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此たけた殿と。もふせしは。てんき五年みづのとのみ。しゆぢ やくいんのたいし。のちのれいぜんゐん。七十代の御かどのを んとき。むつお(のカ)くに。さだとう。むねとう。ほこり。十二年のいく さあり。そのときに。たいしやうぐん。いよのかみよりよし。御ち やくし。八まん太郎。二なん。かも二郎。三なん。しんら三郎むか わせ。たまひて。つひに。ほろぼし。たまふ。かのむねとう。さだ とうと。もふせしは。おもて三ぢやくよほう。こゑ百りきこゆ るものなり。かゝるあくじのもの。うしなひ。たまふとて。物の ふと。いふぢを。たまわり。しんら三郎の。御ちやくしにて。まし ませば。たけだの太郎と。もふすなり。かつよりまでは。三十」(一オ) 一代にて。わたらせ。たまふともふしつたへけるとかや。ゑひぐ わをきわめ。世をたもちたもふ事。またたぐひありがたく。御 いたわしや。きたの御あそびには。せいやうのあしたには。花鳥 に御心をそみ。いろねをおしみ。このもとをしたひ。哥をよ み。しをつくり。又なつきにければ。うの花。ほとゝぎす。すゞ しきかたをもとめ。まつがねの。いわひのみづに。たちよりたま ひて。たちくるなみに。ことのはをよせ。あきは。さやけき月を。と もとし。びわ。こと。(わカ)ごん。しやう。ひちりき。そろへ。おもひ/\の。 やがくのあそび。つまをと。けだかく。引ならし。てんにんも。や うがふ。なすやと。ばかりなり。あきかぜ。こがらしうちすぎ」(一ウ) て。ゆきのころにも。なりしかば。かゝらんときの。ものまと(本ノマヽ)と て。きゞのこずゑに。つもれるを。はなまちおそしと。ながめた もふ。されども。かつよりは。ぶどうのことを。わすれたまわず。う ちふし。たもふにも。ゆろいのそで。(をイ)まくらとし。おきさせ。たも ふにも。そのことのみ。げんとう。そふせつ。ふう雨を。いとわず。ゆ みやのかたゑと。おもむき。たまへしかども。ときうつり。うんめ いつきはて。たもふにや。きそどの。むほんのおこし。おわり のくに。をだのかづさのかみ。のぶながへ。ちうし。さるあいだ。みや このせひを。引ぐし。きそどのを。さきとして。うつてくだり。天 正十年。みづのゑうま。三月十一日に。たのゝ山辺の。かつせんに。」(二オ) うちまけたまふぞ。あわれなり。御いたわしやな。むげなく も。御うちの人の。かわらずは。たとゑ。天下ぜい。きたるとも。五 とせ十年の。そのうちは。かゝるほどには。ましまさじ。彼かつよ りと。もふせしは。心たけだの。いゑなれば。人にはすぐれてまし ませども。御内のさふらい。こと/゛\く。心かわりを。もふされけ れば。ちからに。をよばせ。たまわず。されども。たてを御まくら と。さだめさせ。たまへて。いづかたへも。おちさせ。たまふべきに。 御心はゆめほども。ましまさざりしに。こゝに。くにうどおや まだと。もふせし人。はゝのにかうを。人ぢゝにとられ。まいら せ。それかへさんが。はかりことに。おふせは。さこそ(さカ)ふらへども」(二ウ) 御身をまたく。もりたまへ。みづからが。あり所。つるのこふり。ゆ わどのさむと申は。およそ。天下がむき候とも。ひともち。もつべき。 山にてあり。それへ御こし。しかるべきと。申されければ。かつよ りきこしめされ。こは。くちおしき。いうことや。かつよりせつな る間も。しんじやうに。あらんほど。かたきに。うしろを。見すべき か。これにて。まちあわんと。大きに御はらたゝせ。たまふに。小山田 かさねて。もふされけるは。おそれながら。もふすなり。いのち を。まとうもつかめは。かならず。ほふらひにおふと。つたへき く。彼山にこもり。たまはゞ。御よに出させ。たもふ事。ほどは。あ らじと。もふされけれども。御へむじの。なかりければ。小山」(三オ) (絵)」(三ウ) (絵)」(四オ) 田なみだをながし。もふされけるは。御たいしやうは。さこそ。ま しますとも。みだいどころ。いまだ。つぼみて。はるまちたま ふ。こずゑの花の。わか君さま。かれと申。これという。あまり に。御心つよくも。おりに。よりしものをと。かきくどき。申け れは。かつよりげにもと。おぼしめし。御たてにらざきを。出さ せたまふ。いたわしやな。御たびどころのたてゑ。うつらせ。た もふ御うつりのときは。こんごん。しゆぎよくを。ちりはめたる。 こしくるま。あたりも。かゞやく。ばかりにて。御供の衆。かずし らず。こぶより。しんふの。その間。三百よてうと。もふせしを。よ ひつるさしつる。うつらせたまふ。比は。十二月廿四日なりし」(四ウ) に。あくるやよひ三日には。かくならせ。たもふとて。御な ごりおしくや。おぼしめす。御とこに。たおれふしなみ だをながし。のたもふやう。たゞ此所にありし事は。はるの よのゆめほどもなしと。おふせありて。かくこそ。ゑひじ たまへけれ。 うつゝには。おもほへがたき。此所。 あだにさめぬる。はるのよのゆめ。 とあそばして。出させたもふときは。こしくるまにも。およ ばせ。たまわず。めしもならはぬ。御馬にめされ。出させ。 たまふが。御なごりおしとや。おぼしめす。はるかに。御ら」(五オ) むじかへし。かくこそ。ゑひじたまひけれ。 はるかすみ。たちいづれとも。いくたびか。 あとをかへして。みかづきのそら。 やよひ三日なれは。かくゑいじ。ゆかせたもふが。人々のけ しき。かわりて。見ゑければ。かつよりを。あんじたてまつり。 御むまもすゝめず。たゝせ。たまひて。のたまふやう。などお そなわり給ふぞ。ほけきやう五のまきに。へむじやうな んしと。いうことあり。かたちこそ。女人にうまるゝとゆふとも。 心はなんしにおとらめや。かつよりすはと。もふすなら。まづ われさきにと。おぼしめし。御まもりかた(なカ)に。御心をかけさ」(五ウ) せたまひて。おちさせたまふみちすがら。むかしげんへいり やうかのおちあしと申とも。これにはいかでまさるべき。その 日もくれがたに。なりければ。柏尾と申所ゑ。つかせたもふ。御だ いどころ。おふせけるやうは。この寺の御ほぞむは。やくしによ らいと。うけたまわる。こんや。これに。つやし。のちのよを。いのら ばやと。おもふなり。なむ。やくし。るりかうによらい。みづか らさいご。すでに。ちかづきぬると。おぼへてあり。のちのよ には。ひとつはちすのうてなのゑんと。なしたまへと。かしわを わ。にらざきより。ひがしなれば。とうぼうぢやうるりせかい。 を。心がけたまひて。かくこそゑひじたまへけれ。」(六オ) にしをいで。ひがしへゆきて。のちのよの。 やどかしわをと。たのむ御ほとけ。 よそながら。いのらせ。たもふ所に。ちとりとうのものども。みづ から。いゑにひをかけて。御心をさわがしけるに。そのひのひかり に。おどろき。たま/\。めしつれし人も。さいしの事。おもひ かろん(イナシ)けんか。そのために。しのび/\に。おちゆきぬ。やゝあ りて。かつよりたれかあると。のたまへども。とみには。御へむじ も。なすものもなし。かさねて。いかにと。のたまへば。つちや。 なに。そうろうと。もふす。たれかれはと。たづねさせ。たまへば。 たれは。いつのころより見ゑず。これは。なんどきより見ゑ」(六ウ) ずと。もふしければ。いづれも。御心ぼそくや。おぼしめす。す でに。そのよも。あけゝれば。こまかういわみがやどへ。出させ。 たもふ。いたはしやな。にうぼうたち。きのふは。むまにの りしをさへ。よにうき事と。おもはれしが。そのむま人も。お ちゆきぬれば。かちや。はだしで。あよみける。御だい所御 らんじて。げに。あはれにぞ。おぼしめす。御ともの人も。なほわ づかなれば。御心ぼそくや。おぼしめしける。ろじにて。かくこそ。 はんべり。たまへけれ。 ゆくさきも。たのみぞうすき。いとゞしく。 心よは身が。やどりきくから。」(七オ) と。あそばし。やよひ四日には。こまこふよはみがやどゑ。つき たまふ。小山田。心がわりに。おもひけるやうは。よきぢこくも なし。はゝもろともに。つるのこほりへ。ゆかばやと。おもひし 所に。てきみへけると。申きたりければ。六日のくれがたに。つち やを。さうしやといたし。これに御入候こと。かくごのほかにて候 なり。かのつるのこふり。ゆわどのさんゑ。御こし。しかるべき なりと。御申たのみたてまつり候。又ついては。みづからはゝの 御いとまの事。よきよふに。たのみ入なり。もつともの。おふせ ならば。御さきへ。まかりこし。みだい所の御ざのまをも。しつ らい。御むかひに。まいるべしと。申ければ。そのよし。つちや。」(七ウ) 申あげられけるに。きこしめし。いや/\と。おぼしめしけれども。 かのものゝ心を。そこねじと。おぼしめし。ともかくもと。仰ければ。母 もろともに。七日のよわに。まぎれゆきて。御むかいに。まゐるかと。ま ちさせ。たまへど。其まゝ。見ゑざりければ。こなたより。御むかい を。こされたもふ所に。さゝこのとうげに。あまたの物のふ。ぢん どつて。ふせぎ。つるのこふりへ。いれざりければ。御つかい。罷 かゑり。此よし。もふしあぐる。かつよりきこしめし。かのものに。 たばかられしことの。口をしさよと。てんにあがり。ちにしづみ。 御はらたゝせ。たまへど。かなわず。おやまだ。心がわりのよしを。つ たへきゝ。御ぢんにはかに。さわぎたち。あたりのいゑに。火をか」(八オ) (絵)」(八ウ) (絵)」(九オ) くれば。あるにあられぬ。御ありさま。めもあてられぬ。けしきなり。 げにりやうけんのなきあまりに。天目山へ御こしなされ。ひともち もたばやと。おぼしめし。すでにこまこふを。出させたもふ。こやぢう の物どもら。こなたへ。御こしなされむこと。思ひもよらずと て。あまたのひやう。くちをそろへ。ふせぎたてまつれば。こゝ かしこに。たゝせたまへて。かごのうちの鳥とかや。あじ ろの中のうをとかや。もれて行かせ。たまはんかたぞなき。こゝ に。わづかなる。たのともふす所に。御馬をよせたまへて。やすら いたまへば。みだい所に(のカ)おゝせけるやうは。かゝるのはらの。ありさ ま。おもひもよらずや。かくあるべきとしるならは。にらざきに」(九ウ) て。いかにも。なるべき身の。これまで。きたりて。かばねのうへ の。くちをしさよと。御なみだをながし。おふせければ。かつより きこしめし。みづからも。さこそ。おもひつれども。かのものに。 たばかられ(しカ)と申とも。御みいたはしきと。おもひ。まいらせし。 ゆへなり。ことは。いかにともふすに。かのつるのこふりと申は。さ がみちかき所なれば。いかなる風のたよりにも。御みふるさ と。さがみへおくり。まいらせ。我身いかにも。ならむと。おもひしゆ 絵なりと。のたまへば。みだい所きこしめし。こは。いかなる。お ふせぞや。たとへば。人ゆるし。こしくるまにて。ふるさとさがみ ゑ。おくるとも。かゑらん事。おもひもよらずや。ひとつはちすの」(十オ) うてなのゑんと。おもひ染たる。むらさきの。くもの上まで。かわ らじと。ちぎりをむすぶ。たまのおの。あらんかぎりは。もとより も。たゑてののちも。わかれめやと。のたまへば。かつよりきこしめ し。いしうも。おふせけるものかな。御身の御こゝろ。まだきよ り。かくこそ見たてまつれとて。たゞこのありどころ。みぐるし との。おほせなるや。あるもんにいわく。さんがいむあん。ゆいによ くわたく。又十方くうと。くわんずれは。いづくをあると。さだむ べき。たゞもふぞうの。たわむれなりと。のたまへば。御だい所き こしめし。まことに。さやうにて。はんべると。のたまへて。かくこ そ。ゑいじたまへけれ。」(十ウ) 野辺の露。くさばのほかに。きゑてのち。 (破損) たいあらばこそたき所入 もんちんじのたまへば。かつよりきこしめし。よろこびては。 なげき。なげきては。よろこび。のたもふ所ゑ。人きたり。てきは。は や。ぜんくわうじへむまで。参たると申ければ。さいごの御さか づきと。申ければ。たてまつりしに。御だひ所取あげ給ひて。 かつよりに。さしたもふ。又御だい所ゑさし。御だい所の御さか づきを。御子のぶかつへ。さし給ふ。のぶかつの御さかづき。つ ちやに。くださるゝ。それよりのちは。心々のおもひざし。しゆ(酒カ)」(十一オ) もなかばの事なるに。つちやわかをちかづけ。しやくたてなほ し申やう。かゝるのはらの。御ありさま。見たてまつれば。心も みだれ。きもきゑて。まなこも。くらむばかりなり。かくなら せ給ふは。いかにと申に。御内の人々の。心がわりのうへなれば。 さこそは。こなたおも。御心やおかせ。たまふらんと。あさゆふ。 きづかい。いたすなり。きもあらざりししるしを。御めにかけ んとて。五つになりしわかに。むかつて。いうけるは。なむじは。 いまだ。やうしやうなれば。人のつれには。あよみがたし。御さ きへ罷越。六だうのちまたにて。きみまち。たてまつれ。ちゝ も。御とも申べき。にしゑむかつて。手をあはせ。ねんぶつ」(十一ウ) もふせと。いゝければ。ちゝが子にて。あるあひだ。うけたまわる と申て。かやでのやうなる。手おあわせ。ねんぶつ三べん。もふし ければ。こしのかたなをひんぬいて。心もとにおしあて。かし こゑ。がはとなげすつる。かつより此よし御らんじて。あまり あへなき事お。いたしけるものや。さいごのことばをも。かけや ら(うイ)づか(るイ)ものをと。のたまひて。御なみだお。ながし。のたまへば。御 まいなる。人々まで。みなこてのくさりお。ぬらしける。御だい 所此よしお。きこしめし。なにつちやが。わかお。がいしつるか。あ はれなると。のたまへて。御ぞのたもとお。かをにあて。たま いて。しばしは。おきもあがり。たまはず。やゝありて。御だい」(十二オ) 所おふせける。かんろの母の心のうちに。ふびんさよと。のた まひて。若がことを。あそばし。はゝのかたゑ。おくりたもふ。 のこりなく。ちるべきはなの。くれなれば こずゑの花の。さきだつはうき。 と。はんべりて。おくらせ。たまへば。女房わきまへなくて。い たりしが。御ゑいかのよしお。うけたまわり。すこし心お。 たてなおし。三度いただき。なみだのひま/\にみて。おそ れながらも。御かへし。もふさむとて。かくこそ。ゑいじま いらせけれ。 かひあらじ。つぼめる花は。さきだちて。 むなしきゑだの。はゝのこるとも。 そのゝち。つちや。女房にむかひていうけるは。若が。いも ふと。二さひになりしをぞ。なんじに。とらするなり。いずか たゑも。つれゆき。もし。ながらへて。あるならば。あまにもな して。ちゝあにが。わすれがたみとも。見べしと。いゝければ。女 房きいて。うたての。人のいゝ事や。あのわかにはなれ。御 みにすてられ。又よにながらゑむとは。おもへ(はイ)ず。おなじ道に とおもふなりと。かきくどき。うらみければ。つちや。かさねて。 いうようは。おふなのわけなきとは。これとかや。あのみどり 子を。やういくし。ちゝあにが。くさのかげを。とわせんは。いく」(十三オ) ばくの。ちうたるべきと。いうけれども。さらに。りやうぢやう。 せざりければ。つちや。たのもしき。ひくわむを。ちか付。い うけるやうは。あのおふなおや子。つれて。いづくゑも。し のびおき。あまにもなして。みづからが。くさのかげを。とわせ よと。いゝければ。かの男申やう。こは。くちをしき。おふせ かな。いづかたへも。ゆきては。いつのやうに。たつべきぞ。お もひも。よらずと。いゝければ。みづから。馬にくらをおき。女 房おだきのせて。おさひて。男にみずぐちとらせ。馬のさむ ずに。むちおあて。十町ばかり。おい出してぞ。かへりける。其 後。御だい所御さいごも。ちか付ぬれば。御心ぼそくや。おぼ」(十三ウ) しめしける。ふるさとさがみへ。かくならせ。たもふことのはお。 いかなる。かりのたよりにも。事づてばやと。おぼしめして。か くこそ。ゑいじ給ひける。 かゑるかり。たのむぞかくの。ことのはお。 もちてさがみの。こふにおとせよ。 また。いかにも。ならせ。給はんのち。御きやうていの。御なげ かせ。たまはん事お。おぼしめして。 ねにたてゝ。さそなおしまむ。ちる花の。 いろおつらぬる。ゑだのうくひす。 と。はんべりければ。御まへなりし。女房たち。御さいごの御 (絵)」(十四ウ) (絵)」(十五オ) とも。申さんとて。かくこそ。はむべりけれ 咲ときは。かずにもいらぬ。花なれど。 ちるにはもれぬ。はるのくれかな。 かくて。てきまじかく。きたりたるよし。申ければ。ほけき やう五のまき。たてまつれと。めされて。御心しづかに。あそば したまふ。すでに。御きやうも。すぎければ。かつよりつち やおめされ。みだい所の。御さいごの。御かひしやくと。おふせ ければ。うけたまわると。申て。御まへには。出けれども。はじ めて。見たてまつるに。御としのころ。はたちのうちと。見 絵させ。たまひて。いろ/\のしやうぞくめされ。やうがん」(十五ウ) びれいの。ありさまは。むかしのやうきひ。そとおりひめ。き ちじやう天女と。申とも。かほど。なまめいたる形ちは。まし まさじ。いづくへ。つるぎお。たてまいらせんと。あきれはてゝ。 いたりしに。御みづから。御まもりがたなお。ぬかせたまひ て。御くちにふくませ。たまひて。うつむきに。ふしたまふ。か つより此よし。御らんじて。いそぎ。たちより。御かいしやくお。 たてまつり。御しがひに。いだきつき。しばしは。ものおも。のた まはず。つちやきやうだい三人は。御ともの女房たちの。か ひしやく。とり/゛\に。いたしける。さんのみだした。。ありさま にて。たとへむかたは。なけれども。むかし。へいぢぐわむ」(十六オ) ねん。三月十五日に。たいけいもんのいくさのとき。へいけは。 十八万ぎ。げんじは。およそ三百よきに。うちなされ。させたま いし時。御子せんじゆのまへ。たけのこ御しよお。しのび出。ちゝ よしともの御まへにて。おふせけるやうは。りようかお。見 たてまつるに。へいけは。いづる日。さく花なり。げんじは。いつ(衍カ) る日。ちる花なり。よしともいかにもならせ。たまわんのち。 いかなる。てんしやの手に。かゝらんも。くちおしや。よしと も御手にかゝり。たすからばやとおもひ。さいごのしやうぞ くた(にイ)て。参りたりと。おほせければ。よしともきこしめし。い しうも。申けるせんじゆかな。みづからもさこそ。おもひつ」(十六ウ) れどもとて。御なみだおながし。おふせける。やゝありて。よし とものめのとの。かまだはれいづくにぞ。まさきよ参れと。めされ つゝ。みなみおもての。さんこのさくらのもとに。しきかわおし き。せんじゆのまへお。うつしたてまつり。おふせけるやうは。我 子なれども。いつくしき物や。おそれながらも。まんぐわつの。山 のはいづる。そのかげも。これには。いかで。まさるべき。たけなるひす いのかんざし。まきあげたもふ。よしともさしより。たまひて。お ゝせけるは。なんじ。いかなる。いんぐわに。よしともが子となりて。 かゝるうきめお。見するなり。こんどには。いかなるしづのお。しづ のめがたいないにも。やどり。百よねん。よわひをたもてとの」(十七オ) たまへて。でんくわうのうちに。つるぎお。ふらせたもふと。みゑ しかば。花のやうなる。せんじゆの御くびは。前にぞおちたり ける。よしとも御くびにいだきつき。しばし。きゑいり。たもふ となり。又げんりやくぐわんねん二月七日。一の谷の。おちあし。お なじき十八日に。さぬきの八しまの。おちあしに。いかばかりの 人。うせさせ。たもふと。もふせども。これには。いかで。まさるべ き。やう/\。かつより御しがいに。は(わイ)かれたまい。のたもふやう。い かにつちや。みづから。さいごおも。おなじじこくと。おもへども。 てきまちあわんと。おもふなり。みづから。たちおふる事は。 いゑにそむける事なれど。しよぞんのあまり。これならば。く」(十七ウ) るしからじと。おもふなりと。おほせければ。つちや。うけたま わり。仰まことに。御ことはりなりとて(そイ)もふしける。又御子のぶか つに。むかわせ。たまいて。みづからは。いちゑ(いイ)いちらく。これしゆん じうたるが。なんじむざんなれ。いまだ。よわひたらざれば。たけだ の家にも。なおらずして。たゞかくなることは。いまだつぼめる花 のはるにも。あはずして。あらしにもまれ。おつるがごとし。む ねんなりと。のたまへば。のぶかつきこしめし。につこと。はらわせ。 たまいて。いや。これはくるしからず。こゝに。たとゑのそうろう なり。しう/゛\のせんねん。ついにくちぬ。きんくわの。いつ(ちイ)ぢつは。 おのづから。ゑいおなす。とくもおそくも。のこらめやと。のたま ゑて。かくこそ。ゑいじたまひけれ。 まだきちる。花とおしむな。おそくとも。 ついにあらしの。はるのゆふぐれ。 と。あそばしけれは。かつよりきこしめし。かんじたまい。おと なしや。いかなる心ざまかなと。おぼしめいり。たまいて。ふる(かイ) き。御なみだに。むせび。たひて。御へんじの(もイ)。わきまゑず して。おわします所ゑ。てききたりければ。いづれも。うち物 ぬきもちて。いでたまい。さん/゛\に。たゝかいたまふ。つちやき やうだい三人は。おなじく。たゝかいければ。さきゑとすゝむ。 つは物お。こと/゛\く。ほろぼし。たまへば。あとなるせいは。こ」(十八ウ) れお見て。つ(さイ)ゝゑて。いたりければ。よきぢこくぞと。おぼしめ し。いかにつちや。しきが(わイ)お。なおせ。御はらめされべし。とおふせ ければ。うけたまわると。申て。御しきがわ。たてまつり。御かい しやく(にイ)まいる。なおらせ。たまゑて。御ぢせひと。おぼしくて。かく こそ。ゑいじたまゑけれ。 おぼろなる。月もほのかに。くもかすみ。 はれてゆくゑの。にしの山のは。 (とイ)あそばしければ。つちや。とりあへず。かくこそ。申参らせけれ。 おもかげのみおしはなれぬ。月なれば。 いづるもいるも。おなじ山のは。」(十九オ) そのゝち。まいらせ(せさせイ)ねん。いかりやうしゆぢやう。とくにうむぢ やうどう。そくぢやうじゆぶつしんと。このもんのとなゑ。させ たまいて。御年三十七と申には。田野ゝ草葉の露と。き ゑさせたまふ。つちや。御しがへに。いだきつき。やがて。御と も申べしとて。ふかくなみだに。しづみける。又のぶかつの御 かいしやくに。おとゝのつちやまいる。これも。なおらせ。たま ゑて。御ぢせいと。おぼしくて。かくこそ。ゑいじたまいける。 あだに見よ。たれもあらしの。さくら花。 さきちるほどは。はるのよのゆめ。 おとゝのつちや。うけたまわり。とりあゑず。かくこそ。ゑ」(十九ウ) いじ参らせける。 夢と見る。ほどもおくれて。世野中に。 あらしのさくら。ちるはのこらじ。 とぞ。申ける。おとゝのつちや。見たてまつり。いつよりも。い つくしく。まします物や。ぼゝ/\まゆに。うすげしやう。いろ /\のしやうぞくは。やうばいとうりの。はなひらき。きり のまに。ゆみはりづきの。いるふぜい。たゞ此世野人とは。みゑ させ。たまはず。てんにんの。やうがうかと。おぼしくて。雪 のはだゑ。あらはれ。いずくゑ。つるぎお。たて申さんとも。 おもほへがたくて。いたりしに。ぐわんにしくどく。ふきう」(二十オ) (絵)」(二十ウ) (絵)」(二十一オ) お一さいがとうよしゆぢやう。かいくちやうぶつ。我人ぢやうぶ つと。此もんを。となへさせ。たまいて。御年十六さいにて。おなじ のべの。くさばの露と。きゑたもふ。おとゝのつちや。御しがい に。いだきつき。しばしきゑいりけるとかや。そのゝち。あに のつちや。いゝけるは。かつより。のぶかつ御はらめされぬ。 おもひおく事なし。いざてきの中へ。みだれいり。うちゞに せんと。いゝければ。うけたまわると。もふして。御しがひに。 うちわかれ。きやうだい三人。うち物。ぬきもち。てきの中ゑ。 みだれいり。くわゑんのいだし。たゝかひて。おほくの物を。 ほろぼせば。むかふてきこそ。なかりけれ。あにのつちや。」(二十一ウ) いゝけるは。とても。ながらへべき。身にてなし。あまりに。人 おうしないて。我身ののちの。つみたるべし。いざ。さしちが ゑてしなん。もつとも。しかるべしとて。あに廿五。そのつぎ廿 二。三なん十九にて。さしちがいてぞ。うせにけり。彼ものどもの。ふ るまい。見る人めおおどろかし。むかしのはんくわい。ちやうりや う。やうゆふれが。いきおひも。これにわ。いかで。まさるべき。いつ きとうせんとは。此物共の。事なるべし。よわひともふし。し よぞむという。おしまぬ人ぞ。なかりけり。其後あのほとり。 此ほとりに。しのびいし人々。御さいごのよし。うけたまわり。 なげきかなしむ。ありさま。たとゑんかたは。あらねども。」(二十二オ) ぢやうだいの事なるに。さんがひいちのとくそんしやかむに によらいの御にうめつの。きさらぎに。十だい御でし十六ら かん。此ほかの人々。五十二るい。けだもの。てうるい。ちくるい。うぢ やう。ひぢやうの。たぐひまで。なけきかなしむも。これには。いか で。まさるべき。かくは。おもひたてまつれども。くにのうち。みな てきなれば。そのめおかねて。御はかたつる人も。なかりしに。 こゝに一やの御やどお。参らせしもの。人めをしのび。御は かゑゆきて。あまりに。御いたしはく。おもひまいらせ。め うがう哥を。よみたてまつる。 なお竹の。はやしの花の。みなちれば。」(二十二ウ) 世わうぐひすの。ねをぞなきぬる。 むらさきの。雲に月かげ。いりしより。 心はややみの。よにぞまよへる。 あはれなり。あり明ならで。うき雲の。 かゝればともに。いざよいの月。 みなそこの。こゝろはきよき。かわ竹の。 世ににごりある。事ぞかなしき。 たれゆきて。とわぬ御はかの。あきかぜに。 うらみやふかき。田野ゝくずはら。 ふりぬ共。わきてやとわむ。あとたゑし。」(二十三オ) 田野の山辺の。こけのした道。 つみもみな。ある(りカ)とはなにお。いとわまし。 よくより見れば。くうのうなばら。 此めうがううたのはじめに。竹のはやしとは。たけだの御 おやこさまの御事。花とは。つねの事。ちるとは。かくれさせ たもふ事。みなみ(イナシ)とは。御一もんの事なり。五もしに。なお 竹野とは。人々おゝくしすと。もふせども。おふやさま。なお 御いたわしと。ゆふ事なり。しものくのかみに。よはうぐひす と。ゆふ事は。それにつけても。世野うきとゆふ事なり。又 たけのよなるべし。いづれも哥の其しな/゛\あるべし其」(二十三ウ) 後たきがわ。かつよりさまの。御くびお。もちて。のぶながのま へに。きたりければ。御しるしに。むかいたまへて。いろ/\の事。 もふされければ。御きにあわずとや。おぼしめす。おもてお そむけ。御うしろへ。むかせたもふ。のぶながぢやうのすけど の。此よしお。みたてまつり。おふせけるやうは。御どうりにて候 なり。ゆみとりのならいにてふ。人おかくし。又我かくならんも。 しれぬなり。御はらさせたまへ。そのぢやうにわ。今度心がわ りいたしける。人々お。みなうしなはんと。もふされければ。御 まゑにむかせたまふ。のぶながぢやうの助どのと。おゝせらる やうは。むかし。よりとも。よしつね。御ふあいにより。おふしゆ」(二十四オ) うの。ひで平お。たのみ。たかだちと。申所に。御しよおたて。御い り候所ゑ。かまくらよりも。おしかけ。御申ありしとき。よりと もゑの。御うらみお。かきたまいて。そのふみお。くちのうちにお さめ。御はらめされぬ。御めのとのかねふさ。みづからが。はらお さき。御くびおをしいれ。御やかたに。火おかけ。しゝたりし に。ほのおしづまりければ。かくらの人々。みだれ入。やけた るしるしのうちにて。よしつねの御くびお。み付たてまつり。 きやうやう申さんと。はたけやまどの。見たまへば。御くちの 内より。彼ふみお。ふき出し。たもふとなり。それよりのちは。 これにて。ましますなりとて。お入まいらせ。七段に段のつき。七」(二十四ウ) ゑにしめをはゑ。其内に納たもふ。其後御やくそくのごと く。御心がわり。申ける人々。こと/゛\く。たゑされける。又おわり より。むかいたてまつりし。人々も。のぶなが。ぢやうの助殿を。 はじめとし。七十五日の内に。みな/\たゑられければ。この 事。あづまみやこゑかくれなくして。もふすやう。とうとの 虎はけおをしみ。にほんの弓とりは。なおおしむと。もふ すたとゑの候が。此たけだどのは。御めいかわらせ。たまゑて。 天下に。御なお。ひろめ。かふだひにあげさせ。たもふ物かなと。 もふさぬ人ぞ。なかりける。又このよのあらまし。とりあつめ し物は。かしわをにて。一や御やど。いらせしものなり。世」(二十五オ) (絵)」(二十五ウ) (絵)」(二十六オ) おくわんじみるに。にんげん五十年。るてんの内お。たとふれ ば。でんくわう。ちやうろ。いしの火。ゆめまぼしろ(ろしイ)の。ごとくな るに。世のいとなみに。うちまよい。すゑのやみじお。いかゞせん。 ま事の道に。いらばやと思い。その比。たつとき人。けいしや うと。もふせしの。御でしとなり。もといきり。すみ染のころ もに。身おなして。むろのとぼその。明くれに。ねんぶつ申。き やうおよみ。しんいおすまして。そのあかつきお。まつところに。 たけだの御一もん。おち人と。ならせたまゑて。きたり。一夜 の御やどゝ。おふせければ。たてまつりしに。其まゝ世に出さ せ。たまわず。ついに。はかなく。ならせたまゑば。御いたわしき」(二十六ウ) 事。かぎりなし。いとせめて。御なばかりおも。とゞめまいらせ。くさ ばの露のきゑぬまの。わすれかたみにも。みたてまつらばやと。 おもひて。かくしるしおき。まいらせけるとかや。さきのめう がう哥。よみてたてまつりし。ものゝあまなり。 甲州柏尾山野りけひびくに。 けひじゆあんこれおあつむ。 以下イナシ されば後。わすれがたみ。見たてまつれば。いとゞしく。心はや みのごとくに。身のおき所にまよい。あるにもあられざりけれ ば。御ゆかりお。たゞしまいらせ。いまはさがみのくにゑまいり。 なかのこふりとやらんの。とみおかのかふのうち。なかしま と申所に。わづかなる。いおりおむすび。うちともあか(らカ)ぬ。あしの やの。おなじあみ戸の明くれに。御いたわしき事の身。おもい 参らせて。いかばかり。をんきやうの(事カ)も。おもひ参らせけれども。 かんくわせきばくのおもひ。もつはらにして。いづれも。そのた よりなかりければ。とても。かくおもふこと。かなはざりけれ ば。なか/\ひとつ御心のみちゑも。まいらばやとゆふに。なみ」(二十七ウ) だのさきだちぬ。人のたゞうきものには。ろふ人に。まさる事 あらじ。あら玉の。年たちかゑる。はるきても。花のかどお。 かゆる事もなく。あらし身にしむ。あきまでも。かさぬるこ ろも。あらざれは。せみのはうすきかたゑお。ひきまつゑ ぬるよぞ。いとゞなかりき。げんとうさうせつのふゆのよも。ふ すまお。かさぬる事もなし。かゝるかなしきありさまも。し る人あらねは。とう人なし。かくて。いおりのあじろのとお。明 ぬはれぬと。すぎゆきし。みとせのおもひ。いかゞせん。とし いまい(はカ)はや。しばしはいかで。ながらゑん。うき身日にそゑ。お とろゑて。おもかげ斗有明の。月日おくらんよふもなし。」(二十八オ) げにやいのちも。しら露の。きゑなん事お。思にや。たのみ あるかな。五ちの(本ノマヽ)以下虫損 名(本ノマヽ)はかうやさんいんどういんへ 本翻刻の底本は、弘化二年刊の版本(菊池真一所蔵)である。 |
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