いへのこ・らうどうは・さきにしなんと・すすみ
さふらふ・おやも・うたれよ・こもうたれよ・しにんを・のぼりこえのぼりこえ・たたかうさふらふ・かひ・しなのの・げんじ・やま
のあんないは・しつたり・からめてさだめて・まはりさふらふらん・ことにげんじは・ようちを・このみさふらふ・かやうに・まをせばとて・
きみを・おくせ・させ・まゐらせんとには・さふらはず・いくさは・せいにはよらず・はかり・ごとによると・むかしよP246
り・まをしつたへてさふらへば・よくよくごようじん・あるべしと・かやうに・おびただしげに・まをしたりければ・へいけのつはものども・
みないろを・うしなつてぞ・ふるひける・さるほどに・かまくらの・ひやうゑのすけよりともは・おなじき十八にちに・十八まんきに
て・あしがらを・こえ・たまふ・かひげんじ・なんぶ・たけだ・をがさはら・一まんきにて・ふじのこしを・つたうて・ひやうゑの
すけと・一になる・しなのげんじ・おほうち・ひらが・きそのくわんじや・これも・一まんよきにて・ひやうゑのすけと・一つになる・
げんじほどなく・廿万きに・なりにけり・おなじき廿かのひ・げんじ廿万き・ふじかはのはたに・うちいで・むかひのきしに・
ぢんをとる・げんぺいたがひに・かはをへだてて・ささへたり・おなじき廿三にちの・うのこくに・げんぺいたがひに・やあはせと
ぞ・さだめてんげる・へいけのかたには・このよしをきいて・いくさは・こんみやうのほどにては・よもさふらはじ・いざやたびの
なごりを・をしまんとて・そのへんちかき・しゆくじゆくより・いうくん・いうぢよども・よびむかへ・あるひはえびらをといて・まくらとし・
あるひは・かぶとをふせて・まくらとし・ぜんごも・しらずぞ・うちとけたる・ながゐのさいとうべつたうさねもり・このよしをみて・ゆく
すゑ・たのもしからずや・おもひけん・またいへのなを・をらじとや・てぜい五十よきを・ひきわけて・さき
に・きやうへぞ・のぼりける・せうしやう・こは・いかに・さねもりが・なきところにては・いくさは・せられぬことかとぞ・のたまひ
ける・さるほどに・げんぺいたがひに・やあはせと・さだめてんげる・そのよのやはんばかりに・ふじぬまに・いくらも・むれゐ
たりける・すゐてうどもが・なににかは・おどろきたりけむ・千万・たつ・はおとの・おほかぜおほなみ・なんどの・やうに・
きこえければ・へいけのつはものども・このよしを・きいて・あはや・さねもりが・いひつる・やうに・げんじは・ようちこ
のみと・きくに・あはせて・ただいま・よせたるに・こそわれら・ぶあんないなり・これにて・とりこめられては・かP247
なふまじ・すのまた・あじかを・ふせげや・とて・われさきにとぞ・のぼりける・あまりに・あわてたるものどもは・
ゆみ一ちやうに・二三にん・たち一ふりに・一二にん・とりつき・わがよ・ひとのよと・うばひやう・なほも・あわてたる
ものどもは・つなぎむまに・のつたりければ・うてどもうてども・ただ・くひを・のみこそ・まはりけれ・なほも・あ
わてたるものどもは・さかさまむまに・のつたりければ・ぬしは・にしへと・こころざせば・むまは・ひんがしへ・
はしるも・あり・そのへんちかき・しゆくじゆくより・いうくん・いうぢよども・よびむかへ・たりければ・かかるさうだうに・
あるひは・こし・ふみぬかれ・あるひは・かしらふみわられ・をめき・さけぶ・ありさま・をかしかりしことどもなり・
おなじき廿三にちの・うのこくに・げんじ廿万き・ふじかはのはたに・うちいで・ときをどつとつくつたりけれども・へいけの・
かたには・しづまり・かへつておとも・せず・ひやうゑのすけ・おほきに・ふしぎのおもひをなし・ひとをつかはして・み
せられければ・へいけはおちて・さふらはずとまをす・あるひは・よろひわすれてさふらふ・あるひは・かぶとわすれてさふらふ・あるひは・おほまくわすれ
てさふらふ・あるひは・えびらわすれてさふらふとて・てんでに・もつてまゐる・ひやうゑのすけわうじやうのかたを・ふしをがみ・これより
ともが・ゐせいに・あらず・うぢがみ八まんだいぼださつの・おんはからひにてぞ・わたらせたまふらん・やがて・つづいて
も・せむべけれども・あとのことも・おぼつかなければ・とて・それよりかまくらへこそ・かへられけれ・へいけは・た
だにげにして・きやうへのぼる・そのへん・ちかきしゆくじゆくのものども・このよしをみて・むかしより・みにげと・いふことは・あ
れども・ききにげと・いふことは・いまだなし・せんぢやうへ・むかふ・たいしやうぐん・やひとつを・だにも・いすてず・
にげのぼる・ゆくすゑとても・たのもし・からずさよとぞ・まをしける・なかにも・かづさのかみただきよが・ふじかはによろひわすP248
れたりければ・ただきよが・ただをとつて
ふじかはによろひはすてつすみぞめの・ころもただきよのちのよのため
ふじかはのいはこすせぜのみづよりも・はやくもおつるいせへいしかな
ただきよはにげのむまにぞのりてけるかづさしりがひかけてとどめよ
へいけをひらやによみなして
ひらやなるむねもりいかにさわぐらんはしらとたのむすけをおとして
にふだうしやうごく・このよしを・ききたまひて・おほきにはらを・たて・せんずるところ・せうしやうをば・きかいがしまへ・ながすべし・かづ
さのかみには・はらをきらせんと・いかられけるを・ひとびとやうやうに・とりまをされ・たりければ・そのうへは・にふだう
も・ちからおよびたまはず・されども・ふくはらには・しんとの・ことはじめあるべしとて・さとだいり・きらぎらしう・つくりいだしたてまつ
つて・おなじき十一ぐわつ七かのひ・ごせんかうとぞ・きこえし・されども・このみやこは・きたはやまに・そうてたかく・みなみは・
うみちかくて・くだれり・つねは・なみのおと・しほかぜはげしくして・かまびすき・ところなり・だいりは・やまの・なかなれば・き
のまろどのも・かくやと・おぼえて・なかなか・いうなるところもあり・ひとびとのいへいへは・のなか・たなかなり・ければ・
あさのころもは・うたねども・とをちのさととも・いつつべし
五節の沙汰(あひ) 511 P249
ことしは・だいじやうゑあるべしとて・てんがみな・そのいとなみなり・だいじやうゑと・まをすは・十ぐわつのすゑに・しゆじやう・ひがしか
はらへ・みゆきなつて・ごけいあり・だいだいの・きたののに・ざいちやうしよを・つくつて・じんぷく・じんぐを・ととのふ・りようび
だうのだんじやうに・くわいりうでんを・たてて・みゆをめす・おなじきだんのならびに・だいじやうぐうを・つくつて・しんせんを・そなふ・
しえんあり・ぎよいうあり・せいしよだうの・みかぐらあり・されども・ふくはらには・だいごくでんなければ・たいれい・おこなはること
もなく・せいしよだうも・なければ・みかぐらをも・そうせず・ことしは・五せちしんじやうゑ・ばかり・あるべしとて・な
ほしんとの・おんまつりごとをば・きうとの・じんぎくわんにてぞ・とげられける・五せちは・これ・むかし・きよみはらの・てんわうの・
おほとものわうじに・おそれさせたまひて・やまとのくによしののおくに・すませたまひしとき・つき・しろく・さえ・あらしはげしき・よ・
みかど・きんを・しらべたまひしに・しんぢよ・たちまちに・あまくだつて・をとめごが・をとめ・さびしも・からだまや・
そのからだまや・からだまと・五へんこれを・うたうて・五たび・そでを・ひるがへす・これぞ・五せちの・
はじめなる・こんどの・みやこうつしのことをば・きみもしんも・おほきに・なげきおぼしめされける・うへ・べつして・さんもんのたいしゆ・た
びたび・そうじやうをもちて・なげきまをしけり・だい三ケどのそうじやうに・にふだう・だうりしごくしてや・おもはれけん・おなじき十二
ぐわつ十かのひ・みやこがへり・あるべしとぞ・きこえし・へいけのひとびとの・かくかへりのぼられける・うへは・まし
て・たけのひとびとの・たれか・こころうかるべき・ふくはらのしんとに・一にちも・やすらふべきに・あらずとて・
われさきにとぞ・のぼられける・ひとびとのいへいへをば・さんぬる・なつ・かもがは・かつらがはに・こぼちいれ・いかだにくみう
かべ・しざいざふぐを・ふねにつみて・ふくはらへ・はこびくだされたりげれば・ないない・とりたてられ・けれども・いまは・なに
P250
ごとの・さたにも・およばず・みな・うちすてうちすてぞ・のぼられける・おのおの・すみかも・なければ・あるひは・八
はた・かも・ひよし・さが・うづまさ・にしやま・ひがしやまの・かたほとりに・ついて・あるひは・やしろのはうぜん・あるひはみだうの・
くわいらうに・さもしかるべき・ひとはみな・たちやどつてぞ・おはしける
奈良炎上 512
こんどの・みやこうつりの・ほんいを・いかにと・まをすに・きうとは・さんもん・なんと・ちかくして・いささかのことも・あれ
ば・あるひは・なんとの・しんぼくを・ささげたてまつつて・しやうらくし・あるひは・ひよしの・しんよを・かきささげたてまつつて・つねは・
げらくするあひだ・ふくはらは・えもはるかにへだたり・みちのほども・とほければ・さやうのことに・よもたやすからじと・にふ
だう・はからひいだして・うつされけるとぞ・きこえし・こんど・たかくらのみやの・ごむほんの・どうしんによつて・なん
との・うつぷんいまだ・やまず・せつしやうどのよりは・しゆとを・めされて・なにごとにても・ぞんずるむねあらば・そうもんに・
およべかしと・おほせければ・だいしゆかしこまつてうけたまはり・ただだいじやうのにふだうにあうて・しにたうさふらふとぞ・まをしける・そののち・
なんとには・ほうしばらに・おほせて・おほきなる・ぎつちやうの・たまを・つくらせ・これは・きよもりにふだうが・くびと・
なづけて・うて・ふめ・なんどぞ・まをしける・またつちにて・八しやくのにんぎようを・つくらせ・はんにやじの・おほそとば
に・くぎづけにして・これこそ・だいじやうのにふだうを・はつつけに・あはすれなんどぞ・まをしける・このひとかたじけなくも・
かしはばらのてんわうの・みすゑ・みかどの・ごぐわいしやくにて・だいじやうだいじんまでも・たやすくへあがりたまふほどの・ひとを・かやP251
うにまをす・なんとの・だいしゆに・てんま・いれかはれりとぞ・ひとまをしける・ことの・もらし・やすきは・わざはひをまねく・
なかだちと・つつしまざるは・やぶれを・とるもとゐとも・かやうの・ことをや・まをすべき・そののちだいりには・くらんどのせうしやうちかまさ
に・おほせて・なんと・しづめよとて・くだされければ・だいしゆ・きづがはのはたに・ゆきむかひ・みやこよりの・みつかひを・
さんざんに・りようりやくし・あまさへ・くわんがくゐんの・ざふしきニにんが・もとどり・きり・みつかひちかまさが・もとどりも・きれや・
きれとののしりければ・ちかまさおほきに・いろを・うしなつて・にげのぼる・にふだうまた・せのをのたらうかねやすを・やまとの
くにの・けびゐしよに・ふして・なんとしづめよとて・くだされけるが・わざとゆみや・うちもの・こしのかたなをも・たい
すべからずと・のたまへば・うけたまはつて・かねやす五百よきにて・むかひけるが・みなしらしやうぞくなり・だいしゆまた・きづ
がはのはたに・ゆきむかひ・かねやすが・てぜい・五百よきを・さんざんに・けちらし・あまつさへ・つはもの六十よにんが・くびを・
きつて・さるさはのいけのはたにぞ・かけさせける・へいけ・かやうのことどもを・なじかは・よしと・おもはるべき・
さらばまづ・なんとをも・はつかうせよやとて・たいしやうぐんには・にふだうの四なん・くらんどのとうしげひら・さぶらひたいしやうには・ゑつ
ちうのぜんじもりとし・じらうびやうゑもりつぎ・かづさの五らうびやうゑただみつ・ゑひのじらうもりかたをさき・として・つがふそのせい・四万
よき・ぢしよう四ねん十二ぐわつ廿八にちに・なんとへこそ・はつかうせられけれ・なんとにも・ならざか・はんにやじ・ふたつ
のみちを・きりふたぎ・ざいざいしよしよに・やぐらを・かいて・まちかけたり・くわんぐんは・四万よき・むまむしやどもが・さ
しつめ・ひきつめ・さんざんに・いる・だいしゆは・七千よにん・みなうちもの・かちだちなり・ければ・そのひ・一にち・たたか
ひくらし・よにいりければ・なら・はんにやじ・二ケしよのじやうかく・やぶれにけり・はぢをもおもひ・なをも・をしむ・P252
だいしゆは・ならざかにて・うちじにし・はんにやじにて・じがいす・ぎやうぶも・かなはぬ・らうさう・あゆみも・やらぬ・しゆ
がくしやは・にはにいで・おほく・じがいしてんげり・ここに・おちゆくせいの・うちに・さかの四らうばうえいがくとて・うちものとつ
ては・七だいじ・十五だいじにも・すぐれたり・もえぎのはらまきに・くろいとをどしのよろひを・かさねて・き・ぼうしかぶとに・五
まいかぶとを・おなじく・かさねて・きるままに・かたてには・しらえの・おほなぎなたの・さやを・はづし・かたてには・
おほたちを・ぬきもち・われに・おとらぬ・でし・どうじゆく・十よにん・ぜんごさいうに・たて・てんかいの・もんよ
り・うつていで・にしに・むけてしんばし・ささへたりけるにぞ・むまのあし・ながれて・くわんぐん・おほく・ほろ
びにける・おなじき廿八にちの・よのことなりければ・くらさはくらし・かたきもみかたも・みえわかず・たいしやうぐん・
くらんどのとうしげひら・ほつけじの・とりゐのまへに・うちたつて・ひをいだせ・やと・げぢせられ・たりければ・はりまの
くにのぢうにん・ふくゐのしやうの・げいし・二らうたいふともかたが・てよりも・たてを・わつて・たいまつにし・てんかいのみなみ
なる・にしの・ざいけに・ひをぞかけたりける・ほもとは・ひとつなりけれども・ふきまよふかぜに・おほ
くのがらんに・おしかけかけたり・ぶつざう・きやうくわん・ほふもん・しやうけうの・たぐひ・一くわんものこらず・くわいろくすでに・た
に・ことにして・せいやう一てうの・けぶりを・なす・じんじやうなる・ちご・にようばうや・だうぞく・なんによの・きらひなく・あるひは
やましなでら・とうだいじへ・われ・さきに・とぞ・にげこもりける・だいぶつでんの・二かいにも・らうせう・二千にん・ばかり
にげのぼり・かたきをのぼせじと・やがてはしをば・ひかせけり・さりともと・こそ・おもひしに・みやうくわは・ま
さしく・おしかけたり・をめきさけぶありさま・けうくわん・だいけうくわん・せうねつ・だいせうねつ・むげんあびほのほのにはの・P253
ざいにんどもの・かなしびも・これには・すぎじとぞみえし・こうふくじは・これ・たんかいこうのごぐわん・とうしるいだいのてらなり・
とうこんだうに・おはします・ぶつぽうさいしよの・しやかのざう・さいこんだうに・おはします・じねんゆしゆつの・くわんぜおん・るり
を・ならべし・四めんのらう・しゆたんを・まじへし・二かいのろう・九りんたかく・かがやける・二きのたふも・たちまちに
けぶりと・なるこそ・かなしけれ・とうだいじは・これじやうざいふめつ・じつほうじやくくわうの・しやうじんのによらいと・なぞらへて・しやう
むくわうてい・てづから・みづから・ゐうつし・まゐらつさせたまへる・こんどう十六ぢやうの・るしやなぶつ・うしゆつたかく・そびえ
ては・はんてんのくもに・かくれ・びやくがうあらたに・みがかれ・たまふ・まんげつの・おんよそほひ・みぐしは・やけおちて・だいち
にあり・ごしんは・わきあひて・つかの・ごとし・八万四千のさうかうは・あきのつき・はやく五ぢうの・くもにかく
れ・四十一ちのやうらくは・よるのほし・むなしく・十あくのかぜにただよひ・けぶりは・ちうてんに・みちみちて・みやう
くわは・こくうに・ひまぞ・なき・まのあたり・みるものは・さらにまなこを・あてず・かすかに・つたへきく
ひとは・きもたましひを・うしなへり・てんぢくしんたんは・しらず・につぽんわがてうにおいては・かかる・ほふめつは・まだなし・
ぼんしやく四わう・りうじん八ぶ・みやうくわんみやうしゆも・さだめて・おどろき・さわぎ・たまふらんとぞ・おぼえたる・ほつさうおうごの・かす
がのだいみやうじんも・いかなることをか・おぼしめされけん・しんりよのほども・はかりがたし・さればにや・かすがののつゆ・
いろかはり・みかさやまの・あらしのおとまでも・みなうらむる・さまにぞきこえける・おなじき廿九にちに・たいしやうぐん・くらんどの
とうしげひら・なんとほろぼして・ほつきやうへこそ・かへられけれ・こんどちやうぼんの・あくそうどものくびをば・ごくもんに・かけらるべ
し・なんど・ごさたありしかども・なんとほろぼして・めんぼくなくや・おもはれけん・こくさうゐんの・みなみなる・ほりやP254
みぞにぞ・すてられける・こんどせんぢやうにて・うたるるだいしゆ・かずをしらず・やけしぬるもの・四千にん・あるひは・やましな
でらにて・六百よにん・あるひは・みだうにて三百よにん・またあるみだうにて・五百よにん・だいぶつでんのニかいにも・一千
七百よにんとかや・いじやう・四千よにんとぞ・しるされける・こんど・なんとほろぼして・へいけばかりいきどほり・はれて・
おもはれけん・一ゐん・しんゐん・せつしやうどののおんなげき・まをすばかりも・なかりけり・たとへ・あくそうどもをこそ・ほろぼすと
いふとも・がらんを・はめつすべしやはとぞ・おんなげきありける・されば・しやうむくわうていの・しんぴつの・ごきしやうもんにも・
わがてら・すゐびせば・てんがも・かならず・すゐびすべし・わがてら・こうふくせば・てんがもかならず・こうふくすべしとこそ・
あそばされけんなれ・いまこれほどに・ちりはひと・なりぬるうへは・てんがのめつばう・うたがひなし・さるほどに・としくれて・
ぢしようも五ねんに・なりにけり
P255
平家物語(城方本・八坂系)
巻第六 P255
新院の崩御 601
ぢしよう五ねん・しやうぐわつついたちのひ・だいりには・とうごくのへいかく・なんとのくわさいによつて・はいらいなし・こでうはいも・おこな
はれず・二かのひ・でんじやうのゑんすゐもなし・しんゐんのごしよには・ごなうと・きこえさせたまひしかば・なんによ・うちひ
そめて・きんちうのありさま・いまいましきほどなり・ほうわうも・ないないおほせけるは・四だいのていわう・おもへばこなり・まご
なり・しかるに・せいむをも・しろしめさずして・としつきを・おくらむ・こころうしとぞおほせける・なんとのそうがう・三
十四にんを・げくわんせらる・あくそうどもをば・きんごくせらる・しうとは・せんぢやうにて・うたれ・あるひは・やきころされ・あるひは・
ながし・うしなはれしかば・たまたまのこるものどもも・いへかまどをすてて・みなさんりんにこそ・まじりけれ・なかに
も・こうふくじのべつたう・けりんゐんのそうじやう・やうゑんは・ほうもんしやうけうの・けぶりとなるを・みたまひし・ひよりして・やまひ
つきほどなう・うせたまひぬ・このやうゑんは・やさしきひとにてぞ・ましましける・あるとき・ほととぎすのなくをききたまひて
きくたびにめづらしければほととぎす・いつもはつねのここちこそすれ W
と・よまれたりけるに・よつてこそ・はつねのそうじやうとは・めされけれ・おなじき四かのひ・そうみやうのさた・あり
P256
しかども・なんとは・げくわんせられぬ・さらば・てんだいしうの・しゆとばかりを・めさるべきか・さらずは・ごえん
いんあるべきか・なんどごさたありしかども・ことしは・ごさいゑばかり・あるべしとて・さんろうしうのがくしやうの・なか
に・じやうほうわうかうとて・くわんじゆじに・さふらはれける・らうそうばかりを・めされてぞ・かたのごとくの・ごさいゑをば・とげ
られけり・そのほどに・しんゐんのごしよは・こぞのふゆより・ごなうと・きこえさせたまひしが・とうごくのへいかく・なんとの
くわさいに・よつて・なほおもらせたまひしが・おなじきむつき十二にちに・おんとし二十一にて・つひに・かくれさせたま
ひけり・やがてそのよ・ひがしやませいかんじへ・おくりたてまつり・ゆふべのけぶりに・たぐへつつ・はるのかすみとともにたちぞ・
きえさせたまひける・八さいよりおんくらゐに・つかせたまひ・ぎよう・十二ねん・とくせい・千まんたん・ししよじんぎの・すたれだ
るみちをおこし・りせいあんらくの・たえたる・あとをつぎたまふ・じひのおんめぐみは・いつてんをてらし・びやうどうの・い
つくしみは・四かいのほかに・ながれたり・三みやう六つうのらかんも・まぬかれず・げんじゆつへんげのごんじやも・のがるる
かたなき・みちなれども・しやうしむじやうの・かなしみは・ことわりすぎてぞ・おぼえたる
紅葉 602
そもそも・たかくらのゐんと・まをしたてまつるは・ひとのしたがひつきたてまつることも・おそらくは・えんぎてんりやくのみかどとまをすとも・これには・
いかでか・まさらせたまふべきとぞ・ひとまをしける・おほかたは・けんわうのなをあげ・じんとくのかうをほどこさせ・おは
しますことも・きみごせいじんののちは・せいぢよくを・わかたせたまひて・そのうへのことにてこそあるに・むげにこのきみは・えう
P257
ちに・わたらせたまひしより・このかた・せいをにうわにうけさせおはします・しようあんのころほひは・ございゐの・はじめ
つかたにて・おんとしわづかに・十さいばかりにもや・ならせおはしましけん・もみぢをことに・えいらんあるに・あるとき・
はじ・かへでの・まことに・いろうつくしう・もみぢたりけるが・まゐりたりけるを・しゆじやう・なのめならず・ぎよかんあ
つて・きたのぢんに・こやまをつかせ・これをうゑさせ・もみぢのやまと・なづけて・ひねもすに・えいらんあるに・なほあ
きたらせ・おはしまさず・しかる・を・あるよ・あらしはげしうふきて・もみぢをみな・ふきちらし・らくえふ・すこぶる・
らうぜき・なり・とのもりの・とものみやつこ・あさぎよめすとて・ことごとくこれを・とりすててんげり・のこれ
るえだ・ちれるこのはを・かきあつめて・あらしすさまじき・あしたなれば・ぬひどののぢんにて・さけあたためて・たべ
ける・たきぎにこそは・したりけれ・だいぜんのだいぶのぶなりが・いまだそのころ・くらうどにて・もみぢのぶぎやう・うけたまはつて・
さふらひけるが・みゆきより・さきにと・かしこへゆきて・みけるに・一もなし・いかにと・とひければ・し
かじかとこたふ・のぶなりおほきに・いろをうしなつて・しらず・なんぢら・いかなる・きんごく・るざいにも・あうた
り・のぶなりもまた・いかなるげきりんにかあづからむ・ずらむと・おほきに・おそれ・をののくところに・しゆじやうは・い
とどしく・よるのおとどを・おんいであつて・おんあさまつりごとより・さきにと・かしこへぎやうかうなつて・えい
らんあらんと・するに・あとかたなし・しゆじやう・さて・いかにやと・おんたづねありければ・のぶなり・そうすべきやう
はなし・ありのままにぞ・まをしける・しゆじやうてんきことに・おんこころよげに・うちゑませたまひて・りんかんに・さけあたためて・
こうえふを・たくといふ・しのこころをば・これらには・たがをしへけるぞや・やさしうも・つかまつつたる・ものか
P258
なとて・かへりて・えいかんに・あづかつしうへは・あへて・ちよくかんは・なかりけり・またあんげん二ねんの・ふゆのすゑに・しゆ
じやうあるところへ・おんかたたがへのぎやうかうの・なりたりけるに・さらでだに・けいじん・あかつき・となふこゑ・めいわうねふりを・おどろかす・こ
ろにもなりしかば・しゆじやうは・いつも・おんねざめがちにて・うちとけ・ぎよしんも・ならざりけり・いはんやさゆるしもよ
の・てんきことに・はげしきときは・むかし・えんぎの・せいだい・こくどのたみどもが・いかにさむかりつらんとて・よる
の・おとどより・ぎよいをぬがせたまひて・おしいださせたまひし・おんことまでも・おぼしめしいでて・わがていとくの・い
たらぬことをのみ・なげかせおはします・そののち・はるかに・よふけ・ひとしづまつて・ほどとほく・をんなの・さ
けぶおとの・しければ・ぐぶのくぎやう・でんじやうびとは・ききもいだされざりけるを・しゆじやうは・きこしめしいだして・ただいま・さ
けぶは・なにものぞ・きつとみてまゐれと・おほせければ・うへふししたる・でんじやうびと・じやうじつのものに・おほせくださる・
じやうじつのもの・うけたまはつて・はしりめぐつて・みけるに・あるつじに・あやしの・めのわらはの・ながもちの・ふたさ
げたるが・なくにてぞ・ありける・じやうじつのもの・たちよりて・いかにと・とひければ・ささふらへばこそ・しう
のにようばうの・やうやうにして・したてられて・さふらひつる・おしやうぞくを・ごしよへもちて・まゐりさふらふを・
ただいま・おそろしげなる・をとこ・二・三にんがほど・いできたつて・うばひとつて・まかりぬるぞや・いまは・おしやうぞく
が・さふらはばこそ・ごしよにもわたらせ・たまはめ・またはかばかしう・たちよらせたまふべきを・したしき・
ひともましまさねば・これをおもふに・なくなりとぞ・まをしける・じやうじつのもの・かのめのわらはを・ぐそくして・ごしよ
にかへりまゐり・このよしをそうし・まをしたりければ・しゆじやう・あなむざん・なにものの・しわざにてか・ありつら
P259
む・むかしの・げうの・よのたみは・げうのこころをもつて・こころとするゆゑに・みな・すなほなりき・いまのちんがよの・たみ
は・ちんがこころをもつて・こころとするゆゑに・かだましきもの・てうに・あつて・つみををかす・これわが・はぢにあ
らずやとぞ・おほせける・さてその・とられつる・きぬは・なにいろぞと・おほせければ・しかじかとまをす・ちうぐう
のおんかたに・さやうのいろしたる・おんきぬやさふらふと・おほせつかはされたりければ・はるかにいろうつくしきが・まゐ
りたりけるを・しゆじやう・かのめのわらはに・くだし・たまはすとて・なほも・よふかし・さやうの・めにも
や・あふとて・じやうじつのもの・あまたつけさせ・おはしまして・しうのにようばうの・つぼねまで・おくらせたまふぞ・かたじけな
き・されば・あやしの・しづのを・しづのめに・いたるまで・ただこのきみ・せんしうばんぜいの・はうさんを・いのりたてまつる
葵の前(あひ) 603
なによりもそのころ・いうに・やさしき・ためしに・まをしはべりしは・ちうぐうのおんかたに・さふらはれける・つぼねの
にようばうたちの・めしつかはれける・うへわらはのなかに・あふひのまひとて・りようがんに・しせきしたてまつる・ことあり・ただあからさまの・
ことにてもなうて・しゆじやう・つねは・めされければ・しうのにようばうも・めしつかはず・かへつて・しうのごとくに
ぞ・もてなしける・そのかみの・えうえいに・いかで・ぢよをうんでも・ひたんすることなかれ・ぢようは・ひたり・
ひはきさきとも・なれり・しらずこのひと・にようごきさきともや・いはれ・たまはんずらんとて・ないないは・あふひにようごな
んどぞ・ささやきまをしける・しゆじやうこのよしを・つたへきこしめされて・そののちはあへて・めされざりけり・これはまつ
P260
たう・おんこころざしの・つきさせ・たまへるにはあらず・ただよの・そしりを・おぼしめしはばからせたまふに・よりて・な
り・されども・おんこころざしのつきさせ・たまはざりしかば・くごをも・つやつや・きこしめされず・ぎよしんも・うちとけ
ならず・そのときの・せつろくまつどの・このよしを・つたへききたまひて・さては・さやうに・おこころぐるしきおんことの・わたらせたま
ふにこそ・まゐつて・なぐさめたてまつらむとて・いそぎごさんだいあつて・さやうに・えいりよに・かけて・おぼしめさ
れむずる・おんことを・おんはばかりあつて・なんのせんかさふらふべき・ただ・くだんのじんを・めさるべし・ぞくしやう・あひたづねら
るるにおよばず・やがてもとふさが・やうやうにつかまつるべきよしを・まをさせたまひたりければ・しゆじやう・おほせなりけ
るは・くらゐを・しりぞいてのちは・まま・さるためしありとは・しろしめせども・まさしう・ざいゐのとき・か
やうのもの・めされたる・ためしなし・わがよに・はじめたらむは・こうだいのそしり・なるべしとて・つひにきこしめし
も・いれさせたまはず・このうへは・くわんぱくどのも・ちからおよばせたまはず・いそぎおんくるまにめして・ごたいしゆつあり・あるときしゆじやう
おんてならひのついでに・みどんのうすやうの・にほひことに・ふかかりけるに・ふるきうたなりけれども・かかるをりふしを・おぼし
めしいでて
しのぶれどいろにいでにけりわがこひは・ものやおもふとひとのとふまで・ W
おんこころしりの・でんじやうびと・たまはりついて・あふひのまひに・たぶ・あふひのまひ・たまはつて・れいならぬ・ここ
ちいできたりとて・さとにかへり・しやうじのうちに・たふれふし・このぎよしよを・むねにあて・かほにあて・かなし
みけるが・十四かとまをすに・つひに・はかなく・なりにけり・しゆじやう・このよしを・つたへきこしめされて・なのめなら
P261
ず・おんなげきに・しづませおはします・きみが・一じつのおんのために・せふが・百ねんのみを・あやまつとも・かやうのことを
や・まをすべき・かのたうのたいそうの・ていじんきが・むすめを・げんくわでんに・いれしめんと・せしとき・ぎちようがいはく・てい
ぢよすでに・りくしにやくせりと・いさめしによつて・でんへいれられんと・せしことを・やめられ・たりしにも・まさ
らせたまふ・おんこころばせかなとぞ・ひとまをしける・きみは・あふひのまひが・ことに・おぼしめししづませたまひて・ごなう
と・きこえさせたまひしかば・ちうぐうのおんかたより・ごかいしやくの・にようばうたち・あまた・まゐらせられけり
小督 604
そのころ・さくらまちのちうなごん・しげのりのきやうの・おんむすめ・こがうのとのと・まをして・きんちういちの・びじんならびなき・ことのじやうず・
おはしけり・れいぜいのだいなごんたかふさのきやうの・いまだそのころ・せうしやうにて・せちゑに・まゐられたりけるが・このにようばう
を・ひとめみそめ・たてまつつて・おもひにこころを・そめ・うたをよみ・ふみをつくし・としつき・こひかなしまれけれども・な
びくけしきも・なかりしに・さすが・なさけによわるこころにや・つひには・なびきたまひけり・せうしやう・ちようあいして・
わりなく・おもはれけれども・ほどなう・うちへめされまゐらせて・あかぬ・わかれのなみだにや・そでしほぬれて・ほしあ
へず・せうしやう・よそながらも・みたてまつることもや・とて・つねは・そのこととなく・さんだいせられけり・こがうのとのの・
すみたまひける・つぼねのまへを・かなた・こなたへ・とほり・みすのそとに・たたずみ・ありかれけれども・つて
のなさけをだにも・かけられず・せうしやう・なさけなく・おもひたまひて・あるとき・一しゆのうたをかきて・みすのうちへぞ・
P262
いれられける
おもひかねこころはそらにみちのくの・ちかのしほがまちかきかひなし・ W
こがうのとの・やがて・へんじをも・せばやとは・おもはれけれども・われかやうに・きみに・めしおかれ・まゐら
せぬる・うへは・せうしやう・いかにいふとも・ことばをかはし・へんじを・すべきにあらずとて・ふみをば・うへわらはに
とらせて・みすのそとへぞ・なげいだされける・せうしやうなさけなくも・うらめしうは・おもはれけれども・さすが・ひと
めも・そらおそろしくて・このふみを・ふところにひきいれつつ・あゆみいでられけるが・さるにてもとて・またたちかへり
たまづさをいまはてにだにとらじとや・さこそこころにおもひすつとも・ W
いまは・こんじやうにてあひみんことも・かたければ・いきてゐて・ひとをこひしと・おもはんより・ただしなんとの
みぞ・のたまひける・あうて・あはざる・こひもあり・あはで・おもひ・ふかき・うらみもあり・あはで・おもふ・こひ
よりも・あうてあはざる・うらみこそ・せんかたなくは・おもはれけれ・このれいぜいのせうしやうと・まをすも・にふだうしやうごくの
むこなり・またちうぐう・だいりに・わたらせたまへば・ふたりのむこを・こがうのとのに・とられて・にふだういやいや・この
こがうが・あらむかぎりは・よのなかよかるまじ・されば・このこがうを・とらへて・なにとも・なさばやとぞ・のたま
ひける・こがうどの・このよしを・つたへききたまひて・わがみの・ともかうも・ならんは・いかにもなりなん・きみ
のおんことこそ・おんこころぐるしけれとて・あるくれがたに・だいりをば・しのびつつ・まぎれいで・ゆきがたしらずぞ・
うせられける・きみは・こがうがことに・おぼしめししづませたまひて・ぐごなんども・きこしめさず・ぎよしんも・うちとけなら
P263
ず・にふだうしやうごく・このよしを・つたへききたまひて・きみは・こがうがことに・おぼしめししづませ・たまひたんなれ・さらむに
とつては・とて・ごかいしやくの・にようばうたち・一にんも・まゐらせられず・さんだいせられける・しんかたちをも・そね
まれければ・にふだうの・けんゐに・はばかりて・さんだいするひとなし・きんちうのありさま・いたいたしきほどなり・きみは・
こがうがことに・おぼしめししづませ・たまひて・ひるは・よるの・おとどにのみ・いらせたまひ・よるは・なんでんに・しゆつぎよ
なつて・つきのひかりに・おんこころをすまさせ・おはします・ころははづきの十かあまりの・ことなれば・さしも・くま
なき・そらなれども・おんなみだに・くもりて・つきのひかりぞ・おぼろなる・しゆじやう・ひとやさふらふひとやさふらふと・おほせけれども・おんいらへ
まをすものも・なかりけるに・ややあつて・だんじやうのたいひつ・なかくにそのよしも・ごぜんちかう・おんとのゐまをして・さふらひけ
るが・なかくにと・おいらへまをして・まゐりたり・いかになかくにちかう・まゐれ・おほせあはすべき・ことありと・おほせければ・
なかくにごぜん・ちかうぞ・まゐりたる・おもひもかけぬ・ことなれども・もし・こがうが・ゆくへや・しりたるかと・
おほせければ・いかでか・たやすく・しりまゐらせ・さふらふべき・しゆじやう・まことや・さがのおく・かたをりどと・や
らんしたるうちに・ありとまをす・もののあるぞとよ・あるじが・なをば・しらずとも・たづねて・まゐらせなんや
とぞ・おほせける・なかくにまをしけるは・あるじがなを・しりさふらはでは・いかで・たやすく・たづねまゐらせさふらふべき・
しゆじやう・まことにもとて・りようがんに・おんなみだせきあへさせたまはず・なかくにこのおほせ・うけたまはるかたじけなさに・つくづく
ものを・あんずるに・まことや・そのひとの・だいりにて・ことひきたまひしとき・つねは・ふえのやくに・めされてまゐりしもの
を・たとひいづくにも・おはせよ・このつきのくまなさに・きみのおんこと・おぼしめしいだして・ことひきたまはぬ・ことあらじ・
P264
さがのざいけ・いくほどなし・うちまはつて・たづねたてまつらんに・そのひとの・ことのねならば・いづくにても・きき
しらんずるものをと・おもひければ・ささふらはば・たづねまゐらせて・みまゐらせさふらはばや・たとひたづねあひまゐらせて・
さふらふとも・ごしよを・たまはりさふらはでは・うはのそらにてもや・さふらはんずらんと・まをしたりければ・しゆじやう・まことに
もとて・やがて・ごしよあそばしてぞ・たうだりける・れうのおんむまにのつて・ゆけとぞ・おほせける・なかくに・
おんむまたまはつて・めいげつにむちをあげて・そこはかとなく・あこがれゆく・をしかなく・このやまさとと・えいじけ
む・さがのあたりの・あきのくれ・さこそは・あはれにおもひけめ・かたをりどしたるところを・みつけては・もしこれにも
や・おはすらんとて・ひかへひかへ・ききけれども・ことひくおとは・せざりけり・このつきのくまなさに・つきのひかり
に・さそはれて・もしみだうなんどへもや・まゐりたまひたるらんとて・しやかだうをはじめとし・だうだうを・まはつ
て・たづねまゐらせけれども・こがうのとのに・にたるひとだにも・なかりけり・だいりをば・さしも・たのもしげに・
まをしていでぬ・たづぬるひとには・いまだあはず・むなしう・かへりまゐりたらんは・なかなかあしかりなん・これより・いづ
かたへも・おちゆかばやとは・おもへども・いづくか・わうどならぬ・みをかくすべき・やどもなし・ほうりんは・
ほどちかければ・ほうりんの・かたへと・ゆくほどに・かめやまのあたりちかく・まつのひとむらあるかたに・かすかに・こと
ぞ・きこえける・みねのあらしか・まつかぜか・たづぬるひとの・ことのねか・おぼつかなくは・おもへども・こまをはやめて・う
つほどに・かたをりど・したるうちに・ことをぞ・ひきすましける・すこしも・まがふべからず・こがうのとのの・つま
おとなり・がくは・なにぞとききければ・をとこおもうて・こふとよむ・さうふれんをぞ・ひかれける・がくしもこそ・お
P265
ほきに・ただいま・このがくを・ひきたまふことよ・なかくにいとほしや・このひとも・いまだきみの・おんことをば・おぼしめし・
わすれざりけりと・うれしくて・やうでう・すこしねとり・むまより・とんでおり・かどをほとほとと・たたきけ
れば・ことをば・はやひき・やみたまひぬ・これは・だいりより・なかくにと・まをすものが・おんつかひに・まゐつてさふらふ・あけら
れさふらへあけられさふらへとて・たたけどもたたけども・とがむる・おともせざりけり・ややあつて・うちより・ひとのきたるおとの・し
ければ・うれしくて・まつところに・ぢやうをはづし・かどをあけ・いたいけしたる・こにようばうの・かほばかりを・さし
いだして・これは・だいりなんどより・おんつかひ・たまはりぬべき・ところにてもさふらはず・いかさまにも・かどたがへにて
もや・さふらふらんと・まをしければ・なかくに・へんじせば・かどたてられ・ぢやうさされては・あしかり・なんと
や・おもひけん・やがて・おしあけてぞ・いりにける・こがうのとのの・すみたまひける・つまどのあひの・えんに・
よりゐて・まをしけるは・いかで・かかる・おんすまひにて・わたらせたまひ・さふらふぞや・きみは・おんことゆゑに・おぼしめし
しづませ・たまひて・ぐこなんども・きこしめされず・ぎよしんも・うちとけならず・ただうはのそらと・おぼしめされ
てさふらふが・ごしよを・たまはつて・まゐりてさふらふ・ものをとて・ありつる・にようばうして・きみのごしよを・たてまつる・ひらい
て・みたまへば・まことに・きみの・ごしよなり・やがてごへんじ・あそばして・ひきむすびつつ・にようばうのしやうぞく・一かさね
そへて・おしいだされ・たり・なかくに・にようばうの・しやうぞく・かたにうちかけて・まをしけるは・よのおんつかひ・にてもさふらはば・
ごしよの・ごへんじのうへは・しさいさふらふまじ・けれども・きみのだいりにて・おことひかせ・たまひしとき・つねは・ふえ
のやくに・めされて・まゐりさふらひし・そのごほうこうをば・いつしか・おぼしめし・わすれさせたまひて・さふらふやらん・ぢきの・
P266
ごへんじ・うけたまはらざらむは・くちをしう・さふらひなんずと・まをしければ・こがうのとの・あるべしとや・おもはれけん・み
づから・へんじしたまひけり・そこにも・さだめて・しられたるらんやうに・だいじやうのにふだうどのの・あまりに・おそ
ろしき・ことをのみ・のたまふと・ききしが・あさましさに・あるくれがたに・だいりをば・しのびつつ・まぎれいで・
かかるすまひにて・ありつれば・ことなんど・ひくことも・なかりつるに・あすのころより・をはらのへんに・お
もひたつことの・さふらふあひだ・あるじの・にようばうが・こよひばかりの・なごりを・をしみつつ・よもはや・ふけぬ・
いまは・たちぎくものも・あらじなんど・やうやうに・こしらへ・おくほどに・さぞな・むかしのことも・
ゆかしくて・てなれし・ことをひくほどに・やすくも・ききいだされけるよ・とておんなみだに・むせびたまへば・なかくにも・そで
をぞ・ぬらしける・なかくにまをしけるは・あすのころより・をはらのへんに・おぼしめしたつおんことと・さふらふは・いかさまにも・
おんさまなんど・かへらるべきにて・さふらふやらん・あるべうも・さふらはず・あるじの・にようばう・いだしたてまつるべから
ずとて・めしぐしたりける・めぶ・きちじやうなんど・まをす・をとこを・とどめおき・わがみは・だいりへ・かへりまゐり
ければ・よははや・ほのぼのとぞ・あけにける・れうのおんむま・つながせつつ・にようばうのしやうぞく・はねむまのしやうじ
に・なげかけ・いまははや・ぎよしんも・はるかに・なりぬらん・たれしてか・まをすべき・なんどおもひ・なんでんの
かたへと・ゆくほどに・いざよひのつきは・はやなんていを・わたつて・にしのちうもんへ・さしいれども・きみは・よるの・
おとどへも・いらせたまはず・なかくにを・おんまちがほにて・ゆふべの・おんざにぞ・ましましける・みなみに・かけり・
きたに・むかふ・かんうんの・あきのかりに・つけがたし・ひがしにいで・にしにながる・ただせんばうを・あかつきのつき
P267
に・よすと・たからかに・えいぜさせたまふところに・なかくに・つつとまゐり・こがうのとのの・ごへんじをたてまつる・しゆじやう・
なのめならず・ぎよかんあつて・おほせあはすべきものも・なきに・さらばやがて・なんぢむかへかしと・おほせければ・なかくに・へい
けの・かへりききたまはんところをも・はばかりおもひけれども・これもまた・ちよくぢやうなりければ・てぐるま・きよげに・さたし・
さがに・まゐり・このよしまをしたりければ・こがうのとの・しきりに・まゐるまじきよしを・まをされけるを・やうやうに
して・こしらへ・むかへとりたてまつり・かすかなるところに・しのばせまゐらせて・しゆじやうよなよな・めされける
ほどに・ひめみや・ひとところ・いできさせたまひけり・このひめみやとまをすは・ばうもんのにようゐんの・おんことなり
九州の早馬(あひ) 605
一ゐんは・うちつづき・おんなげき・あさからず・まづえうまんぐわんねん・七ぐわつには・だい一のみこ・二でうゐん・かくれさせたまひ
ぬ・またあんげんぐわんねん・七ぐわつには・おんまご・六でうゐん・ほうぎよなりぬ・ひよくのとり・れんりのえだと・ほしをさし・さしも・
おんちぎりあさからざりし・けんしゆんもんゐんは・ゆふべのきりに・をかされ・あしたのつゆと・きえぞうせさせたまひける・またげんせ・ご
しやう・たのみまゐらつさせ・たまひたりける・このたかくらゐんに・さへおくれまゐらつさせたまひしかば・一じようめうてん
の・おんどくじゆ・三みつごまの・ごくんじゆも・つもらせたまひけり・にふだうしやうごくも・このひごろ・こころのままに・ふるまは
れけることを・さすがそらおそろしうや・おもはれけん・あきいつくしまの・ないしがはらの・おんむすめ・ことし十六に・
なられけるを・ほうわうへまゐらせられけり・ひとびとをも・えらまれ・にようばうたちをも・あまたつけまをされけり・
P268
ひとへに・じゆだいのぎしきにたがはず・しんゐんかくれさせたまひて・いまだ七ケにちだにも・すぎざるに・ひといつし
か・つねめかしとぞ・まをしける・そのころ・しなののくに・きそとまをすやまなかに・よしなかと・いふげんじありとぞ・きこえ
し・これは・こ六でうの・はんぐわん・ためよしが・じなんこたちはきのせんじやうよしかたが・こなりけり・ちちのよしかたは・さんぬる・きう
じゆ二ねん・九ぐわつ廿三にちに・むさしのくに・おほくらがやかたにして・あくげんたよしひらにくんで・うたれぬ・そのときよしなか・わづかに・二
さいに・なりけるを・ははいだきて・しなのにこえ・きそのごんのちう三かねとほにあひて・このこそだてて・ひとになして・
みせたまへと・いひければ・かねとほ・かひがひしくも・たのまれて・この廿よねんがあひだ・やういくしたりけるに・おひ
たつままに・みぢからだいにして・ちから・ひとにすぐれたり・はかりごとを・めぐらすことも・たむら・としひと
にもこえ・まさかどすみともにも・なほすぎたらむ・さればいかにしてへいけを・ほろぼし・よをうちとらばやなむとぞ・
まをしける・やうふのかねとほ・このよしをききて・まことにさやうに・のたまふこそ・八まんどのの・おんすゑとも・おぼゆれと・ほめ
られて・いよいよこころたけくなる・まづ・しなののくにには・ねのゐの・やた(イ大弥太)・しげののゆきちかを・さきとして・
こくちうのものども・きそにつく・かうつけのくにには・なはのたらうひろずみを・さきとして・たこのこほりのものども・こたちはきの
せんじやう・よしかたが・よしみによつて・きそにつく・きそとまをすは・しなののくにに・とつても・みなみのはし・みののくに
に・さかうたり・それより・みやこも・ほどちかかりければ・へいけのひとびと・こはいかがせんとぞ・さわがれける・
にふだうしやうごく・このよしをつたへききたまひて・しなの・一こくは・しやうごくなれば・したがふとも・じよのものどもは・なにとかおも
ふべき・なかにも・ゑちごのくにのぢうにん・じやうのたらうすけながは・よ五しやうぐんのばつえふ・たせいのものにて・あんなれば・かれ
P269
らにうちて・まゐらせよと・おほせくだされたらんに・などか・うちてまゐらせ・ざるべきと・よにも・こともなげにぞ・
のたまひける・おなじき・きさらぎついたちのひ・じやうのたらうに・ゑちごをたぶ・おなじき三かのひ・じやうのたらう・ゑちごのかみに・にん
ぜらる・おなじき七かのひ・おとどのいへいへにおほせて・そんしようだらに・ならびに・ふどうみやうわうの・じくのじゆ・かきくやうせさ
せたてまつらる・なにとしたらば・はかばかしき・ことのあらんずる・やうに・ともすれば・ひとぐるしき・ことの
みあつてとぞ・じやうげささやき・あへりける・おなじき八かのひ・かはちのくにのぢうにん・むさしのごんのかみよしもとにふだう・
しそくいしかはのはんぐわんだい・よしかね・五百よきにて・むほんおこすときこえしかば・おなじき九かのひ・せのをのたらうかねやす・
一せんよきにて・かはちのくににはせくだり・ながののじやうに・おしよせて・さんざんにせめければ・よしもとにふだう・うたれにけり・しそく
いしかはの・はんぐわんだいは・いたでおひて・いけどりにこそ・せられけれ・おなじき十一にちに・よしもとにふだうがかうべ・おほぢをわたさ
る・りやうあんに・ぞくしゆ・おほぢを・わたさるることは・ほりかはのてんわうのおんとき・つしまのかみ・みなもとのよしちかがかうべ・おほぢをわたさ
れたりし・こんどそのれいとぞ・きこえし・そもそもよしもとにふだうとまをすは・八まんどのに五なん・むつの五らうびやうゑ・よしときのあそんの
こなり・けり・おなじき十二にちに・うさのだいぐうじきんみつ・はやむまをたてて・へいけへまをしけるは・うすきのじらう・これたか・
をがたの三らうこれよし・ざいざいしよしよに・じやうくわくをかまへて・だざいふのげちにも・したがはずとぞまをしける・いよのくにには・かは
のの四らうみちのぶ・五百よきにて・むほんおこすとも・きこえけり・きのくにには・ゆあさの七らうびやうゑむねみつ・くまの
のべつたうたんそう・これもへいけをそむきて・げんじにどうしんすともきこえけり・とうごく・ほつこく・はちのごとくに・おこりあひ・
P270
なんかい・さいかい・かくのごとし・四いすでにみだれぬ・よはたんだいま・うせなむず・こはいかがせんとぞ・さわが
れける
入道の死去 606
おなじきはつかのひ・へいけの一もん・六はらに・はせあつまつて・そもそもこんどの・いくさのやうは・いかがあるべきと・
ひやうぢやうあり・なかにも・さきのうたいしやうむねもりのきやうの・すすみいでて・まをされけるは・どどとうごくへ・うつてをばつかは
してさふらへども・はかばかしう・しいだしたることもさふらはず・こんどは・むねもりまかりむかふべきよしを・まをさ
れたりければ・ひとびとしきだいして・ゆゆしうさふらひなんず・さたにもさふらはば・とうごくに・おいて・そむきたてまつるべ
きひと・一にんもさふらふまじと・まをしあはれければ・にふだうなのめならず・よろこびたまひて・ぶくわんにそなはり・きうせんに・たづさ
はりぬべき・ひとはみな・むねもりを・たいしやうとして・とうごくへ・はつかうすべしとぞ・のたまひける・おなじき廿六にちに・かど
いでして・あかつきすでにうつたたんと・したまひける・そのよの・やはんばかりより・にふだうにはかに・おんやまひつきたま
ひしかば・へいけは・かどいでばかりにて・とうごくげかうは・やみにけり・おなじき廿七にちに・にふだうおんやまひつきたまひぬ
と・きこえしかば・きやうぢうのじやうげ・あはや・さみつる・ことよことよとぞ・まをしける・にふだう・おんやまひつきたまひしひ
よりして・ゆみづをだにも・のみいりたまはず・みのうちのあつきことは・ただひをたくに・おなじ・あまりに・あ
つうたへがたければ・あたり・四五けんは・まゐりちかづくものもなく・たまたままゐりたるものどもも・あわて・
P271
さわぎて・はしりいで・ただのたまふこととては・あつやあつやと・ばかりなり・きんぎんのたぐひ・りようらきんしう・ぎうば六
ちくの・たからををしまず・れいぶつれいしやへ・なげうたれけれども・ぶつりきも・しんりきも・つきはてて・いのる・い
のりも・かなはず・ただのたまふこととては・あつやあつやとばかりなり・にふだうしやうごくの・ふしたまひけるうへを・おほ
しかの・五六・十四五・廿ばかり・かなたへは・こゆる・こなたへは・こゆると・ぬればゆめ・さむれば・う
つつにぞ・みたまひける・これひとへに・かすがの・だいみやうじんの・たち・かけらせたまふに・こそと・おそろし
かりし・おんことなり・おなじき・うるふきさらぎついたちのひ・へいけのなんによ・ひとつところに・さしつどひ・かなしみたまへど・か
ひぞなき・なかにも・にふだうのきたのかた・二ゐどのは・あまりに・あつうたへがたけれども・おんまくらちかう・たちよつ
て・いまははやごしよらう・たのみすくなう・みえさせたまひて・さふらふに・なにごとにても・おぼしめしおく・おんこと
さふらはば・のたまひおかれ・さふらへかしと・なみだもせきあへず・のたまひければ・にふだう・よにも・くるしげ
にて・いきを・ついて・のたまひけるは・へいけよをとつて・廿一ねん・たのしみさかえは・むかしも・いまも・ためし
すくなかりし・ことどもなり・されども・しやうをうくるものの・しをのがるることなし・にふだう一にんに・かぎらねば・いま
さら・おどろくべきにもあらず・ただしかまくらの・ひやうゑのすけが・かうべをみざりつる・ことこそ・よみぢの・さはりとも・なり
ぬべう・おぼゆれ・にふだういかにも・なりたらんのち・あひかまへて・きやうをも・かき・ぶつたふをも・くやうすべか
らず・にふだうを・にふだうと・おもひあはれんずるひとびとは・むねもりを・たいしやうとして・とうごくにはつかうし・ひやうゑのすけが・
かしらをきつて・つかのまへに・かけさせよ・それぞ・なににもすぐれたる・こんじやうごしやうの・けうやうとも・おもふべきと・
P272
のたまひけるにぞ・きくひと・つみふかげには・おもはれける・あるよ・また二ゐどののおんゆめに・うしのおもてしたるもの
や・むまのおもてしたるものや・やしやきじんらが・四五百・千にんばかり・ひきつれて・八えふのくるまの・みやうくわ・お
びただしう・もえたるに・くろがねのふだに・むといふもじを・かきて・たて・にふだうしやうごくの・しゆくしよ・にし八でうの・つぼ
のうちへ・からと・やりいれたり・二ゐどの・あれは・いかにと・のたまへば・これは・えんまだいわうより・へいけ・
だいじやうのにふだうどのの・おんむかへに・やしやきじんらが・まゐりてさふらふと・まをしたりければ・二ゐどのゆめごころに・おそろしうは・
おもはれけれども・さてあのふだは・いかにととひたまへば・これは・だいがらん・ほろぼしたまへる・とがによつて・八万ごふま
で・しづみたまふべき・むげんの・むなり・げんのじは・いまだ・あらはれずと・まをすと・おぼして・ゆめさめてのち・
二ゐどの・むなぐるしう・五たいより・あせながれ・しばしは・ものをも・のたまはず・そののち・ねつびやう・いよいよ
しきりに・せめければ・せんずゐより・みづをくだし・いしのふねにいれ・四はうより・ひをかけたれども・みづほ
どなく・ゆのごとくに・なりにけり・ひさげに・みづをいれ・むねのあひだに・おかれけれども・いささかくつろぐ・ここち
も・したまはず・いたじきに・みづをかけ・そのうへに・ころび・ふされけれども・なほたすかる・ここちも・したまは
ず・ただのたまふこととては・あつやあつやと・ばかりなり・おなじきうるふきさらぎ四かのひ・もんぜつびやくぢして・つひに・あ
つちじににこそ・したまひけれ・おなじき・五かのひ・にふだううせたまひぬと・きこえしかば・きやうちう六はらに・むまくるま
の・かけちがふおとは・いかづちのごとし・たとひ・いつてんのきみ・ばんじようの・あるじの・いかなる・おんこと・わた
らせたまふとも・かぎりあれば・これには・すぎじとぞ・みえし・ことしは・六十四にぞ・なられける・かならずこれ
P273
を・おいじにと・まをすべきには・あらねども・てんばつを・かうむり・たまひしかば・ひととかうまをすに・およばず・ひごろは・
みにかはらむ・いのちにかはらむと・ちぎりし・つはものども・めいどのつかひをば・ふせがず・まくらをならべ・ふすまを・かさね
し・さいせふも・くわうせんのたびへは・ともなはず・ただひごろ・つくりおきし・ざいごふ・ばかりや・ともなふらんと・あはれ
なりし・ことどもなり・さてしも・あるべきならねば・おなじき七かのひ・をたぎでらへ・おくりたてまつり・ゆふべのけぶりと・な
したてまつる・こつをば・をぢの・ゑんじつ・ほうげん・くびにかけ・ふくはらへ・もつてくだり・きやうのしまにぞ・をさめける・
かかりける・さうさうのよ・にふだうしやうごくの・しゆくしよにし八でうより・ひいできて・にはかに・やけに・けるこそ・ふしぎな
れ・ひとのいへの・やくるは・つねのならひなれども・をりふしこそ・あるに・これも・ただごとならずとぞ・ひとまをしけ
る・あやしの・しづが・なきあとにも・つねは・かねうちならし・つとめおこなふ・ことも・あるぞかし・さこ
そ・ゆゐごんからに・ただあけくれは・いくさ・かつせんの・いとなみのほかは・たじなしとぞ・きこえし
慈心坊 607
にふだうしやうごくの・さいごのありさまこそ・まことに・おそろしかりけれども・おほかたは・じんぎをうやまひ・ぶつぽふをあがめ
たまふことも・よにはまた・すぐれたまへる・ひとなり・そのゆゑは・つのくに・ふくはらに・きやうのしまを・つかせ・じやうげ・わう
らいのふねどもの・まつだいのいまに・いたるまで・さうゐなく・つくことこそ・めでたけれ・このしまとまをすは・しゆそうをあつめ・いつ
さいきやうを・いしのおもてに・一にち一やに・かきうつし・くやうして・つきこめられけるに・よりてこそ・きやうのしまとは・なづけ
P274
たれ・いまのひやうごのしま・これなり・そのうへ・にふだうしやうごくは・ただびとにては・おはせざりけり・そのゆゑは・さん
ぬる・あんげんのころほひ・つのくに・ありまごほり・せいちようじとまをす・やまでらに・じしんばう・そんゑとて・ならびなき・ぢ
きやうしや一にんさふらひけり・あるとき・かれがゆめに・みやうくわんきたつて・つげたまはく・きたる十ぐわつ廿一にちに・えんまぐうの・だいり・だい
ごくでんにして・十万ごくより・十万にんの・そうをしやうじて・ほつけてんどくの・ことあり・そんゑも・そのにんじゆに・いりたり・
そのときに・いたつて・かならずきたるべしといふ・つげをかうむつて・ゆめさめてのち・このてらのべつたう・しゆぎやうに・かたりければ・
おほきに・ふしぎの・おもひをなす・げにも・そのときにいたつて・すゐめんの・ここちいできたりしかば・ぢぶつだうに・とぢ
こもり・ねんじゆして・さふらひけるに・まことに・ひとひのみやうくわんきたつて・ぐそくしてゆく・えんまぐうの・だいりだいごくでんと・
おぼしきところに・そうりよなみゐて・ほつけてんどく・こころもことばも・およばれず・さるほどに・ほうゑはてにしかば・そうりよみな・
いとままをして・まかりいづ・そのうちに・そんゑは・いまだいでざりけり・えんまだいわう・などなんぢは・いでぬぞと・おほせけ
れば・そんゑまをしけるは・そもそもほつけは・さんぜのしよぶつの・しゆつせの・ほんくわい・いつさいしゆじやう・じやうぶつの・ぢきだうなり・一
け一くの・くどくは・五はらみつの・ぜんごんにもこえ・五十てんでんの・ずゐきは・八十ケねんの・ふせにもこえた
りとこそ・みえてさふらへ・われえうせうより・いまに・いたるまで・ほつけおこたることなし・されども・いまだ・しやうしよを・
しらず・なにとしてか・わうじやうのそくわいをとげ・さふらふべきやらんと・まをされたりければ・えんまだいわう・おほせけるは・わう
じやうふわうじやうは・ひとの・しん・ふしんに・よるなり・あくをしゆする・ものは・あくだうに・だし・ぜんをしゆするものは・ぜん
しよに・うまると・みえたり・ただしなんぢが・しやうしよは・はりのかがみに・みえたり・ゆきてみよとて・またみやうくわんに・
P275
ぐせられて・ゆきてみけるに・げにも・をさなうよりして・おもひと・おもひせしことの・ひとつとして・あ
らはれずと・いふことなし・そんゑも・つひには・とそつのないゐんに・うまるべしとぞ・みえたりける・そんゑかつ
がうのこころ・きもに・めいし・ずゐきのなみだ・せきあへず・そののち・そんゑ・えんまだいわうの・おんまへにまゐり・いとまを・まをさ
れたりければ・えんまだいわう・おほせけるは・なんぢもさだめて・しりたるらん・なんぢがくにに・へいけ・だいじやうのにふだうじやうかいと・
いふひとあり・これは・てんだいの・じゑそうじやうの・さいたんなり・まつだいのしゆじやうに・いんぐわの・ことわりを・しめさん
が・ために・かりに・しやうぐんのみと・あらはれたるなり・されば・ただいま・てんどくしたてまつる・おんきやうも・このひとのためな
り・そのぐわんりきの・ありがたさに・このひとを・ひびに・三どらいしたてまつるなり・そのもんにいはく・きやうらい・じゑだいそうじやう・
てんだいぶつぽふ・おうごしやじげんさいしよしやうぐんしん・あくごふ・しゆじやうどう・りやくと・このもんを三たびとなへて・らいするなりとぞ・おほせけ
る・そんゑかやうのことどもを・ほんに・ふくし・せいちようじの・えんぎに・うつして・いまにありとぞ・うけたまはる・かのゆの
やまとまをすは・えんまぐうの・とうもんに・あたれりとぞ・ひとまをしける
祇園女御 608
そのうへ・にふだうしやうごくは・ただもりが・こにては・なかりけり・まことは・しらかはのゐんの・みこなりとぞ・まをしける・そのゆゑ
は・さんぬる・えいきうのころほひ・しらかはのほとりに・ならびなき・さいはひじん・一にんましましけり・しらかは
のゐん・なにとしてか・きこしめしいださせ・たまひたりけん・つねは・かしこへ・ごかうなる・さてこそ・ひと・ぎをん
P276
にようごとは・まをしけれ・あるときは・くぎやう・一りやうにん・またあるときは・でんじやうびと・三四にんがほど・めしぐして・ひそあに・か
しこへ・ごかうならせたまひけるに・ころは・さつき廿かあまりのことなれば・さみだれさへに・かきくれて・め
ざすとも・しらぬやみなるに・このにようばうの・すまれける・あたりちかき・はやしのなかを・すぎさせたまふほどに・
あるふるだうの・うちよりも・ひかりものこそ・いできたれ・ひかりものの・ていたらく・かしらには・しろがねのはりを・
みがきたてたるが・ごとし・かたてには・つちのやうなる・ものをもち・かたてには・ひかるものをもちて・とば
かりあつては・さつとは・ひかりひかり・しだいに・ちかづきたてまつる・ぐぶのくぎやう・でんじやうびと・あな・おそろし・
つちのやうなるものは・おにがもつなる・うちでの・こづちなんめり・ちかづきたてまつつて・いかなる・おんことの・いでこ
んずらん・もしこれを・いもし・きりも・ととめたらむ・ものには・けんじやうあるべしと・しよきやうごさたありける
に・ただもりの・いまだそのころ・びぜんのかみにて・ほくめんに・さふらはれけるが・らうどうに・むかつて・のたまひけるは・この
へんはやしのなかなり・まことの・きじんにては・よもあらじ・おもふに・きつね・たぬきの・しわざにてぞ・あるらん・お
なじうは・くんで・いけどらばやと・おもふなりとて・みだうのうちに・はしりいり・ひかりものを・むず
とだく・だかれて・こはいかにやと・まをすこゑを・きけば・ひとのこゑなり・そののち・てんでに・ひをともし
て・みたまへば・むそぢばかりなる・ほうしなり・このみだうの・しようしほうしにてぞ・さふらひける・ほとけに・みあかし・
たてまつりけるが・てがめに・あぶらをいれて・もちけるが・つちのやうには・みえにけり・かはらけに・ひをいれて・ふ
きけるが・ひかりものとは・みえにけり・あめしげければ・ぬれじとて・こむぎのわらを・あみあつめて・か
P277
づきたるぞ・しろがねのはりの・やうには・みえにける・そのとき・みなひと・いちどに・どつと・わらひて・のきたま
ふ・一ゐんこれを・えいらんあつて・あはれぶしの・こころほど・たけうやさしかりける・もの・あらじ・まことのきじんと
こそ・おぼしめしつるに・もしこれを・いもし・きりも・とどめたらむは・いかばかり・むねんならまし・くま
んと・おもひかかりたる・ただもりが・こんやの・ふるまひ・かへすがへすも・しんべうなりとて・けんじやうには・くだんの・ぎ
をんにようごをぞ・たまはりける・このにようばう・くわいにんしたまへり・うめらむ・ところのこ・なんしたらば・なんぢがこにせよ・によ
したらば・われにえさせよとぞ・おほせける・ほどなうさんしたまへり・まことの・なんしにてぞ・ましましける・ただ
もりかやうのことをも・そうせばやとは・おもはれけれども・とかく・うちまぎれ・このわかぎみ・二さいと・まをしし・あき
のころ・一ゐんくまのまうでの・くわんぎよのとき・きのくに・いとがやまと・いふところに・みこし・かきすゑさせ・しばらく・これ
にて・ごきうそくの・さふらひける・をりふし・ただもりそうせばやと・おもはれければ・かたやぶに・いくらもある・ぬか
ごとまをすものを・そでにもりいれ・ごぜんにまゐり・かしこまつて・まをされけるは
いもがこははふほどにこそなりにけれ
と・まをされたりければ・一ゐんはやおんこころえあつて・
ただもりとりてやしなひにせよ W
とぞ・おほせける・このわかぎみ・あまりに・よなきをしたまひけるをも・ただもりまをされたりければ・一ゐん
よなきすとただもりたてよすゑのよに・きよくさかふることもこそあれ W
P278
と・あそばされたりけるに・よりてこそ・きよもりとは・なのられけれ・まことの・わうじにてましませば・ただ
もりなのめならず・もてなし・まをされけり・十二にて・じよしやくし・十八にて・四ゐのひやうゑのすけとぞ・まをしける・ま
ことのわうじにて・ましませば・しだいの・しようしんとどこほらず・だいじやうだいじんまでも・たやすくへあがりたまひけり・
とばのゐん・ばかりこそ・きよもりが・くわしよくは・ひとには・おとるまじとは・おほせけれ・ひとは・とかうまをしけれども・いち
ごは・おもふことなくて・すごされけるこそ・めでたけれ
あひ 609
むかし・てんぢてんわう・はらみたまへるきさきを・たいしよくくわんに・たまはすとて・なんしたらば・しんがこにせよ・によ
したらば・われにえさせよとぞ・おほせける・ほどなうさんしたまへり・まことの・なんしにてぞ・ましましける・たうぶ
のみねのほんぐわん・ぢやうゑくわしやう・これなり
国綱の死去 610
おなじき・うるふ二ぐわつ廿かのひ・五でうのだいなごんくにつなのきやうも・うせられけり・このくにつなのきやうと・まをすは・にふだうしやうごくに・しよ
じないげなう・とくいまをされけるが・おなじとしの・おなじひ・やまひづき・おなじきつきに・うせられけるこそ・ふ
しぎなれ・このくにつなのきやうの・にふだうしやうごくに・とくいはじめられける・ゆゑを・いかにとまをすに・ならびなき・だいふくちやうじやにて・
P279
おはしければ・なににても・ひに・一しゆにふだうのもとへ・おくられければ・げんぜのとくい・これに・すぐべからず
とて・くにつなのきやうのしそく・たんばのかみきよくにを・にふだうの・やうしにし・しそく・しげひらを・くにつなの・むこにぞ・なされけ
る・されば・そのゆゑにや・しやう二ゐのだいなごんまで・あがられけるこそ・めでたけれ・せんねんくにつなの・ははうへ・
やはたへ・まゐりたまひて・ねがはくは・わがこのくにつなくらんどのとうに・なして・みせたまへと・いのりまをされける・よのゆめに・
かものかたよりと・おぼしくて・みやびとどもが・びりやうのくるまを・くにつなのもとへ・やりいるるといふ・ゆめをみて・
これをひとにかたりたまへば・いかさまにも・くぎやうの・きたのかたに・ならせたまはんずるに・こそと・まをしければ・
わがみ・としおいぬ・いかでかさることのあるべきと・のたまひけるが・くにつなくらんどのとうをも・さしすぎて・しやう二ゐの・
だいなごんまで・あがられけるこそ・ふしぎなれ・このくにつなのきやうとまをすは・八でうのちうなごん・かねすけに・八だいのまご・さき
のではのかみ・もとすけのまご・うまのかみもとくにの・あそんのこなり・けり・このひとの・いまだそのころ・しんしのざふしきに
て・このゑのゐんにさふらはれけるが・にんぺい三ねん・うづきに・四でうだいりに・ぜうまうの・いできたりしに・しゆじやう・なんでんに・
しゆつぎよなつて・ひとやさふらふひとやさふらふと・おほせけれども・をりふし・おいらへ・まをすものも・なかりけるに・くにつなえうよを・かか
せて・まゐりたり・しゆじやう・こはいかなるものぞと・おほせければ・しんしのざふしき・ふぢはらのくにつなと・なのりまをす・しゆ
じやう・えうよに・めされて・五でうの・だいりへ・ぎやうかうなる・そののち・しゆじやう・ほうしやうじどののもとへ・かやうに・さかさ
かしきものこそ・さふらへ・それに・めしつかはるべしと・おほせくだされたりければ・ほうしやうじどの・ごりやうたび・なん
どして・めしつかはれけり・あるときしゆじやう・やはたへ・ぎやうかうなつて・りんじの・みかぐらのさふらひけるに・にんちやうが・
P280
はうしやうがはへ・おちいりて・ぬれねずみのごとくにて・そのひのみかぐらは・あるまじかりしを・をりふしくにつな・ほうしやうじどの
の・おんともに・さふらはれけるが・しんべうにこそ・さふらはねども・にんちやうがしやうぞくをば・これにも・よういせさせてさふらふとて・
とりいだして・にんちやうに・きせ・そのひのみかぐらをぞ・とげられける・ほどこそすこし・おしうつりたりけれども・うた
のこゑも・すみわたり・まひのそで・ひやうしに・あうて・おもしろかりけり・ものの・おもしろきことは・しんめいも・ひとのこころも・
おなじこと・むかし・あまてらすおほんがみ・あな・おもしろやと・おほせなりし・おんことまでも・いまこそ・おぼしめししられけれ・
むかし・くわんぺいほうわう・さがの・おほゐかはへ・ごかうなつて・ぎよいうの・さふらひけるに・くわんしゆじの・ないだいじん・たかふぢ
こうの・おんこいづみのたいしやう・くにたか・をぐらやまの・あらし・はげしくして・ゑぼしを・かはへふきおとされ・たぶさを・
おさへて・せんかたなげにて・そのひの・ぎよいうは・あるまじかりしを・やまかげの・ちうなごんの・おんこ・じよむ
そうづ・さんえばこより・ゑぼしを・とりいだし・たいしやうにきせたてまつつて・そのひの・ぎよいうとげられけり・よあがつ
てこそ・かかるふしぎは・ありしに・くにつなときにとつての・ようい・かしこかりける・かうみやうかな・ぢしよう四ねんの・
ごせちは・ふくはらにてぞ・とげられける・わかき・くぎやう・でんじやうびとは・ちうぐうのおんかたに・すゐさんまをし・いまやう・らう
えいして・あそばれける・なかに・あるでんじやうびとの・たけしやうほにまだらなり・くもこしつのあとにこると・いふらうえいを・せ
られたりければ・くにつなあな・あさまし・さやうのことは・きんきと・こそうけたまはれ・ききにも・きかじとて・ぬきあし
をしてぞ・にげられける・このしのこころは・むかしの・げうの・みかど・おんむすめ二にん・もちたまへり・あねをば・がくわう・いもうとを
ば・ぢよえいとて・ともに・しゆんのみかどの・きさきにたちたまへり・あるとき・しゆんわう・かくれさせたまひしかば・さうごの
P281
のべへ・おくりたてまつり・二にんのきさき・みかどのおんわかれを・かなしみたまひて・さうごののべにて・なきたまひけるなみだ・しやうほ
のきしのたけに・かかつてまだらなり・きさきそこにて・しつを・しらべたまひしかば・しやうほのきしのたけ・おひいづるごとに・
まだらにてたてり・そのうへ・しつを・しらぶるところには・つねに・くもたなびいて・ものあはれなる・こころあり・くにつな・さ
せるぶんしやう・うるはしきひとにては・おはせねども・さかさかしきによつて・かやうのことをも・ききとがめら
れ・けるとかや・おなじきうるふ二ぐわつ廿二にちに・ほうわう・ほうぢうじどのへ・くわんぎよなるべきよしを・おほせくださる・このほうぢうじ
どのと・まをすはさんぬる・おうはうのころ・つくりいだしたてまつつて・せんすゐ・こだちにいたるまで・おんこころに・まかせたりしかども・この
三四ねんがあひだは・あるひは・とばどのに・おしこめられさせたまひ・あるひは・ふくはらへごかうなり・なんどして・ごしよ
も・みな・あれはてにしかば・さきのうたいしやうむねもりきやう・ざうしんして・なし・まゐるべきよしを・まをされたりし
かども・いまは・なにごとの・さたにも・およばせたまはず・ひそかに・かしこへ・ごかうなりて・えいらんあるに・きしの
まつ・みぎりのさくら・としへにけりと・おぼえて・こだかく・なりたりけるを・ごらんぜらるるに・つけて・まづ・
こにようゐんのおんことを・おぼしめしいでて・おんなみだに・むせばせ・おはします・たいえきのふよう・びやうのやなぎ・これにむかふに・
いかでか・なみだおちざらん・かのなんたいせいきうの・むかしのあと・しげみに・まじる・はなとりを・ごらんぜらるるに・つけ
ても・つきせぬ・ものは・おんなみだなり
行高の沙汰(あひ) 611
P282
おなじき・やよひついたちのひ・なんとのたいしゆ・ほんにふくし・しやうゑん・まつじもとのごとくに・ちぎやうすべきよしを・おほせくだ
さる・おなじき三かのひ・とうだいじ・つくりはじめらる・ぶぎやうべんには・くらうどのさせうべんゆきたかとぞ・きこえし・せんねんゆきたか・
やはたへまゐりたまひて・つやして・ねんじゆせられける・よのゆめに・ごはうでんの・みとおしひらき・うちより・ゆ
ゆしう・けだかきみこゑにて・ややなんぢ・とうだいじ・ぶぎやうのときは・これをたいして・むかふべしとて・こがねの・しやく
をたまふとみて・うちおどろきて・みたまへば・すなはちまくらにぞ・さふらひける・ゆきたか・たうじなにごとに・よつてか・とうだい
じぶぎやうには・むかふべきとは・おもはれけれども・ふかうをさめて・げかうせられたりけるが・はるかにほどへての
ち・へいけの・あくぎやうに・よつて・とうだいじ・えんじやうし・いまこのしやくを・たいして・とうだいじぶぎやうに・むかはれける
こそ・ふしぎなれ・八まんだいぼさつの・しんりよにも・あひかなひたまへる・しゆくしふのほどこそ・めでたけれ
墨俣合戦 612
おなじきやよひ五かのひ・とうごくより・はやむまうつて・へいけへまをしけるは・十らうくらんどゆきいへ・あくぜんしゑんさいきやうのきみぎ
ゑん・三にんひとつになつて・つがふそのせい・七千よき・をはりのくにまで・せめのぼつたるよしを・みののくにの・もくだいの
もとより・まをしたりければ・さらば・まづ・これをふせげやとて・たいしやうぐんには・さひやうゑのかみとももり・さつまのかみただのり・
さふらひたいしやうには・ゑつちうのぜんじもりとし・じらうびやうゑもりつぎ・かづさの・五らうびやうゑただみつ・ゑびのじらうもりかたを・さきとし
て・つがふそのせい・一万よき・おなじきやよひ十かのひ・みやこをたつて・おなじき十五にちに・みののくにに・はせくだり・すのまた
P283
がはらにぢんをとる・十らうくらんど・このよしをききたまひて・みののくにまで・せめのぼり・すのまたがはに・おしよせ・むかひの
きしに・ぢんをとる・そのひのよにいりて・きやうのきみぎゑん・しうじう七き・すのまたがはを・うちわたり・へいけのぢんへぞ・いりたり
ける・をりふしゑつちうのぜんじもりとしが・五十きばかりにて・よまはりするに・ゆきあうたり・あれは たそ・みかた
と・いふ・みかたは・たそ・まことはかたきぞかし・これはよしともがばつし きやうのきみぎゑん・ひごろの・うつぷんをたつせん
ために・ただいまよせたるなりと・いふ・にくしそのぎならば・あますな・もらすな・うてやとて・たいぜいが・
まんなかに・とりこめて・われうちとらんとぞ・すすみける・十らうくらんど・このよしをききたまひて・きやうのきみうたすな・ぎゑん
うたすな・すすめやものども・つづけつはものとて・げんじ七千よき・すのまたがはに・うちいれてぞ・わたしける・へいけの・
かたのたいしやうぐん・さひやうゑのかみとももり・あぶみふんばり・つつたちあがり・だいおんじやうを・あげて・げんじ・ただいまかはを・わたし
たれば・ぬれむしやは・みなかたきぞ・あますな・もらすな・うてやとて・むまもののぐのぬれたるをば・ここにお
つつめ・かしこに・おさへて・くびをとる・きやうのきみぎゑん・二ときばかりたたかつて・うたれにけり・十らうくらんど・この
よしを・みたまひて・かなはじとや・おもはれけん・またすのまたがはを・わたしかへして・ひきしりぞく・へいけつづい
て・すのまたがはを・うちわたし・おちゆくものどもを・ここにおつつめ・かしこに・かけつめて・うちとりけり・げんじのか
たには・ふせぎたたかふといへども・ぶせい・たぜいに・かなはねば・さんざんに・うちちらされて・ひきしりぞく・すゐ
えきを・うしろにせざれとこそ・まをすに・こんどのげんじの・はかりごと・おろかなりとぞ・ひとまをしける・十らうくらんど
みののくににも・こらへえで・をはりのくにに・ひきしりぞく・へいけつづいて・をはりのくにに・うちこえ・さんざんに・せめければ・
P284
十らうくらんど・をはりのくににも・こらへえで・みかはのくにに・ひきしりぞき・やはぎがはの・はしを・ひいて・むかひのきしに・ぢん
をとる・へいけつづいて・みかはのくにに・うちこえ・やはぎがはをも・わたされければ・十らうくらんど・みかはにも・こらへ
えで・とほたふみのくにに・ひきしりぞき・はまなのはしを・ひきて・むかひのきしに・ぢんをとる・へいけつづいて・せめられけるが・
たいしやうぐん・しよらうのここち・いできたりとて・たかせのふもとより・とつてかへす・こんども一ぢんは・やぶれども・ざん
たうを・やぶらねば・はかばかしう・しいだしたる・ことなきがごとし・へいけは・きよきよねん・こまつのおとど・
こうじたまひぬ・こんねんまた・にふだうしやうごく・うせたまひしかば・ねんらいおんこの・ともがらのほかは・まゐりちかづけるものもなし・なかに
も・ゑちごのくにのぢうにん・じやうのたらうすけながは・さんぬる二ぐわつに・ゑちごのかみに・にんぜし・そのてうおんのかたじけなさに・きそ・
つゐたうせんとて・ゑちご・では・あひづ四ぐんを・もよほしけるに・つがふ・そのせい・六まんよき・おなじき五ぐわつ十五にちに・かどいで
して・あかつきすでに・うつたたむとしける・そのよのやはんばかりに・あめかぜおびただしう・ふりくだり・あめかぜ
やんでのち・こくう・しばらく・うすぐもつて・さふらひけるに・おそろしげなる・こゑを・もつて・こくうに・
ものが・つげてとほる・なにものにても・だいがらんほろぼしたる・へいけのかたうど・したらんものをば・いちいちに・め
しとるべしと・よばはつたりければ・じやうのたらう・おそろしさ・きくひと・みなみのけよだつて・おぼえけ
れども・ゆみやとりのそれには・よるべからずとて・やかたを・いで・十四五ちやう・いでたりけるに・じやうのたらうが・
うへに・くろくもひとむらおし・おほふとぞ・みえし・たちまちめくれ・はなぢたつて・たふれふす・むまにても・か
なふべうも・みえざりければ・あをたに・かかれてやかたにかへり・二ときばかりあつて・しにけり・じやうの四
P285
らう・はやむまを・たてて・このよしまをしたりければ・へいけの・ひとびと・こはいかがせんとぞ・さわがれける・おなじ
き・七ぐわつ十三にちに・かいげんあつて・やうわぐわんねんとぞ・まをしける・おなじき十四かに・ぢもくおこなはれて・ちくごのかみ
さだよし・ひごのかみに・なつて・ちんぜいのむほん・たひらげむとて・三千よきにて・みやこをたつ・おなじき八ぐわつ八かのひ・
まさかどつゐたうのれいとて・くわんのちやうにて・だいにんわうゑおこなはる・おなじき九ぐわつ九かのひ・すみともつゐたうのれいとて・くろがねの
かつちうを・いせへ・まゐらつさせ・たまひけるに・さいしゆじんぎのおほなかとみのさだたか・ゐんのごしよへまゐり・くろがねのかつちうを・
うけとりて・いせへ・もつて・まゐるほどに・あふみのむまやにて・やまひづき・いせのりぐうにて・しにけり・そのころ・へい
けは・みゐでらにて・三七にちの・五だんのほふを・おこなはせられけるに・はじめの七かの・だい三かに・あたりけ
るよ・がう三せのだんの・だいあじやり・かくさんほういん・ひぎやうしやの・ひがんしよにて・ひじに(ねしに)に・こそは・したり
けれ・しんめいも・さんばうも・ごなふじゆなしといふこと・いちじるし・そのころ・あんしやうじの・じちげんあじやり・へいけへ・
ごくわんじゆ・たてまつりけるが・げんじ・てうぷくとは・かかで・へいけてうぷくと・かきたるぞ・これきたいの・あやまりなり・めさ
れて・いかにと・おんたづねありければ・さんさふらふ・われらは・てんかたいへい・てうてきてうぷくの・おんいのりつかまつる・ものなり・しか
るに・たうせいのていを・みさふらふに・へいけ・もつぱら・てうてきとみえさせ・たまふに・よつて・これをてうぷくす・されば・
なにのひがごとか・さふらふべきと・まをしたりければ・そのほう(イほうし)・しざいか・るざいか・なんど・ごさたありしかども・てんかの
だいせうじに・まぎれて・やみにけり・そののちへいけほろび・げんじのよとなりて・かまくらどのより・たづねいだされたてまつつて・や
がてごんりつしなされ・ほういんに・きよせらる・おなじき十二ぐわつ・廿五にちに・ちうぐう・ゐんがうかうむらせたまひて・けんれいもん
P286
ゐんとぞ・まをしける・しゆじやう・えうしゆのときのぼこうのゐんがう・これはじめとぞ・うけたまはる・さるほどに・としくれて・やうわも・二ねんにな
りにけり
横田河原合戦 613
おなじきしやうぐわつ廿三にちに・たいはく・ばうせい・をかすてんもんはかせ・これを・うらなひまをす・たいはくばうせい・をかすときんば・
しやうぐん・くにのさかひを・いづとも・いへり・おそろしおそろしとぞ・まをしける・おなじき二ぐわつに・さんもんの・ごんせうそうづけんしん・
きせんじやうげを・すすめて・ひえのやしろに・おいて・一まんぶの・ほつけどくじゆの・ことあり・かかりければ・ほうわうも・おん
けちえんのために・ごかうなる・またなにものが・まをしだしたりけん・一ゐん・やまのたいしゆにおほせて・へいけ・つゐたう・あるべき
よし・きこえしかば・へいけのひとびと・こはいかに・せんとぞ・さわがれける・さるほどに・さんもんには・へいけ・
やまをせむべしと・いふことに・ききなして・さんもんのさうどう・なのめならず・かかりければ・おんけちえんも・はやうち
さましぬ・ほうわう・いそぎ・みやこへ・くわんぎよなる・なかにも・ほん三ゐちうじやうしげひら・一千よきにて・きたしらかはまで・おんむかへ
にまゐり・ほうわうを・うけとり・たてまつつて・いそぎほうぢうじどのへ・くわんぎよなしまをされけり・かかりければ・へいけ・やまを・せむ
べしと・いふことも・またやまより・へいけを・ほろぼすべしと・いふことも・あとかた・なき・そらごとなり・これひとへ
に・てんまのしよゐとぞ・おぼえたる・おなじき五ぐわつ八かのひ・かいげんあつて・じゆえいぐわんねんとぞ・まをしける・さるほどに・ゑち
ごのくにのぢうにん・じやうの四らうすけもちは・あにすけながが・せいきよのあひだ・ながもちと・かいめいし・あにが・うつぷんをたつせんがために・
P287
きそつゐたうせん・とてこんどは・ゑちごばかりを・もよほしけるに・つがふそのせい・二まんよき・おなじき九ぐわつ十一にちに・
ゑちごのこふをたつて・しなののくにに・うちこし・よこたがはらに・ぢんをとる・きそも・そのせい三千よき・たうごく・
よだのじやうを・たつて・よこたがはらに・おしよせ・むかひのきしに・ぢんをとる・きそ・のたまひけるは・よしなかが・いくさ
のきちれいには・七てにわかつものなれば・まづ・いまゐの四らうかねひらに・五百よきを・さしそへて・よこたがはに・
うちいれてぞ・わたさせける・のこり六ても・おのおののゐたるところより・うちいれうちいれわたしけるを・へいけは・うんのきはめ
にや・これをたいぜいとこそ・みてんげれ・まづじやうの四らうがせんぢんに・さふらひける・あひづのじようたんばう・うたれにけ
り・じやうの四らう・きそに・ていたうせめられて・むらくもたつてぞ・ひかへたる・きそ・かつに・のつていよいよ
せめければ・じやうの四らうが・せい二まんよきとは・みえしかども・おちぬ・うたれぬ・せしほどに・たんごぶらいに・
なりに・けり・じやうの四らう・ただ一きに・なつて・かなはじとや・おもひけん・よこたがはに・とびいり・みづのそこを・く
ぐつて・ゑちござかひへぞ・おちゆきける・じやうの四らう・はやむまを・たてて・みやこへ・このよしを・まをしたりけれども・へい
けは・あまりのことにや・いと・さわぐけしきも・ましまさず・おなじき十ぐわつ十三にちに・さきのうだいしやうむねもりきやう・
ないだいじんに・あがりたまふ・くぎやう・六にん・せんくあり・でんじやうびと十三にん・こしようせらる・みな・われもわれもと・いで
たたれたりしありさま・いまいくほどぞやとぞ・みえし・とうごく・ほくこく・はちのごとくに・おこりあひ・せんやう・せん
おん・なんかい・さいかいの・つはものども・すでに・みやこへせめのぼる・なんどきこえしかども・へいけは・かぜのふくやらん・なみのたつ
らんをも・しらずしてあそび・たはぶれてのみ・おはしけるぞ・ひとへにへいけの・うんのきはめなる・さるほど
P288
に・としくれて・じゆえいも・二ねんに・なりにけり
平家物語(城方本・八坂系)
巻第七 P289
清水の冠者のさた 701
じゆえい二ねん・しやうぐわつ廿二にちに・さきのないだいじん・むねもりこう・じゆ一ゐに・あがりたまふ・ただし・ないだいじんをば・じしまを
されけり・おなじき廿三にちに・いせ・いはしみづを・はじめたてまつつて・廿二しやに・くわんぺいあり・これはこんど・とうごく・ひやう
らんの・おんいのりの・おんためとぞ・おぼえたる・しかいに・せんじを・なしくだし・しよこくへ・ゐんぜんをくだされけれども・いつ
かう・へいけのげぢと・のみこころえて・まゐりちかづく・ものもなし・くまの・きんぷうせんの・そうら・なんと・ほくれいのたいしゆ・
いせ・いはしみづの・しんじん・きうじんにいたるまで・いつかう・へいけを・そむいて・げんじに・こころをぞかよはしける・そのころ・
かまくらのひやうゑのすけと・きそと・ふくわいのこと・あつて・かつせんあるべしとぞ・きこえし・さるほどに・かまくらの・ひやうゑのすけより
ともは・十万よきにて・かまくらをたつて・ゑちごのこふに・つきたまふ・きそもそのせい・三千よき・たうごく・よたのじやう
を・たつて・ゑちごと・しなのの・さかひなる・くまさかやまに・ぢんをとる・きそひやうゑのすけのかたへ・ししやをたてて・いかで
か・よしなか・うたんとはさふらふぞ・十らうくらんどどのこそ・ごへんをうらむるしさいありて・たうごくにうちこえて・おはす
なるを・よしなかさへ・すげなうもてなし・まをさんずることも・いかんぞやなれば・ひきぐしては・さふらふなる・
P290
もしそのゆゑか・それならば・いしゆあるべしとも・ぞんぜず・たうじごへんと・よしなかと・いくさして・へいけにわらは
れんとは・おもふべきと・のたまひつかはされたりければ・ひやうゑのすけ・いいやいまこそ・さやうにまをさるれども・ま
ことは・よりとも・うつべきはかりごとを・めぐらされけるに・こそとて・うつてのいちぢん・いよいよちかづくよ
し・きこえしかば・きそ・かなはじとや・おもはれけん・しそく・しみづのくわんじやよししげとて・しやうねん十一さいに・な
られけるに・うんの・もちづき・すは・ふぢさは・いげのつはもの・五百よきを・さしそへて・ひやうゑのすけのかたへ・つかはさ
る・ひやうゑのすけ・このうへは・いしゆなしとて・しみづのくわんじやを・ぐそくして・かまくらへこそかへられけれ・さるほどに・き
そは・ゑちごのくにに・うつていで・じやうの四らうと・かつせんす・こんどもまた・じやうの四らう・いくさににうちまけて・ではざかひへぞ・
おちゆきける・さるほどに・へいけは・きよねんのふゆより・みやうねんの・むまのくさかひに・ついて・いくさあるべしと・ふれられた
りければ・せんやう・せんおん・なんかい・さいかいの・つはものどもみなまゐりけり・とうかいだうには・とほたふみより・ひがしは・まゐらず・とう
せんだうには・あふみ・みの・ひだのつはもの・まゐりけり・ほくろくだうには・わかさ・よりきたは・まゐらず・そのほかは・みなまゐ
りけり・されども・いづのくにのぢうにん・いとうの九らうすけうぢ・さがみのくにのぢうにん・またのの五らうかげひさ・たかはしのはんぐわんながつな・
むさしの三らうさゑもんありくに・ながゐのさいとうべつたうさねもりは・へいけの・かたにぞさふらひける・さらば・まづほくこくへ・はつ
かうせよやとて・たいしやうぐんには・こまつの三ゐのちうしやうこれもり・ゑちぜんの三ゐみちもり・さつまのかみただのり・みかはのかみとものり・たじ
まのかみつねまさ・わかさのかみつねとし・さぶらひたいしやうには・かづさのたらうはんぐわんただつな・ひだのたいふのはんぐわんかげたか・かはちはんぐわんひでくに・
たかはしのはんぐわんながつな・いとうの九らうすけうぢ・またのの五らうかげひさ・むさしの三らうさゑもんありくに・ながゐのさいとうべつたうさねもりを・
P291
さきとして・つがふそのせい・十万よき・おなじき四ぐわつ十六にちに・みやこをたつて・ほつこくへ・はつかうせられけり・かたみちを・
たまはつてんければ・あふさかのせきより・はじめて・ろじにもてやう・けんもん・せいかの・しやうぜいくわんもつをいはず・
みないちいちに・うばひとる・まして・しが・からさき・まのの・たかしま・しほつ・かいづの・みちのほとりの・いへいへを・つゐふく
して・とほられければ・じんみんことごとく・にげさんず・せんぢんは・ゑちぜんへ・すすめば・ごぢんは・いまだあふみのくに・かいづの
うらに・みちみちたり
経政の竹生島詣 702
なかにも・ごぢんのたいしやうぐん・くわうごぐうのすけけんたじまのかみつねまさは・およそ・くわんげんのみちに・たつし・さいげい・ひとにすぐれて・お
はしければ・かかるよの・みだれのなかなれども・なぎさにたちいで・まんまんたる・かいしやうをみわたせば・一のしまあり・あ
れはいかにとのたまへば・あれこそきこえさふらふ・ちくぶじまさふらふよと・まをしければ・いざやさらば・わたつてみむとて・
さぶらひあんゑもんありのりを・はじめとして・そうじて・さふらひ五六にん・こぶねに・とりのり・かのしまにわたつて・しまのけいきをみたま
ふに・こころもことばも・およばれず・ころはうづき十かあまりの・ことなれば・まつにふぢなみ・さきかかり・むらさきのくもかと・
うたがはれ・はつねゆかしきほととぎす・をりしりがほに・つげわたり・かんこくの・あうぜつの・こゑおいんたり・かの・じんくわう・
どうなん・くわぢよを・つかはして・ふしのくすりを・もとめしに・われ・ほうらいをみずば・いなや・かへらじとて・い
たづらに・ふねのうちにて・としつきを・おくり・てんすゐ・べうべうとして・もとむることを・えざりけん・かのほうらいたうのあり
P292
さまも・これにはすぎじとぞ・みえし・あるきやうのもんにみえたる・なんえんぶだい・たいかいのひがしに・みづうみあり・そのうちに・
こんりんざいより・おひいでたる・すゐしやうりんの・やまあり・てんによすむところと・いへりすなはち・かの・ちくぶしまこれなり・べんざいてん
は・じゆげせきじやうに・あまくだらせたまへりと・いへり・これは・こすゐ・せきじやうに・一そくの・かたちをうつしたま
ふ・つねまさ・ふねよりあがり・みやうじんのおんまへに・まゐりをがみを・まゐらつさせたまひけり・それべんざいてんは・わうこ
のによらい・ほつしんのだいじなり・めうおんべんざいてん・みなは・おのおのべちなりとは・まをせども・しゆじやうさいどの・おんめぐみ・ひ
としく・一どさんけいのともがらも・しよぐわんじやうじゆ・ゑんまんすとこそ・うけたまはれ・たのもしうこそ・さふらへとて・ただ
かたときの・ほどとはおもはれけれども・そのひも・すでに・くれければ・そのよはしまにてぞ・あかされける・ころはうづき・
なかの八かの・ことなれば・ゐまちのつき・さしいでて・こじやうも・てりわたり・みやのうちも・かがやきて・おもしろかり
ければ・つねまさ・じやうぢうより・びはを・まをしおろし・よもすがら・しらべ・ひきよくを・つくされけり・かのしやうりつ
の・しらべには・みやのうちも・すみわたり・まことにおもしろかりければ・みやうじん・かんおうやしたまひけん・つねまさの・そで
のうへに・びやくりうげんじて・みえたまふ・つねまさ・ばちさしをさめ・たまひて・
ちはやふるかみにいのりのかなへばや・しるくもいろのあらはれにけり・
われらこんど・てうてきを・たひらげて・みをまつたうせんこと・うたがひなしとよろこびて・またふねに・とりのつて・かい
づのうらにぞ・あがられける
P293
火うち合戦 703
さるほどに・きそは・ゑちごのこふに・ありながら・ゑちぜんの・ひうちが・じやうをぞ・こしらへさせられける・じやう
のうちに・こもるせい・とがしのにふだうぶつせい・はやしの六らうみつあきら・へいせんじのちやうりさいめいゐぎし・にふぜん・みやさき・いしくろ・うち
だのものどもを・さきとして・つがふそのせい・六千よきとぞ・きこえし・へいけ・かしこにおしよせて・みたまへば・
ひうちもとより・くきやうの・じやうくわくなり・ばんじやくそばたち・めぐつて・しはうにみねを・つらね・やまをうしろにし・やま
をまへにあつ・じやうのまへには・のうみがは・しんだうがはとて・ながれたり・ふたつのかはの・おちあひに・たいぼくをきつて・しが
らみにかき・たいせきをたたみ・あげたりければ・みづとうざいの・やまのねをひたして・ひとへにたいかいに・のぞむがご
とし・かげなんざんを・ひたして・あをうして・くわうやうたり・なみせいじつをしづめて・くれなゐにして・いんりんたり・かのこんめい
ちの・ありさまも・これには・すぎじとぞ・みえし・ふねならでは・たやすくわたすべしとも・みえざりければ・へい
けのだいぜい・むかひのやまに・ぢんをとつて・むなしくひかずをぞ・おくられける・なかにも・じやうのうちにさふらひける・
へいせんじのちやうり・さいめいゐぎし・へいけに・こころざしありければ・よにいつて・やまのねをまはり・ふみをかいて・ひき
めにいれ・へいけのぢんへぞ・うちいれたる・へいけのつはもの・これをみて・ここなるひきめの・ならぬことこそ・ふしぎ
なれとて・とつて・みけるに・なかにふみぞ・さふらひける・たいしやうぐんに・みせたてまつる・ひらいてみたまへば・このかは
は・わうこよりの・ふちにはあらず・いつたん・やまがはを・せきあげてさふらふ・よにいつて・あしがるどもを・つかはして・し
P294
がらみを・きりおとさせたまはば・みづはほどなく・おつべし・むまの・あしぎき・くきやうのところにてさふらふ・いそぎ・よせさせ
たまへ・うしろやに・おいては・つかまつらむずるさふらふ・かうまをすは・へいせんじのちやうり・さいめいゐぎしが・まをしじやうとぞかきた
りける・へいけ・なのめならず・よろこびたまひて・よにいつて・あしがるどもを・つかはして・しがらみを・きりおとさせら
れたりければ・げにもやまかはにてはあり・みづはほどなくおちにけり・へいけしばしの・ちちにもおよばず・十万
よきを・おほて・からめてふたてに・わけてぞよせられける・なかにも・じやうのうちにさふらひける・へいせんじのちやうりさい
めいゐぎし・てぜい三百よきを・ひきわけて・へいけにちうをぞ・いたしける・にふぜん・みやさき・いしぐろ・うちだのものども・
ふせぎたたかふといへども・ぶせい・たぜいにかなはねば・さんざんにうちちらされ・かがのくにに・ひきしりぞき・しらやま
の・いちのはしをひきて・しらやまかはうちに・たてこもる・へいけつづいて・かがのくにに・みだれいり・とがしはやしが・二ケしよの・じやう
くわく・やきはらひてぞ・とほられける・へいけの・かたのたいしやうぐんに・こまつの三ゐのちうしやうこれもり・はやむまをたててみやこへ・
このよしを・まをされたりければ・のこりとどまりたまへる・へいけのゆかりのひとびと・いさみののしりたまふこと・なのめ
ならず・さるほどに・へいけは十万よきを・おほてからめて・ふたてにわけてぞむかはれける・まづ・おほての・たいしやうぐん
には・こまつ三ゐのちうしやうこれもり・ゑちぜんの三ゐみちもり・みかはのかみとものり・三にんたいしやうぐんにて・つがふそのせい・七まんよき・か
が・ゑつちうのさかひなる・となみやまへぞむかはれける・からめての・たいしやうぐんには・さつまのかみただのり・たじまのかみつねまさ・わかさの
かみつねとし・三にんたいしやうぐんにて・つがふそのせい・三万よき・のと・ゑつちうのさかひなる・しほのてへこそ・むかはれけれ・
なかにも・ひうちがじやうに・さふらひける・はやしの六らうみつあきら・きそどのへ・まをしけるは・さりともと・ぞんじさふらひつる・ひ
P295
うちのじやうをば・へいせんじのちやうりさいめいゐぎしが・かへりちうによつて・ねんなう・やぶられさふらひぬ・こんどは・へいけ・
たいぜいにて・むかはれさふらふ・ゑつちうの・ひろみへ・うちいづるほどならば・いよいよみかたの・おんだいじなるべし・いよいよよせ
させたまへと・まをしたりければ・きそ・さてはとて・おなじき五ぐわつ五かのひ・五万よきにて・ゑちごのこふをぞ・
うつたたれける・きそ・のたまひけるは・へいけのたいぜい・ゑつちうのひろみへ・うちいづるほどならば・さだめて・かけあひの
かつせんにてぞ・あらんずらん・かけあひの・いくさといふは・いきほひのたせうに・よることなれば・たいぜいを・かさに・か
けては・かなふまじ・まづ・からめてを・むけよやとて・をぢの十らうくらんどゆきいへに・壱万よきを・さしそへて・
しほのてへこそ・むけられけれ・よしなかが・いくさの・きちれいには・七手(ななて)に・わかつものなればとて・のこり四万よ
きを・六てに・わかつ・まづあしかがの・やたのはんぐわんだいよしきよに・七千よきを・さしそへて・きたくろさかへぞ・むけ
られける・にしな・たかなし・やまだのじらう・これも・七千よきにて・みなみくろさかへぞ・むかひける・ひぐちのじらうかね
みつ・五せんよきにて・くりからの・だうのうしろへ・からめてにこそ・まはりけれ・ねのゐの・こやた・五千よき・まつ
ながのやなぎはら・ぐみのきばやしに・ひきかくす・いまゐの四らうかねひら・六千よきにて・わしのしまを・うちわたり・ひ
のみやばやしに・たてこもる・きそは・一万よきにて・くろさかの・きたのはづれ・おやへの・わたりをし・はに
ふのもりに・ぢんをとる
木曽の願書 704
P296
きそ・はかりごとに・はたさしを・さきにたてよやとて・まづ・はたさしを・さきだてらる・おなじき五ぐわつ十一
にちの・みのこくばかりに・くろさかのたうげに・はせついて・しらはた卅ながればかり・一どに・はつと・さしあげたり
ければ・へいけのかたには・これをみて・あはや・げんじの・一ぢんこそ・むかうたんなれ・ここは・やまも・た
かう・たにもふかう・四はう・ぐわんせきなりければ・からめて・さうなう・よもまはさじ・ここに・ぢんをとれやとて・
となみやまの・さんちう・さるが・ばばと・いふところに・へいけ七万よき・おりゐて・ぢんをぞ・とつたりける・きそ
は・やはたのしやりやう・はにふのもりに・ぢんどつて・四はうを・きつと・みまはせば・なつやまの・みねの・みどんの・
このまより・あけのたまがき・ほのみえて・かたそぎづくりの・やしろあり・まへに・とりゐぞ・たちたりける・きそ・くに
の・あんないしやをめして・あれにみえさせたまふをば・いづれの・やしろと・まをしたてまつるぞ・または・いかなるかみを・
あがめたてまつりたるぞと・のたまへば・あれこそ・やはたを・うつしたてまつつて・たうごくの・しんやはたともまをし・またははにふの
やしろとも・まをしさふらふなりとぞ・まをしける・きそ・なのめならずよろこびたまひて・てかきに・めしぐせられたりける・た
いふばうかくめいをめして・よしなかこそ・さいはひに・うぢがみ・八まんだいぼさつの・ごはうぜんに・ちかづきたてまつつて・かつせんを・とげむ
とすれ・さらむにとつては・かつうは・こうだいのため・かつうは・たうじの・きたうのために・ぐわんしよを・ひとふでまゐ
らせばやと・おもふはいかがあるべきと・のたまへば・かくめい・このぎもつとも・ゆゆしうさふらひなんとて・むまより・お
りてかからんとす・かくめいが・そのひのしやうぞくには・かちのひたたれに・くろいとをどしの・よろひをき・三じやく五すんの・いか
ものづくりの・たちをはき・廿四さいたる・おほなかぐろの・やおひ・ぬりごめどうのゆみ・わきにはさみつつ・えびらより・こ
P297
すずり・たたうがみを・とりいだし・きそがまへに・ついひざまづいて・ぐわんしよを・かくす千のつはもの・これをみて・あつぱれ・ぶん
ぶどもの・たつしやかなとぞ・ほめたりける・このかくめいとまをすは・もとは・じゆけのものなり・くらんどみつひろとて・くわんがく
ゐんに・さふらひけるが・しゆつけして・三でうばうしんきうと・なのつて・しばらく・なんとに・さふらひけるが・一とせ・たか
くらのみや・みゐでらへ・じゆぎよのとき・さんもん・なんとへ・てふじやうつかはされし・そのへんでふをも・このかくめいぞ・かきたりけ
る・そもそもきよもりにふだうは・へいしのさうかう・ぶけのぢんかいなりと・かきたりければ・にふだうおほきに・いかつて・せんず
るところ・そのしんきうほうし・いけどりにして・しざいに・おこなへと・のたまへば・かくめい・なんとには・こらへで・ほつこくに・
おちくだり・きそに・ついて・かいみやうし・そのなを・たいふばうかくめいとぞ・なのりける・かかりし・さいじんなりければ・
なじかは・かきもそんすべき・こころもおよばずぞ・かきたりける・そのぐわんしよに・いはく・
きみやうちやうらい・八まんだいぼさつは・じちゐきてうていのほんしよ・るゐせいめいくんのなうそなり・はうそをまもらむがため・さうせいをりせん
がために・三じんのきんようをおく・三じよのけんひをひらきたまへり・ここにしきりのとしよりこのかた・へいしやうこくといふものあつ
て・しかいをくわんりやうし・ばんみんをなうらんせしむ・これすでに・ぶつぽふのあだ・わうぽふのてきたり・よしなかいやしくも・きうばの
いへにむまれて・わづかにききうのちりをつぐ・かのばうあくをみるに・しりよかへりみるにあたはず・うんをてんだうにまかせて・みを
こくかになげうち・まことにぎへいをおこして・きようきをしりぞけむとす・いまたうせんりやうかの・ぢんをあはすと・いへども・しそついまだ・
いちどのいさみを・えざるあひだ・まちまちのこころ・おそれたるところに・いまいちぢんはたをあぐ・せんぢやうにして・たちまちに三しよわ
くわうのしやだんをはいす・きかんのじゆんじゆく・あきらかなり・きようとちうりくうたがひなし・くわんきなみだ・こぼれて・かつがうきもにそむ・そう
P298
そふ・さきのむつのかみ・みなもとのよしいへのあそん・みをそうべうの・しぞくに・きふして・そのなを・八まんたらうと・がうせ
しよりこのかた・そのもんえふたるものの・ききやうせずと・いふことなし・よしなかいやしくも・そのこういんとして・かうべをかたぶけて・とし
ひさし・いまこのたいこうを・おこすこと・たとへば・えいじのかひをもつて・きよかいをはかり・たうらうがをのをとつて・りうしやに・むか
ふがごとし・しかりといへども・いへのため・みのためにして・これをおこさず・きみのため・くにのためにして・これを
おこす・こころざしのいたり・しんかんあんに・あらんをや・たのもしいかな・よろこばしいかな・ふしてねがはくは・みやうけん・ゐをくはへ・りやうしん
ちからをあはせて・かつことを・いちじにけつし・あくを・四はうへ・しりぞけたまへ・しからばすなはち・たんき・みやうりよにかなひ・ゆうけん・か
ごを・なすべくんば・まづ・一のずゐさうを・みせしめたまへ
じゆえい二ねん五ぐわつ十一にち・ みなもとのよしなかうやまつてまをす
とぞ・よみあげたる
倶利伽羅 705
きそどのを・はじめとして十三にんの・うはやのかぶちらを・一づつ・ぐわんしよにそへて・だいぼさつの・ごはうぜんにぞ・をさめけ
る・八まんだいぼさつ・まことのこころざし・二つなきところを・はるかにせうらんや・したまひけん・くものなかより・やまばと・二・とびきたり・
げんじの・はたのうへに・へんはんす・げんじのかたには・このよしをみて・いさみののしること・なのめならず・へいけの・つはものどもは・これ
をみて・みのけ・よだつてぞ・おぼえたる・そののちは・げんじもすすまず・へいけも・すすまず・りやうはう・たてのは
P299
をつきあはせてぞ・ささへたる・そのあひわづかに・二ちやうばかりは・あるらんとぞ・みえし・そののち・げんじはかり
ごとに・せいひやう十五きを・いだして・十五のかぶらを・へいけのぢんへ・いいれさす・へいけも・せいひやう・十五きを・いだ
して・十五のかぶらを・いかへさす・げんじ・卅きを・いだして・卅のかぶらを・いさせければ・へいけも・卅きを・いだ
して・卅のかぶらを・いかへす・げんじ・五十きを・いだせば・へいけも・五十きをいだし・百きをいだせば・百きを
いだし・あはせ・りやうはうたてのおもてに・さしいでて・しようぶをせんと・はやりけるを・げんじせいして・しようぶをば・せさせ
ず・かやうに・あひしらひ・ひをまちくらし・へいけのたいぜいを・そばなるたにへ・おひおとさんと・しけるを・へい
けはこれを・ゆめにも・しらずして・ともに・あひしらひ・ひをまちくらしけるこそ・はかなけれ・そのよの・
ねのこくばかりに・ひぐちのじらうかねみつ・五千よきにて・くりからのだうのうしろに・まはりあひ・ときを・どつ
とぞ・つくりける・ねのゐのこやた・五千よき・まつながのやなぎはら・ぐみのきばやしより・をめきさけんで・はせ
きたる・いまゐの四らうかねひら・六千よきにて・ひのみやばやしより・はせちかづく・きそは・一万よきにて・おなじう・
ときのこゑをぞ・あはせける・ぜんご・しまんよきが・ときのこゑには・やまも・かはも・ただいちどに・くづるるか
とぞおぼえたる・へいけは・おもひもかけぬ・ときのこゑに・おどろいて・そばなる・たにへぞおとしける・きたなしや・
かへせや・かへせと・いひけれども・たいぜいの・かたぶきぬるはとつて・かへすが・まれなれば・おやおとせば・
こも・おとし・あにが・おとせば・おとともつづく・しゆおとせば・いへのこ・らうどうも・つづきけり・むまにはひと・
ひとにはむま・おちかさなりおちかさなり・せしほどに・さしもに・ふかき・たにひとつを・へいけのせい・七万よきにて・うめ
P300
あげたり・さればにや・がんせん・ちをながし・しがい・をかを・なすとかや・わづかに・たいしやうぐん・これもり・みちもり・
ばかりこそ・からきいのち・たすかつて・かがのくにへは・ひかれけれ・にふだうの・ばつしみかはのかみとものりも・うたれ
たまひぬ・ただつな・かげたかも・うたれにけり・さればにや・このたにのそこ・いはのはざまには・やのあと・かたなのきずあと・
のこつて・いまにありとぞ・うけたまはる・なかにも・いづのくにのぢうにん・いとうの九らうすけうぢは・とし卅四と・なのつて・とつ
て・かへし・さんざんに・たたかうて・うたれにけり・またのの五らうかげひさも・いつしよにうちじに・してんげり・
なかにも・びつちうのくにのぢうにん・せのをのたらうかねやす・へいせんじの・ちやうり・さいめいゐぎしは・いけどりにこそ・せられけれ・
せのをのたらうかねやす・をば・きそ・いかがは・おもはれけむ・さうなう・きらで・かがのくにのぢうにん・くらみつの三
らうなりずみに・あづけおかれたり・へいせんじの・ちやうりさいめいゐぎしをば・きそが・まへにひつすゑ・にくし・そのほう
しきれとて・きらせられけり・そのほか・いけどり・三千よにんが・くびきりかけさせ・いまは・おもふことなし・ただし・
をぢの十らうくらんどゆきいへに・一万よきを・さしそへて・しほの・てへむけつるこそ・おぼつかなけれ・いざやゆきて・
みむとて・四万よきが・うち・あらて・二万よきを・ひきぐして・ゑつちうのくに・ひみのみなとを・うちわたさんと・
したまひけるが・をりふし・しほさしみちて・ふかさ・あささを・しらざりけるに・たいふばうかくめいが・はかりごとに・
くらおきむま・十ぴきばかりに・たつな・むすんで・うちかけ・たいぜいがまつさきに・おひいれたりければ・くらつめ・ひた
るほどにて・むかひのきしに・わたりつつ・さては・あさかりけるぞや・わたせやとて・きそ・あらて・二万よき・
うちいりてぞ・わたしける・しほのてに・うちのぞんで・みたまへば・あんのごとく・十らうくらんど・いくさに・うちまけ・
P301
ひきしりぞき・むまのいきを・やすめたまふところに・きそ・あらて・二万よきを・いれかへて・さんざんにこそ・せめられけれ・へい
け・きそに・ていたう・せめられて・かなはじとや・おもはれけん・かがのくにに・ひきしりぞき・あだか・しのはらに・
ぢんをとる・きそ・つづいて・かがのくにに・みだれいり・あだか・しのはらにて・かつせんす・五ぐわつ廿三にち・むまの
こく・ばかりのことなりければ・くさも・ゆるがず・てらすひに・げんぺいたがひに・いりみだれ・さんざんに・せめたたか
ひけるに・へんしんより・あせながれ・みづをいだすに・ことならず・ここにて・へいけ・三千よき・うたれにけり・げんじ
も・二千よき・ほろびにけり・へいけは・しよしよの・いくさにうちまけて・みなちりぢりに・なつてぞ・のぼら
れける
実盛が最後 706
ここに・おちゆくせいのうちに・むしや三き・とつてかへし・さんざんにこそ・たたかひけれ・一きは・たかはしのはんぐわんながつな・
一きは・むさしの三らうざゑもんありくに・一きは・ながゐのさいとうべつたうさねもりとぞ・きこえし・なかにも・たかはしのはんぐわんなが
つなは・ゑつちうのくにのぢうにん・にふぜんのこたらうと・くんで・おちけるところを・にふぜんが・いとこ・ゑちごのくにのぢうにん・なんでう
のじらう・おちあひて・たかはしがくびをば・とつてけり・むさしの三らうざゑもんありくには・むまをも・いさせ・おりた
つて・たたかひけるが・や・二三十すぢ・いたてられ・たちをつゑにつき・かたきのかたを・にらまへて・たちすくみ
にこそ・したりけれ・いまは・ながゐの・さいとうべつたう・ただいつきに・なつて・かへしあはせ・かへしあはせ・さんざんに
P302
こそ・たたかひけれ・ここに・げんじの・かたより・むしや一き・はせきたり・みかたのせいは・みな・おちゆきさふらふに・ただ
一き・のこりとどまつて・いくさするひとこそ・おぼつかなけれ・いかなるひとぞ・なのれや・なのれと・いひければ・
かういふ・わぎみは・なにものぞ・まづ・なのれと・いはれて・これは・しなののくにの・ぢうにん・てづかの・たらう・かな
さしのみつもりとぞ・なのりたる・ひごろより・さるひとありとは・ききおよびたり・これは・わざとおもふやうあつて・
なのらぬなり・ただしなんぢを・さぐるには・あらず・よれあへや・くまんとて・むまうちならべ・ひつくんで・
どうとおつ・さねもりこころは・たけうおもへども・いたで・どもをば・おうたりけり・そのうへ・おいむしや・なりければ・
つひに・てづかが・したになつてぞ・うたれける・てづか・くびとつて・きそどのの・おんまへにまゐり・みつもりこそ・きい
のくせものと・あうて・くんでうつてまゐりてさふらへ・たいしやうぐん・かとみさふらへば・つづく・せいも・さふらはず・また・は
むしややらんと・ぞんじさふらへば・にしきの・ひたたれをきて・さふらひつる・さいこくぶし・きないのつはものやらんと・ききさふらへ
ば・こゑは・ばんどうごゑにてさふらふと・まをしたりければ・きそどの・あなむざん・もしそれは・ながゐの・さいとうべつたうさね
もりにてもや・あるらん・それならば・よしなかが・かうづけへ・こえたりしとき・をさなめに・みしかば・しら
がの・すこしかすほなり・しが・いまは・七十にも・あまり・しらがにこそ・ならむずるに・びんはつの・く
ろきは・たれなるらん・ひぐちのじらうかねみつは・ねんらいのとくいなれば・みしりたるらん・ひぐち・めせとて・めされ
けり・ひぐち・このくびを・ただひとめみて・あなむざん・これは・まことに・ながゐのさいとうべつたうさねもりにて・さふらひ
けるぞや・きそ・さて・びんひげのくろきは・いかにと・のたまひければ・ひぐちのじらう・なみだを・はらはらと・な
P303
がいて・さんさふらふ・そのやうを・まをさんと・つかまつりさふらへば・あまりに・あはれにおぼえて・まづ・かねみつが・ふかく
のなみだの・さきだちさふらふなり・されば・ゆみやとりは・ただかりそめの・ところにても・のちまでの・おもひでのことばをば・
かねて・まをしおくべきことにてさふらふなり・さねもり・ひごろ・かねみつにあうての・つねは・うちとけ・ものがたりに・われ六十
にあまり・いくさばに・いでんときは・びんひげを・すみにそめうと・おもふなり・そのゆゑは・わかとのばらに・あらそつて・さ
きをかけんも・おとなげなし・またおいむしやとて・ひとにあなづられんも・くちをしかるべし・なんどまをして・さふら
ひしが・さては・そめて・さふらひけるぞや・あらはせて・ごらんじさふらへと・なみだもせきあへず・まをしたりけ
れば・きそどの・まことにもとて・かがのくに・なりあひの・いけにて・あらはせて・みたまへば・げにも・はくはつに
こそ・なりにけれ・さねもり・またにしきの・ひたたれを・きさふらひけることは・さねもり・みやこを・いづるとて・おほいとの
に・まをしけるは・ひととせ・とうごくの・あんないしや・つかまつつて・やひとつを・だにも・いすてずして・するがの・かんばら
より・にげのぼりて・さふらふことも・さねもり一にんが・みのうへにては・さふらはねども・おいのはての・ちじよくただ・このことにこそ・
さふらへ・こんど・ほくこくに・まかりむかうて・さふらはば・さだめて・うちじに・つかまつるべしあはれ・にしきの・ひたたれを・おんゆる
され・さふらへかし・そのゆゑは・さねもりもとは・ゑちぜんのものにてさふらふが・きんねんしよりやうに・ついて・むさしのながゐに・きよ
ぢうつまつり・さふらひき・さてこそ・ながゐのさいとうとは・めされさふらへ・こきやうへは・にしきをきてかへれと・まをすことのさふらふ・
ものをなんど・やうやうに・まをしたりければ・おほいとのは・さることありとて・かんじて・ゆるしたまひけり・
むかしの・けんしんは・にしきのたもとを・くわいけいざんに・ひるがへし・いまのさねもりは・にしきをきて・そのなをほつこくの・ちまたにあぐと
P304
かや・へいけ・さんぬる・四ぐわつに・みやこをいでられしには・十万よき・おなじき五ぐわつにかへりのぼり・たまふには・ただ三万
よき・さしも・はなやかに・て・みやこをいでし・ひとびとの・くちもせぬ・なをば・うきよにとどめおき・そのみは・
こしぢのすゑのちりと・なるこそ・かなしけれ・みかはのかみとものりも・かへりたまはず・ただつな・かげたかも・かへらず・ながれ
を・つくして・すなどるときは・おほくの・うを・うと・いへども・めいねんには・うをなし・はやしを・やきて・かるとき
は・おほくの・けだもの・うと・いへども・めいねんには・けだものなし・のちを・ぞんじて・せうせうは・のこさるべかりけるもの
をとぞ・みなひと・まをしあはれける
玄ムの沙汰(あひ) 707
かづさのかみただきよは・ちやくし・たらうはんぐわんただつなを・うたせておほいとのに・いとままをし・しゆつけとんせい・してんげり・おとと・ひだの
かみかげいへも・ちやくし・たいふのはんぐわんかげたかを・うたせこれも・しゆつけにふだう・してんげる・みやこのうちは・まをすにおよばず・
きんごく・ゑんごくの・ものどもも・あるひは・おやを・うたせこにわかれ・をつとにはなれ・もんとを・とぢて・かなしみけり・これ
ひとへに・うむなんの・たたかひに・あひおなじ・おなじき六ぐわつついたちのひ・だいりには・さいしゆじんぎのおほなかとみのさだとしを・
でんじやうのしもくちへ・めされて・こんど・ひやうらんしづまらば・いせへ・ぎやうかうなるべき・よしを・おほせくださる・さだとし
かしこまりうけたまはつて・まかりいづ・そもそもいせだいじんぐうと・まをしたてまつるは・むかし・たかまのはらより・みののくに・いぶき
のたけへ・あまくだらせ・たまひたりしを・すゐにんてんわう・廿五ねん・三ぐわつついたちのひ・いせのくに・わたらへのこほり・いすず
P305
のかはかみ・したづ・いはねにして・おほみやばしらを・ふとしきたてて・いはひそめ・まゐらせてより・このかた・につぽん・六十よしう・三
千七百・五十よしやの・なかには・すぐれたまへる・おんかみなり・されども・よよのみかどの・りんかうは・なかりしに・
むかし・ならの・みかどのおんとき・さだいじん・ふひとのまご・しきぶきやう・うまかひのこに・だざいのせうに・けんさひやうゑのかみ・ふぢ
はらの・ひろつぎといふひとは・おそろしきひとなりけり・たとへば・てんぴやう十五ねん・十ぐわつに・ひぜんのくにまつらのこほりに
して・す万のひやうかくをそつして・こくかを・あやぶめんと・せしとき・みかどおほののあづまうどを・たいしやうとして・ひろ
つぎつゐたうの・おんいのりのおんために・はじめていせへぎやうかうなる・さればそのばうりやうあれて・つねに・おそろしきことども・
おほかりけり・おなじき・てんぴやう十八ねん・六ぐわつ三かのひ・ちくぜんのくに・みかさのこほり・だざいふの・くわんぜんおんじ・くやうのだう
しは・なんとの・げんばうそうじやうとぞ・きこえし・げんばう・かうざに・のぼり・けいびやくのかね・うちならし・せつぽふせんと・しけ
るに・にはかに・そらかきくもり・いかづち・おびただしう・なりさかり・だうのむねを・けやぶつて・げんばうのうへに・おち
かかり・そのくびを・とつて・くものうちへぞ・いりにける・おそろしなんども・おろかなり・これは・げんばう・ひろつぎを・
てうぷく・せられたりけるに・よつてなり・おなじき・てんぴやう十九ねん正ぐわつ十五にちの・むまのこく・ばかりに・こうふくじ
の・なんだいもんには・しやれたる・かうべに・げんばうといふ・めいをかきて・そらより・おとし千にんばかりが・こゑに
て・くものうちに・いちどにどつと・わらふこゑ・しけり・きくひとみな・みのけよだつてぞ・おぼえたる・この・ひろ
つぎとまをすは・ひぜんのくに・まつらより・みやこへ一にちにうつ・むまを・もちたまへり・されば・さいごのときも・かのむまに・うち
のつて・かいちうへ・かけいりてぞ・うせられける・されば・そのりやうをあがめて・ひぜんのくにまつらのこほりに・いははれたまふ・
P306
かがみのみやうじん・これなり・このげんばうとまをすは・むかし・きびのだいじん・につたうのとき・ほつさうしうを・わがてうへ・わたしたりしひとなり・
そのときに・たうじんが・げんばうとは・かへりて・ばうすと・いふこゑあり・いかさまにも・このひと・きてうののち・ことにあ
ふべしと・まをしたりしに・たがはず・むかし・さがの・てんわうのおんとき・へいぜいの・せんてい・よを・みだらんと・
せさせたまひしとき・みかど・第三(だいさん)の・ひめみやを・かもの・さいゐんに・たてまゐらつさせ・たまひけり・それより・さい
ゐん・はじまりけり・またしゆじやくゐんのぎよう・てんぎやう七ねんに・すみとも・つゐたうの・おんいのりの・おんために・やはたの・りんじ
のまつりを・はじめらる・へいけ・かやうのことどもを・れいとして・さまざまの・おんいのりどもをぞ・はじめられける
木曽山門の牒状 708
おなじき六ぐわつ八かのひ・きそは・ゑちぜんのこふに・つきて・まづ・いまゐ・ひぐち・たてねのゐを・めして・われら・こん
ど・きんごくを・へてこそ・しやうらくすべきに・れいのさんもんのたいしゆ・へいけの・かたうどして・ふせぐ・こともや・あら
んずらん・うちやぶつて・とほらんことは・やすけれども・へいけこそ・ぶつぽふをも・しらじ・きみを・なやましたてまつ
れ・そのしゆごのために・しやうらくせん・よしなかが・しゆとに・むかつて・かつせんせんこと・おとらぬ・にのまひなるべし・
これこそ・ゆゆしきやすだいじなれ・こはいかが・はからふ・とのはらたちと・いひければ・たいふばうかくめいが・まをし
けるは・さんもんはこれ・三千しゆと・いちみどうしんに・あるべからず・ないないは・みかたに・こころざしを・ぞんずる・しゆと
も・せうせうさふらふらん・まづ・てふじやうを・つかはして・ごらんじさふらへかし・しさいは・へんてふに・みえさふらふべしと・まをし
P307
たりければ・きそ・このぎもつともとて・やがて・てふじやうを・かくめいに・かかせて・さんもんへこそ・おくられけれ・その
じやうにいはく
みなもとのよしなかおそれながらつつしみてまをしあげさふらふ・つらつら・へいけの・あくぎやくをおもふに・さんぬる・はうげん・へいぢより・このかた・
ながく・じんしんの・れいをうしなふ・しかりといへども・きせんてをつかね・しそあしをいただく・ほしいままに・ていゐを・しんだいし・
あくまで・こくぐんを・りやりやうす・だうり・ひりを・ろんぜず・うざい・むざいを・きらはず・けんもん・せいかを・つゐふくし・
そのしさいを・とりて・みだりがはしく・らうどうにあたへ・かの・しやうゑんを・もつしうして・ほしいままに・しそんに・はぶく・なかんづく・いんじ・
ぢしよう三ねん十一ぐわつに・ほうわうを・せいなん・りきうに・おしこめたてまつり・はくろくを・せいかいの・ぜつゐきに・うつし・たてまつる・
しゆしよ・ものいはず・だうろ・めをもつてす・しかのみならず・おなじき・四ねん五ぐわつに・一ゐんだい二の・みこ・たかくらのみやの・
しゆかくを・うちかこみて・ここのへの・こうぢんを・おどろかさしむ・ここに・ていし・ひぶんのがいを・のがれんがために・三ゐでら
へ・じゆぎよのとき・よしなかせんじつ・りやうしをたまはつて・さんらくを・くはだてんと・ほつするところ・をんてき・ちまたに・みちて・よ
さん・みちをうしなふ・きんきやうのげんじ・なほさんこうせず・いはんやわれら・ゑんきやうにおいてをや・なかんづく・をんじやうは・ぶげんせばき
によつて・なんとへ・おもむかしめたまふすなはち・げん三ゐよりまさにふだう・うぢばしにおいて・めいを・かろんじ・ぎをおもん
じて・一せんのこうをはげますと・いへどもたせいのせめを・まぬかれず・げいがいを・こがんの・こけにうづみ・せいめい
を・ちやうかのなみに・ながしをはんぬ・りやうしのおもむき・きもにめいじ・どうるゐの・かなしみ・たましひをうしなふ・これによりて・とうごく・
ほくこくのげんじら・さんらくをくはだてんとす・そのなかに・よしなか・そのしゆくいを・たつせんがために・いんじ・としのあき・はたを
P308
あげ・つるぎをとつて・しんしうをいでし・ひ・ゑちごのくにのぢうにん・じやうの四らうながもち・すまんのひやうかくを・そつして・はつかう
せしむるあひだ・よしなか・よこたがはらに・はせむかつて・かつせんす・よしなか・わづかに・三千のつはものをもつて・かの二万の・ぐん
びやうをやぶりをはんぬ・しかるを・ふうぶん・ひろきにおよんで・かさねて・へいしの・たいしやう十まんの・ひやうかくを・そつして・ほくろく
にはつかうす・ゑつしう・かしう・のうしう・となみ・くろさか・しほ・あだか・しのばら・いげのじやうくわくに・おいて・すケど
の・かつせんにおよぶ・はかりごとを・ゐあくのうちに・めぐらして・かつことを・しせきのもとに・えたり・うちては・かならずふく
し・せむればかならずくだる・たとへば・あきのかぜの・ばせうをやぶるに・ことならず・ふゆのしもの・ぐんえふを・からすに・
あひおなじ・これ・よしなかが・ぶりやくにあらず・ひとへにしんめいぶつだのたすけなり・へいしすでに・はいぼくのうへは・さんらくを・くはだてん
とす・いまえいがくのふもとをへて・まさに・らくやうのちまたに・いるべきなり・このときにいたつて・ひそかに・ぎたいあり・そのゆゑ・
いかんとなれば・そもそもてんだい・三千しゆと・げんじに・どうしんか・へいけによりきか・もしかのあくとを・たすけらるべ
くんば・しゆとにむかつて・かつせんすべし・もしかつせんにおよばば・えいがくのめつばう・くびすをめぐらすべからず・かなしいかな・へい
けしんきんをなやまし・たてまつり・ぶ